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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) Y25 |
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管理番号 | 1184620 |
異議申立番号 | 異議2007-900330 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2007-07-10 |
確定日 | 2008-08-07 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 登録第5044304号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5044304号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5044304号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成18年6月1日に登録出願、第25類「履物」を指定商品として、同19年4月27日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(2人)の一「アディダス アーゲー」(以下「申立人」という。)が、本件商標の登録異議の申立ての理由に引用する登録第2693722号商標(以下「引用商標1」という。)、登録第2671514号商標(以下「引用商標2」という。)、登録第2708505号商標(以下「引用商標3」という。)、登録第2593080号商標(以下「引用商標4」という。)、登録第4025668号商標(以下「引用商標5」という。)、登録第4180654号商標(以下「引用商標6」という。)、登録第3324363号商標(以下「引用商標7」という。)、登録第4376378号商標(以下「引用商標8」という。)、登録第4378318号商標(以下「引用商標9」という。)、登録第4376377号商標(以下「引用商標10」という。)、登録第4399811号商標(以下「引用商標11」という。)、登録第1587778商標(以下「引用商標12」という。)、登録第2609079号商標(以下「引用商標13」という。)、登録第1423465号商標(以下「引用商標14」という。)、登録第2693723号商標(以下「引用商標15」という。)、登録第2704525号商標(以下「引用商標16」という。)、登録第2693724号商標(以下「引用商標17」という。)、登録第2671515号商標(以下「引用商標18」という。)、登録第2528490号商標(以下「引用商標19」という。)、登録第2160863号商標(以下「引用商標20」という。)、登録第2190105号商標(以下「引用商標21」という。)、登録第2147023号商標(以下「引用商標22」という。)、登録第2199877号商標(以下「引用商標23」という。)及び登録第4522864号商標(以下「引用商標24」という。)は、別掲(2)ないし別掲(10)に示したとおりの構成よりなるものである。 以下、上記引用商標を一括していうときは、単に「引用商標」という。 第3 申立人の主張 申立人は、結論同旨の決定を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第123号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第15号について (1)本件商標は、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾けた黒塗りの細長の台形様図形を、当該台形様図形の幅よりもやや広い間隔をもって4本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形(以下「4本線の図形」という。)と、当該4本線の図形のうち最も右側に位置する台形様図形の右側上方に当該台形様図形と平行に小さな英文字で「NETWAVE」と表示したものからなるものであって、第25類「履物」に使用するものである(甲第1号証)。 本件商標において4本線の図形は、「NETWAVE」の文字部分に比して圧倒的に大きく目立つ態様で表示されており、両者は視覚的に分離している。また、両者を観念上一体不可分のものとして把握すべき理由も存在しない。従って、本件商標において4本線の図形は、商品出所識別機能のうちの主要な部分を担うものとして認識理解されるものであって、「NETWAVE」の文字部分から分離独立して商品出所識別標識として機能し得ることが明らかである。 (2)引用商標1ないし引用商標18(甲第2号証ないし甲第19号証)並びに引用商標24(甲第88号証)の構成中の図形部分は、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾けた黒塗りの紬長の台形様図形又は長方形(以下「台形様図形等」という。)を均等間隔で3本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形(以下「3本線の図形」という。)からなるものであり、本件商標の登録出願時及び登録査定時には申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして世界的に広く認識されていたものである(甲号第25号証ないし甲第84号証、甲第87号証、甲第89号証ないし甲第119号証)。 (3)本件商標の主要部分に当たる4本線の図形と、引用商標1ないし引用商標18及び引用商標24もしくは当該引用商標の構成中の3本線の図形とを対比考察すれば、これらの図形を構成する台形様図形等が4本と3本の差異があるものの、いずれも、台形様図形等を、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾け、均等間隔で複数本を配置した点を共通にし、構成の軌跡を一にする。 なかでも、本件商標の4本線の図形と、引用商標1及び引用商標2の構成中の図形部分、引用商標12ないし引用商標14、並びに、引用商標24の構成中の靴の側面に描かれた図形部分は、いずれも、台形様図形を仮想垂直線に対し左方向にやや傾け、当該台形様図形の幅とほぼ同程度の幅をもって均等間隔で配置し、かつ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形である点、また、図形全体の外観が四角形の印象を与える点において一致し、構成の軌跡を一にすることが明らかである。 (4)本件商標が指定商品に使用されるときには、商品の地色により、色彩を施したり、色彩を変更することが想定される。本件商標の4本線の図形は、商品の地色、地色と本件商標の色彩との配色の仕方等によって、4本線の図形が明確に看取されない場合がある。また、甲第85号証及び甲第86号証に例示するように、色彩の組み合わせの仕方によって、4本線の図形よりも、むしろ、当該4本線の各線で区切られた間に位置する白抜きの3本線の図形のほうが視覚的に強調され、「3本線」の図形として看取されることも十分に起こりうる。 (5)本件商標の4本線の図形及び引用商標は、同じ幅の複数の台形様図形を等間隔で平行にやや斜めに傾けて並べ、各台形様図形の長さを左から右に向かって(実際の靴では他方の側面は右から左に向かって)順次長くする、という構成上の特徴が看者の注意を惹きつける重要なデザインポイント、すなわち、識別性の中核をなしている。当該台形様図形の数が3本か4本かという相違や、その幅の多少の広狭は、両商標の構成の軌跡及び外観印象における高い類似性を凌駕して出所混同のおそれを打ち消すことができる程度に大きな相違点とはいえない。本件商標の4本線の図形と類似する4本線の図形からなる件外商標登録第4370503号についてなされた登録無効の確定審決(甲第94号証)、並びに被申立人所有の件外商標登録第4839608号についてなされた登録取消の確定異議決定(甲第119号証)の要旨はこれと同趣旨のものである。また、諸外国においても、申立人の3本線の商標に基づき、靴に使用する4本線を基調とする商標の登録取消、使用差止請求等を認容する判決が数多くなされている(甲第96号証の1?13)。 上記観点から明らかなとおり、本件商標が指定商品に使用されたときには、申立人の業務に係る商品と誤信され、その出所について混同を生じるおそれがある。 (6)3本線を靴の側面の靴底とアイレットステイを結ぶ位置に左右対称にサイドラインとして表示する構成は、申立人が履物、運動用特殊靴に長年継続使用し、申立人の商品表示として広く認識されているものである。被申立人の上記件外商標登録第4839608号が本件商標とほぼ同一の4本線の図形を靴のサイドラインとして表示した構成からなる商標であるという事実(甲第120号証)、さらには、当該件外商標登録に対する登録異議申立事件(異議2005-90321)で被申立人が提出した被申立人の取り扱いに係るスポーツシューズの写真(甲第121号証の2、甲第121号証の3)に照らせば、本件商標が指定商品(履物)に使用されるときには、靴の側面に左右対称にサイドラインとして表示されることが容易に予測される。被申立人のスポーツシューズ(甲第121号証の2、甲第121号証の3)と申立人のスポーツシューズを比較すれば、両者の構成が酷似し、看者に同一の印象を与えることが明らかである。 それのみならず、被申立人のスポーツシューズは、申立人の3本線の靴の中でも「Originals」という名称で広く知られているスポーツシューズ(甲第44号証、甲第49号証、甲第97号証ないし甲第118号証)と極めて酷似した外観印象を与える。 すなわち、被申立人のスポーツシューズは、4本線をサイドラインとして使用しているに止まらず、つま先、アッパー、ヒール、ソール等の各パーツの形状、デザイン、着色方法等においても、申立人の「originals」の3本線シューズと酷似しており、申立人の3本線の顧客吸引力にフリーライドする等の不正目的の意図を推認させるものと言わざるを得ない。 (7)平成16年(行ケ)第85号審決取消請求事件における平成16年10月20日東京高裁判決で説示されているとおり、商標法第4条第1項第15号の規定は、著名商標の顧客吸引力へのフリーライド、その出所表示力のダイリューションを防止する趣旨も含むものであると解される(甲第95号証)。被申立人は、上記件外商標登録第4839608号の登録異議申立事件で提出した意見書の中で、当該4本線を使用したスポーツシューズを「廉価」、かつ、短期間(2005年1月項から2006年の5月まで)で「80万足を越える」数量を販売したと述べ、販売実績を提出している(甲第121号証に示す登録異議申立意見書の第7頁15行ないし同8頁1行、甲第122号証の1)。また、本件商標とほぼ同じ構成態様の4本線を表示したスポーツシューズが「アディダス風シューズ」としてインターネット上で宮伝広告され、取引されているといった事実も存在する(甲第123号証)。 このような4本線を用いたシューズの多くは、需要者に申立人の3本線シューズを想起連想させることを意図して企画された品質の劣悪な商品であり、申立人の3本線商標、3本線シューズの顧客吸引力にフリーライドするものである。また、このような模倣品の市場への流出が申立人の商品出所表示として著名な3本線商標、3本線シューズの出所表示力を希釈化することは明らかである。 4本線の図形から構成され、「履物」に使用される本件商標の登録は、こうしたフリーライド及びダイリューション行為を実質的に助長することになりかねず、販売店等の取引者及び一般消費者を混乱させ、公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神に反するのと言わざるを得ない。 従って、本件商標は、フリーライド、ダイリューションの防止という観点からみても、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであることが明らかである。 2 商標法第4条第1項第7号について (1)本件商標は、その登録出願時において申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして世界的に広く認識されていた引用商標1ないし引用商標18及び引用商標24またはこれらの構成中の図形部分と極めて紛らわしい外観印象を呈する構成を採択するものであり、その着色の方法、商品の地色との配色等の使用態様によって、引用商標に共通する概念であり、申立人の商標として著名な「3本線」の印象を看者に与える。それのみならず、被申立人の取り扱いに係る4本線をサイドラインとして表示したスポーツシューズ(甲第121号証の2、甲第122号証の3)の存在に照らせば、本件商標が指定商品に使用されるときには、申立人が長年に亘って靴に3本線を使用してきた態様と同様に、靴の側面にサイドラインとして表示される可能性が高い。 (2)本件商標は、申立人の長年の営業努力によって築かれた引用商標及び3本線の商標の信用力、顧客吸引力にフリーライドするものと言わざるを得ない。また、本件商標が指定商品に使用されたときには、世界的な著名商標である引用商標等の3本線の商標の出所表示機能が希釈化され、申立人が経済的及び精神的損害を被ることが必至である。 (3)本件商標は、明らかに社会一般道徳及び国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがある。 3 結語 本件商標が、その指定商品に使用された場合には、申立人の業務に係る商品と出所混同を生ずるおそれがある。 したがって、本件商標の登録は商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものであるから、取消すべきである。 また、本件商標は、社会一般道徳及び国際信義に反し、公の秩序を害するおそれがある。 したがって、本件商標の登録は商標法第4条第1項第7号に違反してなされたものであるから取消すべきである。 第4 取消理由通知 申立人より提出された証拠によれば、別掲(2)ないし別掲(10)に示した引用商標は、申立人の取り扱いに係るスポーツシューズ、スポーツウェア等のスポーツ用品に長年に亘り使用された結果、3本線を基調とした申立人のマーク(商標)として、本件商標の登録出願前より、需要者の間に広く認識されていたと認め得るところである。そうすると、本件商標と引用商標との構成態様より受ける印象及び両商標が使用される指定商品の取引の実情等を総合勘案すると、本件商標をその指定商品(履物)に使用した場合は、これに接する取引者・需要者は、著名な申立人の使用に係る引用商標を連想、想起し、該商品が申立人又は同人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 第5 当審の判断 本件に関し、審判長は、商標権者に対し、平成20年3月13日付けで、前記第4の取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もなかった。 そして、前記第4の取消理由は、妥当なものと認められるので、前記第4の認定のとおり、引用商標の著名性、本件商標と引用商標との構成態様より受ける印象及び両商標が使用される指定商品の取引の実情等を総合勘案すると、本件商標をその指定商品について使用した場合は、これに接する取引者、需要者は、著名な申立人の使用に係る引用商標を連想、想起し、該商品が申立人若しくは申立人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、商標法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 (1)本件商標 (2)引用商標1及び引用商標2 (3)引用商標3ないし引用商標7 (4)引用商標8ないし引用商標11 (5)引用商標12ないし引用商標14 (6)引用商標15ないし引用商標16 (7)引用商標17ないし引用商標18 (8)引用商標19 (9)引用商標20ないし引用商標23 (10)引用商標24 |
異議決定日 | 2008-06-17 |
出願番号 | 商願2006-50563(T2006-50563) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Z
(Y25)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 大橋 信彦、久保田 正文 |
特許庁審判長 |
小林 和男 |
特許庁審判官 |
小川 きみえ 石田 清 |
登録日 | 2007-04-27 |
登録番号 | 商標登録第5044304号(T5044304) |
権利者 | ヤマギワインターナショナル株式会社 |
商標の称呼 | ネットウエーブ、ウエーブ |
代理人 | 関根 秀太 |
代理人 | 中熊 眞由美 |
代理人 | 柳田 征史 |
代理人 | 佐久間 剛 |
代理人 | 鳥巣 実 |