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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y29
管理番号 1208242 
審判番号 取消2008-301540 
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-12-05 
確定日 2009-11-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4676180号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4676180号商標(以下「本件商標」という。)は,「大江戸焼」の文字を標準文字により表してなり,平成14年9月13日に登録出願,第29類「焼豚」を指定商品として,同15年5月30日に設定登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は,「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む。但し,枝番の全てを引用する場合は,その枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標の商標権者は,日本国内において本件商標を継続して3年以上「焼豚」について使用していない。また,その商標登録原簿に徴する限り,本件商標に専用使用権或いは通常使用権が設定・許諾されている事実も見当たらない(甲第1号証)。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標権者による使用について
乙第3号証及び乙第4号証によっては,商標権者が本件商標を指定商品「焼豚」について使用している事実は何ら立証されない。
乙第3号証の写真は,使用者,使用年月日,撮影年月日のみならず対象物も不明であり,また,該写真には本件商標が付されていないことから,本件商標を「焼豚」に使用していることの証拠とはならないものである。また,乙第4号証の納品書は,商標権者と住所及び代表取締役を同一とする株式会社南部塾(以下「南部塾」という。)宛てのものであり(乙第5号証),身内に対する納品書であって,しかも本件商標の設定登録時から約4年半後の平成19年12月17日付及び約5年後の同20年7月19日付 という限定的な期間における納品書6枚のみでは,現実に取引で用いられたものであるかを確認することはできない。
(2)使用権者による使用について
乙第5号証ないし乙第13号証によっては,使用権者が本件商標を「焼豚」について使用している事実は何ら立証されない。
(ア)乙第6号証の商標使用許諾契約書は,外形上はいわゆる通常使用権許諾契約書ではあるものの,乙第5号証から明らかなように,使用権者とされる南部塾と商標権者とは,同一人がオーナーと考えられる企業であることから,このように実質的に同一人とも考えられる企業間における使用許諾契約書については,その信憑性には疑問があるといわざるを得ないものである。
なお,被請求人は南部塾に対し,飲食店「くま権」の運営と共に焼豚「大江戸焼」の販売を行わせることとした旨も述べているが,乙第6号証は商標権者と南部塾を当事者とする使用許諾契約書であって,飲食店「くま権」に本件商標の使用を許諾する旨の記載は全くない。
したがって,「くま権」と称する飲食店は商標権者でも使用権者でもない権原なき第三者である。
(イ)乙第7号証の飲食店「くま権」のチラシ及び包装形態の写真は,その使用年月日,撮影年月日が不明であって,本件審判請求の登録前3年以内に使用されたものであることは何ら立証されていない。また,該チラシなどからは,「くま権」と称する者が,チラシなどに記載されている商品の提供者であることは推認できるものの,上述のとおり「くま権」は本件審判においては商標権者でも使用権者でもない権原なき第三者であり,被請求人が使用権者と主張する南部塾がチラシなどの提供者であることは不明である。
(ウ)請求人は,乙第8号証の南部塾の請求書控えにより,南部塾が本件商標を付した「焼豚」を乙第7号証で示す形態で販売している事実を証明するとしているが,該各請求書には,通常の商取引では請求書に記載されているべき「振込先」の記載が一切存在せず,また,その体裁,書体は納品書(乙第4号証)と同じものである。さらには,各請求書写しは,使用権者とされる南部塾が保管している「控」の写しであるにも拘わらず,「控」に社印が押印されており不自然なものである。
そして,本件商標の設定登録時から約4年半後の平成19年12月20日付及び約5年後の平成20年7月20日付という限定的な期間における請求書(控)7枚のみであることから,これらの請求書(控)の写しは,通常の商取引で実際に使用された請求書(控)の写しとしては極めて不思議な体裁である。
また,乙第8号証の1の請求書における「田中一夫」の所在が不明であり,同様に乙第8号証の2,7の「椎名塗装業」をGoogleを利用して検索したがヒットせず(甲第2号証),「有限会社椎名塗装業」の所在が不明であるから,これらが現実に取引されたかを確認できない。
さらには,乙第8号証の3,5の「菱幸運輸株式会社」は,商標権者(被請求人)と同一住所に所在し,代表取締役を同じくし,また,乙第8号証の4,6の「株式会社菱幸整備」も同様であって(甲第3号証),これらは実質的には同一人とも考えられる企業間における「身内」の請求書であるから,これらが現実に取引されたかを確認できない。
(エ)乙第9号証,乙第12号証及び乙第13号証として提出されている写真は,その使用年月日,撮影年月日が不明であって,本件審判請求の登録前3年以内のものであることが立証されていない。加えて,これらの写真が屋号を「くま権」とする飲食店に関するものであることは推認できるものの,被請求人が使用権者と主張する南部塾による使用であることは何ら立証されていない。
なお,被請求人は,乙第9号証の1がくま権の店頭の写真であって,店頭には広告用大提灯及び南部塾の看板が取り付けられていること,乙第9号証の2が広告用提灯の拡大写真であって「大江戸焼」が大きく表示されていると述べ,乙第9号証の3,4により当該提灯には「南部塾」及び「くま権」の文字が表示されていると述べているが,上述のとおり,そもそもこれらの写真は使用年月日,撮影年月日が不明であることに加え,恰も店舗の広告に用いられる提灯の類であって何の商品の広告として用いられている提灯であるかが不明であるため,該提灯が本件商標の指定商品についての「宣伝広告の使用」であるとは認められない。
(オ)乙第10号証(納品証明書)及び乙第11号証(請求書)は,有限会社吉田工房が南部塾に提灯を納品したことの証左とは認められるものの,「提灯を納品した事実」と南部塾が本件商標を指定商品「焼豚」について使用していることと一致するものではなく,使用権者による本件商標を指定商品について使用していることは何ら立証されていない。
(カ)さらに,被請求人は「くま権」でのサービスの提供方法などを答弁書で述べ,乙第12号証及び乙第13号証として写真を提出しているが,そもそもこれらの写真は使用年月日,撮影年月日が不明であることに加え,その内容が飲食店の店内写真らしきことは伺えるものの「店内での手書きメニューの類」についての写真であり,本件商標を指定商品「焼豚」について使用していることの証拠とはなり得ないものである。
そして,上述したとおり「くま権」なる者は,本件商標の商標権者でも使用権者でもないことから,かかる証拠については主体的要件を欠くものである。
(3)結語
以上のとおり,被請求人が提出した証拠によっては本件審判請求の登録前3年以内における登録商標の指定商品についての使用が立証されていないことが明らかであるから,本件商標の登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由及び審尋に対する回答を次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第24号証(枝番を含む。ただし,枝番の全てを引用する場合は,その枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 答弁の理由
本件商標は,本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者並びに商標権者から使用許諾を受けている南部塾によって,「焼豚」について使用されている。
(1)商標権者による使用について
乙第3号証の焼豚の製造状態を撮影した写真及び乙第4号証の納品書から,商標権者が平成19年12月,平成20年7月に本件商標を「焼豚」について使用していることが明らかである。
(2)使用権者(南部塾)による使用について
商標権者の経営者(代表取締役)である熊谷直幸(乙第1号証)は,平成18年5月19日に「株式会社南部塾」を設立し(乙第5号証),同社に対し飲食店「くま権」の運営と共に焼豚「大江戸焼」の販売を行なわせることとし,本件商標の使用を許諾した(乙第6号証)。したがって,「南部塾」は本件商標の使用権者である。
(ア)乙第7号証の1は,焼豚1本入りと化粧箱(2本)入りがあることを広告し,主として「くま権」において配布される広告用チラシ,同の2は,当該チラシ中に表示されている写真の拡大写真,同の3は,当該チラシ中の写真の右側に表示されている焼豚1本入りの包装形態の写真,同の4及び同の5は,焼豚1本入りと化粧箱(2本)入りの包装に添付されるチラシである。これらのチラシにはいずれも「大江戸焼」の文字が表示されている。
(イ)南部塾は,本件商標を使用した「焼豚」を,平成19年12月20日に「田中一夫」に対し3箱,「有限会社椎名塗装業」に対し10箱,「菱幸運輸株式会社」に対し51箱,「株式会社菱幸整備」に対し25箱と単品で32本を販売している。
また,平成20年7月20日に「菱幸運輸株式会社」に対し58箱,「株式会社菱幸整備」に対し28箱,「有限会社椎名塗装業」に対し10箱を販売し,それぞれの販売先に対し請求書(乙第8号証の1ないし7)を発行している。
(ウ)以上から,使用権者である南部塾が平成19年12月,平成20年7月に本件商標を「焼豚」に使用していることは明らかである。
(4)「くま権」での使用について
南部塾が経営する「くま権」は,本件商標を「焼豚」について使用している。
(ア)乙第9号証の1は,「くま権」の店頭を撮影した写真であり,店頭には広告用大提灯,南部塾の看板が取付けられている。同の2は,広告用提灯の拡大写真であり「大江戸焼」が大きく表示され,当該提灯には「南部塾」及び「くま権」(同の3及び4)の文字が表示されている。
(イ)乙第10号証の納品証明書では,「くま権」の店頭に吊下げられている上記提灯に文字書入れを行なった有限会社吉田工房が,南部塾から依頼されて当該提灯に「大江戸焼」,「南部塾」及び「くま権」の文字を書入れて平成20年8月30日に南部塾に納品したことが証明されている。
(ウ)上記のような事実から,南部塾が経営する「くま権」において,平成20年9月から前記提灯を店頭に吊り下げて本件商標「大江戸焼」を宣伝広告していることは明らかである。
(エ)「くま権」においては,焼豚「大江戸焼」を持ち帰り或いは贈答品として発送するサービスを行なっている。そのため「くま権」は,焼豚「大江戸焼」を在庫として店内に設置する冷蔵庫に収納し,その上部に「1本 1800円 炭火焼 焼豚 大江戸焼」と表示されたポップが貼り付けられ(乙第12号証),店内の壁には店内で提供する「大江戸焼焼豚 740円」がメニューとして貼り出されて宣伝広告されている(乙第13号証)。
(オ)そして,乙第7号証の1の広告チラシは,「くま権」の店内において顧客への宣伝広告用として備えてある。
(カ)以上から,本件商標の使用権を有する南部塾が経営する「くま権」は,少なくとも平成20年9月から本件商標を店頭の提灯により宣伝広告しており「焼豚」に使用している。
2 審尋に対する回答
被請求人は,南部塾によって「大江戸焼」を付した「焼豚」の販売行為が行われたことを立証する。
(1)南部塾が経営する「くま権」の売上高に関する総勘定元帳抜粋写し(乙第14号証)を提出する。この総勘定元帳には,平成20年1月7日に,有限会社椎名塗装から焼き豚代として入金があり,課税売上内税扱いとして41,315円の入金売り上げ処理がなされている。これは焼豚「大江戸焼」10箱分の代金と郵送料を合わせた43,380円についての有限会社椎名塗装業に対する請求書(乙第8号証の2)の請求額が,普通預金口座に入金された事実を示すものである。なお,この金額は内税処理として請求額43,380円÷1.05により算出した数値である。
(2)乙第7号証の1及び2に示された包装箱が,平成19年11月及び同年12月頃に納品されたことを示す書類として,平成19年11月21日付け及び同年12月3日付けの請求書及び御請求金額合計書写し(乙第19号証及び乙第20号証)を提出する。
(3)「大江戸焼」の材料となる「国産豚ばらブロック」を平成19年11月,同年12月に購入したことを示す取引書類を乙第22号証及び乙第23号証として提出する。
また,「くま権」が,南部塾が営む飲食業として展開する飲食店であることは,履歴事項全部証明書(乙第5号証)及び「くま権」の店頭につり下げられた広告用大提灯に「大江戸焼」と「南部塾」の表示があることなどから明らかである。

第4 当審における審尋(要旨)
乙第8号証の1及び乙第8号証の2の請求書控えによれば,株式会社南部塾が被請求人と直接関わりのない第三者に「大江戸焼」の商標を付した焼豚を販売したことが伺われるが,この請求書控えのみをもって実際に商品の販売があったことを認めることはできない。そのため,商品の販売行為が実際に行われことを裏付けるための証拠(例えば,宅配伝票,商品の購入者からの入金が確認できる振込伝票,帳簿などの取引書類など)を提出されたい。また,上記のほか乙7号証の1ないし5に示された包装用紙や包装箱などが審判請求の登録前3年の間に作成されたことを示す取引書類などがあれば,併せて提出されたい。

第5 当審の判断
1 乙第各号証によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証及び乙第5号証は,商標権者(東日本車体株式会社)及び南部塾の履歴事項全部証明書である。その双方の役員に関する事項の欄に,代表取締役として「熊谷直幸」,本店の欄に「東京都江戸川区臨海町四丁目2番2号」,目的の欄に「飲食業」の記載がある。
(2)乙第24号証は,「南部塾」を見出しとするウェブページである。これには,塾長として「熊谷直幸」,「1995(平成7年)株式会社熊谷商産設立/飲食業『くま権』十割そば(そば粉100%)」,「2006年(平成18年)南部塾設立」の記載がある。
(3)乙第6号証は,被請求人(商標権者)と南部塾との間で締結した,本件商標権の使用権許諾に関する平成18年5月20日付け「商標使用許諾契約書」であるところ,該契約書によれば,南部塾は,被請求人から本件商標を「焼豚」に使用することについての許諾を受けている。
(4)乙第7号証の1は,大江戸焼の「広告チラシ」である。これには,「大江戸焼」,「炭火焼豚」,「1本 ¥1,800」,「化粧箱(二本)入り ¥4,200」,連絡先として,「くま権」及びその住所,電話番号などの記載がある。また,該チラシの中央には,ざるに載せられた2本の焼豚が入った化粧箱とその化粧箱の蓋などが写された写真が表示されている。そして,乙第7号証の2は,当該チラシ中に表示されている写真の拡大写真,乙第7号証の4は,化粧箱の蓋に張られたものと同じものと認められるチラシであり,これには,「焼豚炭火」,「手作り」,「大江戸焼」及び「くま権」などの記載がある。
(5)乙第8号証の2は,平成19年12月20日付けの,有限会社椎名塗装業宛て南部塾発行の「請求書」(控)である。これには,内容欄に「大江戸焼(化粧箱入り)お歳暮用」,金額欄に,小計及び合計欄として「43,380円,(消費税込み)」などの記載がある。
(6)乙第9号証の1ないし4は,飲食店の店舗正面を写した写真と,その店舗の入り口に吊された提灯を撮影した写真である。同の1の店舗正面には,上部に「くま権」の看板,入口に「大江戸焼」と表示された提灯と「礼儀作法 南部塾」と書かれた看板が設置されている。また,同2ないし4の提灯には,「大江戸焼」,「南部塾」及び「くま権」の文字が記載されている。
(7)乙第10号証は,有限会社吉田工房の代表者名及び代表者印のある「南部塾が経営するくま権の店頭に吊り下げる提灯に,大江戸焼,南部塾及びくま権の文字を書き入れて平成20年8月30日に南部塾に納品した」旨を記載した証明書であり,乙第11号証は,乙第10号証で証明した提灯の文字書き入れに関する南部塾宛,有限会社吉田工房発行の平成20年8月30日付けの請求書である。
(8)乙第12号証及び乙第13号証は,飲食店の店舗内を写した写真と認められるところ,乙第12号証の写真には,酒瓶が入れられた冷蔵庫の上部に「自家製1本1800」,「炭火焼」,「焼豚」,「大江戸焼」の文字が表示され,その冷蔵庫の前に,容器に並べられた5本の焼豚らしきものが写されている。また,乙第13号証の写真には,壁面に「自家製炭火焼/大江戸焼/焼豚七四0円」と書かれた張り紙が貼付されている。
(9)乙第14号証は,「くま権売上高」の表題のある「南部塾」の売上高に関する「総勘定元帳(抜粋)」写しである。これには,日付/伝票No欄に「1/7 937」,相手勘定科目/相手補助科目/相手部門欄に「普通預金/3174・・・(くま権)/くま権」,摘要欄に「焼き豚代 (有)椎名塗装業様」,補助科目/税区分/貸方金額欄に「課税売上内税」,部門/貸方金額欄に「くま権/41,315円」の記載がある。そして,41,315円は,前記乙第8号証の2の請求書に表示された43,380円から消費税分を差し引いた額に相当する。
(10)乙第22号証及び乙第23号証は,平成19年12月1日付け及び平成20年1月4日付けの,くま権宛て肉の専門店(株)広喜屋発行の同年11月分及び12月分の請求額が記載された請求書とその内訳となる日ごとの請求書である。それぞれの日ごとの請求書の品名欄に「国産豚ばらブロック」の記載とその数量,単価,金額の記載がある。
2 前記1で認定した事実及び被請求人の主張によれば,南部塾と被請求人の代表者は同一人であり,また,該代表者がくま権と南部塾の設立に関わり,南部塾の設立後は,南部塾がくま権の経営を行っていることが認められる。この南部塾とくま権の関係については,乙第5号証の南部塾の履歴事項全部証明書,乙第14号証の「南部塾」の売上高に関する「総勘定元帳」の記載及び乙第9号証の店舗写真などにより容易に推認し得るところである。そして,被請求人と南部塾の間で本件商標の使用権許諾契約が締結されていることが認められる。
そうすると,南部塾は,本件商標権の通常使用権者であり,また,くま権は南部塾が経営する飲食店であるから,くま権の本件商標の使用も南部塾の使用とみて差し支えないものということができる。
そして,南部塾は,平成19年12月20日ころ,乙第7号証の1の写真と同様の本件商標が表示された化粧箱入りの焼豚10箱を,有限会社椎名塗装業に販売し,有限会社椎名塗装業は,その代金を平成20年1月7日に,南部塾に振り込んだことが認められる。
また,くま権においても,遅くとも文字が書かれた提灯が納品された平成20年8月30日以降,焼豚「大江戸焼」を店内において料理して客に提供するとともに,持ち帰り用として販売していたであろうことが容易に推認できる。
したがって,本件商標権の通常使用権者である南部塾は,本件審判の登録(平成20年12月24日)前3年以内である平成19年12月頃に,本件商標と社会通念上同一と認められる「大江戸焼」の文字からなる商標を表示した請求に係る指定商品「焼豚」を,日本国内に所在する有限会社椎名塗装業に販売したことが認められ,また,「南部塾」が経営する「くま権」においても,遅くとも平成20年8月30日以降に「大江戸焼」の文字からなる商標を表示した「焼豚」を,店内で販売していたことが容易に推認し得るところである。
3 請求人に主張について
(1)通常使用権者について
請求人は,「南部塾と商標権者は同一人がオーナーと考えられる企業であ
り,このように実質的には同一人とも考えられる企業間における使用許諾契約書はその信憑性に疑問がある。また,その契約書に「くま権」に本件商標の使用を許諾する旨の記載はないことから,くま権は商標権者でも使用権者でもない権原なき第三者である」旨主張する。
しかし,請求人も指摘するとおり,南部塾と商標権者の代表者は同一人である。そして,前記の認定のとおり,くま権は南部塾が経営する飲食店ということができる。そうすると,同一人が経営する被請求人と南部塾との間では,仮に使用許諾契約が締結されていないとしても,使用に関する合意がなされているであろうことは容易に推認できるところであり,使用許諾契約書はその信憑性については疑う余地はないものと言うべきである。
(2)請求人は,有限会社椎名塗装業が,インターネットの検索エンジンであるGoogleで検索してもヒットしないから,現実に取引されたことが確認できない旨主張する。
しかし,日本に実在する法人,自然人の全てがインターネット上にサイトを開設するものとはいえず,また,前記の認定のとおり,有限会社椎名塗装業が南部塾の口座に商品代を振り込んだことが確認できるのであるから,請求人の主張は推測にとどまるものであって採用することはできない。
4 以上のとおりであるから,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,通常使用権者である「南部塾」が本件商標を請求に係る指定商品「焼豚」について使用していたことを証明し得たというべきである。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものとすることはできない。
よって, よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-09-11 
結審通知日 2009-09-16 
審決日 2009-10-09 
出願番号 商願2002-83811(T2002-83811) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y29)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 津金 純子 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
久我 敬史
登録日 2003-05-30 
登録番号 商標登録第4676180号(T4676180) 
商標の称呼 オーエドヤキ、オーエド 
代理人 香原 修也 
代理人 川浪 薫 
代理人 藤田 雅彦 
代理人 川浪 圭介 

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