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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2008890015 審決 商標
審判199613388 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1187706 
審判番号 取消2005-31237 
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2005-10-07 
確定日 2008-11-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4137882号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成19年6月5日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成19年(行ケ)第10341号平成20年4月9日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4137882号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4137882号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成9年1月21日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同10年4月17日に設定登録され、その後、同20年1月15日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第70号証を提出した。
1 請求の理由
(1)被請求人は、本件商標に係る商標権(以下「本件商標権」という。)について他人に通常使用権を許諾した。
当該通常使用権者は、本件商標に係る指定商品について、請求人の登録商標に類似する商標の使用をすることにより、請求人の業務に係る商品と混同を生ずる行為をしているので、その登録は取り消されるべきである。
(2)本件商標権の通常使用権の許諾について
(ア)被請求人は、本件商標権について、平成12年1月24日付けで、岐阜県本巣郡穂積町生津204番地の2所在の株式会社岐阜武(以下「岐阜武」という。)に対して、本件商標に係る指定商品中「メンズアダルトアウター類」についての通常使用権の使用許諾をした(甲第2号証ないし甲第4号証)。
(イ)岐阜武は、別掲(2)の商標(以下「使用商標A」という。)を、商品「ジャケット」に使用している(甲第5号証)。
(ウ)請求人は、被請求人が本件商標とともに、岐阜武に、その指定商品中「メンズアダルトアウター類」について、平成12年1月24日付けで通常使用権の使用許諾をしていた「USABEAR」の欧文字と「アズエーベー」の片仮名文字とを上下2段に横書きしてなる登録第4345622号の商標について、使用権者(岐阜武)が請求人の登録商標に類似する商標の使用をすることにより、請求人の業務に係る商品と混同を生ずる行為をしているとして、同13年11月19日に、商標法第53条第1項の規定に基づく取消審判(取消2001-31307号)を請求した。
その後、この取消審判の審決が確定し、登録第4345622号商標の登録は、平成16年6月4日に抹消の登録がなされているものである(甲第60号証ないし甲第63号証)。
そうしてみると、被請求人が岐阜武に、「メンズアダルトアウター類」について、平成12年1月24日付けで使用許諾をしている「商標使用許諾契約書」(甲第2号証)には、本件商標が明示されていないとしても、その商標使用許諾契約に関して被請求人の代理人が作成した「見解書」(甲第4号証)においては、「2.理由(1)(b)」において、『また、(a)、(b)の図形部分は、バスクベア カンパニが登録済みの商標(商標登録第4137882号…別紙(3)参照)を若干変更(aは、顔の部分のみとし、色彩を異にした、bは色彩を異にした)したにすぎず、この程度では、当然類似範囲に含まれるものである。』と記載され、見解書の添付書類目録には、「別紙(3)商標登録第4137882号(審決注:本件商標)商標公報」と記載され、かつ本件商標の公報が添付されていること、および商標登録第4345622号に対する取消審判事件(取消2001-31307号)の答弁書において、「7.理由(3)」において、『商標Aは、図と一体となった商標であり、図は登録第4137882号(乙第1号証)として登録済みの商標である。』と述べていることから見ると、被請求人が岐阜武に、「メンズアダルトアウター類」について、本件商標の使用を許諾していたといい得るところである(甲第2号証ないし甲第4号証及び甲第60号証)。(3)請求人が使用している商標の著名性について
(ア)請求人は、甲第6号証ないし甲第11号証の登録商標を保有し、かつ使用している。
(イ)請求人は、「Bear U.S.A.,Inc.」の商号にて、その商号に由来する「Bear U.S.A.」の文字と、熊の輪郭線で描いた熊の図とを結合した商標を使用して、1994年より、アメリカ、日本において、ジャケット、パーカ、靴等の製造、販売をしてきたところであり、その品質、デザインが若者を中心としたストリートファッションのアイテムとして大いにヒットし、これがアメリカの人気音楽番組「MTV」に取り上げられたことから、爆発的な人気を博した(甲第12号証及び甲第13号証)。
そして、その人気の余波は日本、イギリスにも及び当業者のみならず需要者間に広く知られるに至っている。
請求人の商号に由来する黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用した商品が人気を博すにつれ、その商品そのものが「THE SOURCE MAGAZINE」(ヒップホップミュージック誌)等の各種雑誌でも掲載され、あるいは記事として取り上げられて益々その人気が高まってきた(甲第12号証、甲第14号証ないし甲第23号証)。
請求人は、その商品の普及するために、商品パンフレットを作成してアメリカ国内はもとより、日本、イギリスの商社、バイヤー等を通じて広く配布すると共に、「VIBE」、「ASAYAN」、「繊研新聞」等の雑誌、新聞に積極的に広告をしてきたことから、請求人の商号に由来する黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標は、本件商標の出願前には取引者、需要者間に著名となっていたものである(甲第13号証、甲第14号証、甲第19号証、甲第24号証ないし甲第44号証)。
請求人の黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用した商品があまりに人気を博したことから、我が国において大量の偽物が出回ったため、一時日本への出荷を停止せざるを得ない状況に追い込まれたものである(甲第45号証)。 そして、平成8年4月25日には、偽商品を販売していた業者が摘発されたという新聞記事が掲載されたものである(甲第46号証)。
このような状況を打開するため、請求人は1996年4月以来、新聞、雑誌に偽商品についての「警告広告」あるいは「注意広告」を何度も掲載してきたところである(甲第47号証ないし甲第56号証)。
上述したとおり、請求人の黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標は著名となり、それを取り上げた新聞、雑誌等の記事において「ベアユーエスエー」或いは単に「ベアー」として紹介されるほどになっているものである。
請求人は、商標をより商品に適した構成とすべく、また偽物対策をも含め、平成8年(1996年)より、黒の輪郭線をもって描かれたという特徴のある熊の図を描き、その輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「Bear」の文字を書し、輪郭線の外側に「USA」の文字を書した構成よりなる商標(別掲(3)の商標、以下「使用商標B」という。)に変更し、以来これを使用してきているものであり、本件商標の出願前には、需要者、取引者間に著名となっている(甲第14号証ないし甲第17号証、甲第20号証ないし甲第30号証、甲第47号証ないし甲第55号証)。
(ウ)被請求人の登録商標の使用権者が、被請求人の許諾により、登録商標を変更して、同じ「ジャケット」に使用したため、日本での輸入業者、小売業者及び一般消費者の間では、請求人の「ジャケット」と混同を生じており、市場に混乱を起こしてきたものである。
請求人は、このような類似商品が出回り、商品流通業界に多大な迷惑、被害を受けていたので、1996年4月以来、新聞、雑誌に偽商品についての「警告広告」あるいは「注意広告」を何度も掲載してきた(甲第47号証ないし甲第56号証)。
(エ)さらに、請求人は、平成12年10月19日付け書留内容証明郵便物をもって、被請求人の登録商標の使用権者の製造に係る商品を販売していた業者に対して、警告書を送付した(甲第57号証)。
これと同時に、商標権侵害を理由として、平成12年10月19日付けで、岐阜地方裁判所に差し止め仮処分申請を行った(甲第58号証)。
しかるところ、岐阜地方裁判所は、平成13年6月25日に、請求人の主張を全面的に認める決定をした(甲第59号証)。
(4)むすび
したがって、本件商標は、使用権者による登録商標の変更使用(不正使用)により、請求人の業務に係る商品と混同を生ずる行為をしたこととなるとともに、被請求人は、本件商標を積極的に変更使用させたものであるから、使用権者が変更商標を使用することを知っていたというべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)岐阜武への本件商標の使用許諾について
被請求人は、岐阜武に対して本件商標を使用許諾した事実はないと主張している。
しかしながら、請求人が審判請求書で述べ、かつ示した証拠「甲第2号証ないし甲第4号証、甲第59号証、甲第60号証」により、被請求人が本件商標を岐阜武に使用許諾したのは、事実というべきである。
被請求人は、甲第4号証の「見解書」は偽造であると主張しているが、岐阜武に対する商標権侵害差止等請求事件「岐阜地方裁判所、平成15年(ワ)第62号」においても、本件審判事件の甲第4号証と同じ証拠が甲第13号証として提出され、被請求人は、補助参加人として同事件に補助参加しているところ、その証拠について何ら争うところはなかった。
また、被請求人の登録第4345622号の商標「USABEAR/アズエーベー」に対する商標法第53条の規定に基づく取消審判事件「取消2001-31307号」においても本件審判事件の甲第4号証と同じ証拠が甲第4号証として提出され、その審決の取消を求めた審決取消請求事件「東京高等裁判所、平成15年(行ケ)第375号」においても乙第4号証として提出され、被請求人は、その証拠について何ら争うことなく、審決取消請求事件「東京高等裁判所、平成15年(行ケ)第375号」は、原告の請求を棄却している。
そして、その取消を求めた上告事件も上告が棄却され、審決が確定したことにより、当該商標権は、抹消登録がなされている。
さらに、商標権侵害差止等請求事件「岐阜地方裁判所、平成15年(ワ)第62号」において提出された証拠甲第13号証及び登録第4345622号の商標「USABEAR/アズエーベー」に対する商標法第53条の規定に基づく取消審判事件「取消2001-31307号」において提出された証拠甲第4号証、その審決の取消を求めた審決取消請求事件「東京高等裁判所、平成15年(行ケ)第375号」において提出された証拠乙第4号証には、本件審判事件の代理人弁理士足立勉の印鑑と同じ陰影の印が押印されている。
したがって、この点に関する被請求人の主張は、根拠のないものというべきである。
(2)使用商標Aの使用の時期について
被請求人は、「甲第5号証の標章は、使用されなくなってから5年を経過している。」と主張している。
しかしながら、甲第5号証に表示されている商品「ジャケット」は、商標権侵害差止等請求事件「岐阜地方裁判所、平成15年(ワ)第62号」の被告の製造に係る商品を販売店から入手して撮影したものである。
甲第5号証には、「(株)岐阜武」の表示(甲第64号証)があり、そのタグには被請求人が認可したものであるとする表示(甲第65号証)がなされている。
そして、当該商品は、大阪市西成区花園南一丁目4番4号在の「イズミヤ株式会社」が販売していたもので、その値札には「3、900円」の価格が表示(甲第66号証)されている。
なお、請求人は、平成12年10月19日付けをもって、当該「イズミヤ株式会社」に対して、侵害の警告(甲第67号証)をしている。
したがって、この点に関する被請求人の主張は、理由がないというべきものである。
(3)使用商標Bについて
(ア)被請求人は、使用商標Bに自他商品識別力がないなどと主張している。
しかしながら、本件審判事件は、被請求人が被許諾者をして登録商標を不正使用させていた若しくは被許諾者が登録商標を不正使用していることを知りながら相当の注意をしていなかったことが問題とされているものである。 したがって、この点に関する被請求人の主張は、論外というべきものである。
(イ)被請求人は、使用商標Bが著名でないと主張している。
しかしながら、使用商標Bが著名であることは、取消2003-30099号の審決、その取消を求めた東京高裁、平成16年(行ケ)第144号商標権行政訴訟事件の判決、被請求人の商標登録第4507125号に対する登録無効審判事件「無効2004-35107号」の審決、その取消を求めた知的財産高等裁判所 平成17年(行ケ)第10362号の判決(上告が棄却されて確定した。)、同じく商標登録第4536505号に対する登録無効審判事件「無効2004-35108号」の審決、その取消を求めた知的財産高等裁判所 平成17年(行ケ)第10361号の判決(上告が棄却されて確定した。)、同じく商標登録第4762834号に対する登録無効審判事件「無効2005-89030号」の審決、同じく商標登録第4762838号に対する登録無効審判事件「無効2005-89025号」の審決、同じく商標登録第4768545号に対する登録無効審判事件「無効2005-89039号」の審決等により認められているところであるから、被請求人の主張は理由がないというべきである。
(4)被請求人は、使用商標Bが被請求人の登録第3340430号の商標を侵害していると主張している。
しかしながら、そのような主張は、被請求人の商標登録第4507125号に対する登録無効審判事件「無効2004-35107号」、その取消を求めた知的財産高等裁判所、平成17年(行ケ)第10362号の審決取消請求事件(上告が棄却されて確定した。)等においても、同様の主張をしているところ、何れもその主張は認められていない。
(5)被請求人は、使用商標Bが第三者の著名となっている熊の図を盗用していると主張している。
しかしながら、請求人は、使用に係る商標の構成中の熊の図を独自にデザインして採択したものであり、米国特許商標庁に「商標登録第2285696号」として登録(甲第68号証)されているものであり、かつ米国登録を基礎登録としてカナダ国知的財産庁(カナダ国特許庁)に「TMA620462号」(甲第69号証)として登録が認められ、両国において何の問題もなく使用されている。
そして、被請求人の主張に係る商標の使用者は、カナダの法人と思われるところ、該法人が請求人の使用に係る商標の熊の図について、これまでに問題としたことがない。
また、被請求人の主張に係る商標は、半円形の背景から頭部の部分が突き出した右向きの熊の図と、その下に図形と一体的になるようにして書された「SOREL」の文字との組み合わせよりなるのに対して、使用商標Bは、輪郭線で描いた左向きの熊の図とその右側に書された「Bear」の文字との組み合わせよりなるものであるというように、全体の構成が異なり、需要者が混同を生じる程に似ている商標とはいえないものである。
しかるに、被請求人は、その主張に係る商標の構成中の熊の図形の部分のみを取り出し、これを反対側に向け、熊の臀部のギザギザの形状を丸くし、さらにこれに「Bear」の文字を付加して無理矢理似せるような構成とした証拠(乙第12号証ないし乙第14号証)を提出しているところであるが、この商標の熊の図と甲第8号証及び甲第9号証の熊の図とを対比(甲第70号証)してみても、頭部の形状、足の形状、腹部の形状等に顕著な差異を有するものであることからすれば、請求人の引用商標3及び引用商標4の熊の図は、請求人が独自にデザインしたものであること明白である。
この点に関して被請求人は、被請求人の商標登録第4507125号に対する登録無効審判事件「無効2004-35107号」、その取消を求めた知的財産高等裁判所、平成17年(行ケ)第10362号の審決取消請求事件(上告が棄却されて確定した。)等においても、同様の主張をしているところ、何れもその主張は認められていない。
また、熊の図と文字とを結合させた態様は、被請求人が最初に考案したものであるとして、乙第21号証を提出しているが、本件商標とは構成態様が相違するから、事案を異にするというべきものである。
したがって、被請求人の主張は理由がない。
(6)被請求人は、最高裁判所の判例に示された商標法第4条第1項第15号の判断基準を挙げ、使用商標Aは、他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生じるおそれはないなどと主張している。
しかしながら、使用商標Aは、他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生じるものであり、その使用が商標法第53条の適用が認められるものであることは、取消2001-31307号の審決、その取消を求めた東京高等裁判所、平成15年(行ケ)第375号の判決及びその上告事件の上告棄却により明白である。
したがって、この点に関する被請求人の主張は理由がない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第48号証(枝番を含む。)を提出した。
1 被請求人は、岐阜武に対して、本件商標の使用許諾をした事実はない。 岐阜武に使用許諾した商標は、甲第2号証に明示されているように、登録第4345622号という全く別の商標である。
請求人は、「見解書」(甲第4号証)によって、本件商標を使用許諾していたといい得るとしているが、当該「見解書」は、偽造されている。
すなわち、当該「見解書」の作成者は、その理由中において、登録第4345622号には、片仮名「アズエーベー」があることを明示しているにもかかわらず、商標登録証の写しには、その文字が記載されていない。
また、当該「見解書」の上部には、日付と「住友商事株式会社」の文字があるため、被請求人と無関係な第三者の間で偽造された疑いが強い。
したがって、このような疑いのある証拠に基づいて、本件商標が岐阜武に使用許諾されていたと主張することは妥当ではない。
本件審判は、被請求人の財産権である商標を、場合によっては取り消してしまうものであるから、その運用は厳格であるべきであり、使用許諾されていたというならば、その動かし難い証拠(例えば、甲第2号証のような契約書)を提出すべきである。
また、請求人は、甲第60号証の記載も根拠としているが、岐阜武は、甲第5号証に示す標章(「使用商標A」)を被請求人の正式な許諾なしに使用していたものである。
2 使用商標Aは、使用されなくなってから5年を経過している。
甲第5号証の撮影日、甲第57号証の警告書の日付は、あくまで請求人代理人が撮影したという日付、差し出した日付にすぎず、実際に商品を何時購入したのかは全く不明であり、5年経過していない根拠とはならない。
被請求人の財産権である商標を、場合によっては取り消してしまうものである以上、使用の事実がなくなってから、5年経過していない明確な根拠が必要であると考えられる。
使用の事実がなくなってから、5年を経過していれば、本件審判請求は、請求することができないものであり、却下されるべきものである。
3 請求人は甲第6号証及び甲第7号証を使用していると主張している。
しかしながら、甲第6号証は「Bear」と記載されているが、乙第1号証の資料に示すように「BeaR」である。
また、甲第7号証の「BEAR」についても、乙第2号証に示すように、無効審決がなされている。
甲第6号証は、あくまで最後の「R」が特異なものとして識別力を有するものであり、本来「ベアー」又は「bear」の文字のみでは、識別力がないものである。
この点については、乙第3号証の1ないし乙第5号証の2の判決によっても明らかである。
特に、乙第6号証の1及び2の判決では、「bear」あるいは「ベアー」の文字をその構成の一部として使用したものについては、極めて多数の商標登録、商標登録出願がなされ、極めて多数の商標が実際に使用されていることから、「bear」あるいは「ベアー」の文字だけでは、自他商品の識別力がないと明確に判断されている。
この判決において、注目すべき点は、
(1)熊ないしベアーは、一般の日本人がよく知っている動物であり、「被服、履物」の分野において、このようなよく知られている動物である熊を意味する英語の「bear」あるいはこれに単に片仮名表記したにすぎない「ベアー」の文字をその構成の一部として使用したものについて、極めて多数の商標登録あるいは商標登録出願がなされ、また、極めて多数の商標が実際に使用されている。
(2)「被服、履物」について「ベアー」のみからなる標章は、商標登録及び取引の実情を考慮すれば、特別の事情のない限り、自他商品識別機能を有しない商標であるというべきである。
(3)「被服、履物」においては、日本人によく知られた動物の名前である「ベアー」又は「bear」の文字だけでなく、これに他の文字あるいは図形を結合させた標章とすることにより、初めて自他商品を識別する機能を生じさせることが可能となる。
といった判断である。
これらの判断によれば、請求人の有する甲第6号証及び甲第7号証の商標は、識別力が疑われるものである。
4 請求人は、請求人の特徴のある熊の図と「Bear U.S.A」の文字を結合させた商標は、本件商標の出願前には、取引者、需要者間に著名となっていたものと主張している。
そして、請求人は、著名な証拠として、甲第13号証、甲第14号証、甲第19号証、甲第24号証ないし甲第44号証を提出しているが、この程度の量で、著名であると判断することは、極めて危険である。
一般に、著名性を獲得していたことを立証するためには、極めて数多くの証拠が要求されている。
ちなみに、被請求人の代理人は、著名性と関連する商標法第3条第2項の適用を受けるために、330もの証拠を提出したが、認められていない乙第7号証の事例を担当している。
この中には、書体が異なるとの理由で採用されなかった証拠も存在するが、それらを除いても、270以上の証拠は有効であるにも拘わらず認められていない。
したがって、請求人の提出した証拠の量のみでは、著名性を獲得しているとは、到底認められないものである。
しかも、証拠として提出している雑誌や新聞は、発行部数が不明な外国のものであったり、国内で一般によく出回っている雑誌でもない。
また、新聞も業界の専門紙であって、一般の日刊紙でもない。
したがって、発行部数はかなり少ないものと予想される。
被請求人は、参考までに、商標が記載されていた書籍が約400万部に達していたこと等を理由に周知商標と認めた事例を乙第8号証に示す。
請求人の使用した書籍等の発行部数は、この量をかなり下回るものと考えられる。
このため、熊の図と「Bear U.S.A」の文字を結合させた商標は、著名な商標であるとは認められないものである。
ところで、請求人は、熊の図と「Bear U.S.A」の文字を結合させた商標がアメリカ国内で著名であるかのように主張しているが、この商標は、不思議なことにアメリカ国内で商標登録もされていないものである。
しかも、熊の図と「Bear U.S.A」の文字を結合させた商標が著名ということならば、請求人の会社の売り上げも多いはずであるが、請求人の会社の売り上げは僅かであり、著名商標になるほどの売り上げはなく、到底著名商標を実現するだけの宣伝広告のための資金力はないところである。 その売り上げは、乙第9号証の1及び2の証拠に示すように、900万ドル(1999年)?700万ドル(2000年)、つまり年間日本円で10億円以下の会社という売り上げが請求人の実情である。
請求人は、甲第13号証で国別の売り上げの一覧表を提出しているが、その金額を虚偽表示している可能性があり、そのような行為は許されるべきものではない。
5 被請求人は、乙第10号証の商標を登録している。
この「USBEAR」は、平成7年に出願されて、被請求人により使用されているものである。
使用されている事実は、請求人により取消審判を請求され、使用している証拠を提出して審決の取消を求めた乙第11号証の裁判より明らかである。 ところで、請求人の「Bear U.S.A」の文字に識別力があるとすれば、この商標は、乙第10号証の商標と要部を共通にするため、類似するものである。
そうであれば、請求人の「Bear U.S.A」の文字を有する商標は、仮に著名であったとしても、著名性を獲得した時期より、その出願日が早い乙第10号証の「USBEAR」の商標権を侵害していることになる。
このように、被請求人の商標権を侵害した上で、著名となったような商標を保護する合理的な理由はなく、本件商標を取り消すことについて審判を請求することは妥当なものではない。
6 請求人の熊の図は、第三者が請求人の使用前から使用して、著名となっている熊の図(乙第12号証)を盗用しているものである。
すなわち、この乙第12号証の熊の図の外形を線とし、反転させると乙第13号証のような形状となる。
この図形は、まさに請求人の熊の図に瓜二つであり、明らかに、この図を盗用しているものである。
例えば、請求人の甲第9号証の商標のように「Bear」の文字と結合させれば、乙第14号証のような形態となる。
この形態は、請求人の甲第9号証の商標と殆ど同じといってもよい程酷似している。
これらは、偶然一致したとは到底思えないほど酷似していることから、一般の常識からいえば明らかに盗用とみられるものである。
乙第12号証の熊の図は、長期間、世界中で愛用されている防寒ブーツに使用されているものであり、以前より数多くの需要者の目に触れているものと考えられる。
被請求人は、このような事実を示すために、乙第15号証ないし乙第18号証のホームページを証拠として提出する。
また、請求人は、ジャンパーの背中に大きく乙第19号証のような熊の図形を使用している。
この商標は、乙第20号証の商標の熊の図と非常に似ており、この熊の図を盗用したとも考えられる。
さらに、熊の図と文字を結合させた態様は、被請求人が最初に考案し、宣伝広告したものである。
この点については、乙第21号証の証拠を提出する。
乙第21号証に示された熊の図形は、請求人が使用している商標の出願時点よりも早く作成し、宣伝広告されたものであり、請求人は、このような態様を真似したものに他ならない。
このように、請求人自身、複数の熊の図や熊の図と文字とを結合した態様を盗用するような者であり、その行為は極めて悪質であり、盗用した図に基づいて、本件審判を請求することは、権利の濫用として許されるものではない。
7 商標法第4条第1項第15号にいうところの、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれの有無について、最高裁は下記のような判断基準を示している。
(1)当該商標と他人の表示との類似性の程度
(2)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や
(3)当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、
(4)当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである(乙第22号証)。
この判断基準は、その後の下級裁判所の裁判にも踏襲されている。
そこで、この基準に照らして、岐阜武が使用していた商標が、他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるか否かを検討してみる。 まず、前記(1)の類似性については、乙第6号証の判決からみて、「ベアー」「bear」の文字だけでは自他商品の識別力がなく、株式会社岐阜武が使用していた商標は、あくまで一連一体の商標として、既成の観念を生ずることなく、熊の図の印象も異なるものであることから、熊の図と「Bear U.S.A」の文字を結合させた商標とは類似性の程度が低いものと考えられる。
また、前記(2)の熊の図と「Bear U.S.A」の文字を結合させた商標の周知著名性については、前述5でも述べたように、疑問点が多く、認められないものと考える。
ところで、最高裁は判断基準の(2)において、「独創性」を挙げている。
そこで、熊の図と「Bear U.S.A」の文字を結合させた商標の独創性を考察してみるに、その文字部分は、一般の日本人がよく知っている動物で、しかも極めて多数の者が商標登録、商標出願並びに実際に使用しているため、既にその文字自体が識別力を失っている「Bear」の文字から成るにすぎないものであり、造語による商標と比べて著しく独創性が低いものである。
したがって、最高裁の判断基準(1)及び(2)からすれば、岐阜武が使用していた商標が使用されていても、何等混同を生ずるおそれはないものと考えられる。
次に、前記(3)の基準については、同じ指定商品であることから、これを満たすとしても、前記(4)の基準を満たしているものとは考えられない。
問題となる商標の取引者、需要者は、乙第6号証の東京高裁の判決にも指摘されているように、極めて多数の商標登録、商標出願、実際の使用から、「ベアー」「bear」の文字だけでなく、結合されている他の文字や図形を基に商品を区別する習慣が身に付いており、注意力が高くなっているものと考えられる。
ちなみに、被請求人が特許電子図書館において、特許庁における被服の類似群で「bear」「ベアー」を検索すると、乙第23号証及び乙第24号証のような多数の検索結果が抽出された。
また、同じ類似群で「クマ」を検索しても、乙第25号証のような多数の検索結果が抽出された。
特に、「クマ」の図形で、株式会社岐阜武が使用していた商標や請求人の商標に印象が似た図形商標を乙第26号証ないし乙第47号証のとおり提出する。
特に、乙第43号証の熊の図は、甲第8号証の商標及び甲第9号証の商標の熊の図と極めて酷似しているにも拘わらず、文字の違いからなのか非類似として登録されている。
これは、特許庁においても、文字又は図形に、ある程度の相違があれば混同を生ずることなく、区別が可能であると認識して登録されていることに他ならないと考えられる。
実際の取引においても、このような数多くの登録例から、「ベアー」「bear」及び熊の図に接したときの取引者及び需要者の注意力は著しく高まっているものと考えられる。
しかも、「ベアー」「bear」の文字については、「SURF BOARDS BEAR」(乙第3号証の2)や乙第48号証に示すように、「GOLDENBEAR」、「ゴールデンベアー」等が著名となっている。
世界的に著名なゴルフプレーヤーに係わる商標としても広く認識されている。
また、熊の図も、前記「ゴールデンベアー」の図や第三者が使用している著名標章(乙第12号証、乙第15号証ないし乙第18号証)が存在する。 このように、熊の図や「ベアー」「bear」の文字を使用した商標が多数有り、図及び文字にも、それぞれ複数の著名商標が存在するため、熊の図、「ベアー」「bear」の文字のみを指標として取引に当たれば、著名商標の間でも誤認混同が生じる可能性も考えられる。
このような事情から、取引者及び需要者においては、熊の図の細部の態様や「ベアー」「bear」の文字に結合した他の文字にも充分配慮すべき習慣が自然に身に付くため、「普通に払われる注意力」そのものも高くなるのが一般的であると考えられる。
したがって、岐阜武が使用していた商標と熊の図と「Bear U.S.A」の文字を結合させた請求人の商標の文字や図形の相違があれば、何等混同を生ずるようなことはないものである。
8 以上述べたように、本件商標は、岐阜武に使用許諾されておらず、使用商標Aも使用されなくなってから5年を経過している。
また、使用商標Aと請求人の熊の図と「Bear U.S.A」の文字を結合させた商標とでは、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものではない。

第4 当審の判断
1 商標法第53条は、「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、当該商標権者がその事実を知らなかった場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。」と規定しているところ、本件が当該規定に該当するかどうかについて、以下検討する。
2 岐阜武は、通常使用権者と認められるか否かについて
(1)請求人の提出に係る証拠をみるに、以下の事実が認められる。
(ア)登録第4345622号商標の使用許諾
被請求人は、上段に左横書きで「USABEAR」の欧文字を、下段に左横書きで「アズエーベー」の片仮名文字をそれぞれ書してなり、指定商品を第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」とする登録第4345622号商標(設定登録日平成11年12月17日。以下「『USABEAR/アズエーベー』商標」という。)の商標権者であったところ、平成12年1月24日、岐阜武との間で、「USABEAR/アズエーベー」商標につき、メンズアダルトアウター類の日本国内の販売に使用することを岐阜武に許諾する旨の商標使用許諾契約を締結した。(甲第2号証、甲第63号証)
(イ)見解書の作成
被請求人の代理人である足立勉弁理士(以下「足立弁理士」という。)外1名は、平成12年4月21日付けで見解書を作成した。見解書は、「結論」として、その別紙(1)に表示された3個の「文字及び図形」(そのうち(b)の符号が付されたものは、使用商標Aと同一構成のものである。)を岐阜武が第25類の商品に使用することは問題がないとし、その理由として、「別紙(1)に示す文字中『USABEAR』、『アズエーベー』の文字は、株式会社セント・ローランにおいて登録済みの商標である(商標登録第4345622号 ・・・ )(審決注:「USABEAR/アズエーベー」商標のことである。)。実際、使用する文字の大きさ、配置は異なるものの、このような変更は社会通念上、商標の使用と認められるものであり、問題とならない。(b)の『USA』の文字は、識別力を有しない文字であり、『アメリカ製』の商品に使用するに際しては問題とならない。尚、株式会社セント・ローランは株式会社岐阜武に、上記商標について使用許諾を与えているとのことである。また、・・・(b)の図形部分は、パスクベア カンパ二が登録済みの商標(商標登録第4137882号・・・)(審決注:本件商標のことである。)を若干変更(・・・ bは色彩を異にした)したにすぎず、この程度では当然類似範囲に含まれるものである。・・・ 尚、上記パスクベア カンパ二の上記登録商標は、株式会社セント・ローランに商標権を移転させる手続きを準備中であり、株式会社セント・ローランは上記 ・・・(b)・・・ の図形についても株式会社岐阜武に使用許諾を与えるとのことである。」と記載されている。(甲第4号証)
(ウ)被請求人及び岐阜武の主張
請求人は、平成12年10月18日ころ、岐阜武を債務者として、岐阜地方裁判所に本件仮処分申立事件の申立てをした。同申立ては、3個の標章を付した被服を債務者が販売すること等の差止めの申立て含むものであったところ、当該3個の標章(仮処分申立書及び仮処分決定書において、「債務者標章(1)?(3)」との略称が付されている。)は、見解書の別紙(1)に表示された3個の「文字及び図形」と同一構成のものであり、このうち債務者標章(2)が使用商標Aと同一の構成のものである。被請求は、本件仮処分申立事件において、債務者(岐阜武)側に補助参加し、岐阜武とともに、「債務者標章(1)ないし(3)は、文字部分については補助参加人が商標登録を受けており(登録第4345622号。・・・ )(審決注:「USABEAR/アズエーベー」商標のことである。)、また、債務者標章(2)の図形部分は補助参加人が同様に商標登録を受けている(登録第4137882号。・・・)(審決注:本件商標のことである。)。債務者標章(1)ないし(3)は、いずれも補助参加人が図案部分も含めて全部作成しているところ、債務者は補助参加人から使用許諾を受けた。」と主張した。(甲第58号証、甲第59号証)
(エ)取消2001一31307号事件における被請求人の主張
請求人は、平成13年11月19日、被請求人を商標権者とする「USABEAR/アズエーベー」商標につき、通常使用権者である岐阜武の不正使用を理由として、商標法53条1項に基づく登録取消審判の請求をした(取消2001一31307号事件)。請求人の請求の理由は、「USABEAR/アズエーベー」商標の通常使用権者である岐阜武が、「USABEAR/アズエーベー」商標と類似する使用商標Aを「ジャケット」に使用し、請求人の業務に係る商品と混同を生ずる行為をしたというものである。これに対し、足立弁理士は、被請求人の代理人として、平成14年3月25日付け答弁書により、「被請求人は、株式会社岐阜武に通常使用権を許諾している点や株式会社岐阜武が甲第5号証の商標(以下、商標A」という)(審決注:使用商標Aのことである。)を使用している点については、認めるものである。しかし、株式会社岐阜武が使用している商標Aによって請求人の業務に係る商品と混同を生ずるという点については、以下に述べるように、認めることはできない。」、「商標Aは、図と一体となった商標であり、図は登録第4137882号(審決注:本件商標のことである。)・・・として登録済みの商標である。」と主張した。(甲第60号証ないし甲第62号証)
(2)上記(1)の各事実によれば、以下のとおり認めることができる。
被請求人は、平成12年1月24日、岐阜武との間で、「USABEAR/アズエーベー」商標につき使用許諾契約の締結をしたものであるが、平成12年4月21日には、岐阜武が使用商標Aと同一の構成よりなる「文字及び図形」を第25類の商品に使用することに問題がないとする見解書を足立弁理士が作成していることにかんがみて、岐阜武が実際に使用するものと想定されていた商標には使用商標A(見解書別紙(1)に表示された「文字及び図形」のうち(b)の符号が付されたもの、本件仮処分申立事件における債務者標章(2)、取消2001-31307号事件における商標A)が含まれていたものと推認することができ、現に岐阜武はこれを実際に使用していたことが認められる。
しかるところ、使用商標Aの構成は、本件商標を構成する図形の色彩を反転させた上、「USABEAR/アズエーベー」商標の「USABEAR」の文字部分と組み合わせてなるものであり、このことは、足立弁理士が見解書で指摘し、また、被請求人及び岐阜武が本件仮処分申立事件において主張するところであるから、被請求人と岐阜武の共通の認識であったものと認められる。
そして、そうであれば、岐阜武が使用商標Aを使用し得るというためには、「USABEAR/アズエーベー」商標について使用許諾を受けたのみでは不十分であり、本件商標についても使用権限を取得する必要があるものというべきところ、このことに、本件商標権をパスクベア カンパ二から被請求人に移転する手続の準備中である旨が見解書に記載されており、現に見解書の作成の直後にその旨の移転登録申請がなされていること、また、本件仮処分申立事件や取消2001-31307号事件において、被請求人及び岐阜武は、使用商標Aの図形部分をなす本件商標が被請求人の登録商標である旨を主張しているが、この主張は、本件商標の商標権者である被請求人が岐阜武にその使用を許諾しているとの趣旨を含むものとして理解しなければ、意味をもたないことを併せ考えれば、被請求人と岐阜武との間には、被請求人が本件商標権を取得したとき(パスクベア カンパ二から被請求人に対する移転登録がされた平成12年5月17日)と同時に、又はその後間もなく、本件商標についての使用許諾契約が明示的又は黙示的に締結されたものと推認することができる。
したがって、岐阜武が、本件商標の通常使用権者であると認めることができる。
3 使用商標Aの使用の時期について
甲第5号証は、「ジャケット」を写した写真であるところ、当該「ジャケット」の表面胸の部分と内側襟の部分に、使用商標Bと社会通念同一と認められる商標が表示されている。
なお、被請求人は「甲第5号証の標章(審決注:使用商標A)は、使用されなくなってから5年を経過しているものである。」旨主張しているが、甲第5号証の撮影日は、「平成12年10月19日」と記載されている。
また、第5号証の「ジャケット」は、大阪市西成区在のイズミヤ株式会社が販売していたものであり、請求人は、同社に対して、平成12年10月19日付けをもって、侵害の警告(甲第67号証)をしていた事実を認めることができる。
したがって、甲第5号証及び甲第64号証ないし甲第67号証を総合勘案すれば、本件審判の請求(請求日平成17年10月7日)は、使用商標Aが使用されなくなってから5年を経過してなされたものとはいえない。
4 本件商標と使用商標Aの類否について
本件商標と使用商標Aとは、黒地か白地かの相違はあるが、その外観において明らかに構成の軌を一にする熊の図形よりなるといえるものであるから、類似する商標であるというべきである。
5 本件商標の指定商品と使用商標Aが使用されている商品の類否
使用商標Aを使用した商品「ジャケット」は、本件商標の指定商品中の「被服」に含まれる商品と認められる。
6 他人(請求人)の業務に係る商品との混同について
請求人の主張の理由及び甲第24号証の請求人の登録商標が使用された「ジャケット」、甲第52号証、甲第53号証及び甲第55号証の雑誌「street Jack」(1999年1月号、1998年11月号及び1999年2月号)によれば、使用商標Bを付した請求人の販売に係る「ジャケット」が、雑誌等に宣伝広告されていた事実が認められる。
次に、使用商標Aと使用商標Bとについてみるに、使用商標Aは、別掲(2)のとおり図形と文字の組み合わせよりなるところ、中央に顕著に表示されている「USABEAR」の文字部分について、その構成中の「USA」の文字は、「米国」を意味するものとしてよく知られているといえるものであり、商品の生産地又は販売地を表示したものと認識されるものであるから、簡易迅速を尊ぶ取引の場において、これに接する取引者、需要者は構成中の「BEAR」の文字部分に着目して、この部分をもって商品の取引にあたることも決して少なくないものとみるのが相当である。
してみれば、使用商標Aからは、その構成中の「BEAR」の文字に相応して、単に「ベア」又は「ベアー」の称呼及び「熊」の観念を生ずるものである。
他方、使用商標Bは、別掲(3)のとおりその構成中に表された「Bear」の欧文字部分から、「ベア」又は「ベアー」の称呼及び「熊」の観念を生ずるものであり、使用商標Aと使用商標Bとは、「ベア」又は「ベアー」の称呼及び「熊」の観念を共通にするものである。
また、外観においても、使用商標Aにおいて、外観上看者の目を惹く部分は、熊の図柄の後方に「USABEAR」の文字を囲んだ枠を配置し、両者の輪郭線を連続させて両者を一体化させたところであるが、使用商標Bも、同様に、熊の図形の後方に「Bear」の文字を囲んだ枠を配置して両者の輪郭線を連続させて一体化させたものとなっている。
そうすると、使用商標Aと使用商標Bとは、熊の図形が右向きか左向きか、また、「USABEAR」と「Bear」の文字の相違はあるものの、外観上の要部は、熊の図形の後方に欧文字を囲んだ枠を配置して両者の輪郭線を連続させて一体化させたというべきであり、両商標は全体として酷似した印象を受けるものであるから、時と所を異にして離隔観察するときは、外観上彼此見誤るおそれがあるものといわなければならない。
したがって、使用商標Aと使用商標Bとは、称呼、観念及び外観において極めて紛らわしいものであり、使用商標Aは、使用商標Bを連想、観念させるものであるといわざるを得ない。
そして、使用商標Aを使用した商品「ジャケット」と使用商標Bを使用した「ジャケット」とは、同一又は密接な関係がある商品といえるものである。
してみれば、岐阜武による商品「ジャケット」についての使用商標Aの使用は、使用商標Bを「ジャケット」に使用していた請求人の業務に係る商品であるかのように取引者、需要者において商品の出所の混同を生ずるというべきである。
7 結び
岐阜武は、本件商標の通常使用権者であると認められる。
そして、通常使用権者である岐阜武による商品「ジャケット」についての使用商標Aの使用は、本件商標に係る指定商品についての本件商標に類似する商標の使用であって、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせるというべきである。
また、本件審判の請求は、使用商標Aが使用されなくなってから5年を経過した後にされたものとはいえない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第53条第1項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
別掲
別掲

(1)本件商標



(2)使用商標A



(3)使用商標B



審理終結日 2007-05-21 
結審通知日 2007-05-24 
審決日 2007-06-05 
出願番号 商願平9-5422 
審決分類 T 1 31・ 5- Z (025)
最終処分 成立  
特許庁審判長 林 二郎
特許庁審判官 杉山 和江
小畑 恵一
登録日 1998-04-17 
登録番号 商標登録第4137882号(T4137882) 
代理人 黒瀬 雅志 
代理人 足立 勉 
代理人 宮嶋 学 
代理人 吉武 賢次 
代理人 宮城 和浩 
代理人 塩谷 信 
代理人 小泉 勝義 

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