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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 117
管理番号 1214570 
審判番号 取消2008-300541 
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-04-30 
確定日 2010-03-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第2101372号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2101372号商標(以下「本件商標」という。)は、「BAGUTTINO」及び「バグッティーノ」の文字を上下二段に横書きしてなり、昭和61年11月4日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和63年12月19日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、登録第2101372号の指定商品中、「被服(運動用特殊被服を除く)」の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第4号証を提出した。
(1)請求の理由
請求人が調査したところによると、本件商標はその指定商品中「第17類 被服(運動用特殊被服を除く)」について、本件商標の商標権者である株式会社バーンストーマー(以下「バーンストーマー」という。)によって継続して3年以上日本国内において使用されておらず、現在も使用されている事実は見出せない。加えて、商標登録原簿上において、通常使用権および専用使用権の設定登録がなされておらず、使用権者が使用しているとも考えられない。
したがって、請求人は、商標法第50条第1項の規定に基づき、本件商標の登録をその指定商品中「第17類 被服(運動用特殊被服を除く)」について取り消すとの審決を求める。
(2)弁駁
ア 乙第1号証及び同第2号証について
バーンストーマーから野口株式会社(以下「野口」という。)への営業譲渡を示す「営業譲渡契約書」(乙第1号証)によれば、「第2条・・・乙(株式会社バーンストーマー)が甲(野口株式会社)に売却する商標権(「CABOTINE」「ADAPT」「MARLIER」「SURPLUS PARADISE」「DEAL」)の対価は…」と記載されているが、本件商標は、売却する商標権の対象に含まれていない。乙第1号証は、本件商標を登録番号などによって特定する記載がないため、バーンストーマーから野口に本件商標が譲渡されたことを証明するものとはいえない。
野口から株式会社アダプト(以下「アダプト」という。)への資産譲渡を示す「資産譲渡契約書」(乙第2号証)には、対象物件の表示に本件商標「BAGUTTINO バグッティーノ」及び登録番号(第17類2101372)が記載されている。
しかし、バーンストーマーから野ロへの本件商標の所有権の移転が証明されない以上、当該「資産譲渡契約書」によって野口からアダプトに本件商標の所有権が移転されたということはできない。
さらに、平成20年9月30日付けの商標登録原簿の記載によれば、特許庁に本件商標に係る商標権の移転登録がされていない(甲第3号証)。商標法第35条で準用する特許法第98条第1項第1号の規定より、商標権の移転は、登録が効力の発生要件である。よって、アダプトが本件商標の商標権者であるというためには、商標登録原簿に商標権の移転登録を行っている必要がある。
以上より、乙第1号証および同第2号証は、本件商標の所有権がアダプトに移転したことを証明するものとはいえない。
イ 乙第3号証について
乙第3号証には「在庫商品写真」として3枚の写真が示されているが、写真の撮影者、撮影日、撮影場所などが何ら明示されておらず、また、当該商品が販売されるための在庫商品であるか明らかでないため、証明力を有しない。加えて、在庫商品であるとしても、実際の取引の場において本件商標が使用された証拠となり得ない。
紳士用ジャケット全体が写された上段の写真には、後ろ襟付け根部分内側の織ネームが写っているが、写真が小さすぎるため文字を判読することができない。
中段の写真には、ジャケットの内ポケットと織ネームがクローズアップして写されているが、縫い糸がはっきり写っていることから、ミシン縫いではなく手で縫いつけたようにも見え、不自然な印象を与える。
下段の写真は、品番、製造地などが記載されたプリントネームだけがクローズアップして写されているため、上段の写真のジャケットに付されたものであるかどうか不明である。プリントネーム自体にしわが寄っていて、擦り切れたような切れ目があることも、被請求人が主張するようにアダプト所有の在庫商品の写真であるとするならば、不自然である。
ウ 乙第4号証について
平成19年6月30日付けの商品販売納品書は、アダプトが発行したものである。(1)で述べたように、本件商標に係る商標権の移転登録がされていない以上、バーンストーマーが本件商標の商標権者である。そうとすれば、乙第4号証は、商標権者による登録商標の使用を証明するもの、ひいては本件商標の使用を明らかにする証拠とはいえない。
また、当該商品販売納品書の宛名には「BS-SALE」と記載されているのみで、納品先の名称または氏名の記載がなく、伝票の合計欄に販売合計金額の記載もない。納品先および販売合計金額が明らかでないから、乙第4号証は、販売の事実を証明するものとしては不十分である。
さらに、当該商品販売納品書の右上の担当者欄には、「社内セール」と記載されている。
社内セールは、多くの場合、従業員やその家族を対象に開催される。一般多数の需要者を対象とせずに社内で販売される自社の商品は、市場において独立して商取引の対象として一般市場を流通するものとはいえず、また、自社の商品をよく知る従業員に対しては、商標の本質的機能である自他商品等識別機能を発揮するまでもない。商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿である。商標の自他商品等識別機能を発揮する態様で登録商標の使用をしていないのであれば、保護されるべき業務上の信用も蓄積されないというべきである。よって、一般消費者を対象としない社内セールでの販売は、「商品についての登録商標の使用」には該当しない。

3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第6号証を提出した。
(1)バーンストーマーは、平成12年6月30日に野口へと所有していた全ブランドとともに営業権を譲渡している(乙第1号証)。
また、野口も平成13年11月9日にアダプトへ資産を譲渡しており、現在、本件商標の所有権はアダプトにある(乙第2号証)。
アダプトにおいては、少量ながらも在庫があり対象商標の販売実績がある(乙第3号証及び乙第4号証)。
したがって、本件商標の登録を取り消すとの審判請求は成り立たない。
(2)弁駁に対する答弁
(ア)請求人は、被請求人が提出した営業譲渡契約書(乙1号証)には、その第2条に本件商標の表示が含まれていないので、バーンストーマーから、野口へ本件商標が譲渡されたことにはならないこと、及びアダプトが本件商標の商標権者と言うためには、商標権の移転登録を行っている必要があることを主張するが、第2条はあくまで「譲渡財産の対価」であり、第1条の「営業譲渡」の条項に「・・・本件営業と乙の持つ商標権を甲に譲渡すること(以下本件譲渡という。)を合意した。」とあり、事実バーンストーマーは全ての資産を野口に譲渡し、全ての従業員を転籍させている。また、移転登録していないことを理由に、本件商標についての譲渡契約が無効になるとは考えられない。
(イ)乙第3号証について
乙第3号証の写真の商品は現在も手元にある。
後ろ襟付けの部分の織ネームは、襟吊りで「Maide in Italy」と表示されている。
ジャケット部分の織ネームは、ミシンによる千鳥縫いであり、高級衣料品のネーム取り付けにしばしば使われる方法で、直線縫いより生地の伸縮みに対応する高級な手法である。
プリントのネームのしわは、イタリアの縫製工場が付けたもので紙に近い素材で出来ているので、すぐにしわがよる。
(4)乙第4号証の納品書は、アダプトで年数回開催する在庫処分セールで販売したものである。名目上はファミリーセールだが、新聞折り込みチラシを入れ一般の顧客に販売するものである(乙第5号証及び乙第6号証を参照。)。

4 当審の判断
(1)被請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 平成12年6月30日に、被請求人と野口との間で、紳士婦人服製造販売に関する営業権の譲渡契約が締結された。その契約の内容として、平成12年7月1日を譲渡日とし被請求人から野口に紳士婦人服製造販売に関する営業権と被請求人のもつ商標権を譲渡すること(第1条)、営業権の対価は2500万円、被請求人が売却する商標権(「CABOTINE」「ADAPT」「MARLIER」「SURPULUS PARADISE」「DEAL」)の対価は1000万円とすること(第2条)等が合意された(乙第1号証)。
イ 平成13年11月9日に、野口とアダプトとの間で、資産譲渡契約が締結された。その契約の内容として、平成13年11月1日を譲渡日とし野口の営業に係わる主要な資産をアダプトに譲渡すること(第1条)ほかが合意され、「第2条(譲渡資産)」の「6」項に「ブランド(別紙明細 その他)」「金 66,000,000円」の記載がある(乙第2号証)。そして、末葉の添付書類の「I 対象物件の表示」の商標名欄の13に「BAGUTTINO バグッティーノ」、登録番号欄に「第17類2101372」、期間満了日として「平成20年10月16日」の各記載がある。
ウ 3葉の写真(乙第3号証)のうち、上段の写真には、書庫風の器物の前にダークの「紳士用ジャケット」がハンガーに掛けられているのが認められる。
また、中段の写真は、上着の内ポケット部付近を写したと思われるものであるところ、籠字風に書された「Baguttino」の文字(以下「使用商標」という。)と、その下に、それより小さく「MADE IN ITALY」の文字が表示された白い織ネームがまつり付けられている。
さらに、下段の写真には、白いシート状のものが、写されている。当該シートは青い線で区切られ、「COMPOSIZ TESSUTO」とする区切り内に、「I-13205 100% SE」と黒文字で印字され、その下段の2つの区切り内に、「MADE IN ITALY」の表示と洗濯やアイロン等に係る取扱記号が青色でプリントされている。
エ 平成19年6月30日付の納品書(控)(乙第4号証)は、アダプトから客名「BS-SALE」に向けたものと認められ、そのコード・商品名欄の最下段には、二段書きで「I-13205」「3Bジャケット イタリアンシルク」の記載があり、これに対応して、数量「1」、単価「19,800」、金額「19,800」の各記載がある。
オ 「FAMILY SALE」と印刷された広告用チラシ(乙第5号証)には、メンズ・レディス・カジュアルウェアー、12.12(fri)10:00?18:00、12.13(sat)10:00?17:00等の記載がある。
カ 乙第6号証は、「ASA三宿」と「読売センター駒場」発行のアダプト宛の平成20年12月9日付け折り込み料の領収書とみられる。
(2)以上の事実を総合してみれば、商標権者は、営業権と共に商標権も野口に譲渡し、更に、野口は、平成13年11月9日にアダプトへ資産譲渡契約を行っていることからすれば、野口あるいはアダプトは、平成13年11月9日において登録原簿上の本件商標の商標権者とは認め難いが、少なくとも本件商標の通常使用権者とみて差し支えないといえる。
そして、前記(2)ウの3葉の写真(乙第3号証)中、上段には「紳士用ジャケット」、中段には使用商標が表示されており、当該使用商標は、大文字小文字の差異はあるが、本件商標の欧文字部分と同じ綴りであり、これより生ずる称呼「バグッティーノ」も本件商標の称呼と同一のものと認められ、かつ、観念上の変動も認められないものであるから、本件商標と社会通念上同一の商標と認め得るものである。
また、通常洋服の裏地側には品質表示のラベル等が付されているところ、下段の写真のシート状のものには、「I-13205 100% SE」、「MADE IN ITALY」等の表示がみられ、これらの表示は、品番、100%シルク、イタリア製等を表示したものとみられる。
そうとすると、アダプトから客名「BS-SALE」に向けた納品書(控)(乙第4号証)のコード・商品名欄の最下段に、二段書きで「I-13205」「3Bジャケット イタリアンシルク」の記載されている商品は、写真に表示された「紳士用ジャケット」を指すものといえる。
してみれば、アダプトは、平成19年6月30日に、本件商標と社会通念上同一といえる使用商標を、本件取り消しに係る商品に含まれる「紳士用ジャケット」に使用したものと認められる。
(3)請求人の主張について
(ア)請求人は、乙第1号証および同第2号証は、本件商標の所有権がアダプトに移転したことを証明するものとはいえないこと、(イ)写真の撮影者、撮影日、撮影場所などが何ら明示されておらず、また、当該商品が販売されるための在庫商品であるか明らかでないため、証明力を有しないから、在庫商品であるとしても、実際の取引の場において本件商標が使用された証拠となり得ないこと、(ウ)当該商品販売納品書の宛名には「BS-SALE」と記載されているのみで、納品先の名称または氏名の記載がなく、伝票の合計欄に販売合計金額の記載もない。納品先および販売合計金額が明らかでないから、乙第4号証は、販売の事実を証明するものとしては不十分であること、(オ)社内セールは、多くの場合、従業員やその家族を対象に開催されるから、かかる一般消費者を対象としない社内セールでの販売は、「商品についての登録商標の使用」には該当しないこと等を主張するが、被請求人と野口及び野口とアダプト間において営業の譲渡契約がなされていることから、少なくともアダプトは本件商標権の通常使用権者であり、使用商品及び使用時期については、乙第3号証及び乙第4号証を併せてみれば、通常使用権者は、要証明期間内である平成19年6月30日に、本件商標と社会通念上同一といえる使用商標を、本件取り消しに係る商品に含まれる「紳士用ジャケット」に使用したこと前記認定のとおりであるから、かかる請求人の主張は採用できない。
(4)以上のとおり、被請求人は、本件商標が本件期間内に取消請求に係る指定商品「被服(運動用特殊被服を除く)」について、通常使用権者による使用を証明したものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定に基づき、前記指定商品について、その登録を取り消すことは出来ない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-12-28 
結審通知日 2010-01-07 
審決日 2010-01-28 
出願番号 商願昭61-115845 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (117)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田代 茂夫鈴木 新五 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 内山 進
岩崎 良子
登録日 1988-12-19 
登録番号 商標登録第2101372号(T2101372) 
商標の称呼 バグッティーノ 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 

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