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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) X25 |
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管理番号 | 1214748 |
異議申立番号 | 異議2009-900144 |
総通号数 | 125 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2010-05-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2009-04-17 |
確定日 | 2010-03-12 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5197394号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5197394号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5197394号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成20年6月17日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服」を指定商品として、平成20年12月19日に登録査定、平成21年1月16日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の(1)及び(2)のとおりであって、いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第2163779号商標(以下「引用商標1」という。)は、「PERNOD」の欧文字を横書きしてなり、昭和62年4月13日に登録出願され、第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年8月31日に設定登録されたものであるが、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、平成21年7月29日には指定商品を第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする書換登録がされているものである。 (2)国際登録第823612号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、2003年10月16日にフランス国においてした商標登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権を主張し、第33類「Wines, liqueurs and spirits.」を指定商品として、2004年3月22日に国際商標登録出願され、我が国においては、平成17年2月10日に設定登録されたものである。(以下、一括して「引用商標」という。) 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15及び同第19号に違反して登録されたものであるから、本件商標の登録は、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし第160号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第15号について 日本を含む世界中で申立人に係る「リキュール」に使用して周知・著名な引用商標に類似する本件商標が、その指定商品に使用された場合、これに接する需要者・取引者は、周知・著名な引用商標を連想し、その商品の出所について誤認・混同するおそれが極めて高いものである。 (2)商標法第4条第1項第19号について 本件商標は、申立人の業務に係るリキュールに使用される商標として著名性を獲得している引用商標と「PERNOD」の部分で共通するから類似商標である。よって、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがあり、他人の著名な商標に類似する商標を不正の目的をもって使用するものである。 4 当審における取消理由 当審において、登録異議申立に基づき、平成21年10月28日付けで商標権者に対して通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。 (1)「PERNOD」商標の著名性について ア 甲第7号証ないし第12号証、第16号証、第17号証及び第23号証ないし第34号証によれば、以下の事実を認めることができる。 a.申立人は、1975年(昭和50年)にペルノ社とリカール社が合併して設立されたフランスの企業であり、現在、世界のリーディング スピリッツ アンド ワイン企業の一つになり、2007年(平成19年)7月から2008年(平成20年)6月までの売上高は66億ユーロであったこと(甲7、甲8)。 b.ペルノ社の前身であるペルノ・フィス社は、1805年に、ニガヨモギなどの薬草から作ったスピリッツであるアブサンに「PERNOD(ペルノ)」なるブランドを使用して、製造、販売を開始したところ(なお、甲23?甲26には、1797年に製品化された旨の記載がある。)、アブサンは、フランスを中心としたヨーロッパにおいて愛飲された。しかし、ニガヨモギに含まれるツヨンという成分が健康を害するという理由により、アブサンは、1907年ころより、スイスなどで製造、販売が禁止され、次いでフランスにおいても、1915年3月に製造、販売を禁止する法律が制定された。 ペルノ・フィス社は、第1次世界大戦終結後の1920年より、アブサンの代替酒として、アニス風味主体のリキュール(以下「申立人商品」という。)の製造、販売を開始し、これに「PERNOD(ペルノ)」ブランドを使用し、その後、申立人商品は、アブサン愛好家にアブサンの代替酒としてヨーロッパ各国で認知され、ペルノ社を経て、申立人の製造、販売に係るリキュールとして、今日、世界各国で販売されているものである。 ところで、「PERNOD(ペルノ)」の語は、ペルノ・フィス社を創設した人名(Henry Louis Pernod)の一部から採択されたものである(甲16、甲23?26)。 c.我が国においては、引用商標を表示した申立人商品が「世界の名酒事典’80」(甲23)において紹介され、その後、同誌の「’95年版」(甲24)、「’97年版」(甲25)及び「2004年板」(甲26)に掲載され、また、酒やリキュールに関する書籍である「リキュール&スピリッツ通の本」(2003年4月10日発行、甲27)、「リキュールの世界」(2000年2月25日発行、甲28)、「リキュール&カクテル大事典」(2007年5月10日発行、甲29)においても、かつてヨーロッパを中心に愛飲されたアブサンと関連づけて、申立人商品が紹介されている。 イ 前記で認定した事実によれば、「PERNOD」の文字よりなる商標は、ペルノ社の前身であるペルノ・フィス社の業務に係る商品「アブサン」を表示するものとして、ヨーロッパを中心に19世紀初頭から20世紀初頭にかけて、需要者の間に広く認識されていたと推認することができる。 また、アブサンの製造、販売の禁止令により、「PERNOD」の文字よりなる商標は、一時期使用されなかったものの、第1次世界大戦終結後、同社により、アブサンの代替酒として製造、販売されたアニス風味主体のリキュールである申立人商品の商標として使用が再開され、その後、申立人商品は、アブサンの代替酒として、ヨーロッパ各国で愛飲され続け、本件商標の登録出願日(平成20年6月17日)及び登録査定日(平成20年12月19日)に近い時期である2007年(平成19年)7月1日から2008年(平成20年)6月30日までの間に、ヨーロッパの国々へ相当量の販売をしたことが認められる。 ウ さらに、引用商標の使用開始時期は、甲各号証からは明らかでないが、「世界の名酒事典’80」(甲23)において、引用商標を使用した申立人商品が我が国で紹介されていた事実からすれば、同時期には既に、ヨーロッパ各国で販売された申立人商品には、引用商標が使用されていたものと優に推認することができる。 エ そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時には、既にヨーロッパを中心とした外国において、申立人商品を表示するものとして、その需要者の間に広く認識されていたものと認めることができ、その著名性は、本件商標の登録査定時にも継続していたといえる。 (2)商標法第4条第1項第19号該当性について ア 本件商標は、別掲1のとおり、黒塗りの横長長方形内に白抜きで表した「PERNOD」の欧文字を中央に大きく横書きし、その下段には同じく白抜きで「LE COLLEZIONE」の欧文字を小さく横書きしてなるものであるところ、その構成中上段に太字で顕著に表された「PERNOD」の文字部分が、外観上、看者に最も強く印象づけられる部分といえるものであり、他方、「LE COLLEZIONE」の文字部分が「コレクション」を意味するイタリア語の「COLLEZIONE」であること及びその冠詞であるから、本件商標の指定商品との関係では、これらの語は、自他商品の識別機能が極めて弱い部分といえる。 そうすると、本件商標は、その構成中の「PERNOD」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を発揮するというべきであるから、これより単に「ペルノ」の称呼をも生ずるものといわなければならない。 これに対し、引用商標は、前記2のとおり、「PERNOD」の文字よりなるもの及び赤地の帯状図形内に「PERNOD」の文字を白抜きで表した構成よりなるものであるから、該文字より「ペルノ」の称呼を生ずるものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、「PERNOD」の文字において外観上、類似する商標であり、また、これより生ずる「ペルノ」の称呼を同じくするものである。 さらに、「PERNOD」の語が特定の語義を有しない造語よりなるものであるとしても、全く異なる観念が生ずるというものではないから、結局、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 イ 引用商標は、少なくとも申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ヨーロッパを中心とした外国においてその需要者の間に広く認識された商標であって、その構成中の「PERNOD」の文字の由来も、前記認定のとおり、ペルノ社の前身のペルノ・フィス社を創設した人名(Henry Louis Pernod)の一部から採択されたものと認められ、だれもが容易に採択し得る既成語とは異なるものと認めることができる。 そうすると、本件商標の商標権者が、偶然に「PERNOD」の文字を要部とする本件商標を採択したとみることは困難であるというほかなく、むしろ、ヨーロッパ諸国で広く認識されている引用商標について、これが使用される酒類と異なる被服の分野において登録されていないことを奇貨として、引用商標と類似する本件商標を先取り的に登録出願し、登録を得たものと考えざるを得ない。 したがって、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標といわなければならない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものである。 5 商標権者の意見 本件商標について、前記4の取消理由を通知し、相当な期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者は何ら意見を述べるところがない。 6 当審の判断 本件商標についてした先の取消理由は妥当なものと認められる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものとする。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標)![]() 別掲2(引用商標2) ![]() (色彩については原本参照のこと) |
異議決定日 | 2010-01-25 |
出願番号 | 商願2008-47893(T2008-47893) |
審決分類 |
T
1
651・
222-
Z
(X25)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 山田 正樹 |
特許庁審判長 |
佐藤 達夫 |
特許庁審判官 |
野口 美代子 小田 昌子 |
登録日 | 2009-01-16 |
登録番号 | 商標登録第5197394号(T5197394) |
権利者 | 株式会社エムツー・カンパニー |
商標の称呼 | ペルノレコッレツイオーネ、ペルノッドレコッレツイオーネ、パーノッドレコッレツイオーネ、ペルノ、ペルノッド、パーノッド、レコッレツイオーネ、コッレツイオーネ |
代理人 | 平野 泰弘 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 佐藤 俊司 |
代理人 | 田中 景子 |
代理人 | 稲葉 良幸 |