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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y061418212526
管理番号 1200473 
審判番号 取消2007-301600 
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-12-07 
確定日 2009-06-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第2327712号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2327712号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2327712号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、昭和63年12月9日に登録出願、第22類「はき物、かさ、その他本類に属する商品」を指定商品として平成3年8月30日に設定登録され、その後、同13年7月3日に存続期間の更新登録がなされ、さらに、指定商品については、同15年12月3日に指定商品の書換登録がされ、第6類「つえ用金属製石突き」、第14類「貴金属製靴飾り」、第18類「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」、第21類「靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー」、第25類「履物」及び第26類「靴飾り(貴金属製のものを除く。),靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具」と書き換えられている。
なお、本商標権については、専用使用権者を「田村駒株式会社」として、地域「日本全国」、期間「本商標権の存続期間中(平成23年8月30日迄)」、内容「全指定商品」とする専用使用権が平成19年1月16日付で設定登録されている。

第2 請求人の主張(要旨)
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第6号証を提出した。
1 請求の理由
請求人の調査によれば、本件商標は、その指定商品について継続して3年以上日本国内において使用されていないのみならず、本件商標を使用していないことについて何等正当な理由が存することも認められないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
答弁書で示された証拠方法によるも、本件商標の使用事実は十分に証明されているとはいえない。
(1)通常使用権の設定について
答弁書によると、被請求人は、2001年11月10日、田村駒株式会社(以下「田村駒」という。)に対し、2002年1月1日から4年間、本件商標の使用について独占的通常使用権を設定し、かつ、田村駒は株式会社ボールド(以下「ボールド」という。)に対し、本件商標の通常使用権を許諾し、さらに、ボールドは株式会社スタート(以下「スタート」という。)に本件商標の通常使用権の再許諾をしている(乙第2号証)。
しかしながら、当該契約書(乙第2号証)で使用許諾されている商標は、本件商標(第2327712号)ではなく、登録第2309767号商標であり(乙第2号証最終頁参照)、しかも、該商標の態様は、乙第2号証最終頁に掲示された鷲図形と「LYLE&SCOTT/COLLECTION」との結合商標ではなく、「LYLE&SCOTT」の文字商標である(甲第3号証)。
乙第2号証からは、特に、本件商標に関するボールドとスタート間の通常使用権の許諾の存在について、強く疑問を感じざるを得ない。
(2)ボールド及びスタートが本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることについて
(ア)使用の事実について
被請求人は、乙第3ないし第7号証により、ボールド及びスタートが、2007年夏から秋にかけて、本件商標が付された短靴(以下「本件商品」という。)を製造・輸入し、同年10月に、本件商品が靴の展示会に出展及び広告展示されている旨主張している。
しかし、乙第3及び第4号証自体には問題はないが、乙第3号証で示されている商標は、本件商標と社会通念上同一とは認められないものであり、乙第4号証の報告書の日付(特に、右上)が手書きである点も多少の不自然さを感じさせる。
また、乙第5号証の写真からは、撮影日付及び撮影場所の特定は困難であることから、スタートが「LYLE&SCOTT」ブランドの靴を10月16日から18日に靴の展示会に出展した事実は乙第6号証により証明されているが、本件商品が2007年10月16日から18日に開催された靴の展示会に広告展示されたという事実は両証拠からは証明されているとはいえない。
さらに、乙第7号証自体には問題はないが、本件審判の予告登録日は平成19年12月27日であるから、本証拠には証拠能力はないものと思料する。
(イ)本件商標と使用商標との同一性について
被請求人は、本件商標と乙第3号証等で示されている商標(以下「使用商標」という。)がほぼ同一の図形からなり、同一の称呼及び観念が生じるものであるから、両商標は社会通念上同一の商標である旨主張している。
しかしながら、まず、図形商標の同一性を考察する場合において、同一の称呼及び観念(ここでは、犬の図形なら犬の、鷲の図形なら鷲の称呼及び観念が生じるというレベルの話である。)が生じるのは当然の前提である。
図形商標の場合、社会通念上同一といえるのは外観において同視される商標(50条1項括弧書)の場合のみであり、不使用取消審判における登録商標の使用の認定に関する運用(甲第4号証)に示すように、外観において同視される商標とは、登録商標の図形の構成態様自体は変えずに白黒を反転させたり、背景を付したりした場合である。一方、一定の観念を生ずる図形と当該観念を表すものと認められる図形による表示態様の相互間の使用は、社会通念上同一とは認められず、このように、図形商標の場合、その同一性の範囲は広くないのである。
請求人の調べたところでは、被請求人は、世界的に本件商標を含め4タイプの鷲図形の商標を使用及び出願・登録している(甲第5号証)。
わが国では、このうちのA、B及びDタイプが出願・登録されており、本件商標は、Aタイプである。そして、乙第3号証の4の使用商標は、明らかにBタイプである。このような同一の観念を生ずる図形商標相互間において、登録商標と表示・表現態様の異なるタイプの違う商標は、上記の運用基準に照らした場合、登録商標と外観上同視できる社会通念上同一の商標ということはできないと考えるのが妥当であり、しかも、このBタイプは、登録第4264323号商標として登録されているのであるから(甲第6号証)、乙第3号証の4の商標の使用は、登録第4264323号商標の使用なのである。
そうすると、乙第3号証の4に示す商標の使用を本件商標の使用として認めるのは、不使用商標対策の一つである連合商標制度の廃止の趣旨にも反することになる。
(ウ)以上のとおり、答弁書の使用証拠に示されている使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものでもなく、本件商標の使用の事実を証明しているものとはいえないから、被請求人提出の証拠によっては、被請求人等によって、審判請求登録前3年以内に本件商標が使用されたことは何等証明されていない。

第3 被請求人の主張(要旨)
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、平成20年4月24日付け及び同年12月22日付け答弁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第18号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)通常使用権の設定
被請求人は、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国に本店を有する外国法人であるところ、2001年11月10日、田村駒に対し、2002年1月1日から4年間、日本国内における本件商標の使用について独占的通常使用権を設定した。
さらに、田村駒は、ボールドとの間で、本件商標を付した商品の製造及び販売に関する契約(以下「本件契約」という。)を締結し(乙第2号証)、同社に対して本件商標の通常使用権を設定した(本件契約第1条)。
また、田村駒は、ボールドがスタートに対して、更に通常使用権を設定することを許諾し(同第2条)、ボールドはスタートに対し通常使用権を設定した。
(2)本件商標の使用
本件商標は、審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、その通常使用権者又は専用使用権者によって、指定商品中の第25類「短靴」について使用されている。
すなわち、ボールド及びスタートは、審判請求の予告登録前3年以内の2007年夏から秋にかけて、本件商品を製造・輸入し、同年10月に、本件商品の展示及び本件商標に係る靴の広告を展示している(乙第1ないし第13号証)。
(3)ボールド及びスタートが本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることについて
(ア)使用の事実
乙第3号証は、本件商品及びその包装箱を撮影した写真であり、包装箱の「IT NO.」の記載からその品番が「LS-1702」であることが分かる。
乙第4号証は、平成19年8月3日付けの本件商品の製造販売報告書であって、乙第3号証の品番(「LS-1702」)と当該カタログに掲載された品番(「LS-1702」)とが一致していることから、乙第4号証に表示された商品が本件商品であることが分かり、かつ、生産国「カンボジア」、製造計画数量「400」とあることから、スタートが同時期に、本件商品400足をカンボジアで製造し、輸入したことが分かる。
乙第5号証は、スタートが2007年10月16日から18日にかけて、本件商品を靴の展示会に展示したときの様子を撮影した写真であって、乙第14号証により、乙第5号証の写真の撮影日時が2007年10月16日12時であることが明らかである。そして、乙第6号証は、当該展示会のパンフレットであって、乙第6号証の10頁の右上に、スタートが被請求人のブランド(「LYLE&SCOTT」)の紳士靴の展示会を行っていることが示されており、また、乙第5号証によれば、当該展示会において、本件商品が展示されていること及び本件商標が靴の広告に付されて展示されていることが分かる。
乙第7号証は、ボールドの田村駒に対する2008年1月の本件商品の販売実績報告書であって、該報告書の表中の2行目には、本件商品の品番(「LS-1702」)が記載されていることから、同月に、スタートが本件商品を63個販売したことが分かる。
(イ)本件商標と使用商標との同一性
本件商標と使用商標とは、ほぼ同一の図形からなり、同一の称呼及び観念が生じるものであることから、社会通念上同一の商標である。
すなわち、本件商標の外観は、一羽の左向きの鷲(猛禽類)が翼を高く上げ、口を開けながら、頭部をやや上部に向けて飛んでいるものである。鷲の特徴は、「嘴・爪はともに曲がり、両眼は鋭く、翼は長大」なことであり(乙第8号証)、また、猛禽類の特徴は、「他の鳥類や小動物を捕食し、上嘴は湾曲して鋭く、翼は強大で、飛行は迅速、足に鋭い鉤爪がある」ことである(乙第9号証)。
本件商標の鳥は、上嘴が湾曲して鋭く、眼が鋭く、翼が長大で、鉤爪が鋭く曲がっていることから、それが鷲(猛禽類)であることは一目瞭然である。
他方、使用商標についてみても、一羽の左向きの鷲(猛禽類)が翼を高く上げ、口を開けながら、頭部をやや上部に向けて飛んでいる点で同一性があり、また、本件商標と使用商標とは、羽、胴体、頭、足及び尻尾の大きさの各比率がほぼ共通し、羽を広げた角度も約45度と同一であって、さらに、本件商標と使用商標とはいずれも動感が無く、やや図案化されている点で同一性があることから、本件商標と使用商標とは外観においてほぼ同一の図形である。
また、本件商標と使用商標は、いずれも「鷲」・「イーグル」という称呼及び「鷲」という観念を生じる。これについては、被請求人のブランド商品が「鷲の紋章」、「イーグルの紋章」として一般需要者に広く親しまれていることがなによりの証左である。
被請求人のブランド商品は、全世界において幅広く販売されており、日本国内においても、「鷲の紋章」、「イーグルの紋章」を使用する唯一のブランドとして一般需用者に広く知られている(乙第10ないし第13号証)。
そして、上記で示したとおり、使用商標と本件商標とは、ほぼ同一の図形からなるものであるから、本件商標にとどまらず、使用商標についても、看者に「鷲」を観念させ、かつ、「鷲」、「イーグル」を称呼させ、ひいては被請求人のブランドであることを想起させることは明らかであることから、本件商標と使用商標の称呼及び観念は同一である。
(ウ)指定商品の主たる需要者の商品選択について
履物類をはじめとする本件商標の指定商品の主たる需要者は、老人から若者までを含む一般大衆であって、その商品等に係る商標のブランドについて、曖昧な知識しか持たないものが多く、このような需要者が商品を購入する際は、メーカー名やその信用などを事前に検討して購入するとは限らず、短時間で購入商品を決定することも少なくないのが実情であり、その場合は、比較的小さく表示されたマークの微差を明瞭に意識することは極めて困難である。
(4)結語
以上述べたとおり、乙第1ないし第18号証によって、本件商標の通常使用権者が請求に係る指定商品中、第25類「短靴」について、審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において本件商標の使用をしている事実は明白である。
したがって、本件審判請求には理由がない。

第4 当審の判断
(1)被請求人は、本件商標をその指定商品中の第25類「短靴」について使用しているとして、乙第1ないし第18号証を提出している。
そこで、被請求人の提出に係る乙各号証をみるに、乙第1号証の1(英文)及び2(訳文)は、2001年11月7日に(幾つかある当事者間の署名の日付のうち、最も遅い日付のもの)、被請求人と田村駒との間において締結された実施許諾契約書である。これによれば、被請求人は、田村駒との間において、2002年1月1日から4年間、日本国内における本件商標の使用について独占的通常使用権許諾契約を締結しており、該契約書の16「終了」の項には、「いずれの当事者も、12ケ月前に書面で通知することにより、2006年12月31日以降いつでも、本契約を終了することができる。」と記載されている。そして、添付されている別紙1の「本件許諾製品」の中には、「靴(非ゴルフ用)」等の商品が記載されており、別紙2の「本件マーク」の中には、本商標権(登録第2327712号)の外、複数の商標権が表示されていることを認めることができる。
乙第2号証は、平成18年10月20日付の「ライルアンドスコット製品の製造及び販売に関する契約書」と題する書面であり、前文には、「田村駒株式会社(以下甲という)と株式会社ボールド(以下乙という)とは、甲が英国ライル・アンド・スコット社(以下ライセンサーという)と締結したアグリーメント(以下実施許諾契約という)により日本における独占的製造販売権を有する『ライル・アンド・スコット』ブランド製品について、別紙に記載された商標(審決注 別掲(2)に示すとおりの構成からなる商標であり、以下『使用契約に係る商標』という。なお、該商標の下には、登録番号として第2309767号と記載されているが、これは、本商標権とは異なる登録番号である。)を付した製品の製造及び販売に関し、次のとおり契約を締結する。」と記載されており、19条の契約条項からなっている。
そして、第1条(製品)には、「甲は、使用契約に係る商標を付した下記のライル・アンド・スコットブランド製品のうち、乙が希望し、甲が次条以下の条件でこれを承諾する製品(以下『本製品』という)に限り、乙の非独占的かつ継続的な製造及び販売を認めるものとする。」とあり、その製品名として「紳士靴(但し、スニーカーは除く)」と記載されており、第2条(再許諾)には、「甲は、乙が株式会社スタート(以下丙という)に本契約を再許諾することを了承するものとする。・・・」旨記載されている。
乙第3号証の1ないし4は、被請求人の主張によれば、使用契約に係る商標が付された靴及びその包装箱を撮影した写真であり、その撮影年月日は明らかではないが、乙第3号証の1に写されている靴には、その内面部分に、鷲と思しき図形とその下に「LYLE & SCOTT/COLLECTION」の文字が表示されている(乙第3号証の2は、商標部分を拡大した写真である)。また、乙第3号証の3は、靴の包装箱であり、箱の蓋部分及び箱の側面部分に使用契約に係る商標が表示されており、品番として「LS-1702」の表示が記載されている(乙第3号証の4は、商標部分を拡大した写真である)。
乙第4号証は、平成19年8月3日付のスタートの作成に係る「LYLE&SCOTT商品別製造販売報告書」と題する書面であり、左から2番目の欄には、靴の写真(乙第4号証の2葉目、3葉目には、靴の内面部分に使用契約に係る商標が表示された状態の写真も添付されている)とともに、品番として「LS-1702」、生産国「カンボジア」、製造計画数量「400」等の記載があり、田村駒が同月6日に承認していることが認められる。
乙第5号証は、被請求人の主張によれば、スタートが2007年10月16日から18日にかけて、本件商品を靴の展示会に展示したときの様子を撮影した写真であり、使用契約に係る商標が大きく表示された展示コーナーにおいて、使用契約に係る商標を表示した商品説明を掲げて各種の靴が展示されている状況が写し出されている。
乙第6号証は、「第35回アイ・エス・エフ(靴とファッション雑貨の国際見本市)/第4回ジャパンシューエキスポ」のパンフレットであり、会期として「2007年10月16日(火)?18日(木)」、会場として「東京・池袋サンシャインシティ文化会館2F」等の記載があり、その10頁には、スタートの紹介記事が掲載されており、展示品目として「紳士靴」、ブランドとして「LYLE & SCOTT」等のブランドが記載されている。
乙第7号証は、2008年2月13日付の「ライル&スコット販売実績報告」と題する書面であり、ボールド(サブライセンシー 株式会社スタート)が田村駒宛てに2008年1月分の販売実績を報告したものであり、報告内容の2行目には、商品名「紳士靴」、品番「LS-1702」、販売数量「63」の外、卸売価格、総金額等が記載されている。
(2)上記において認定した事実を総合すれば、以下のことが認められる。
(ア)田村駒は、被請求人から日本国内における独占的通常使用権を認められており、ボールドは、田村駒から再使用権(通常使用権)を許諾されている。
そして、そのボールドから更に使用権を許諾されたスタートは、本件審判の請求の登録(平成19年12月27日)前3年以内である平成19年8月当時に、使用契約に係る商標が付された品番「LS-1702」の靴400足をカンボジアにおいて製造計画し、その全量であるか否かは別にしても、該商品をカンボジアから輸入していたものと推認することができる(乙第4号証)。また、乙第5及び第6号証を併せみれば、スタートは、本件審判についての要証期間内である2007年10月16日から18日にかけて開催された「第35回アイ・エス・エフ(靴とファッション雑貨の国際見本市)/第4回ジャパンシューエキスポ」において、使用契約に係る商標を表示した商品説明を掲げて各種の靴を展示していたことを認めることができる。
(イ)乙第7号証(ライル&スコット販売実績報告)において報告されている2008年1月における品番「LS-1702」に係る紳士靴の販売は、本件審判についての要証期間内の取引の事実を示すものではないから、本件商標の使用事実を裏付ける証拠としては採用できないが、スタートによる上記した一連の営業活動の流れを把握するには役立ち得るものということができる。
(3)しかしながら、乙第3ないし第6号証をもってしては、スタートが本件審判についての要証期間内に、本件商標あるいは本件商標と社会通念上同一と認められる商標を「紳士靴」について使用していたものとは認められない。
(ア)田村駒とボールドとの間において締結された契約書(乙第2号証)の別紙に掲げられている商標(別掲(2)のとおりの構成からなる商標)は、本件商標と社会通念上同一と認識し得る商標とは認められないものである。そして、この契約に基づいて製造されたものと認められる乙第3号証の靴の写真に表示されている商標、乙第4号証のスタートがカンボジアにおいて製造し、輸入したものと推認される靴に表示されている商標及び乙第5号証の展示会において表示されている商標も本件商標と社会通念上同一と認識し得る商標とは認められないものである。
すなわち、本件商標は、別掲(1)に示したとおり、周囲を黒く縁取りされた鷲と思しき図形のみからなるのに対して、使用契約に係る商標や乙第3号証の靴の写真に表示されている商標等は、別掲(2)のとおり、鷲と思しき図形と「LYLE & SCOTT/COLLECTION」の文字とからなるものであって、鷲と思しき図形と文字との間には、いずれに軽重があるものともいい難く、全体として、まとまりよく一体的に構成された商標ということができる。
そうとすれば、本件商標と使用契約に係る商標等とは、その全体の構成において明らかな差異があるものというべきである。
しかも、鷲と思しき図形部分のみを比較しても、本件商標は、別掲(1)に示したとおり、周辺全体に黒塗りの縁取りが施された鷲と思しき図形からなるところ、この縁取りは、商標の構成からみた場合には、単なる輪郭線などとは異なり、白色で表された鷲と思しき形状部分と黒地の部分とが混然一体に構成されており、全体として、鷲をモチーフにしたワッペンの如き印象を与えるものであって、縁取り部分がその構成に与える影響は、決して小さくないものである。
これに対して、使用契約に係る商標や乙第3号証の靴の写真に表示されている商標等に表示されている鷲と思しき図形には、そのような縁取り部分もなく、鷲と思しき図形のみが表されており、猛禽類としての「鷲」そのものとして理解・認識されるものである。
そうとすれば、商標の構成におけるこのような明らかな構成の差異は、これらの商標に接する取引者・需要者に対して、明瞭なる視覚的印象の違いを感じさせるものであるから、使用契約に係る商標等に表示されている鷲と思しき商標と本件商標とは、外観において別異の商標というべきである。
してみれば、使用契約に係る商標等と本件商標とは、その全体の構成においてばかりでなく、鷲と思しき図形部分の構成においても社会通念上同一と認識し得る商標とは認められないものである。
(イ)この点について、被請求人は、使用契約に係る商標等に表示されている鷲の図形と本件商標の鷲の図形とは、外観ばかりでなく称呼及び観念の点からみても、社会通念上同一の商標である旨主張している。
しかしながら、仮に、これらの商標から、いずれも「ワシ、イーグル」の称呼及び「鷲」の観念を生ずるとしても、上記したとおり、使用契約に係る商標等に表示されている鷲の図形と本件商標の鷲の図形とは、外観において同視し得る商標とはいえないものであって、社会通念上同一の商標とは認められないものであるから(商標法第50条第1項括弧書き参照)、この点についての被請求人の主張は採用できない。
(ウ)そして、被請求人は、その外に、乙第8ないし第18号証を提出しているが、本件商標あるいは本件商標と社会通念上同一と認識し得る商標が取消請求に係る指定商品について使用されていたものと認めるに足る証拠は存在しない。
(4)まとめ
以上のとおり、被請求人の答弁の全趣旨及び乙各号証を総合的に判断しても、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者、通常使用権者らのいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標(本件商標と社会通念上同一と認められる商標を含む)の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
したがって、商標法第50条の規定により、本件商標の登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)本件商標



別掲(2)使用契約に係る商標



審理終結日 2009-01-27 
結審通知日 2009-01-30 
審決日 2009-02-17 
出願番号 商願昭63-138336 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y061418212526)
最終処分 成立  
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
久我 敬史
登録日 1991-08-30 
登録番号 商標登録第2327712号(T2327712) 
代理人 牛島 信 
代理人 稗田 直己 
代理人 影島 広泰 
代理人 渡邊 隆 
代理人 志賀 正武 
代理人 高柴 忠夫 
復代理人 知念 芳文 
代理人 鈴木 博久 

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