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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(一部取消、一部維持) Y30 審判 全部申立て 登録を取消(一部取消、一部維持) Y30 |
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管理番号 | 1202195 |
異議申立番号 | 異議2007-900582 |
総通号数 | 117 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2009-09-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2007-12-21 |
確定日 | 2009-07-10 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5079190号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5079190号商標の指定商品中「デニッシュパン」についての商標登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5079190号商標(以下「本件商標」という。)は、「MARBLE DANISH」と「マーブルデニッシュ」の文字を2段に横書きしてなり、平成18年11月8日に登録出願、第30類「菓子及びパン,コーヒー及びココア,サンドイッチ,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,穀物の加工品,イーストパウダー,ベーキングパウダー」を指定商品として、同19年9月4日に登録査定、同年9月21日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立の理由の要旨 登録異議の申立人(以下、「申立人」という。)は、本件商標はその指定商品中「マーブル模様、すなわち、チョコレートやココアその他を用いて濃淡二色を、いわゆる墨流し様にして大理石のような模様のデニッシュ若しくはケーキやアイスクリーム等の菓子」に使用すると商品の品質表示となり商標法第3条第1項第3号に該当し、これ以外の商品に使用すると商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当し、その登録は取り消されるべきものある旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。ただし、枝番号を全て引用するときは、枝番号を省略する。)を提出した。 3 本件商標に対する取消理由 当審において、商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。 (1)本件商標は、上記1のとおりの構成からなるところ、これを構成する各語について、申立人の提出に係る証拠及び職権による調査によれば、辞書類等において以下のように説明され、また、使用されている事実が認められる。 ア まず、辞書類についてみれば、例えば、岩波書店発行の広辞苑(1998年11月11日第五版第一刷)には、「マーブル(marble)」の語については「大理石、遊戯用のはじき石、おはじき、墨流しの方法で染めつける」等の意味が記載されており、「デニッシュ(Danish)」の語については「(デンマーク風の意)油脂の多いパイ状の菓子パン」と記載されている。また、研究社発行の新英和大辞典(1998年第5版第34刷)には、「marble」の語については「大理石(製)の、(子供がビー玉遊びに用いる)ビー玉、大理石模様、墨流し模様、マーブル」等の意味が記載されており、「marble cake」の熟語について「マーブルケーキ(生地にチョコレートなどで濃淡をつけて焼いた大理石模様のケーキ)」と記載されており、「Danish」の語については「デンマークの、デンマーク人の」の意味の外に「Danish pastry」をも指称する旨の記載があり、その「Danish pastry」の項には、「デニッシュペストリー(バターを多く用いたパン生地を焼き上げたパイ状のもの。フルーツやナッツ、チーズなどを加えることが多い。)」と記載されている。また、三省堂発行のコンサイスカタカナ語辞典(2005年10月20日第3版第2刷)の「マーブルケーキ(marble cake)」の項においても「洋菓子の一種、濃淡2色のケーキ種を交互に型に入れ焼き上げたケーキ。切り口が大理石模様に似ているところから名付けられた。」と記載されており、「デニッシュ(danish)」の語については「デンマークの、デンマーク人の」の意味の外に「デニッシュ・ペストリー」をも指称する旨の記載があり、その「デニッシュ・ペストリー(Danish pastry)」の項には「菓子パンの1。干しぶどうやナッツ、果物などを詰め、イーストでふくらませたもの。油脂の多いパイ状の生地を用いる。」と記載されている。 イ また、専門書についてみれば、株式会社製菓実験社発行のパン・洋菓子事典(昭和55年9月10日初版)によれば、「マーブル(Marble)」の語について「黒い生地と白い生地が格子状、渦巻状、または断層となって入り混じっているパンやケーキをマーブル・パンまたはマーブル・ケーキという。」と記載されており、「デニッシュ・ペストリー(Danish pastry)の語については「イースト・ドゥに小麦粉の約50%(デンマーク・タイプは約100%)にあたるマーガリンを折りこんで成形し、これを焼き上げたものである。配合がリッチなために常温ではその操作がむずかしいため、生地を5度Cくらいに冷却して製作するのが特長である。」旨記載されている。 ウ そして、登録異議申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。 甲第1号証(シェレンバウム 黒磯店のWEBサイト)には、「チョコレートマーブルデニッシュブレッド/フルーツやチーズなど、様々な種類のデニッシュが人気のシェレンバウム。その中でも、今人気の的なのがデニッシュ食パン!チョコレートの層がたっぷりと渦を巻き、甘く香ばしい香りに誘惑されてしまいます。」とあり、甲第2号証(京王プラザホテル札幌のWEBサイト)には、「マーブルデニッシュ/クロワッサン生地にチョコレートを練り込んで、長時間じっくり焼くことで表面はサクサク、中はふわふわしっとりと・・・思わず笑顔になるパンです。」とあり、甲第3号証(Melonkan<メロン館>のWEBサイト)には、メロンパン、カレーパン、クリームパン等の各種パンを写真付きで紹介している中の一つとして「マーブルデニッシュ」が表示されており、甲第4号証の2(菓子パン図鑑<すみれ草のWEBサイト)には、2001年12月21日掲載のクチコミ情報として「山崎パンのマーブルデニッシュ」について記載されており、甲第5号証(eグルメひろしまのWEBサイト 2005年9月19日更新)には、店舗紹介記事として「じぞう通りのパン店。60円のプチロールからマーブルデニッシュまで、調理パン、菓子パン、デニッシュ、ペストリーなど100種類を朝4時から焼き上げる。」とあり、甲第6号証(狭山市学校給食センター/学校給食献立表・材料詳細ページのWEBサイト)には、平成18年5月の学校給食献立表において「マーブルデニッシュ」が表示されており、甲第7号証(埼玉県入間市の教育施設における給食献立表のWEBサイト)には、平成14年11月の給食献立表において「マーブルデニッシュ」が表示されている。 その他、「マーブルデニッシュ」とは表示されていなくとも、甲第9号証の1ないし4(雑誌「ぴあBOOK東京・横浜 ほんとうに美味しい店」)には、布屋パン店におけるパンの紹介中に、写真付きで「ヨーグルトマーブル、コーヒーマーブル」が紹介されており(甲第9号証の2)、パリドール正盛堂におけるパンの紹介中に、写真付きで、単に「マーブル」として紹介されており(甲第9号証の3)、甲第11号証(雑誌「ChouChouシュシュ」1999No.19)には、「濃厚なチョコレートをマーブル状に折り込み、香ばしく焼き上げたデニッシュ」のように表現されている例が認められる(甲第11号証の3)。また、甲第14号証([楽天市場]フラワーシート:ママの手作りパン屋さんのWEBサイト)は、手作りパンに折り込む各種素材からなるシートを一般家庭用として販売しているサイトであり、ここには、「いちごとさわやかなヨーグルトの酸味がマッチしたフラワーシートです。菓子パンやデニッシュ生地に良く合います。」(甲第14号証の7)、「パン生地に折り込むと、ピンク色が鮮やかな、マーブル模様のパンが出来上がります。」(甲第14号証の10)等と記載されており、該シートがデニッシュ生地によく合うこと、マーブル模様のパンが一般家庭でも手軽にできることが説明されている。 (2)上記した各種辞書類等や甲各号証を総合してみれば、「MARBLE/マーブル」の語は、「大理石(の)、大理石模様(の)、墨流し模様(の)」等の意味を表す語であり、「DANISH/デニッシュ」の語は、「デニッシュペストリー(Danish pastry)」をも指称する語であって、指定商品中の菓子及びパンとの関係においては、「油脂の多いパイ状の菓子パン」等の意味を表す語であると理解される。また、各種辞書類等に、「マーブルケーキ(marble cake)」の語の説明があり、「洋菓子の一種、濃淡2色のケーキ種を交互に型に入れ焼き上げたケーキ。切り口が大理石模様に似ているところから名付けられた。」と記載されているように、ケーキについては、切り口が大理石模様のケーキを「マーブルケーキ(marble cake)」と称していたことは明らかなところであるが、ケーキばかりでなくパンについても、昭和55年当時に発行されたパン・洋菓子事典において既に、「黒い生地と白い生地が格子状、渦巻状、または断層となって入り混じっているパンをマーブル・パン」と称していたことが認められる。 そして、甲各号証のとおり、本件商標が出願・登録された時点において、デニッシュパンを大理石模様に焼成したパンについては、多くの使用事実のあることが認められる。 そうとすれば、「MARBLE DANISH/マーブルデニッシュ」の語は、本件商標の登録査定時には既に、菓子及びパンを取り扱う取引者・需要者の間においては、「生地にチョコレートやココア等の層を折り込んで焼成して大理石のような模様としたデニッシュパン」を表すものとして理解・認識され、広く一般に使用されていたものということができる。 (3)してみれば、本件商標は、「MARBLE DANISH」の欧文字と「マーブルデニッシュ」の片仮名文字とを普通に用いられる方法をもって二段に横書きしてなるものであるから、これをその指定商品中の「生地を大理石のような模様に仕上げたデニッシュパン」について使用しても、これに接する取引者・需要者をして、単に商品の形状・品質を表したものと理解・認識させるに止まり、自他商品の識別標識としては機能し得ないものであり、また、これを上記以外の「菓子及びパン,サンドイッチ,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」について使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。 (4)したがって、本件商標の登録は、その指定商品中の「菓子及びパン,サンドイッチ,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものである。 4 商標権者の意見 商標権者は、前記3の取消理由に対して、要旨次のように意見を述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)「マーブル」と「デニッシュ」について 取消理由通知書では、広辞苑、新英和大辞典、コンサイスカタカナ語辞典を取り上げ、「マーブル」及び「デニッシュ」の用語の意味を抽出している。しかしながら、これらの辞書においては、それぞれの用語が別個に説明されているだけで、「マーブルデニッシュ」なる用語が存在し、或いは使用されていることについては何ら説明されていない。 しかも、専門書であるパン・洋菓子事典から抽出した項目「マーブル」の解説中には、「黒い生地と白い生地が格子条、渦巻状または断層となって入り混じっているパンやケーキ」が「マーブル・パン」または「マーブル・ケーキ」と称せられていることを示している。「マーブル・パン」が取引界において一般的に使用されているからといって、上記の形状ないし品質を有する特定のパンを表示するために、「マーブル+(特定パンの名称)」なる名称がすべからく使用されるとすることは早計である。 この事典からも、「マーブルデニッシュ」なる用語が存在し或いは使用されていることを理解し把握することはできない。 (2)申立人の提出に係る証拠について ア 申立人は、取引界における状況を示さんとして甲第1号証ないし甲第14号証を提出しているが、以下に説明するように、これらの証拠のほとんどは、本件商標の登録査定日である2007年9月7日以降のものであって、証拠価値を認めることはできない。 (ア)甲第1号証ないし甲第3号証 これらの証拠は、いずれも2007年12月18日現在のものであって、掲載内容についての更新日の記録は見当たらない。記載内容やその表現を勘案しても、本件商標の登録査定日前から「マーブルデニッシュ」が一般的に使用されていたことを理解させる内容のものとは言えない。 (イ)甲第4号証 この証拠は2008年1月21日現在のものであるが、クチコミの掲載日は2001年12月21日となっている。しかしながら、このクチコミが「食べづらいだけであまりいい所がない」と評されたためか、現在では販売されていない。事実、山崎製パンにおける<菓子パン>の一覧表を参照してみてもこの商品は掲載されていない(乙第1号証)。何時から製造販売を中止したのかも不明である。 (ウ)甲第5号証 このサイトでは、「ロゲン」が2005年9月19日の更新日において「マーブルデニッシュ」を販売しているとの記載がある。ところが、この店は、1ヶ月後の2005年10月20日で閉店しているのである(乙第2号証)。 問題は、2005年の10月に閉店した店の情報をそのまま2007年12月まであたかも存在しているかのように掲載しているサイトが存在している事実である。このようなサイトの情報に証拠価値を認めることができないはずである。 (エ)甲第6号証、甲第7号証 ここにおける「マーブルデニッシュ」がどのメーカーのいかなる食材であるかは不明である。また、それがいかなる形状や品質のものであるのかも全く把握できない。 (オ)甲第8号証ないし甲第14号証 これらの証拠は、「マーブル」、「○○マーブル」、「○○デニッシュ」などの用語の使用例を紹介したものである。 しかし、甲第9号証は発行日が不明の雑誌である。甲第10号証、甲第14号証は2008年1月18日付けのサイトであって更新日付の記載はないし、甲第12号証は更新日が2007年11月19日である。いずれも本件商標の登録査定日以後の証拠である。また、甲第13号証の雑誌の発行日は2004年1月5日であるが、取消理由通知書が掲げている「マーブル」や「デニッシュ」の用語はどこにも使用されていない。 日付の問題を置くとしても、これらの資料に示されている「○○マーブル」については、ヨーグルト・コーヒー(甲第9号証)、「○○デニッシュ」については、プリン(甲第8号証)、抹茶・紫(イモ)(甲第10号証)という別の「素材名」を結合させた用例であり、形状ないし形態を示す用語を結合させたものではない。 (カ)甲第15号証 この審決では、「パン生地の中に果物、クリームなどを包んで焼き上げたものを『アップルデニッシュ』、『フルーツデニッシュ』、『クリームデニッシュ』と称して普通に使用している」事実を認定しているが、ここにおいても、「デニッシュ」については、「包み込む素材名」を結合させた用例を示している。 イ これらの証拠のうち、パンについて「マーブルデニッシュ」なる用語が使用されていることを紹介しているのは甲第4号証、甲第5号証のみである。甲第4号証では、「マーブルデニッシュ」は明らかにパンの識別標識として使用されていて、商品の品質などを表示するために使用されている訳ではない。他方、甲第5号証ではパンの一般名と商標とを並列させた中で使用されていて、識別標識なのか商品の品質を示す表示なのかは不明である。いずれにせよ、これらの使用は一時的なものであって、現在では使用されていない。 また、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第6号証ないし甲第14号証から「マーブル○○」、「デニッシュ○○」の用語が使用されている例の存在を把握できるとしても、「マーブルデニッシュ」は使用されていないから、この用語が特定の意味合いにおいて普通に使用されているとすることはできない。 商標が商品の形状や品質を表示しているがどうかの問題は、用語の結合が容易であるかどうかという視点から見るのではなく、その商標が指定商品の取引界において商品の形状や品質を表示する意味において理解され使用されているかどうかという、事実問題として捉えなければならない。 もし、「マーブルデニッシュ」がパンの形状や品質を表示するものとして理解されているのであれば、前記のデニッシュの名称は「ヨーグルトマーブルデニッシュ」、「抹茶マーブルデニッシュ」、「紫マーブルデニッシュ」、「アップルマーブルデニッシュ」などとして使用されていなければならないはずであるが、上記の証拠はそうした事実を示していない。 ウ 甲各号証をいかに綜合してみても、「マーブルデニッシュ」がパンの形状や品質を表示する用語として理解され一般に使用されていることを理解し把握することはできない。 (3)商標権者の商標「マーブルデニッシュ」の使用 ア マーブルデニッシュの誕生 商標権者は、2004年に「パンでもなく洋菓子でもないイースト菓子」として「マーブルデニッシュ」を発売した。この商品は、「感動の残る味を大切な方々へお贈りいただきたい」との願い込めた、結婚披露宴における新しい引出物としての位置づけを与えたものであった(乙第3号証)。 イ WEBサイトにおける「マーブルデニッシュ」 乙第4号証として提出するブログは、本件商標の出願前である2006年2月12日付け(更新日)ものである。「以前から気になっていた」ことからすると、他のブログなどを通して以前からこの商品に注目されていたことは明らかである。 2007年3月29日付けのYAMAGATAYAの人気引菓子ランキングでは、商標権者の「マーブルデニッシュ」が第1位にランク付けされ、パンが大人気の引き菓子になったことを驚きをもって紹介されている(乙第5号証)。 乙第6号証のブログ(2007年7月23日作成)では、素敵な結婚式での素敵な引出物として「マーブルデニッシュ」が写真入りで紹介され、乙第7号証のブログ(2007年8月11日作成)では「マーブルデニッシュ」が包装箱と共に紹介されている。 乙第8号証は「Yahoo!JAPANの知恵袋」であり、おすすめの引き菓子の紹介を願う質問に対し、2007年8月20日付けで「グランマーブルのデュッシュが関西ではけっこう有名である」ことが紹介されている。 同様に、乙第9号証とし提出するStylfulのブログ(2007年8月25日付け)では、アーフェリーク白金における人気の引き菓子を紹介し、「マーブルデニッシュ」が「全国からお取り寄せの依頼が殺到する程の大人気商品である」としている。 乙第10号証として提出する「ひょうきん学園のブログ(2007年9月1日)では、「披露宴でいただいたマーブルデニッシュが美味しかったので取り寄せた」記事が相当数の反響と共に掲載されている。 ウ 雑誌で紹介される「マーブルデニッシュ」 2007年6月20日発行の雑誌「forall」(乙第13号証)では「マーブルデニッシュ」が「新しい引き菓子として話題のデニッシュ」であって、「年配の方や男性ゲストにも好評」として紹介し、その試食手順についてまで紹介している。 また、2007年8月1日発行の雑誌「AneCan」(乙第14号証)では、オフィスでのお取り寄せについての特集を組み、おいしいとウワサの商品を取り寄せているオフィスにおいて、「マーブルデニッシュ」が最近のヒットであることを紹介している。 また、乙第15号証、乙第16号証の雑誌は、その発行日が本件商標の登録査定日より後であるが、前者の雑誌は「マーブルデニッシュ」がお取り寄せで評判が広がりつつある商品であることを紹介している。発行日が2007年9月15日となっているが、その奥付において「記載のデータは2007年8月現在のもの」であることを明記しており、取材が8月末ないし9月上旬に行なわれたことは明らかである。また、後者の雑誌は、「三都美味物語で見つけたおいしい幸せ」として 「マーブルデニッシュ」を取り上げている。発行日が2007年9月27日となっているが、9月12?25日に開催されるイベントに関する記事を掲載していることを勘案すると、現実にはそれ以前に発行されていることは明らかである。 エ 「マーブルデニッシュ」の売上 商標権者は、「マーブルデニッシュ」を「ブライダルの分野」及び「催事・通販・WEBの分野」において販売している。 ブライダル分野の売上は、2005年10月?2006年9月において約91百万円、2006年10月?2007年9月において約248百万円、2007年10月?2008年9月において約496百万円(但し、決算処理中のため試算表数字)となっている。この分野には、パンのラスク菓子の売上も含まれているが、パンとラスク菓子の売上比率は概ね8:2であるから、「マーブルデニッシュ」は、それぞれ、73百万円、199百万円、397百万円となる。これらの売上には「催事・通販・WEBの分野」での「マーブルデニッシュ」の売上を含めていないが(現時点においてこの分野における「マーブルデニッシュ」の売上のみを分離して抽出するのが困難なため)、「マーブルデニッシュ」単品でこれだけの売上が推移しているのは驚異的である。 とりわけ、2006年から本件商標について登録査定が下された2007年にかけては、実に2.7倍の売上となっている。 (4)まとめ 以上の点を綜合すると、本件商標「マーブルデニッシュ」がデニッシュパンの形状・品質を表わすものであるとすることはできない。本件商標は、その登録査定当時において、商標権者が製造販売し消費者間で人気を博している商品「パン」の商標として、取引者、需要者間に知られていたというべきである。 したがって、本件商標に商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号を適用してその登録を取り消すことはできないというべきである。 第5 当審の判断 (1)本件商標は、上記1のとおり、「MARBLE DANISH」と「マーブルデニッシュ」の文字を2段に横書きしてなるところ、これを構成する、「MARBLE」「マーブル」の文字は「大理石模様、墨流し模様、墨流しの方法で染めつける」等を意味する語として、「DANISH」「デニッシュ」の文字は「油脂の多いパイ状の菓子パン」等を表す語として、各々広く一般に親しまれた語である。また、菓子、パン等を取り扱う業界において、「マーブル」の語は、「ヨーグルトマーブル、コーヒーマーブル」(甲第9号証の2 ぴあ株式会社 1994年発行 雑誌「ぴあBOOK東京・横浜 ほんとうに美味しい店」)、パリドール正盛堂におけるパンの紹介中に「マーブル」として紹介されており(甲第9号証の3)、「チョコブレッド・・・『マーブル模様が美しい』(甲第11号証の2)、「濃厚なチョコレートをマーブル状に折り込み、香ばしく焼き上げたデニッシュ。チョコ好きにはたまらないパンです。」(甲第11号証の3)、「チョコレートシートを折り込んだ生地に、アーモンド入りのケーキ生地をかけたパン。『マーブルの部分が濃?いチョコでおいしい』」(甲第11号証の4)、「商品紹介?パンの蔵?・・・玉露ペースト、煎茶の葉を生地に練りこみ、お茶あんをマーブル上(異議決定注:「上」は「状」の誤記と認められる。)に練りこみました」(甲第12号証の3)、「パン生地に折り込むと、ピンク色が鮮やかな、マーブル模様のパンが出来上がります。」(甲第14号証の10)等と記載されており、「パンの模様が大理石模様、墨流し模様であること」の意味合いで一般に使用され、「デニッシュ」の語は、「デニッシュ食パン」(甲第1号証、甲第5号証)、「アップルデニッシュ」(甲第2号証)、「プリンデニッシュ」(甲第8号証の2)、「抹茶デニッシュ食パン」(甲第10号証の2)、「紫デニッシュ食パン」(甲第10号証の3)等のようにのパンの品質として使用され一般に親しまれている実情にある。 (2)さらに、「マーブルデニッシュ」の文字については、「チョコレートマーブルデニッシュブレッド/400円 チョコレートぐるぐる! 売り切れ必至の人気パン」(甲第1号証)、「マーブルデニッシュ 450円 クロワッサン生地にチョコレートを練り込んで、長時間じっくり焼くことで表面はサクサク、中はふわふわしっとりと・・・思わず笑顔になるパンです。」(甲第2号証)、「お勧めのパンを紹介します・・・メロンパン・・・カレーパン・・・クリームパン・・・マーブルデニッシュ」(甲第3号証)、「ホタテとタマゴのパン・・・山崎製パン・・・マーブルデニッシュ・・・山崎製パン」(甲第4号証の2)、「じぞう通りのパン店。60円のプチロールからマーブルデニッシュまで、調理パン、菓子パン、デニッシュ、ペストリーなど100種類を朝4時から焼き上げる。・・・かつサンド250円?デニッシュ食パン850円 マーブルデニッシュ950円」(甲第5号証)、「学校給食献立表(詳細ページ) マーブルデニッシュ 牛乳 和風スパゲッティ」(甲第6号証)、「平成14年11月の献立表・・・日付 11 主食 きなこパン バケット(バター) マーブルデニッシュ」(甲第7号証の1)と記載され、デニッシュパンの品質、模様として使用されている実情にある。 (3)そして、「マーブルデニッシュ」の語は、「デニッシュパン」に使用されている例が多いものである。 (4)そうとすると、本件商標をその指定商品中「デニッシュパン」に使用したときは「大理石模様のデニッシュパン」であるとの商品の品質、模様を認識させるものであって、自他商品の識別としての機能を有しないものであり、かつ、前記商品以外の「デニッシュパン」に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあると判断するのが相当である。 したがって、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。 (5)商標権者は、「マーブル」及び「デニッシュ」の用語が辞書において、それぞれ別個に説明されているだけで、「マーブルデニッシュ」なる用語が存在し、或いは 使用されていることについては何ら説明されていない旨、及び「マーブルデニッシュ」全体の用語として使用されている証拠はないから、甲各号証をいかに綜合してみても、「マーブルデニッシュ」がパンの形状や品質を表示する用語として理解し把握することはできない旨、主張する。 しかしながら、「マーブル」及び「デニッシュ」の語がパンの品質、模様として取引者、需要者間において広く一般に親しまれ、使用されていることは、前記のとおりであるから、「マーブルデニッシュ」の語を「デニッシュパン」に使用すると「大理石模様のデニッシュパン」であるとの商品の品質、模様を極めて容易に認識させるものである。また、「マーブルデニッシュ」の語についても前記のとおり上記商品に普通に使用されているから、「マーブルデニッシュ」全体の語も自他商品の識別としての機能を有しないものである。 (6)商標権者は、甲第1号証ないし甲第3号証は、2007年12月18日現在のものであって、記載内容やその表現を勘案しても、本件商標の登録査定日前から「マーブルデニッシュ」が一般的に使用されていたことを理解させる内容のものとは言えない旨、主張する。 しかしながら、これら証拠のインターネットにアクセスして出力した時期は登録査定日後ではあるが、これらに記載されている商品すべてが、登録査定日後のわずか3月ないし4月という短い期間に、新商品の発売等により初めてインターネット上に掲載されたというより、むしろ、登録査定日には既に掲載されていたものとみるのが自然であるから、これらの記載内容も登録査定日前から掲載され、登録査定時においても掲載されていたと推認することができる。 (7)商標権者は、甲第4号証及び甲第5号証において、このクチコミが「食べづらいだけであまりいい所がない」と評されたためか、現在では販売されていない。山崎製パンにおける<菓子パン>の一覧表を参照してみてもこの商品は掲載されていない旨、及び2005年10月に閉店した店の情報をそのまま2007年12月まであたかも存在しているかのように掲載しているサイトが存在している事実である。このようなサイトの情報に証拠価値を認めることができない旨、主張する。 しかしながら、山崎製パン株式会社及び甲第5号証に記載された店がパン及びデニッシュパンに「マーブルデニッシュ」の語を商品の品質、模様として登録査定日前に使用していたことは事実である。 (8)商標権者は、甲第6号証及び甲第7号証は、「マーブルデニッシュ」がどのメーカーのいかなる食材であるかは不明である。また、それがいかなる形状や品質のものであるのかも全く把握できない旨、主張する。 しかしながら、「マーブルデニッシュ」が主食として欄に記載されていることは、同じ欄に「バターロール」「きなこパン」等が記載されていることから明らかである。 そうとすれば、「マーブルデニッシュ」の語は、「デニッシュパン」について普通に使用され、需要者に広く認識されていたものと推認することができる。 (9)商標権者は、乙第3号証ないし乙第17号証を提出し、本件商標は、その登録査定当時において、商標権者が製造販売し消費者間で人気を博している商品「パン」の商標として、取引者、需要者間に知られていたというべきである旨、主張する。 しかしながら、商標権者が「マーブルデニッシュ」の商標を使用している商品は、商標権者も認めているように「イースト菓子」に使用しているものであって、「デニッシュパン」について使用しているものではない。また、商標権者の「マーブルデニッシュ」の売上高が乙第17号証で示されているものの、「マーブルデニッシュ」の商標の使用期間は、本件商標の登録査定当時においてわずか3年程度であり、この商品の販売地域が全国的なものなのか等確認することができない。そして、商標権者の「イースト菓子」に使用している「マーブルデニッシュ」が紹介された雑誌(乙第13号証ないし乙第16号証)にしても、わずかな件数である。 してみれば、「マーブルデニッシュ」の語を商標権者がブライダル用の引き菓子(イースト菓子)に使用する商標としてある程度知られていたとしても、「デニッシュパン」について、「マーブルデニッシュ」の語が商標法第3条第1項第3号の適用を凌駕し、取引者、需要者間に広く知られていたとまでは認めることができない。 そして、本件商標を「大理石模様のデニッシュパン」以外の「デニッシュパン」に使用するときは、商品に品質について誤認を生ずるおそれがある。 (10)したがって、商標権者の前記主張はいずれも採用することができない。 (11)以上のとおり、本件商標は、その指定商品中の「デニッシュパン」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、商標第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。 しかしながら、本件商標の登録に係るその余の指定商品については、その登録を取り消すべき理由はないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものとする。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2009-05-25 |
出願番号 | 商願2006-103597(T2006-103597) |
審決分類 |
T
1
651・
272-
ZC
(Y30)
T 1 651・ 13- ZC (Y30) |
最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 田中 幸一 |
特許庁審判長 |
鈴木 修 |
特許庁審判官 |
小畑 恵一 平澤 芳行 |
登録日 | 2007-09-21 |
登録番号 | 商標登録第5079190号(T5079190) |
権利者 | 株式会社グランマーブル |
商標の称呼 | マーブルデニッシュ |
代理人 | 肥田 正法 |
代理人 | 梅村 莞爾 |