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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 025
管理番号 1214571 
審判番号 取消2009-300203 
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-02-09 
確定日 2010-03-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4310458号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4310458号商標(以下「本件商標」という。)は、「G-STAR」の欧文字と「ジースター」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、平成6年9月30日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として同11年8月27日に設定登録されたものであり、その後、平成21年7月21日に商標権の存続期間の更新登録がなされている。

2 請求人の主張(要点)
請求人は、商標法第50条第1項の規定に基づき、本件商標登録をその指定商品中の第25類「運動用特殊衣服、運動用特殊靴」について取消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第4号証を提出した。
(1)請求の理由
請求人の調査では、被請求人は、取消を求めた商品については、過去3年以上にわたって、我が国において本件商標を使用していないことが判明した。
よって、請求の趣旨のとおり審決を求める。

(2)答弁に対する弁駁
(ア)乙第1号証及び乙第2号証(以下、まとめて「提出証拠1」という。)は、商標法上の「運動用特殊衣服」に属する商品ではない。
特許庁商標課編の「商品及び役務の区分解説」によると、「運動用特殊衣服」は、「被服」とは明確に区別された商品概念である(甲第2号証及び甲第3号証)。
本件においては、提出証拠1が「被服」ではなく、「運動用特殊衣服」に属する商品であることが証明されなければならないところ、被請求人より提出された証拠からは、提出証拠1がスポーツをする際に限って着用される衣服であること、スポーツ用に特殊な加工の施された衣服であること等、商標法上の「運動用特殊衣服」であることの証明が一切なされていない。また、出願人のホームページを参照しても、該社が商標法上の「運動用特殊衣服」を取り扱っている様子は見受けられない(甲第4号証)。
したがって、提出証拠1が商標法上の「運動用特殊衣服」に属する商品であるとはいえない。
被請求人は、提出証拠1の特徴が「Wikipedia」に掲載の「アノラック」の定義に当てはまることを理由として、これらが商標法上の「運動用特殊被服」である「アノラック」に相当する旨主張している。
しかし、当該事典は、不特定多数人が自己の主観で書き込んだ定義の蓄積で成り立っている事典であり、ここで定義された「アノラック」の要件を満たすことを理由に、当該証拠が商標法上の「アノラック」に相当するとの主張は失当である。これが商標法上の「アノラック」に相当する商品であると主張するならば、提出証拠1が「運動用特殊衣服」としての性質を備えた商品であることが立証される必要があるし、少なくとも商品名として「アノラック」と表示されていることが証明される必要があるが、提出された証拠からは、この点についての記載が一切ない。
更に、被請求人は、提出証拠1がファッション性を重視した現状の市場動向に併せて企画製造されたアノラックであるから、「運動用特殊衣服」に該当する旨主張している。
しかし、上記主張は、提出証拠1が市場でアノラックと称されて販売されている商品とデザインが同様であるということの証明に過ぎない。提出証拠1が「運動用特殊衣服」であるか否かということと、市場における「アノラック」のファッション性やデザインの動向とは無関係である。
また、被請求人は、ジースターインターナショナル株式会社が日本における販売代理店会社及び本件商標権者の関連会社であると主張している。
しかし、被請求人が該社に対して、本件商標権の使用を許諾していることを客観的に証明する証拠(使用許諾契約書等)が提出されていないから、本件商標の使用は、商標権者又は使用権者による使用ということは出来ない。
(イ)乙第25号証は、商標法上の「運動用特殊靴」ではない。
特許庁商標課編の「商品及び役務の区分解説」によると、「運動用特殊靴」と「履物」とは明確に区別された商品概念である(甲第2号証及び甲第3号証)。
本件においては、乙第25号証が「履物」ではなく、「運動用特殊靴」に属する商品であることが証明されなければならないところ、被請求人より提出された証拠からは、乙第25号証が専らスポーツをする際に限って使用されること、日常生活一般では殆ど使用されない靴であること等、商標法上の「運動用特殊靴」であることの証明が一切なされていない。
したがって、乙第25号証が商標法上の「運動用特殊靴」に属する商品であるとはいえない。
(ウ)被請求人は、乙第26号証ないし第28号証及び乙第37号証(以下、「提出証拠2」という。)が「サッカー用特殊衣服」であると主張するが、提出された証拠には、これらがサッカーにのみ使用される衣服であることやサッカー用に特殊加工された衣服であることなどが一切証明されていない。
したがって、提出証拠2が「運動用特殊衣服」であるということはできない。また、提出されたカタログは、全て英語で記載されており、価格や商品の特徴が一切記載されていないものであるから、日本における「カタログ」としての信憑性も低い。
(エ)以上より、被請求人は、審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者又はその使用権者のいずれかが請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていることを証明していないのであるから、商標法第50条第2項の要件を満たさず、本件商標の登録は取り消しを免れない。

3 被請求人の主張(要点)
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第41号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)運動用特殊衣服である「アノラック」についての使用について
(ア)乙第1号証の1及び乙第2号証の1は、運動用特殊衣服の商品タッグの写真であり、その商品タッグに表示される「art」の欄に記載される数字の羅列がその商品番号を表している。
そして、乙第3号証で示されるように、乙第1号証で示す本件商標が付されたナイロン素材でキルティング加工された「アノラック」は、2008年9月23日以前に製造され、前記日付に販売されていることがその商品番号が記載された納品伝票(仕入伝票)によって立証されており、乙第4号証で示されるように、乙第2号証で示す本件商標が付された吸湿性の高い厚手の布(スエット)素材からなる「アノラック」は、2008年12月11日以前に製造され、前記日付に販売されていることがその商品番号が記載された納品伝票(仕入伝票)によって立証されている。
(イ)本件商標が付された衣服全般は、ハンガリー国所在の本件商標権者(本件商標権者は、2009年7月16日に所在地をオランダに戻し、社名を「ファクトン・エル・ティー・ディー」へ変更しているが、「ジー-スター・ロー・デニム・コルラトルト・フェレロセク・タラササグ」と同一の法人である。)が企画製造し、日本国内販売代理会社を経由して日本国内市場に流通されている。本件商標権者「ジー-スター・ロー・デニム・コルラトルト・フェレロセク・タラササグ」は、我が国で、本件商標「G-STAR/ジースター」を「アノラック」に使用するにあたり、「ジースターインターナショナル株式会社」を販売元(日本国総販売代理会社)としている。このことは、乙第5号証及び乙第7号証のWEBサイトの記載内容からも理解されるところである。
さらに、乙第1号証及び乙第2号証で示すように、「アノラック」に縫い合わされている洗濯方法表示ラベルにも「ジースターインターナショナル株式会社」の表示があることからも、本件商標権者の関連会社であることが理解でき、「ジースターインターナショナル株式会社」も商品企画製造に関わっていることが窺い知れる。
以上からすれば、日本国内で本件商標が付された指定商品を使用しているのは「ジースターインターナショナル株式会社」であり、乙第3号証及び乙第4号証に係る納品伝票の発行者が「ジースターインターナショナル株式会社」であることから、本件商標権者の代理として、本件商標が付された「運動用特殊衣服」を販売していることが理解される。
(ウ)本件商標の指定商品「運動用特殊衣服」についての使用について
運動用特殊衣服に「アノラック」が含まれることは、特許庁商標課編「類似商品・役務審査基準」に記載されるとおりである。
「YAHOO!JAPAN 百科事典」サイト(乙第9号証)によれば、「アノラック」とは、「防寒、防雨用のフード付きのゆったりした外着のことで、エスキモー語のアノラック[anoraq]が語源である。今日では防風、防雨、防寒着として、登山、スキー、スケートなどのウィンタースポーツに広く用いられるほか、一般に、冬季の作業用としても普及している。材質は、それぞれの目的にあわせて選ばれるが、防水綿布、ビニロン、ナイロン、及びこれらの布地のキルティングしたものなどを組み合わせて作られる。英語のパーカーもほぼ同じような衣服をさす。」とある。
してみれば、乙第1号証及び乙第2号証で示される衣服は、上記アノラックの説明文言の要件をすべて充足し、当該衣服は「アノラック」に該当することが理解される。
そして、乙第11号証ないし乙第24号証に示すとおり、市場で販売されている「アノラック」は、ファッション性に富んだ一般衣服のアウターとさほど変わらないデザインで企画製造され流通されているのが現状である。
したがって、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、「運動用特殊衣服」に含まれる「アノラック」について使用されているので、本件審判の請求は成り立たない。
(2)「運動用特殊靴」についての使用について
乙第25号証は、テニス靴及びバスケットボール靴を掲載したカタログであり、その表紙に記載される「LOOKBOOK SPRING/SUMMER 2008」の表示から把握されるように、本件商標は、本件審判に係る指定商品「運動用特殊靴(「テニス靴」及び「バスケットボール靴」)」について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用されていたことが証明されている。
したがって、本件審判の請求は成り立たない。
(3)「運動用特殊衣服」についての証拠の追加
本件商標が「アノラック」及び「サッカー用特殊衣服」について使用されていることは、乙第26号証ないし乙第41号証によっても証明される。
本件商標に係る指定商品が属する分野では、商品の作り込みや商品サンプルを作成する前段階からその商品の取引が開始される商慣行を有しており、製造業者は、製造完了時期の流行を予測して、商品デザインを決定し、そのデザインでもって商品の製造完了日より前に譲渡交渉を行っていくものである。取引者は、将来に生産される商品を商品サンプルも無く、写真からなる商品カタログも無く、デザイナーが描いた「絵の商品カタログ」でもって商談が行われ、商品を選択するという取引事情を有している。
「アノラック」に関する証拠についてみれば、乙第37号証(「G-STAR」の商標が付された商品カタログ)に表わされている「アノラック」の商品名は、「SHIPP SPORTS BOMBER WMN」であり、これを乙第29号証(商品番号と商品名との照合表)により照合すると、商品番号は「92140/148」となる。商品番号「92140/148」のオーダーシート(注文書)は、乙第38号証及び乙第39号証であり、これより、当該アノラックは、2008年2月21日には商品カタログ等を用いた商談が開始され、2008年9月15日から出荷開始され、2008年11月14日まで継続して販売されていた商品であることが理解される。
そして、乙第40号証及び乙第41号証(詳細事項オーダーシート)に示すように、「ジースターインターナショナル株式会社」が当該「アノラック」の初回導入で販売した先は「伊勢丹」などであるから、本件商標の日本国内において使用していたことが立証される。
同様に、乙第26号証ないし乙第28号証(商品カタログ)、乙第29号証(商品番号と商品名との照合表)及び乙第30号証ないし乙第36号証(オーダーシート)により、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において「サッカー用特殊衣服」について使用されていたことが証明されている。
以上のとおり、乙第26号証ないし乙第41号証によっても、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、「運動用特殊衣服」について使用されているから、本件審判の請求は成り立たない。

4 当審の判断
ハンガリー国所在の被請求人(2009年7月16日に所在地をオランダに戻し、社名を「ファクトン・エル・ティー・ディー」へ変更しているが、「ジー-スター・ロー・デニム・コルラトルト・フェレロセク・タラササグ」と同一の法人である。)は、被請求人が企画・製造した「アノラック」を被請求人の関連会社であり、日本国総販売代理会社であるジースターインターナショナル株式会社を販売元として日本国内市場に流通させているとして、乙第1号証ないし乙第24号証を提出している。
(1)そこで、被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)乙第1号証は、被請求人が本件商標を使用しているとして提出している衣服の写真であり、乙第1号証の1は、衣服の前面、背面の写真あるいは衣服の袖部分、肩中央部の裏側部分の拡大写真であって、袖部分や肩中央の裏側部分には「G-STAR」の商標や欧文字の「G」を象った輪郭図形の中に「G-STAR」の商標が表示されていることが認められる。また、乙第1号証の2は、商品の値札や商品の品番・材質等を表示したラベル、洗濯方法を表示したラベル部分の拡大写真であり、商品の値札や洗濯ラベルには、欧文字の「G」を象った輪郭図形の中に「G-STAR」の商標が表示されており、商品の品番・材質等を表示したラベルには、「style」として「PACK QUILTED HOODED SHIRT L/S」とあり、「art」として「83075.422.991」の商品番号が記載されており、「fabric」として「70’S NYLON」と表示されており、洗濯ラベルには、「ジースターインターナショナル(株)」の表示のあることが認められる。
(イ)乙第2号証も、被請求人が本件商標を使用しているとして提出している衣服の写真であり、乙第2号証の1は、衣服の前面、背面の写真あるいはマーク部分や値札部分等の拡大写真であって、値札部分等には欧文字の「G」を象った輪郭図形の中に「G-STAR」の商標が表示されていることが認められる。また、乙第2号証の2は、商品の値札や商品の品番・材質等を表示したラベル、洗濯方法を表示したラベル部分の拡大写真であり、商品の値札や洗濯ラベルには、欧文字の「G」を象った輪郭図形の中に「G-STAR」の商標が表示されており、商品の品番・材質等を表示したラベルには、「style」として「MASH HOODED SW WMN L/S」とあり、「art」として「95001.173.573」の商品番号が記載されており、「fabric」として「CONNOR SWEAT」と表示されており、洗濯ラベルには、「ジースターインターナショナル(株)」の表示のあることが認められる。
(ウ)乙第3号証及び乙第4号証は、いずれも「仕入伝票」であり(被請求人の主張によれば、「仕入伝票」とは、伝票記載内容の商品を購入した者の立場から名付けられているものであり、一般に言う「納品伝票」と同意であるとのことである。)、乙第3号証は、2008年9月23日に、ジースターインターナショナル株式会社が株式会社伊勢丹に品番「83075-422-991」の商品2着外の商品を納品した旨記載されており、乙第4号証は、2008年12月11日に、ジースターインターナショナル株式会社がCAMDENに品番「95001-173-573」の商品2着外の商品を納品した旨記載されている。
(エ)乙第5号証は、株式会社オールアバウトのサイトであり、日本国内での「G-STAR RAW」が使用されている衣服は「ジースターインターナショナル株式会社」が販売元である旨記載されている。乙第6号証は、登録第4766861号商標公報の写しであって、被請求人は、被服等の商品を指定商品とした「G-STAR RAW」の文字を含む商標を所有していることが認められる。また、乙第7号証及び乙第8号証は、シブヤ経済新聞であり、オランダ発デニムブランド「G-STAR RAW」に関して、日本では商品の輸入をジースターインターナショナル(港区南青山2)が手掛けている旨記載されている。
(オ)乙第9号証は、「YAHOO!JAPAN」が提供する百科事典サイトの「アノラック」を検索した結果ページの写しであり、アノラックとは、「防寒、防雨用のフード付きのゆったりした外着のことで、エスキモー語のアノラック[anoraq]が語源である。今日では防風、防雨、防寒着として、登山、スキー、スケートなどのウィンタースポーツに広く用いられるほか、一般に、冬季の作業用としても普及している。材質は、それぞれの目的にあわせて選ばれるが、防水綿布、ビニロン、ナイロン、およびこれらの布地のキルティングしたものなどを組み合わせて作られる。英語のパーカーもほぼ同じような衣服をさす。」旨記載されている。
(カ)乙第11号証ないし乙第24号証は、スポーツ用品メーカー等が販売しているアノラックを紹介しているインターネット通販サイトのページの写しであり、乙第11号証ないし乙第13号証は登山用具メーカーのmont-bell(モンベル)、乙第14号証及び乙第15号証はアウトドア・スポーツウェアメーカーの株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン、乙第16号証は釣具メーカーのダイワ、乙第17号証ないし乙第19号証は株式会社パルコ、乙第20号証は問屋街、乙第21号証は株式会社清水屋、乙第22号証はオットージャパン株式会社、乙第23号証は「YAHOO!JAPAN」のショッピングサイト及び乙第24号証は「楽天市場」の各サイトである。これら乙号証には、アノラックの写真とともに、光沢感のある素材を採用したアノラック(モンベル)や各部位に配色してデザイン性をもたせたもの(株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン、株式会社パルコ)、前身ごろに斬新なデザインプリントがされたもの(ダイワ)等、デザイン性に富んだアノラックが掲載されている。
(2)上記において認定した乙第1号証の2及び乙第2号証の2の洗濯方法表示ラベルに表されている「ジースターインターナショナル(株)」の表示に乙第5号証ないし乙第8号証の各記載を併せみれば、ジースターインターナショナル株式会社は、被請求人が企画・製造した衣服を日本国内で販売するための被請求人の関連会社であり、日本国総販売代理会社である旨の被請求人の主張は首肯し得るものであり、ジースターインターナショナル株式会社は、被請求人から、本商標権についての使用について、少なくとも、口頭ないしは黙示の承諾を受けていたものとみるのが自然である。
そして、乙第3号証(仕入伝票)に記載されている「83075-422-991」の商品番号が乙第1号証の衣服の写真中に表されているラベルに記載されている商品番号と符合しており、乙第4号証(仕入伝票)に記載されている「95001-173-573」の商品番号が乙第2号証の衣服の写真中に表されているラベルに記載されている商品番号と符合していることからみれば、ジースターインターナショナル株式会社は、本件審判の請求の登録(平成21年2月27日)前3年以内である2008年(平成20年)9月23日に株式会社伊勢丹に対して、乙第1号証の写真にある商品番号が「83075-422-991」の衣服2着外を納品し、同年12月11日に、CAMDENに対して、乙第2号証の写真にある商品番号が「95001-173-573」の衣服2着外を納品したものと推認することができる。
そうとすれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標法第2条第3項第1号及び同第2号に掲げられる「商標についての使用行為」をしたものということができる。
(3)そこで次に、乙第1号証及び乙第2号証の写真に表されている衣服が被請求人の主張しているところの「アノラック」であって、「運動用特殊衣服」に属する商品であるか否かについて検討する。
乙第9号証の「YAHOO!百科事典」によれば、「アノラック」とは、「防寒、防雨用のフード付きのゆったりした外着のことで・・・防風、防雨、防寒着として、登山、スキー、スケートなどのウィンタースポーツに広く用いられるほか、一般に、冬季の作業用としても普及している。材質は、それぞれの目的にあわせて選ばれるが、防水綿布、ビニロン、ナイロン、およびこれらの布地のキルティングしたものなどを組み合わせて作られる。英語のパーカーもほぼ同じような衣服をさす。」旨説明されている。また、乙第11号証ないし乙第24号証のインターネット通販サイトによれば、スポーツ用品メーカー等が販売しているアノラックであっても、光沢感のある素材を採用し、フード収納可能としたもの(モンベル)や各部位に配色してデザイン性をもたせたもの(株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン、株式会社パルコ)、前身ごろに斬新なデザインプリントが施されたもの(ダイワ)等、一般衣服のアウターと変わらないデザイン性に富んだアノラックが企画・製造され、市場においては、「アノラック」と称され取引されている事実を認めることができる。
しかして、乙第1号証及び乙第2号証の写真に表示されている衣服は、前述のとおり、ナイロン素材でキルティング加工されたフード付きのものであったり、あるいは、スウェト素材(厚手の布)からなるフード付きのものである。そうとすれば、該衣服は、その形状や素材からみて、上記乙各号証において説明されている「アノラック」の形状及び素材を備えていることから、登山・スキー・スケート等のウィンタースポーツに広く用いられる「アノラック」とみるのが相当であり、これを否定するに足る確たる証拠も存在しない。
そうとすれば、乙第1号証及び乙第2号証の写真に表されている衣服は、「アノラック」であって、「運動用特殊衣服」に属する商品というべきである。
(4)そして、本件商標は、前記のとおり、「G-STAR」の欧文字と「ジースター」の片仮名文字とを二段に横書きしてなるところ、被請求人がアノラックについて使用している商標は、「G-STAR」の文字からなる商標あるいは、欧文字の「G」を象った輪郭図形の中に「G-STAR」の文字を表した商標であり、片仮名文字の表記がないから、本件商標と同一の商標ということはできない。しかしながら、本件商標構成中の「ジースター」の片仮名文字部分は、「G-STAR」の欧文字の自然な読みを表したものであり、いずれも、同じ「G-STAR」の綴り字からなり、「ジースター」の称呼を生ずるものであるから、被請求人がアノラックについて使用している商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものである。
(5)請求人の主な反論について
請求人は、「YAHOO!百科事典」は不特定多数人が自己の主観で書き込んだ定義の蓄積で成り立っている事典にすぎないから、そこでの定義を理由に、乙第1号証及び乙第2号証の衣服が「運動用特殊衣服」、「アノラック」に相当するとはいえず、また、該アノラックが運動用特殊衣服であるか否かは、市場におけるアノラックのファッション性やデザインの動向とは無関係であり、特許庁商標課編の「商品及び役務の区分解説」(甲第2号証及び甲第3号証)からみれば、乙第1号証及び乙第2号証の衣服が「運動用特殊衣服」、「アノラック」に相当する商品であるとはいえない旨主張している。
確かに、特許庁商標課編の「商品及び役務の区分解説」(甲第2号証及び甲第3号証)によれば、第25類「被服」の解説には、「・・・ただし、スポーツをする際に限って着用する運動用特殊衣服は含まれない。」とあり、「運動用特殊衣服」の解説には、「この概念には、スポーツをする際に限って着用する特殊な衣服が含まれる。」と記載されている。
しかしながら、本件商標の指定商品は、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とするものであるところ、商標法施行規則の別表中に表示されている第25類「被服」の概念の中には「アノラック」の例示はなく、「アノラック」は第25類「運動用特殊衣服」の概念の中にのみ例示されている。
そして、乙第9号証の「YAHOO!百科事典」には、前述したとおり、「アノラック」についての商品の説明がなされている。
請求人は、「YAHOO!百科事典」の成り立ちについて言及しているが、他の辞典類をみても次のように解説されている。
例えば、東洋経済新報社発行の「現代商品大辞典 新商品版(昭和61年10月18日発行)」の「パーカ(parka)」の解説には、「アノラック(anorak)、ヤッケ(Jacke〈独〉)と同義。フード付き、防水、防風、保温等の機能をもったカバーウェアの総称。アノラックとは、グリーンランド系のエスキモーの言葉で、アリューシャン列島のエスキモーは、同じものをパーカと呼ぶ。パーカは、今日、多種の用途名、スポーツ名を付し、いろいろな素材のものが市販されている。トレーニング等で、汗をかくのを目的としたものをスエットパーカ、登山用をマウンテンパーカ、その他ヨッティングパーカ等で、それぞれ用途に応じた素材的、機能的工夫がされている。スポーツウェアが、街着としてどんどん着られているなかで、スエットシャツと並んで、人気スタイルの1つ。」と記載されている。そして、用語の総論部分である「スポーツウェア」の解説には、「スポーツ用に考案、改良された運動用衣やスポーツチームのユニフォーム等をいうが、スポーツをするためのほか、カジュアルウェアとして、一般化しているものも含めて、スポーツウェアと呼ぶ。実際、今日カジュアルウェアとして愛用されている服種やスタイルは、もともとスポーツ用に考案されたものが多く、その点でスポーツウェアとカジュアルウェアは同義である。欧米で、スポーツシャツというと、スポーツ用シャツのことであると同時に、カジュアルに着るシャツで、ドレスシャツではないという意味である。」と記載されている。
また、株式会社同文書院発行の「新・田中千代 服飾事典(1998年5月3日第一版新改訂第1刷発行)の「アノラック[Anorak]」の解説によれば、「登山やスキーなどのときに風雨や雪を防ぐため、また保温の目的で使用されるフード付のゆったりしたジャケットのことで、布地はバーバリーやギャバジンなどの目のつまったものや、ナイロン、キルティングされたもの、裏に毛皮、毛、ジャージーなども使われ、防水加工されたものが多い。」とあり、「アノラック・デテ[フランス]」の解説によれば、「デテは<夏の>という意味で、アノラック・デテは<夏に着るアノラック>である。もともとアノラックは、スキーなどウィンター・スポーツに着るジャケットであるが、素材に吸湿性のよい麻や木綿、あるいは、ほかの繊維との混紡を用いて、サマー・スポーツやレジャーのときに着用する。」とあり、更に、「アノラック・ブルゾン[フランス]」の解説によれば、「ブルゾンは<ジャンパー>の意味で、ジャンパーふうのアノラックのことである。防寒用の羽毛や化繊綿を入れて暖かくしたものである。」と記載されている。
これらの解説によれば、「アノラック」とはフード付き、防水、防風、保温等の機能をもったカバーウェアの総称であり、防風、防雨、防寒着として、登山、スキー、スケートなどのウィンタースポーツに広く用いられるほか、一般に、冬季の作業用やカジュアルウェアとしても普及しているものということができる。
そして、これらの説明に、被請求人の提出に係る乙第11号証ないし乙第24号証のスポーツ用品メーカー等が販売しているアノラックの商品形態をも併せみれば、乙第1号証及び乙第2号証の写真に表されている衣服は、「アノラック」であって、「運動用特殊衣服」に属する商品であるとみるのが相当である。
そうとすれば、これらの点についての請求人の主張は採用できない。
(6)なお、被請求人は、上記証拠以外にも、「アノラック」の使用について乙第37号証ないし乙第41号証を、また、「サッカー用特殊衣服」の使用について乙第26号証ないし乙第36号証を、そして、「運動用特殊靴」の使用について乙第25号証を提出しているが、乙第26号証ないし乙第41号証は、ジースターインターナショナル株式会社における社内資料的性格の強いものと認められるうえ、前記したとおり、乙第1号証ないし乙第24号証をもって、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を「アノラック」について使用していたことが認められるから、その余の証拠については言及しなかった。
(7)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、被請求人の関連会社であり、日本国総販売代理会社と認められるジースターインターナショナル株式会社を販売元として、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をして、本件審判の請求に係る商品中の第25類「運動用特殊衣服」の概念に属する「アノラック」を日本国内に流通させていたことを証明したものということができる。
したがって、本件商標の指定商品中、取消請求に係る第25類「運動用特殊衣服、運動用特殊靴」についての登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-01-20 
結審通知日 2010-01-22 
審決日 2010-02-03 
出願番号 商願平6-99803 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 岩崎 良子
内山 進
登録日 1999-08-27 
登録番号 商標登録第4310458号(T4310458) 
商標の称呼 ジースター、スター 
代理人 石川 達久 
代理人 柳生 征男 
代理人 青木 博通 
代理人 小笠原 史朗 
代理人 足立 泉 
代理人 中田 和博 

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