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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない X09 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X09 |
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管理番号 | 1216301 |
審判番号 | 不服2008-26845 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-20 |
確定日 | 2010-04-14 |
事件の表示 | 商願2007-180拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 本願商標 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第9類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成19年1月5日に登録出願され、その後、指定商品については、当審における同20年12月24日付け手続補正書により、第9類「事業管理用のコンピューターソフトウエア,事業管理用のダウンロード可能なコンピューターソフトウエア」と補正されたものである。 第2 原査定の拒絶の理由(要旨) 原査定は、「本願商標は、空色の横長の長方形に『ERP5』の欧文字を白抜きしてなるところ、『ERP』の文字部分は、『財務会計や販売管理、生産管理、購買管理、在庫管理など、企業の基幹業務の情報を一元的に統合管理するシステム』又は『全社的業務管理、会社全体の経営資源の計画的な活用を図るコンピュータのソフトウェア』の意味合いのある英語『Enterprise Resourse Planning』の略語を、『5』の文字部分は、商品の企画、品番等を表す符号、記号の一類型である数字を連綴したものと認められるから、これをその指定商品中、「前記に照応する電子計算機用プログラム」に使用しても、需要者が何人の業務に係る商品かを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 第3 当審における証拠調べ通知 本件審判事件について、本願商標が商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、当審において職権に基づく証拠調べをした結果、下記の事実を発見したので、商標法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、証拠調べの結果を通知した。 記 1 「ERP」の文字について (1)「企業、もしくは顧客などをも含む企業間システム。これらを実現する、企業情報システムを提供するソフトウェアをERPパッケージという。特に知られたERPパッケージとしては、ドイツのSAP社の『R/3』や、米国オラクル社の『Oracle Applications』、日本のオービックビジネスコンサルタントの「奉行新ERP」などが知られている。」(株式会社技術評論社発行「2005-06年版 最新パソコン用語事典」) (2)「財務会計や販売管理、生産管理、購買管理、在庫管理など、企業の基幹業務の情報を一元的に統合管理するシステム。統合基幹業務システムとも呼ぶ。・・・ERPはこうした問題点を解消するために開発されたソフトである。」(日経BP社発行「日経パソコン用語事典2004年版」) (3)「全社的業務管理、会社全体の経営資源の計画的な活用を図るための手法・概念で、最新のITを活用し、受注から出荷までの一連のサプライ・チェーンと会計、人事管理を含めた基幹業務を支援する統合情報システムである(アメリカ生産管理協会の定義)。」(自由国民社発行「現代用語の基礎知識」2009年1月1日発行) (4)「全社的な業務管理.企業資源管理.企業の各部門の基幹業務をコンピュータで統合処理する方式.」(株式会社集英社発行「imidas2007」) (5)「企業の基幹業務の全領域にわたって経営資源を統合的に管理し、経営の効率化を図ろうとする手法.それの実現に必要な機能をまとめたソフトウェアパッケージ(ERPパッケージ、統合業務パッケージ)が各社から発売されている。」(日外アソシエーツ株式会社発行「英和コンピュータ用語大辞典第3版」) 2 「ERP」の文字が、新聞及びウェブサイトにおいて、ソフトウェアの一を表す語として掲載されている事実について (1)「みずほ銀行、資産・予算管理を一元化、年間3億6000万円削減」の見出しのもと、「みずほ銀行は、本部と全拠点の資産管理、予算管理の一元化システムを構築した。約500カ所の拠点の水道光熱費や賃借料など経常費、動不動産やソフトウェアなどの投資予算や支払い情報を一元管理。年間約3億6千万円のコスト削減効果を見込む。今後はグループ全体でシステムを共有化、内部統制強化や決算事務の早期化を目指す。・・システムはSAPジャパンの「SAP ERP6.0」を基に、みずほ情報総研の「金融業向け会計テンプレート」を活用し構築。07年1月に開発に着手し、同年11月には一部稼働、08年4月から行内通信網で全店稼働が始まった。」との記事(金融専門紙ニッキン 2008.11.21)。 (2)「日本HP、アーカイブソフトの最新版を発売」の見出しのもと、「最新版『データベースアーカイビングソフトウェア6・0』は、ソフト構成やデータアクセス方式を変更したことで、従来のオラクル製統合業務パッケージ(ERP)に加え、オラクル、マイクロソフト(MS)のDB管理ソフト上でも利用できる。画面上でデータの保存や参照に関するポリシー(方針)を簡単に設定できる機能を搭載し、操作性も高めた。」との記事(日刊工業新聞 2008.6.10)。 (3)「ERP早期導入支援、日本オラクルがソフト無償提供」の見出しのもと、「日本オラクルは六日、企業の統合基幹業務システム(ERP)『オラクルEビジネス・スイート・リリース12』を短期間で納入するためのソフト『オラクル・ビジネス・アクセラレーター』を無償提供すると発表した。日本ユニシスなど十四社が新ソフトを使って顧客企業の人事、会計などのシステムを構築する。取り扱い企業は五十社まで増やす方針だ。」との記事(日経産業新聞 2008.11.7)。 (4)「SAPジャパン 無償機能強化ソフト ERPの顧客に提供」の見出しのもと、「独業務ソフト大手SAPの日本法人、SAPジャパン(東京・千代田)は、統合基幹業務システム(ERP)ソフトの最新版『SAP ERP6.0』に機能を追加するためのソフト群『エンハンスメントパッケージ』を提供開始すると発表した。同ソフト群の投入は三回目。今年の4?6月から約千四百種類以上の新機能をSAP ERP6.0の顧客に無償で提供する。」との記事(日経産業新聞 2008.3.10)。 (5)「マイクロソフト、高いカスタマイズ性を備えたERPソフトウェアを国内市場に投入 (2007/06/20)」の見出しのもと、「マイクロソフトは6月20日、会計管理や生産管理、人事管理などの各種基幹業務を統合したERP(Enterprise Resource Planning)ソフトウェア「Dynamics AX 4.0 日本語版」を同日より販売開始したと発表した。同社としては初の国内市場向けのERP製品となるという。」との記載(http://www.ciojp.com/contents/?id=00003933;t=37)。 3 ソフトウエアのバージョンについて 上記2(1)ないし(5)において、「6.0」、「12」、及び「4.0」の記載がある。 (1)「会計ソフト PCA会計9V.2」、「給与ソフト PCA給与9V.2」、「販売管理ソフト PCA商魂9V.2」及び「仕入・在庫管理ソフト PCA商管9V.2」(http://www.pca.co.jp/area_product/producttop.html) (2)「本格読取2」、「Bento 2 Mac版」 (http://kakaku.com/pc/business-soft/ma_0/e2002/) 第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要旨 前記第3の「証拠調べ通知」に対して、請求人は、平成21年9月16日付け意見書及び同年9月24日受付の手続補足書を提出し、要旨以下のように述べている。 1 本願商標は、特徴ある色彩で視覚的効果を積極的に取り入れた態様で表され、外観上まとまりある一個の識別標識として認識し得る。また構成文字より生じる称呼「イーアールピーファイブ」も冗長とはいえず一連に称呼し得るものであり、また、「イーアールピーファイブ」という既成の単語ないし熟語は存在しないから、「イーアールピーファイブ」は特定の観念を有しない1ワードの造語である。 2 本願商標に接した企業の基幹業務をサポートする情報システムパッケージを導入しようとする取引者・需要者には、「ERP5」の特徴とともにネーミングの意図するところが理解、認識されるものであるから、「ERP」と「5」とは分離して理解されるおそれはなく、常に「ERP5」として理解、認識されるというのが自然である。 3 「ERP5」は2001年の提供開始当初より8年が経過した現在まで一貫して同じ態様で使用されているものであり、「ERP5」に小数点を付す、あるいは通し番号を付す、などしてシリーズ名称として使用している事実はない。したがって、本願商標は、構成上の一体性に加え、8年もの長きにわたってその態様を変更することなく継続して使用されてきているので、このような事実を総合してみれば、本願商標は請求人が提供する統合ビジネスモデルの5つの概念が反映されたソフトウエアであることを認識できるものである。 4 本願商標は外観上まとまりよく表された一つの識別標識として需要者・取引者に理解、認識されていることに疑いなく、かかる構成態様においては、殊更に「5」をソフトウエアの品番「5」と見なければならない格別の理由はないというべきで、請求人の提供にかかる統合業務パッケージソフトの名称として自他商品識別標識として機能し、商標法第3条第1項第6号には該当しない。 第5 当審の判断 1 商標法第3条第1項第6号該当性について 本願商標は、別掲のとおり、緑青色地の横長四角形内に 白抜きした「ERP」の文字及び「5」の数字を表してなるところ、これら文字及び数字は普通に用いられる態様で表され、いずれも特別なデザインが施されているものではない。 そして、前記第3の証拠調べによれば、本願商標の構成中「ERP」の文字は、財務会計や販売管理、生産管理、購買管理、在庫管理など、企業の基幹業務の情報を一元的に統合管理するシステムを表す語である「Enterprise Resource Planning」の略語であって、該システムを実現するためのコンピュータソフトウェアとして、辞典類、新聞及びインターネットにおいて、使用されているものである。 そして、当該システムを実現するためのコンピュータソフトウエアが発売されているところ、一般に、コンピュータソフトウエアの内容が改定されたときには、新しいバージョン名が付され、その表記方法として、製品のバージョンの小数点以下のみを変えるものや数字の通し番号が付されたものなどが存在している。そうすると、コンピュータソフトウエアに付された「5」の数字は、コンピュータソフトウエアのバージョンが「5」であること、すなわち、商品の記号、符号の類型と判断すべきものである。 してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者をして、「企業の基幹業務の情報を一元的に統合管理するシステムに用いられるコンピュータソフトウエア」のバージョン「5」程の意味を理解、認識するに止まり、前記の意味合い以上に、自他商品識別機能を発揮する別異の親しまれた既成の観念を生ずるとみるべき格別の事情もなく、他に商標として機能すべき特に顕著なところは存しないから、指定商品について他人の同種商品と識別するための標識であるとは認識し得ないものというのが相当である。 したがって、本願商標は、その指定商品に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものといわなければならないから、商標法第3条第1項第6号に該当するとして、その出願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すことはできない。 2 商標法第3条第2項該当性について 請求人は、平成20年12月24日付け手続補正書(方式)において、本願商標は補正後の指定商品との関係において、請求人提供にかかる広く知られたコンピュータソフトウエアの商標として、自他商品の識別標識として機能している旨主張し、その証左として甲第1号証ないし同第5号証を提出しているが、請求人の提出に係る同証左を検討しても、その主張を裏付ける証左を見いだすことができないため、前記第3の証拠調べ通知において、請求人が実際に使用している商標並びに商品の使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品の販売数量等及び広告宣伝の方法や回数などその裏付けとなる証左の提出を求めたところ、請求人は、前記第4に記載のとおり証拠調べ通知に対して意見を述べ、同21年9月18日付けの手続補足書において、別紙AないしEの証左を提出し、本願商標は自他商品識別機能を有する旨主張する。 そこで、請求人の提出に係る、原審における平成19年12月28日付けの手続補足書の別紙AないしP、当審における同20年12月24日付けの手続補正書(方式)の甲第1号証ないし同第5号証及び同21年9月18日付けの手続補足書の別紙AないしEについて検討するに、同19年12月28日付けの手続補足書で提出された別紙A、D及びG、同20年12月24日付けの手続補正書(方式)の甲第1号証(前記の同19年12月28日付けの手続補足書の別紙Dの英語版と認められる)及び同21年9月18日付けの手続補足書の別紙Bにおいて、本願商標と同一の態様からなる商標がそれぞれ記載されていることは認め得るとしても、これらの記載から、本願商標を付した商品の販売数量、使用期間、使用地域及び広告宣伝の方法や回数等の使用状況に関する客観的な証拠を見いだすことはできず、また、それ以外の証左については、本願商標とは態様が異なる商標についての記載又は商標登録に関する記載である。 以上によれば、請求人の提出に係る証拠からは、本願商標がその指定商品について使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるとは認められないものであるから、商標法第3条第2項に該当するとの請求人の主張は、採用することはできない。 3 請求人の主張 請求人は、本願商標は、全体としてまとまりある不可分一体の造語として自他商品識別力を有する旨主張しているが、当該商品を取り扱う業界においては、前記第3の証拠調べ通知のとおり、本願に係る指定商品との関係において、「ERP」はコンピュータソフトウェアの一種として、また「5」はソフトウェアのバージョンとして理解、認識される実情よりすれば、本願商標からは、「企業の基幹業務の情報を一元的に統合管理するシステムに用いられるコンピュータソフトウエア」のバージョン「5」を表してなるものと容易に理解されるものいうのが相当であり、その理解を妨げるような特別の事情も見いだせない。したがって、請求人の主張は採用することができない。 4 結論 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 本願商標 ![]() (色彩は、原本参照。) |
審理終結日 | 2009-10-28 |
結審通知日 | 2009-11-10 |
審決日 | 2009-11-30 |
出願番号 | 商願2007-180(T2007-180) |
審決分類 |
T
1
8・
17-
Z
(X09)
T 1 8・ 16- Z (X09) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大島 護、長柄 豊 |
特許庁審判長 |
石田 清 |
特許庁審判官 |
木村 一弘 末武 久佳 |
商標の称呼 | イイアアルピイファイフ、イイアアルピイゴ、イイアアルピイ |
代理人 | 吉田 研二 |
代理人 | 石田 純 |