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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200726079 審決 商標
不服200819709 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 登録しない Y42
管理番号 1189023 
審判番号 不服2008-9800 
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-17 
確定日 2008-11-10 
事件の表示 商願2006- 70261拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「大栄不動産株式会社」の文字を書してなり、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」、第37類「建築工事の施工監理」及び第42類「建築物の設計,測量」を指定役務として、平成18年7月27日に登録出願、その後、指定役務中第36類及び第37類に属する役務ついては、原審における同19年3月28日付け手続補正書により、すべて削除されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「『秋田県秋田市中通5丁目1-1グランドメゾン秋田』等、所在の不動産取引を業とする不動産会社の名称と同一のものと認められる『大栄不動産株式会社』の文字を書してなり、かつ、その他人の承諾を得ているものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第8号について
商標法第4条第1項第8号(以下「本号」という。)において、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」は、商標登録を受けることができない旨規定している。
工業所有権法逐条解説[第17版](特許庁編集 社団法人発明協会発行)によれば、「八号は旧法2条1項5号に相当する規定である。旧法との相違は『著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称』を加えたことである。その理由はこれらも氏名と同様に特定人の同一性を認識させる機能があるからであり、人格権保護の規定としてはこれらを保護することが妥当だからである。ただ、肖像あるいは戸籍簿で確定される氏名、登記簿に登記される名称と異なり、雅号等はある程度恣意的なものだからすべてを保護するのは行き過ぎなので、『著名な』ものに限ったのである。『氏名』はフルネームを意味する。したがって、氏又は名のうちいずれか一方のときは本号の適用はない。『これらの著名な略称』とは、氏名、名称、雅号、芸名及び筆名の略称の意味である。また、例えば、自己の名称と他人の名称とが同一の場合は、自己の名称についても本号の適用があり、したがって、不登録になる。なお、本号に関して、これは不正競争防止の規定であるから『その他人の承諾云々』のカッコ書きは不要であるとの説もあるが、立法の沿革としては前述のように人格権保護の規定と考えるべきであろう。本号には外国人の氏名、名称も含まれる。」と説明されている。
そして、最高裁昭和57年(行ツ)15号判決(判決日 昭和57年11月12日)(以下「最高裁判決1」という。)において「株式会社の商号は商標法第4条1項8号にいう『他人の名称』に該当」する旨判示されている。
さらに、東京高等裁昭和44年(行ケ)6号判決(判決日 昭和44年5月22日)(以下「高裁判決」という。)において、「右法条(商標法第4条第1項第8号)の立法趣旨は、同法条が当該他人の承諾がある場合を商標登録の禁止から除いていること、同法条のほかに同条同項第一五号の規定があることから考えると、他人の商品と誤認、混同を招くことによる不正競争の防止にあるのではなく、他人の氏名、名称に対する人格権を保護するにあると解するのが相当である」及び「そして、商号権、特に会社の商号権は、財産権的性質を帯びるとはいえ、なお人格権的性質を有することは否定できないから、氏名や他の名称に対する人格権と同様に解すべきである。」旨判示されている。
さらにまた、最高裁平成15年(行ヒ)265号判決(判決日 平成16年6月8日)(以下「最高裁判決2」という。)において、「8号(商標法4条1項8号)は、その括弧書以外の部分(以下、便宜『8号本文』という。)に列挙された他人の肖像又は他人の氏名、名称、その著名な略称等を含む商標は、括弧書にいう当該他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないとする規定である。その趣旨は、肖像、氏名等に関する他人の人格的利益を保護することにあると解される。したがって、8号本文に該当する商標につき商標登録を受けようとする者は、他人の人格的利益を害することがないよう、自らの責任において当該他人の承諾を確保しておくべきものである。」旨判示されている。
そこで、以上の観点から本件について検討する。

2 本願商標の本号の該当性について
(1)本願商標の構成について
本願商標は、前記第1のとおり「大栄不動産株式会社」の文字を書してなるものであり、その構成中に「資本金が株式という均等な形式に分割され、出資者すなわち株主が組織する有限責任会社。その機関は、株主総会・取締役会・代表取締役・監査役などから成る。」(広辞苑第五版)を意味する「株式会社」の文字を有するものであることから、商号の一つを表示したものと認められる。
また、前記最高裁判決1からすれば、「大栄不動産株式会社」の商号は、本号における「他人の名称」に該当するものである。
(2)本願商標「大栄不動産株式会社」と同一の商号の他人の存在について
当審において職権により調査すると、昭和56年9月1日設立、同59年7月28日に「大栄不動産株式会社」に組織変更され、現在も同名称の法人と認められる「秋田県秋田市中通5丁目1-1」在の「大栄不動産株式会社」(「大栄不動産株式会社」のウェブサイト参照(http://www.daiei-f.co.jp/com.htm))の存在が認められる。
なお、前記の事実については、請求人が提出した平成19年3月28日付け意見書の添付書類として提出された甲第6号証(秋田県在の「大栄不動産株式会社」の履歴事項全部証明書)からも明らかである。
さらに、「iタウンページ」(http://itp.ne.jp/)、「YAHOO!電話帳」(http://phonebook.yahoo.co.jp/)、「gooタウンページ」(http://townpage.goo.ne.jp/)等において、キーワード「大栄不動産株式会社」及び住所を「広島県」で検索すると、「広島県福山市若松町9-23」あるいは「広島県尾道市高須町606」在の「大栄不動産株式会社」も、その存在が認められるものである。
(3)「他人の承諾」を得たものであるかについて
請求人は、前記(2)に挙げた「大栄不動産株式会社」から、本願商標を登録することについての承諾を得たことを証明するための書類(承諾書等)の提出を行っておらず、本願商標を登録することについて、他人の承諾を得たものとは認められない。
(4)まとめ
前記(1)ないし(3)で認定したとおり、本願商標は、他人の名称からなる商標であり、かつ、当該他人の承諾を得ているとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当するものであり、これを登録することはできない。

3 請求人の主張(要旨)
請求人は、「広島県福山市と秋田県秋田市の法人『大栄不動産株式会社』の業務は『不動産の売買,仲介,所有,賃貸借,管理』であり、前記法人は、『建物の設計,測量』について、その業務の範囲には含まれておらず、本願の指定役務『建物の設計,測量』の範囲においてはいわゆる人格権の保護法益はないものである。」旨主張する。
しかし、本号の規定が、高裁判決において判示されているとおり、「他人の商品と誤認、混同を招くことによる不正競争の防止にあるのではなく、他人の氏名、名称に対する人格権を保護するにあると解するのが相当である」から、請求人のこの主張は、失当であると言わざるを得ない。
また、請求人は、「『承諾書』は、他人の業務の範囲ではないものであるから、承諾を要求したが、承諾が得られなかった。」旨主張している。
しかしながら、「他人の承諾」は、最高裁判決2において判示されているとおり、「8号本文に該当する商標につき商標登録を受けようとする者は、他人の人格的利益を害することがないよう、自らの責任において当該他人の承諾を確保しておくべきもの」であり、その他人の人格権の保護の観点から、承諾を必要とするものであり、その他人の業務内容如何を問うものではなく、本願商標の指定役務の範囲に限りその他人の承諾が必要とする請求人の意見も、失当であると言わざるを得ない。
その他の請求人の主張をもってしても、原査定の拒絶の理由を覆すに足りない。

4 結論
以上によれば、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-09-17 
結審通知日 2008-09-19 
審決日 2008-09-30 
出願番号 商願2006-70261(T2006-70261) 
審決分類 T 1 8・ 23- Z (Y42)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門倉 武則原田 信彦 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 豊田 純一
小川 きみえ
商標の称呼 ダイエーフドーサン、ダイエー 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 小泉 勝義 
代理人 吉武 賢次 

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