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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 024 |
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管理番号 | 1205144 |
審判番号 | 取消2008-301074 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2008-08-25 |
確定日 | 2009-09-11 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4166013号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4166013号商標の指定商品中、第24類「ふきん,シャワーカーテン」については、その登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4166013号商標(以下「本件商標」という。)は、「あいはうす」の平仮名文字と「アイハウス」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、平成9年3月28日に登録出願、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,ふきん,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳,シャワーカーテン,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,布製ラベル,ビリヤードクロス,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)」を指定商品として、同10年7月10日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 請求人が調査したところ、本件商標は、その指定商品中「ふきん,シャワーカーテン」については、本件審判の請求の登録前3年以内には、国内において商標権者によって使用されている事実は見当たらない。 また、専用使用権者及び常使用権者の登録のないため、使用権者による使用も考えられず、この点からも、本件商標は不使用の商標である。 したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 1 本件審判請求の趣旨に係る指定商品のうち、「ふきん」については、本件審判の請求の登録前3年以内より現在に至るまで、日本国内において通常使用権者により商標が使用されている。 この通常使用権者に認められた通常使用権は商標登録原簿に登録されていると否とを問わない。 2 添付の乙第2号証は、被請求人が販売する生地に取り付ける商品タグの拡大コピーである。これを購入した加工・小売業者は、当該生地を加工して乙第1号証の商品「ふきん」を製造し、これに同号証に明らかなように「あいはうす」の商標を付して一般に販売を行っている(なお、乙第1号証の現製品の提出が必要な場合は提出する用意がある)。 一般に、日本国における生地・織物等を扱う布製品の業界にあっては、加工前の生地の提供者(本件審判請求事件における被請求人が当にこれに該当する)側が商標権を取得し、この提供者から生地を購入した加工・小売業者は提供者側からその商標権について黙示的に使用許諾を受け、つまり提供者からの明示的許諾なくして当該商標権に係る商品について該商標を非排他的に使用することが可能であるというのが斯界において従前より確立された商習慣である。 よって、上述乙第1号証及び乙第2号証に徴し、商標「あいはうす」が、通常使用権者により商品「ふきん」に使用されていることが認められるのである。 3 以下に、上述の商習慣について、その背景を補足する。 例えば、塩瀬を素材として用いて製造された袱紗が単に「塩瀬」と、博多織を用いた帯の商品名が「博多」「博多織」と、大島紬を用いて仕立てられた羽織の商品名が「大島」「大島紬」と称される如く、布製商品の商品名の多くが、素材として利用された生地の名称をそのまま商品名としても利用することが多いのは周知の事実である。 ところで、生地はその素材、製法、色、柄等々の要素に応じて実に多種多様な数の生地が存在するものであり、その生地を購入した製造加工業者は、1種の生地からだけでもさらに様々な商品を製造する。 前述のとおり、生地の名称がそのまま商品名としても利用されることが多い業界であるから、当然のように生地の製造加工業者は、自ら加工製造した商品に、その素材となった生地の商品名を使うことを欲するのであるが、ここに於いて、仮に製造加工業者において商標権を取得しなければならないとすると、これは製造加工業者にとって過大な負担となるのは理の当然である。 このような問題を解決するに、生地の提供業者が生地のみならず種々の布製品について生地名の商標権を予め取得し、この生地を購入した製造加工業者が、該生地を素材とする商品に生地名を付して使用する行為については黙示的に非排他的な使用権を許諾するというのが斯界の商習慣である。 乙第1号証の「あいはうす」を付した「ふきん」は、まさにこのような形で製造加工され、現に販売されているものである。よって本件請求に係る商品「ふきん」について商標「あいはうす」は使用されている。 4 以上から、商標法第50条第2項に定めるところにより、被請求人は本件請求に係る商品に係る商標登録の取消を免れるので、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。 第4 被請求人に対する審尋 (1)商標法第50条第1項及び同条第2項には、以下のように規定されている。 商標法第50条第1項 継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。 商標法第50条第2項 前項の審判の請求があつた場合においては、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。ただし、その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。 (2)商標法第50条の立法趣旨 商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿であるから、一定期間登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないかあるいは発生した信用も消滅してその保護の対象がなくなると考え、他方、そのような不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることとなるから、請求をまってこのような商標登録を取り消そうというのである。いいかえれば、本来使用をしているからこそ保護を受けられるのであり、使用をしなくなれば取り消されてもやむを得ないというのである【工業所有権法(産業財産権法)逐条解説[第17版]参照】。 (3)商標法第2条第3項第1号、同項第2号及び同項第8号には、以下のように規定されている(なお、同項第3号ないし同項第7号は、役務に関する規定のため省略する。)。 商標法第2条第3項 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。 同項第1号 商品又は商品の包装に標章を付する行為 同項第2号 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為 同項第8号 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為 (4)本件審判の請求の登録前3年以内の使用 本件審判の請求の登録日は平成20年9月5日であるから、被請求人は、平成17年9月5日から平成20年9月4日まで(以下「要証期間」という。)の、登録第4166013号商標(以下「本件商標」という。)の使用を証明しなければならない。 したがって、前記の要証期間内において指定商品「ふきん」について、本件商標が付された取引書類等(例えば、請求書、領収書、販売伝票、注文伝票、納入伝票)を提出すること。 また、前記の要証期間内における乙第2号証の商品タグに関する本件商標が付された取引書類等を提出すること。 (5)日本国内における使用 (4)の取引書類等は、日本国内において、前記の商標法第2条第3項第1号、同項第2号及び同項第8号に規定されている行為が行われていることを証明したものでなければならない。 (6)通常使用権について 被請求人は、通常使用権者が誰であるのかを氏名(名称)、住所、電話番号、ファクシミリ番号、郵便番号等を明らかにすること。 そして、商標権者と通常使用権者との関係を証明するため、指定商品「ふきん」について、商標権者とその通常使用権者と契約書等の取引書類(本件商標が登録番号等により特定されたもの)を提出すること。 (7)被請求人が商品「ふきん」と主張する乙第1号証の実物を提出すること。 (8)乙第2号証が、切り貼りによって作成されたものでないことを証明するため、商品タグの実物を提出すること。 第5 審尋に対する被請求人の回答 審尋に指定する書証等を平成21年7月11日までに提出すべきとのことであるが、指定の物件を準備するための期間としてはきわめて短く、提出できないことを回答する。 なお、然るべき期間(6月ないし12月)を与えられたら、被請求人としても物件の提出に吝かではない。 第6 当審の判断 1 乙各号証によれば、以下の事実が認められる。 (1)乙第1号証について 乙第1号証は、うぐいす色の正方形の布地のコピーで、右上隅に白地の縦長長方形内の下から「あいはうす」の平仮名が表示されているが、他には、例えば、撮影者、撮影場所等の表記は何らなされていない。 (2)乙第2号証について 乙第2号証は、被請求人の主張によれば、商品のタグの拡大コピーであり、縦長長方形枠内の上部中央にタグの穴と思しき「○」の表示、その下に橙色と薄い黄色の横長四角形内に「あいはうす II」と「by import Fabric」(「あいはうす II」の文字と数字はやや山形に表されている。)の文字が表記され、その下に「ITEM:」「ITEM NO:」「SIZE:」「QUALITY:100%COTTON」の各表示、さらにその下に「・インド製品は手織り、手染めの独特の風合い、色、柄が好まれ、広く生活の中で愛用されています。以下の点をご了承の上ご使用下さい。・インド特有の色柄風合いの為、若干の織キズ、織むら、色むら、寸法の誤差が生じます。ご了承下さい。・洗濯の際多少色落ち、縮みがあります。洗濯の時は他のものと分けて、水洗いしてください。漂白剤のご使用はお避け下さい。・濡れた際、摩擦移色することがありますのでご注意下さい。また、濡れた状態で他の洗濯物と重ねないで下さい。」という記述、その下に洗濯方法の図示、最下部に「MADE IN INDIA」「中商事株式会社」「TEL.087-821-1211」の各記載がなされている。 2 以上の乙第1号証及び乙第2号証によれば、乙第1号証の「布地のコピー」中に「あいはうす」の平仮名表示、乙第2号証の拡大コピー中に「あいはうす II」と「by import Fabric」及び被請求人「中商事株式会社」の各表示は確認できるが、乙第1号証及び乙第2号証のコピーを何時、何処で、誰がコピーしたか、何の説明もなされておらず、しかも、該「布地のコピー」(被請求人は「ふきん」と主張している。)の具体的取引書類である請求書、領収書、販売伝票、注文伝票、納入伝票などの提出はない。 そして、被請求人は、「日本国における生地・織物等を扱う布製品の業界にあっては、加工前の生地の提供者(本件審判請求事件における被請求人が当にこれに該当する)側が商標権を取得し、この提供者から生地を購入した加工・小売業者は提供者側からその商標権について黙示的に使用許諾を受け、つまり提供者からの明示的許諾なくして当該商標権に係る商品について該商標を非排他的に使用することが可能であるというのが斯界において従前より確立された商習慣である。」などと述べ、本件請求に係る商品「ふきん」について商標「あいはうす」を使用している旨主張している。 しかしながら、上記のとおり、当該「布地のコピー」の具体的取引書類である請求書、領収書、販売伝票、注文伝票、納入伝票などの提出はなく、被請求人は、単に商品「ふきん」と称するのコピーとその商品の生地のタグと称する拡大コピーを提出するのみであるから、この提出された2つの証拠のみでは実際の取引において本件商標が具体的にどのように使用されたものかが明らかにされたものとは認められないものである。 そして、提出されたタグのコピーにあっては、その図示された洗濯表示部分が、印刷物であるにもかかわらず不鮮明であって、例えば、特定の意図をもって切り貼りした状態であるかのように、不自然の感を否めないものであり、かつ、原本の提出もない。 また、被請求人が主張するところの加工・小売業者は、黙示的に使用許諾を受け、商標を非排他的に使用することが可能であるというのが従前より確立された商習慣であるとの主張は、何ら根拠が示されておらず独自の見解としかいいようがない。 そうすると、被請求人が本件商標をその指定商品中の「ふきん」について使用していたとは認められないものである。 してみれば、たとえ、使用している商標が本件商標と社会通念上同一とみられる場合があるとしても、本件審判請求に係る指定商品「ふきん,シャワーカーテン」について使用していたということはできない。 3 被請求人は、平成20年12月17日付けで提出された審判事件答弁書において、「乙第1号証の現製品の提出が必要な場合は提出する用意がある」旨述べているのに対し、平成21年7月9日付けで提出された審判事件答弁書において、「然るべき期間(6月ないし12月)を与えられたら、被請求人としても物件の提出に吝かではない。」旨述べている。 しかしながら、「乙第1号証の現製品の提出が必要な場合は提出する用意がある」との審判事件答弁書が提出された平成20年12月17日から平成21年7月9日までは、すでに7カ月近く経過しており、この間に乙第1号証の現製品を提出することができたのであるから、更に6カ月ないし12カ月の間、本件審理を止める理由は存在しない。 そして、被請求人又は通常使用権者が、本件商標を請求に係る指定商品中の「ふきん」について使用しているのであれば、商品「ふきん」やその商品タグの取引書類等及び実物を提出することは難しいことではないから、審尋で指定した期間があれば充分であり、6カ月ないし12カ月も審決を先に延ばす理由も存在しない。 4 むすび 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品「ふきん,シャワーカーテン」のいずれかについて、登録商標の使用をしていることを証明し得なかったといわざるを得ず、また、使用していないことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標は、その指定商品中、「ふきん,シャワーカーテン」についての登録は、商標法第50条により、取り消すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-07-13 |
結審通知日 | 2009-07-15 |
審決日 | 2009-07-29 |
出願番号 | 商願平9-32789 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(024)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
渡邉 健司 |
特許庁審判官 |
井出 英一郎 鈴木 修 |
登録日 | 1998-07-10 |
登録番号 | 商標登録第4166013号(T4166013) |
商標の称呼 | アイハウス |
代理人 | 吉田 親司 |
代理人 | 永井 冬紀 |
代理人 | 石川 義雄 |
代理人 | 橋本 良樹 |
代理人 | 潮崎 宗 |
代理人 | 小出 俊實 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 幡 茂良 |