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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を取消(申立全部取消) X10 審判 一部申立て 登録を取消(申立全部取消) X10 |
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管理番号 | 1210091 |
異議申立番号 | 異議2008-900465 |
総通号数 | 122 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2010-02-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2008-11-20 |
確定日 | 2009-12-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5160857号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5160857号商標の指定商品中、第10類「医療用機械器具」についての商標登録を取り消す。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5160857号商標(以下「本件商標」という。)は、「NANOFAS」の欧文字及び「ナノファス」の片仮名文字を二段に併記してなり、平成19年12月6日に登録出願され、「医療用機械器具」を含む第10類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品並びに第1類、第3類、第5類、第11類、第16類、第17類、第20類ないし第25類及び第27類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成20年8月22日に設定登録されたものである。 2 引用商標 (1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第4861715号商標(以下「引用商標1」という。)は、「NANOPASS」の欧文字を標準文字により書してなり、平成16年9月2日に登録出願され、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、平成17年4月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 (2)同じく、登録第4861714号商標(以下「引用商標2」という。)は、「ナノパス」の片仮名文字を標準文字により書してなり、平成16年9月2日に登録出願され、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、平成17年4月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。(以下、一括していうときは「引用各商標」という。) 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標の指定商品中、第10類「医療用機械器具」については、商標法第4条第1項第11及び同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし第7号証を提出している。 (1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、欧文字「NANOFAS」を上段に、片仮名文字「ナノファス」を下段にそれぞれ横書きしてなるものであるから、これより「ナノファス」の称呼を生ずるものである。 他方、申立人が引用する引用各商標は、「NANOPASS」の欧文字及び「ナノパス」の片仮名文字を横書きしてなるものであるから、「ナノパス」の称呼を生ずるものである。 してみれば、本件商標と引用各商標とは、同音数からなる称呼で、相違する音は共に第3音の「ファ」と「パ」のみであって母音を共通にしている。 さらに、両商標の第4音「ス」は弱音であることから第3音に吸収され聴覚されにくく、また、相違する一音が中間に位置し、かつ母音を共通にすることから、両商標は全体で語調、語感が極めて近似しているものであるから、両商標は、称呼上類似するものである。 また、欧文字においては、引用商標の第8番目の文字が一文字多いことと、第5番目の「F」と「P」の文字の相違のみであることから、両商標は、外観においても極めて近似しており、外観上も類似する。 そして、両商標の指定商品は、前記したとおりであるから、類似する。 (2)商標法第4条第1項第15号について 申立人は、自社の商品「インスリン用注射針」に「ナノパス」及び「NANOPASS」の引用各商標を使用して、販売・宣伝活動における販促物等に2005年7月の発売以来3年に渡り使用し、前述の商品は2005年グッドデザイン大賞に選ばれ、新聞・雑誌に掲載されている事実から、引用各商標は指定商品の分野における取引者ないし需要者間のみならず、一般においても広く知られ周知なものといえる(甲第5号証ないし第7号証)。 したがって、上記の点を考慮するならば、本件商標がその指定商品中「医療用機械器具」に使用された場合には、申立人と何らかの関連を有する企業の業務に係わる商品であるかのような、出所についての混同を生ずるおそれがある。 4 当審における取消理由 当審において、登録異議申立に基づき、平成21年7月22日付けで商標権者に対して通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。 本件商標は、前記1のとおり、「NANOFAS」と「ナノファス」の文字よりなるところ、下段の片仮名文字が上段の欧文字の読みを特定したものと無理なく認識できるものであるから、本件商標は「ナノファス」の称呼を生ずるものと認められ、また、特定の観念を生じさせることのない造語として看取されるものである。 他方、引用各商標は、いずれも、その構成文字に相応して「ナノパス」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を生じさせることのない造語として看取されるものである。 そこで、本件商標から生ずる「ナノファス」の称呼と、引用各商標から生ずる「ナノパス」の称呼とを比較するに、両者は、共に4音構成からなり、称呼の識別上最も重要な部分である語頭の「ナノ」の音と、語尾の「ス」の音を共通にし、異なるところは第3音の「ファ」と「パ」に差異を有するものであるが、該差異音にしても、母音(a)を共通にするうえ、子音の調音箇所(両唇音)を同じにする近似した音であるから、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語調、語感が極めて近似したものとなり、称呼上相紛れるおそれがあるものといわなければならない。 加えて、いずれも観念を生じさせない造語であるから、観念の異同によって、音の差異を明確に認識し得るものともいえないから、時と処を異にしてみれば、彼此聞き違え、取り違えるおそれがあるものというべきである。 さらに、外観構成についてみても、本件商標の欧文字と引用商標1の欧文字とは、いずれも特異な書体ではなく、語頭からの「N」「A」「N」「O」、中間の「A」及び末尾「S」の各字を同じにし、相違するところは、相似た字形の「F」と「P」、末尾の「S」の一文字の多寡に過ぎないものであるから、全体としてみれば、相当に近似した印象を与える文字綴りのものである。 そうすると、本件商標は、引用各商標に類似する商標と判断されるものである。 また、本件商標の指定商品中、第10類に属する「医療用機械器具」は、引用各商標の指定商品と同一又は類似の商品であることが明らかである。 したがって、本件商標は、上記の指定商品について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 5 商標権者の意見 前記4の取消理由に対し、商標権者は、要旨以下のように意見を述べている。 (1)称呼について 「NANOPASS」、「ナノパス」は、「ナノパス」と称呼される。一方で、「NANOFAS/ナノファス」は、「ナノファス」と称呼される。 語頭の「ナノ」と末尾の「ス」は同音であるが、「パ」と「ファ」において相違する。「パ」は「ハ」に半濁点が付いて「パ」と発音される、1子音「パ行」と1母音「あ」から成る音で、両唇で閉鎖を作り、一気に開放することによって起こる破裂音である。そして、「ファ」は、1子音「ファ行」と1母音「あ」からなる音で、両唇で調音される無声摩擦音である。母音「あ」は同音であるが、子音が「パ行」と「ファ行」とで異なるといえる。「ファ行(f)」と「ハ行(h)」は近似するように聞こえるが、「パ行(p)」と「ファ行(f)」は、似ていない。また、「ハ」の半濁点「パ」は破裂音に対して、「ファ」は無声摩擦音で調音箇所が異なる。 そして、「ナノパス」全体としては、「ナノ」の後に「パス」を称呼すると破裂音の「パ」が印象的な特徴を有するといえる。一方「パ」に対応する「ナノファス」の「ファ」は無声摩擦音である。つまり、「ナノパス」の特徴部分である「パ」が、「ナノファス」の「ファ」と相違し、需要者が称呼で商標を認識するさいに、「パ」の部分をもって識別することは、容易に想像することができる。 故に、取引の実情を考慮したとしても、需要者が誤認混同することはない。 したがって、「ナノファス」は「ナノパス」の特徴部分である「パ」が相違しており、全体の語調、語感が極めて近似したものとなり、称呼上相紛れるおそれがあるものではない。 (2)過去の登録例について精査したところ以下の商標が登録されている。 A.商標登録第4545840号「ALPINE/アルパイン」(乙第1号証) a.商標登録第5231898号「アルファイン」(乙第2号証) B.商標登録第3155682号「ナノフェース」(乙第3号証) b.商標登録第4646617号「ナノエース」(乙第4号証) C.商標登録第3205780号「ナノ(スペース)アーク」(乙第5号証) c1.商標登録第4637285号「ナノフーク」(乙第6号証) c2.商標登録第4637276号「ナノパーク」(乙第7号証) これら異なる出願人で同一の指定商品について商標登録されており、事実、これまでに誤認混同が生じていないことからも全体の音調ないしは音感が近似し、互いに称呼上相紛れないことは明白である。 (3)外観について、 外観について、「NANOFAS」に対して「NANOPASS」は、「N」「A」「N」「O」及び「A」「S」は同じで、「F」と「P」が相違し、「S」が一文字少ない。 「NANOPASS」は「NANO」と「PASS」からなる組合せで、「NANOFAS」は「NANO」と「FAS」からなる組合せ商標である。 「PASS」と「FAS」とでは、「P」と「F」が相違し、「S」が一文字少なく、外観においても相違する。 ところで、「NANO」あるいは「ナノ」と他の言語の組合せからなる商標は一般的にたくさん使われており(1964件「商標出願・登録情報データベース調べ」)(乙第8号証)、これら「NANO」の後の言葉が、識別力を発揮するのに重要となることは云うまでもない。とすれば、「F」と「P」の相違及び「S」が一文字少ないことは昨今の英語の流通事情からも通常の注意力をもってすれば容易に判別できるものである。 したがって、外観についても相違する。 (4)以上のことから、「NANOFAS/ナノファス」は、「NANOPASS」及び「ナノパス」と類似であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるという判断は失当である。 6 当審の判断 (1)本件商標についてした先の取消理由は妥当なものであって、本件商標と引用各商標とは、称呼において互いに相紛らわしく、また、引用商標1との関係においては、欧文字部分で7文字と8文字いう構成にあって、中間の「F」と「P」の相異、末尾の「S」の有無の差異を除き、他の6文字すべてが同じ文字で構成されているという事実からすれば、需要者がこれを時と処を異にして離隔的に観察した場合には、外観においても彼此見誤るおそれがあるものと判断するのが相当である。 そうすると、両者は、観念上比較し得ないことを考慮しても、なおその出所について混同を生ずるおそれのある類似の商標といわなければならない。 加えて、引用各商標が申立人に係る「インスリン用注射針」を表示するものとして医療用機械器具の商品分野において一定程度の周知性を有しているものと認められること等、取引の実情を総合勘案すれば、本件商標をその指定商品中「医療用機械器具」について使用することにより、需要者はその商品の出所を混同するおそれがあるといわざるを得ない。 (2)ところで、商標権者は、意見書において、両者の称呼を比較した場合、「パ」の音は、「ハ」に半濁点が付いて「パ」と発音される、1子音「パ行」と1母音「あ」から成る音で、一気に開放することによって起こる破裂音であり、他方、「ファ」は、1子音「ファ行」と1母音「あ」からなる音で無声摩擦音であるから、母音「あ」は同音であるが、子音が「パ行」と「ファ行」とで異なるといえるから、「ファ行(f)」と「ハ行(h)」は近似するように聞こえるが、「パ行(p)」と「ファ行(f)」は、似ていない、と主張している。 しかしながら、取消理由は、該差異音にしても、母音(あ)を共通にするうえ、子音の調音箇所(両唇音)を同じにする近似した音であって、しかも、中間部にあって明瞭に聴取され難いこともあって、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語韻語調が近似し彼此聞き誤るおそれがあると認定し、かつ、前記取引事情を総合勘案した結果、両商標を類似としたものであって、この認定、判断に誤りはない。 (3)また、商標権者が、その主張の根拠として提出した審決例(乙第1号証ないし第7号証)をみるに、その指定商品は「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品、金属鉱石、測定器械器具、アーク溶接機」等に係る事例であって、本件事案とは指定商品の分野を異にし、また、その各商標の構成も本件事案とは自ずと事情を異にするものであるから、それらの審決例をもって、本件の類否判定の基準とするのは必ずしも適切でなく、その主張は採用することができない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件商標は、引用各商標と類似する商標であり、かつ、その指定商品中、第10類「医療用機械器具」については、引用各商標の指定商品と同一又は類似する商品である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ないものであるから、同法第43条の3第2号に基づき、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2009-10-27 |
出願番号 | 商願2007-121619(T2007-121619) |
審決分類 |
T
1
652・
262-
Z
(X10)
T 1 652・ 261- Z (X10) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 石戸 円、箕輪 秀人 |
特許庁審判長 |
佐藤 達夫 |
特許庁審判官 |
小川 きみえ 野口 美代子 |
登録日 | 2008-08-22 |
登録番号 | 商標登録第5160857号(T5160857) |
権利者 | 東洋製罐株式会社 |
商標の称呼 | ナノファス |