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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消2008301502 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 009
管理番号 1190895 
審判番号 取消2007-301211 
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-09-21 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4100010号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4100010号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4100010号商標(以下「本件商標」という。)は、平成8年6月21日に登録出願、「CEE」の欧文字と「シーイーイー」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、第9類「理化学機械器具,測定機械器具」を指定商品として、同10年1月9日に設定登録、その後、同20年1月15日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品「理化学機械器具,測定機械器具」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)本件商標を使用していることについて
本件商標は、欧文字「CEE」及びカタカナ文字「シーイーイー」を上下二段に書してなるものであるのに対して、被請求人が使用していると主張する商標(以下「使用商標」という。)は、欧文字「Cee」であり(乙第1号証ないし乙第3号証)、本件商標を構成するカタカナ文字「シーイーイー」を欠いている。被請求人は、本件商標と使用商標とは、「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」と主張するが、使用商標からは、「シー」又は「セー」の称呼も生じ得るので、称呼が同一とは認められない。したがって、本件商標と使用商標とは、社会通念上同一と認められない。
(イ)本件商標を審判請求に係る指定商品に使用していることについて
被請求人は、本件商標をその指定商品中「測定機械器具」に使用している旨主張し、その証拠として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。
しかしながら、乙第1号証ないし乙第3号証によっては、本件商標が「測定機械器具」に使用されていることは、証明されない。被請求人が、本件商標を使用している旨を主張している商品は、「スピンコーター」である(乙第1号証及び乙第3号証)。「スピンコーター」とは、「シリコンウェハー及びガラスなどの基盤上にフォトレジストを効率よく、均一に回転塗布することを目的とした装置」をいう(甲第2号証)。この説明は、乙第1号証中の「LCD用コーティング剤の成膜」、「・回転域:0-6000rpm」、「・加速度:0-30000rpm/sec(基板無し)」及び「・加速度:0-23,000rpm/sec(8インチウエハ設置時)」の記載、並びに、乙第3号証中の「薬液塗布方法」の記載とも整合する。したがって、「スピンコーター」は、第7類「塗装機械器具」の範ちゅうに属する商品であり、決して第9類「測定機械器具」の範ちゅうに属する商品でないことは、明らかであるから、被請求人が提出した証拠によっては、本件商標が「測定機械器具」に使用されていることは証明されない。なお、被請求人は本件商標を「理化学機械器具」に使用していることを主張・立証していない。したがって、被請求人は、本件商標を「理化学機械器具」に使用していないことを自認している。
(ウ)まとめ
以上述べたとおり、被請求人の提出した書類によっては、本件商標が、その指定商品「理化学機械器具,測定機械器具」について、使用されていることは、証明されていない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め答弁及び弁駁に対する答弁をし、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第16号証を提出した。
(1)答弁
(ア)通常使用権者による本件商標の使用について
被請求人は、日星産業株式会社(以下「日星産業」という。)に対し、通常使用権を許諾し、通常使用権者「日星産業」により、遅くとも2003年11月頃より現在も商品「測定機械器具」(商品名「Cee」)に本件商標を商品正面左下及び背面右に「Cee」と表示して使用している(乙第1号証ないし乙第3号証)。本件商標を使用した商品は、米国ブリューワーサイエンス社より通常使用権者「日星産業」が輸入販売しており、各取引相手には乙第1号証の商品説明のパンフレットを配布している。また、平成18年及び同19年の取引書類により、取消審判請求日前3年以内に製品が市場に流通していたこと明白である。その事実は、乙第4号証ないし乙第7号証により証明する。
(イ)登録商標と使用商標の同一性について
本件商標の構成は「CEE\シーイーイー」の二段構成であり、その現実の使用態様は「Cee」である。これは、商標法第50条の「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」であるので、当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標である。
(ウ)以上のとおり、取消審判請求日である平成19年(2007年)9月21日前3年以内に、指定商品「測定機械器具」に通常使用権者である「日星産業」により、「社会通念上同一と認められる商標」として、本件商標が使用されており、商標法第50条第1項不使用取消審判の要件を満たさないことは明白である。
(2)弁駁に対する答弁
被請求人は、本件商標を本件審判請求の予告登録前3年以内に、請求に係る商品に使用したことを立証する証拠を、先に提出した乙各号証に追加して提出し、さらに以下のとおり答弁する。
(ア)本件商標の使用について
請求人は、本件商標は「CEE」の欧文字と「シーイーイー」の二段書きよりなるのに対し、使用商標は、「Cee」であり、「シーイーイー」の文字を欠いているから、社会通念上同一の商標の使用ではない、と主張している。
しかしながら、上記のような二段書きからなる商標の場合、特許庁の「審判便覧53-01(登録商標の不使用による取消審判)」によれば、「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段、及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用は、社会通念上同一の商標の使用と認められる」としている。
【例】「太陽」と「SUN」の二段書き商標の場合、「太陽」又は「SUN」の一方の使用は、登録商標と社会通念上、同一の商標と認められる。
また、これまでの判決、審決例でも、例えば、欧文字(または漢字)とその読みを表す片仮名文字とを二段書きしてなる登録商標の場合、その一方の使用は社会通念上同一の商標の使用とされた例が多数存在する(乙第8号証ないし乙第13号証)。
以上のように、特許庁の審判便覧及び上記判決、審決例にしたがえば、本件商標「CEE\シーイーイー」に対して、使用商標は「Cee」であるところ、下段の片仮名文字「シーイーイー」は、上段の「CEE」の最も自然な読み(表音)であるといえるから、これを省略したとしても、また、「CEE」を「Cee」と小文字に変更表記したとしても、「シーイーイー」の称呼を同一にすることに変わりなく、また、観念として新たなものを追加するわけでもない。
よって、使用商標は、登録商標と社会通念上同一の商標の使用というべきである。
なお、請求人は、使用商標(Cee)から「シー」又は「セー」の称呼も生じるので、称呼が同一とは認められない、と主張する。
しかしながら、そのような称呼は不自然であるばかりでなく、一般的にそのように称呼される成語を直ちに想起し得ないからその主張は当たらない。
したがって、本件使用商標は、登録商標と社会通念上同一の商標の使用とみても何ら差し支えないものである。
(イ)本件商標の使用商品
被請求人は、本件商標を要証期間内に「測定機械器具」に使用しているとして、乙第1号証ないし乙第3号証を提出したところ、請求人は、「乙各号証によっては測定機械器具に使用されていることは証明されない。被請求人が使用している旨主張している商品は『スピンコーター』であり、該商品は、第7類『塗装機械器具』に属する商品である。」と述べ、証拠として甲第2号証を提出している。
そこで、被請求人が本件商標を使用している商品は、請求人が主張するような第7類の「塗装機械器具」ではないこと、及び使用商品は、「理化学機械器具」中の「実験用機械器具」又は「測定機械器具」中、とりわけ「材料試験機」の範祷に属する商品であることを、次のとおり主張、立証する。
(a) 卓上で使用できる小型商品であること
乙第1号証に示したとおり、使用商品の装置外形は、61cm×33cm×33cmと記載されているとおり、非常に小型の商品でポータブルなものであるから、特定の商品を塗布・塗装して製品化することを目的とする塗布・塗装機械というよりも、塗布状態を試験するための機械とみるのがむしろ自然である。
なお、請求人のいう「塗装機械器具」については、これに相当する機械(装置)のカタログ、写真を提出する(乙第14号証)。
このウエハー用レジスト塗布装置は、上記写真のとおり、通常、工場などに設置される大型の機器であり、本件使用商品とは、その大きさ、目的、使用方法等を異にするものであることは明らかである。
(b)「製造機」ではないこと
乙第3号証「電子材料」誌2003年12月号広告において、使用商品について、「コンパクトでありながら製造機に迫る性能」と記載されていることからもわかるように、製造機(例えば、商品を塗布・塗装して製品化する機械)そのものでないことは明白である。
すなわち、本機は、実製造に用いられるのではなく、「フォトレジスト、カラーフィルタ、ポリイミド、LDC用コーティング剤」等の薬液を塗布することにより、「フォトレジスト、カラーフイルタ、ポリイミド、LDC用コーティング剤」等自体の性能を試験するのに用いられる「理化学機械器具」中の「実験用機械器具」又は「測定機械器具」中のいわゆる「材料試験機」に属する商品といえるものである。
(c)薬液塗布方法等について
請求人は、弁駁書において、「スピンコーター」とは「シリコンウエハー及びガラスなどの基盤上にフオレストレジストを効率よく、均一に塗布することを目的とした装置」をいい、この説明は、乙第1号証中の「LDCコーティング剤の成膜」及び乙第3号証中の「薬液塗布方法」との記載とも整合する、と主張する。
しかしながら、乙第3号証中の「薬液塗布方法」の記載は、試験研究に用いるサンプルを試作する一手段であり、「薬液塗布方法も各種対応」と記載され、また、「処理プロセスにあわせてカスタマイズ」との記載があるように、該装置は、加工、製造などを目的とした機械器具を集めた第7類「塗装機械器具」の範疇に属する商品ではなく、第9類「理化学機械器具」中の「実験用機械器具」又は「測定機械器具」中、「材料試験機」の範疇に属する商品である。
(d)乙第4号証(納品書等)の記載について
被請求人の通常使用権者である日星産業は、要証期間内の2005年1月12 日に富士写真フィルム株式会社(以下「富士フィルム社」という。)から「Brewer Science Cee装置システム」の見積もり依頼を受け、同年1月17 日付けで富士フィルム社宛に見積書を提出した。
その後、2005年4月1日付けで富士フィルム社から日星産業宛の「買掛金確認書」が送付され、さらに、同年4月4日に日星産業から富士フィルム社宛に代金の「請求書」が送付されている(乙第4号証)。
上記請求書の品名欄には、「ブリューワーサイエンスCee製品」、出荷先「富士写真フィルム株式会社資材部」、数量・単位「1式」の各記載がなされており、また、富士フィルム社の「受領書」によれば、2005年(平成17年)3月24日に製品が納品されたことが認められる。
そして、2005年4月25 日に富士フィルム社から日星産業宛に支払いがなされたことが「支払通知書」によって立証できるものである(乙第4号証)。
これらの一連の手続は、被請求人の提出した乙第4号証により明白であるところ、特に富士フィルム社の発注部署、納品部署と認められる部門欄には、「半導研D」の記載があり、これが、「半導体研究」を担当する部署であることは容易に推察されるところである。
なお、上記部署が半導体の研究・開発を担当する部署であることを立証するため、担当者の名刺のコピーを提出する(乙第15号証)。該名刺から半導体材料を研究している部署であることが立証されるものである。
なお、乙第4号証に示された納品書等には「塗布機」と記載されている。確かに塗布する機械ではあるが、前述のとおり、薬液塗布の性能等の実験、研究・開発を行うことを目的として納品された、いわゆる実験用、試験用を目的とする商品であり、請求人が主張するような第7類に属する「塗装機械器具」に属する商品では決してあり得ないものである。
さらに、通常使用権者である日星産業のホームページのコピーを提出する(乙第16号証)。同社の取扱商品が掲載されている同ホームページの中央部分に、「研究設備・機器・オフィスファシリティー」の項目があり、「研究用機器」として、「ブリューワーサイエンス社Cee各種機器」が明示されている。
これは、乙第4号証に示された商品と同一のものであり、このことからも、本件商標の使用に係る商品は、請求人の主張する第7類の「塗装機械器具」ではなく、「研究用の機器」であることは明らかである。
(e)以上のとおり、上記(a)ないし(d)を総合勘案すれば、被請求人の使用に係る商品は、請求人が主張するような第7類の「塗装機械器具」ではなく、「理化学機械器具」中の「実験用機械器具」か、又は「測定機械器具」中の「材料試験機」に属する商品というべきである。
なお、被請求人は、上記のとおり、「実験用機械器具」又は「材料試験機」であると確信するものであるが、万が一、「塗装機械器具」に該当する商品であると認定されたとしても、そのことから、直ちに「実験用機械器具」又は「材料試験機」でないとの結論に当然導かれるものではない。
なぜなら、ある商品が指定商品の何れに属するかの認定、判断は難しい場合があり、二つの商品に属するという二面性を有することもあり得るのであるから、Aという商品に属すると認められる場合であっても、そのことからBに属しないとの結論に当然導かれるとは限らない、とするのがこれまでの判決例の示すところだからである(平成12年(行ケ)第447号参照)。
(ウ)むすび
以上述べたとおり、被請求人は、わが国において、要証期間内に本件商標の指定商品中、「理化学機械器具」に属する「実験用機械器具」又は、「測定機械器具」に属する「材料試験機」について、本件商標と社会通念上同一の商標を付して販売(譲渡)していたことは明らかであるから、本件商標の登録は商標法第50条第1項により、取消すことはできない。
よって、被請求人は答弁の趣旨どおりの審決を求める次第である。

4 当審の判断
(1)商標法第50条第1項に規定された「商標登録の取消しの審判」にあっては、その第2項において、その審判の請求の登録(本件の場合、平成19年10月10日)前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないとされている。
(2)被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)乙第1号証ないし乙第3号証について
乙第1号証は、「日星産業」の商品カタログであるが、そこには、「Cee200」のタイトルの下、商品名「スピンコーター」に関する解説が和文及び英文でなされている。
乙第2号証は、上記商品の写真であるとするものであるが、2枚目の商品背面写真の中段部の文字中に「Cee」の文字が3ヶ所表示されていることが認められる。
乙第3号証は、「電子材料」(株式会社工業調査会発行,2003年12月号)に掲載された「ブリューワーサイエンス社 Cee スピンコーター・デベロッパーシリーズ」の広告及びそれに関する「日星産業」宛の「株式会社工業調査会 代表取締役社長 新谷滋記」の広告掲載証明書であり、掲載広告には、「Cee スピンコーター(ホットプレート一体タイプ他)・デベロッパーシリーズ例」として商品の写真及びその広告記事、並びに「日本国内販売代理店」として「日星産業株式会社」、「製造元」として「Cee A Division of Brewer Science,Inc.」と掲載されている。
(イ)乙第4号証ないし乙第7号証について
乙第4号証は、「富士フィルム社」から「日星産業」への2005年1月12日付け「見積依頼書」を始め、同年1月17日付け「見積書」、同年4月1日付け「買掛金確認書」、同年4月4日付け「請求書」、「受領書」及び「支払通知書」であるが、「受領書」には、使用商標に関する商品が「日星産業」から「富士フィルム社」へ2005年3月24日に納品されたことを示す記載が認められる。
乙第5号証は、「日星産業」から被請求人への2007年4月12日付け「見積りの送り状」及び同年4月11日付け「見積書」を始め、同年6月21日付け「注文書」及び同年8月3日付け「請求書」であるが、それらには、「BSIスピンコーター『Cee200』」、「Cee200ProTEK(簡易型)」、「Brewer Science Cee200」、「Cee Model 200 Spin Coater」、「BSIコーター」又は「Cee200」の記載が認められる。
乙第6号証は、「日星産業」から被請求人への平成18年8月1日付け「見積書」を始め、2006年8月1日付け「注文書」であるが、それらには、「Brewer Science Cee100CB」、「Cee Model 100CB Spin/Bake Unit」又は「BSIコーター(Cee Model 100CB)」の記載が認められる。
乙第7号証は、「日星産業」から被請求人への平成18年12月22日付け「見積書」を始め、平成19年4月4日付「注文書」であるが、それらには、「Brewer Science Cee200」、「Cee Model 200 Spin Coater」、「BSIコーター Cee Model200」の記載が認められる。
(3)上記(2)を総合すれば、本件審判の請求の登録前3年以内と認められる期間に日本国内において「日星産業」によって「Cee」の文字を含む標章を使用した商品「スピンコーター」が、現に取り引き(譲渡)されたと推認することができる。
被請求人の立証の趣旨は、被請求人(商標権者)が使用許諾を与えたとする通常使用権者「日星産業」によって、本件審判の請求の登録前3年以内に商品「スピンコーター」について本件商標の使用があったとするにあるので、更に、以下これを検討する。
(ア)通常使用権者による商標の使用について
被請求人は、通常使用権の許諾に関する証拠を提出していないが、被請求人が日本国内で商品「スピンコーター」について使用していることを証明するための証拠として自ら提出した「日星産業」に係るカタログ等であることに照らせば、「日星産業」は、本件商標の通常使用権を被請求人から許諾された通常使用権者であると推認することが不自然ではないというべきである。そして、この点について、当事者間に争いはない。
(イ)本件商標の使用商品について
請求人は、「スピンコーター」とは、「シリコンウェハー及びガラスなどの基盤上にフォトレジストを効率よく、均一に回転塗布することを目的とした装置」をいう(甲第2号証)こと等から、「スピンコーター」は、第7類「塗装機械器具」の範ちゅうに属する商品であり、本件商標をその指定商品である「理化学機械器具,測定機械器具」について使用していることは証明されていないと述べている。なお、甲第2号証には、「半導体素子、プリント基板、印刷版、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネルなどの製造には、フォトリソグラフィが用いられます。スピンコーターは、フォトリソグラフィによる微細パターン作成には欠かせない装置です。」との記載がある。
他方、本件商標の通常使用権者と認められる「日星産業」によって、使用されたとする商品「スピンコーター」について、乙第1号証において「Cee200スピンコーターはフルプログラム型の使いやすいBenchtopタイプで8インチウエハあるいは、6インチ角までのLCD基板やフォトマスクが扱えます。高精度でデジタル制御のスピンコーターでフォトレジスト、カラーフィルタ、ポリイミドLCD用コーティング剤の成膜のような、高精度と再現性の要求されるプロセスに最適です。」の記載があり、乙第3号証において「ブリューワーサイエンス社 Cee スピンコーター・デベロッパーシリーズ」のタイトルの下、「Cee スピンコーター(ホットプレート一体タイプ他)・デベロッパーシリーズ例」中の商品説明として「2インチウエハから20インチ角板まで対応可能/処理プロセスに合わせてカスタマイズ可能/薬液塗布方法も各種対応(スプレータイプ、カートリッジタイプ等)/コンパクトでありながら製造機に迫る性能」との記載がある。
さらに、乙第4号証が「日星産業」から「富士フィルム社」へ商品を販売(譲渡)したことを立証するための証拠であるところ、その見積依頼書において納入先として「半導研D」の記載があり、受領書において依頼部門担当者欄に「半導研D」及び「高橋」の文字を有するゴム印が捺印され、同じく依頼者情報欄に部門として「半導研D」、担当者として「高橋和敬」の記載がある。そして、「高橋和敬」は、「富士フィルム社R&D統括本部材料研究本部半導体材料研究所研究員」である(乙第15号証)。
また、日星産業のホームページのコピー(乙第16号証)によれば、同社の取扱商品が掲載されている同ホームページの中央部分に、「研究設備・機器・オフィスファシリティー」の項目があり、「研究用機器」として、「ブリューワーサイエンス社Cee各種機器」が明示されている。
以上によれば、商品「スピンコーター」は、「半導体素子などの製造に用いられるフォトリソグラフィによる微細パターン作成には欠かせない装置であり、シリコンウェハー及びガラスなどの基盤上にフォトレジストを効率よく、均一に回転塗布することを目的とした装置」であるものの、半導体などに係る研究開発において使用される「材料試験機」と見ることも可能であり、該商品は、本件商標の指定商品中の「測定機械器具」に属するものと言い得ることができる。
(ウ)本件商標の使用(使用商標と本件商標との社会通念上の同一)について
本件商標は、「CEE」の欧文字と「シーイーイー」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなるのに対して、使用商標は「Cee」の欧文字からなるものである。この点において、当事者間に争いはない。
商標登録の取消しの審判について、商標法第50条第1項において、登録商標の使用と認める商標は「当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。」とされ、その具体的な例として「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標」が明記されている。
そこで、本件商標と使用商標についてみるに、両者は共に特定の意味合いを想起させることのない造語であり共通の観念をもって把握され得るものではないから、同一の観念を生ずる商標とはいえない。
そして、一般に欧文字と片仮名文字を併記した構成の商標において、その片仮名部分が欧文字部分の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識し得るときは、片仮名文字部分より生ずる称呼をもって自然の称呼とみるのが相当である。
そうすると、本願商標は、上段及び下段の各構成文字から「シーイーイー」の称呼のみを生ずるものと言うべきである。
他方、使用商標を構成する「Cee」の文字は、上記のとおり、造語と認識させるものであるところ、ローマ字読みもし難い綴りであることから、我が国において最も普及している外国語である英語の発音に倣って英語風に発音されるとみるのが自然であり、「シー」の称呼を生ずる。また、「Cee」の文字は、「シー」の称呼があまりにも自然であり、第1文字のみが大文字であることも相俟って、わざわざ「シーイーイー」と読まれる(発音される)ことはないと言うのが相当である。。
そうすると、使用商標は、「シー」の称呼のみを生ずるものと言うべきである。
したがって、本件商標と使用商標とは同一の称呼を生ずる商標とはいえない。
そうとすれば、使用商標は、本件商標と同一の称呼及び観念を生ずる商標とは認められないものであるから、使用商標と本件商標とは、商標法第50条第1項にいう社会通念上同一の商標と認めることはできない。その他、使用商標が本件商標と社会通念上同一と認められるような要素はない。
よって、通常使用権者である日星産業による使用商標の使用は、本件商標の使用と言うことはできない。
(4)結び
以上のとおり、被請求人提出の証拠によっては、本件審判の請求前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その請求に係る指定商品のいずれかについて、登録商標の使用をしていることを被請求人が証明したということができないものであり、また、被請求人は、その登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があるものとも認められないから、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-10-31 
結審通知日 2008-11-06 
審決日 2008-11-18 
出願番号 商願平8-68997 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (009)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉野 晃弘高野 義三 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 酒井 福造
鈴木 修
登録日 1998-01-09 
登録番号 商標登録第4100010号(T4100010) 
商標の称呼 シーイーイー 
代理人 萼 経夫 

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