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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200628695 審決 商標
不服20058568 審決 商標
審判199710093 審決 商標
不服20021816 審決 商標
不服200220947 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない Y0942
管理番号 1185983 
審判番号 不服2007-11321 
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-19 
確定日 2008-09-16 
事件の表示 商願2006- 2252拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「TECHNOLOGY FOR A HEALTHY WORLD」の欧文字を標準文字で表してなり、第9類及び第42類の願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2005年7月14日アメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成18年1月16日に登録出願され、その後、指定商品及び指定役務については、原審における同年9月25日付提出の手続補正書により、第9類「コンピュータソフトウェア,電子応用機械器具及びその部品」及び第42類「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),臨床研究を行うために使用されるコンピュータソフトウェアの貸与,臨床研究のために使用されるコンピュータソフトウェアの提供」の商品及び役務に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は『TECHNOLOGY FOR A HEALTHY WORLD』の標準文字を書してなるものであり、容易に『健康な世界のための科学技術』の意味合いをもって理解されるものと認める。そして、その指定役務との関係では、これらが健康を目標とした研究に資するものであることは容易に想定できるところであり、比較的平易な英語で記述的に表示してなる本願商標をその指定商品・指定役務に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、会社としての理念若しくは商品・役務の果たすべき究極的な目標を記述的に表現した宣伝文句・キャッチフレーズと理解するにすぎず、自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得ないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
本願商標は、上記第1のとおり、「TECHNOLOGY FOR A HEALTHY WORLD」の欧文字を横書きしてなるところ、構成中の「TECHNOLOGY」の語は、「技術、工業技術、テクノロジー」、「HEALTHY」の語は、「健康な、健全な」、「WORLD」の語は「世界、地球」などをそれぞれ意味する英語であり、我が国における近時の英語教育の普及程度からすれば、その他の構成文字を含め、本願商標を構成する各語はいずれも比較的親しまれた英単語といえるものであるから、全体として「健康な世界のための技術」という意味合いを理解し得るものである。
ところで、企業においては、その取り扱う商品や役務、企業のイメージに関して需要者等に親しみや好感、信頼感などの良い印象を抱いてもらえる日常的に心掛けているといえるところ、その一手段として、標語(キャッチフレーズ)などを採択し、それらを通して商品、役務の広告、宣伝や企業イメージの向上に努めているのが実情といえる。そして、これらの中には、端的な宣伝文句のほか、商品や役務並びに企業のイメージの向上を目的とした観念的、抽象的表現もしばしば採択されているところである。
そこで、これを本願指定役務と関連深い医療関連を取り扱う業界についてみると、世界的に「健康な世界」或いは「世界の健康」への取り組みが行われている実情があり、その取り組みに伴って、関連事業を行う企業が「健康な世界」「世界の健康」を目指して、それを企業理念として掲げていることが、以下の新聞記事情報、インターネット情報の掲載例により窺い知ることができるものである。(下線は審判官による。)
1 世界的な「健康な世界」あるいは「世界の健康」への取り組みについて
(1)新聞記事情報
(ア)「IFPMA総会 スイスで11日に開幕、青木会長らが参加」の見だしのもと,「第23回IFPMA(国際製薬団体連合会)総会が10月11,12日の両日、スイス・ジュネーブで開催される。総会のメーンテーマは『Working Together for a HealthierWorld(より健康な世界に向けた共同の取り組み)』。WHO(世界保健機関)やWTO(世界貿易機関)などの国際機関の代表者を招き、各国の製薬企業・団体の代表者との討論が行われる。」との記載(2006.10.2 日刊薬業 4頁)。
(イ)「WHO、ゲノム研究で報告書、新種ワクチン開発が進展」の見だしのもと,「世界保健機構(WHO)は、ゲノム研究の影響をグローバルな視点でとらえた初めての『ゲノム学と世界の健康』と題する報告書をまとめた。それによると、近い将来、遺伝子研究がマラリア、結核、エイズなどの致命率の高い伝染病疾患に対し、治療法の進歩をもたらし、発展途上国の数百万の命を救える可能性があるとの見通しを示している。」との記載(2002.6.10 化学工業日報 8頁)。
(ウ)「製薬工業協会、熱帯病対策の解説書の日本語版を発行」の見出しのもと,「日本製薬工業協会(製薬協)は、世界保健機関(WHO)が進めてきた熱帯病対策に関する解説書の日本語版を発行した。『熱帯病研究 1990年』『TDR,より健康な世界のための科学』の2種類。WHOは、76年に『国連熱帯医学特別計画(TDR)』という新組織・プログラムを確立、世界135ヵ国から5000名の研究員を動員して、マラリア、住血
吸虫症、フィラリア症、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、ハンセン氏病の6種の熱帯病の新治療法の開発を進めている。2種類の小冊子は、その活動の状況、疾病の伝播、臨床症状、予防および治療、TDRの優先研究事項を解説したもの。」との記載(1991.2.21 化学工業日報 9頁)
(エ)「WHO拠出金、日本が大幅増 総会で吉原代表が表明」の見出しのもと,「【ジュネーブ九日=谷口一郎特派員】吉原健二厚生事務次官は九日、ジュネーブで開催中の世界保健機関(WHO)年次総会で日本政府を代表して演説、WHOへの日本の任意拠出金を大幅に増額する意向を明らかにした。吉原次官は、『西暦二〇〇〇年までにすべての人に健康を』を目標にWHOが推進している健康世界戦略に日本が最大限の貢献を果たす決意を表明、任意拠出金増額はその一環であると述べた。」との記載(1989.5.10 読売新聞 東京朝刊)
(2)インターネット情報
(ア)「疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)資料出所:NIOSHホームページ(仮訳 国際安全衛生センター)」の見だしのもと,「CDCについて、疾病対策予防センターは、国内外における人々の健康と安全の保護を主導する立場にある連邦機関であり、健康に関する種々の決定の根拠となる信頼できる情報の提供と、強力なパートナーシップを通じた健康の増進の任にあたっている。・・・21世紀ヘ向けたCDCのビジョン 健康な世界の中の健康な人々?予防を通じて(Healthy People in a Healthy World-Through Prevention)人々をより安全で健康にするために、CDCは全力で取り組んでいる。断固たる行動方針を示し、正確な情報を収集し、他の保健関連機関・地域の諸組織と密接に協力することで、CDCは1946年以来、健康に関わる重要な問題への対処に科学的知識を投じてきた。」との記載(国際安全衛生センターのホームページ(http://www.jicosh.gr.jp/japanese/country/usa/ministry/niosh/aboutcdc.html))
(イ)「平成18年度先端健康バイオ産業創出技術調査報告書 平成19年3月 財団法人バイオインダストリー協会」の見だしのもと,「第1章 バイオ産業に関する国際動向/1. 第2回 Pacific Health Summit参加報告/(1)第2回Pacific Health Summitの概要/i)目的 先進国、発展途上国共に、高齢化等に伴う肥満等の生活習慣病、がん等の疾病の増加が課題になっている。このPacific Health Summitではこれらの疾病に対処する制度作りや早期発見・診断技術の開発を主な目標としている。・・・2005年度のテーマは『科学、革新、そして健康の未来』であったが、2006年度のテーマは『健康な世界を作るための技術、革新、政策の融合』とされている。」との記載(財団法人バイオインダストリー協会のホームページ(http://www.jba.or.jp/report/thinktank/document/H18bio_hokoku.pdf))。
2 医療関連業界における企業理念について
(1)新聞記事情報
(ア)「【アイズ・アイ】危機管理/コンプライアンス ヤクルト本社のCSR活動」の見だしのもと,「食品、医薬品、化粧品を事業の3本柱とするヤクルト本社は、『生命科学の追求を基盤とし、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献する』を企業理念に掲げてグローバルに事業展開している。」との記載(2007.7.2 FujiSankei Business i.20頁 メディア産業 BTV)。
(イ)「大塚製薬、コーポレートシンボルを導入、世界の健康に貢献」の見だしのもと,「大塚製薬(株)(東京都港区、03・6717・1400)は6月26日から、事業のグローバリゼーションの進展に伴い、企業理念を表した新コーポレートシンボルを導入した。『世界の人々の健康に貢献するという企業理念のさらなる実現に邁進したい』(樋口達夫社長)という思いを込めた。」との記載(2007.7.12 日本食糧新聞)。
(ウ)「田辺・三菱合併会見 基盤強化へ国内間接部門で1490人削減」の見だしのもと,「10月1日付で合併を予定する田辺製薬の葉山夏樹社長と三菱ウェルファーマの小峰健嗣社長は16日、都内で合併説明会を開いた(一部既報)。新会社『田辺三菱製薬』の社長に内定した葉山社長は、『医薬品の創製を通じて世界の人々の健康に貢献する』との企業理念を強調、積極的に国際展開を図っていく方針を示した。」との記載(2007.5.18 日刊薬業 4頁)。
(エ)「第一製薬・森田清社長(入社式あいさつ)」の見だしのもと,「森田清 第一製薬社長『グローバル創薬型企業』としての確固たる地位の確立が当社の目指す企業像。成長をより加速させるべく、十月には三共と経営統合する。個別企業の枠を超える『新たな次元での飛躍』と、『世界の健康文化への貢献』を一段高い水準で果たすことを目指す。」との記載(2005.4.4 化学工業日報 6頁)。
(オ)「独バイエルの米国戦略:(下)76年ぶり冠『バイエル』ロシュと大衆薬販売合弁」の見だしのもと,「米国バイエルコーポレーションのデビッド・エプスワース医薬品事業部長は今年十一月、世界のバイエルグループにおける医薬品事業の長期経営方針『ビジョン二〇一〇』の概要を明らかにした。これは二〇一〇年を標的にした経営理念で、要約すれば革新的な医薬品を開発して世界の健康に貢献する企業を目指すもの。」との記載(1996.11.28 日本工業新聞 24頁)。
(カ)「今年の新薬界展望 第一製薬 常務取締役 秋元 健」の見だしのもと,「九十年代初頭の本年は、各企業とも二十一世紀への発展、生き残りをかけて、グローバルな視点と基盤に立った研究開発に注力する年となろう。・・・・世界の健康文化に貢献する我々の使命を自覚し、厳しい環境を乗り越え、研究開発の華開く年にしたものと願っている。」との記載(1990.1.10 日刊薬業 8頁)。
(2)インターネット情報
(ア)「ファイザー株式会社/仮想化技術を活用したサーバ統合により運用コストを大幅削減/グローバルレベルのIT標準化の基盤形成を図る」の見だしのもと,「グローバルにビジネスを展開する世界最大の製薬企業 ファイザーは150カ国で事業を展開する世界最大の製薬企業であり、ヘルスケア分野におけるリーディングカンパニーだ。『Working for a healthier world?より健康な世界の実現のために』という企業理念のもと、人々のクオリティー・オブ・ライフ(QOL)の向上に寄与することを目指している。」との記載(日本ヒューレッドパッカード株式会社のホームページ(http://h50146.www5.hp.com/enterprise/casestudy/pfizer2/pdfs/CRP_pfizer0521.pdf))。
(イ)「RAD-AR News くすりの適正使用協議会 レーダーニュース Series No,56 May.2003」の見だしのもと,「新規会員紹介●企業会員の紹介 日本ワイスレダリー株式会社は、米国のワイスと武田薬品工業株式会社によって、1998年に設立されました。現在は、筋・骨格領域、抗がん剤領域、婦人科領域、抗菌剤領域の製品を中心に販売しています。同社のビジョンは、より健康な世界への水先案内人になることです。」との記載(くすりの適正使用協議会のホームページ(http://www.rad-ar.or.jp/03/03_news/pdf/14/News14_1.pdf))。
(ウ)「サプリンクス・ビタミン・ストア SUPLINX VITAMIN STORE」の見だしのもと,「取扱いブランド紹介/【2007.6.28 更新】サプリメント先進国アメリカで品質に定評があり信頼されているブランドを厳選して取り扱っています。下記は取り扱いブランドの一部のご紹介です。・・・■Derma E(ダーマイー)/1960年代に、Stearnファミリーが、ビタミンEの皮膚への素晴らしい効果を発見し、DermaEが生まれました。・・『健康な肌は、より健康な世界とより健康な環境を作り上げる。』という信念を持ち、最先端のテクノロジーを駆使して高品質の製品開発に努めています。」との記載(株式会社サプリンクスのホームページ(http://www.suplinx.com/column/products.html))。
(エ)「Zydus Welcome to Zydus Pharma in Japan」の見だしのもと,「■沿革およびミッション・・・(3)ミッションおよびヴィジョン サイダス・グループのミッションは、世界の“人々の健康な生活への貢献”即ち、健康な世界を築く努力 医薬品、原薬、ワクチン、診断薬、生薬、動物薬から化粧品に至る、全般的なヘルスケア商品の提供を通じて、研究を通した革新への挑戦 新規化合物、新しいドラッグ・デリバリー・システムおよびバイオテクノロジーという最先端の研究領域に取り組み、研究開発型企業を目指します。」との記載(サイダスファーマ株式会社のホームページ(http://www.zydus.co.jp/groups/mission.html))。
以上の事実を総合的に勘案すると、本願指定役務と関連深い業界において、「健康な世界」又は「世界の健康」といった語を用いて企業の理想、理念としていることが認められる。
そうすると、本願商標をその指定商品又は指定役務に使用したときは、この語句に接する取引者、需要者は、それを妨げる何か特別な事情がない限り、この語句の有する「健康な世界のための技術」といった意味を想起した上で、これを自他商品又自他役務の識別標識として認識するというよりは、むしろ、「健康な世界のための技術を提供する。」という、本願指定商品又は指定役務に係る業務を含む請求人(出願人)の業務の内容と関連づけて、請求人の業務に係る商品及び役務の理念、理想、方針等を表示したもの、すなわち、その企業が提供する商品や役務の理念を端的に表現した標語ないしスローガンとして認識、理解するというのが自然である。
してみれば、本願商標をその指定商品、役務に使用しても、取引者、需要者は、消費者向けに企業の理念、イメージを訴えるためのスローガン、標語(キャッチフレーズ)の一類型と理解するにとどまり、それをもって、自他商品、役務の識別標識とは認識し得ないものであるから、結局本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品、役務であることを認識することが出来ない商標というべきである。
なお、請求人は、審判請求の請求の理由の中で「『A HEALTHY WORLD』の文字の意味が明確でなく、本願指定商品・役務との関係において品質・質等を直感させる言葉ではない。よって、特定の観念を生じない自他商品等識別力のある部分であり、全体としても自他商品等識別力を有しているものである。又、当該商標が、広告・宣伝文句の類型の一つとして普通に使用されている事実も発見できない。」旨述べている。
しかしながら、企業における標語、理念などについては、商品の品質や役務の質等を直接、具体的な表現で表すものだけでなく、観念的、抽象的表現をもって、商品や役務並びに企業のイメージの向上を目的として採択されている実情は、上記第3の2のとおりである。そうとすれば、本願商標中の「A HEALTHY WORLD」の文字が、指定商品・役務との関係において品質・質等を直感させる言葉でないということをもって、本願商標が全体として識別力を有するとまでいうことはできない。また、平成13年(行ケ)第00045号(東京高裁 平成13年6月28日判決言渡参照)によれば、商標法第3条第1項第6号に該当するか否かの判断で、「問題となるのは、この語句に接した取引者、需要者がこれを自他役務の識別標識として認識するのか、それとも、これをキャッチフレーズとして理解するのかということである。このことは、この語句がキャッチフレーズとして現に一般に使用されているか否かのみによって決せられるものではない。」と判示されていることからも、実際に一般に使用されているか否かのみによって判断することができないものといわなければならない。
さらに、他国及び我が国における登録例などを挙げて、本願商標も登録すべきである旨述べているが、本願商標は、我が国商標法のもとで、その登録の可否が判断されるものであって、諸外国における登録例が直ちに本願商標に関する識別性の判断結果に影響を与えるとはいえないものであり、又、請求人が挙げる登録例は、商標の具体的構成において、本願商標と事案を異にするものであり、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項の規定に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時において、個別具体的に判断されるべきものであるから、それらの登録例に前記認定が左右されるものではない。したがって、請求人のいずれの主張も採用することができない。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとした原査定の認定判断は妥当なものであって、これを取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-04-11 
結審通知日 2008-04-14 
審決日 2008-05-01 
出願番号 商願2006-2252(T2006-2252) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (Y0942)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 小畑 恵一
清川 恵子
商標の称呼 テクノロジーフォアラヘルシーワールド、フォアラヘルシーワールド、ヘルシーワールド 
代理人 青島 恵美 
代理人 足立 泉 
代理人 中田 和博 
代理人 青木 博通 
代理人 柳生 征男 

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