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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z42
管理番号 1198958 
審判番号 取消2007-301412 
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-11-02 
確定日 2009-05-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4432052号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4432052号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成11年4月21日に登録出願、第42類「美容,理容,写真の撮影,求人情報の提供,建築物の設計,測量,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,衣服の貸与」を指定役務として同12年11月17日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要旨
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定役務中、第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
請求人が調査したところでは、本件商標は、継続して3年以上日本国内において、その指定役務中、第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」について商標権者、専用使用権者若しくは通常使用権者によって使用されている事実を見出すことができない。
したがって、本件商標の登録は、その指定役務中の上記役務について、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人は、本件商標が取消請求に係る役務について使用されていることの証拠として、乙第1号証の1ないし乙第5号証の3を提出しているが、本件商標の使用は立証されていない。
(1)乙第1号証について
本件商標が広告に使用されている役務は、商標法上の役務ではない。
被請求人会社のホームページにおいて「会社概要」(甲第1号証の1)内の「美容用品製造販売(OEM商品)」をクリックすると「美容用品研究開発(OEM事業部)」(甲第1号証の2、乙第1号証)のページに移動する。「OEM」とは、「相手先ブランドで販売される製品を製造すること。また、製造するメーカー」を意味する語である(甲第2号証)。相手先ブランドで販売される美容用品を製造するに先立っては、研究開発が必要な場合もあるであろう。しかしながら、商標法上の役務とは「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうるべきもの」と解されているところ、OEM事業において行われる研究開発は、相手先ブランドで販売される美容用品の製造という目的のために、その枠内において付随的に提供されるものであって、「独立して商取引の目的たりうるべきもの」ではない。商標法上の役務という観点からすれば、被請求人が行っているのは、「第40類 委託による化粧品の製造」であって、「第42類 医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」ではない。
被請求人は、「『美容用品研究開発』の文字の下に重ねて本件商標と同一の商標が表示されている」と述べ、この事実に基づいて「当該サービスの広告を自社のホームページで行っている。」と主張しているので、この主張に反論する。
乙第1号証の大きな枠内左側に表示された「美容用品研究開発」は、業務の全体を包括的に表現したものであり、同枠内右側に表示された「ヒアリング、マーケティングサポート、企画戦略立案、ブランドコンセプト立案、ネーミング、容器パッケージ、製造ライン、販売チャネル、拡販フォロー」は、そのために行う具体的業務を表示したものと解されるが、この具体的業務内には、「試験・検査又は研究」に関連する業務が全く記載されていない。これでは、「『美容用品研究開発』において美容用品の検査サービスを行っており、当該サービスの広告を自社のホームページにて行っている。」との主張は採用することができない。
(2)乙第2号証ないし乙第4号証について
乙第2号証ないし乙第4号証及びこれらに係る陳述については争わない。
(3)乙第5号証について
被請求人は、自らが提供したサービスに関して取引先に請求した請求書の写しとして乙第5号証の1、2及び3を提出している。しかしながら、これらの証拠は、本件商標が「第42類 医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」について使用されていることの証明にはならない。
ア 使用商標が表示されていない
これらの請求書には、本件商標が全く表示されていない。乙第5号証の1には「株式会社APOLLON」の表示があるが、これは、商号としての使用であり、商標として使用されているものとは認められないし、ましてや図形と特殊欧文字「Apollon」の組み合わせからなる本件商標の使用とは認められない。
被請求人の主張によれば、「被請求人はホームページでの広告のみならず、現実に美容用品の検査サービス業務を行っている。」とのことであるが、ここで立証すべきは、本件商標が「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」に使用されていることであって、被請求人会社がこれらの業務を行っていることではない。
イ 使用役務が不明
これらの請求書には、「スーパーソニック EX&スイートカール テスト」、「装着ボンドテスト(ケラチン)」、「スイートカール」、「ケラチン・ヒアルロン酸テスト」、「human hair(リシン2.5%)テスト」等の項目が記載されているが、これらが何らかの「テスト(試験)」であることは想像できても、何に係る試験なのかが明らかでない。これらの「テスト(試験)」が「医薬品・化粧品又は食品」に係るものであるかは全く不明である。

第3 被請求人の主張の要旨
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証(枝番を含む。)を提出した。
1 平成20年3月28日付け提出の答弁書
被請求人(株式会社アポロン)は、平成3年6月24日に設立されて以来、美容室の経営をメイン事業として発展し、今日では、愛知県下に4店舗の美容室を有するに至っている。かかる美容室の発展とともに、被請求人は、自己の業務を、美容室経営をサポートするサロン事業部、美容用品の研究開発をサポートするOEM事業部、ブライダルのサポートをするBloomy事業部、ウェブデザインその他の広告をサポートするmond事業部の4つの部門に分け、各部門ごとにより専門性を持たせたサービスの提供を行っている。
このような業務の発展とともに、被請求人は、自社ブランドとして「APOLLON」の標準文字(登録第号4437895)の他、本件商標について、平成12年11月17日に商標登録を受け、各美容室の店頭、パンフレット、ホームページなどで使用してきた。このうち、上述したOEM事業部が美容用品の検査サービスを提供しており、当該サービスの広告を自社のホームページにて行っている(乙第1号証)。かかる美容用品の検査サービスは、本件審判の取消対象たる「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」の役務に含まれる役務であり、乙第1号証から明らかなように、被請求人の役務である「美容用品研究開発」の文字の下には、本件商標と同一の商標が表示されている。
上記ホームページを開設するにあたり、被請求人は、2005年7月27日に「apollon-japan.co.jp」のドメイン名を取得し(乙第2号証)、本件審判の請求の登録前である2005年9月頃にホームページを開設し(乙第3号証)、その後、OEM事業部の設立に伴いホームページに美容用品の研究開発の広告を掲載し(乙第4号証)、今日に至るまで同ホームページにて継続的に「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」との関係で本件商標を使用してきた。
さらに、被請求人は、ホームページでの広告のみならず、現実に美容用品の検査サービス業務を行っている。乙第5号証の1ないし3は、被請求人が本件審判の請求の登録前3年以内に、美容用品のテストを取引先のために行い、取引先に出した請求書の写しである。
2 平成20年9月25日付け提出の答弁書
(1)請求人の主張について
ア 被請求人のホームページにおける「美容用品研究開発」のページを見ても、研究開発はOEM事業に伴う付随的なものとして行われているとしか読み取れず、ホームページにおける広告としての使用は、「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」を独立して商取引の目的となり得るサービスとして使用したものではないとの主張について
乙第1号証に示されているように、当該ホームページの大枠左サイドにおいては、「美容用品研究開発」の大項目が表記されており、その下段に小さく「OEM事業部」の記載がある。そして、これらの文字の下に重ねて本件商標が表示されている。一方、右サイドには小さな文字で「OEMでヒット商品を作ります」と表記され、その下に、「ヒアリング」「マーケティングサポート」「規格戦略立案」「ブランドコンセプト立案」「ネーミング」「容器パッケージ」「製造ライン」「販売チャネル」「拡販フォロー」等のOEM事業の具体的内容が列挙されている。
請求人は、「(被請求人のホームページ上における)OEMの具体的業務内に『試験・検査又は研究』に関連する業務が全く記載されていない。これでは、『…当該サービスの広告を自社のホームページにて行っている。』との主張は採用することができない」と主張する。しかし、これは当然である。この右サイドのOEM事業の具体的内容の一つに「美容用品研究開発」のサービスが挙がっていないのは、まさに「美容用品研究開発」がOEM業務の一環として行われている業務ではないからである。
当該ホームページの構成を素直に見れば、大枠左サイドの大項目「美容用品研究開発」をメインの業務として捉えるのが通常であり、右サイドに細かく表記されたOEM事業は、美容用品をテストした結果、クライアントには製造能力がないなどの理由から、クライアントから製造の依頼があれば、その延長線上で製品の委託製造まで行うことが可能であることを広告しているにすぎない。独立したサービスとして行ったテスト結果を受けて、委託製造の依頼を新たに受注するのであるから、当然、OEM事業の具体的内容の一つに「美容用品研究開発」のサービスが挙がってくるはずがない。逆に言えば、委託製造の依頼を受けなければ、テストの結果を報告したところで本サービスは完結するのであるから、「美容用品研究開発」のサービスは、あくまでも試験や検査の報告を最終目的として行われるサービスである。したがって、請求人が主張するように、製品を製造してそれを引き渡すことを最終目的として製品製造の過程で行われる製品テストとは全く性質が異なるのである。
当該ホームページ左サイドにおいては、確かに、「美容用品研究開発」の下に「OEM事業部」と小さく書かれているが、前記したような当該ホームページの全体の構成を見れば、独立したサービスとして「美容用品研究開発」を行っているものとして把握できるのであって、どの部門が「美容用品研究開発」を行っているかは、当該サービスを独立した業務として行っていることを否定する根拠になり得るものではない。
また、現実的にも、検査・研究サービス(のみ)に対する請求書(乙第5号証の1ないし3)をクライアントに発行しているように、試験・検査・研究サービスをそれのみで完結する独立した業務として行っているのであって、OEM業務の一環として付随的に検査・研究サービスを行っているならば、OEM商品製造の対価としての請求に含まれるはずであってこのような形で請求書を出すことはない。
被請求人が提出した乙第1号証や乙第5号証を素直にみれば、試験・検査・研究サービスが独立した役務として捉えられるのは必然であり、これまでに当該ホームページに接した需要者や取引者も同様に捉え、委託製造とは別に各種テストのみを依頼してきている。よって、乙第1号証は委託製造しか広告していないとする請求人の主張は失当である。
イ 乙第5号証の1に記載された「株式会社APOLLON」の表示は、商号として使用したものであって、商標として使用したものではないとの主張について
請求書中に本件商標が使用されているとは被請求人は何ら主張していない。すなわち、乙第5号証は、試験・検査・研究サービスをそれのみで完結する独立した業務として行っていることを証する目的で提出したにすぎないものである。
ウ 請求書に記載された各種テストの内容が明らかにされておらず、指定役務に該当する検査・研究なのかどうか不明であるとの主張について
主に女性が髪を長く見せる場合に、最近ではエクステンションとよばれる「つけ毛」を装着することが頻繁に行われている。エクステンションは自毛につけ毛用の特殊なボンドによって装着し、装着後に本来の髪と一緒にパーマネントを当てて一体的にウェーブを付けることによって見た目がより美しくなる。よって、パーマ液と装着ボンドとの相性が重要であって、ボンドがパーマ液によって溶けてしまうようでは意味がない。そこで、かかる視点から装着ボンドのテストをしたものが「装着ボンドテスト」である。このエクステンション用特殊ボンドは美容や理容に関する商品として化粧品の範疇でカバーされる商品と解される以上、エクステンション用特殊ボンドについての成分テストは「化粧品の試験・検査又は研究」に該当するサービスである。なお、「スーパーソニック EX」とは特定のエクステンションのことを示しており、「スイートカールテスト」とは、パーマ液との相性テストのことを示している。
一方、「ケラチン・ヒアルロン酸テスト」とは、ボンドではなくパーマ液の方をテストしたものである。すなわち、パーマ液がケラチンやヒアルロン酸によって髪にどのような影響を与えられるのかを様々な条件下でテスト(スイートカールテスト)したものである。一方、「高分子ポリマーテスト」とは、パーマ液がエクステンションに及ぼす影響を様々な条件下でテスト(スーパーソニック EX&スイートカールテスト)したものである。そして、パーマ液は商品の類似群コード「04C01」に該当する化粧品の範疇に含まれる商品であるから、パーマ液の成分テストは、「化粧品の試験・検査又は研究」に該当するサービスである。
(2)本件商標の使用事実
本答弁書において、被請求人は新たに乙第6号証を提出する。テスト内容や結果はクライアントとの関係で極秘事項とされていることから、前回の答弁書提出時にはあえて提出しなかったが、本件商標が指定役務に使用されていることをより明確に証明し、本件審判事件を早期に解決すべく今回は提出に踏み切ったものである。かかる事情から、最低限必要と思われる個所を除いてマスキングした。
乙第6号証の1は、本件商標が表示された「美容室使用のデジタルパーマ(加温一浴式)によるカール形成試験」についての見積書、乙第6号証の2はその報告書である。なお、先に提出した乙第5号証の3が本件テストに関する請求書である。
課題2(審決注:数字2は丸文字である。)にあるように、ここでは、人毛(中国輸入毛)及びファイバーMIX(ハイプロン)におけるカール形成に適した一浴式パーマ剤の還元効率試験を行っている。このテストは、パーマ剤に通常用いられている成分「チオ」と比較して、髪を傷めにくい成分である「リジン」や「アルギニン」を使用した一浴式パーマ剤の還元効率試験である。ここに、一浴式パーマ剤とは、パーマ剤を1回塗布してウェーブを形成し、その後熱をあてることによってウェーブをその形成した状態に記憶させるデジタルパーマと呼ばれるパーマに使用されるパーマ剤である。これに対し、二浴式パーマとは、パーマ剤の1回目の塗布によりウェーブを形成し、異なる成分からなる2回目のパーマ剤の塗布によってウェーブをその形成した状態に記憶させる方式である。また、還元効率試験とは、ウェーブのかかり具合を試験するものである。被請求人は、前記「チオ」「リジン」「アルギニン」をそれぞれ成分に含んだ一浴式パーマ剤を条件(配合割合、ロッドの太さ、温度条件など)を変えて人毛及び人工毛に使用した場合のウェーブのかかり具合をテストしてその結果をレポートし(乙第6号証の2)、本件テストに関する請求書(乙第5号証の3)を発行している。当該パーマ剤の成分テストは、前記したように「化粧品の試験・検査又は研究」に該当する役務であり、乙第6号証の1には本件商標が表示されていることから、本件商標を指定役務に使用したものであることは明らかである。また、見積書の日付が平成18年9月25日、報告書の日付が平成18年11月2日となっていることから、期間的な要件も満たしている。
さらに、乙第7号証を提出する。乙第7号証の1は被請求人において長年に亘って使用されてきた長封筒である。当該封筒には本件商標が明示されており、請求書やテスト報告書などの書類は当然これらの封筒に入れて郵送されている。乙第7号証の2は長封筒を発注したときの発注書及び納品書・請求書の写しである。これにより、発注日が2005年7月7日、納品日が同年7月20日であることが確認できる。
(3)以上のとおり、被請求人は、指定役務との関係で本件商標を継続的に使用してきたことは提出に係る乙各号証により証明されたものであるから、本件商標は、商標法第50条第1項の規定によって取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
乙第1号証は、被請求人のホームページの一部をプリントアウトしたものと認められるものであって、被請求人の業務に係る「美容用品研究開発/OEM事業部」に関する事項が記載されており、その概略として、「OEMでヒット商品を作ります」の見出しのもとに、「ヒアリング、マーケティングサポート、企画戦略立案、ブランドコンセプト立案、ネーミング、容器パッケージ、製造ライン、販売チャネル、拡販フォロー」の各種業務が掲載されている。そして、該ホームページの左上部には、別掲(2)に示すとおりの構成からなる商標が表示されており、中央左側の「美容用品研究開発/OEM事業部」の欄の文字の背後にも、本件商標が透けて見えるように配されている。
乙第2号証は、株式会社日本レジストリサービスが提供する「ドメイン名登録情報」と認められるものであり、「APOLLON-JAPAN.CO.JP」のドメイン名は、株式会社アポロンの所有に係るものであって、2005年7月27日に登録されたものであることが示されている。
乙第3号証は、「BINS-HostingService/<お申し込み内容のご案内>」と題する書面であり、「お客様情報」として、ご契約日・登録日として「2005年9月23日」、ご契約プランとして「プランA」、メールアカウント数として「10アカウント」、ご提供URLとして「http://www.apollon-japan.co.jp」等の情報が記載されている。
乙第4号証は、乙第1号証の「OEM事業部」に係るホームページを開設する際に作成した画像を記録したファイルと認められるものであり、当該画像が2006年10月15日に作成され、保存さていることが示されている。
乙第5号証の1は、株式会社ガモウに対する平成18年12月分の請求書の写しであり、例えば、1の欄には、平成18年12月8日の日付があり、その右欄には「スーパーソニック EX&スイートカール テスト」、「装着ボンドテスト(ケラチン)」及びその請求金額が記載されており、他の欄には、「装着ボンドテスト(人体装着)」、「装着ボンドテスト(アセトン)」等のテスト名が記載されている。
乙第5号証の2は、株式会社ガモウに対する平成19年2月分の請求書の写しであり、例えば、1の欄には、平成19年2月6日の日付があり、その右側には「スイートカール」、「ケラチン・ヒアルロン酸テスト」及びその請求金額が記載されており、他の欄には、「高分子ポリマーテスト」等のテスト名が記載されている。
乙第5号証の3は、有限会社ステップグループに対する平成18年11月分の請求書の写しであり、例えば、1の欄には、平成18年11月12日の日付があり、その右側には「human hair(リシン 2.5%)テスト」及びその請求金額が記載されており、他の欄には、「human hair(アルギニン 2.5%)テスト」、「human hair(チオ 2.5%)テスト」、「human hair(アルギニン 3%)テスト」等のテスト名が記載されている。
乙第6号証の1は、有限会社ステップグループに対する平成18年9日25日付けの「要件確認・見積 報告書」の写しであり、当該書類の右上には本件商標と同一の商標が表示されている。そして、例えば、「ご依頼主:要件定義」の欄には、「美容室使用のデジタルパーマ(加温一浴式)によるカール形成試験」の記載の下に「2 人毛(中国輸入毛)及びファイバーMIX(ハイプロン)におけるカール形成に適した一浴式パーマ剤の還元効率試験:リジン〔Lys〕、アルギニン〔Arg〕、チオ〔TGO〕」(審決注:数字2は丸文字である。)との記載、「EXAM NO.」の欄には「ABA20061011N108」との記載、「試験費用」の欄には、EXAM1?13(審決注:数字1及び13は丸文字である。)について「数量、単価、小計、小計(税込み)」の金額の記載がされている。
乙第6号証の2は、平成18年11月2日付けの「試験結果報告書」の写しであり、「EXAM NO.」の欄には「ABA20061011N108」との記載、「課題」の欄には、「2 人毛(中国輸入毛)及びファイバーMIX(ハイプロン)におけるカール形成に適した一浴式パーマ剤の還元効率試験:リジン〔Lys〕、アルギニン〔Arg〕、チオ〔TGO〕」(審決注:数字2は丸文字である。)との記載、その下に「プロセス」「結果」についての記載がされている。
乙第7号証の1は、封筒の見本であり、その表面には、赤地正方形内に「英文字及びアポロン」の文字とともにその上段に本件商標と同一の構成からなる商標が白抜きで表されている。
乙第7号証の2は、前記の封筒に係る、2005年7月7日付けの発注書の写し、及び、印刷商社ジーツンから請求人に宛てた2005年7月20日付けの納品書・請求書の写しである。
2 上記において認定した事実及び被請求人の主張を併せみれば、乙第1号証の被請求人のホームページには、プリントアウトした日付以外に、情報の更新日等の日付は認められないが、乙第2号証(株式会社日本レジストリサービスが提供する「ドメイン情報」)、乙第3号証(BINS-HostingService<お申し込み内容のご案内>)及び乙第4号証(「OEM事業部」に係るホームページの画像ファイル)によれば、2005年9月頃には、被請求人のホームページが開設され、2006年10月頃には、該ホームページ上に乙第1号証のOEM事業部のホームページ(ウェブページ)が開設され、この時点以降において、乙第1号証のホームページ(ウェブページ)は一般に閲覧できる状態にあったものと推認することができる。
そして、該ホームページには、被請求人の業務の一つである「美容用品研究開発/OEM事業部」に係る業務として「ヒアリング、マーケティングサポート、企画戦略立案、ブランドコンセプト立案、ネーミング、容器パッケージ、製造ライン、販売チャネル、拡販フォロー」の各種業務が掲載されており、また、別掲(2)に示したとおりの構成からなる商標が表示されている。しかして、本件商標は、別掲(1)に示したとおり、ややデザイン化された「Apollon」の欧文字の上部に図形を配した構成からなるのに対して、別掲(2)に示した商標は、ややデザイン化された「Apollon」の欧文字の左側に図形が配された構成からなるものであるところ、この両商標は、図形と文字の配置が異なるものの、図形の位置を変えたことにより、商標から受ける印象に格別の差異を感じさせるものとはいえないから、当該ホームぺージの左上部に表示された商標は、本件商標と社会通念上同一と認識し得る商標と認め得るものである。さらに、「美容用品研究開発/OEM事業部」と記載された欄の文字の背後には、本件商標が透けて見えるように配されている。
乙第5号証の2の取引書類(請求書)によれば、被請求人は、平成19年2月に「スイートカール/ケラチン・ヒアルロン酸テスト」(パーマ液がケラチンやヒアルロン酸によって髪にどのような影響を与えるのかを様々な条件下での試験)等を行い、平成19年3月2日付けで、顧客(株式会社ガモウ)に対して、その対価を請求していたことが認められる。
乙第5号証の3の取引書類(請求書)は、被請求人は、平成18年11月に「fiber&human hair(アルギニン 2.5%)テスト」等の試験を行い、平成18年12月1日付けで、顧客(有限会社ステップグループ)に対して、その対価を請求していたことが認められる。
乙第6号証の1及び2の取引書類(要件確認・見積 報告書、試験結果報告書)は、これらに記載された内容(送信先の名称、発行日、要件定義、試験期間、試験費用等)から、乙第5号証の3の請求書に係る取引書類であると認められるものであるから、被請求人の行った前記の試験「fiber&human hair(アルギニン 2.5%)テスト」等の試験は、「美容室使用のデジタルパーマ(加温一浴式)によるカール形成試験」(人毛及びファイバーMIXにおけるカール形成に適した一浴式パーマ剤の還元効率試験)であるといえる。さらに、この取引書類(要件確認・見積 報告書)の右上部に本件商標が表示されているものである。
乙第7号証の1の本件商標と社会通念上同一のものと認められる商標が表示された封筒は、2005年7月20日に2000枚納品されたものであるから、被請求人に係る2006年に行われた上記取引においても、当然ながら使用されたものとみて差し支えないものといえる。
ところで、近年、「形状記憶パーマ(デジタルパーマ)」と称されるパーマ技法が人気を博しており(2008年3月13日付毎日新聞東京朝刊、2006年10月11日付日本工業新聞 外多数)、その技法の一つとして、「スイートカール」と呼ばれる髪のカール施術が行われている。これは、例えば、hair salon nanoのホームページ(http://nano.oops.jp/sweetcurl.html)によれば、「アミノ酸(アルギニン)を塗布して髪の毛をパーマがかかりやすくなるようにアルカリ性に傾け、ダメージの進行を抑えるために、低中高混合型のケラチンタンパク質を塗布し、化粧品などでおなじみのヒアルロン酸を塗布し、浸透させ、髪の毛の内部にしっかり吸着させて保湿性を高め、スイートカールの薬液を塗布し、そのまま専用ロッドを巻き、低温にてロッドを加温10?15分、冷風で1?3分冷やします。シャンプー&トリートメントをして乾かして終了です。」旨記載されている。
これらの記述をも併せみれば、被請求人の行っている上記各試験(テスト)は、デジタルパーマ施術に用いられるパーマネント用液についての試験(テスト)であると認められ、これらのパーマネント用液は、「化粧品」の範疇に属する商品と認められるものである。
3 以上を総合してみれば、被請求人は、本件審判の請求の登録(平成19年11月20日)前3年以内である2006年(平成18年)10月頃に、OEM事業部のホームページ(乙第1号証)を開設し、それ以降、一般に閲覧できる状態にあったものと推認される該ホームページ上において、本件商標及び本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示して、被請求人の業務に係る「美容用品研究開発/OEM事業部」に係る情報を掲載するとともに、平成18年11月から平成19年3月頃に、顧客に対して、デジタルパーマ施術に用いられるパーマネント用液(化粧品)に関する試験を行い、各試験に対する対価を請求していたものと認められ、その際に本件商標を表示した取引書類(要件確認・見積 報告書)及び封筒を使用していたものということができる(乙第5号証の2、3及び乙第6号証の1及び2、乙第7号証の1及び2)。
4 請求人の反論について
乙第1号証のホームページには、「美容用品研究開発(OEM事業部)」とあるところ、「OEM」とは「相手先ブランドで販売される製品を製造すること」等を意味する語であり、OEM事業において行われる研究開発は、相手先ブランドで販売される美容用品の製造という目的のために、その枠内において付随的に提供されるものであって、「独立して商取引の目的たり得るべきもの」ではない、また、その「美容用品研究開発」業務の具体的内容が記載されている欄には「試験・検査又は研究」に関連する業務が全く記載されていない旨の主張について
確かに、「美容用品研究開発」の右側に記載された業務の欄には「試験・検査又は研究」に関連する業務は記載されていない。
しかしながら、被請求人が行っている業務の全てがホームページ上に記載されている訳でもなく、また、OEM事業部という名称の事業部であるからといって、必ずしも相手先ブランドで販売される製品の開発のみを行っているものともいえないから、「美容用品研究開発」業務の具体的内容に「試験・検査又は研究」について記載されていないからといって、そのことのみをもって、被請求人において、「試験・検査又は研究」に関する役務を行っていなかったとはいえない。また、前記3で述べたとおり、被請求人は、パーマ用液に関する試験を行っていたことは明らかである。
そして、OEM事業として行われる製品開発に伴う「試験・検査」は、それ自体、独立して商取引の目的たり得るべきものといえないことは請求人の主張のとおりであるといえる。しかしながら、OEM事業として行われる製品開発について、顧客に対して対価の請求をするときは、相手先ブランドのもとに開発された製品の対価の中に、試験・検査又は研究のための費用をも含めて(明細が示されるか否かは別にして)請求されるものとみるのが自然であり、乙第5号証にみられるような、個別のテスト毎に、その都度、試験(テスト)の対価の請求を行うものとは考え難いところである。
そうとすれば、被請求人は、デジタルパーマ施術に用いられるパーマネント用液等(化粧品)に関して行った試験・検査(乙第5号証の2及び3、乙第6号証の1及び2)は、それ自体、独立して商取引の目的たり得るべき役務としての「化粧品の試験・検査」を行っていたものとみるのが相当である。
してみれば、請求人のこの点に関する主張は採用できない。
5 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標あるいは本件商標と社会通念上同一と認められる商標を取消請求に係る第42類の指定役務中の「化粧品の試験・検査」について使用していたことを証明したものということができる。
したがって、本件商標の指定役務中、取消請求に係る第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」についての登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)本件商標


別掲(2)





審理終結日 2008-12-25 
結審通知日 2009-01-05 
審決日 2009-01-16 
出願番号 商願平11-36336 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z42)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井出 英一郎 
特許庁審判長 林 二郎
特許庁審判官 小畑 恵一
杉山 和江
登録日 2000-11-17 
登録番号 商標登録第4432052号(T4432052) 
商標の称呼 アポロン 
代理人 大崎 勝真 
代理人 川口 義雄 
代理人 小野 誠 
代理人 坪倉 道明 
代理人 石田 正己 
代理人 金山 賢教 
代理人 渡邉 千尋 
代理人 石田 喜樹 

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