• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z25
管理番号 1216322 
審判番号 取消2008-301312 
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-10-10 
確定日 2010-04-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4397234号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4397234号商標(以下「本件商標」という。)は、「INTEL」の文字と「インテル」の文字を二段に横書きしてなり、平成10年7月7日に登録出願、第25類「履物」を指定商品として、平成12年7月7日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 株式会社カレックス等の使用に係る商標について
株式会社カレックス(以下「カレックス」という。)及び株式会社サイガファーマ(以下「サイガファーマ」という。)の使用に係る商標及びその略記号について、被請求人の主張にならい、以下のとおりとする。
1 カレックスの使用
(1)「インテルスーパーガードレディース」(乙第1号証ないし乙第5号証、以下「使用商標A-1」という。)
(2)「インテルスーパーガードメンズ」(乙第1号証ないし乙第5号証、以下「使用商標A-2」という。)
(3)「インテルスーパーガード 大人 BR」(乙第7号証、以下「使用商標A-3」という。)
(4)「インテルスーパーガード 大人 BK」(乙第7号証、以下「使用商標A-4」という。)
(5)「インテル エコ抗菌」(乙第5号証、以下「使用商標B-1」という。)
(6)「インテル・エコ抗菌スリッパ PUR」(乙第6号証、以下「使用商標B-2」という。)
2 サイガファーマの使用
(1)「インテルエコ抗菌スリッパ」(乙第10号証、以下「使用商標C-1」という。)
(2)「インテルエコ抗菌スリッパ」(乙第11号証、以下「使用商標C-2」という。)
(3)「インテルエコ抗菌スリッパ ベージュ」(乙第13号証、以下「使用商標C-3」という。)
(4)「インテルエコ抗菌スリッパ パープル」(乙第15号証、以下「使用商標C-4」という。)
(5)「インテルエコ抗菌スリッパ ピンク」(乙第16号証、以下「使用商標C-5」という。)
(6)「インテルスーパーガード抗菌スリッパ」(乙第10号証、以下「使用商標D-1」という。)
(7)「インテルスーパーガード抗菌スリッパ」(乙第11号証、以下「使用商標D-2」という。)
(8)「インテルスーパーガード 抗菌スリッパレディースピンク」(乙第14号証、以下「使用商標D-3」という。)
(9)「インテルスーパーガード抗菌スリッパ ブラック」(乙第17号証、以下「使用商標D-4」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証の1ないし甲第4号証の2を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証の1ないし乙第1号証の3における標章の使用時期について
乙第1号証の1ないし乙第1号証の3は、カレックスのホームページであるところ、該ホームページの内容からは、品番・サイズ・価格等の商品情報と商品写真並びに使用商標A-1、A-2は確認できるものの、これらの内容が、本件審判の請求の登録日前に展示・頒布若しくは電磁的方法により提供されたかについては不明である。
この点、被請求人は、該ホームページにおける品番の記載と、乙第2号証ないし乙第5号証(カタログ)における品番の記載の一致をもって、これらのカタログの発行年度と思しき2006年から2008年の間に、該ホームページが電磁的方法により提供等されていたことを示したものと推察するが、ホームページの記載内容の変更は、ホームページの管理者であればいつでも容易に行うことができ、また、該ホームページ右下隅に記載の平成21年1月13日に、これらの資料がプリントアウトされたことにかんがみれば、提出された証拠資料のみでは、当該日付以前に、乙第1号証の1ないし乙第1号証の3と同一の内容をもって、該ホームページが公衆に閲覧可能であったか否かは全く不明である。
また、乙第1号証の1には、「Copyright2004-2007CAREX,INC.ALL Rights Reserved」の表示が認められるが、これは、著作権の所在を示す表示であり、該表示をもって、乙第1号証の1が、本件審判の請求の登録日前3年以内(以下「本件期間内」という。)に頒布等されていたことの証明とはならない。
よって、これらの証拠は、本件期間内に日本国内において、本件商標が「履物」について使用されていたことを示す証拠とはならない。
(2)乙第2号証ないし乙第5号証について
ア 標章の使用時期
乙第2号証ないし乙第5号証(カタログ)は、発行年度と思しき、2006、2007及び2008の数字が確認できるが、その頒布等の方法、場所及び数量は一切不明である。
したがって、当該証拠の提出のみでは、これらのカタログが、2006年度、2007年度及び2008年度に頒布等されたかについては明らかではなく、本件期間内に日本国内において、本件商標を付して展示され、若しくは頒布され、又は該カタログを内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供されたものであるとは到底認められない。
イ 標章の使用態様と商品との関係
乙第2号証ないし乙第5号証に記載の表示は、使用商標A-1、A-2及びB-1であるところ、使用商標A-1及びA-2は、本件商標と商標法第50条第1項に規定の「社会通念上同一と認められる商標」には該当しない。
被請求人は、「スーパー」、「ガード」、「レディース」及び「メンズ」それぞれの原語上の意味合いを述べ、これらの表示は、「履物」の品質を表示するものであり自他商品識別力を有しないことから、これらの部分を省略して、単に「インテル」の称呼を生じる場合もある旨主張する。
しかしながら、これらカタログに接する需要者・取引者は、一連に配された当該文字列の構成より、使用商標A-1及びA-2全体を認識し取引にあたることが自然である。また、これらの表示が冗長であることを考慮しても、需要者・取引者は、せいぜい「女性用」及び「男性用」を意味する「レディース」及び「メンズ」の部分を省略し、当該文字の構成から、一連一気に認識される「インテルスーパーガード」と呼称して取引にあたると考えることが妥当である。かかる理は、上記の表示の構成中「スーパーガード」の文字は、「履物」の品質等を具体的・端的に表示したものではないことから、自他商品識別力を有する可能性のある表示であることからも理由がある。また、乙第6号証ないし乙第9号証(納品書及び得意先台帳等)においても、「インテル」の表示は単独では使用されておらず、カレックスは、自己の提供する「スリッパ」について「インテルスーパーガード」及び「インテル・エコ抗菌スリッパ」一連の態様を商標として使用していることは明らかである。
さらに、乙第2号証ないし乙第5号証における「インテル」の表示は、商品の説明的な表示である「スーパー」、「ガード」、「レディース」、「メンズ」及び「エコ抗菌」とともに、一体的な構成をもって用いられ、さらにその下方に商品の色・サイズ・入数・上代・素材が表記されている。該カタログに接する需要者・取引者の観点からすれば、これら全体を一見して、商品の品質等を示す説明的な記載と把握することが通常であり、「インテル」の文字自体に自他商品識別力が認められるとしても、該カタログの構成においては、これらの自他商品識別力を有しない文字列に埋没する「インテル」の表示が商標として把握されることはない。
以上より、乙第2号証ないし乙第5号証に記載される使用商標A-1及びA-2並びにこれらより「レディース」、「メンズ」を省略した「インテルスーパーガード」の文字は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標ではなく、また、該カタログには、「インテル」が商標として認識される態様で使用されているとは認められない。
ウ よって、これらの証拠は、本件期間内に日本国内において、本件商標が「履物」について使用されていたことを示す証拠とはならない。
(3)乙第6号証ないし乙第9号証について
ア 商品の発注と商品の購入時期
被請求人は、カタログと乙第6号証ないし乙第9号証(取引書類)の品番のー致をもって、本件期間内における本件商標の「履物」への使用の立証を主張する。
しかしながら、乙第6号証ないし乙第9号証は、本件審判の請求の登録日である平成20年10月28日(審決注:「平成20年10月24日」の記載は誤記と認める。)の2ヶ月前にあたる平成20年8月における書類に限られており、被請求人が本件商標の使用を立証するために提出するその他の乙号証全体に記される年度・日付を示すと思しき各数列との関係からは、平成20年8月における取引書類のみを提出する意図が不明である。
仮に乙第2号証ないし乙第5号証が2006年から頒布されているのであれば、少なくとも、本件期間内である当該年度からの第三者との取引関係を示す証拠を提出することが通常である。この点、被請求人は、カタログの発行時期と対応した取引書類のそれぞれを証拠として提出してはおらず、平成20年度(2008年度)8月期のみの取引書類を提出する。また、商標権者が、実際にカタログを頒布し営業活動を行っているのであれば、サイガファーマの1社のみならず、他の企業との取引関係をも有するとも考えられるが、本件審判で提出された取引書類は、サイガファーマの1社のみに言及するにとどまる点についても疑問を抱かざるを得ない。
このような提出証拠から考察すれば、乙第6号証ないし乙第9号証は、本件審判により本件商標の登録の取消しを免れるためだけに作成・提出されたものであるとの強い疑念を抱かざるを得ず、本件商標の使用を客観的に確定し、証明し得る資料でないことは明らかである。なお、乙第8号証(取引台帳)について、紙面左上隅に、作成日付として、本件審判の請求の登録日後である「09/01/07」と記載されていることも、該取引台帳の証拠性に疑念を抱く一因である。
駆け込み使用
仮に乙第6号証ないし乙第9号証に示される取引関係が存在したとしても、これらは、本件審判の請求日(平成20年10月10日)前3ヶ月から請求の登録日までの間に行われた取引における本件商標の使用であり、当該使用は、商標権者が本件審判の請求をされることを知った後の使用に該当する(商標法第50条第3項)。以下、商標権者が本件審判の請求がされることを知ったことについて述べる。
商標権者の一人である株式会社パンジー(以下「パンジー」という。)と代表者を共通にする同社の国内及び中国法人である株式会社アペックス及びチャイナアペックスと請求人は、中国での商標登録「Pansyintel」(登録第1130540号)について、取消審判事件の当事者となっており(甲第1号証ないし甲第4号証)、かかる取消審判事件は、平成20年5月6日に請求され現在も係属している。
また、請求人と本件商標の商標権者との間には、過去に本件商標の登録に関して異議申立事件において争った経緯も存在する(異議2000-91071)。
このような近年における中国での状況及び過去の経緯、並びに、本件商標の構成「INTEL/インテル」からして、被請求人が本件審判の請求を容易に予見できたことは明らかであり、乙第6号証ないし乙第9号証に示される取引関係における本件商標の使用は、本件審判の請求をされることを知った後の使用と同一視できるものである。また、中国における取消審判の申請日(平成20年5月6日)から、当該審判事件に関する通知を被請求人が受領するのに要する期間にかんがみても、平成20年8月ころに、中国での請求人からの審判請求を知り、我が国における同様の審判の請求を察知した被請求人が、乙第6号証ないし乙第9号証に示される取引関係を持ち、また、上記取引書類の証拠性とも相俟って、当該取引書類における使用は、本件審判の請求による取消しを免れるための使用であることを容易に推察させるものである。
以上より、これらの証拠は、本件期間内に日本国内において、本件商標が「履物」について使用されていたことを示す証拠とはならない。
(4)乙第10号証ないし乙第17号証について
通常使用権の黙示の許諾
サイガファーマが取り扱う商品は、カレックスより購入したものであり、当該商品について、商標権者が付した商標をそのまま使用することは、商品の出所・品質を指標する商標の機能からして当然であって、かかる取引の状況から、本件商標の使用についてサイガファーマヘの黙示の許諾があったとはいえない。
確かに、通常使用権は、専用使用権とは異なり、当事者間の契約に基づいて発生する債権であるから、当事者間においては通常使用権の設定登録の有無を必要とせず、契約成立の時からその効力が発生するものであり、その設定契約は書面であることをも必要とするものでもない。
しかし、カレックスとサイガファーマの関係は、卸売り業者と小売業者の如き関係であり、これは通常の商品取引における一流通形態にすぎない。このような商品取引において当然に生じる関係性において黙示の許諾が成立するとすれば、商品の流通過程に存在する中間業者やエンドユーザーなど全ての購入者が、取引の対象となる商品について商標登録を有する商品の提供者の通常使用権者となる。したがって、サイガファーマをカレックスの通常使用権者とすることは、通常使用権設定の有効性を黙示的許諾説により不当に拡大解釈するものであって妥当ではない。
よって、本件商標の使用について、サイガファーマヘの黙示の許諾があったとは認められず、サイガファーマは本件商標の通常使用権者には該当しない。
以上より、乙第10号証ないし乙第17号証は、本件期間内に日本国内において、本件商標が「履物」について、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者により使用されていたことを示す証拠とはならない。
イ 乙第10号証の1ないし乙第10号証の3における標章の使用時期について
乙第10号証の1ないし乙第10号証の3(サイガファーマのホームページ)の内容からは、サイガファーマの会社概要、商品の品番・サイズ・価格等の商品情報と商品写真並びに使用商標C-1及びC-2は確認できるものの、これらの内容が、本件期間内に展示・頒布若しくは電磁的方法により提供されたかについては不明である。上述のとおり、ホームページの記載内容の変更は、ホームページの管理者であればいつでも容易に行うことができ、該ホームページ右下隅に記載の平成21年1月13日にこれらの資料がプリントアウトされたことにかんがみれば、当該日付以前に、乙第10号証の1ないし乙第10号証の3と同一の内容をもって、当該ホームページが公衆に閲覧可能であったか否かは全くをもって不明である。
よって、これらの証拠は、本件期間内に日本国内において、本件商標が「履物」について使用されていたことを示す証拠とはならない。
ウ 乙第11号証及び乙第12号証における標章の使用時期について
乙第11号証(サイガファーマのカタログ)は、本件商標を付して展示し、若しくは頒布し、又は該商品ホームページを内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供された時期が一切確認できない。
この点、被請求人は、該カタログ内における「1976,1999,2008 SANRIO CO.,LTD APPROVAL NO.S8021815」の表示をもって、頒布時期を主張するが、これは、著作権の所在を示す表示であり、当該表示をもって、乙第11号証が、本件期間内に頒布等されていたことの証明とはならないことは明らかである。
また、被請求人は、該カタログを制作したとする東京カタログ株式会社(以下「東京カタログ」という。)が発行する請求書等(乙第12号証)の発行日をもって、頒布時期を平成20年6月ころと主張する。しかしながら、乙第12号証に記載の「スリッパカタログ(改訂)」が乙第11号証であることを示す直接的な証拠は提出されておらず、乙第12号証に記載の「スリッパカタログ(改訂)」が乙第11号証のカタログであることは何ら立証されていない。
よって、当該書証の提出のみでは、乙第11号証の頒布時期の証明は不十分であり、これらの証拠は、本件期間内に日本国内において、本件商標が「履物」について使用されていたことを示す証拠とはならない。
エ 乙第13号証ないし乙第17号証における標章の使用態様と商品との関係について
サイガファーマの納品書(乙第13号証ないし乙第17号証)に記載された表示は、「インテルエコ抗菌スリッパ」及び「インテルスーパーガード抗菌スリッパ」のそれぞれに商品の色及び男性用・女性用を示す表記を組み合わせたものであり、これらの表示と本件商標とは、商標法第50条第1項に規定される「社会通念上同一と認められる商標」には該当しない。
被請求人は、「スーパー」、「ガード」、「抗菌」、「スリッパ」、「レディス」、「ピンク」及び「ブラック」は自他商品識別力を欠く表示であるから、これらの部分を省略して、単に「インテル」の称呼を生じる場合もある旨主張し、また、該納品書の品名を記す枠内に一体的に記載される「インテルエコ抗菌スリッパ」及び「インテルスーパーガード抗菌スリッパ」の表示について、「エコ抗菌スリッパ」及び「スーパーガード抗菌スリッパ」部分の自他商品識別力の欠如を、これらの表示が原語上有する意味合いのみから主張するが、当該表示の個別具体的な使用態様に基づく考察を欠くものであり妥当ではない。
この点、乙第13号証ないし乙第17号証においては、「インテルエコ抗菌スリッパ」と「エコ抗菌子供スリッパ」とは、異なる商品を特定する表示として明記されており、かかる内容から考察すれば、該納品書において使用される「インテル」以外の文字列について一概に自他商品識別力を否定することは妥当ではない。さらに、被請求人が主張するように、「インテルエコ抗菌スリッパ」及び「インテルスーパーガード抗菌スリッパ」の表示から、「インテル」部分のみを分離して把握する特段の理由はなく、これらの表示が冗長であることを考慮しても、需要者・取引者は、せいぜいこれらの表示の末尾に組み合わされる「抗菌スリッパ」の文字部分を省略し、「インテルエコ」及び「インテルスーパーガード」と認識・呼称して取引にあたると考えることが妥当である。かかる理は、上記の表示の構成中「エコ」及び「スーパーガード」の文字は、「履物」の品質等を具体的・端的に表示したものではなく、自他商品識別力を有する可能性のある表示であることからも理由がある。また、乙第13号証ないし乙第17号証においては、「インテル」の表示は単独では使用されていない。したがって、乙第13号証ないし乙第17号証において把握できる表示は、「インテルエコ」及び「インテルスーパーガード」であり、本件商標と社会通念上同一と認められる商標には該当しない。
よって、これらの証拠は、本件期間内に日本国内において、本件商標が「履物」について使用されていたことを示す証拠とはならない。
(5)むすび
以上述べたとおり、乙第1号証ないし乙第17号証は、商標権者及び通常使用権者が本件商標をその指定商品について、本件審判の請求の登録日前3年以内に、日本国内において使用している事実を示すことができないことは明らかである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証の1ないし乙第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 使用の事実
本件商標は、本件期間内に日本国内において、商標権者及び通常使用権者によりその指定商品に使用されている。以下その事実を立証する。
(1)商標権者による使用
ア 乙第1号証の1ないし乙第9号証について
(ア)乙第1号証の1ないし乙第1号証の3は、本件商標の商標権者であるカレックスのホームページ(写し)である。乙第1号証の3の左下段には、品番を表す「1800」の右横に使用商標A-1が表示され、これらの表示の下に、ブルー、ピンクのスリッパの写真及びサイズ、素材、カラー、価格等の商品情報が表示されている。また、乙第1号証の3の右下段には、品番を表す「1800」の右横に使用商標A-2が表示され、これらの表示の下に、ブラック、ブラウンのスリッパの写真及びサイズ、素材、カラー、価格等の商品情報が表示されている。
(イ)乙第2号証は、カレックスが作成・頒布した「2006.SPRING & SUMMER SLIPPER CATALOG」(写し)である。乙第2号証には、カレックスの社名及び所在地は明記されていないが、その表紙下部には、乙第1号証の1の上部に表示されたカレックスの英文表記「CAREX INC.」の文字や、乙第1号証の2に表示されたカレックスの電話番号及びFAX番号、乙第1号証の1の下部に表示されたカレックスの電子メールアドレス、URLが表示されるなど、乙第2号証がカレックスのカタログであることは明らかである(後述の乙第3号証ないし乙第5号証も同じ。)。
乙第2号証の21頁上段左には、色違いのスリッパ2組の写真、「1800」(品番)と共に、使用商標A-1の表示がある。また、同右には、色違いのスリッパ2組の写真、「1800」(品番)と共に、使用商標A-2の表示がある。
(ウ)乙第3号証は、カレックスが作成・頒布した「2006.Autumn & Winter SLIPPER CATALOG」(写し)である。
乙第3号証の24頁中段左には、色違いのスリッパ2組の写真、「1800」(品番)と共に、使用商標A-1の表示がある。また、同右には、色違いのスリッパ2組の写真、「1800」(品番)と共に、使用商標A-2の表示がある。
(エ)乙第4号証は、カレックスが作成・頒布した「2007.Spring & Summer SLIPPER CATALOG」(写し)である。
乙第4号証の24頁下段左には、色違いのスリッパ2組の写真、「1800」(品番)と共に、使用商標A-1の表示がある。また、同右には、色違いのスリッパ2組の写真、「1800」(品番)と共に、使用商標A-2の表示がある。
(オ)乙第5号証は、カレックスが作成・頒布した「2008 AUTUMN & WINTER SLIPPER CATALOG」(写し)である。
乙第5号証の31頁下段には、その左側に色違いのスリッパ4組の写真が表示され、その右側に「87200」(品番)、使用商標B-1、素材(エコ ポリビニール 抗菌剤 バクテキラー使用)等の表示がある。
乙第5号証の32頁上段左には、色違いのスリッパ2組の写真、「1800」(品番)と共に、使用商標A-1の表示があり、また、同右には、色違いのスリッパ2組の写真、「1800」(品番)と共に、使用商標A-2の表示がある。
(カ)乙第6号証は、カレックスがサイガファーマ(所在地:東京都新宿区坂町26VIP第2四谷ビル201)に宛てた2008年8月5日付の納品書(控・写し)であって、商品名の欄には、品番を表す「87200」の数字と共に、使用商標B-2が表示されている。この品番「87200」は、乙第5号証の31頁に表示された使用商標B-1に係るスリッパの品番と一致している。
乙第7号証は、カレックスがサイガファーマに宛てた2008年8月22日付の納品書(控・写し)であって、商品名の欄には、品番を表す「1800」の数字と共に、使用商標A-3、A-4が表示されている。上記の品番「1800」は、乙第2号証ないし乙第5号証に表示された使用商標A-1、A-2に係るスリッパの品番と一致している。
乙第8号証は、カレックスが作成したサイガファーマとの取引に係る2008年8月度の得意先台帳(写し)であって、乙第6号証及び乙第7号証の納品書(控)に対応する伝票No.8730、8746の欄に、各納品書(控)の内容と合致する品番、商品名、数量等が表示されている。
乙第9号証は、カレックスがサイガファーマに宛てた2008年8月31日付の請求明細書(控・写し)であって、乙第6号証及び乙第7号証の納品書(控)に対応する伝票No.8730、8746の欄に、各納品書(控)の内容と合致する商品名、数量等が表示されている。
なお、乙第6号証ないし乙第9号証の単価、金額等の欄は、部分的にマスキングしてある。
イ 使用商標について
(ア)本件商標は、その構成文字に相応して、「インテル」の称呼を生じ、また、観念については、特定の意味合いを有しない造語として把握、認識されるものである。
(イ)使用商標A-1ないしA-4は、それぞれ「インテルスーパーガードレディース」、「インテルスーパーガードメンズ」、「インテルスーパーガード 大人 BR」、「インテルスーパーガード 大人 BK」の文字よりなる。使用商標A-1ないしA-4中、「スーパー」の文字は「超、優れた」等の意味を有する語として知られ、「ガード」の文字は「守る、保護する」等の意味を有する語として知られ、また、使用商標A-1、A-2中、「レディース」、「メンズ」の文字は、それぞれ「女性用」「男性用」を意味する語として知られており、いずれの語も「履物」の品質を表示するものとして普通に使用されているため、自他商品識別力を欠いている。なお、乙第2号証ないし乙第4号証に、使用商標A-1、A-2に係るスリッパの素材として「カネボウ抗菌剤(バクテキラー)練込合皮レザー」と表示されていることからも判るように、当該スリッパは抗菌性を有するものである。したがって、需要者は、使用商標A-1、A-2中「スーパーガード」の文字部分から、「スリッパや足を菌から強固に守る」といった意味を直感する。また、使用商標A-3、A-4中、「大人」の文字は、商品が「大人用」であることを表示する語として普通に採用され、「BR」、「BK」の文字は、「ブルー」、「ブラック」の略語として普通に採用されており、これらの文字も自他商品識別力を有しない。一方、「インテル」の文字は、特定の意味合いを有しない造語であって、自他商品識別機能を発揮するものである。そのため、使用商標A-1ないしA-4からは、「スーパーガードレディース」、「スーパーガードメンズ」、「スーパーガード 大人 BR」、「スーパーガード 大人 BK」の部分を省略して、単に「インテル」の称呼を生じる場合もある。
また、使用商標B-1、B-2は、「インテル エコ抗菌」、「インテル・エコ抗菌スリッパ PUR」の文字よりなるが、これらの中の「エコ」の文字は、「環境に優しい」等の意味を有する語として、また、「抗菌」の文字は、「細菌の増殖を抑えること」を意味する語として知られ、いずれの語も「履物」の品質を表示するものとして普通に使用されており、さらに、使用商標B-2中の「スリッパ」の文字は商品の普通名称であり、「PUR」の文字は、パープルの略語として普通に用いられているものである。つまり、「エコ」、「抗菌」、「スリッパ」、「PUR」の文字は、いずれも自他商品識別機能を発揮し得ないものである。そのため、使用商標B-1、B-2からは、「エコ抗菌」、「エコ抗菌スリッパ PUR」の部分を省略して、単に「インテル」の称呼を生じる場合もある。
(ウ)よって、使用商標A-1ないしA-4並びに使用商標B-1及びB-2は、「インテル」の称呼を共通にし、かつ、観念の変動を伴わないことから、いずれも本件商標と社会通念上同一の商標であるといえる。
ウ 以上から明らかなように、商標権者は、本件期間内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標をスリッパに使用している。
(2)通常使用権者による使用
ア 乙第10号証の1ないし乙第17号証について
(ア)乙第10号証の1ないし乙第10号証の3は、サイガファーマのホームページ(写し)である。第10号証の2(会社案内ページ)に記載のとおり、サイガファーマは、医療用医薬品、一般医薬品、健康食品、医療用品の販売を事業とする会社であって、取扱い商品中には、病院・医院内で使用される抗菌性を有するスリッパが含まれる。
乙第10号証の3の1頁上段には、使用商標C-1の表示があり、この下に、色違いのスリッパ4組の写真が表示され、写真の右側には、機能、商品番号、色、梱包入数、サイズ等の商品情報が表示され、また、同下段には、使用商標D-1の表示があり、この表示の下に色違いのスリッパ4組の写真が表示され、写真の右側には機能説明があり、さらに写真の下側には商品番号、色、サイズ、梱包入数等の商品情報が表示されている。
(イ)乙第11号証は、サイガファーマが頒布した2つ折りのスリッパカタログ(写し)である。乙第11号証の表紙には、その上部に、使用商標C-2と大きく表示されており、「インテル」は白い縁取りを有する緑の文字よりなり、「エコ抗菌スリッパ」は白い縁取りを有する赤の文字よりなる。表紙の中央部には、色違いのスリッパ4組の写真が表示され、また、写真の下側には、機能、商品番号、色、梱包入数等の商品情報が表示されている。
乙第11号証の見開き左側には、その上部に、使用商標D-2が大きく表示され、「インテル」は白い縁取りを有する緑の文字よりなり、「スーパーガード抗菌スリッパ」は白い縁取りを有する赤の文字よりなる。使用商標D-2の下側には、色違いのスリッパ4組の写真が表示され、また、写真の下側には、機能、商品番号、色、梱包入数、抗菌スリッパの特長等の商品情報が表示されている。
乙第11号証の裏表紙の下部には、サイガファーマの社名、所在地、電話番号、FAX番号、ホームページのURL、電子メールアドレスが表示されている。
なお、乙第11号証には、作成・発行年月日は表示されていないが、見開き右側の下部に「1976,1999,2008 SANRIO C0.,LTD APPROVAL NO.S8021815」と表示されている。
(ウ)乙第12号証は、東京カタログがサイガファーマに宛てた平成20年6月11日付の請求明細書(写し)及び請求書(総括表・写し)であって、請求明細書の品名の欄には「スリッパカタログ(改訂)」との表示がある。よって、乙第11号証のカタログは、平成20年6月ころにサイガファーマによって頒布されたものであることがわかる。
(エ)乙第13号証は、サイガファーマが株式会社スマートプラクティスジャパンに宛てた平成20年8月6日付の納品書(写し)であって、品名の欄には使用商標C-3が表示されている。
(オ)乙第14号証は、サイガファーマが株式会社卜ーヨーに宛てた平成20年10月3日付の納品書(写し)であって、品名の欄には、使用商標D-3が表示されている。
(カ)乙第15号証は、サイガファーマがフィード株式会社に宛てた平成20年8月8日付の納品書(写し)であって、品名の1、2の欄には、使用商標C-4、「〃 ベージュ」と表示されている。
(キ)乙第16号証は、サイガファーマが大阪府保険医協同組合に宛てた平成20年8月6日付の納品書(写し)であって、品名の1、2の欄には、使用商標C-5、「〃 グリーン」と表示されている。
(ク)乙第17号証は、サイガファーマが大阪府保険医協同組合に宛てた平成20年10月17日付の納品書(写し)であって、品名の欄には、使用商標D-4が表示されている。
イ 使用商標について
使用商標C-1ないしC-5は、「インテルエコ抗菌スリッパ」、「インテルエコ抗菌スリッパ ベージュ」、「インテルエコ抗菌スリッパ パープル」、「インテルエコ抗菌スリッパ ピンク」の文字よりなるが、「エコ」、「抗菌」、「スリッパ」の文字が自他商品識別力を欠くのは前述のとおりであり、また、「ベージュ」、「パープル」、「ピンク」の文字も、商品の色彩を表示するものとして普通に使用されているから、自他商品識別機能を発揮し得ない部分である。加えて、使用商標C-2は、「インテル」の文字と「エコ抗菌スリッパ」の文字とが明確に色分けされている。よって、使用商標C-1ないしC-5からは、「エコ抗菌スリッパ」等の部分を省略して、単に「インテル」の称呼を生じる場合もある。
また、使用商標D-1ないしD-4は、「インテルスーパーガード抗菌スリッパ」、「インテルスーパーガード抗菌スリッパ レディス ピンク」、「インテルスーパーガード抗菌スリッパ ブラック」の文字よりなるが、「スーパー」、「ガード」、「抗菌」、「スリッパ」、「レディス」、「ピンク」、「ブラック」の文字は、前述のとおり、いずれも自他商品識別力を欠いている。加えて、使用商標D-2は、「インテル」の文字と「スーパーガード抗菌スリッパ」の文字とが明確に色分けされている。そのため、使用商標D-1ないしD-4からは、「スーパーガード抗菌スリッパ」等の部分を省略して、単に「インテル」の称呼を生じる場合もある。
よって、使用商標C-1ないしC-5及び使用商標D-1ないしD-4は、「インテル」の称呼を共通にし、かつ、観念の変動を伴わないことから、いずれも本件商標と社会通念上同一の商標であるといえる。
ウ サイガファーマが通常使用権者であることについて
乙第1号証の3ないし乙第5号証において、使用商標A-1又はA-2に係るスリッパの踵部には、二重同心円の中にプラスの図形と「抗菌」等の文字とが配されてなる抗菌マークが表示されている。また、乙第5号証において、使用商標B-1に係るスリッパの踵部には、二重同心円の中にプラスの図形と「Eco」「抗菌」等の文字とが配されてなるエコ抗菌マークが表示されている。上述した抗菌マーク及びエコ抗菌マークは、カレックスのオリジナルであって、これらのマークの表示によってカレックス製のスリッパを判別することが可能である。
乙第10号証の3及び乙第11号証には、カレックスオリジナルの抗菌マーク及びエコ抗菌マークが表示されている。したがって、乙第10号証の3及び乙第11号証の使用商標C-1、C-2、D-1、D-2に係るスリッパは、いずれもカレックスから購入したものであることがわかる。
カレックスは、使用商標A-1ないしA-4及び使用商標B-1、B-2に係るスリッパを、サイガファーマに対して集中的に販売しており、また、同スリッパをサイガファーマが使用商標C-1、C-2、D-1、D-2等を使用して販売することを予め承知している。つまり、サイガファーマは、本件商標をスリッパに使用することについてカレックスから黙示的に許諾されており、したがって、サイガファーマは、本件商標の通常使用権者に該当するといえる。
したがって、通常使用権者であるサイガファーマは、本件期間内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標を「スリッパ」に使用していた。
2 むすび
上述の次第で、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に該当するものではないから、その登録を取り消されるべきものではない。

第5 当審の判断
1 乙第1号証、乙第5号証、乙第6号証、乙第8号証及び乙第9号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証の1ないし乙第1号証の3は、いずれもカレックスのホームページと認められるところ、カレックスの主要業務の一つとして、「スリッパ・サンダル・ファッション雑貨 製造卸 輸入販売」の記載がある(乙第1号証の2)。
(2)乙第5号証は、その表紙に「2008 AUTUMN & WINTER SLIPPER CATALOG」と表示されたカレックスの取扱いに係る商品「スリッパ」が掲載されたカタログ(写し)であるところ、その31頁には、「地球に優しい エコスリッパ/多様な環境負担に配慮したこだわりのエコロジースリッパです。」との見出しのもと、「エコスリッパの特徴」として、「『アキレスエコサポートPV』を使用し焼却時に塩酸ガスを従来の塩化ビニールに比べ約80%カットしました。」、「焼却時に排出する二酸化炭素を従来商品より減少させ地球温暖化を防止します。」と記載され、下段には、「87200:インテル エコ抗菌」の表示が付されたピンク、パープル、グリーン、ベージュのスリッパ4組の写真が掲載され、各色のスリッパの商品情報を記載した表の下には、「素材:エコ ポリビニール/抗菌剤 バクテキラー使用」と記載されている。
(3)乙第6号証は、カレックスから東京都新宿区に所在のサイガファーマに宛てた、伝票番号を「8730」とする2008年8月5日付けの納品書(控・写し)であるところ、その「商品名」の欄には「(87200)インテル・エコ抗菌スリッパ PUR」、「数量」欄には「200.00」、「単位」の欄には「足」と記載されている。
(4)乙第8号証は、「09/01/07 作成」に係るカレックスの「得意先台帳」(写し)であるところ、「得意先名」欄には「株式会社サイガファーマ」、「対象年月」欄には「08年8月度」と記載され、日付欄の「08/08/05」には、「請求伝票No.」として「8730」と、「コード 商品名」及び「数量」として、「87200/インテル・エコ抗菌スリッパ PUR/200.00足」と記載されている。
(5)乙第9号証は、カレックスからサイガファーマに宛てた2008年8月31日付けの請求明細書(控・写し)であるところ、日付欄の「08/08/05」には、「伝票番号」として「8730」と、「商品名」及び「数量」として、「インテル・エコ抗菌スリッパ PUR/200.00足」と記載されている。
2 前記1で認定した事実によれば、本件商標の商標権者の一人であるカレックスは、「2008 AUTUMN & WINTER SLIPPER CATALOG」と題するカタログを作成し、同カタログ31頁に、品番を「87200」とする「インテル エコ抗菌」(使用商標B-1)を表示したスリッパを掲載し、広告をしたと認めることができる。
そして、カレックスは、上記品番を「87200」とするスリッパ200足を、「(87200)インテル・エコ抗菌スリッパ PUR」(使用商標B-2)と納品書に表示して、本件期間内である2008年8月5日に、サイガファーマに納品したと判断するのが相当である。
また、上記カタログは、その作成日は明記されていないが、その表題が「2008 AUTUMN & WINTER SLIPPER CATALOG」であること及び品番を「87200」とするスリッパ200足が2008年8月5日に、サイガファーマに納品されたことからみれば、上記カタログは、少なくとも、本件審判の請求の登録日である平成20(2008)年10月28日前には既に作成され、本件期間内に顧客に頒布されたものと推認することができる。
3 使用商標B-1が本件商標と社会通念上同一と認められる商標であるか否かについて
使用商標B-1は、「インテル エコ抗菌」の文字を書してなるものであるところ、該文字は、中央に一文字分のスペースを有していることから、視覚上、「インテル」の文字部分と「エコ抗菌」の文字部分とに分離して看取されるものである。しかも、使用商標B-1が使用されている商品には、「地球に優しい エコスリッパ/多様な環境負担に配慮したこだわりのエコロジースリッパです。」など、地球環境に優しい商品であることをアピールする文言や「素材:エコ ポリビニール/抗菌剤 バクテキラー使用」などの文字が記載されているところからすると、使用商標B-1は、その構成中の「エコ抗菌」の文字部分が商品の品質を表したものと理解され、「インテル」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を有するというべきである。
他方、本件商標は、「INTEL」と「インテル」の文字を上下二段に書してなるところ、「INTEL」が意味を有しない造語であったとしても、「インテル」のみの称呼を生ずるものであることからすれば、「INTEL」又は「インテル」のいずれかの文字の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用とみるのが自然である。
そして、使用商標B-1における「インテル」の文字部分は、本件商標中の片仮名文字部分の使用であって、使用商標B-1は、本件商標と社会通念上同一の商標というべきである。
また、乙第6号証(納品書(控))、乙第8号証(得意先台帳)、乙第9号証(請求明細書(控))に記載された「インテル・エコ抗菌スリッパ PUR」(使用商標B-2)は、品番「87200」からすれば、使用商標B-1を付した商品と同一の商品と認められ、そのうちの「スリッパ」の文字部分は、商品の普通名称を、また、「PUR」の文字部分は、商品の色彩が「パープル」であることを表示するものとして理解されるから、使用商標B-2も、使用商標B-1と同様に理由により、本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということができる。
4 以上によれば、カレックスは、本件期間内に、請求に係る指定商品中の「スリッパ」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標をカタログに表示して、広告、頒布をし、さらに、該商品を市場において取引に資したと判断するのが相当である。そして、カレックスがその発行に係るカタログに本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付し、これを頒布した行為は、商標法第2条第3項第8号に規定する「商品に関する広告、価格表、若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布する行為」に該当するものと認められる。
5 カレックスの使用における請求人の主張について
(1)請求人は、乙第1号証の1ないし乙第1号証の3について、その内容が本件審判の請求の登録日前に展示・頒布若しくは電磁的方法により提供されたかについては不明であるから、これらの証拠は、本件期間内に日本国内において、本件商標が「履物」について使用されていたことを示す証拠とはならない旨主張する。
確かに、乙第1号証の1ないし乙第1号証の3は、本件期間内に日本国内において、本件商標が「履物」について使用されていたことを示す証拠とはならず、カレックスがどのような業務を行っているのかを明確にするという程度のものである。
(2)請求人は、乙第5号証について、その頒布時期等が明らかではない旨を主張する。
しかしながら、前記2認定のとおり、乙第5号証は、その表題及び乙第6号証からみて、本件期間内に、その取引関係者に頒布されたとみるのが相当であるから、請求人の上記主張は理由がない。
(3)請求人は、使用商標B-1は、構成全体をもって取引に資されるものであるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標には当たらない旨及び取引書類においても、「インテル」の表示は単独で使用されておらず、「インテル・エコ抗菌スリッパ」として使用している旨主張する。
しかし、前記3認定のとおり、使用商標B-1中の「エコ抗菌」の文字は、商品の品質表示部分と理解され、「インテル」の文字部分が自他商品の識別機能を有するから、使用商標B-1は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができる。したがって、請求人の上記主張は理由がない。
そうとすれば、取引書類に、「インテル」の表示が単独で使用されていないことをもって、使用商標B-1の表示が一体のものであるとする請求人の上記主張も理由がない。
(4)請求人は、乙第6号証、乙第8号証及び乙第9号証について、本件審判の請求の登録日直前である平成20年8月のみの取引に関するものであり、また、カレックスが、実際にカタログを頒布し営業活動を行っているのであれば、サイガファーマの1社のみならず、他の企業との取引関係をも有するとも考えられるが、本件審判で提出された取引書類は、サイガファーマの1社のみにであるから、これらの証拠は、本件審判により本件商標の登録の取消しを免れるためだけに作成・提出されたものであるとの強い疑念を抱かざるを得ず、本件商標の使用を客観的に確定し、証明し得る資料でない旨主張する。
しかしながら、乙第6号証、乙第8号証及び乙第9号証における取引が本件審判の請求の登録日の約2ヶ月前の平成20年8月に関するものに限られていたとしても、商標法第50条第2項は、「前項の審判の請求があった場合においては、その審判の請求の登録前3年以内に・・」と規定しているのであるから、使用の事実を証明する証拠が、本件審判の請求の登録前約2ヶ月以内のものであってはならないと解すべき法律上の根拠は存在しない。また、一度でも期間内に使用したことを証明すればよいのであるから、請求人の上記主張は理由がない。
なお、請求人は、乙第8号証(得意先台帳)の左上隅に、本件審判の請求の登録日後である「09/01/07 作成」と記載されていることも、その証拠性に疑念を抱く一因である旨主張するが、得意先台帳の基となる乙第6号証に示す取引が本件期間内においてされたものである以上、得意先台帳の作成日が本件審判の請求の登録日後であったとしても、これにより前記認定が左右されるものではない。
したがって、請求人の上記主張はいずれも理由がない。
(5)請求人は、仮に乙第6号証、乙第8号証及び乙第9号証に示される取引関係が存在したとしても、これらは、商標法第50条第3項に規定する、いわゆる駆け込み使用に該当する旨主張し、その理由を以下のように述べる。
ア 商標権者の一人であるパンジーと代表者を共通にする同社の国内及び中国法人である株式会社アペックス及びチャイナアペックスと請求人は、中国での商標登録(Pansyintel)について、取消審判事件の当事者となっている。また、請求人と本件商標の商標権者との間には、本件商標の登録に関して異議申立事件において争った経緯も存在する(異議2000-91071)。このような状況及び本件商標の構成「INTEL/インテル」からして、被請求人が本件審判の請求を予見できたことは明らかであるから、上記取引書類における使用は、本件審判の請求による取り消しを免れるための使用であることを容易に推察させるものである。
イ 甲第1号証の1ないし甲第4号証の2によれば、本件商標の商標権者の一人であるパンジーは、その関連会社に中国法人を有する(代表者が共通することは認めることができない。)ところ、該中国法人の所有する中国国内の登録商標(図形と「Pansyintel」の文字を結合した構成よりなる。)について、不使用取消審判が請求され(請求人がだれであるかは証拠からは明らかではない。)、現在係属していることが認められ、また、職権による調査によれば、本件商標の登録について、本件審判の請求人より、登録異議の申立てがあったが、平成13年4月16日に登録を維持する旨の決定がされ、これが確定したことが認められる。
しかしながら、パンジーの関連会社である中国法人の有する登録商標に対し、不使用取消審判が請求され、これが現在、中国において係属中であるとしても、また、パンジーとカレックスがいずれも本件商標の商標権者の一人であることを考慮したとしても、上記中国における不使用取消審判の請求を、本件審判において、使用の事実を証明したカレックスと関連付けなければならない直接的な要因は見出すことはできない。さらに、本件商標に対してした請求人による登録異議の申立てについて、登録を維持する旨の決定がされた平成13年4月16日以降、本件審判を請求した平成20年10月10日まで、請求人は、本件商標の登録の有効性について、審判の請求等をするなどの法的な措置をとったとの事実を認めるに足る証拠の提出はなく、また、カレックスやパンジーに対し、そのような審判請求を行う旨の意思表示をしたという事実も見出せない。
そうすると、中国における不使用取消審判の請求、本件商標に対する登録異議の申立て等をもって、乙第6号証、乙第8号証及び乙第9号証に示す取引について、カレックスが本件審判の請求がされることを予見した後にされたものとみることができない。
してみれば、カレックスが本件審判の請求がされることを知っていたと推認することはできない。また、前記のとおり、取引書類における使用が、本件審判の請求による取り消しを免れるための使用であると認めるに足る証拠の提出はない。したがって、請求人の上記主張は理由がない。
6 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件期間内に日本国内において、少なくとも商標権者の一人であるカレックスが取消請求に係る指定商品中の「スリッパ」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-11-09 
結審通知日 2009-11-12 
審決日 2009-11-25 
出願番号 商願平10-58136 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梶原 良子加園 英明 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 瀧本 佐代子
小畑 恵一
登録日 2000-07-07 
登録番号 商標登録第4397234号(T4397234) 
商標の称呼 インテル 
代理人 渡辺 彰 
代理人 日比 紀彦 
代理人 渡辺 彰 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 松村 直都 
代理人 谷口 登 
代理人 岸本 瑛之助 
代理人 渡辺 彰 
代理人 松村 直都 
代理人 日比 紀彦 
代理人 前田 大輔 
代理人 岸本 瑛之助 
代理人 渡辺 彰 
代理人 中山 健一 
代理人 松村 直都 
代理人 岸本 瑛之助 
代理人 岸本 瑛之助 
代理人 日比 紀彦 
代理人 岸本 瑛之助 
代理人 日比 紀彦 
代理人 渡辺 彰 
代理人 渡辺 彰 
代理人 日比 紀彦 
代理人 岸本 瑛之助 
代理人 松村 直都 
代理人 松村 直都 
代理人 松村 直都 
代理人 中村 知公 
代理人 日比 紀彦 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ