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審決分類 |
審判 全部無効 商8条先願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y12 |
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管理番号 | 1208349 |
審判番号 | 無効2008-890114 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2008-11-13 |
確定日 | 2009-12-07 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4727232号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4727232号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4727232号商標(以下「本件商標」という。)は、「PHANTOM」の文字を標準文字で表してなり、平成14年12月20日に登録出願され、第12類「自動車並びにその部品及び附属品(タイヤ・チューブを除く。)」を指定商品として、平成15年11月21日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張の要旨 請求人は、結論と同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第2号証を提出した。 1 請求の理由 (1)無効事由 本件商標登録は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである。 (2)無効原因 審判請求人所有に係る登録第4998421号商標(以下「引用商標」又は「職権引用商標」ということがある。)は、本件商標の先出願(平成14年4月2日(2002.4.2))に係るものであって、両商標は同一及び類似しており、その指定商品も同一及び類似するものである。 ・商標の同一及び類似について 本件商標は、標準文字で「PHANTOM」と記載され、一方審判請求人所有に係る引用商標も英文字にて「PHANTOM」と記載されており、双方の商標は、同一及び類似の商標である。 ・商品の同一及び類似について 本件の指定商品については、商標法施行令別表にも示されているように、引用商標の指定商品とは販売ならびに需要者が同一及び類似する商品ということができる。 以上のように本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は拒否されるものである。 2 平成21年2月16日付けで提出された答弁に対する上申 本件については、被請求人より提出の答弁書においてあたかも請求人との交渉中であるかのような主旨の記載があるが、そのような事実は一切なく、請求人は当該審判の審理を通じて妥当な審決を得ることを強く望んでいる。 ついては、速やかに審理を進めて頂くようお願いする。 第3 被請求人の答弁の要旨 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」と答弁し、証拠方法として乙第1号証を提出した。 平成21年3月25日付けで提出された答弁 本件審判の請求の理由において、請求人は「本件商標登録は、商標法第4条第1項第11号に該当する」として登録第4998421号商標を引用している。しかし、当該引用商標は本件商標の登録日よりも後に設定登録されたものであるから、本件商標登録は商標法第4条第1号第11号に違反して登録されたものではない。したがって、本件審判請求には理由がない。 商標登録無効審判は、無効理由の根拠となる条文に基づいて請求すべきものであるから、根拠条文を変更する無効審判請求書の請求の理由の補正は、要旨を変更するものであって許されない(商標法第56条で準用する特許法第131条の2第1項)。 なお、被請求人は平成21年2月16日付答弁書にて、本件審理の猶予をお願いする旨述べたが、状況が変わったので審理を進めるようお願いする。 第4 無効理由通知 1 審判請求の要旨変更について 被請求人は、「引用商標が本件商標の登録日よりも後に設定登録されたものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。商標登録無効審判は、無効理由の根拠となる条文に基づいて請求すべきものであるから、根拠条文を変更する無効審判請求書の請求の理由の補正は、要旨を変更するものであって許されない(商標法第56条で準用する特許法第131条の2第1項)。」旨述べている。 しかしながら、請求人は、「請求の理由」を変更する補正をしていないから、本件無効審判の請求に要旨の変更があったものとは認められない。 2 職権による審理について (1)請求の趣旨について 商標法第56条第1項で準用する特許法第153条第3項には、「審判においては、請求人が申し立てない請求の趣旨については、審理することができない。」と規定されている。 ところで、本件審判の「請求の趣旨」は、「登録第4727232号商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」というものである。そして、請求人は、本件審判の「請求の趣旨」を何ら変更していないものである。 したがって、商標法第56条第1項で準用する特許法第153条第3項の反対解釈として、請求人が申し立てる「登録第4727232号商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」という請求の趣旨については、審理することができるものと解される。 (2)請求の理由について 商標法第56条第1項で準用する特許法第153条第1項には、「審判においては、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。」と規定されている。 してみれば、当事者と認められる請求人が申し立てない理由についても、審理することができるものと解される。 職権において調査したところ、登録第4998421号商標(以下「職権引用商標」という。)は、本件商標よりも後に登録されたものであるが、本件商標登録出願の日前の登録出願に係るものである。 したがって、本件無効審判においては、本件商標が、商標法第8条第1項に違反して登録されたものであるか否かについて、審理するのが相当である。 3 商標法第8条第1項について (1)本件商標は、「PHANTOM」の欧文字を標準文字で左横書きしてなり、平成14年12月20日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品(タイヤ・チューブを除く。)」を指定商品として、同15年9月9日に登録査定、同年11月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 (2)職権引用商標は、「PHANTOM」の欧文字を左横書きしてなり、平成14年4月2日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品(タイヤ・チューブを除く。)」を指定商品として、同18年9月1日に登録査定、同年10月27日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 (3)そこで、本件商標と職権引用商標の類否についてみるに、両商標は、前記のとおり、「PHANTOM」の欧文字を表したものであるから、外観において類似する。 また、両商標は、「幻。幽霊。」の意味を有する英語を表したものであるから、「幻。幽霊。」の観念及び「ファントム」の称呼を生じ、これらの観念及び称呼を共通にする商標と認められる。 したがって、両商標は、類似する商標といわざるを得ない。 また、両商標の指定商品は、上記のとおり、同一の商品と認められる。 (4)以上のとおり、本件商標は、先願である他人の職権引用商標と商標が類似し、指定商品が同一のものであるから、商標法第8条第1項に違反して登録されたものである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項第1号により、無効とすべきものである。 第5 無効理由通知に対する請求人の意見 請求人は、無効理由通知に対し意見書を提出していない。 第6 無効理由通知に対する被請求人の意見 平成21年4月21日付で発せられた無効理由通知書では、商標法第56条第1項で準用する特許法第153条第1項を根拠に、請求人が申し立てない理由についても審理することができるとした上で、本件商標が商標法第8条第1項に違反して登録されたものであるとの、新たな無効理由を通知した。 ところで、本件商標は平成15年11月21日に設定登録され、平成20年11月21日を以って除斥期間が経過している。 今般の無効理由通知書は、除斥期間経過後に新たな無効理由を通知するものであり、実質的には、除斥期間経過後に新たな無効審判が請求されたのと同じ効果を有する。 確かに、特許法第153条第1項は、「審判においては、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。」と規定している。しかし、(1)除斥期間が設けられている趣旨が、「既存の法律状態を尊重し維持するため」であること(特許庁編 工業所有権法(産業財産権法)逐条解説)、(2)特許法では廃止されたのに対し、商標法において除斥期間が存置されているのは、「実体的に特許法が除斥期間を有することによる弊害が大きいのに対し、商標法にはそのような事態がなく、むしろ権利の安定化の点が重視されている」からであること(同逐条解説)、また、(3)審判請求時に主張された無効理由では商標登録が無効となることはないという被請求人の期待を保護するべきであること、との観点からすれば、除斥期間経過後の職権による審理は制限されるべきであり、新たな無効理由の追加は許されないと解すべきである。 なお、審判請求自体が除斥期間内になされていたときに、除斥期間経過後において新たな無効理由を主張することが許されるか否か、という点について、「許されない」、とする判決がある(最高裁判所昭和58年2月17日判決)。職権審理の事案ではないが、無効審判請求は、「各無効理由ごとに一個の請求があるものと解すべきであり、無効審判請求後に新たな無効理由を追加主張することは、新たな無効審判の請求の追加をすることになるものと解するのが相当」であり、「除斥期間経過後は、無効審判手続きにおいて新たな無効理由を追加主張することは許されないものといわなければならない」との最高裁判所の判断は、職権審理により新たな無効理由が追加された場合にも該当すると解すべきである。 以上から、本件商標の登録に無効理由たる瑕疵が存在していたとしても、その瑕疵は除斥期間の経過により既に治癒しているので、無効とされるべきではない。また、本件商標は、本件審判請求時に請求人が無効理由として挙げた、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。 第7 当審の判断 1 除斥期間について (1)商標法は、第47条において、「商標登録が第3条、第4条第1項第8号若しくは第11号から第14号まで若しくは第8条第1項、第2項若しくは第5項の規定に違反してされたとき、商標登録が第4条第1項第10号若しくは第17号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が第4条第1項第15号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)又は商標登録が第46条第1項第3号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない。」と規定している。 (2)商標登録が商標法第4条第1項第11号又は同法第8条第1項に該当するときは、その商標登録についての無効審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができないものと解される。 本件商標登録原簿によれば、本件商標は、上記第1のとおり、平成15年11月21日に設定登録されたものである。 本件審判請求書及び本件商標登録原簿によれば、本件無効審判は、平成20年11月13日に請求されている。 してみれば、本件商標の登録についての無効審判は、商標権の設定の登録の日から5年以内に請求されているものであるから、商標法第47条に規定する除斥期間を経過した後に請求されたものということができないものである。 2 無効事由について 登録商標についての登録無効事由とは、同事由を定めた法条に該当する具体的事実を指すのであり、これを主張するに当たっては、法条を指摘することまでは必ずしも必要ではなく、具体的事実を指摘することによりその事実が該当する法条の適用を求める審判請求人の意思が看取できればよいものと解される(東京高裁 平成4年(行ケ)第132号、平成4年(行ケ)第133号、平成4年(行ケ)第134号 平成5年7月29日判決言渡)。 3 無効理由を通知する前の当事者の手続について (1)請求人は、本件審判請求書の無効原因において、「本件登録第号商標は、手続きの経緯に示すとおり登録されたものであるが、審判請求人所有に係る登録第4998421号商標はその先出願(平成14年4月2日(2002.4.2))に係るものであって、両商標は同一及び類似しており、その指定商品も同一及び類似するものである。」と述べており、登録第4998421号商標(引用商標)が先出願に係るものであることを述べているが、登録第4998421号商標(引用商標)が本件商標よりも先に登録されたことについては触れていない。 (2)請求人は、本件審判請求書において、単にその無効理由の根拠条項(先願を要件とする商標法第8条第1項と先願先登録を要件とする同法第4条第1項第11号)を誤記したにすぎないものと解するのが相当である。 (3)これに対し、被請求人は、本件無効理由通知が発送される前の平成21年3月25日付け審判事件答弁書において、「当該引用商標は本件商標の登録日よりも後に設定登録されたものであるから、本件商標登録は商標法第4条第1号第11号に違反して登録されたものではない。したがって、本件審判請求には理由がない。商標登録無効審判は、無効理由の根拠となる条文に基づいて請求すべきものであるから、根拠条文を変更する無効審判請求書の請求の理由の補正は、要旨を変更するものであって許されない(商標法第56条で準用する特許法第131条の2第1項)。」旨述べている。 (4)ここで、被請求人は、同答弁書において、「引用商標が本件商標の登録日よりも後に設定登録されたものであること」及び「本件商標の登録が商標法第4条第1号第11号に違反して登録されたものではないこと」について反論しているが、「引用商標が本件商標よりも先に登録出願されたものであること」については、反論していない。 そして、引用商標が本件商標よりも先に登録出願されたものであることは、除斥期間内に請求された本件無効審判請求書によって明らかである。 (5)また、被請求人は、同答弁書において、「根拠条文を変更する無効審判請求書の請求の理由の補正は要旨を変更するものであって許されない」旨述べている。 してみれば、引用商標が本件商標よりも先に登録出願された本件の場合において、被請求人は、請求人が「請求の理由に記載した商標法第4条第1号第11号に違反して登録された」とする根拠条文を変更する補正があり得ることを、本件無効理由通知の発送前に予想し得る状態にあったものと認めることができる。 (6)一般論として、商標法第47条に規定する登録の無効審判の請求に対する除斥期間は、商標登録が過誤によってなされたときでも、一定期間無効審判の請求がなく平穏に経過したときは、その既存の法律状態を尊重し維持するために無効理由たる瑕疵が治癒したものとして、その理由によっては無効審判の請求を認めないものである。 しかしながら、本件のように除斥期間を経過する前に無効審判の請求がなされ、登録番号及び商標により引用商標が特定され、その引用商標には変更がないものであり、除斥期間内に特定された当該引用商標が本件商標よりも先に商標登録出願されたものであって、かつ、根拠条文を変更する補正が予想し得る状態にあるときは、たとえ審判請求に係る根拠条文が相違していたとしても、このことをもって本件審判請求には理由がないということができないものである。 4 職権による審理と除斥期間の適用について (1)「請求の趣旨」について 請求人が申し立てる「登録第4727232号商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」という請求の趣旨については、審理することができるものと解される(商標法第56条第1項で準用する特許法第153条第3項)。 (2)「請求の理由」の職権による審理について 商標法第56条第1項で準用する特許法第153条第1項には、「審判においては、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。」と規定されている。してみれば、審判においては、当事者と認められる請求人が申し立てない理由についても、審理することができるものと解される。職権において調査したところ、登録第4998421号商標は、本件商標よりも後に登録されたものであるが、本件商標登録出願の日前の登録出願に係るものである。 したがって、本件無効審判においては、本件商標が、商標法第8条第1項に違反して登録されたものであるか否かについて審理することができる。 (3)職権による審理と除斥期間の適用について 請求人は、本件審判請求後、請求の趣旨及び請求の理由を変更せず、また、引用商標の変更、追加も行っていないものである。 そして、本件無効理由通知で引用した職権引用商標は、本件審判請求書において特定された引用商標(登録第4998421号商標)と同一である。 なお、本件無効理由通知は、商標法第56条第1項で準用する特許法第153条第2項により、請求人及び被請求人に対し、意見を申し立てる機会を与えるために、職権において通知したものである。 したがって、本件のようにその主張に係る基礎的事実を何ら変更、追加することなく、単にその無効理由の根拠条項を職権において通知した場合にも、新たな無効理由の追加ということはできないものと解するのが相当である。 (4)また、最高裁判所昭和58年2月17日判決(昭和57年(行ツ)第99号)は、除斥期間経過後に引用登録商標を引用し、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである旨の主張が、除斥期間経過後は、無効審判手続きにおいて新たな無効理由を追加主張することは許されないと判断され退けられた事案であるから、除斥期間内に引用商標を特定して無効審判請求し、その後、請求の趣旨及び請求の理由を変更せず、引用商標の変更、追加も行っていない本件とは事案を異にするものである。 (5)除斥期間経過後に審判官の職権で無効理由を通知し、成立審決をした事例 なお、実用新案の事例ではあるが、「無効審判請求が外国刊行物をもつて除斥期間内になされているとき、同一刊行物を除斥期間経過後に理由を変更して引用しても実用新案法の除斥期間の制限には反しない。」と判示した判決(東京高裁 昭和48年(行ケ)第52号 昭和50年1月23日判決言渡)が存在する。 5 商標法第8条第1項について 本件商標が、商標法第8条第1項に違反して登録されたものであることの詳細は、第4 無効理由通知の3で述べたとおりである。 6 まとめ したがって、本件商標の登録は、商標法第8条第1項に違反してなされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-07-14 |
結審通知日 | 2009-07-16 |
審決日 | 2009-07-28 |
出願番号 | 商願2002-107799(T2002-107799) |
審決分類 |
T
1
11・
4-
Z
(Y12)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
渡邉 健司 |
特許庁審判官 |
平澤 芳行 瀧本 佐代子 |
登録日 | 2003-11-21 |
登録番号 | 商標登録第4727232号(T4727232) |
商標の称呼 | ファントム |
代理人 | 江崎 光史 |
代理人 | 中村 政美 |