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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200435028 審決 商標
無効200435030 審決 商標
無効200435027 審決 商標
無効200435029 審決 商標
無効200435031 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1187611 
審判番号 無効2007-890151 
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-09-12 
確定日 2008-10-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第3371034号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3371034号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3371034号商標(以下「本件商標」という。)は、「極真会館」の文字を横書きしてなり、平成6年5月18日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同11年1月8日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第15号証を提出した(なお、弁駁書において、甲第14号証として提出の「知財高裁平成17年(行ケ)第10030号判決の写」は「知財高裁平成17年(行ケ)第10031号判決の写」と、また、甲第15号証として提出の「最高裁 平成19年(行ツ)第89号、平成19年(行ヒ)第85号」は「最高裁 平成19年(行ツ)第90号、平成19年(行ヒ)第86号」と訂正し、その証拠方法を提出した。)。
1 理由の要旨
本件商標「極真会館」は、極真空手・極真会の創始者大山倍達が周知著名にした商標「極真会館」と同一の商標であるにもかかわらず、極真会の一門弟である文章圭(以下、本審決においては、被請求人と記載するほか、必要に応じて松井章圭とも記載する。)が何の法的根拠もなく自己名義にて信義則に反して登録査定を受けたものであるから、この商標登録は、「公正な取引秩序を害し、公序良俗に反し」商標法第4条第1項第7号に該当し、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである、
(1)商標「極真会館」の著名性
本件商標が、空手及び格闘技に興味を持つものの間では、遅くとも平成6(1994)年4月の時点で広く知られた周知著名商標であったことは、甲第3号証として提出の、無効2004-35030の審決謄本の「5 当審の判断(15頁の下線部分)」において、特許庁が認定している。
(2)本件商標登録の違法性
(ア)本件商標は、上記のとおり、商品区分第25類中の「被服…運動用特殊被服…等」を指定商品として、松井章圭こと文章圭の名義で出願され、商標登録を受けたものである。
(イ)他方、本件商標と同一の商標「極真会館」が、商品区分第41類の「空手の教授を含む技芸・スポーツ又は知識の教授…等」を指定役務として、松井章圭こと文章圭の名義で出願され、登録第4027346号として商標登録されていた。
(ウ)しかしながら、この商標登録第4027346号に対して、請求人が、極真空手の創始者である大山倍達(請求人大山喜久子の父)の急逝に乗じて、単に一門弟である文章圭が何の法的根拠もなく自己名義にて登録を受けたものであるから、商標法第4条第1項第7号の「公正な取引秩序を害し、公序良俗に反する」に該当し、商標法第46条第1項により無効とすべきである、と主張して、商標登録無効審判を請求したところ、登録第4027346号の登録を無効とする旨の審決がされた。
(エ)審決は、「5 当審の判断(16頁下線部分)」において、「被請求人(文章圭)」による極真関連標章についての登録の有効性は認め難いがばかりでなく、被請求人は、極真関連標章を出願する際には、既に、極真会館分裂の可能性をも予見して、将来生ずるであろう各派の対立関係を自己に有利に解決する意図を持って、本件商標を初めとする極真関連標章の登録出願をしたものと推認せざるを得ない。してみれば、このような事実関係の下においてなされた本件商標の登録は公正な取引秩序を害し、公序良俗に反するものといわねばならない。」旨判断された(甲第3号証の「5 当審の判断」(2))。
(オ)上記審決において、「当審の判断」の根拠とされた証拠方法を、甲第4号証ないし甲第13号証として提出する。
(カ)被請求人(商標権者 文章圭)は、無効2004-35030の審決に対して、審決取消の訴を知財高裁に提起したが、訴え(平成17年(行ケ)第10031号)は棄却された(甲第14号証)。
(キ)さらに、被請求人は、最高裁判所に上告したが、平成19年6月28日付にて、上告(平成19年(行ッ)第90号、同年(行ヒ)第86号)は棄却され、無効審決が確定した(甲第15号証)。
(ク)上記知財高裁の判決は、「第6 当裁判所の判断(最終頁)(8)以上によれば、本件商標の登録は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないというべきであるから、商標法4条1項7号に違反してされたものであるとして、同法46条1項の規定により、その登録を無効とすべきであるとした審決の結論に誤りはない」旨のものであった(甲第14号証)。
(ケ)上記無効審判に係る登録商標「極真会館」(第41類)」に対する特許庁の無効審決や知財高裁の判決や最高裁の上告棄却の決定等(甲各号証)によれば、何れも、
(a)「極真会館」なる商標が、周知著名商標であること、即ち、極真会館・極真空手の創始者である大山倍達が死亡した平成6年4月の時点では、少なくとも空手及び格闘技に興味を持つものの間で広く認識されるに到っていたことが認定されている。
(b)「空手及び格闘技に興味を持つものの間で広く認識」されている、即ち、周知著名商標であるということは、商標「極真会館」が、商品区分第41類の役務である「空手の教授を含む技芸・スポーツ又は知識の教授」において、周知著名商標である、ということであるから、上記役務と密接不可分の関係に在る商品「空手道着(空手用衣服)」においても周知著名である。
したがって、商品区分第25類において、空手道着を含む「運動用特殊衣服」を指定商品とする本件商標「極真会館」は上記周知著名商標(と同一)である。
(コ)本件商標の商標権者(出願人)である「文章圭」名義で、商標「極真会館」が第41類中の役務を指定して、商標登録査定がされたことに違法性があると認定されている、即ち、「文章圭」名義での商標登録査定は「公正な取引秩序を害し、公序良俗に反する」と認定されたのであるから、同一人である「文章圭」の名義において登録査定を受けた本件商標もまた明らかに違法であり、商標法第4条第1項第7号の「公正な取引秩序を害し、公序良俗に反する」に該当する。
(3)結語
以上のとおり、本件商標「極真会館」の「文章圭」名義による登録査定は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、商標法第46条第1項により無効とされるべきである。

2 答弁に対する弁駁
(1)請求人適格について
被請求人は、「請求人は請求人適格を有しない」と主張しているが、被請求人が、答弁書において述べているように「…請求人の出願にかかる商願2004-94602号について本件商標の存在が障碍になるから…」請求人は本件審判請求に及んでいるのであって、この事実は乙第1号証の上申書に記載のとおりである。
よって、請求人の本件無効審判請求についての請求人適格は、上記事実に基づく法的利害関係の存在で十分であり、これで足りる。
(2)被請求人による本件商標における出願行為の正当性について
被請求人は、「被請求人による本件商標における出願行為の正当性について」主張しているが、この主張には根拠がなく、成り立たない。
因みに、この被請求人の主張は、確定した無効審決や知財判決、最高裁の上告棄却及びそれらの審決理由や判決理由を無視するものであって、被請求人が自ら認めているように、「…確定した…無効審決の成立に納得できない」からというだけの、被請求人の単なる意見に過ぎない。
また、被請求人は民事裁判の判決書を乙第3号証、乙第4号証として提出しているが、これらは職権審理によらない純然たる民事事件であり、請求人はこれらの裁判の当事者ではないし、当事者以外の者にその既判力が及ぶものでもない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1 請求人適格について
請求人は、本件商標の無効審判請求を求める法律上の正当な利益を有することについて何ら説明をしていない。
その理由は、請求人が大山倍達の息女であるから、すなわち請求人は大山倍達の遺族として同氏の遺産相続人であるから、説明するまでもなく当然にこの商標について登録を受けられる法律上の正当な者であると考えている故と推察される。
しかしながら、請求人は商標「極真会館」の承継人であるとは到底いい得ず、請求人は被請求人及びその他の極真会門弟の者が商標「極真会館」を使用し続けている事実を知りながら後発的に参入し、被請求人等より優位な立場を獲得するために本件商標の無効を求めようとするものであるから、そのような請求人に本件無効審判の請求人適格を認めるべきではない。
すなわち、請求人が本件商標の無効を求めようとする理由は、請求人の出願にかかる商標登録出願(商願2004-94602号)について本件商標の存在が障碍となるからであって、事実、その商標登録出願は本件商標等を引用した拒絶理由通知を受け、それに対して平成19年9月25日付の上申書で本件無効請求書を提出した旨を述べている(乙第1号証)。
また、請求人は、本件商標のみならず、被請求人以外の極真会派の商標登録(商標「新極真会」登録第4756427号及び商標「空手道極真館」登録第4755605号)に対しても、上記同様に無効を求めている事実がある(乙第2号証)。
このように、請求人が自ら極真関連標章について商標登録を受けようとし、そのために本件商標の無効を求めようとしていることは明らかである。
ここで、請求人が本件商標「極真会館」と同一の商標について商標登録出願を行っている事実を鑑みれば、請求人が本件無効審判を請求することについて法的利害関係を有しているとみることはできる。しかしながら、商標「極真会館」は請求人も認めるところ、極真空手・極真会の創始者大山倍達が周知著名にした商標として同氏が死亡した平成6(1994)年4月の時点で既に広く知られていた商標であるから、たとえ遺族であるとしても商標法第4条第1項第10号に該当し、請求人は元来商標登録を受けることができない立場にあるというべきである。
すなわち、商標「極真会館」は、請求人が引用する審決及び判決にも示されているとおり、空手及び格闘技に興味を持つ者の間では大山倍達の極真会館という一つの団体を出所として表示する標章として広く知られているものである。そして、大山倍達の死亡当時、「極真会館」は未登録商標であり、そのような未登録商標を相続財産の一つとして一般承継人たる遺族が承継することは登録主義を採択している我が国の商標法制度においては到底認められるはずもない。
また、請求人が大山倍達生前の極真会館と同一性を有する事業を継続して行ってきた事実はなく、かつ事業を正当に譲り受けたとする事実もない。
さらにいえば、極真空手・極真会は大山倍達存命時の門弟により、複数の派閥に分かれてはいるものの大山倍達の流れを汲む空手団体として継続し活動しているもので、請求人がそれらの活動の指揮ないしは監督を行っている事実は存在しない。
そうすると、請求人は大山倍達の遺族であるとしても、本件商標「極真会館」の周知性の確立に関してはもとより関与しておらず、大山倍達生前の事業について実質的同一性をもって継続している事実はないのであるから、請求人は商標法第4条第1項第10号にいう「他人」に該当するということができる。
したがって、仮に本件商標登録が無効になったとしても、請求人による商標「極真会館」についての商標登録出願(商順2004-94602号)は、商標法第4条第1項第10号に該当し登録を受けることはできないのであるから、たとえ請求人が本件商標と同一の商標につき商標登録出願を行っているとしても、請求人は本件商標を無効とする法律上の正当な利益を有しているとはいいえず、そのような請求人に本件無効審判の請求人適格を認めるべきではない。
2 被請求人による本件商標における出願行為の正当性について
請求人は、本件商標と同一の商標「極真会館」(登録第4027346号)についての無効審判にかかる無効審決(甲第3号証)とその審決取消訴訟における知財高裁の判決及び最高裁の上告棄却の決定(甲第14号証、甲第15号証)を根拠として、その商標「極真会館」の登録出願が被請求人の個人的な利益のためにされたと推認され、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くと判示された点をもって、同一人である被請求人の名義において登録査定を受けた本件商標「極真会館」も明らかに違法であると主張している(なお、請求人が根拠とする「極真会館」(登録第4027346号)にかかる無効審判事件(甲第3号証)に符合する審決取消訴訟及び上告棄却の決定は何ら請求人によって示されていないが、符合する正しい事件番号は、平成17年(行ケ)第10031号及び平成19年(行ツ)第90号/同年(行ヒ)第86号であると思われ、被請求人は請求人の主張の内容に沿い、甲第14号証及び甲第15号証については上記の事件番号の内容を参考にして以下答弁を続ける。)。
確かに、本件商標と同一の商標「極真会館」(登録第4027346号)にかかる無効審判請求事件が、最終的に最高裁判所で上告棄却とされ、請求人が主張するとおりの無効審決が成立していることは否定しない。
しかしながら、被請求人は、その無効審決の成立に納得できないばかりでなく、本件商標と関係する別の訴訟(商標権移転登録手続請求事件)において、本件商標登録出願当時の被請求人には大山倍達が設立した財団法人極真奨学会の筆頭理事格の理事が後見人として補佐しており、極真奨学会名義の商標権にかかわる移転登録手続はその後見人と連帯的に行ったものである旨が判示されたため、ここにその判決を提出するとともに、改めて本件商標「極真会館」の登録出願が被請求人の個人的な利益のためにされたものではないことを以下に述べるものである。
まず、提出する判決は、本件商標及び本件商標と同一の商標「極真会館」(登録第4027346号)の両商標権を含む商標権移転登録手続請求事件における第一審判決(平成16年(ワ)第23624号、東京地裁平成18年7月27日判決:乙第3号証)及びその控訴審判決(平成18年(ネ)10070号、知財高裁平成19年9月27日判決:乙第4号証)である。
上記の商標権移転登録手続請求事件は、大山倍達が設立した極真奨学会が、本無効審判の被請求人に対して、被請求人名義で登録されている極真関連商標(乙第3号証の別紙登録商標目録1ないし29の各商標)についてそれらの商標権を極真奨学会へ移転登録手続するよう求めた事件である。
この事件は、本無効審判の請求人が本件商標を無効とする根拠の甲第14号証に引用されているものであって、この事件の第一審で被請求人が個人名義に移転登録した極真奨学会名義の登録商標について元の極真奨学会名義に戻すべき旨の判決が言い渡されていたことから、被請求人による本件商標「極真会館」を含む極真関連登録商標の登録出願は、当時の極真会館のためにされたというよりも、もっぱら、被請求人の個人的な利益のためにされたと推認するのが相当であるとの結論を導き出す理由の一つとされていた(甲第14号証の第37ないし38頁及び第43頁)。
しかしながら、この事件の控訴審(乙第4号証)では、被請求人が個人名義に移転登録した極真奨学会名義の登録商標の譲渡は真正に成立したものと認められ、極真奨学会の訴えは棄却された結果となっている。
すなわち、上記の控訴審では、被請求人は大山倍達死亡当時31歳で若輩であり、極真奨学会の筆頭理事格の後見人「C」がこれを補佐し、被請求人はその「C」に促されたことにより大山倍達の後継者となることを受諾した、また「C」は大山倍達氏の後継者としての被請求人の立場が不安定であることを感じ取り極真会館が分裂した場合などの対策も検討していたものと推認されるとし、「C」が極真商標について被請求人の名義で保有した方がよいと考えるに至ったとすることが自然であり、かつ控訴審における「G」弁護士の証言により、極真商標の移転登録申請は被請求人とともに「C」からもたらされたものと認めることができると判示されたものである(乙第4号証の第32ないし41頁)。
これはすなわち、本件商標登録出願当時(平成6年当時)、被請求人は独断で極真会館の一切の事を運んでいたのではなく、極真会館の館長という最高責任者としての肩書きを有していたものの、事実上は後見人とされる「C」の主導のもとに極真会館の業務に携わっていたといえるものである。
なお、上記の第一審判決では、極真会館が使用している周知ないし著名商標のうち未登録の商標あるいは登録後に失効したものについて、被請求人は極真会館の館長としての立場に基づいて、その被請求人個人名で出願し、登録を得ることが法人格なき社団である極真会館に対しその代表者として負担する善良な管理者としての注意義務の範囲内のものであると認められていた(乙第3号証の第40頁及び第44ないし45頁)。この点については控訴審でも覆らず、極真奨学会の訴えは棄却されている(乙第4号証の第41ないし46頁)。
以上の事実をもってすれば、被請求人に対しては、本件商標「極真会館」の登録出願行為が個人の利益を図る目的でされたものではないということが明らかとなったものであるから、たとえ請求人が本件商標を無効とする根拠とした甲第14号証における無効審決が最高裁判所において判決が確定していたとしても、それはあくまでも本件商標が個人の利益を図る目的でされたと推認されたにずぎず、被請求人による本件商標の登録出願行為には不正の目的は一切ないことは上述のとおりであるから、請求人の主張には理由がない。
3 結語
以上述べたように、第1に請求人には請求人適格が認められないこと、第2に被請求人による本件商標における出願行為に不正の目的はないことが明らかになったのであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではなく、商標法第46条1項の規定によりその登録を無効とすることはできない。
なお、最後に、本無効審判の審理を口頭審理とされることを懇請する。
被請求人は本件商標「極真会館」について、生前の大山倍達から認可を受けた門弟の一人としてこの商標を使用する権利を有しており、かつ実際に現在に至るまで本件商標について使用を継続している。したがって、本無効審判において本件商標権が無効にされても、被請求人が本件商標の使用を継続できることについては全く問題がないと考えており、この点からすれば本件商標権の有効性を争う必要性は全くない。一方、門弟でもない第三者による不当な極真商標の使用を排除するためには、極真商標の適切な権利保護が必要と考えており、これについては請求人においても同様であると考える。そこで、請求人との間においても極真商標の適切な権利保護に関して話し合いの場を共有すべき状況にあるといえ、本件の審理にあたっては両者の意思確認がより容易な口頭審理を被請求人側より望むものである。

第4 当審の判断
本件商標は、「極真会館」の文字を横書きし、第25類「運動用特殊衣服,被服」等を指定商品とするところ、請求人は、被請求人(文章圭)による本件商標の登録出願の不当性を述べて、その登録は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであると主張しているので、以下判断する。
1 審決及び判決を含む甲各号証及び乙各号証によれば、以下の事実関係を認めることができる。
(1)大山倍達の活動と極真会館の組織等について
(ア)大山倍達は、直接打撃制を特徴とする極真空手と呼ばれる空手の流派の創始者であり、昭和39年に同空手に関する団体として極真会館を創設し、館長又は総裁と称された。その設立後にあって、組織やその運営に関する定めが「極真会館国内支部規約」等の形で規定されたが法人格を取得することはなく、かつ、同規定中にはその代表者である館長ないし総裁の地位の決定や承継等に関する規定はなかった。
そして、組織運営の具体的な場面においては、創設者であり死亡時まで一貫して代表者であった大山倍達の個人的な判断にゆだねられる部分が多く、同人が強い影響力をもって団体全体を統率していた。
また、大山倍達は、「財団法人極真奨学会」(昭和17年1月21日に育英及び学術研究の助成を目的として設立された財団法人:以下「極真奨学会」という。)の運営権を取得し、極真会館が各種の昇段状や賞状を発行する際の権威付けなどのためにその名称を使用していた。この極真奨学会の組織や活動についての最終的な決定権も大山倍達の個人的な判断にゆだねられていた。
(イ)極真会館は、大山倍達の下で規模を拡大していき、世界各地に多数の支部等を置くほか、国内においても、総本部のほか全国各地に支部を置いた。支部はそれぞれ担当する地区が定められており、大山倍達によって任命された支部長が各担当の地区において道場を開設し極真空手の教授を行っていた。極真空手を学ぶ者は、本部直轄道場や各支部の道場に入門して極真会館の会員となり道場生としてその教授を受けた。
大山倍達が死亡した平成6年4月当時、極真会館は、日本国内において、総本部、関西総本部のほか55支部、550道場、会員数50万人を有し、世界130か国、会員数1200万人を越える規模となっていたとする。
極真会館は、毎年、全日本空手道選手権大会及び全日本ウェイト制空手道選手権大会と呼ばれる極真空手の大会を開くと共に、4年に一度、全世界空手道選手権大会と呼ばれる極真空手の大会を開催していた。
大山倍達及び極真会館の支部長らは、極真会館及び極真空手を示す標章として、「極真会館」、「極真会」及び円形の内部を図案化したマーク等各種の極真関連標章を空手の教授の際に使用するほか、極真会館が開催する空手大会の開催等にも、極真関連標章を使用していた。
そして、前記のような極真会館の規模の大きさやその活発な活動から、大山倍達が死亡した平成6年4月時点においては、本件商標を含む極真関連標章は、少なくとも空手及び格闘技に興味を持つ者の間では、大山倍達の極真会館というまとまった一つの団体を出所として表示する標章として広く知られていた。
(ウ)極真会館の支部長は、極真会館が開催する大会に選手を派遣するなど、大会の運営に協力する義務、極真会館の総本部に会費等を納める義務、支部長会議に出席する義務等を負っていた。また、支部長は、担当地区内に道場を開設して極真空手に入門した道場生に対し、その教授を行い級位や初段の段位を与えることができ、担当地区内に分支部を設けることができた。
そして、支部長は支部規約上、極真会館を表示する標章を無断で使用することを禁止されていたが、極真会館及び極真空手を示す標章として、「極真会館」、「極真会」及び円形の内部を図案化したマーク等各種の極真関連標章を極真会館の活動趣旨に沿う限り道場等において、その教授等に際し極真関連標章を自由に使用することができた。
(2)被請求人(松井章圭こと文章圭)の地位について
被請求人は、昭和38年1月生まれで、同51年に極真会館に入門して以降、昭和60年及び同61年の全日本選手権では優勝し、同61年には極真空手において極限の荒行とされる100人組手を完遂し、さらに同62年の全世界空手道選手権大会で優勝した。被請求人は、極真会館の歴史の中で格闘技術に優れた選手の一人であり、極真会館が主催する空手の各種大会において、審判員、模範演技や大会運営委員会の支部長代行委員などの職務を務め、世界20か国余りの道場に指導員として訪れ、大山倍達の名代として、ネパールの王室に空手の演舞を献上した。
さらに、被請求人は、大山倍達から、極真会館の新会館建設の建設委員会第2次建設委員長に任命され、黒帯研究会の指導を任され、平成4年に、大山倍達から支部長として任命され、本部直轄浅草道場を開設した。大山倍達の死亡時においては支部長であったが、支部長の中では31歳と年齢的に若く支部長としての経歴も短かった。
(3)大山倍達の死亡と被請求人の館長就任について
(ア)大山倍達は、平成6年4月26日に死亡したが、入院中であった同月19日付で同人の危急時遺言が作成された。危急時遺言は、大山倍達の病室において、弁護士である米津、外4名の証人の立会の下に死亡危急時遺言の方式により作成されたものである。
危急時遺言には、極真会館、国際空手道連盟の大山倍達の後継者を被請求人と定めること、極真会館、国際空手道連盟を一体として財団法人化を図ること、この法人化には日時を要するので、その間は極真奨学会を拡充化するとともに、可能であれば極真奨学会が極真会館、国際空手道連盟を吸収することもよいこと、極真会館の本部直轄道場責任者、各支部長及び各分支部長らは被請求人に協力すべきこと並びに大山倍達の相続人は極真会館に一切関与しないこと等が記載されていた。
なお、大山倍達は、生前、極真会館に属する者たちに対し自己の死後における極真会館の代表者をだれにするかについて公開の場で公式に示したということはなかった。
(イ)大山倍達の葬儀は、極真会館葬として平成6年4月27日に行われ、出棺の際、危急時遺言の証人の一人である梅田から、大山倍達が遺言で被請求人を後継館長に指名した旨の発表がされ、同日開催された支部長らの集まりにおいても、梅田から危急時遺言の内容についての説明がされ、被請求人は、自ら後継館長に就任する意思を明らかにした。その後、同年5月10日に開催された支部長会議において、全員一致で被請求人の館長就任が承認された。
(ウ)危急時遺言の証人の一人である弁護士の米津は、平成6年5月9日、東京家庭裁判所に対し、危急時遺言の確認を求める審判申立てをしたが、大山倍達の遺族らは、同遺言に疑義を表明して争った。上記審判申立てに対して、同裁判所は、平成7年3月31日、梅田は証人欠格事由に該当するにもかかわらず、証人として立ち会い、遺言内容の決定に深く関わったのであるから、方式遵守の違反があること、危急時遺言は、証人となった5人が、当時、病状の進行により体力、気力ともに衰えた遺言者(大山倍達)を2日間という長期間に亘り、証人らと利害の対立する立場にある家族を排除して証人らで取り囲むような状況の下で作成されたものであり、遺言者が遺言事項につき自由な判断のもとに内容を決定したものか否かにつき疑問が強く残り、遺言者の真意に出たものと確認することが困難であることを理由として、これを却下した。
上記決定に対して、米津は東京高等裁判所に抗告したが、東京高等裁判所は、平成8年10月16日、上記とほぼ同様の理由により抗告を棄却し、平成9年3月17日、最高裁判所も、特別抗告を却下した。
(4)被請求人と極真関連標章の出願等について
(ア)極真関連標章の商標登録については、大山倍達生前に財団法人極真奨学会により、「極真会館」(昭和51年3月4日出願、平成3年政令第299号による改正前の第24類、登録第1421312号)の商標、「極真会」の文字を筆字によって縦書きにした(昭和51年3月4日出願、平成3年政令第299号による改正前の第24類、登録第1443462号)商標、及び円形の内部を図案化したマークから構成される(昭和51年5月14日出願、平成3年政令第299号による改正前の第24類、登録第1491281号)商標、円形の内部を図案化したマークから構成される登録第1706007号商標ないし登録第1706009号商標(いずれも昭和51年5月14日出願、平成3年政令第299号による改正前の第24類)等を登録出願し登録がされ、これら登録商標のうち更新登録がなされず大山倍達の死亡時までには登録が抹消されているものがあり、また、登録第1706007号商標ないし登録第1706009号商標については、大山倍達の死亡時にはその商標登録は抹消されていなかったところ、被請求人は、平成6年6月1日譲渡を原因として、自己名義への移転登録手続をした。
(イ)被請求人は、平成6年5月10日に支部長会議において館長就任が承認された後の同年5月18日に、「極真会」商標、「極真会館」商標、「KYOKUSHIN」商標及び円形の内部を図案化したマーク各種などを第25類と第41類に、また、平成7年2月20日に、「極真空手/KYOKUSHIN KARATE」の文字からなる商標を第41類に商標登録出願をしている。
そして、第41類に出願された「極真会」、「KYOKUSHIN」及び「極真会館」の商標については、平成9年7月11日に、第25類に出願された「KYOKUSHIN」の商標については、平成9年8月1日に、第25類に出願された「極真会」の商標については、平成10年10月9日に、それぞれ商標登録され、また、「極真空手/KYOKUSHIN KARATE」の文字からなる商標については、平成9年8月8日に商標登録されている。
(ウ)被請求人は、これらの極真関連標章を出願し登録した経緯について、甲第9号証(格闘技通信)の中で次のように述べている。
「…極真会という商標権、またあの極真のマークですね、…すべて私の個人名で登録されているという部分で支部長たちがおっしゃったようですけども、それに関してですね、実際問題私、実際それらの登記は私の個人名となっております。というのは、一つの理由として極真会館は任意の団体であって、法的にいうと、大山倍達による一心専属的な団体であると…総裁が残された遺言の遺志を継ぐということで、私まぁ、立っている訳ですが、…遺言が認められないんじゃないかという疑惑があれば、それは私が立つ理由は一つもないです。…遺志を継ぐ形で私が立ったわけです。その責任上、私が個人名で登録させていただいたと、これは将来的にはもちろん私個人のプライベートで所有するものではありませんから…社団法人なり財団法人なり、公益法人ができれば、速やかにそちらに移します。…それから、極真会館という商標権を個人で登録すると言ったときに、支部長たちに確認をとらなかったことに端を発して独断専行と、またはそのもっと言えば独裁というような形で物事を言われているようです。…ただ、それは時間的にもですね、もちろん情報は取り合いながら、意思の疎通を計りながらという部分でやるのは筋だと思いますけど、緊急の事項もいろいろな形でありますから、そのときは私の館長としての、職務の中でまた負った責務の中でですね、責任をもって物事を決定して進めてきたという部分があるわけです。…」
(5)極真会館の分裂について
大山倍達の死亡により、平成6年5月10日に開催された支部長会議において、全員一致で被請求人の館長就任が承認されたが、大山倍達の遺族らは、危急時遺言に疑義を表明して争い、危急時遺言の確認を求める審判申立ての却下が確定するに及んで、極真会館は、松井(章圭)派、遺族派及び支部長協議会派の3派に分裂した。
(ア)この間の事情は、甲第9号証(格闘技通信)によれば、「松井館長・解任?極真お家騒動一部始終」の見出しの下に、「昨年4月26日、国際空手道連盟・極真会館の創始者であり、総裁であった大山倍達が肺がんによる呼吸不全のため死去してから、まもなく一年が経とうとしているが、ここに来てお家騒動がさらに激化していった」と記載されており、各派の記者会見等の内容が要旨次のように掲載されている。
(a)大山倍達の未亡人である大山智弥子は、大山倍達の死亡後の一連の流れが松井一派による極真会館の乗っ取り工作であると主張し、平成7年2月15日、自ら極真会館二代目館長を襲名することを宣言するとともに、被請求人によって破門されていた高木薫ら5人の支部長と共に遺族派を結成した。同年4月13日には、大山智弥子と次女大山恵喜が記者会見し、東京家庭裁判所の決定内容等について説明した。
(b)一方、平成6年5月10日の支部長会議において被請求人の館長就任を承認した支部長の中にも被請求人に対して反感を持つ者が多数おり、平成7年4月5日に、臨時の支部長会議が開催され、極真会の私物化、独断専行、不透明な経理処理の3点に加えて、支部長会議に諮ることもなく「極真会」の名称やマークを被請求人個人で商標登録したこと等を理由に、同支部長会議において、賛成35名、反対3名、欠席10名により、被請求人の館長解任が決議され、同日、支部長協議会派は、記者会見を行い、支部長協議会議長を中心に極真会館を運営する旨発表した。
(c)これに対し、被請求人及び同人を支持する支部長らは、平成7年4月6日、記者らと懇談し、大山倍達が決めたものを支部長会議で覆すことはできず、解任決議は効力がない旨反論し、被請求人が引き続き極真会館の館長の地位にあると宣言した。
(イ)請求人は、甲第12号証(平成7年7月11日付「お知らせ」)及び甲第13号証(平成7年7月14日付「極真会館全国支部長協議会の文書」)を提出している。甲第12号証は、国際空手道連盟・極真会館/館長大山智弥子名で、「大山倍達の死去後の松井章圭(被請求人)の行為、危急時遺言についての家裁の決定、今後の方針」等について、関係者に配布した「お知らせ」と題する文書であり、甲第13号証は、該お知らせに対して、極真会館全国支部長協議会議長西田幸夫ら28名の支部長らが大山智弥子を支持する旨の文書であり、この二代目館長たる大山智弥子の主張は、三代目館長である大山喜久子の主張でもある旨述べている。
(ウ)上記各派は、いずれも自派が極真空手を正当に承継するものであるとして、極真会館を名乗って道場の運営を行い、従前、極真会館が行っていたのと同一名称の極真空手の大会を開催するなどした。
その後、平成13年12月には、遺族派の一部、支部長協議会派の一部等が極真連合会と称する団体を組織したり、平成15年11月には、松井派の支部長の一部が松井派から脱退し、新たに極真館と称する組織を発足させたりした。
現在においても、大山倍達生前の極真会館における支部長等は、各派に分かれ、それぞれが、本部、支部等を設け、道場で極真空手の教授等を行ったり、極真空手の大会を開催したりしており、大山倍達生前の極真会館というまとまった一つの団体は、これと同一性を有しない複数の団体に分かれた状態である。被請求人は、現在もその中の一つの団体である松井派の代表者であり、極真会館の館長の地位にあると主張している。
(6)極真関連標章を巡る紛争について
(ア)甲第10号証及び甲第11号証によれば、被請求人は、平成11年ないし平成12年に、極真関連標章の商標権に基づき、NTTに対し、極真関連標章を使用した広告の掲載の禁止を申し入れたため、大石代悟支部長らは、NTTが平成13年度に発行したタウンページに掲載する広告に極真関連標章を使用することができなくなり、その結果、大阪地裁においては、岡田幸雄ら5名を原告として、また、東京地裁においては大石代悟ら5名を原告として、いずれも被請求人を被告として、商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求事件が提起された。それらの仮処分及び訴訟は、和解により終了したものもあるが、大阪地裁における商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求訴訟(同庁平成14年(ワ)第1018号事件:甲第10号証)、その控訴審(大阪高裁平成15年(ネ)第3283号事件)及び東京地裁における商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求訴訟(同庁平成14年(ワ)第16786号事件:甲第11号証)においては、被請求人が商標権を有する合計8件の極真関連標章について、差止請求権を有しないことの確認が求められていたところ、上記各事件の判決において、被請求人は、極真会館の一分派の代表者であり、同じく極真会館の分派に属する者に対して、極真関連標章の使用を禁止することは権利の濫用であるなどと判断され、差止請求権の不存在が確認された。
(イ)また、大山倍達の死亡後に極真奨学会名義から被請求人名義に移転登録された登録第1706007号商標ないし登録第1706009号商標、被請求人が出願し登録された「極真会館」の文字を商標とする本件商標及び請求人が引用する無効審判事件にかかる登録第4027346号商標を含む極真関連標章29件についての極真奨学会と被請求人との間の商標権移転登録手続請求訴訟事件(東京地裁平成16年(ワ)第23624号事件:乙第3号証)では、上記3件の移転登録申請における譲渡証書の作成の真正が認められないとして、極真奨学会への移転登録手続を命じる第1審判決が言い渡されたが、その余については「ところで、被告の行った本件各商標権の申請は、個人としての被告の立場ではなく、極真会館が法人格なき社団であり、商標権者となり得ないことを考慮して、極真会館のために行われたものであることは、被告も認めるところである。…また、本件においては、亡大山倍達の危急時遺言の遺志を尊重すれば、財団である極真奨学会名義を用いて商標登録出願する方法がより望ましい方法であったと考えられるものの、極真奨学会が休眠化してから数年来経過していたこと…これを極真奨学会の登録名義とすべき義務を負うとまで解することはできない。」等述べてその余の請求をいずれも棄却した。
そして、その控訴審(知財高裁平成18年(ネ)第10070号事件:乙第4号証)において、上記3件の譲渡証書は、筆頭理事格であった梅田が平成6年当時の極真奨学会理事長に対し了解を得たものと推認し、真正に成立したものとされ、その移転登録申請の依頼は、被請求人とともに梅田からもされたものと認めることができるとして、一審の敗訴部分が取り消された。
2 以上で認定した、大山倍達死亡前後の一連の経緯及び事実を総合してみれば、大山倍達が死亡した平成6年4月当時、極真会館は、日本国内において、総本部、関西総本部のほか55支部、550道場、会員数50万人を有し、世界130か国、会員数1200万人を越える規模となっていたところ、「極真会館」、「極真会」及び円形の内部を図案化したマーク等各種の極真関連標章を空手の教授の際に使用するほか、極真会館が開催する空手大会の開催等にも、極真関連標章を使用していた。
そして、このような極真会館の規模の大きさやその活発な活動から、大山倍達が死亡した平成6年4月時点においては、本件商標を含む極真関連標章は、少なくとも空手及び格闘技に興味を持つ者の間では、大山倍達の極真会館というまとまった一つの団体の出所を表示する標章として広く知られるに至っていたことが認められ、それは大山倍達と大山倍達生前の極真会館に属する各構成員の努力により、極真会館及び極真空手を全国に普及し、発展させた結果であるから、極真関連標章が表示する出所は、一つの団体としての極真会館であることは明らかである。
してみると、大山倍達及び同人から任命を受けた支部長らによる永年の努力による信用等が化体されている「極真会館」、「極真会」及び円形の内部を図案化したマーク等各種の極真関連標章にかかる権利は、極真会館に所属する支部長ら構成員によって、共有的ないし総有的に管理・使用されるものと解するのが相当であるといえる。
しかして、被請求人による本件商標の登録出願は、大山倍達生前の極真会館という膨大な構成員からなる規模の大きなまとまった一つの団体を出所として表示するものとして広く知られていた標章について、大山倍達の死亡時から間もない当時の代表者である被請求人が個人名義(大山倍達生前には、個人名義とせず極真奨学会により出願し登録した。)でしたものであるが、その登録出願は、極真会館のために、これが法人化されるまでの保全的な措置としてのものであり、しかも、被請求人の館長就任が承認される前提となった危急時遺言が有効なものであり、かつ、極真会館の運営及び極真関連標章に係る商標権の管理が極真会館関係者の間において、平穏裡に行われていた場合に限られるというべきである。
しかしながら、危急時遺言の確認を求める審判申立てを却下する決定が確定したことにより、被請求人が極真会館の代表者たる館長の地位にあることの最大の前提は崩れたものといわなければならないし、一旦は館長就任を承認した支部長会議は、その後、被請求人の館長解任を決議している。
しかも、危急時遺言の確認を求める申立てが却下された理由は、単に、証人の中に欠格事由のある者がいたという方式遵守違反を理由にするばかりでなく、遺言者が遺言事項につき自由な判断のもとに内容を決定したものか否かにつき疑問が強く残り、遺言者の真意に出たものと確認することが困難であるという理由から却下されたものであり、このことが意味するところは、大きいものといわなければならない。
そして、極真会館は、大山倍達が強い影響力をもって団体全体を統率していたが、その死後に、複数の団体に分裂し、また、被請求人を被告とする本件審判請求や他の商標登録無効審判請求事件、商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求事件、商標権移転登録手続請求訴訟事件等が提起され、極真関連標章について支部長ら、極真奨学会、遺族との間で紛争が生じている。
そうとすれば、被請求人の館長就任が承認される前提となった危急時遺言の確認を求める申立てが却下された事実と極真会館の分裂に至る経緯及び被請求人による極真関連標章の商標権の行使により、他会派に属する支部長らの業務に支障が生じている事実をも併せ考慮すると、被請求人による極真関連標章についての登録の有効性は認め難いばかりでなく、被請求人は、極真関連標章を出願する際には、既に、極真会館分裂の可能性をも予見して、将来生ずるであろう各派の対立関係を自己に有利に解決する意図をもって、本件商標をはじめとする極真関連標章の登録出願をしたものと推認せざるを得ない。
してみれば、このような事実関係の下においてなされた本件商標の登録は、公正な取引秩序を害し、公序良俗に反するものといわなければならない。
3 被請求人の主な主張について
(1)請求人適格について
被請求人は、請求人の出願にかかる商標登録出願(商願2004-94602号)を行っている事実を鑑みれば、請求人が本件無効審判を請求することについて法的利害関係を有しているとみることはできるとしつつ、請求人は大山倍達の遺族であるとしても、本件商標「極真会館」の周知性の確立に関してはもとより関与しておらず、大山倍達生前の事業について実質的同一性をもって継続している事実はないのであるから、請求人は商標法第4条第1項第10号にいう「他人」に該当するということができる旨述べて、請求人に本件無効審判の請求人適格を認めるべきではないと主張している。
しかしながら、請求人は、現に、自己の商標登録出願(商願2004-94602号)に対して、本件商標を引用した拒絶理由の通知を受けており、本件商標の存在により不利益を被っているのであるから、その登録の無効を求める本件審判請求について、法律上の利害関係を有していると認められる。このことは、請求人が、商標法第4条第1項第10号にいう「他人」に該当するか否かに係わらないことである。
したがって、被請求人の上記主張は採用することができない。
(2)被請求人による本件商標における出願行為の正当性について
被請求人は、本件商標の登録出願が被請求人の個人的な利益のためにされたものではないことを、本件商標及び請求人が本件審判請求に引用する無効審判請求事件に係る登録商標を含む極真関連標章29件についての商標権移転登録手続請求訴訟事件(東京地裁平成16年(ワ)第23624号事件:乙第3号証、知財高裁平成18年(ネ)第10070号事件:乙第4号証)を引用して、当該判決により、被請求人に対しては、本件商標「極真会館」の登録出願行為が個人の利益を図る目的でされたものではないということが明らかとなったものであるから、たとえ請求人が本件商標を無効とする根拠とした甲第14号証における無効審決が最高裁判所において判決が確定していたとしても、それはあくまでも本件商標が個人の利益を図る目的でされたと推認されたにずぎず、被請求人による本件商標の登録出願行為には不正の目的は一切ないから、請求人の主張には理由がない旨主張する。
確かに、当該商標権移転登録手続請求訴訟事件において、本件商標登録出願当時の被請求人には、大山倍達が設立した極真奨学会の筆頭理事格の梅田が後見人として補佐し、極真奨学会名義の商標権にかかわる移転登録手続はその後見人と連帯的に行ったものである旨が示されたことを認めることができる。
しかしながら、当該商標権移転登録手続請求訴訟事件は、本件商標をはじめとする極真関連標章について、極真奨学会名義で出願すべき義務やこれに違反して登録された各商標権を極真奨学会に移転登録すべき契約が締結された事実は認められない旨判断されて、その請求はいずれも棄却されたものであること以上には、被請求人に対して、極真関連標章についての商標登録出願行為が個人の利益を図る目的でされたものではないということを断定し判示したものと解することはできない。
そして、本件商標の登録出願当時(平成6年当時)に後見人とされる梅田の関与があるものとしても、被請求人自身に、極真関連標章を商標登録出願する際において、極真会館分裂の可能性をも予見して、将来生ずるであろう各派の対立関係を自己に有利に解決する意図をもって、出願をしたものでないことを確証させるような証拠は見出せない。
また、上記1(5)及び2において認定、判断したように、平成6年5月10日の支部長会議における館長就任を承認に反感を持つ者が多数おり、同7年4月5日の臨時支部長会議において、賛成35名、反対3名、欠席10名により、被請求人の館長解任が決議されされたこと、大山倍達の未亡人である大山智弥子が、平成7年2月15日に自ら極真会館二代目館長を襲名することを宣言したこと、及び被請求人の館長就任を承認する前提となった危急時遺言の確認を求める審判申立てを却下する決定が確定したことなど、大山倍達生前の極真会館というまとまった一つの団体を承継し、その代表者としての館長であると主張している根拠は喪失したものというべきである。そして、他に、被請求人をこれと同一性を有する極真会館の後継館長と認めるに足りる証拠は提出されていない。
したがって、被請求人の主張をもって上記2おける認定、判断を左右することはできず、その主張は採用できない。
(3)口頭審理の求めについて
被請求人は、同人の本件商標の使用の継続について、及び第三者による不当な極真商標の使用を排除するため極真商標の適切な権利保護の必要性について請求人との間において話し合いの場を共有すべき状況にあり、本件の審理にあたっては両者の意思確認がより容易な口頭審理を被請求人側より望むものである、と述べている。
しかしながら、本件商標の使用の継続について、大阪地裁における商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求訴訟(同庁平成14年(ワ)第1018号事件:甲第10号証)、その控訴審(大阪高裁平成15年(ネ)第3283号事件)及び東京地裁における商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求訴訟(同庁平成14年(ワ)第16786号事件:甲第11号証)に照らしてみれば、被請求人は、極真会館の一分派の代表者であり、同じく極真会館の分派に属する者に対して、極真関連標章の使用を禁止することは権利の濫用であり、差止請求権の不存在が確認されたことは前述のとおりである。
そして、本件無効審判事件は、本件商標が公正な取引秩序を害し公序良俗に反するものであるか否か、すなわち、登録の無効事由が存在するか否かを審理する局面であるところ、被請求人の本件商標の使用の継続や第三者による不当な極真商標の使用に対して、請求人との話し合いの場を共有すべきことは、本件無効審判事件外の場で行われるべきことであり、本件無効審判事件において直接的に審理すべき事項とはいい難いから、その口頭審理の必要性は認められない。
4 まとめ
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-08-27 
結審通知日 2008-09-05 
審決日 2008-09-19 
出願番号 商願平6-48933 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 伊藤 三男
岩崎 良子
登録日 1999-01-08 
登録番号 商標登録第3371034号(T3371034) 
商標の称呼 キョクシンカイカン 
代理人 吉田 研二 
代理人 石田 純 
代理人 首藤 俊一 

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