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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) X25 |
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管理番号 | 1202200 |
異議申立番号 | 異議2008-900297 |
総通号数 | 117 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2009-09-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2008-07-31 |
確定日 | 2009-07-10 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5130822号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5130822号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5130822号商標(以下「本件商標」という。)は、「ARCH FIT」の欧文字を標準文字で書してなり、平成19年9月20日に登録出願、第25類「履物」を指定商品として、平成20年4月25日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由(要旨) 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の構成中「ARCH」の文字は、足裏の「土踏まず」の部分を指称する語として普通に使用されているものであり、また、履物の業界において、「ARCH FIT」の語は、当該「土踏まず」にピッタリ適合(フィット)する形状や構造、あるいは機能を表すものとして汎用されているものである。 してみれば、本件商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものに過ぎない。また、当該品質を有しない商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、同法第43条の2第1項により取り消されるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1号ないし第28号証を提出した。 3 本件商標に対する取消理由 当審において、登録異議申立に基づき、平成21年2月18日付けで商標権者に対して通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。 (1)本件商標は、前記1のとおり、「ARCH FIT」の文字よりなるところ、申立人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。 ア 足の土踏まずの部分を「アーチ」と称していること(甲第1?4号証)。 イ 靴の中敷き(インソール)、サンダル、ゴルフ靴、婦人靴等について、 (a) 「【アーチフィットインソール】土踏まずから踵部分に装着された“軟質PUフォーム”が人によって異なるアーチ形状の差を吸収し、足裏のフィット感を向上すると同時にアーチサポート機能を高めます。」(甲第5号証) (b) 「足のアーチ(土踏まず)は足を正しく運動させるための中心的存在。アーチがフィットしていないシューズは足底筋、アキレス腱を痛める原因になります。必ずアーチのフィット感を確かめましょう。」(甲第6号証) (c) 「『Arch Fit (アーチフィット)インソール ビジネス用 男性S』は、自分にぴったり合った中敷きにセッティングできる、男性用靴の中敷きです。」(甲第7号証) (d) 「足裏のアーチに立体的にフィットする3Dアーチフィット構造を採用。」(甲第8、16、19号証) (e) 「土踏まずに合わせたアーチフィット設計で足裏にぴったり吸い付くようなフィット感と、クッション!」(甲第9号証) (f) 「アーチフィットの重要性」(甲第10号証) (g) 「アーチフィットで疲れない!歩きやすい!」(甲第12号証) (h) 「土踏まずを支えるアーチフィットサポート」(甲第13号証) (i) 「天然ゴム+エラストマーのアーチフィットシステムが足裏全体を心地よくマッサージする健康サンダルです。」(甲第14号証) (j) 「アーチフィットナースサンダル」(甲第15号証) (k) 「アーチにフィット衝撃吸収ルームシューズ」(甲第20号証) (l) 「土ふまずにフィットするアーチフィット」(甲第23号証) (m) 「このサンダルはアーチフィットなので、気持ちいい。」(甲第24号証) (n) 「土踏まずを軽く盛り上げた アーチフィットタイプ」(甲第25号証) (o) 「お手持ちのサンダルや靴の中に!・・人気のアーチフィット系新感覚で、姿勢矯正・外反母趾の防止に!」(甲第26号証)などのように紹介されていること。 (2)商標法第43条の8において準用する特許法第150条第5項に基づいてした職権による証拠調べによれば、以下の事実が認められる。 ア 1990年9月3日付け熊本日日新聞(朝刊) 「始めよう!ウオーキング。理想は1日1万歩」の見出しの下、「靴の選び方だが、人は(1)かかとから着地(2)足裏の外側のアーチを着ける(3)つま先でける-の仕組みで歩いている。したがって靴もその仕組みに従い(1)かかとのクッションが良く(2)足裏のアーチがフィット(3)つま先が楽に曲がるもの-を選ぶ。」との記事。 イ 1998年9月21日付けスポーツ報知 「[スグレMONO変わりモノ]コンフォーマブル インソール」の見出しの下、「三井物産スポーツが販売する靴の中敷き『コンフォーマブル インソール』。足の疲労を軽減するとともにパワーも引き出すというスポーツ専用の中敷きだ。『アーチフレックスコントロール』と呼ばれる特殊な形状が、アーチ状の足の裏にぴったりフィットする。そもそも足の裏がアーチ状なのは、しっかり立ち、しっかり動くための構造。この形を保つことにより、元気のいい足を持続させるのがコンフォーマブルの狙いなのだ。」との記事。 ウ 1999年10月11日付け朝日新聞(東京朝刊) 「外反母趾 女の足に我慢は禁物(元気からだ)」の見出しの下、「中敷きも大切/では、靴を選ぶにはどんなことに気をつければいいのだろうか。『つま先の広い靴、かかとの低い靴がいい。でも、それだけではない』。東戸塚記念病院(横浜市)の内田俊彦副院長(整形外科)は、靴の側面からかかとにかけてが硬めで足に合うこと、靴の中敷きに凹凸があり、足のアーチにフィットしていることを挙げる。」との記事。 エ 2000年3月11日付け静岡新聞(朝刊) 「日本人に合った靴の販売へ-静岡フットウェア研 データ基に足底板を製作」の見出しの下、「シューズは親指の付け根、小指の付け根、かかとの三点がつくる足裏のアーチにフィットする足底板が特徴。健康な足が本来持つアーチの理想型に導きながら、体に負担をかけない自然な歩き方につなげるという。」との記事。 オ 2000年10月14日付け静岡新聞(夕刊) 「遊歩道(150)-=サイズは単なる目安 靴選びの専門家に相談も」の見出しの下、「靴選びのチェックポイントは(1)足が靴の中で前方に動いても、つま先が靴に触れないだけの余裕がある。最低十ミリ以上は必要(2)足の甲と土踏まずのアーチに適度にフィットしている(3)履き口が外側のくるぶしに当たらず、かかとがフィットしている-などだ。何よりも、実際に履いて店内を歩いてみることが大切だ。」との記事。 カ 2003年7月30日付け中国新聞(夕刊) 「シニアいい品 自然にいい歩き 工夫のサンダル」の見出しの下、「Tさん愛用のサンダルは、その点よく考えられている。つま先は上に反っていてつまずきにくいし、かかとはしっかり固定できる。底は足裏にフィットし、甲の高さはベルトで調節できる。自然にいい歩行ができるよう、工夫がなされている。」との記事。 キ 2003年10月12日付け産経新聞(大阪朝刊) 「【くらし学】靴選び 幼児と高齢者、“歩きやすさ”に共通点」の見出しの下、「足元がおぼつかなくなる年代の女性にとっても靴選びは大事です。すり足で歩くようになり、ちょっとしたことで転びやすくなります。良い靴の条件も幼児と似ていて、(1)足指が靴の中で自由に動かせるもの(2)甲から足首まで覆い、足首部分を締めるひも靴のようなタイプ(3)土踏まずの部分(アーチ)がフィットしているもの(4)ヒールは低いほうがよく、できれば底面が平らなウェッジソールか、かかと部分が丸くカッティングされているもの(5)底をくの字に曲げてみて、しなやかなもの-そんな靴がよいのです。」との記事。 ク 2004年4月12日付け熊本日日新聞(朝刊) 「新商品ピックアップ=疲れにくいサンダル 月星化成」の見出しの下、「月星化成(福岡県久留米市)は、女性向けブランド『SPORTH(スポルス)』から、疲れで下がってきた土踏まずのアーチをしっかり支えるサンダルタイプのサマーシューズを発売した。足の形にフィットしたインソールと、弾力性のあるアウトソールでアーチを支える二重サポート構造が特徴。」との記事。 ケ 2006年1月19日付け産経新聞(大阪夕刊) 「【百貨店情報】」の見出しの下、「大丸心斎橋店の婦人靴売り場で、25日から2月14日まで。左右のサイズ違いや、0・25センチ刻みの微妙なサイズが選べるパターンオーダーパンプスの受注を期間限定で行う。サイズは、21・5センチから25・5センチまで17サイズ。カラーも豊富で、靴擦れ防止のかかとパットや土踏まずのアーチにフィットしたアーチサポートを取り入れるなど履き心地にもこだわった靴を提案する。」との記事。 (3)前記(1)及び(2)で認定した事実によれば、本件商標の登録査定前より、靴やサンダル、あるいは靴の中敷き(インソール)等を取り扱う業界において、足裏、特にアーチと呼ばれる土踏まずに合った(フィットした)ものを使用すると、長時間の歩行や運動でも疲れにくい効果が生ずることが研究、開発され、さまざまな商品が市場に多数出回っていたことが認められる。 そうすると、「アーチ(土踏まず)にフィットする」なる意味合いを想起させる「ARCH FIT」の文字よりなる本件商標を、その指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、該商品が「アーチ(土踏まず)にフィットして、疲れにくい効果のある商品」程の意味合いを表したものと認識するにとどまり、自他商品の識別標識たる商標を表したものとは認識し得ないといわなければならない。 したがって、本件商標は、その指定商品の品質、効能、形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきである。 (4)以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものと認める。 4 商標権者の意見 上記3の取消理由に対し、商標権者は、要旨次のように意見を述べている。 (1)一般に、「ARCH」は迫特(せりもち)、弧、弓なり等の意が生じ、また、「FIT」は適合すること。似合っていること。特に、洋服が身体や感覚にぴったり合うこと等の意を生ずることが知られている。 しかしながら、本件商標は「ARCH」のみ、或いは「FIT」のみからなるものではなく、また、「ARCH」と「FIT」は相互にそれぞれを形容するものでもないから、両者間に間隔があっても「アーチフィット」と一連不可分に称呼するのが自然、かつ、円滑である。 したがって、「ARCH」と「FIT」が一連不可分とした結合商標としてとらえることができるとともに、「ARCH FIT」なる標章は特定の意が生じない造語といわざるを得ない。 ちなみに、「ARCH FIT」を英和辞典で、また、「アーチフィット」を国語辞典で調べた結果、それぞれの意を示す記載は全くなかった。 (2)前述のように、本件商標からは特定の意を生ずることはなく、これが『「アーチ(土踏まず)にフィットする」意味合いを想起させる』ことはあり得ないものと考える。 標章「ARCH」の意訳は前記したとおりであり、これからは「土踏まず」の意は全く生ぜず、また、一連不可分の称呼「アーチフィット」の一部を切り離した「アーチ」のみについて、これを「アーチ(土踏まず)」とした認定は客観的妥当性に欠けるものと考える。また、仮に一部の称呼「アーチ」としても、これが「土踏まず」の意が生じないことは、標章「ARCH」の場合と同様である。 さらに、「ARCH」と「FIT」のそれぞれを単に分離分割して「ARCH FIT」を直訳することも、また、これを意訳することもできない。したがって、「ARCH FIT」からは直感的にも暗示的にも「アーチ(土踏まず)にフィットする」意は生じ得ないものと解せられる。 そして、指定商品との関係においても本件商標が「アーチ(土踏まず)にフィットして、疲れにくい効果のある商品」のように記述的、説明的な意味合いを表したものと直感的、暗示的に生ずることがないことは前記と同様である。 (3)要するに、本件商標「ARCH FIT」自体に表された表示からは、その外観・称呼・観念をして品質、効能、形状を直感させるものではなく、したがって、本件商標は「普通に用いられる方法で表示する標章」とはいえず、自他商品の識別力を有するものと思慮する。よって、本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当しないものと確信する。 5 当審の判断 (1)本件商標は、前記のとおり、「ARCH FIT」の文字よりなるところ、その構成中「ARCH」の文字部分が、「アーチ、アーチ形(のもの)、足の甲;(特に)土踏まず」等を意味し、また、「FIT」の文字部分が、「ぴったりの、適合した」等を意味する英語であって、その表音である「アーチ」及び「フィット」の文字と共に、いずれも同じ意味を有する英語、外来語として広く知られ使用されているものである。 そして、「ARCH」と「FIT」の文字を結合した「ARCH FIT」の文字及びその片仮名表記である「アーチフィット」の文字が、履物等を取り扱う業界において、「アーチ(土踏まず)にフィットする、疲れにくい効果のある商品」を意味する語として、一般的に使用されている実情があることは、前記3で示したとおりである。 そうすると、本件商標を、その指定商品「履物」について使用しても、これに接する取引者・需要者は、前記業界の取引の実情からして、該商品が、「アーチ(土踏まず)にフィット(適合)する(疲れにくい効果のある)履物」であるという、商品の品質(効能、形状等)を表示したものと理解するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有する商標とは認識し得ないものと判断するのが相当である。 (2)なお、請求人は、前記4の意見書において、「『ARCH FIT』からは直感的にも暗示的にも『アーチ(土踏まず)にフィットする』意は生じ得ない。そして、指定商品との関係においても、本件商標が『アーチ(土踏まず)にフィットして、疲れにくい効果のある商品』のように記述的、説明的な意味合いを表したものと直感的、暗示的に生ずることはない」旨主張しているが、本件の指定商品との関係では、「ARCH FIT」ないし「アーチフィット」の文字が、「アーチ(土踏まず)にフィットした(歩きやすい、疲れにくい効果のある)履物」を看取させる語として一般的に使用されていることは、前記3の取消し理由で通知したとおりであるから、請求人のこの主張は採用できない。 (3)したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものといわざるを得ないから、商標第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2009-05-25 |
出願番号 | 商願2007-99102(T2007-99102) |
審決分類 |
T
1
651・
13-
Z
(X25)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 泉田 智宏 |
特許庁審判長 |
井岡 賢一 |
特許庁審判官 |
小川 きみえ 佐藤 達夫 |
登録日 | 2008-04-25 |
登録番号 | 商標登録第5130822号(T5130822) |
権利者 | 荒川産業株式会社 |
商標の称呼 | アーチフィット、アーチ |
代理人 | 須田 元也 |
代理人 | 須田 孝一郎 |