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審決分類 審判 査定不服 商4条1項11号一般他人の登録商標 取り消して登録 Y091016
審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 取り消して登録 Y091016
管理番号 1198909 
審判番号 不服2007-18048 
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-28 
確定日 2009-06-12 
事件の表示 商願2006- 32350拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第9類、第10類及び第16類に属する願書記載の商品を指定商品として、2005年10月11日ドイツ連邦共和国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成18年4月10日に登録出願され,その後、指定商品については、当審における同19年6月28日付け手続補正書により、第9類「工業用内視鏡(医療用のものを除く。)およびこれらの部品,工業用内視鏡検査に用いる光源装置,カメラ,CCDカメラ,内視鏡検査用のCCDカメラ,顕微鏡,カメラを内視鏡に接続するためのアダプターおよびケーブル,画像再生録画装置,内視鏡検査用の画像再生録画装置,工業用内視鏡の模擬訓練用及び教育用装置,内視鏡テスター,その他の内視鏡試験装置,工業用内視鏡用貯蔵運搬容器,内視鏡検査用コンピュータ,内視鏡検査用のコンピュータプログラムを記憶させたCD-ROM・フロッピーディスクその他の記録媒体」、第10類「外科用・内科用・歯科用及び獣医科用の機器(ネットワーク接続可能な外科用・内科用・歯科用・獣医科用の機器,音声操作式の外科用・内科用・歯科用・獣医科用の機器,遠隔操作可能な外科用・内科用・歯科用・獣医科用の機器,及び外科用・内科用・歯科用・獣医科用の機器の遠隔操作・遠隔誘導装置を含む。),整形外科用機械器具,手術用縫合器具,医療用検査機械器具並びにその部品及び附属品,医療用内視鏡用貯蔵運搬容器,医療用内視鏡,医療用吸引洗浄装置,医療用超音波発生装置,超音波医療機械器具,手術用高周波発生装置」及び第16類「製本用のクロス・紙表紙・糸・ひも・バインダーなどの製本用材料」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、以下の1及び2の理由により、本願商標が商標法第4条第1項第7号及び同第11号に該当する旨認定、判断して本願を拒絶したものである。
1 本願商標は、名高い彫刻家「ミュロン」作の「円盤投げ」の彫刻と同一のものと認められるから、これと何等関係のない一出願人が商標として採択使用することは社会公共の利益を図る見地から穏当ではない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 本願商標は、登録第687391号商標及び登録第2050702号商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)と同一又は類似の商標であって、同一又は類似の商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」には、(1)商標の構成自体が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれると解されるものである。
本願商標は、別掲のとおり、右にひねった上半身を前かがみにして両ひざを曲げ、円盤を手にした右手を後ろ上方に伸ばし、左手を右ひざの外側に添え、右足の後方に左足のつま先を地面に付けた裸体の彫刻を写実的に表した図形からなるところ、該彫刻は、古代ギリシャの彫刻家「ミュロン」の代表作として知られている「円盤投げ」と認められるものである。
当審における調査によれば、該ミュロン作の彫刻「円盤投げ」(以下「本件彫刻」という。)について、以下の事実が認められる。
(1)「オックスフォード西洋美術事典」(株式会社講談社 1989年6月30日発行)に、「ミュロン MYRON(前5世紀中頃活動) アテネの彫刻家。主として青銅像をつくり、その動物像は迫真性のゆえに名高かった。《ディスコボロス(円盤投げ)》と《アテナとマルシュアス》の模刻が現存し、そのポーズは斬新な独創性を示している。」及び「ディスコボロス DISKOBOLOS 「円盤を投げる人」の意。とりわけミュロンの同主題の青銅像(前450頃)に与えられた名称で、数種の模刻が現存する(ローマ国立博物館。ミュンヘン古代美術館など)。」との記載がある。
(2)「世界大百科事典」(平凡社 1977年印刷)に、ローマ国立美術館蔵の模写とともに「ミュロン Myron ギリシャの彫刻家。生没年不詳。前500年ころ、アッティカの北西部、ボイオティアの境界に近いエレウテライに生まれた。・・・しかし彼の得意とした、激しい運動表現の傑作である《円盤を投げる男》Diskobolosの像は数個の模写が残存する(ローマのランチェロッティ宮殿、大英博物館、アテネ国立美術館、ローマ国立美術館その他)。」との記載がある。
(3)「新潮世界美術辞典」(株式会社新潮社 昭和60年2月20日発行)に、「ミュローン Myron 古代ギリシャの彫刻家。エレウテライ出身で、前460-前430年頃活躍した。・・・青銅彫刻を得意とし、たくさんの作が古代の文献にみえるが、原作は一つも残っていない。『ディスコボロス』『アテーナーとマルシュアース』の模作にみられるように、とくに刹那の動静表現にすぐれている。」及び「ディスコボロス Diskobolos 「円盤を投げる人」の意。ギリシャ彫刻の主題の一つで、クラシック期以来競技優勝者の像として繰返し作られた。代表的な例としてはミュローンの作品が挙げられる。・・・青銅製の原作は失われたが、ローマ時代の大理石模刻が幾つか残されており、そのなかでも最も原作に忠実と推定されるのは、ローマのテルメ美術館にあるランチェロッティ旧蔵の像である。別に高さ30cmの小像ながら原作の動静をよく伝えるローマ時代の青銅の模作が伝えられている(ミュンヘン、グリュプトテーク)。」との記載がある。
(4)「グランド現代百科事典」(株式会社学習研究社 1978年9月1日発行)に、ローマ国立美術館の模刻の写真とともに「ミュロン Myron 生没年不詳。前480?前450年ごろ活動したギリシアの彫刻家。・・・青銅鋳造を得意とし,運動や動作の微妙な一瞬を捉えて表現した。『ディスコボロス』(『円盤を投げる人』の意)、『アテナとマルシュアス』がその代表作。」との記載がある。
(5)長野市ウェブページに、「円盤投げ」の見出しの下、「特別記念作品(昭和53年) ミュロン/作 長野国体のモニュメントとして設置された特別作品です。この作品は、世界の美術雑誌に必ず載っている2000年程前にギリシャで作られた有名な作品のコピーです。」との記載とともに本件彫刻に係る写真が掲載されている(http://www.city.nagano.nagano.jp/pcp_portal/PortalServlet;jsessionid=274D2D37711FA9BB4B96FE92CF2A00C5?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=2933)。
(6)インターネットのウェブページに「円盤を投げる人」の見出しの下、「東京都府中市寿町2丁目」及び「ミュロン作」の各記載とともに、本件彫刻に係る写真が掲載されている(http://www.mapbinder.com/Map/Japan/Tokyo/Fuchushi/Sculpture/2-22/2-22.html)。
(7)国立競技場に設置された彫像を紹介する独立行政法人日本スポーツ振興センターのウェブページに、「千駄ヶ谷スロープ付近」の見出しの下、本件彫刻に係る写真とともに「『円盤投げ』ミロン作」との記載がある(http://www.naash.go.jp/muse/art1.html)。
以上の事実によれば、紀元前に活躍した古代ギリシャの彫刻家ミュロンの代表作として知られ、「円盤投げ」又は「円盤を投げる人」と称される本件彫刻は、紀元前に製作された原作が現存せず、その模刻がローマのランチェロッティ宮殿、大英博物館、アテネ国立美術館、ローマ国立美術館及びミュンヘン・グリュプトテークに展示されているほか、我が国においても長野市、東京都府中市及び国立競技場に展示されており、我が国はもとより各国でも知られている彫刻の一つと認められるものである。
そして、本件彫刻を製作したミュロンは、上記のとおり、紀元前に活躍した者であり、その子孫を特定することが困難であるばかりでなく、本件彫刻に係る模刻又はその文化的な価値等を管理する特定の国若しくは団体等の存在も見いだすことはできないものである。
そうすると、本願商標は、その構成態様から古代ギリシャの彫刻家ミュロンの代表作である本件彫刻を表したものとして認識されるものであり、本件彫刻が我が国はもとより各国で知られているとしても、本件彫刻の原作が現存していないこと、本件彫刻に係る模刻が多数製作されていること及び本件彫刻を管理する特定の国若しくは団体等の存在が見いだせないことを総合して判断すると、これを本願の指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということができず、特定の国若しくはその国民を侮辱し、国際信義に反するものということもできない。
また、本願商標は、その構成態様から裸体の彫刻を表したものであるとしても、上記したとおり、古代ギリシャの彫刻家ミュロンの代表作を表したものとして認識されるものであるから、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような図形からなるものではなく、これを請求人(出願人)が採択、使用しても、他の法律によりその使用が制限又は禁止若しくは本願の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くとみるべき格別の事情も認められない。
そうとすれば、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標ということができない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第11号について
本願商標は、その指定商品について前記1のとおり補正された結果、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品は、すべて削除されたと認められるところである。
したがって、本願商標と引用商標とは、商標の類否について論ずるまでもなく、指定商品において互いに抵触しないものとなったから、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定の拒絶の理由は解消した。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第7号及び同第11号に該当するとした原査定は妥当ではなく、その理由をもって本願を拒絶することはできない。
その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願商標


審決日 2009-06-01 
出願番号 商願2006-32350(T2006-32350) 
審決分類 T 1 8・ 26- WY (Y091016)
T 1 8・ 22- WY (Y091016)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西田 芳子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 田村 正明
末武 久佳
代理人 稲岡 耕作 
代理人 川崎 実夫 
代理人 松井 宏記 
代理人 竹原 懋 

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