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審決分類 |
審判 査定不服 商品(役務)の混同 登録しない Y293031323343 |
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管理番号 | 1190958 |
審判番号 | 不服2004-16373 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-08-05 |
確定日 | 2008-11-27 |
事件の表示 | 商願2003- 72468拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 本願標章 本願標章は、別掲(1)のとおり、「超熟」の文字と「ちょうじゅく」の文字を二段に書してなり、登録第4372694号商標(以下「原登録商標」という。)に係る防護標章登録出願として、第29類、第30類、第31類、第32類、第33類及び第43類に属する願書記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成15年8月25日に登録出願され、指定商品及び指定役務については、平成20年9月4日付け手続補正書により、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく,野菜を主原料とする錠剤又は液状の加工食品」,第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物を主原料とするブロック状又は粉末状の加工食品」,第31類「ホップ,食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,野菜,糖料作物,果実,コプラ,麦芽,あわ,きび,ごま,そば,とうもろこし,ひえ,麦,籾米,もろこし,飼料用たんぱく,飼料,種子類」,第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」,第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」及び第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,保育所における乳幼児の保育」に補正されたものである。 そして、原登録商標は、別掲(1)のとおり、「超熟」の文字と「ちょうじゅく」の文字を二段に書してなり、第30類「サンドイッチ,菓子及びパン」を指定商品として、平成12年3月31日に設定登録され、現に有効に存続するものである。 第2 原査定における拒絶の理由 原査定は、「本願標章は、『超熟』の文字と『ちょうじゅく』の文字とを二段に横書きしてなるものであるが、これは『程度をこえて熟していること』『ぬきんでて熟していること』程度の意味を想起させるものであり、食品の分野では、その熟成度が問題となるものや、熟成過程を経て製造されるものが多くある関係上、商品の品質についての暗示的な標章というべきものであって、自他商品の識別力がないとはいえないにしても、著しく識別力が弱いといわなければならないことを考慮すると、出願人が使用する『パン』の分野を超えて、他の食品の分野、さらには、食品以外の商品又は役務の分野に至るまで、出願人の業務に係る商品であることを示すための識別標識として、その取引者、需要者に広く認識されているということはできない。そして、出願人以外の者が、『パン』以外の分野において、この標章を使用しても、出所の混同を生ずるおそれがあるとも認めることはできない。したがって、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しない。」と認定、判断して本願を拒絶したものである。 第3 当審の判断 1 本願標章と原登録商標との一致性 本願標章は、その構成において原登録商標と同一のものと認められる。そして、原登録商標が請求人の所有に係るものであり、かつ、該商標権が、現に有効に存続していることは、商標登録原簿の記載により認めることができる。 2 出所の混同のおそれについて 他人が原登録商標を本願指定商品及び指定役務について使用した場合、需要者が、その商品及び役務と原登録商標の商標権者の業務に係る指定商品及び指定役務とが混同を生ずるおそれがあるか否かについて判断するに、商標法第64条第1項においていう出所の混同のおそれを判断するにあたっては、原登録商標自体と、その商標の著名の程度、防護標章登録出願に係る指定商品及び指定役務と使用商標に係る商品及び役務との関連の程度、その他の取引の実情に照らし、当該商品分野における取引者・需要者一般の注意力を基準として、総合的に判断すべきものと解される。 3 これを本件について見ると、以下のとおりである。 (1) 原登録商標の著名性の程度 請求人提出の証拠によれば、請求人は、大正9年(1920年)の創業以来、パンを中心とする食品メーカーであり、現在では、日本第2位の製パンメーカーである。 請求人は、もっちり感のある食パンを開発し、該タイプの食パンに、右側に「超熟」の文字を筆書き風で配し、「超」の文字の左側に「ち」「ょ」「う」の文字を、「熟」の文字の左側に「じ」「ゅ」「く」の文字をそれぞれ円図形内に配してなる別掲(2)に掲げる標章(以下「使用商標」という。)を付して、平成10(1998)年10月より、関西地方で発売を開始し、平成11年から販売地域を日本全国で発売、その後、ロールパンやスティック状のパンにも使用商標を使用し、現在に至るまでの間、継続使用していることが認められる。そして、使用商標に係る商品については、年間売上高は、発売以来急速に拡大し、平成13年度には400億円を超えていること、食パンにおけるシェアも第1位を記録していること、テレビコマーシャルの放映、新聞や雑誌で取り上げられていること等を併せ考慮すれば、使用商標は、請求人が食パン及びロールパンに使用する商標として需要者の間に広く認識されているものと認められる。 しかしながら、使用商標は、上記のとおり、「超熟」の文字を筆書き風のやや特徴ある書体で表し、「超」及び「熟」の文字の左側に「ち」「ょ」「う」の文字及び「じ」「ゅ」「く」の文字をそれぞれ円図形内に配してなるのに対し、原登録商標は、特別のデザイン化がなされた態様とはいえないものであり、かつ、「超熟」の語自体、後述するように、本願指定商品に係る分野において、「ぬきんでた熟成」「ぬきんでて熟している」程の意味合いを暗示させ、使用される場合もある語であること、さらに、請求人は、「pasco」「パスコ」を代表的出所標識(いわゆるハウスマーク)として使用し、使用商標は、請求人の取り扱う食パンやロールパンのうちの一種類に使用する個別商品毎の商標であって、請求人の業務全般を表彰する標章である等の事情は存しないから、原登録商標の著名性は、使用商品とのつながりが深く、一定の限界があるといえる。 (2) 本願標章について 本願標章は、一般的な書体で表されているものあって、その態様(外観)からは、特段の印象を与えるものではない。 そして、本願標章は、上記のとおりの構成よりなるところ、下段の「ちょうじゅく」の文字は、上段の「超熟」の文字の読みを記載したものと認められる。そこで「超熟」の文字についてみるに、該語は、特定の成語として国語辞書等に記載されているものではないが、構成する「超」の文字は、「程度を越えること」「ぬきんでること」等の意味のほか、「俗に、その語の内容をはるかにこえていること。『-忙しい』『-愉快』」の意味をもって、他の語と結合して用いられる漢字であり、「熟」の文字は、「うれること」等を意味する漢字である(以上、「広辞苑」参照。)。そうすると、「超熟」の文字は、本来的に「ぬきんでて熟している」程の意味合いが想起されやすいものといえる。 また、本願指定役務及び指定商品中、特に食品に関するものについては、その製造過程において熟成(十分に熟してできあがること(広辞苑))が必要なものがあり、その熟成の度合いにによって、商品の品質が左右されるものが多数あるところ、その期間、方法等により「熟成の程度がぬきんでている」「ぬきんでた熟成」であることを誇張して「超熟成」と称することも普通に行われている。そして、「超熟」の語についても「超熟成」(ぬきんでた熟成)の意味合いをもって、略語的に使用されることも少なくない。 「超熟」の語が「ぬきんでた熟成」「ぬきんでて熟している」ほどの意味合いで使用されていることは、以下の事実からも窺えるところである。 ア 「超熟」の語が「ぬきんでた熟成」ほどの意味合いで使用されている事実 (ア) ナチュラルチーズ専門店 オーダーチーズ・ドットコムのチェダーチーズのウェブページ(http://www.order-cheese.com/order/3367.html)に「驚きの超熟チーズ! チェダーチーズ 5年熟成」の記載がある。同じくミモレットのウェブページ(http://www.order-cheese.com/order/g3320.html)に「アルコールのお供に最強!『ミモレット 22ヶ月熟成』!この超熟チーズ、ぜひ『焼酎+ミモレット』でどうぞ!」の記載がある。 (イ) 「Sunday Recipe's Slections」と題するウェブページ(http://www.ivys.info/select/001.html)のチーズケーキの説明に「チーズ専門店が超熟パルミジャーノで作りあげた奇跡のチーズケーキ」の記載がある。 (ウ) 全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」のマザー牧場のウェブサイト(http://www.47club.jp/webshop/shopinfo/ctc/+/shc/14M-000003?cid=14a)に「超熟ボンレスハム」の商品紹介がある。 (エ) 楽天市場の「越前そばの里」のウェブページ(http://item.rakuten.co.jp/sobanosato/sato-011/)に「自家製・超熟 鯖のへしこ」「福井名産『超熟へしこ』」の記載がある。 (オ) 楽天市場の鶴橋おやじキムチ研究会の「白菜キムチ」のウェブサイト(http://www.rakuten.co.jp/rabbit/283438/1858462/)に「【冷蔵限定】鶴キム研の90日間“壷漬け”超熟・白菜キムチ300g(株漬け・袋入り)」の商品紹介がある。 (カ)「手打ちうどん むぎなわ」のウェブサイト(http://www.muginawa.jp/SHOP/set001.html)にカレーうどん用のカレーの説明に「カレーは3時間煮続けた『超』熟、中辛。」の記載がある。 (キ) 2004年10月8日付けの日経流通新聞MJに「万田酵素??発売6年たっても人気(うちの看板商品)」の見出しの下に、「・・・アケビ、黒ゴマ、昆布など五十種類以上の食材を低温発酵・熟成。食事で取るのが大変な三十品目を手軽にカバーできる。プルーンに似た風味で食べやすい。通常は三年三カ月の熟成期間を四年に延長した『超熟』も開発。より味がまろやかになった。」の記載がある。 (ク) 楽天市場の「BH倶楽部」のウェブページ(http://www.rakuten.co.jp/bhkurabu/373183/1951386/)に「超熟発酵【黒ニンニク】 極黒仕込み『黒にんにく香醋』」の記載がある。 (ケ) 「おいしい食配 conna×anna」のウェブページ(http://www.conna-anna.com/contents/organic/A-P11-0001.html)に、「超熟 オーガニック味噌」の各記載がある。 (コ) 「アリメンタリ・マッシモ」のウェブページ(http://massimo.sakura.ne.jp/pagebalsa.htm)に、「超熟のバルサミコの醍醐味。」との記載がある。 (サ) 1992年5月12日付けの日本食糧新聞には、「乾麺特集=中部乾麺業界が変わった、利益商材好循環へ、品質向上で流通界も評価」の見出しの下に、「・・・同社の製品特徴は、古来、美濃に伝わるしまだ式製麺法にあり、麺の腰が強く、歯ごたえが抜群。メーンは超熟麺シリーズ(うどん、きしめん、そば、ひやむぎ、そうめん)、・・・」との記載がある。 (シ) 1994年4月26日付けの日本食糧新聞には、「乾麺特集・中部地区 岐穀商事『道三めん』軸にフルラインを誇る」の見出しの下に、「・・・乾麺は同社が早くから力を入れている分野で、超熟そうめん、同ひやむぎ、同そば、同きしめん、同うどん、茶そば、うどん、奥飛騨そうめん、同ひやむぎ、同そば、高山そばなどフルラインを誇る。・・・」との記載がある。 (ス) 2004年8月30日付けの日本食糧新聞には、「生麺・冷凍麺特集:生麺・冷凍麺主要各社の動向=シマダヤ」の見出しの下に、「・・・独自の“本捏ね超熟製法”によって最適な捏(こ)ね・寝かせ・ゆで・冷却条件を追求し、麺の品質を飛躍的に向上させた。・・・」との記載がある。 (セ) 朝日商事株式会社の取扱商品を紹介するウェブページ(http://www.rising-asahi.jp/item/item_c.html)に「超熟仕込み釜揚げうどん」の記載がある。 (ソ) 楽天市場の「四季の定期便」と題するウェブサイト(http://www.rakuten.co.jp/fourseasons/548785/)に「超熟歯ごたえ もちもち生パスタ5食セット」の記載がある。 (タ) 楽天市場のあいかん本舗のウェブページ(http://item.rakuten.co.jp/aikanhonpo/noni_juku01/)に「超熟ノニ・発酵タイプ」(ノニ果汁飲料水)の商品紹介があり、その説明に「2ヶ月以上熟成させたノニ原液がまるごと100%」の記載がある。 (チ) 1995年2月26日付けの毎日新聞(東京朝刊)には、「[雑記帳]“超音波酒”の仕込みに入る--新潟県佐渡郡の北雪酒造」の見出しの下に、「・・・このほど、“超音波酒”の『北雪・超熟酒』の仕込みに入った=写真。・・・昨年出版した『うまい酒は、なぜうまい』(光文社刊)で紹介した熟成技術を実用化。特殊ガラスを張った木枠(縦四十五センチ、横三十五センチ)の上に清酒を載せ、振動子で四〇キロヘルツの超音波を発生させ、一週間程度寝かせると『香りが出て、味もまろやかになる』とか。・・・」との記載がある。 (ツ) gooショッピングの「察度王 43°ゴールド 720ml 」の紹介ページ(http://shope.goo.ne.jp/se/goods_detail/03281/61000031_91302841.html)に「超熟泡盛その名は『察度王』」の記載がある。 (テ) 2007年5月7日付けの日本食糧新聞には、「サントリー、100万円の『響35年』が5日で完売」の見出しの下に、「サントリー(株)が4月20日に限定150本で受注を開始した100万円の国産ウィスキー・・・中身は1960年?71年に山崎蒸留所で製造した原酒を厳選し、35年超の超熟グレーン原酒をブレンドしたもの」との記載がある。 (ト) 株式会社アダツアーズジャパンのウェブページ(http://www.adda-tours.co.jp/wine/redwine.htm)には、「北イタリアを代表する『王のワイン』 醸造者のジュゼッペリナルディのバローロは超熟で繊細な味が特徴です。」との記載がある。 (ナ) 楽天市場のドッキリWINE市場のウェブサイトのワイン「ドメーヌ・ルネ・レクレール『ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ・ラ・コンブ・オーモワンヌ』(赤)」の紹介ページ(http://www.rakuten.co.jp/dwi/441256/441457/521396/ )「 驚くほど超熟!素晴らしいジュヴレ・シャンベルタン」の記載がある。 (ニ) 楽天市場の株式会社中島屋酒店ワイン紹介ページ(http://www.rakuten.co.jp/nakashimaya/479115/497992/)にワイン「モンテローリー サラマルターノ[1995]750ml」の商品紹介があり、その説明に「超熟タイプ 」の記載がある。 (ヌ) 常陸屋酒店のウェブサイトのワイン紹介ページ(「http://www.hitatiya.com/main/france/bourgogne/cote.de.beaune/albert.grivault.html)の「アルベール・グリヴォー」の説明として、「真の超熟タイプです。」の記載がある。 (ネ) 「G-Call」の横浜君嶋屋のワイン「コルナス・ルネッサンス」の商品紹介ページ(http://www.g-call.com/shopping/goods/detail.php?gdp_no=3356)に「超熟タイプのワイン」の記載がある。 イ 「超熟」の語が「ぬきんでて熟している」ほどの意味合いで使用されている事実 (ア) 楽天市場のかめあし商店のウェブページ( http://item.rakuten.co.jp/cameashi/10000920/)にりんごの商品紹介があり、「超熟りんご サンふじ」「超熟特撰」の記載がある。 (イ) 楽天市場のSunnyMartのウェブページ( http://www.rakuten.co.jp/sunnyco/638664/638665/893090/)にみかんの商品紹介があり、「超熟」「愛媛県産超熟みかん」の記載がある。 (ウ) リップルネットのウェブページ( http://www.satukiripple.com/G07AC46S00062/Room0001.htm)にマンゴーの商品紹介があり、「[超熟]濃厚マンゴー」の記載がある。 ウ そうとすると、「超熟」の語は、上記のようにチーズ、ハム、魚の加工品(漬物)、キムチ、カレー、みそ、バルサミコ酢、うどん、パスタ、果汁、清酒、焼酎、ワイン、洋酒など、熟成させることにより、その商品の品質を向上させるような商品や、果実などのようにより成熟させることにより品質が向上するような商品に、確立した意味合いを有する成語とまではいえないとしても、これらの商品との関係においては、上記のように「ぬきんでた熟成」「ぬきんでて熟している」ほどの意味合いをもって使用されているものであり、需要者又は取引者が、上記意味合いを理解、認識する場合も決して少なくないものといえ、独創性が高いものとはいえない。 (3) 使用商標に係る商品「パン」と本願の指定商品及び指定役務との関係について 請求人は、「補正後の指定商品は、請求人及び関連会社・子会社の商品と同様にスーパーマーケットや百貨店、コンビニエンスストアー等で販売されている。需要者も出願人の商品の需要者・購買者も流通過程も同一である。」と主張している。 確かに、スーパーマーケット、百貨店、コンビニエンスストアー等においては、食品についても幅広く取扱われ、その需要者は、一般消費者といえる。しかしながら、それらの店舗で販売される食品といっても、生鮮食料品や料理の材料に用いられる加工食品、菓子、飲料、酒類、調味料等があり、これらの商品は用途が異なるものであり、同一店舗で取り扱われるとしても販売コーナーも明らかに区別されている実情がある。また、それら商品の原材料も野菜、穀物、肉、魚類等多岐にわたり、加工方法も商品によって異なるところも多く、生産者も食品全般について取り扱うというより、原材料や加工方法等を共通にするなど関連の深い商品を中心に取り扱うことが多いといえるから、その商品によっては、生産者及び流通経路においても同一とはいえないというのが実情というべきである。 そして、請求人の原登録商標は、個別商品商標として食パンを含むパンについてのみ使用されているであって、上記実情よりすると、食パン等のパンと本願指定商品の食品とは、用途、原材料、生産者、流通経路において、販売場所(コーナー)は同一とはいえない。 また、本願補正後の指定商品中、「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。)」は、食品に添加して用いられるものであり、「糖料作物,飼料用たんぱく,飼料」「ビール製造用ホップエキス」等は、食材若しくは食材の原材料となる食品ではないから、これらの商品と、使用商標に係る商品パンの関連性はそれほど高いものとはいえない。 さらに、本願の指定役務である宿泊施設の提供、保育所における乳幼児の保育は、使用商標に係る商品パンとは、需要者が共通にすることがあり、また、当該役務の提供にあたり、飲食物が提供されることがあるとしても、用途が明らかに異なり、役務の提供場所と商品の販売場所も一致するものではない。 (4)以上によれば、請求人は日本第2位の製パンメーカーであり、使用商標は、請求人が食パン等のパンに使用し、需要者の間に広く知られているといえるものの、その商標としての性格は、請求人の取り扱う各種商品群の一つに使用する個別商品商標として知られているものであり、近時、経営の多角化が行われる傾向にあるとしても、本願の指定商品や指定分野において、多角経営により、種々の食品を幅広く取り扱うことが一般的とまではいえないし、請求人も子会社、関連会社を有している旨主張しているものの、その取り扱いに係る商品は、パン、菓子及び調理品を主に取り扱っていることは認められるものの、食材等を含めて食品全般を取り扱っているものではなく、また、それら関連会社が、自己の業務に係る商品及び役務を取り扱うにあたって同一の商標を使用するなどして、同一の企業グループであると需要者に認識されていると認められる証拠もない。 そして、本願の指定商品及び指定役務は、食品に関係するものであるとしても、使用商標に係る商品パンとは、用途、生産者、流通経路、販売場所において必ずしも同一とはいえないところであり、「超熟」「ちょうじゅく」の文字は、本願の指定商品中の特に熟成させることが商品の品質に関わる商品分野において、「ぬきんでた熟成」「ぬきんでて熟している」ほどの意味合いを想起させるものであるばかりでなく、実際に使用されているところであり、かつ、使用商標は、筆書き風の書体よりなるところ、原登録商標(本願標章)は、特段の特徴のない明朝体で表されているものである。さらに、本願の指定役務である「宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育」は、商品パンとは、需要者が共通にすることがあり、また、当該役務の提供にあたり、飲食物が提供されることがあるとしても、用途が明らかに異なり、役務の提供場所と商品の販売場所も一致するものではない。 以上を総合勘案すると、他人が原登録商標を本願の指定商品及び指定役務に使用しても、該商品及び役務が請求人の取り扱いに係る商品及び役務であるかのごとくその出所について混同を生ずるおそれがあるということはできないものと判断するのが相当である。 4 原告は、防護標章制度の趣旨は、広義の出所混同を防止するための制度であり、標章の識別力とは直接に関係するものではない」(平成18年9月11日付け意見書)旨主張している。 しかしながら、当該標章を構成する文字等が、何らかの意味合いを有する場合に、その意味合いと当該防護標章登録出願の指定商品又は指定役務との関係から、需要者がその意味合いを強く認識するような場合には、出所の混同を生ずるおそれは減ぜられる場合もあるから、当該標章と指定する商品又は役務との関連についても当然に考慮する必要があるというべきである。 なお、原告は、平成7年(行ケ)第88号(東京高裁 平成8年1月30日判決言渡し。いわゆる「SCOTCH」事件)判決が出所の混同を生ずるおそれがあるか否かについて、「(標章「SCOTCH」が)それ自体特異な態様ないし創造的な構成によるものではなく、いわゆる造語によるものではないということによって、特に左右されるものではないというべきである」と判示したことを引用して主張しているが、該判決は、出所の混同を生じるおそれがあるとした結論を左右されるものではないとしたのであって、当該標章の態様や造語であるか否か等について何ら考慮すべき必要がないことを判示するものではないと解すべきである。 5 結論 したがって、本願標章が商標法第64条に規定する要件を具備しないものとして本願を拒絶した原査定は妥当なものであって、取り消すべき限りではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 (1)本願標章(原登録商標) ![]() (2)使用商標 ![]() |
審理終結日 | 2008-09-19 |
結審通知日 | 2008-09-24 |
審決日 | 2008-10-15 |
出願番号 | 商願2003-72468(T2003-72468) |
審決分類 |
T
1
8・
82-
Z
(Y293031323343)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 林 栄二 |
特許庁審判長 |
鈴木 修 |
特許庁審判官 |
内山 進 杉本 克治 |
商標の称呼 | チョウジュク、チョージュク |
代理人 | 岡田 英彦 |
代理人 | 福田 鉄男 |
代理人 | 犬飼 達彦 |