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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て成立) Y30
管理番号 1184634 
判定請求番号 判定2008-600004 
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2008-10-31 
種別 判定 
2008-01-09 
確定日 2008-08-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第3174063号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」について使用するイ号標章は、登録第3174063号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第3174063号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示するとおりの構成よりなり、平成5年5月31日登録出願、第30類「玄米の酵素を使用した穀物の加工品」を指定商品として、同8年7月31日に設定登録され、その後、同18年5月30日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第2 イ号標章
請求人が商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」に使用する標章として示したイ号標章は、別掲(2)に表示するとおりの構成よりなるものである。
なお、請求人からの平成20年1月9日付け提出の本件判定請求書中、判定の対象となる商品「スーパー酵素、ケンコウキン」及びイ号標章(「イ号標章その1」及び「イ号標章その2」)については、当該判定請求書の記載内容では不明確であると判断し、当審において、平成20年6月12日付けの審尋を発し、請求人からの同年6月18日提出の手続補正書及び回答書により、上記商品及び別掲(2)のイ号標章として特定されたものである。
よって、以下、判定の対象となる商品「スーパー酵素、ケンコウキン」を「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」に、判定の対象となるイ号標章(「イ号標章その1」及び「イ号標章その2」)を「イ号標章」と改め、審理することとする。

第3 請求人の主張
請求人は、請求人が商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」について使用するイ号標章は、被請求人の本件商標の商標権の効力の範囲に属しないとの判定を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。

1 判定請求の必要性
請求人は、本件判定請求にかかる商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」に使用するイ号標章の使用者であるが、本件商標の権利者である被請求人から、イ号標章が本件商標に類似しているので商品の販売及びドメインネームの使用停止についての通告を平成19年5月29日に受けた(甲第1号証)。
これに対して、請求人は、本件商標の商標権の効力は、イ号標章に及ばない旨の回答を被請求人に同年6月29日に通知した(甲第2号証)。
その結果、被請求人の代理人から、請求人のイ号標章の使用行為は、本件商標の商標権の侵害に該当しないとの結論に至ったことの謝罪通知が同年7月5日に請求人に送られてきた(甲第3号証)。
そこで、請求人から被請求人に対し、和解条項案(甲第4号証)を示し、今回の件について被請求人からの謝罪及び解決和解金の支払等を求めたところ、これに対して、被請求人の顧問を名乗る者から、先の謝罪通知(甲第3号証)を撤回する旨の通知が同年7月31日付けで請求人に送付され(甲第5号証)、さらに被請求人代表取締役名で、この顧問を名乗る者の撤回通知を容認する通知書(甲第6号証)が同年9月7日に送付され、今日に至っている。
請求人が、イ号標章を使用していることに対して、被請求人は本件商標の商標権の侵害による使用停止を請求人に通知しながら、侵害に当たらないという請求人の通知に一度はそれを認めて謝罪までしたが、請求人が和解条項を示したところ、先の謝罪通知を撤回し、請求人のイ号標章が本件商標に類似しているので、本件商標の商標権を侵害していると再度主張するため、本件判定を求めるに至った。

2 イ号標章の説明
請求人は、その前身である萬成理薬株式会社の創業(昭和29年)以来、玄米中の米ぬかと米胚芽に麹菌を種菌にして培養し、50年以上玄米酵素を造り続けている。
奥脇雅澄によって開発された玄米酵素は、萬成理薬株式会社から「酵素神原菌」という商標で販売され、その後、奥脇雅澄は夫人である飯田寛子と共に、昭和45年に統合生産を設立して生産販売を継続し、奥脇雅澄死去後は、飯田寛子及び奥脇雅澄の実弟である奥脇好男と共に、有限会社万成食品を昭和48年に設立した。
玄米中の米ぬかと米胚芽にビタミン、ミネラル等の栄養分の95%があり、これに好気性の微生物である麹菌を培養させるためには適度な水分と空気が必要となるが、それはまた雑菌の繁殖を促すことになり、玄米酵素の安定的な生産に至るまで、奥脇雅澄は戦前から研究に取り組み、奥脇好男の代になっても改良を続けてきたものであり、そうした中で、商品は「オクワキ酵素」「ケンコウキン」「スーパー酵素」名で販売されてきた。
現在では、請求人は、自ら造る「ケンコウキン」「スーパー酵素」の他、OEMで「玄米酵素芽宝」「玄米酵素健」「百式酵素」「玄米酵素」等の製品を造り、生産供給し、これらは全国の健康食品店、自然食品店などで販売されると共に、インターネットでも「玄米酵素」のキーワードの下に、検索ヒットされ、販売されている状況にある。
請求人は、平成15年4月頃より、イ号標章をその商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」に使用し、現在に至っている。

3 イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属しないという点について
本件商標の構成中「玄米酵素」の文字は、請求人の前身である有限会社統合生産時の商標登録出願でも認められなかった経緯があり(甲第7号証)、これは単に商品の品質、原材料を表示するにすぎないものであるから、本件商標の要部は「玄米酵素」の文字ではなく、独自の図形や文様にある。
したがって、本件商標とイ号標章は類似しない。また、本件商標の要部は「玄米酵素」ではないため、本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。

4 むすび
よって、請求の趣旨に基づく判定を求めるものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件判定請求は成り立たないとの判定を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第27号証(枝番を含む)を提出した。

1 商標の類似
本件商標は、乙第1号証で明らかなように、特許庁ホームページの商標検索で、「ゲンマイコーソ」の称呼で分類されている。また、この観念は漢字における「玄米酵素」である。
請求人が、商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」に使用している「イ号標章」は、その構成中の「元祖」の文字部分及び「創業50年」の文字部分は実態のない表示であり、これ自体には自他商品の識別性がないことから、自他商品の識別性のある要部は、活字を大小に違差させ、かつ、段差状に配した「玄米酵素」の文字部分にあり、この「玄米酵素」の文字部分は、その使用している商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」が、「ヌカを発酵させた食品」であることから、その商品の品質ないし普通名詞を「普通に表示」したものには該当しないため、該文字部分からは、「ゲンマイコーソ」の称呼が生じ、漢字の持つ「玄米酵素」の観念を有して類似である。
したがって、請求人の使用する「イ号標章」を全体として把握するときは、被請求人の本件商標に「称呼類似」及び「観念類似」であり、需要者は被請求人の提供する「玄米酵素」と同じ品質の物か、「株式会社玄米酵素」のものかと、品質と出所の誤認混同を生じさせるものである。

2 品質名ではない
乙第2号証に示すように「玄米」とは、およそ92%を占める「胚乳」の外を「ヌカ部分=果皮・種皮」が被覆している「玄い米=くろいこめ」をいい、「ヌカ部分=果皮・種皮・胚芽」を精米により剥離したものは、古来より「白米」といわれている。
また、科学技術庁による「五訂日本食品標準成分表」によると、「玄米とは精米歩留まり96%以上の米」とされている。つまり、生玄米の表皮(精米によりヌカとなる部分)は全体の5%であるので、この表皮部分を全部剥離させると精米歩留まり95%になり「玄米」とは言えない「白米」になり、「玄米」といえるには、「胚乳」に少なくとも1%以上の表皮層(ヌカとなる層)が付いていなければならないものである。
このように、「玄米」とは、精米歩留まり96%以上のもので、それ以下の「米」は「白米」であり、「白米」や「ヌカ」を「玄米」というのは、明確に偽装で公序良俗に著しく反するものである。
「米ヌカ」は米の92%を占める「胚乳」部分が全くないので、「米」の実体をなさず「米でない」から、当然に「玄米」ではあり得ない。従って、「ヌカ」に「玄米」という「品質」は存在しない。
また、「酵素」とは「生物が体内で産生する触媒作用の有る高分子物質」のことで、例えば、麹菌は米の胚乳(デンプン質)に体内から出した酵素を付着させて、低分子化(腐敗)させて食べて繁殖して麹を造るので、この麹に麹菌が生成した酵素が付着している。
したがって、「玄米」には「酵素」はないから「玄米酵素」という酵素は存在していない。当然に「ヌカに酵素はない」ので、ヌカを麹菌で発酵させても、付着している酵素は、単に麹菌が出した普通の酵素である。
請求人の「イ号標章」を付した商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」は、乙第3号証(商品箱の写)、乙第4号証(健康通信)、乙第5号証(カタログ-多摩田無保健所から薬事法違反で摘発)、乙第6号証(インターネット表示)、並びに乙第7号証(ルーツ)に表示されているように、「ヌカを麹菌で発酵させただけ」で、「ヌカ加工食品」に「米や玄米」が使用されていないのに、商標として「玄米酵素」が使用されているもので、品質につき誤認混同を生じさせる、公序良俗に反する不正使用である。
よって、「米」ではない「ヌカ」に「玄米」という品質は存在せず、「ヌカ」を「玄米」と普遍的に慣用された慣習は日本において全くないので、「玄米酵素」の「玄米」部分は「ヌカ発酵食品」の「品質を普通に表示したものに該当せず」、「ヌカ発酵食品」に使用されている「イ号標章」は、商標法第26条1項2号の規定が適用される余地が全くない。

3 普通名称ではない
普通名称」とは「普遍的に通用している名称」であり、「普遍的」とは「広く行き渡ること」である。
「籾」、「玄米」、「ヌカ」、「白米」は、それぞれ別の物品で、それぞれの持つ価値は、その名称により判断され、古来から普遍的に認識されている。
「米」ではない「ヌカ」を「玄米」という慣習が日本に無いので、「ヌカ加工品」の品質を「玄米加工品」という慣習も日本にはない。
したがって、「玄米」の品質が無い「ヌカ加工品」に「普通名称として」、「玄米酵素」が「普遍的」に通用したという、歴史的事実は全く存在していない。
また、「イ号標章」は、商標であって、大小の文字で玄米酵素を段差状に表示してあり、普通名称を普通に表示したものではない。
したがって、「イ号標章」は、商標法第26条1項2号の規定が適用される余地が全くない。
インターネット販売は、キーワードを入力して検索しない限り、販売に至らないものであり、得体の知れない「ヌカ酵素」「ケンコウキン」「スーパー酵素」では誰も検索しない。そこで、他人の著名な商標まがいの名称を付して、検索してもらおうとするのが商標「玄米酵素」の冒用で、明らかに需要者に対する欺罔行為である。
しかして、少数の商品がインターネットで、こっそり通信販売されたとしても、これが「ヌカ加工品」の品質ないし普通名称として「玄米酵素」が「普遍的に通用する名称」になるという合理性は全くゼロである。
「玄米酵素」ないし「玄米コーソ」「genmaikoso」は、昭和46年から連綿と使用されている被請求人「株式会社玄米酵素」の周知商標であるから、健康補助食品の当業者並びに需要者は、「玄米酵素」部分に商品の識別性を直感する。
また「株式会社玄米酵素」は麹発酵玄米製品の日本で唯一の「JHFAマーク」認定(乙第14号証)の高品質の「玄米酵素」を販売している会社として、健康補助食品の当業者、並びに需要者間に著名であり、全国に代理店199店、特約店5740店を擁しており(乙第17号証)、又販売店の店頭に昭和63年から使用している「玄米酵素=商願2003-112712号商標」並びに「株式会社玄米酵素=登録第2647696号商標」表示の照明入り看板をかかげている(乙第18号証)から、これを見る数百万の人は「玄米酵素」は「株式会社玄米酵素」の商標として普く認識しているもので、「玄米酵素」が「株式会社玄米酵素」から離れて「ヌカ発酵品」の普通名称になるという合理性はゼロである。

4 「玄米酵素」「株式会社玄米酵素」の周知著名性
昭和45年に岡田悦次(後、株式会社玄米酵素の取締役)により初めて「玄米麹」の製造が成功し、「玄米酵素」の商標で売出された試供品を入手した札幌の岩崎輝明は、東京の岡田殿に会見し、大々的に製造するようにと資金1000万円を提供して製造してもらい、昭和46年10月から岩崎輝明によって「玄米酵素」が本格的に販売された。
好調な売行きに昭和47年10月に「株式会社北海道酵素」を設立した。昭和49年には資本金500万円に増資する好調さである。昭和52年に商標と同じく「株式会社玄米酵素」に商号変更をした(乙第10号証)。
札幌市の鈴木医師の臨床実験で「玄米酵素」が、酵素を多く含み難病に顕著な効果があることが認められ、週間現代の記者の知るところとなり、昭和57年6月26日発行「週刊現代」の特集記事で「玄米酵素」が大きく取り上げられた。
その反響について、その後発行された「驚異の玄米酵素」(乙第11号証)の「はじめに」で著者は「発売と同時に朝一番で読者からの問い合わせ電話が鳴り、ハガキ、手紙による照会が山と積まれ、これが3週間も続いた」と大きな反響ぶりを伝えている。
これをきっかけにサンケイ新聞、テレビ、雑誌で取り上げられ、中曽根総理が愛食していることがテレビで流れ、NHKテレビでも流れて、ブームの魁となったことは、乙第20号証に詳しく紹介されている。
その後、絶え間なく、宣伝を継続し、全国の代理店・特約店を介しての需要者への直接宣伝を重ね、信用を培ってきた(創業30周年記念に発行された資料(乙第10号証)、紙誌宣伝広告資料(乙第11号証、乙第15号証、乙第16号証、乙第17号証1から2、乙第18号証、乙第19号証、乙第20号証)、新聞雑誌の広告資料(乙第21号証、乙第22号証)、全国キャンペーン新聞広告資料(乙第23号証、乙第24号証、乙第25号証))。
特に「玄米酵素」は、昭和45年に日本で初めて玄米の麹製造に成功して命名され、その特異な商標と商品は36年に亘り需要者に愛用され、品質は「ISO9001」認証工場で製造され、「JHFAマーク」認定の高品質な、玄米の麹発酵で類例のない我が国唯一の商品で、全国的に周知著名なものである。

5 結語
「イ号標章」は、「玄米」と関係のない「ヌカ発酵食品」に商標として使用され、自他商品の識別性のある「玄米酵素」部分が、周知著名な商標「玄米酵素」を直感させ、称呼は「ゲンマイコウソ」、観念は「玄米と酵素」であり、本件登録商標のもつ称呼、観念と類似であるので権利範囲に属している。
しかして「ヌカ発酵食品」に「玄米」は使用されていないから、「玄米と酵素」は「ヌカ発酵食品」の品質を表示したものではない。
また、商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」は「ヌカ発酵食品」であるから、「ヌカ発酵食品」の普通名詞として「玄米酵素」が普遍的に通用したという歴史的事実がないので、「イ号標章」は「ヌカ発酵食品」の普通名称を使用したものではない。
インターネット販売はキーワードを入力して検索しない限り販売に繋がらないもので、僅かな販売量が通信販売されたとしても、「イ号標章」が「ヌカ発酵食品」の「品質名」や「普通名称」に普遍的になるという合理性がゼロである。
また、「イ号標章」の構成中、「元祖」、「創業50年」も、商品の自他識別性がなく、何ら根拠がないものである。
なお、「株式会社玄米酵素」の商標は、登録第2647696号 株式会社玄米酵素、登録第3174063号 玄米酵素、登録第4842376号 玄米酵素-元気、登録第5098302号 株式会社玄米酵素、商願2003-112712号 玄米酵素、登録第2366833号 ハイ・ゲンキ、登録第2366834号 HI・GENKI、登録第4842376号 元気、登録第5012599号 米図、が商品、カタログ、包装、広告などに使用されており、これらの商品が「株式会社玄米酵素」の商品であることは、業界及び需要者に広く認識されている。
ここにおいて、商標「玄米酵素」、社名「株式会社玄米酵素」が永年使用され新聞雑誌、テレビで広く周知であることは乙号各証拠上で明らかであり、「玄米酵素」の代理店199店、特約店5740店の全国における活動と約90万箱という販売実績に照らして、「イ号標章」を見る需要者は、周知著名な「玄米酵素」を直感するものであり、周知著名な「玄米酵素」と同じ品質のものかと、或いは、特約店の1つの販売かと出所につき誤認混同を生じる。
したがって、「イ号標章」は商標法第26条1項2号の規定の適用を受ける余地が全くなく、商標法第37条の規定に該当し、本件登録商標の権利範囲に属している。

第5 被請求人の答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人の答弁書に対して、概略以下の点を指摘する。

1 本判定請求で求めている請求内容
本件判定請求で請求人が求めているのは、請求人が使用しているイ号標章が被請求人が持つ本件商標に類似しているかどうかの判定であるが、被請求人は、答弁書の中で自らの論旨を整理することなく論述を繰り広げている。
答弁書の中で、一番の問題となるのは、被請求人が3頁の「商標の対比」として示した、「本件商標」の「商標要部」が「玄米酵素」である、としている点であるが、特許庁や高等裁判所での判断は、全く逆の判断を示している。この事実を踏まえた論述を行っていないため、答弁書の内容は、被請求人の考え方の陳述が脈略なく続いているものである。
これらの記述は、すべて、被請求人が「本件商標」の「商標要部」が「玄米酵素」であるということを思い込んだ上での記述となっており、全体として、論述するに足りないと考える。

2 最大の論点について
被請求人が主張する「本件商標」の「商標要部」が「玄米酵素」であるとする点について検証する。
過去の特許庁の判断は、「玄米酵素」という商標登録出願に対し、次の(1)から(3)のように、ことごとく拒絶査定や査定を支持する審決が行われている。更に、高等裁判所でも、その審決取り消しの訴えが却下されている(平成15年(行ケ)第224号審決取消請求事件)。
(1)有限会社統合生産が商標出願した「玄米酵素」への拒絶理由書(甲第7号証)
(2)被請求人(株式会社玄米酵素)が商標出願した平成9年商標登録願185896号(平成9年(1997年)12月15日)「玄米酵素」に対しての拒絶査定
(3)同出願への審判請求、平成11年審判第11838号(1999年7月19日)に対しての「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決決定(2003年4月22日)
ここで判断を下された商標登録出願は、いずれも文字で、「玄米酵素」とのみ書かれた商標出願であり、特許庁はこの出願に対して、(1)「玄米酵素」は「玄米」と「酵素」を組み合わせた言葉であり、「玄米」と「酵素」とも広辞苑に記載されている一般名称である、(2)また、「玄米酵素」は、「白米を主食とした食事から麦、玄米等を主食とした食事への移行が見られ、その栄養価をバランスよく消化、吸収するためにクロレラ、麹、葉緑素等の栄養成分を添加し、微生物の酵素作用により栄養価を高めた発酵食品等として、市販されている」「自他商品を識別する標章たる商標とは、認識し得ない」と判断を下している。
この判断からすれば、被請求人の登録商標(登録第2647696号、登録第3174063号、登録第4842376号)は、それぞれ「玄米酵素」の文字が入っていても、これらの商標の要部は、「玄米酵素」ではあり得ず、これらの商標に記載されている図や記号が商標の要部として位置づけられるのは自明のことである。
そこで、被請求人の本件登録商標の要部をなす図や記号と、本件イ号標章の図や記号を比較すると、なんら類似性を持たない。
したがって、本件請求のように、本件商標の効力範囲は、イ号標章に及ばないとの判定を求めるものである。

第6 請求人の弁駁に対する答弁
被請求人は、請求人の弁駁書に対して、概略以下の点を指摘し、証拠方法として乙第28号証ないし乙第30号証を提出した。

1 判定請求の内容
本件判定請求の内容は、「イ号標章」が本件商標の商標権の範囲に属するか否やである。
「指定商品についての登録商標に類似する商標の使用、指定商品に類似する商品についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用は、商標権を侵害するものとみなす(商標法第37条)」と規定されており、「本件商標」と「イ号標章」を並べて観察すると、「商標の要部=彼我商品の識別性のある部分」は「玄米酵素」である。これらの称呼は「ゲンマイコウソ」であり、観念は「玄米と酵素」である。
つまり称呼並びに観念は同一であり、結局両商標は類似の商標ということになり、当然に「イ号標章」は商標法第37条の規定により、本件商標権を侵害するものとみなされる。
特に「株式会社玄米酵素」は、昭和52年10月に商号変更の登記をして、連綿と「玄米酵素」を日本はもとより海外まで広く販売しており、「玄米酵素」と「株式会社玄米酵素」は一体になり、周知著名な商標であるから、判定請求人が、米ヌカを麹菌で発酵させた食品に「イ号標章」を使用するとき、「株式会社玄米酵素」の商品かと出所混同を生じる虞がある。加えて、ヌカ加工品を「JHFA認定の玄米酵素」かと、品質につき誤認混同を生じる虞がある。
本件商標は、カコミの中に縦の筆書き文字で「玄米酵素」と表示してなるもので、社名商標「株式会社玄米酵素」と一体になって商品に使用されているから、「イ号標章」を見る人は「株式会社玄米酵素」の系列会社の商品であるか、「株式会社玄米酵素」の代理店若しくは特約店であるか、と商品の出所誤認混同を生じさせる。
「イ号標章」の構成を見ると、「元祖」は根拠のない他人の社歴の合算であるし、「50年」も他人の経歴を合算したもので、「元祖」も「50年」も自他商品の識別性を有していない。商標の要部である「玄米酵素」は、米ヌカ加工品の品質を玄米を使用しているかと、誤認混同させるための欺罔手段であり、その使用について社会的合理性を欠き、公序良俗に反するものである。
「ヌカや胚芽」を「米とか玄米」と言うのは詐欺目的以外には使用されない。
従って「イ号標章」は、周知著名な他人の本件商標「玄米酵素」を、平成15年4月から、「ヌカ発酵食品」に、あたかも玄米の品質が有る如く欺罔するために、冒用したにしかすぎないものである。

2 論点について
本件判定請求は、「イ号標章」が本件商標の商標権の範囲に属するか否やである。
言うまでもなく商標の要部とは「自他商品の識別性の有る部分」であることは論を俟たないものである。
本件商標は「玄米酵素」の文字を特定観念のないカコミで囲んだもので、古来から商標に使用される態様で構成され、その商標の要部は、社名である「玄米酵素」部分と同じ「玄米酵素」部分であり、議論する余地はない。
筆文字で書かれているものであっても、新聞記事や広告では標準文字活字が普遍的に使用され、慣用されているから、活字体の表示も当然に類似であり、権利範囲に属している。
なお、「イ号標章」を付す判定請求人の商品は、「ヌカ発酵食品」であり、「イ号標章」は、明確にヌカ発酵食品の品質と異なった文字の組合せからなる商標であるから、商標法第26条1項2号の規定の適用はなく、明らかに本件商標に類似であり、周知著名な本件商標権の権利範囲に属しているものである。

第7 当審の判断
1 商標権の効力の範囲について
商標権の効力は、商標権の本来的な効力である専用権(使用権)にとどまらず、禁止的効力(禁止権)をも含むものであるから、指定商品と同一又は類似の商品についての登録商標と同一又は類似の商標の使用に及ぶものである(商標法第25条第37条)が、同時に同法第26条第1項各号のいずれかに該当する商標(他の商標の一部となっているものを含む。)には、及ばないものとされており、例えば、同項第2号には、「当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、・・・又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、・・・を普通に用いられる方法で表示する商標」と規定されていることから、同号の規定に該当する商標であれば、当該商標権の効力は及ばないことになる。

2 本件商標の構成とその要部について
(1)本件商標の構成について
本件商標は、別掲(1)に表示するとおりの構成よりなり、図形の中央に、「玄米酵素」の文字を行書体風に縦書きした構成よりなるものである。
(2)本件商標の要部について
本件商標構成中の「玄米酵素」の文字部分は、毛筆によるごく普通の行書体で表しているものであり、そのうち、「玄米」の文字は、「籾殻を除いただけで、精白していない米。精白により剥落するビタミンB1等を含むため、近年健康食料とされる。くろごめ。」の意味を、「酵素」の文字は、「生体内で営まれる化学反応に触媒として作用する高分子物質。生体内で物質代謝に関与する。蛋白質またはこれと補酵素と呼ばれる低分子物質との複合体。」(いずれも株式会社岩波書店 広辞苑第六版)の意味を、それぞれ有するものである。
そして、本件指定商品の需要者は、通常人であることが明らかであり、この通常人にとって、「玄米」の文字は、親しまれ、なじみのあるものであり、その意味するところはおおよそ理解可能なものである。他方、「酵素」の文字についても、その意味が科学的に正確に知られているかどうかは別として、通常人にとってなじみのあるものであるということができる。
そうとすれば、「玄米酵素」の文字部分は、「玄米」と「酵素」の文字を組み合わせたものであり、通常人にとって、該文字部分から、「玄米」と「酵素」とが関係する商品であると理解することは容易である。
また、「玄米酵素」の文字は、請求人及び被請求人以外の者によっても、次のように使用されている。
ア インターネットの「http://www.wild-y.com/health/genmai/」のWebページには、「玄米酵素とは」の項に、「玄米酵素とは玄米の『ぬか』(玄米の皮)と玄米に胚芽をおさけの発酵に使う麹菌を使っておさけのなる前の段階で発酵と止めて乾燥させた食べ物です。色々なところから同じ名前で販売されています。玄米酵素は薬などではなく発酵させた玄米食品です。」及び「玄米酵素のメーカー」の項に、「玄米酵素を販売しているメーカーはたくさんあって、その販売している会社のよって玄米酵素を形状が違います。株式会社玄米酵素ではハイ・ゲンキという商品を販売していて顆粒と錠剤のタイプを販売しています。ほかには健康酵素株式会社の顆粒状の百式酵素、長岡式の玄米酵素などがあります。」の記載がある。
イ 健康酵素株式会社のWebサイトには、「玄米発酵食品 百式酵素」の見出しのもと、「酵素不足の現代人に最適。百式酵素は玄米酵素を含み、食物酵素を活きたまま手軽に補給できます!(純国産)」の記載がある(http://www.100kouso.com/)。
ウ 株式会社ザ・ピースカンパニーのWebサイトには、「アトピーアレルギー体質改善レスキューストア」の見出しのもと、「ファーメントパウダー(玄米酵素)4,000円(税込)」の記載がある(http://www.atopys.com/7.html)。
エ 自然食品・健康食品専門店こうげん堂・わこうフーズ株式会社のWebサイトには、「ビーアールエンザイム」の見出しのもと、「玄米酵素・ピーアールエンザイムとはどんなもの?」の項に、「びーあーる・エンザイムは、特殊圧力鍋で長時間炊いた玄米に、羅漢果エキスと富山県沖の深層海水を加え、麹菌で発酵しました。」の記載がある(http://www.kougendo.co.jp/newsite/re/bremzym.html)。
オ 有限会社ペットインフォメーションラックのWebサイトには、「健康サプリメント」の見出しのもと、「玄米酵素アニマルエンザイム 100g」の記載がある(http://www.pfs-luck.jp/shopdetail/005002000002/)。
カ インターネットの「http://kakaku.ecnavi.jp/item_info/20669733540403.html」のWebページには、「天然酵母パン 自然食にぴったり玄米酵素食パン」の記載がある。
キ 樹の恵本舗 株式会社中村のWebサイトには、「製品情報/foods」の項に、「米ぬか玄米酵素」の記載がある(http://www.kinomegumi.co.jp/blog/foods/01.html)。
ク インターネットの「http://books.yahoo.co.jp/book_detail/07203115」のWebページには、書籍の紹介として、「書籍名 毒出し玄米酵素ごはん、著者名 岡本 羽加 監修、出版社名 主婦の友社、発行年月 2008年5月、価格(税込) 840円」の記載がある。
ケ インターネットの「http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/31858919/pg_from/rcmd_detail_4」のWebページには、書籍の紹介として、「玄米酵素で腸スッキリ、体若がえり健康法、著者/訳者名 矢崎栄司/著、出版社名 ほんの木、発行年月 2007年03月、価格 1,365円(税込)」の記載がある。
以上のような事実を総合勘案すれば、本件商標中「玄米酵素」の文字からは、「玄米を酵素で加工したもの」程の意味合いを容易に看取し得るものというのが相当である。
そして、本件商標の指定商品、第30類「玄米の酵素を使用した穀物の加工品」を取り扱う分野においては、白米を主食とした食事から麦、玄米等を主食とした食事への移行が見られ、その栄養価をバランスよく消化、吸収するために、クロレラ、麹、葉緑素等の栄養成分を添加し、微生物の酵素作用により栄養価を高めた商品が、発酵食品等として、市販されている実情にあり、また、被請求人の販売する商品も「玄米を普通の麹菌で発酵させた加工品」(答弁書21頁7行ないし8行)、「玄米酵素は表皮、胚芽を含む米を原料として麹菌で発酵して製造します。」(乙第22号証中、ハイゲンキライフ「麹と発酵5」)であるとされている。
そのため、本件商標構成中の「玄米酵素」の文字部分を、本件指定商品「玄米の酵素を使用した穀物の加工品」に使用する場合には、その品質を表示しており自他商品の識別力は無いというべきである。
そして、本件商標構成中の図形部分は、該商品の品質特性とは直接関連性がないものであるから、この図形部分が、本件商標について唯一自他商品の識別標識と目される部分というべきであり、本件商標の要部は、この図形部分にあるとみるのが取引の経験則に照らし相当である。
以上のとおり、本件商標は、これに表示された文字又は図形のうち、図形部分以外の各部分は、いずれも当該商品の品質特性を表示しているに止まり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものであって、類否判断の対象とはなし得ないものというべきである。

3 イ号標章の構成と要部について
(1)イ号標章の構成について
イ号標章は、別掲(2)に表示するとおりの構成よりなり、楕円形をした図形の中に、上段に「元祖」の文字、中段に、「玄」の文字を基準に、階段状に「米酵素」(「米」と「酵」の文字はやや小さな文字)の文字を配した「玄米酵素」の文字、下段に「創業50年」の文字を上下三段に配した構成よりなるものである。
(2)イ号標章の要部について
イ号標章構成中の「元祖」の文字部分は、「ある物事を初めてしだした人。創始者。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)の意味を有するものであり、飲食物関連の分野においては、「元祖○○ラーメン」、「元祖○○そば」のように普通に用いられているものであるから、自他商品の識別力は無いものである。
また、イ号標章構成中の「創業50年」の文字部分中、「創業」の文字部分は、「事業を新しく始めること。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)の意味を有し、「創業50年」の文字全体として、「創業して50年経つ」程の意味合いを容易に看取させるものであり、各種企業においても「創業○○年」等として普通に用いられているものであるから、自他商品の識別力は無いものである。
次に、イ号標章構成中の「玄米酵素」の文字部分は、文字の大小や、階段状の配置など、ややデザイン化された構成ではあるものの、普通に表示されているものであり、そのうち、「玄米」の文字は、「籾殻を除いただけで、精白していない米。精白により剥落するビタミンB1等を含むため、近年健康食料とされる。くろごめ。」の意味を、「酵素」の文字は、「生体内で営まれる化学反応に触媒として作用する高分子物質。生体内で物質代謝に関与する。蛋白質またはこれと補酵素と呼ばれる低分子物質との複合体。」(いずれも株式会社岩波書店 広辞苑第六版)の意味を、それぞれ有するものである。
そして、イ号標章を使用しているとする商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」の需要者は、通常人であることが明らかであり、この通常人にとって、「玄米」の文字は、親しまれ、なじみのあるものであり、その意味するところはおおよそ理解可能なものである。他方、「酵素」の文字についても、その意味が科学的に正確に知られているかどうかは別として、通常人にとってなじみのあるものであるということができる。
そうとすれば、「玄米酵素」の文字部分は、「玄米」と「酵素」の文字を組み合わせたものであり、通常人にとって、該文字部分から、「玄米」と「酵素」とが関係する商品であると理解することは容易である。
また、「玄米酵素」の文字は、前述のとおり、請求人及び被請求人以外の者によっても使用されており、イ号標章中「玄米酵素」の文字からは、「玄米を酵素で加工したもの」程の意味合いを容易に看取し得るものというのが相当である。
そのため、イ号標章の構成中の「玄米酵素」の文字部分を、イ号標章を使用しているとする商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」に使用する場合には、その品質を表示しており自他商品の識別力は無いものである。
そして、イ号標章の構成中の図形部分は、該商品の品質特性とは直接関連性がないものであるから、この図形部分が、イ号標章について唯一自他商品の識別標識と目される部分というべきであり、イ号標章の要部は、この図形部分にあるとみるのが取引の経験則に照らし相当である。
以上のとおり、イ号標章は、これに表示された文字又は図形のうち、図形部分以外の各部分は、いずれも該商品の品質特性を表示しているに止まり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものであって、類否判断の対象とはなし得ないものというべきである。
(3)被請求人の主張について
被請求人は、請求人がイ号標章を使用しているとする商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」は、「ヌカを発酵させた食品」であることから、イ号標章の構成中「玄米酵素」の文字部分は、その商品の品質ないし普通名詞を普通に表示したものには該当しない旨主張する。
確かに、被請求人が提出した乙第2号証によれば、「玄米」とは、およそ92%を占める「胚乳」の外を「ヌカ部分=果皮・種皮」が被覆している「玄い米=くろいこめ」をいい、「ヌカ部分=果皮・種皮・胚芽」を精米により剥離したものは、古来より「白米」といわれているものである。
しかしながら、この精米の過程で削り取られてしまう「ヌカ部分=果皮・種皮・胚芽」には40種類以上の栄養素や繊維質が含まれているため、精米しない玄米は体に良いとされていたものであり、また、近年の健康ブームで玄米が見直されてきた理由も、この「ヌカ部分=果皮・種皮・胚芽」が含まれているからでもある。
そうすると、請求人がイ号標章を使用しているとする商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」は、この精米の過程で削り取られてしまう「ヌカ部分=果皮・種皮・胚芽」に麹菌を種菌にして発酵させた加工食品であることから、実質的には、玄米を食するのと同様の栄養分が含まれているものである。
そのため、玄米そのものではなく、「玄米中の米ぬかと米胚芽」を使用した商品であっても、イ号標章の構成中「玄米酵素」の文字は、その商品「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」の品質を表示しているものといわざる得ない。
また、「普通に用いられる方法で表示する商標」とは、極めて特殊な態様で表されていないという意味である。
確かに、イ号標章は、普通に用いられるゴシック体や明朝体といった態様で表されているものではないが、近年、商標を構成する文字をデザイン化して表すことは極めて一般的に行われているところであり、イ号標章のデザイン化の程度は、むしろ軽微なものというべきであって、格別顕著な特徴があるともいえない態様をもって一連に書されているものであるから、「普通に用いられる方法で表示する商標」の範囲内のものといわなければならない。
更に、被請求人は、被請求人の所有する本件商標は、周知著名であることから、この周知著名な「玄米酵素」と同じ品質のものかと、或いは、特約店の1つの販売かと出所につき誤認混同を生じる旨主張する。
しかしながら、被請求人の所有する本件商標構成中の「玄米酵素」の文字部分は、本件指定商品「玄米の酵素を使用した穀物の加工品」に使用する場合は、その品質を表示しているに過ぎず、自他商品の識別力は無いものであることから、その取引者、需要者にとっても、「玄米酵素」の文字部分が、その商品の出所を表わす被請求人の商標というよりも、特定の商品の品質を表わす語として使用されているものと認識されるものである。そのため、被請求人の長期間にわたる使用により、被請求人の業務に係る商品であることを認識することができるものとなった商標であると認めることはできないものである。
よって、被請求人のいずれの主張も妥当でなく、採用の限りではない。

4 本件商標とイ号標章との類否について
本件商標は、その要部を図形部分とするものであり、これを除いたその余の構成各部は、いずれも該商品の品質を表示するに止まり、自他商品の識別標識(要部)とは認識し得ないものであって、商標の類否判断の対象とはなし得ないものであることは前記認定のとおりである。
他方、イ号標章は、その要部を図形部分とするものであり、これを除いたその余の構成各部は、いずれも該商品の品質を表示するに止まり、自他商品の識別標識(要部)とは認識し得ないものであって、商標の類否判断の対象とはなし得ないものであることは前記認定のとおりである。
そうすると、本件商標及びイ号標章とは、その要部において相互に共通する点はなく、また、その外観、観念、称呼等により取引者に与える印象、記憶、連想等を総合し、かつ、それら商品の具体的な取引状況に照らし全体的に考察しても、なお、両者は、その出所について混同を生ずるおそれのない互いに別異のものといわなければならない。
してみれば、イ号標章は、本件商標と類似のものということはできない。

5 結語
以上のとおり、請求人が「麹菌を種菌にして発酵させた米ぬかと米胚芽を主原料とする顆粒状・粉末状の加工食品」について使用するイ号標章は、本件商標と類似のものということはできないから、結局、イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲(1)本件商標


別掲(2)イ号標章


判定日 2008-08-18 
出願番号 商願平5-52732 
審決分類 T 1 2・ 9- ZA (Y30)
最終処分 成立  
前審関与審査官 椎名 実内山 進 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 前山 るり子
安達 輝幸
登録日 1996-07-31 
登録番号 商標登録第3174063号(T3174063) 
商標の称呼 ゲンマイコーソ 
代理人 竹沢 荘一 
代理人 中馬 典嗣 

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