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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 X0311 |
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管理番号 | 1195653 |
異議申立番号 | 異議2008-900331 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2008-09-08 |
確定日 | 2009-03-25 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5136460号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5136460号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5136460号商標(以下「本件商標」という。)は、「スイートアフタヌーンティーセット」の片仮名文字を標準文字で表してなり、平成19年7月17日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,つけづめ,つけまつ毛,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤」及び第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」を指定商品として、同20年6月6日に設定登録されたものである。 2 本件登録異議の申立ての理由 本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。 (1)本件商標は、片仮名文字で「スイートアフタヌーンティーセット」と一連に表示してなり、第3類及び第11類の商品を指定商品とする。 そして、本件商標全体から「スイートアフタヌーンティーセット」の称呼が生ずるほか、全体から「甘い午後の茶(紅茶)のセット」の観念が生ずる。 他方、申立人の引用する商標は、英文字で「Afternoon Tea」と横書きしてなり、「アフタヌーンティー」と称呼されて生活雑貨部門や飲食サービス部門で、我が国においては、申立人の業務を表象する周知著名な商標(以下「引用商標」という。)である。 申立人は、昭和56年9月に、家具・台所用品・日用品・文具類・菓子・紅茶・加工果実などの販売及び喫茶店営業等を行う複合型店舗の商号及びそこで取り扱う生活雑貨等の商標として「Afternoon Tea」を選択し、第1号店として渋谷パルコ店を開店した。当時、生活雑貨品の販売を、パンや菓子の販売をするティールームと複合させた独特の店舗形式を採用したことが注目を引き、新聞・雑誌等で大きく取り上げられたことで、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の知名度は、一気に上昇した。申立人の現在の概要は、甲第5号証のインターネット「ウィキペディア」の紹介記事のとおりである。 その後、生活雑貨(LIVING)を扱う「アフタヌーンティー店舗」の店舗数は、増加し続け、2008年3月末現在、札幌から沖縄まで日本全国で87店舗に至っている(甲第7号証、甲第9号証)。また、申立人は、喫茶店営業のための商標として「Afternoon Tea Tea Room」(アフタヌーンティー・ティールーム)を採用し、昭和56年から営業しているが、その数は、2008年3月末において、札幌から沖縄まで日本全国で88店舗に至っている(甲第8号証、甲第9号証)。これらの各店舗は、各地域の有名百貨店内に占めており、これら生活雑貨と飲食サービスにおける売上高は、2008年度で約306億円、2009年度3月期で約314億円にまで至っている(甲第11号証、第36期報告書のブランドポートフォリオ戦略)。 ちなみに、申立人が提起した審決取消訴訟事件、東京高裁平成9年(行ケ)153号判決(甲第3号証)では、次のように認定されている。 「上記認定の事実によれば、原告が本件審判請求をした平成7年1月時点はもちろん、被告が被請求人使用商標(B)の使用を開始した平成5年3月時点においても、原告が『アフタヌーンティー店舗』の商号として及びそこで販売される生活雑貨の商標として使用する『AFTERNOON TEA』が、その主たる顧客層である若い女性層に周知であり、請求人使用商標も、同様に、『アフタヌーンティー店舗』で販売される生活雑貨の商標として若い女性層を中心に周知であったことが認められる。」 「以上の認定事実及び説示に照らすと、被告が請求人使用商標に形態が極めて近似した被請求人使用商標(B)を若い女性向けの『シャツ、ブラウス、ワンピース、パンツ、スカート、セーター、カーディガン、マフラー、靴下』に使用すれば、被告が単に『AFTERNOON TEA』の商標を使用することによって当然生ずる出所の混同のおそれを超えて、その商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかとその出所について誤認混同させるおそれがあるものと認められる。」 また、別の東京高裁平成14年(行ケ)596号判決(甲第4号証)中にも同様な認定がなされている。即ち、「(2)以上の認定事実によれば、『Afternoon Tea/アフタヌーンティー』が、原告の経営するアフタヌーンティー店舗のいわゆるハウスマークであり、本願商標が、アフタヌーンティー店舗を示す標章として使用されていたことは、比較的若い女性の間では遅くとも本件審決時において周知であったことが明らかであると認められる。また、アフタヌーンティー店舗は、若い女性のみを対象としない全国各地の地域の情報誌でも頻繁に取り上げられており、原告によるアフタヌーンティー店舗の経営内容や販売展開の状況は、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞等の一般新聞や週刊誌で紹介され、飲食業界や流通業界の業界紙でも多数回にわたり紹介されているから、『Afternoon Tea/アフタヌーンティー』の名称が、アフタヌーンティー店舗のハウスマークであることは、若い女性に限定されず、一般の需要者・消費者にとって、上記時点においてかなりの程度で周知であったものと認められる。」 上記の2件の判決があった当時よりかなりの年数を経過している現在、その営業店舗数は、増え続け、「Afternoon Tea」「アフタヌーンティー」の商標は、衣・食・住の幅広い分野において、既に周知著名な商標として社会的に認知されている(甲第6号証、甲第10号証、甲第11号証)。 例えば、その一例として以下の新聞記事をあげることができる。 (ア)日経流通新聞MJ2006年4月22日(金)の記事「ブランド・ジャパン2006」で、イメージ別ランキングでは、「アフタヌーンティー」は、第9位にランクされている(甲第12号証)。 (イ)日経流通新聞MJ2007年4月20日(金)の記事「ブランド・ジャパン2007」で、消費者から見た分野別ランキングでは「アフタヌーンティー」は、外食部門で第10位にランクされている(甲第13号証)。 (ウ)日経流通新聞MJ2008年3月5日(水)の記事「ブランド魅力度調査」では、利用経験者に絞ったランキングで「Afternoon Tea Living」は、第18位の「東急ハンズ」に続き、第19位にランクされている(甲第14号証)。 (エ)雑誌「PRESIDENT」2008年3月17日号では、有名200社の「サービス力ランキング大公開」の記事で、カフェ部門で「アフタヌーンティー」は、「スターバックスコーヒー」に次いで第2位にランクされている(甲第15号証)。ちなみに、「スターバックスコーヒー」も申立人のグループ会社の営業である。 また、本件商標の構成は、片仮名文字で「スイートアフタヌーンティーセット」と表記され、申立人が使用する周知著名な「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の語をそっくり含んでいる。即ち、本件商標の「スイート」の語は、「甘い」等の意味合いで後続の「午後の茶(紅茶)」を観念する「アフタヌーンティー」を単に形容する弱い識別力の語であり、「セット」の語も「揃い」等の意味で識測力の弱い語であることからも、本件商標の注目を引く部分は、「アフタヌーンティー」の語にあるということができる。 また、本件商標は、全体の構成から「甘い午後の茶(紅茶)セット」の意味合いが直感され、「午後の茶(紅茶)」の観念を有する申立人が使用する「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」と極めて紛らわしい。 しかも、本件商標の指定商品は、「せっけん類、香料類、化粧品、つけづめ、つけまつ毛、歯磨き、家庭用帯電防止剤、家庭用脱脂剤」等、「電球類及び照明用器具、家庭用電熱用品類」であって、これら商品は、普段の衣食住に密接に関連する商品であって、需要者層も一致する。 このような状況の下で、申立人と何らの経済的又は組織的関連のない本件商標の出願人により、衣食住に関連の深い本件指定商品である第3類に属する「せっけん類,香料類,化粧品,つけづめ,つけまつ毛,歯磨き等」や、第11類に属する「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」に使用されると、一般の消費者・需要者は、申立人と何らかの関連がある者、即ち、申立人の関連会社、あるいは、申立人により使用を許諾された者による商品であると、その出所につき誤認混同を生ずるおそれが多大である。 (2)結び 前記したとおり、本件商標は、甲第3号証ないし甲第15号証に示す申立人が使用する周知著名な商標を全部含み、しかも、特徴的な称呼及び観念を共通とし、かつ、指定商品も申立人の使用する生活雑貨と関連しており、本件商標が使用されると商品の出所につき誤認混同のおそれが多大である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。 3 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第15号の判断時期について 商標法第4条第1項第15号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に同号に該当しないものについては、この規定は適用しない(商標法第4条第3項)。 (2)申立人が提出した証拠について 甲第1号証は、本件商標の商標公報の写しと認められ、甲第2号証は、本件商標の商標登録原簿の写しである。 また、甲第5号証ないし甲第8号証、甲第14号証及び甲第15号証は、本件商標の登録出願日以後のものである。 甲第10号証は、申立人のインターネットホームページに掲載の決算概要の写しと認められるところ、「Afternoon Tea」単独の売上高、営業利益、経常利益、純利益等が明かではない。 甲第11号証は、申立人の決算報告書(平成19年4月1日から平成20年3月31日まで)の写しと認められるところ、「Cocoonist」及び「rejiig」を除いた「Afternoon Tea」単独の売上高、営業利益、経常利益、純利益等が明かではない。また、甲第11号証は、平成19年4月1日から平成20年3月31日までの申立人の決算報告書の写しであるから、本件商標の登録出願日である平成19年7月17日以後のものが、一部含まれている。 したがって、引用商標は、甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証ないし甲第8号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第14号証及び甲第15号証によっては、直ちに著名商標ということができない。 (3)本件商標は、申立人も主張するように「甘い」を意味する「スイート」と「午後の茶(紅茶)」を意味する「アフタヌーンティー」と「一揃い」を意味する「セット」とを一連に標準文字で表してなるものであるところ、それらは、どれかが主従の関係にはなく、特に軽重の差がなく結合し、その指定商品との関係よりみて、格別の観念の生じない造語よりなるもの認められ、「スイートアフタヌーンティーセット」の称呼のみが生ずるものというを相当とする。 申立人は、その構成中の「アフタヌーンティー」の部分をとらえ、生活雑貨や飲食サービスの店舗名称として使用している引用商標と称呼を同じくし、申立人の業務を表す周知著名な商標を含むものである旨述べている。 また、過去の判決においても、引用商標は、「『アフタヌーンティー店舗』で販売される生活雑貨の商標として若い女性層を中心に周知であったことが認められる。」(東京高裁平成9年(行ケ)153号判決 甲第3号証)、「『Afternoon Tea/アフタヌーンティー』の名称が、アフタヌーンティー店舗のハウスマークであることは、若い女性に限定されず、一般の需要者・消費者にとって、上記時点においてかなりの程度で周知であったものと認められる。」(東京高裁平成14年(行ケ)596号判決 甲第4号証)と判断されていると述べ、該「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」は、申立人の周知・著名な商標の観念が生ずる旨述べるところがある。 しかしながら、他方、その後の判決においては、「ところで、『Afternoon』及び『Tea』のいずれの英単語も、我が国において親しまれたものであり、『午後』及び『茶』『紅茶』を意味することは、本願指定商品の取引者、需要者において容易に認識し得るところである。したがって、本願商標の『Afternoon Tea』の一連の文字部分から、『午後のお茶』『午後の紅茶』という英語の直訳的意味が認識できることは明らかである。また、『Afternoon Tea』の一連の英熟語から、『飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事』『午後の招待』『お茶の会』という意味も認識されるものと解される。・・・そして、本願商標からは、これらの日本語訳的意味に対応する観念がそれぞれ生じるものと認められる。」として、「しかしながら、上記の原告店舗名として『Afternoon Tea/アフタヌーンティー』の標章が一定の周知性を獲得し、それに伴い、本願商標から原告の周知なブランド名としての観念が抽出されるとしても、そのことによって、前示のような本願商標の平易な日本語訳である『午後の紅茶』に即応した観念が生じることが否定されるものではない。そもそも、原告は、本件審決が認定したとおり、本願商標から『飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事』及び『午後の茶の会』の観念が生じることは認めており、このような原告店舗のブランド名以外の観念が生じるにもかかわらず、これらと近似する『午後の紅茶』の観念が生じないと主張するのは、独自の見解であり、・・・」(東京高裁平成15年(行ケ)499号判決)と判示されているように、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の文字部分は、「午後の紅茶」「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」「午後の茶の会」の観念をも生じるものである。 してみれば、本件商標の構成中の「アフタヌーンティー」の文字部分は、申立人の周知な商標というよりは、「午後の紅茶」「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」「午後の茶の会」の観念を生じ、一般的に使用される語と認められることから、申立人の業務のみを表す文字部分ということができないものである。 なお、申立人は、平成20年9月19日付けで提出された商標登録異議申立理由補充書において、本件商標全体から、「甘い午後の茶(紅茶)のセット」の観念が生ずることを認めている。 そうとすれば、本件商標をその指定商品について使用しても、申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく、取引者、需要者にその出所について混同を生ずるおそれがあるものということはできないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2009-03-05 |
出願番号 | 商願2007-84355(T2007-84355) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(X0311)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鈴木 斎、石戸 円、箕輪 秀人 |
特許庁審判長 |
渡邉 健司 |
特許庁審判官 |
鈴木 修 井出 英一郎 |
登録日 | 2008-06-06 |
登録番号 | 商標登録第5136460号(T5136460) |
権利者 | アース製薬株式会社 |
商標の称呼 | スイートアフタヌーンティーセット、スイートアフタヌーンティー、スイートアフタヌーン |
代理人 | 染谷 伸一 |