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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X30
管理番号 1206635 
審判番号 無効2008-890069 
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-09-08 
確定日 2009-10-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第5151440号商標の商標登録無効審判事件についてした平成21年1月26日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成21年(行ケ)第10052号、平成21年7月2日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第5151440号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5151440号商標(以下「本件商標」という。)は、「天使のスィーツ」の文字を横書きしてなり、平成19年12月21日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同20年5月20日に登録査定され、同年7月18日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4471795号商標(以下「引用商標」という。)は、「エンゼルスィーツ」の片仮名文字及び「Angel Sweets」の欧文字を上下二段に表してなり、平成12年5月16日に登録出願、第30類「茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,化学調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,アーモンドペースト,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,即席菓子のもと,酒かす,澱粉を原料とした錠剤の加工食品」を指定商品として、同13年5月11日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 審判請求人の利害関係
本件商標の存在により、引用商標の権利範囲に影響を及ぼすおそれが強く、また、引用商標について通常使用権者が存在するためその出所の混同のおそれも存在する等、法律上の利害関係を明らかに有するものである。
2 詳細な説明
本件商標「天使のスィーツ」の語頭「天使」の語は、早ければ幼稚園時代から「エンゼル」又は「エンジェル」の外来語と同義として親しく互換的に使用されており、英語の「Angel」のスペルを知る時期は、甲第3号証の「Angel」の項に「*」印が付され、大学入試程度とされる4600語中に含まれる語と取り扱われているが、翻訳するまでもなく、上記「エンゼル」又は「エンジェル」の外来語と「天使」が同義語と理解されていることは、それ以前に日本国民の常識となっているところである。
また、語尾の「スィーツ」「Sweets」の語は、これまた、辞書を示す必要もないぐらい、「あめ、キャンディー、砂糖菓子」等を表現する言葉として、外来語として定着しており、本件商標の指定商品の分野では、極めて当たり前に日常、使用・認識されている語で、特許庁の審査においても甲第4号証の如く、昭和53年頃から最近においてはより多く、繰り返し識別力がない語として、拒絶の対象となっている程の、国内で熟知された用語となっているところである。この二語が結合し、「天使のスィーツ」として、一連の意味合いを形成すると解したとしても、引用商標の「エンゼルスィーツ」、「Angel Sweets」の意味合いである「天使のスイーツ」とは全くの同義でしかなく、また、「Angel」の語を辞書で確かめても、甲第3号証の如く「天使」以外の翻訳が難しい語であることが確かめられる。
また、「‘S」や「of」が加わらない引用商標のような、名詞の連続であったとしても、Angel Wing(天使の羽)、Spring Song(春の歌) 、Apple Tree(リンゴの木)、Robot Game(ロボットのゲーム) 、Moon Light(月の光)、Door Handle(ドアの取っ手) 、Flower Garden(花の庭)、Garden Flower(庭の花) 等の如く、日本人の一般的な理解として、格助詞の「の」を補って翻訳することは多く、その点からも、全く同一の観念と言わざるを得ないものである。
なお、従来の審決における観念類似の例としては、甲第5号証のようなものがあり、本件と同様の「天使=Angel」が2件も判断されている。このような認識がその時代と比べ、現在の方が廃れていると考慮すべき事情はまったく見当たらないところである。
なお、さらに、2004年3月29日の審決取消訴訟においても「AfternoonTea=午後の紅茶」の如き判決がなされており(甲第6号証)、取引市場における観念類似の重要性も十分に判断されているところである。
したがって、本件商標と引用商標は明らかに観念上同一の商標であり、共に活字体であることより、外観・称呼の差異がこれを上回るほど著しく、異なるものでもないため、両商標は、類似する商標として、商標法第4条第1項第11号に反して登録されたものであり、商標法第46条第1項第1号に該当する商標と言わざるを得ない。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べている。1 審判請求人の利害関係に対する被請求人の見解
本件商標の存在により、請求人の登録商標の権利範囲に影響を及ぼす恐れは限りなく希薄で、また、当該商標による出所の混同は考えずらく、法律上の利害関係を有するとはいい難い。
2 詳細な説明
本件商標の「天使のスィーツ」と「エンゼルスイーツ」とは視覚的印象及び読み音から受ける印象は全く異質のものと考えられる。また、「天使の・・・」と「エンゼル」とは観念的及び視覚的イメージとして異質である。さらに、「天使の・・・」という「の」が入るものと、入らないものとは、単語としては明らかな観念的相違があることは明白といえる。
したがって、呼称検索においても類似性を有するという検索結果はいずれの側から検索しても確認することはできない。
「天使」と「エンゼル」が同義語で無理やり結びつけて、混同されるというほどの印象的インパクトは極めて薄く、加えて「天使の・・・」という「の」が入った意味合いも当然のことながら十分区別できるに足る呼称及び観念である。
本件商標をもって、請求人の商標に影響を及ぼすというのは、いささか無理があるといわねばなならない。
したがって、特許庁の審査においても「スイーツ」だけを取り上げて、又、「天使」「エンゼル」を強調的に取り上げて強引に結びつける判断はせず、妥当な結論を導きだした結果ということができる。
日本の消費者が、「天使のスイーツ」と「エンゼルスイーツ」が混同し、商品が同じものであると間違うようなレベルではないと思われるし、どうやって混同されるのかが疑問で、その見方には強引さがうかがえると判断せざるを得ない。
したがって、特許庁の審査官の査定及び出願に対する認証は妥当であり、「類似する商標」との主張はこれには当たらないものである。
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に反した登録ではなく、商標法第46条第1項第1号に該当する商標には当たらない。

第5 当審の判断
1 利害関係について
本件審理に関し当事者間に利害関係についての争いがあるので、この点について判断する。
商標法第46条に規定する商標登録の無効審判を請求できる者は、当該商標登録を無効とすることに関して利害関係を有する者であるところ、ある商標の登録の存在することによって、直接不利益を被る関係にある者は、それだけで同条にいう利害関係人としてのその商標の登録の無効審判を請求する利害関係を有すると解されている(東京高裁昭和35年(行ナ)第106号判決 昭和36年4月27日判決言渡)。
そうとすれば、請求人は、本件商標の存在により、引用商標の権利範囲に影響を及ぼすおそれが強く、また、引用商標について通常使用権者が存在するためその出所の混同のおそれも存在すると主張しているのであるから、本件商標の存在によって、直接不利益を被る者であって、利害関係を有する者というべきである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、前記1のとおり、「天使のスィーツ」の文字を、横書きしてなるところ、その構成中、「スイーツ」の文字は、当事者間に争いがない「甘い菓子の総称」を意味することから、全体として「天使の甘い菓子」及び「天使のような甘い菓子」の観念を生じるものであり、また、構成文字全体に相応して「テンシノスイーツ」の称呼を生じるものである。
また、「スィーツ」の文字は、本件商標の指定商品中の「菓子」との関係においては、「甘い菓子」であること、すなわち商品の品質を表すものであるから、本件商標は、これを「菓子」について使用するときは、前半の「天使(の)」の文字部分が、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし、当該文字部分から「テンシ(ノ)」の称呼及び「天使」の観念をも生じるものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標は、「テンシノスイーツ」の称呼のほか、「テンシ(ノ)」の称呼を生じ、かつ、「天使の甘い菓子」、「天使のような甘い菓子」又は「天使」の観念を生じるものといわなければならない。
(2)引用商標について
引用商標は、前記2のとおり、「エンゼルスィーツ」の片仮名文字及び「Angel Sweets」の欧文字を上下二段に書してなるところ、その構成中「エンゼル」及び「Angel」の各文字は、「天使。天使のような人。」(甲第3号証「小学館プログレッシブ英和中辞典第4版」(平成15年1月株式会社小学館発行)における「angel」の項、及び「広辞苑第六版」における「エンゼル【angel】」の項)等の意味を有し、「スィーツ」及び「Sweets」の各文字は、当事者間に争いがない「甘い菓子の総称」を意味することから、全体として「天使の甘い菓子」及び「天使のような甘い菓子」の観念を生じるものであり、また、構成文字全体に相応して「エンゼルスイーツ」の称呼を生じるものである。
また、「スィーツ」及び「Sweets」の各文字は、引用商標の指定商品中の「菓子」との関係においては、「甘い菓子」であること、すなわち商品の品質を表すものであるから、引用商標は、これを「菓子」について使用するときは、前半の「エンゼル」及び「Angel」の各文字部分が、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし、当該文字から「エンゼル」の称呼及び「天使」の観念をも生じるものと判断するのが相当である。
してみれば、引用商標は、「エンゼルスイーツ」の称呼のほか、「エンゼル」の称呼を生じ、かつ、「天使の甘い菓子」、「天使のような甘い菓子」又は「天使」の観念を生じるものといわなければならない。
(3)本件商標と引用商標の類否について
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
そこで、本件商標と引用商標とが商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かについて検討する。
はじめに、両商標の外観についてみると、本件商標は、前記1のとおり「天使のスィーツ」の文字を横書きしてなるのに対して、引用商標は、前記2のとおり、「エンゼルスィーツ」の片仮名文字及び「Angel Sweets」の欧文字を上下二段に書してなるものであるから、両商標は外観において明らかに相違するものである。
また、「天使(の)」と「エンゼル」「Angel」との比較においても、明らかに相違するものである。
次に、両商標の称呼についてみると、本件商標は、「テンシノスイーツ」又は「テンシ(ノ)」の称呼を生じるのに対して、引用商標は、「エンゼルスイーツ」又は「エンゼル」の称呼を生じものであるから、両商標は称呼においても明らかに相違するものである。
しかしながら、両商標の観念についてみると、本件商標は、「天使の甘い菓子」、「天使のような甘い菓子」又は「天使」の観念を生じるのに対して、引用商標も「天使の甘い菓子」、「天使のような甘い菓子」又は「天使」の観念を生じるものであるから、両商標は観念を共通にするものである。
さらに、両商標の指定商品は、「菓子及びパン」を共通にするものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼において相違するものの、観念を共通にする商標であって、取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、両商標の共通の指定商品である「菓子及びパン」に使用した場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあると判断するのが相当であり、これを覆すに足る特段の実情は見出せない。
(4)被請求人の主張について
被請求人は、本件商標と引用商標とは、観念において十分に区別し得る旨、主張する。
しかしながら、「エンゼル」「Angel」及び「スイーツ」「Sweets」の各文字が、それぞれ「天使」及び「甘い菓子の総称」を意味する一般的な語であるから、「天使のスィーツ」と「エンゼルスィーツ」「Angel Sweets」から、いずれも「天使の甘い菓子」、「天使のような甘い菓子」又は「天使」という観念が生じ、両商標は観念を共通にするといわざるを得ないから、被請求人の主張は採用することはできない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とするものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-01-07 
結審通知日 2009-08-19 
審決日 2009-09-01 
出願番号 商願2007-129241(T2007-129241) 
審決分類 T 1 11・ 263- Z (X30)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福島 昇 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 瀧本 佐代子
岩崎 安子
登録日 2008-07-18 
登録番号 商標登録第5151440号(T5151440) 
商標の称呼 テンシノスイーツ、テンシ 
代理人 特許業務法人松田特許事務所 

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