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審決分類 審判 一部無効 称呼類似 無効としない Y25
審判 一部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y25
審判 一部無効 外観類似 無効としない Y25
審判 一部無効 観念類似 無効としない Y25
管理番号 1182741 
審判番号 無効2007-890068 
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-05-30 
確定日 2008-08-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4832061号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4832061号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成16年7月12日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同17年1月14日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標はその指定商品中「被服(和服を除く)、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)、運動用特殊衣服、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)及びこれらの類似商品」ついての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第62号証(枝番を含む。)を提出した。
〈理由〉
1 請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当し、その指定商品中「被服(和服を除く)、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)、運動用特殊衣服、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)及びこれらの類似商品」ついての登録を無効とされるべきであるとして引用する商標は、「CHOOP」の英文字(以下「引用商標1」という。)を書してなるものである。
引用商標1である英文字「CHOOP」は、本件商標の登録出願時点である2004年頃には既に「シュープ」の称呼によって取引者や需要者の間で周知となっていた商標である。
2 本件商標と引用商標1との類似について
本件商標は、甲第1号証に示すとおり、「baby Shoop」の文字よりなるところ、その構成中前半の「baby」の英文字部分は、後述するように本件商標の指定商品である衣類との関係において、それら衣類を取り扱う業者がその商品の用途を表示するものとして普通に使用しているものであり、自他商品識別標識としての機能を有しないものである。
そうとすれば、本件商標において、自他商品識別標識としての機能を果たすのは、後半部の「Shoop」の英文字部分であり、これより「シュープ」の称呼を生ずるものである。
他方、引用商標1は、「CHOOP」の英文字よりなるものであり、後述するように本件商標の登録出願時以前から既に「シュープ」の称呼をもって周知の商標である。
したがって、本件商標と引用商標1とは、「シュープ」の称呼を共通にする互いに類似する商標である。
上記主張を立証するために、以下、本件商標「baby Shoop」の前半部分を構成する英文字「baby」が自他商品の識別機能を有しない点について、及び、「シュープ」と称呼する引用商標1「CHOOP」の周知性について立証することにより、本件商標が周知である引用商標1に類似し、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当することを証明する。
(1)英文字「baby」が自他商品の識別機能を有しない点について
ア 本件商標の前半部を構成する英文字「baby」は「赤ん坊、乳児」等の意味を有する英語として親しまれている言葉であり、本件商標に係る指定商品である衣類などの取引業界においては、その用途、即ち、赤ちゃん用の商品を表すものとして一般的に用いられており自他商品の識別機能を有していない語である。
イ そして、「baby(ベビー)」と記載することによって「赤ちゃん用の商品」であることを示していることは、以下の業界の新聞などの記載からも明らかである。
例えば、2003年4月16日付の繊研新聞に掲載されている記事(甲第3号証)によれば、「モリリンは、今春「シュープ」ブランドのベビー服を発売したのに続き、…新たにベビーとトドラーを投入することで、…ベビー、トドラーそれぞれ初年度3億円(同)の売り上げを見込む。」とあるが、この中の「ベビー服」や「ベビー」の記載は、全て「赤ちゃん用の商品」を示しており「baby(ベビー)」の語に自他商品の識別力がないことは明白である。
ウ さらに、上記事実は、以下の(a)ないし(d)に示すような数々の審決例によって裏付けられる。
(a)昭和51年審判第1414号審決(甲第4号証)
(b)昭和58年審判第6246号審決(甲第5号証)
(c)昭和52年審判第8230号審決(甲第6号証)
(d)昭和56年審判第12248号審決及び昭和51年審判第13883号審決(甲第7号証及び甲第8号証)
3 引用商標1の周知性について
引用商標1は、1994年頃から使用を開始しており、これはボイス情報株式会社発行の「ライセンスビジネス名鑑2003[ブランド編]」に掲載されているブランド開始年表の「開始年」の記載により明らかである(甲第9号証)。その後、新聞、雑誌、テレビ等の広告媒体において幅広く宣伝された結果、本件商標の登録出願時である2004年には既に一般需要者、取引者の間において広く認識され周知になっている。
(1)以下、年代を追って引用商標1の周知性について立証する。
(ア)2001年時点(特許庁の無効審判(無効2004-35142)における周知性判断の基準時)における周知性の立証(甲第10号証(原審甲第1号証ないし甲第84号証)、甲第11号証)。
(イ)無効2006-89045審判の審決における周知性の立証(甲第12号証(原審甲第1号証ないし甲第9号証)及び甲第13号証)。
(ウ)AIPPI・JAPANの「日本有名商標集 第3版」(甲第14号証)に掲載上述したように、引用商標1の所有者は、引用商標1について更にその周知度を高めるべく広告宣伝の努力を継続した結果、上記の「日本有名商標集」にも掲載されている。
商標法の審査便覧によると、「商標の周知性の判断については、商標法第4条第1項第10号の審査において、AIPPI・JAPAN発行の「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」に掲載されている商標については、原則として我が国における需要者の間に広く認識されている商標と推認して取り扱うものとする。」とされている(甲第15号証)。
すなわち、引用商標1「CHOOP」は、我が国において、衣類業界及び一般需要者にも広く知られている周知商標であるということができる。
(エ)ブランド年鑑等に掲載されることによる引用商標1の周知化
さらに、各種ブランド年鑑においても、引用商標1「CHOOP」は「シュープ」の称呼で掲載されており、引用商標1は「シュープ」の称呼で周知化が図られた。
(i)例えば、2001年1月20日発行の「別冊チャネラー/ファッション・ブランド年鑑2001」(甲第16号証)を見ると、目次の中に「シュープ」とカタカナ文字のみで掲載されており(甲第16号証の1)、該当頁を見ると「シュープ(CHOOP)」として掲載されている(甲第16号証の2)。
(ii)同様に、2002年2月20日発行の「別冊チャネラー/ファッション・ブランド年鑑2002」(甲第17号証)、2003年4月20日発行の「別冊チャネラー/ファッション・ブランド年鑑2003」(甲第18号証)、さらに、2004年2月20日発行の「別冊チャネラー/ファッション・ブランド年鑑2004」(甲第19号証)、そして、本件商標の登録出願後の最新版である2005年2月20日発行の「別冊チャネラー/ファッション・ブランド年鑑2005」(甲第20号証)においても上記と同様の記載があり、引用商標1「CHOOP」が「シュープ」として周知化が図られていたことが立証される。
(iii)他のブランド年鑑においても、同様であり、2002年10月31日に発行されたボイス情報株式会社の「ライセンスビジネス名鑑2003〔ブランド編〕」(甲第9号証)の目次のインデックスの「し」の行にも「シュープ」として掲載され、その該当頁に「CHOOP(シュープ)」として詳細が掲載されており、2003年10月24日に発行された前記ボイス情報株式会社の「ライセンスブランド名鑑2004」(甲第21号証)においても同様である。
(iv)さらに、又別のブランド年鑑を挙げるならば、 2001年12月10日発行の繊研新聞社「ファッションブランドガイド SENKEN FB2002」(甲第22号証)の目次のブランドインデックスにおいても、そのサ行に「シュープ」として掲載され、その該当頁には「シュープ」(CHOOP)として載っており、2002年12月16日発行の繊研新聞社「ファッションブランドガイド SENKEN FB2003」(甲第23号証)、及び2003年12月16日発行の繊研新聞社「ファッションブランドガイド SENKEN FB2004」(甲第24号証)、さらに、2004年12月16日発行の繊研新聞社「ファッションブランドガイド SENKEN FB2005」(甲第25号証)においても、上記と同様の記載があり、これらの事実から、衣料の取引業界で引用商標1は「シュープ」の称呼で取引され周知化が図られていたことが明白である。
上記のように、引用商標1「CHOOP」は数々のブランド年鑑にも掲載され、この指定商品の属するファッション業界では「シュープ」と称呼すれば直ちに引用商標1「CHOOP」のことであると認識されており、その周知度は年を追うほどに高まっているのである。
(オ)テレビコマーシャルによる引用商標の周知化
引用商標1については、従来からテレビコマーシャルによってその周知化を図っており、前述した無効審判においても継続的にテレビコマーシャルを行なっている事実が立証された(甲第10号証(原審甲第15号証ないし甲第38号証))。
特に、引用商標1を使用し始めた初期の頃は、引用商標1の称呼である「シュープ」を周知化させるために集中的にテレビ媒体を使った広告を行なっており、例えば、「シュープ/CHOOP」の文字をそのタイトルの最初に付したテレビ番組が数多く放映された事実がそれを立証している(甲第10号証(原審甲第32の2号証、甲第33号、甲第34の1号証、甲第34の2号証及び甲第35号証ないし甲第38号証))。
例えば、日本テレビ系列全国28局ネットで放映された「シュープ/CHOOP夏休みスペシャル『入道雲は白,夏の空は青』(甲第10号証(原審甲第32号証の1)(原審甲第32号証の2)(原審甲第33号証))や、同じく日本テレビ系列全国28局ネットで「シュープ/CHOOP 春休みドラマスペシャル『卒業旅行』」(甲第10号証(原審甲第34号証の1)(原審甲第34号証の2)(原審甲第35号証))が、さらに、やはり日本テレビ系列全国28ネットで「CHOOP 春休みドラマスペシャル『空のかけら?MESSAGE from the sky』」(甲第10号証(原審甲第36号証)(原審甲第37号証)(原審甲第38号証))などのように「シュープ」 のタイトルを付けた番組まで提供することによって、大々的に引用商標1の「シュープ」の称呼を需要者の間に浸透させたのである。
(カ)雑誌による引用商標の周知化
本件商標の指定商品の取引者及び需要者が接するものと認められる雑誌については、引用商標1がその使用を開始した頃には、その構成文字である「CHOOP」が「シュープ」の称呼であることを需要者に知らしめるために、「シュープ」の振り仮名を併記したり、特にその称呼「シュープ」に需要者の注目を集めるような囲み記事などを掲載していた(甲第10号証(原審甲第4号証ないし甲第6号証))。
本件商標の登録出願時である2004年頃には、既に、引用商標1「CHOOP」は「シュープ」の称呼で周知になっており、取り立てて「CHOOP」の称呼が「シュープ」であると説明する必要はなくなっているが、以下のように継続して雑誌に広告を載せており、「シュープ」の称呼併記あるいは「CHOOP」や「シュープ」の単独記載も多数掲載されている。
(i)2001年においては、製品説明の欄において「シュープのロゴマークと英字マーク入りだよ」(学習研究社「ピチレモン」4月号)(甲第26号証)、製品詳細欄に「すべてシュープ」の記載(角川 SS コミニュケーション「Sesame」11月号)(甲第27号証)、「シュープな秋はショッキングなCOOL」(マシュット婦人画報社「Sister」11月号)(甲第28号証)、「カジュアルに着こなす/CHOOP!/CHOOP!/CHOOP!」(扶桑社「Junie」12月号)(甲第29号証)と宣伝を繰り広げている。
(ii)2002年においては、さらに男子向けにも販路を拡大して、「Choop」の文字を配した上着について「蛍光色のプリントは今シーズンのロングランヒット」(宝島社「mini」1月号)(甲第30号証)、中学生に向けて「ねらいめ*ぷちプライスブランド」「CHOOP/シュープ」(新潮社「nicola」2月号)(甲第31号証)、「春は CHOOP/シュープで元気にゴー」(学習研究社「ピチレモン」4月号)(甲第32号証)、「CHOOP の夏スタイル/LOVE!BEACH」(扶桑社「Junie」6月号)(甲第33号証)、CHOOPの水着等を着た女児達の広告(角川 SS コミニュケーション「Sesame」7月号)(甲第34号証)、「サンフランシスコ生まれの要チェックブランド CHOOPから夏アイテムが登場!…」、「秋はCHOOP/シュープのボーイズ MIXでキメる!!」(学習研究社「ピチレモン」10月号)(甲第35号証)、スクールファッションについても「スクール CHOOP、おしゃれCHOOPどっちでいく?」(学習研究社「ピチレモン」11月号)(甲第36号証)、CHOOPの製品を着た男の子や女の子たちの広告(角川 SS コミニュケーション「Sesame」11月号)(甲第37号証)、と幅広い雑誌にコンスタントに広告を展開している。
(iii)2003年においても、「CHOOP でキラキラ SUMMER」(扶桑社「Junie」6月号)(甲第38号証)、「大人気の piu×CHOOPのコラボウエアがデビュー」(新潮社「nicola」9月号)(甲第39号証)、「『ピウ』×『シュープ』 コラボウエア登場」(集英社「SEVENTEEN」9月1日号)(甲第40号証)、「ポップでキュートで元気いっぱいのカジュアルウエア『シュープ』」((株)フジテレビジョン「ESSE」9月号)(甲第41号証)、「CHOOP ロックラインが熱い!!」(祥伝社「Zipper」10月号)(甲第42号証)、「秋冬おしゃれは元気いっぱい/CHOOP/シュープをチェキッ☆」新潮社「nico1a」11月号)(甲第43号証)など精力的に宣伝活動を行なっている。
(iv)そして、2004年にも、「オン・オフいつでもいっしょ!!激カワ▼CHOOP!」(「▼」は小さなハート印)(集英社「SEVENTEEN」1月15日号)(甲第44号証)、
「春は CHOOP で元気にスポーツ!」(新潮社「nicola」4月号)(甲第45号証)など多くの引用商標1の広告を掲載している。
上述したように、本件商標の登録出願時である2004年7月12日以前までの広告を取り上げて、引用商標1の商標権者が、常に「シュープ」の周知性の維持拡大に努めている事実を立証した。
(キ)引用商標1に関する新聞記事による引用商標1の周知化
本件商標の指定商品である衣類業界において周知である繊研新聞においても、例えば、2002年7月17日付の「ヒロ・コーポ/「シュープ」の姉妹2ブランドしまむら独占販売」の記事(甲第46号証)、2002年11月15日付の「モリリン/子供服四つの新ブランド/トドラー、量販向け強化」の記事(甲第47号証)、2002年12月5日付の「『シュープ』メンズウエア/来春から本格販売」の記事(甲第48号証)、2003年4月16日付の「モリリン/女児服全般へ攻勢/『シュープ』でトドラーも」の記事(甲第49号証)、2003年9月30日付の「ブランド細分化を推進/2カテゴリー追加/クラウンファンシーグッヅ『シュープ』」の記事において「シュープ」と記載されている商標は、全て引用商標1「CHOOP」を指標しており、このような称呼のカタカナ表示のみの記載により、引用商標1は「シュープ」の称呼でもって十分に周知になっていることが明白であり、このように頻繁に記載されることにより益々周知度が高まっているのである。
(ク)広告宣伝費用及び売上実績
上述のような引用商標1「CHOOP」の広告宣伝に費やした費用(衣類、バッグ等に関して)は、市場価格ベースで2002年において3,700万円、2003年において3,700万円、2004年において5,400万円であり1994年にこの商標の使用を開始して以来の累計は8億5,200万円であった。
また、引用商標1を使用した衣料の売上実績は、市場価格ベースで2002年において19億7000万円、2003年において29億2000万円、2004年において12億5000万円であり1994年に商標使用開始して以来その合計は120億1700万円にも上るものである。
(2)以上のように、2001年当時、更に、その後本件商標の登録出願時である2004年時点においても引用商標1「CHOOP」が「シュープ」の称呼で周知であることは明らかである。
ここで、本件商標である「baby Shoop」は、既に周知引用商標1「CHOOP」に類似するものとして一部無効となっている関連商標1「Shoop及び図形」( 登録第4558874号、別掲(2))及び関連商標2「Shoop」(登録第4832063号)の一部である構成文字「Shoop」に対して、単にその商品の用途、すなわち、「ベビー用」のものであるということを表示し自他商品の識別力を有しない記述的文字である英文字「baby」を付加したにすぎないものである。
したがって、本件商標「baby Shoop」は、その構成文字のうち、かかる識別機能を有しない文字である「baby」が捨象されることによって、商標の識別力を有する後半部分の「Shoop」の英文字のみをもってその類否を判断されることになる。
その結果、当該英文字「Shoop」は、その英文字に相応して「シュープ」の称呼が生ずるのは明らかであり、前記審決で判断しているように、本件商標の後半部分の構成文字「Shoop」は周知引用商標1「CHOOP」とその称呼が「シュープ」である点において類似する。
このように相紛らわしい商標である本件商標が存在することにより、出所の混同を生じて、周知引用商標1に蓄積した多大な信用も希釈化することになる。
また、周知引用商標1「CHOOP」に類似する商標「Shoop」に、英文字「baby」のような商品の用途を表示する文字を付加することにより構成される本件商標の存在は、需要者に対し、周知引用商標1「CHOOP」に係る商品のうちベビー向けのものを表示しているものであると出所の混同並びに商品の品質の誤認を生じさせるおそれもある。
したがって、そのような本件商標の登録は認められるべきものではないと確信する。
4 商標法第4条第1項第10号について
以上述べてきたように、本件商標は、その指定商品が引用商標1の使用商品に類似し、その前半部の英文字「baby」が自他商品の識別力を有しないため、要部である後半部の英文字「Shoop」が請求人の周知引用商標1に類似するので商標法第4条第1項第10号に該当し登録を受けることのできない商標であって、商標法第46条第1項により一部無効とされるべきものである。
5 商標法第4条第1項第11号について
本件商標の先願先登録商標は、以下の(1)ないし(3)のとおりであって、いずれも請求人の登録商標であり、「CHOOP」の文字と図形から構成されているものである。
(1)登録第4006582号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成6年1月27日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同9年6月6日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである(甲第50号証)。
(2)登録第4545251号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、平成13年4月16日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年2月22日に設定登録されたものである(甲第51号証)。
(3)登録第4545253号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(5)のとおりの構成よりなり、平成13年4月16日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年2月22日に設定登録されたものである(甲第52号証)。
ここで、これらの登録商標の文字部分「CHOOP」は、前述した周知となっている引用商標1と同一の称呼「シュープ」を生ずるものと一般の需要者に広く認識されていることから、本件商標と称呼上類似するものである。
さらに、本件商標の指定商品は前記引用商標2ないし引用商標4と共通するものであることから、本件商標は、その先願先登録である請求人の引用商標2ないし引用商標4と類似するものであり、商標法第4条第1項第11号に該当するので登録を受けるべきではない。
なお、本件に関する証拠中で「クラウンファンシーグッヅ株式会社」とあるのは、請求人である「株式会社クラウン・クリエイティブ」の旧名称である(甲第53号証)。
6 答弁に対する弁駁
(1)本件商標について
本件商標「baby Shoop」は、常に一体としてのみ把握されなければならないというべき性質の商標ではなく、前半の「baby」と後半の「Shoop」とに分離して把握され、把握したところに従って、後半部から「シュープ」の称呼が生じ、請求人の周知商標「CHOOP」と「シュープ」の称呼において類似するのは明らかであって、被請求人の主張は失当である。
以下理由を詳述する。
(ア)本件商標の外観
本件商標は、一見して直ぐ分かるように、前半の文字「baby」は全て英文字の小文字のみで後半の「Shoop」の文字よりも小さく表わされており、それに対し、後半の「Shoop」はその最初の英文字が大文字で記載され、前半部より大きく目立つように表わされている。
さらに、前半部の「baby」と後半部の「Shoop」の間には、半文字分のスペースが空いており、前半部と後半部の間が区切られているのが明瞭に判別できる。
したがって、本件商標に接した需要者は、前半部の文字「baby」に比べ構成においてより大きく表示された後半部の文字「Shoop」に特に注目し、その構成文字「baby Shoop」から「Shoop」の部分を分離抽出するので、外観的に見ても本件商標「baby Shoop」が一体不可分であるとの被請求人の主張は失当である。
(イ)本件商標の観念
本件商標における文字部分は、「baby Shoop」であり、「baby」と「Shoop」の2語から構成されているものと理解され、認識されることは前述したとおりである。
(a)被請求人は、上記の前半部の文字「baby」の語について、「baby」は、「赤ちゃん」の意味で親しまれている言葉であるものの、同様に、従来から「かわいい人」や「恋人を称する意味」でも親しまれている(乙第2号証ないし乙第11号証)と主張する。
しかし、英文字「baby」の語に需要者が接するときに一番最初に浮かぶ観念は、「赤ん坊、赤ちゃん」という意味であり、この事実は、上記乙第2号証等の英和辞典の語意でも一番最初にも掲載されていることからも容易に立証でき、既に日本人の間での一般的常識になっている。
これに対し、被請求人の主張する「かわいい人」や「恋人を称する意味」の語意は、乙第2号証等の英和辞典の語意においても、第4番目か5番目くらいに位置する俗語的意味であって、一般需要者が当該英文字「baby」に接して当然に浮かんでくる観念であるとはいえない。
さらに、「baby」の文字は、本件商標の指定商品である被服類の取引業界では、その用途を表わすものとして理解され、自他商品の識別機能を有さないもの或いは当該識別機能の乏しいものと考えられる。
結果として、本件商標の取引業界において、一般需要者は「baby」の文字に接するとき、先ず第一に「赤ん坊、赤ちゃん」の観念を思い浮かべ、赤ちゃん用の被服ではないかと観念するのが一般的である。
(b)次に、本件商標の後半部の文字「Shoop」であるが、被請求人の造語であって一番顕著性を有する部分である。
すなわち、本件商標「baby Shoop」のうちで、「baby」の部分は、前述したようにほとんど顕著性を有しないのであり自他商品識別力のない部分あるいは識別機能の弱い部分といえるのに対し、後半の「Shoop」の部分は、造語でもあることから強い自他商品識別力を有し、本件商標の要部であるといえる。
被請求人は、「Shoop」は、造語であり、「黒人音楽愛好者の間では『ため息の音』を意味するものとして親しまれ、『セクシーさ』を想起させることから、本件商標の全体として『愛しい人のためいき』の如き観念を生じさせるものである。」と主張する。
しかし、商標の類否判断の主体は取引者及び一般需要者であり、英和辞典にも「shoop」の語は掲載されておらず(甲第54号証)、仮に、需要者の一部である黒人音楽愛好者の間で「Shoop」が「ため息」を意味するものとして親しまれているとしても、それによって、「Shoop」の意味が「ため息」であることが、被服業界における不特定多数の一般需要者の通常の知識になっているとは到底考えられない。
したがって、「Shoop」の文字は、被請求人も認めているように、造語であるので、特定の観念は生じないと考えられる。
(c)さらに、「baby Shoop」全体について検討するならば、前半部の「baby」の文字を用途を示す形容詞的に使う用法はよく知られており、「赤ん坊の○○」、「赤ちゃん用の○○」の意味で用いる例は数多い。
ここで、本件商標の「baby Shoop」において、「赤ん坊のShoop」、「赤ちゃん用のShoop」と想定したとしても、前述のとおり、「Shoop」は造語であり、需要者、取引者にとって特定の観念を生じないのであるから、「赤ん坊のShoop」、「赤ちゃん用のShoop」といっても、これに接した需要者、取引者は、赤ちゃんの何なのか理解、認識しえず、結局、「baby Shoop」も「Shoop」と同様に、特定の観念を生じないものというべきである。
したがって、「baby Shoop」について、被請求人の「本件商標の全体として『愛しい人のためいき』の如き観念を生じさせるものである。」との主張は、全く根拠の無いこじつけにすぎない。
(d)なお、被請求人は、「近年においては、例えば『ベビードール』、『ベビーフェイス』、『ベビーピンク』のように、他の言葉と結合して新たな造語として親しまれている傾向が認められる(乙第12号証)。すなわち、近年においては、需要者は、『baby』が結合した造語に対し、『baby』の部分が品質であるというよりもむしろ、『新たな造語』として理解し把握することが一般的である。」と主張する。
しかし、上記「ベビードール」、「ベビーフェイス」、「ベビーピンク」 は、それぞれ「子どもっぽい女性」、「童顔」、「明るいピンク色」など(乙第12号証)のように一定の観念をもった言葉である。
これに対し、本件商標は、上述したように、「赤ん坊のShoop」、「赤ちゃん用のShoop」、或いは、被請求人の主張するように「かわいい人のShoop」や「恋人のShoop」といったところで、何ら特定の観念は生じないのである。
したがって、観念的にみても、本件商標「baby Shoop」が一体不可分であるとの被請求人の主張は失当である。
(ウ)引用商標「CHOOP」の周知性と本件商標の分離観察
(a)引用商標1「CHOOP」は、既に審判請求書でも述べたように周知商標であり、これまでにも無効2004-35142の審決(甲第11号証)や無効2006-89045の審決(甲第13号証)で示されているように、特許庁においても「シュープ」の称呼で周知であると判断されている商標である。
このような場合に、本件商標「baby Shoop」に接する需要者は、本件商標中から引用周知商標「CHOOP」とその称呼において同一である「Shoop」の部分に注意が向くことはごく自然なことであり、このような者が、本件商標「baby Shoop」を「baby」と「Shoop」に区切って把握し、「Shoop」のみを分離抽出することは十分にあり得ることである。
(b)被請求人は、種々の審決例や登録例を掲げて、「近年の審判、登録例を参酌するに「baby」は他の言葉と結合し、一体不可分と判断されている。」と主張する。
しかし、上記審決例などは、本件商標の場合のように、引用商標1が周知であるため「baby」と「Shoop」を途中で区切って把握すべきなどの特別の事情が存在せず、本件商標とは事例を異にするものである。
すなわち、本件商標の場合のように、引用商標1「CHOOP」が「シュープ」の称呼において周知であるという前提条件の下において、かつ、本件商標を構成する文字の中で「baby」が自他商品識別力を有しないか或いはその識別機能が乏しい場合であって、しかも、当該文字「baby」が「Shoop」の文字よりも小さく表示されて目立たなくなっているような場合には、一般需要者は、本件商標の中から「Shoop」のみを分離して観察し、その結果、引用商標1「CHOOP」と本件商標の間で出所の混同を生じるおそれが高いので、本件商標と引用商標1とは類似する。
これに対し、被請求人が掲げた審決例の場合には、そのような前提条件を有していないので、本件商標とは同列に判断することができない。
(c)上記のような判断は、平成14年(行ケ)第195号審決取消請求事件(甲第55号証)おいても認められている。
(d)すなわち、本件商標「baby Shoop」の場合も上記判例と同様に、造語であって、それ自体意味を有する言葉として定着しているものではなく、さらに、「baby Shoop」という語自体に、視覚上、聴覚上、一体のものとしてしか把握され得ないものではないことも明らかであるので、本件商標に接した者が、途中で区切られたものとして理解しそのように称呼することは十分にあり得る。
また、引用商標1「CHOOP」が「シュープ」の称呼により特定の出所として周知であることは既に立証されているとおりであるから、「baby Shoop」に接する者の中には、「シュープ」の称呼を有する引用商標1「CHOOP」の存在を念頭において本件商標に接する者が多い。
そして、このような者にとって、「baby Shoop」に接したとき、まず「シュープ」の称呼を有する「Shoop」に注意が向くことはごく自然なことであり、このような者が、「Shoop」とその前の「baby」とを区切って把握する可能性は十分にある。
その結果、上記判例と同様に、本件商標と引用商標1とは、その称呼「シュープ」において類似する。
(エ)まとめ
上述したように、本件商標「baby Shoop」中の「baby」と「Shoop」の間では軽重の差があり、その中心的な自他商品識別力を有する要部は「Shoop」の部分である。
すなわち、外観的にも、観念的にも、更には、引用商標1の周知性を考慮した上でも、「baby」の部分と「Shoop」の部分が区切って把握され、「Shoop」の部分が分離抽出して認識されるものであり、「Shoop」の文字部分から「シュープ」の称呼が生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標1とは、その称呼を共通にするので類似する商標である。
(2)本件商標等の周知性について
(ア)被請求人は、本件商標「baby Shoop」及び被請求人の関連商標「Shoop」が「B系ファッション」を愛好する需要者層の間において、周知・著名性を獲得していると主張し、種々の証拠を列挙している(答弁書・9頁ないし13頁)。
ところで、商標法第4条第1項第10号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標またはこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務またはこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」と規定する。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたのか否かの判断に際して検討すべき要件事実は、
(a)引用商標の周知性
すなわち、引用商標1が請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているかどうか。
(b)商標の類似性
すなわち、本件商標が引用商標1に類似するか否か。
(c)使用商品の同一性または類似性
すなわち、引用商標1が使用される商品またはこれに類似する商品について本件商標が使用されるものか否か。
の3点についてのみである。
そして、被請求人が主張するところの、
本件商標「baby Shoop」や関連商標「Shoop」が被請求人の被服等を表示するものとして周知性を獲得していたか否か。
の事実は、商標法第4条第1項第10号適用のための前記要件事実に含まれるものではない。
したがって、仮に、被請求人の本件商標「baby Shoop」や関連商標「Shoop」の周知性が認められるようなことがあったとしても、本件商標が上記(a)ないし(c)の三つの要件を具備する以上、商標法第4条第1項第10号に該当する。
請求人の主張は、裁判所の判断においても同様であり、東京高等裁判所(平成9年(行ケ)318号)判決(平成10年12月24日)(甲第56号証)の判例によっても裏付けられるものである。
(イ)以上述べてきたように、被請求人の本件商標及び関連商標が周知であるとする主張は、引用商標1が周知であり、本件商標「baby Shoop」と引用商標1「CHOOP」が類似していることが明らかである以上、商標法第4条第1項第10号の適用において何ら根拠のないものであり失当である。
(3)請求人の商標について
(ア)顧客吸引力を獲得している商標の特定について
被請求人は答弁書において、審判請求書の証拠の雑誌、新聞広告その他の資料中の表現から引用商標1の「CHOOP」がリスと関連付けられ、従って引用商標1のみから直ちに「シュープ」との称呼が生じるというよりも、顧客吸引力を獲得している「リス図形」と、引用商標1を組み合わせた態様、若しくは、リスを想起させる態様によって、請求人の業務に係る商品であると認識するものと断定し得るものであると主張しているが失当である。
すなわち、ここで問題とされるべきは、引用商標1「CHOOP」の称呼「シュープ」 が需要者の間に広く認識され周知であるか否かであり、請求人の使用する商標の「リスの図形」部分に顧客吸引力が認められるか否かとは無関係である。
既に、請求人は引用商標1「CHOOP」が「シュープ」の称呼で周知であることを種々の証拠を挙げて立証しており(甲第26号証ないし甲第45号証)、当該証拠の雑誌等においても明らかなように、「CHOOP」の文字のみで表示されている場合や、シャツ等の胸部に「CHOOP」の文字のみが表示されている場合など、「リス図形」とは無関係に、引用商標1「CHOOP」が単独で表示されている例は数多い。
たとえ、引用商標1が「リス図形」と同時に使用される場合であっても、常に「リス図形」と一体的な態様の「CHOOP」として観察すべき必要はなく、「リス図形」から一定の称呼、観念が生じるとしても、文字商標「CHOOP」の部分からも「シュープ」の称呼が生じている。
そして、仮に「リス図形」の部分に顧客吸引力が認められたとしても、そのことは引用商標1「CHOOP」の部分にも顧客吸引力が存在することと矛盾するものではなく、引用商標1の「シュープ」としての周知性を否定する根拠にはなりえないのである。
したがって、既に立証したように、引用商標1「CHOOP」が本件商標の登録出願時点及び査定時において「シュープ」の称呼で周知であることが明白である以上、被請求人の主張は失当である。
(イ)引用商標1「CHOOP」の称呼について
引用商標3及び引用商標4の審査時(査定起案日:平成14年1月15日)及び異議決定日(平成15年1月16日)は、無効審判2004-35142号の審決(甲第125号証)の審決時(平成16年11月10日)より前であり、当時における審査及び審理判断においては、引用商標1「CHOOP」が「シュープ」として周知であるなどの取引実情は考慮されておらず、単に英文字「CHOOP」の外観態様から自然に発生する称呼である「チョープ」をもって形式的に判断されているからである。
したがって、上記取引実情を考慮し、実際に需要者間で周知である引用商標1「CHOOP」の「シュープ」の称呼をもって引用商標3及び引用商標4の「CHOOP」の称呼を判断すべきである。
(ウ)引用商標1と「使用商品」の特定
請求人の引用商標1が常に「リスをキャラクター」としているのではないことは、前記(3)(ア)において述べてきた請求人の主張により明らかであり、また、常に「ティーンズ」のみが対象になっているわけでもないことは、甲第57号証ないし甲第59号証などからも明らかであるので、かかる主張は失当である。
さらに、被請求人は、以下のような主張を行なっているが悉く失当である。
即ち、
(a)テレビCMにおける使用例についての主張は、テレビCM放送証明書は第三者である株式会社読売広告社作成の証明書であって、同証明書記載のテレビCMが放映された事実を裏付ける客観的な証拠に他ならない。
また、「テレビ東京系6局ネット」、「フジテレビ系26局ネット」との記載は、第三者である株式会社読売広告社が記載したものであり、請求人の主張するものではない。
なお、テレビCMの「放送回数」については、上記株式会社読売広告社より証明を受けることが出来たので、甲第60号証としてこれを提出する。
(b)テレビタイム放送確認書についての主張は、周知化に寄与するための客観的な基準も明示せず、具体的根拠を欠いた主観的な主張である。
(c)請求人協力のテレビドラマについての主張は、請求人協力のテレビドラマは「ティーン層の女の子」を対象としたもので視聴者が極めて限定されるとの独断的な主張であるが、仮にその主張を認めたとしても、引用商標1がテレビを媒介にして本件商標にかかる商品である被服類について幅広く使用され、「シュープ」の称呼を周知化した事実に変わりはない。
(d)ライセンスビジネス年鑑等の掲載についての主張は、ライセンスビジネス年鑑等の掲載がアンケートに回答して提出することであっても、掲載されることによって周知化に寄与していることは明らかである。
(4)「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」(甲第14号証)について
商標が日本有名商標集に掲載されていることによって、当該商標が広く認識されていると推認して取り扱われるべきであることは当然であり、広く認識されてないと主張するならばその根拠を立証しなければならない。
また、日本有名商標集に掲載されているのが「リスの図形」と「CHOOP」の英文字が組み合わされた態様であることは、リスの図形と「CHOOP」の文字の組み合わせのみが有名であって「CHOOP」の英文字が「シュープ」の称呼で周知ではないとの根拠にはなり得ない。
したがって、引用商標1がリス図形と組み合わされた態様で掲載されていることは、何ら引用商標1の周知性を減殺するものではなく、被請求人の主張は失当である。
(5)被服分野の取引の実情
本件商標の指定商品である被服類は、日常的に使用される商品であり、その需要者は特別の専門知識を有する者でもない一般消費者であることからすれば、その需要者がこれらの商品を購入する際に払う注意力はさほど高くないとみるべきである。
したがって、本件商標が使用される商品である被服類に関しては、被請求人の主張するような「B系ファッション」についての知識や、年代や趣向性によってブランドの相違を明確に区別できる高度な注意力を需要者が有していることを前提とすべきではない。
さらに、近年においては、ファッションにおいて、年代による分類のボーダーレス化が進んできており、例えば、マーケティングの専門書「実践ファッションマーケティング」の68頁には「(6)ファッションはエイジレス化へ」のタイトルの下、「社会の価値観が多様になり、世代・年代の属性だけで分けることは必ずしも正しいとはいえなくなってきた。」との記載がある(甲第61号証)。
すなわち、当該専門書にもあるように、「一見姉妹と見まちがうような若く見える母親」が、娘と同じようなファッションを選択し着用している事実は、テレビ報道やファッション雑誌でも明らかであり、被請求人の主張するようなティーン層と20代から30代の需要者の間で明確に区別するとの主張は根拠のないものであることが明白である。
そして、このような被服類の取引の実情は、裁判所の判断においても肯定されているところであり、平成12年(行ケ)第57号審決取消請求事件(甲第62号証)の判例においても明らかである。
すなわち、被請求人の主張するように専門的知識を有して、明確にブランドを区別し、前もって販売場所を調査し、販売されているフロアまで認識した上で購入しようとする需要者が一部存在するとしても、大部分の需要者は、専門的な知識を有して明確にブランドを区別していなかったり、他の用事のついでに立ち寄って購入しようとしたり、目的の販売場所の近くをウインドウショッピングした流れで 別のフロアで衝動買いしてしまったり等しており、このような多種多様な購買態様にみられるのが需要者の通常的な注意力であり、それは上記判例の判断によっても明白である。
そして、何よりも、流行の移り変わりの激しい分野であるファッション関連分野における取引実情を考える上において、将来変動する可能性の大きい趣味性や趣向性などの現時点における要素を、取引の実情であるとして商標の類否判断において重視すべきはない。
そのような取引の実情は、流行の変遷と共に如何様にも変動しうるのであり、また、事業展開の変化によっても互いに出所混同を生じうるものなのである。
したがって、かかる被請求人固有の取引の実情を考慮して、本件商標と引用商標1の間で出所の混同を生ずるおそれがないとする被請求人の主張は失当である。
(6)商標法第4条第1項第10号について
本件商標が商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるかを判断するに際して検討されるべき要件は、既に、前述の(2)において述べたごとく、
(a)引用商標1の周知性
(b)商標の類似性
すなわち、本件商標が引用商標1に類似すること
(c)使用商品の同一性または類似性
すなわち、引用商標1が使用される商品またはこれに類似する商品について本件商標が使用されていることの3点についてのみである。
ここで、要件(a)については、前記(3)(ア)で述べたように引用商標1は、周知性を有しており、既に審決等(甲第11号証及び甲第13号証)によっても認められている。
また、要件(b)については、前記(1)で述べたように、本件商標は一体不可分に把握されるべきものでもなく、引用商標1に類似する。
さらに、要件(c)については、本件商標が使用される商品及び引用商標が使用される商品が、共に被服類であって共通する。
したがって、本件商標は上記三つの要件全てを具備し、商標法第4条第1項第10号に該当し登録を無効にすべきである。
なお、被請求人の主張する、本件商標の周知化、本件商標と引用商標1との需要者層の相違、被請求人の商標に係るブランドは「セクシーガール」に分類され「リスのキャラクター」を軸とした引用商標1に係るブランドとは明確に区別できるという被請求人固有の取引の実情などは、商標法第4条第1項第10号の要件にも含まれず、被請求人の主張は失当である。
(7)商標法第4条第1項第11号について
本件商標「baby Shoop」については、既に前記(1)で述べたように、前半の「baby」の部分と、後半の「Shoop」の部分が区切って把握され、特に「Shoop」の部分が分離抽出して認識されるものであるから、「Shoop」の文字部分に応じて「シュープ」の称呼が生ずる。
一方、引用商標1「CHOOP」は、本件商標の登録査定時(査定起案日:平成16年12月6日)において、「シュープ」の称呼で周知になっており、引用商標2ないし引用商標4は、いずれも「CHOOP」あるいは「Choop」の文字を図形の下部に表わして成るものであるので、その部分より「シュープ」の称呼が生ずる。
したがって、本件商標と引用商標2ないし引用商標4とは「シュープ」の称呼を共通にするので互いに類似し、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
7 むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「被服(和服を除く)、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)、運動用特殊衣服、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)及びこれらの類似商品」について、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づきその登録を無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第76号証(枝番を含む。)(乙番号は、重複している部分があるが通し番号のままとし、具体的内容を表示することとした。)を提出した。
〈答弁の理由の概要〉
1 請求人の主張について
(1)「Baby」の識別力について
「baby」は、「赤ちゃん」の意味で親しまれている言葉であるものの、同様に、「かわいい人」や恋人を称する意味でも親しまれており、近年においては、例えば「ベビードール」、「ベビーフェイス」、「ベビーピンク」のように、他の言葉と結合して新たな造語として親しまれている傾向が認められる。かかる時代の趨勢から、近年の審判、登録例を参酌するに「baby」は他の言葉と結合し、一体不可分と判断されている。
(2)被請求人の商標について
ア 本件商標「baby Shoop」について
被請求人は、「黒人系ファッション」とのブランドコンセプトの元で、少なくとも1996年から商標「Shoop」について使用を開始しており、ブランドの人気向上と共に商標権を取得し、その後も継続して自己の登録商標を使用し、業務上の信用を化体させてきたものである。全国に約20店舗の直営店を展開し、年間約30万人もの顧客を有するものであり、B系ファッションのリーダー的地位を獲得しているものである。
そして、請求人からの無効審判請求に対し、無用な紛争を回避すべく、姉妹ブランドである本件商標「baby Shoop」を開始させ、継続的な広告戦略やイベント活動によって「ベイビーシュープ」として親しまれ、現在に至るものである。
イ 関連商標「Shoop」について
被請求人は、関連商標「Shoop」に係るファッションブランドを少なくとも1996年から使用を開始しており、当該ブランドは、被服等についての売上高は、約8億円(平成12年度)、約11億円(平成13年度)、約15億円(平成14年度)、約19億円(平成15年度)にのぼるものであり、年間約30万人が購入するまでに人気を博している。また、「B系ファッション」を愛好する層が好む地域や媒体に対して集中的に宣伝・広告を展開しており、ブランドイメージと結びついた音楽イベントや企画CDを展開している(乙第36号証ないし乙第42号証)。
平成15年は、約8千万円、平成16年には、約7千万円もの金額を宣伝広告費として支出し、B系ファッションのリーダー的地位を獲得しているものである。本件商標は、関連商標にて築きあげた業務上の信用を、引き継いで展開したファッションブランドである。
(3)請求人の商標について
ア 顧客吸引力を発揮する商標の特定について
需要者が、請求人の業務に係る商品であると認識し得るものは、「リス図形」と一体化した「CHOOP」であり、すなわち、需要者が請求人の業務に係る商品を認識することができるものは、「リス図形」、若しくは「リスを想起させる態様」による「CHOOP」である。
イ 引用商標1「CHOOP」の称呼について
別掲(4)、(5)の引用商標3及び引用商標4は、異議2002-90327号、異議2002-90329号の審理において、「本件商標は、『choop』の文字部分から『チュープ』の称呼が生ずるものと認められる。」との認定されていることから、審査時ばかりでなく、登録異議の申立ての審理時においても、「シュープ」との称呼は生じないと判断されている。
ウ 引用商標1と「使用商品」の特定
請求人の引用商標1は、成人女性向けの「マタニティ・ウェア」及び「パジャマ」、「子供用水着」について使用例が見受けられるものの、主に「10代(ティーン世代)の少女層」であって、着心地を主眼とした「カジュアル」な分類に属する「ティーン層の少女向けのカジュアル趣向のブラウス、ティーン層の少女向けのカジュアル趣向のTシャツ、ティーン層の少女向けカジュアル趣向のトレーナー、ティーン層の少女向けカジュアル趣向の靴下、ティーン層の少女向けカジュアル趣向のスカート、ティーン層の少女向けカジュアル趣向のスニーカー」について、主として使用したことが認められるものである。
したがって、仮に、引用商標1「CHOOP」に接した需要者が、請求人の業務に係る商品であることを認識することができるものは、「ティーン層の少女向けのカジュアル趣向のブラウス、ティーン層の少女向けのカジュアル趣向のTシャツ、ティーン層の少女向けカジュアル趣向のトレーナー、ティーン層の少女向けカジュアル趣向の靴下、ティーン層の少女向けカジュアル趣向のスカート、ティーン層の少女向けカジュアル趣向のスニーカー」に止まるものである。
エ 「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」(甲第14号証)について
日本有名商標集に掲載されている商標は、「文字商標のみ」からなる引用商標1ではなく、「リスのマーク」の下部に「CHOOP」(Pの文字の前の「O」はデザイン化されている。)が構成された態様である。
してみれば、上述のとおり、「リスのマーク」に顧客吸引力が獲得されているものであり、「リスのマーク」と組み合わされた態様であることから、日本有名商標集に掲載が認められたものと考えられ、引用商標1が「有名商標」であるとはいえない。
2 被服分野の取引の実情
本件商標の指定商品である「被服」等ファッション分野は、需要者の趣向性(好み)が強く発揮されるものであることから、需要者の選択に際して、かかる趣向性が極めて大きく左右するところである。
また、どのような目的で着用する被服であるか、どのような場所へ着ていく被服であるか、といった、購入に際する「動機付け」が大きく作用することが認められる。そして、自らの外観を装う被服であることから、需要者は、一般需要者であっても、外観に充分に注意力を発揮するものである。
かかる被服分野の特殊性に応じて、被服の分野は、需要者層に応じて取引の場が異なる特殊性を有することが認められる。例えば、「原宿」、「銀座」、「巣鴨」では、主として取り扱う被服の趣向性が異なる事象が見られ、デパートでは「ヤング」「キャリア」として、女性被服であっても販売フロアが異なる例が見受けられる。また、ファッション雑誌においても、「30代キャリア女性向け」、「ティーン層向け」、「高級ブランド愛好者向け」など、需要者に応じて、異なる趣向性の雑誌が創刊されている事実が認められる。
このように、被服の分野は、性別、年代、趣向性が異なれば、販売場所(地域、店舗、取引場所)が異なるという特殊性を有する分野である。
3 商標法第4条第1項第10号について
顧客吸引力を備えている請求人の商標は、「リスのマーク」であって、引用商標1ではない。また、文字商標「CHOOP」のみから当然に「シュープ」との称呼が生じるとはいい難く、むしろ、審判における判断から「チュープ」との称呼が生じると考えられる。さらに、引用商標1のみから、需要者が請求人の業務に係る商品であると直ちに認識されるとの客観的証拠が見当たらない。
本件商標は、「ベイビーシュープ」との称呼を生じるものであり、「チュープ」との称呼を生じさせる請求人の引用商標1とは、称呼長・語調・語感のいずれも全く相違するものであって、外観、観念のいずれも異なることから、本件商標と引用商標1とは、相紛れるおそれはなく、需要者等に出所の混同を招来させるおそれはない。
仮に、引用商標1から「シュープ」との称呼が生じるとしても、「被服」分野は、(a)外観に強く注意力を発揮すること、(b)「可愛い系」、「セクシー系」などの商品の趣向性にて、取引者、需要者は、明確に識別すること、等の被服分野の取引の実情を考慮すれば、請求人の「リスのマークのCHOOP」と、被請求人の「B系ファッションのbabyShoop」とは、被請求人の「B系ファッション」としての周知・著名性と相俟って、取引者・需要者をして出所の混同を招来せしめるおそれはない。
4 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「ベイビーシュープ」との称呼を生じるものであり、「チュープ」との称呼を生じさせる請求人の引用商標2ないし引用商標4とは、称呼長・語調・語感のいずれも全く相違するものであって、外観、観念のいずれも異なることから、本件商標と各引用商標とは、相紛れるおそれはなく、外観、観念、称呼のいずれにおいても明確に区別し得る非類似の商標である。
5 請求人の主張に対する具体的理由
(1)「Baby」の識別力について
本件商標は、「baby Shoop」との、一体不可分の商標と理解することが、以下の理由により相当であり、請求人の主張は、失当である。
ア 「baby」は、「赤ちゃん」の意味で親しまれている言葉であるものの、同様に、従来から「かわいい人」や「恋人を称する意味」でも親しまれており(乙第2号証ないし乙第11号証)、また、近年においては、例えば「ベビードール」、「ベビーフェイス」、「ベビーピンク」のように、他の言葉と結合して新たな造語として親しまれている傾向が認められる(乙第12号証)。
すなわち、近年においては、需要者は、「baby」が結合した造語に対し、「baby」の部分が品質であると認識するというよりもむしろ、「新たな造語」して理解し把握することが一般的である。
イ かかる傾向は、近年の審判における、不服2004-1935号(乙第13号証)、異議2004-90472号(乙第14号証)、異議2001-90752号(乙第15号証)及び不服2002-3330号(乙第16号証)の判断からも認められるところである。
また、これらの審決例が示す考え方に立脚して判断されたと考えられる登録例は、「BRIGHT/ブライト」と「BABY BRIGHT」とが、併存して登録されている(乙第17号証の1、乙第6号証の2)外、乙第18号証の1及び乙第7号証の2、乙第19号証の1及び乙第8号証の2、乙第20号証の1及び乙第9号証の2、乙第21号証の1及び乙第10号証の2、乙第22号証の1及び乙第11号証の2、乙第23号証の1及び乙第12号証の2、乙第24号証の1及び乙第13号証の2、乙第25号証の1及び乙第14号証の2、乙第26号証の1及び乙第15号証の2、第27号証の1及び第17号証の2以外にも枚挙にいとまがない。
以上のように、構成中の「BABY」の文字を含む商標であっても、両商標は非類似と判断されて、別個に登録されている。
かかる事例に照らしても、本件商標「baby Shoop」と引用商標「Choop」とは「ベイビーシュープ」と「シュープ」であって、称呼上相紛れるおそれはないと判断するのが相当である。
(2)被請求人の商標について
ア 本件商標「baby Shoop」について
(ア)本件商標は、外観は、図案化された「baby Shoop」との欧文字からなり、被請求人の造語であるところ、「baby」が、「恋人」や「かわいい人」(乙第18号証)のように「愛情を含む言葉」であり、「Shoop」が、R&B(リズム・アンド・ブルース)」、「ソウルミュージック」、「ヒップホップ」に代表される黒人音楽愛好者の間では「タメ息の音」を意味するものとして親しまれ、「セクシーさ」を想起させることから、本件商標の全体として「愛しい人のためいき」の如き観念を生じさせるものである。
そして、外観構成から「ベイビーシュープ」との称呼が生じるものである。
(イ)被請求人は、「B1ack for life」との本件商標に係るブランドコンセプトの元、かかる商標を採択したものであり、主として、「ブラック・ファッション(黒人系ファッション、以下、『B系ファッション』という)」を中心としたファッションアイテムを展開しているものである(乙第28号証)。本件商標「baby Shoop」に係るブランドは、本件商標の設定登録((2005年1月15日)とあるが、2005年1月14日の誤り)を待ってブランド展開を開始したものであり、現在、全国に約20店舗の直営店を展開している。
そして、ブランドスタート時から、「『Shoopからbaby Shoop』になってさらにパワーアップ !!」(乙第29号証、乙第30号証、乙第33号証及び乙第36号証)として、後述する被請求人の関連商標「Shoop」ブランドの顧客吸引力を引き継ぎ、新たなブランドとして展開したことを反復して告知している。
被請求人の関連商標「Shoop」ブランドに強い顧客吸引力が備わっていたことと相俟って、本件商標に係るファッションブランドのスタート時である平成17年2月には、既に「B系ファッションの代表的なブランドが『baby Shoop』。」として、一般紙に紹介されているまでに本件商標「baby Shoop」は、B系ファッションブランドとして周知性を獲得していることが認められる(乙第28号証)。
(ウ)本件商標に係るファッションブランドは、継続的に、20代から30代のB系ファッションを愛好する層(この層は、主として「B-GIRL」と称される)が好む雑誌「Woofin’」、「LUIRE」をはじめとする多くの雑誌に掲載され、「baby Shoop」、「ベイビーシュープ」として、主たる需要者層に広く親しまれている(乙第29号証ないし乙第63号証)。
例えば、本件商標「baby Shoop」の記事においては、「B-GIRLから絶大な支持を誇る人気ブランド」(乙第30号証)、「さらに美しくセクシーにbabyShoopパワー・スタート」(乙第31号証)、「デイリーにもクラブスタイルでもこなす幅広いアイテムが魅力/baby shoop」(乙第32号証)、「チラ見せテクでセクシーに」(乙第32号証)、「みんなが大好きなbabyShoop」(乙第33号証)、「B-GIRL心を知り尽くしたこのリスペクト・ブランド」(乙第33号証)、「オリジナル・アイテムでアクティブなB-GIRLスタイルに」(乙第33号証)、「B-GIRL御用達ショップ、baby Shoop」(甲第33号証)、「B-GIRLから根強い支持を得ている SHOOPが 、進化を遂げてBABY SHOOPとして生まれ変わった。」(甲第35号証)のように紹介されていることからも、本件商標に係るファッションブランドは、B系ファッションを愛好する需要者層から、極めて高い支持を得ていることが容易に推認されるところである。
そして、クラブにて踊るためのファッションとして熱狂的に支持されるにとどまらず、ブランド開始わずか1年ほどでパシフィック・リーグの球団の公式チアリーダー向けユニフォームとして採用された実績を有する(乙第64号証)。さらに、平成18年4月15日からスタートした人気テレビ番組「ギャルサー」において、本件商標に係る被服が採用されるばかりでなく、「ファッションチェック」との内容で、本件商標に係る被服が注目されている実績が認められる(乙第65号証)。また、海外においても、香港西武の依頼により、本件商標に係る被服が香港西武において販売され、現地の雑誌に掲載される等、人気を博していることが認められる(乙第66号証)。
このように、本件商標「baby Shoop」に関するファッションブランドは、本件審判の請求時には、「B系ファッション」のリーダー的存在として、B系ファッションを愛好する需要者層(例えば、B-GIRLと称される層)から、絶大な支持を獲得し、周知・著名性を獲得していると容易に理解し得るところである。
(エ)本件商標に係るファッション関連商品の販売実績
本件商標「baby Shoop」、及び関連ブランド「Shoop」に係るブランドの被服等をはじめとする売上高は、ブランドスタートの2005年2月?2006年1月において、全国約20店舗において、約18億円、2006年2月?2007年1月には約16億円にのぼるまでに人気を博しているものである。本件商標に係るブランドの直営店における客単価が約6000円であることを考慮すれば、年間、30万人の需要者が本件商標に係るブランドの直営店にて、本件商標に係るファッションアイテムを購入していることとなり、購入しない顧客数を考慮すれば、少なくとも、1年間に100万人もの需要者が、本件商標に係るブランドの直営店に訪れていることが推測されるところである。
かかる販売実績・集客実績を考慮すれば、本件商標は、B系ファッションを愛好する需要者層においては、周知性を獲得していると確信するものである。
イ 関連商標「Shoop」について
被請求人は、関連商標「Shoop」について、少なくとも1996年から黒人系のファッションについて使用を開始し(乙第67号証ないし乙第69号証)、ダンス・ブーム、クラブ・ブームの到来によって、B系ファッションのリーダー的存在として、特別な地位を確立している。
このことは、被服類をはじめとした「Shoop」ブランドの商品販売高が、約8億円(平成12年度)、約11億円(平成13年度)、約15億円(平成14年度)、約19億円(平成15年度)であることからも認められる(乙第70号証)。
また、関連商標「SHOOP」ブランドにおける広告宣伝費を、被請求人が把握している範囲において述べるに、平成13年には、約1千万円、平成14年は、約5千万円、平成15年は、約8千万円、平成16年には、同様に約7千万円もの金額を宣伝広告費として支出し、「B系ファッション」を愛好する層が好む地域や媒体に対して集中的に宣伝・広告やイベントを展開している(甲第12号証添付の乙4号証ないし乙第84号証枝番含む)。例えば、B系ファッション雑誌における掲載をはじめとして、JR渋谷駅、新宿駅エリアでの大看板広告・映像掲出(同乙第47号証ないし同乙第50号証枝番含む。)、東京・名古屋・仙台の繁華エリアを走行するバス外装広告(同乙第52号証ないし同乙第54号証)、音楽専門チャンネル「MTV」におけるコマーシャル(同乙第70号証及び同乙第71号証)、といった宣伝広告ばかりでなく、ブランドイメージと結びついた音楽イベントの全国主要都市における開催やダンスイベント、ダンス音楽のCD企画等、ブランド戦略を展開している(同乙第56号証ないし乙第69号証)。
そして、人気を博するに従って「Shoop」ブランドの模倣品が流出し始めたことから、平成12年2月の雑誌広告において、「直営店のみでの販売」との注意を、需要者に対して喚起するまでに至っている(甲第12号証添付の乙第14号証の2)。現在においても、模倣品が横行しているものの、既に周知性を獲得しているが故に、模倣品が発生した際には、警察側から取締対象として真正品確認の照会を受けるまでに至っている(乙第71号証及び乙第72号証)。
このように、被請求人の関連商標「Shoop」は、高い財産的価値を有していることが認められるものであり、すなわち、「B系ファッション」愛好者の間において、「B系ファッションのShoop」として、周知・著名性を獲得していると確信するものである。
(3)請求人の商標について
ア 顧客吸引力を獲得している商標の特定について
請求人は、本件商標の登録出願時である2004年には、引用商標1から「シュープ」との称呼が直ちに生じる程に周知である旨を主張している。
しかしながら、かかる請求人の主張は、周知性を獲得している商標の特定を誤った主張に基づくものであり、失当である。
以下、請求人の証拠を検討し、その理由を述べる。
(ア)雑誌における取り扱い
2001年以降の雑誌においては、その殆どが、「リス図形」が、引用商標1と同一頁内や商品上に掲載されており、また、「リスがトレードマークのシュープ」(甲第31号証)、「リスのマークでおなじみのシュープ」(甲第35号証)、「ワンポイントのロゴマークはキュートなリスの刺しゅうだよ」(甲第40号証)、「リスのマークでおなじみの人気ブランドCHOOP」(甲第43号証)、のように、表示が認められる。
なお、2001年以前の雑誌においては、例えば、「超キュートなリスが目じるしのアメリカンカジュアル」(甲第10号証添付の甲第6号証)、「リスがちょこんとおすわりしているマークが自まんの目じるしなんだ」(甲第10号証添付の甲第6号証)、「どのアイテムにもリスのマークが付いててキュート」(甲第10号証添付の甲第7号証)、「リスマークがキュートなCHOOP」(甲第10号証添付の甲第8号証)、「リスのマークがトレードマークで、みんなに大人気のシュープ」(甲第10号証添付の甲第10号証)、「かわいいリスのマークが目じるしだよ」(甲第10号証添付の甲第12号証)、「レンズにもちゃんとリスのマークがついてるんだよ」(甲第10号証添付の甲第12号証)等の表示が認められる。
(イ)新聞広告における取り扱い
記事において、例えば、「シュープランドは、かわいいリスのキャラクター使い。」(甲第46号証 二段8行目)、「シュープスポーティブは、リスのキャラクターをスポーツテーストに仕上げている。」(同 二段24行目)、「リスのキャラクターを軸にパステル使いなどのカジュアル」(甲第47号証 二段11行目)のように、表されていることが認められる。
なお、2001年以前の新聞を参照するに、欧文字「CHOOP」の多くが「リス図形」と同一枠に配置されており(甲第10号証添付の甲第32号証の1、同甲第34号証の1、同甲第34号証の2)、また、キャラクターである「リス」をテーマとして全面広告を展開している(甲第10号証添付の甲第38号証)。記事においても、例えば、「シュープはリスのマークがかわいい」(甲第10号証添付の甲第41号証)、「リスをキャラクターモチーフとしたストリートカジュアルブランド『シュープ』」(甲第10号証添付の甲第44号証 一段二行目)、「従来のシュープは『座っている』リスをモチーフとしていた」(同 二段20行目)、「『シュープ・ランド』は、メスのリスのシュープがすむ島の名前」(同 三段5行目)、「シュープはリスをキャラクターにしたブランド」(甲第10号証添付の甲第46号証 5段9行目)、「リスをキャラクターにしたカジュアルブランド『シュープ』」(甲第10号証添付の甲第47号証 一段4行目)のように表されていることが認められる。
(ウ)その他の資料について
また、いずれのテレビコマーシャル(甲第10号証添付の甲第15号証、同甲第33号証、同甲第37号証及び同甲第49号証)についても、「リス」がテーマとされている。例えば、「リスとおおかみ編」については、「リス」との言葉がコマーシャル中に繰り返し発せられ、最後に、「リスが目印 ストリートカジュアルシュープ」との音声が認められる。
また、JAL機内番組において「リスのマークのシュープ」との音声(甲第10号証添付の甲第49号証)、「リスがシンボルマークのシュープ」との音声(同甲第49号証)、「トレードマークはキュートなリスのマスコット」との音声(同甲第49号証)が認められる。
これは「ブランドキャラクターであるリス」(甲第62号証)及び「リスのマーク」の認知を図ることを目的としており(甲第63号証)、また、JAL機内番組において「リスのマークのシュープ」との音声(甲第58号証)、「リスがシンボルマークのシュープ」との音声(甲第58号証)、「トレードマークはキュートなリスのマスコット」との音声(甲第58号証)が認められる。
また、マクドナルドにて頒布したとのトレーシートにおいて、「かわいいリスがトレードマークのストリートカジュアルブランド、CHOOP」(甲第10号証添付の甲第52号証)の表示が認められる。
(エ)顧客吸引力を獲得している商標のまとめ
上述のとおり、請求人自ら、需要者に「リスのマーク」を想起させる態様にて、継続的に使用をしていることが認められ、すなわち、請求人の被服に係るブランドは、「リス」が、自他商品識別力を発揮しているものと理解される。
したがって、需要者が、請求人の業務に係る商品であると認識し得るものは、「リス図形」と一体化した「CHOOP」であり、請求人のブランドは「リス」が、自他商品識別力を発揮しているものと理解される。
すなわち、引用商標1のみから直ちに「シュープ」との称呼が生じるというよりも、顧客吸引力を獲得している「リス図形」と、引用商標1を組み合わせた態様、若しくは、リスを想起させる態様によって、請求人の業務に係る商品であると認識するものと断定し得るものである。
イ 引用商標1「CHOOP」の称呼について
さらに、請求人は、本件商標の登録出願時において、「CHOOP」から「シュープ」との称呼が当然に生じる程度にまで周知であるかの如く主張しているが、引用商標1に関連する商標の審査の経過を考慮すると、本件商標の登録出願時(平成16年7月12日)、査定時(平成16年12月6日)に、引用商標1から、当然に「シュープ」との称呼が生じると認められない。
以下、引用商標1に関連する商標の特許庁における審判例を掲げる。
(ア)引用商標3(登録第4545251号、異議2002-90327号:乙第73号証)。
(イ)引用商標4(登録第4545253号、異議2002-90329号:乙第74号証)。
また、上記の決定がなされた平成15年1月から、本件商標の登録出願日(平成16年7月12日)までに、引用商標1から当然に「シュープ」との称呼が生じると認められると理解される証拠は、請求人の立証からは認められない。
上述のとおり、本件商標の登録出願時(平成16年7月12日)、査定時(平成16年12月6日)時点において、「被服(和服を除く。)、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)、運動用特殊衣服、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)及びこれらの類似商品」に関し、請求人の引用商標1「CHOOP」から、当然に「シュープ」との称呼が生じるとは、考えられないところである。
ウ 引用商標1と「使用商品」の特定
(ア)雑誌における使用商品
雑誌等における引用商標1と、使用がなされている具体的な商品は、甲第10号証添付の第4号ないし甲第10号証添付の第14号証、甲第10号証添付の第50号証ないし甲第10号証添付の第52号証及び甲第27号証ないし甲第45号証のとおりである。ここにおいて、商品写真や商標とともに掲載されているモデルやキャッチコピーは、「どのような商品であるか」を表すことは、被服分野において一般的な事象である。そこで、請求人の使用にかかる商品がどのような商品であるのか客観的に把握すべく、請求人の主張する証拠を、「商品の趣向性・年代」を中心に検討する(上記甲各号証に基づき「商品の趣向性・年代等」、「使用商品」の各項目毎にその内容が記述されている。)。
請求人の引用商標1は、成人女性向けの「マタニティ・ウェア」及び「パジャマ」、「子供用水着」について使用例が見受けられるものの、上記のとおり、主に「10代(ティーン世代)の少女層」であって、着心地を主眼とした「カジュアル」な分類に属する「ティーン層の少女向けのカジュアル趣向のブラウス、ティーン層の少女向けのカジュアル趣向のTシャツ、ティーン層の少女向けカジュアル趣向のトレーナー、ティーン層の少女向けカジュアル趣向の靴下、ティーン層の少女向けカジュアル趣向のスカート、ティーン層の少女向けカジュアル趣向のスニーカー」について、主として使用したことが認められるものである。
(イ)テレビCMにおける使用例
(a)「テレビCM放送証明書」(甲第10号証添付の甲第16号証)について
「テレビCM放送証明書」の内容を検討するに、広告代理店の担当者が引用商標に係るテレビCMを特定のテレビ番組において放送したことを証明するものであるところ、引用商標に係るテレビCMの「放映回数」を特定できない。
また、「テレビ東京系6局ネット」、「フジテレビ系26局ネット」のように主張するものの、かかる放映事実を裏づける証拠が提出されていない。
(b)「テレビタイム放送確認書」について
「テレビタイム放送確認書」(甲第10号証添付の甲第17号証ないし甲31号証(枝番含む))において記載された内容を参酌するに、1997年12月26日から翌年1月4日までの10日間の本件商標に係るテレビCMの放映実績は、9局の放送局の合計するにわずか45回である。
そしてこれらの番組は、主に、一般の視聴者が少ない早朝もしくは24時以降の深夜の番組内で放映されている。
請求人の主張する引用商標1そこ係るテレビCMは、一般の不特定多数の視聴者が接する時間帯に一定期間に継続して行われたというよりも、むしろ、年末年始といった「限定された期間」であって、「視聴者が少ない」早朝や深夜に放映された番組内において放映されたものである。
(ウ)請求人協力のテレビドラマについて
請求人は、1998年8月15日(土)、1999年3月22日(月)、2000年4月1日(土)に、「夏休みスペシャル」、「春休みドラマスペシャル」として請求人協力のテレビドラマを放映した旨を主張しており、かかるテレビドラマの放映時間帯は、午前10時半?11時25分、16時?16時55分である。
そして、請求人協力のテレビドラマは、「夏休みスペシャル」、「春休みドラマスペシャル」との番組表題、青春時代を題材とした番組内容、ドラマキャスト及び放映時間帯(午前10時半?11時25分、16時?16時55分)から、番組対象として、「ティーン世代」を対象とし、ティーン層が主たる視聴者であることが明らかである。
このように、放映時間帯、番組表題、番組内容のいずれからも「ティーン層の女の子」を対象としたものであり、視聴者は極めて限定された「ティーン層の女の子」層であることが容易に椎認される。
(エ)新聞掲載記事について
請求人の主張する新聞記事内容を検討するに、一般紙である読売新聞、産経新聞に取り上げられた内容は、請求人の協力するテレビドラマに関する番組情報であり(甲第10号証添付の甲第32号証ないし甲第36号証、枝番を含む)、商標の使用について、具体的な商品との関係は認められない。
そして、上記テレビドラマに関する番組情報を除いた新聞においては、甲第10号証添付の甲第38号証ないし甲第10号証添付の甲第48号証及び甲第46号証ないし甲第49号証に、その内容が掲載されている。
上記のように、新聞記事における記載から、請求人の引用商標1に係るブランドは、主に、「ティーンズに人気」の「リスをキャラクター」にした「カジュアルブランド」として、紹介されている事実が認められる。
すなわち、請求人の引用商標1に係るファッションブランドは、「ティーンズ」が対象の「リスをキャラクター」とした「カジュアルブランド」に特定することによって、請求人の業務に係る商品と認識されるものと考えられるところである。
(オ)ライセンスビジネス年鑑等の掲載について
「ファッションブランドガイド」や「ライセンスビジネス年鑑」等は、発行者が配布する「アンケートに回答して提出すること」で、一律に無料で掲載されるものである(甲75号証及び甲第76号証)。そして、掲載内容について修正や訂正等がなければ、継続して毎年、同じ内容が掲載される。
すなわち、これらのブランド年鑑は、請求人やライセンシーが回答したアンケート内容が、そのまま掲載されているにすぎず、ライセンス状況などについても、回答者が記入した内容が掲載される恣意的なものにすぎない。本件にあてはめれば、ライセンス状況の欄、及び、請求人の使用に係る商標「CHOOP」に対する「シュープ」との表記は、請求人や引用商標1に係るライセンシーが行ったものにすぎず、「シュープ」との称呼が客観的に生じるとの証拠にはなり得ない。また、同様の理由により、「服種」及び「対象」の記載が、直ちに使用されたとの証拠になり得るものではない。
(カ)販売実績について
請求人は、「引用商標1を使用した衣料の売上実績」として、120億1700万円との数字を掲げるも(審判請求書 第13頁二行目)、かかる数字を客観的に示す証拠が提出されていない。
なお、「ライセンスビジネス名鑑(ブランド編)」(甲第21号証)、「ファッション・ブランド年鑑」(甲第16号証ないし甲第20号証、枝番含む)、「ファッションブランドガイド」(甲第22号証ないし甲第25号証)の掲載内容は、請求人及びライセンシーがアンケート用紙に記載する主意的なものであり(乙第75号証及び乙第76号証)、また、新聞記事の記載(甲第46号証及び甲第49号証)は、請求人及び関連会社へのインタビューに基づく記載であることから、客観的証拠たり得ない。
(4)「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」(甲第14号証)について
日本有名商標集の掲載されている商標は、審査を円滑かつ統一的に行うために「広く認識されている商標と推認して取り扱う」との審査運用にすぎず「推認」にとどまるものである(甲第15号証)。
ここにおいて、日本有名商標集に掲載されている商標は、「文字商標のみ」からなる引用商標1ではなく、「リスのマーク」の下部に「CHOOP」(Pの文字の前の「O」はデザイン化されている。)が構成された態様である。
してみれば、上述のとおり、「リスのマーク」に顧客吸引力が獲得されているものであり、「リスのマーク」と組み合わされた態様であることから、日本有名商標集に掲載が認められたものと考えられる。
したがって、日本有名商標集に掲載されているとの証拠(甲第14号証)は、引用商標1が「有名商標」であることの証拠とはなり得ない。
6 被服分野の取引の実情
(1)被服に対する需要者の注意力について
一般的に、被服は、趣向性(好み)が強く発揮されるものであり、需要者の選択に際して、かかる趣向性が極めて大きく左右するところである。
また、どのような目的で着用する被服であるか、どのような場所へ着ていく被服であるか、といった、購入に際する「動機付け」が大きく作用することが認められる。とりわけ、自らの外観を装う被服であることから、需要者は、一般需要者であっても、外観に充分に注意力を発揮するものである。
そして、被服の分野は、需要者に応じて取引の場が異なる特殊性を有することが認められる。例えば、「原宿」、「銀座」、「巣鴨」では、主として取り扱う被服の趣向性が異なる事象が見られ、デパートでは「ヤング」「キャリア」として、女性被服であっても販売フロアが異なる例が見受けられる。また、ファッション雑誌においても、「30代キャリア女性向け」、「ティーン層向け」、「高級ブランド愛好者向け」など、需要者に応じて、異なる趣向性の雑誌が創刊されている事実が認められる。
このように、被服の分野は、性別、年代、趣向性が異なれば、販売場所(地域、店舗、取引場所)が異なるという特殊性を有する分野である。
このことは、例えば、被服業界の専門誌において、ブランドを趣向性にて類別している取扱いからも明らかである(甲第77号証)。
かかる取引の実情は、当該商標品かぎりの浮動的な取引実情ではなく、「被服」分野における一般化した恒常的取引実情である。このように、被服に関するブランドについては、それぞれに独自の趣向性があり、需要者をして明確に区別され得るものである。
(2)本件における取引の実情
本件商標に係る被服は、装飾性が高く、「セクシー」との趣向性を有する。DJがヒップホップやR&Bの音楽を流す所謂「クラブ」におけるダンスファッションとして選択される傾向が強く、「20代から30代」の「ブラックミュージックやクラブ文化を愛好する女性」又は「B系ファッションを愛好する層」から絶大な支持を得ている。
これに対して引用商標1に係る被服は、主として「ティーン世代の少女層」の「カジュアル」ファッションに用いられ、「キュート」(甲第10号証添付の第7号証)、「かわいいウェア」(甲第10号証添付の甲第8号証)、「キュートなCHOOP」(甲第17号証)、「女の子っぼくてかわいい」(甲第10号証添付の甲第11号証)、「キュートなガーリースタイル」(甲第10号証添付の第13号証)、「ストリートっぽいけど女の子らしい」(甲第36号証)、「キュートにキマル!」(甲第40号証)、「秋こそかわいい制服着たいってコだいちゅうもく☆」(甲第40号証)、「ポップでキュートで元気いっぱい」(甲第41号証)、「かわいくてカッコいい通学服が大人気」(甲第44号証)、「カラフルでキュートなアイテムが勢ぞろい」(甲第45号証)との、「可愛い」との商品趣向をアピールするキャッチコピーを、継続的に使用している。かかる事実を参酌するに、請求人の引用商標1にかかるブランドは、「可愛い系」を強く意識した趣向性を有する。
これらを本件に照らし合わせてみれば、引用商標1が「セーター類,ワイシャツ類,水着,下着及びこれらの類似商品」について使用されているとしても、本件商標のブランドとは、その趣向性は、「可愛い系」と「セクシー」と全く異なるものである。
加えて、主たる需要者層に着目するに、引用商標1に係るブランドの主たる需要者層は、ティーンエイジの「学生」を中心とした「少女層」であるのに対し、本件商標に係るブランドの主たる需要者層は「20代から30代のブラックミュージックやクラブを愛好する女性」であり、全く相違するものである。
請求人は、「男子向けにも販路を拡大」(審判請求書 第11頁第6行目)と主張しているが、「ボーイズ『っぽく』着こなしやすくておすすめ」(第30号証)との記載からは、少女層のボーイッシュ(少年的な着こなし)を好む層に向けてのキャッチコピーであることが容易に椎認できる。
また、「中学生に向けて」(審判請求書 第8行目)、「スクールファッションについて」(審判請求書 第11頁第16行目)との主張については、被請求人が述べているように、ローティーンの少女層に向けたものであって、請求人の主力商品に対するものである。
とりわけ、引用商標に係る商品の主たる需要者「ティーン世代の少女層」や本件商標に係る商品の主たる需要者「20代から30代の女性」は、自らを装うための被服に対して、外観に最も強く注意力を発揮することが認められる。
してみれば、その市場及び需要者層は全く異なるものであり、また、外観に強く注意力を発揮するとの被服分野における取引の実情を鑑みれば、需要者をして明確に区別せしめるものである。
なお、請求人は、マタニティ服等を掲げて「成人層にも周知性を獲得している」と主張しているが、成人層の女性向けの被服は、「マタニティ服」(甲第10号証に添付の甲第8号証)と「パジャマ」(甲第41号証)の僅か2点のみである。また、請求人の「CHOOP SPORTIVE」の対象層が成人女性であることを主張して、需要者層の年代が共通することを主張しているが、前述のとおり、マタニティにおける使用は、甲第10号証に添付の甲第8号証のみであり、「CHOOP SPROTIVE」に関する使用の証拠についても、請求人がマクドナルドで配布したと主張するトレーシート(甲第10号証添付の甲第52号証)及び、「LICENSING BOOKS5」の該当頁(甲第12号証添付の甲第8号証)に掲載されている以外には、具体的な商品における使用が見当たらないことから、「少女層」と同等の周知性が獲得されているとはいい難い。
7 商標法第4条第1項第10号について
商標法第4条第1項第10号に該当するとの請求人の主張は、「商品の出所の混同防止」であるところ、商標の出所の混同は、周知性を獲得している商標の特定、主たる需要者層や取引の実情を考慮した上で、出所の混同の有無を検討すべきである。
(1)商標の特定
上述のとおり、請求人は、周知性の獲得されている対象の認定を誤っており、「時計及びこれらの類似商品」について、文字商標「CHOOP」である引用商標1から「シュープ」との称呼が生じる程に周知性が獲得しているとの認定に基づいた、本件商標に対する商標法第4条第1項第10号に該当する、との請求人の主張は、失当である。
ここにおいて、本件商標「baby Shoop」は、一体不可分の商標であり、「ベイビーシュープ」とのみ称呼が生じるものである。
一方、請求人の引用商標1からは、「チュープ」との称呼が生じるものと認められる。
したがって、両商標は、称呼長、語調・語感のいずれも異なるものであり、彼此聞き誤るおそれは全くない。
仮に、請求人の引用商標1から「シュープ」との称呼が生じるとしても、本件商標「ベイビーシュープ」と、請求人が主張するところの引用商標1から生じる称呼「シュープ」とは、称呼長、語調・語感のいずれも異なるものであり、彼此聞き誤るおそれは全くない。
(2)主たる需要者層
本件商標に係るファッションは、「セクシー」と形容される「B系ファッション」に分類されるものであり、主として、ダンスクラブ等に着用する装飾性の高いダンスファッションである。主たる需要者層は、「セクシー」なB系ファッションを愛好する「20代から30代のブラックミュージックやクラブを愛好する女性」である。
一方、請求人の引用商標1に係るファッションは、綿などの天然素材を中心とした着心地を主眼におくカジュアル・ウェアである。請求人が主張するように「キュート(可愛い)」と形容される被服を愛好するティーン世代の少女層が主たる需要者層である。
(3)取引の実情
これらによって、明確に区別がなされていることは、請求人の各証拠からも明らかである。そして、実際に、ファッション業界においては、被請求人の商標に係るブランドは、「セクシーガール」に分類され(乙第77号証)、一方、「リスのキャラクター」を軸とした請求人の引用商標1に係るブランド(甲第47号証)とは、明確に区別されている実情が認められるところである。
(4)出所の混同について
本件商標「baby Shoop」と引用商標1「CHOOP」は、称呼及び外観が異なるばかりでなく、被請求人の「baby Shoop」は、需要者に「セクシーなB系ファッション」との観念を直ちに想起させるほどまでに周知・著名性を獲得しており、一方、請求人の「CHOOP」は、「リス」との観念を想起せしめるものであることから、互いに全く異なる観念を想起させるものである。そして、被請求人のB系ファッション界における周知・著名性、及び、被服分野の取引の実情と相俟って、主たる需要者層及びファッョン業界の取引者は、両商標に係るファッションブランドを、明確に区別し得るものである。
そして、請求人の引用商標1に係るブランドと、本件商標のブランドとは、その趣向性及び需要者層が、「カジュアル」と「セクシー」、「ティーン世代」と「20代から30代のブラックミュージックやクラブを愛好する女性」とのように全く相違するものである。そして、これらによって、明確に区別がなされていることは、請求人の各証拠からも明らかである。そして、実際に、ファッション業界においては、被請求人の商標に係るブランドは、「セクシーガール」に分類され(乙第77号証)、一方、「リスのキャラクター」を軸とした請求人の引用商標1に係るブランド(甲第47号証)とは、明確に区別されている実情が認められるところである。
したがって、本件商標と、引用商標とは、需要者をして混同せしめるおそれは全くない、と確信するものである。
8 商標法第4条第1項第11号について
(1)上述のとおり、本件商標「baby Shoop」は、一体不可分の商標であり、「ベイビーシュープ」とのみ称呼が生じるものである。
また、引用商標2ないし引用商標4から生じる称呼は、「チュープ」若しくは「チョープ」と認定されているとおり、本件商標の登録出願時・査定時においては、不明である。
仮に、引用商標2ないし引用商標4から「シュープ」との称呼が生じるとしても、本件商標から生じる称呼「ベイビーシュープ」と、引用商標2ないし引用商標4から生じる称呼「シュープ」とは、称呼長、語調・語感のいずれも異なるものであり、彼此聞き誤るおそれは全くない。
そして、外観及び観念についても相違することから、従って、引用商標2ないし引用商標4と、本件商標とは、外観、観念、称呼のいずれにおいても明確に区別し得る非類似の商標であることから、商標法第4条第1項第11号に該当しないと確信するものである。
9 結語
以上詳述したとおり、請求人の「被服(和服を除く。)、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)、運動用特殊衣服、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)及びこれらの類似商品」についてこれを一部無効とすべき、との本件審判請求は理由が無いものであり、本件審判請求は棄却されるべきものである。

第4 本件審判の審理の対象たる指定商品の範囲
審判長は、請求人に対し、平成20年1月31日付けで、「請求人は、本件商標の指定商品中、第25類『被服(和服を除く)、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、靴類(靴合わせくぎ・靴くぎ・ 靴の引き手・靴びょう・靴保護金具を除く)、運動用特殊衣服、運動用特殊靴(乗馬靴を除く)及びこれらの類似商品』についての登録の一部無効を求めて審判請求した。しかしながら、本件商標に対する登録の一部無効審判の請求に係る指定商品のうち、『これらの類似商品』については、審理の対象となる指定商品の範囲が不明確であるとともに、登録の一部無効審決が確定した場合における登録商標の効力の及ぶ指定商品の範囲を曖昧にするものである。
したがって、『これらの類似商品』が如何なる指定商品を無効の対象・範囲とするのかについて、客観的、かつ、具体的で、明確な内容とされるよう釈明されたい。」旨の審尋を行った。
これに対して、請求人は、 平成20年2月6日付けの手続補正書において、請求の趣旨を「登録第4832061号商標の登録は、その指定商品中『被服(和服を除く)、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)、運動用特殊衣服、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)』についてこれを一部無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」旨の回答をした。

第5 当審の判断
前記第4の手続補正書により、本件審判の審理の対象たる指定商品の範囲は、要旨の変更とならない範囲内において明確な表示に補正されたものと認められる。
1 本件商標について
(1)本件商標は、別掲(1)のとおり、「baby Shoop」の欧文字を太字で角張ったようにデザイン化されてなり、中間部において半字程度の間隔があり、また、後半部の語頭が「S」の欧文字の大文字であるとしても、特徴のある太字の欧文字は全て同じデザインで統一がとれており、視覚上極めてまとまりが良く一体のものとして認識、把握されるというのが相当である。また、これより生ずるものと認められる「ベービーシュープ」の称呼も語呂良く一連に称呼し得るものである。
そうすると、かかる構成、態様からなる本件商標においては、たとえ、「baby」が「赤ちゃん」の意味をもって知られているとしても、むしろ「baby Shoop」全体をもって、「ベービーシュープ」の称呼のみ生じるといえるものであり、また、乙各号証における被請求人商品の需要者層との関係からすると、「かわい子ちゃんのShoop」の如き意味合いを認識させる一連の造語というのが相当である。
(2)「baby Shoop」に関して
平成17年(2005年)2月11日付け「河北新聞」の「ヒップホップファッション/“Bガール”が元気」の見出し下、「…B系ファッションの代表的ブランド『Baby Shoop』。」の記述が掲載されている(乙第28号証)、また、ファッション雑誌「LUIRE/ルイール」の2005年3月号に、本件商標と同一構成、態様の「baby Shoop」の表示が用いられている(乙第29号証)、同じくファッション雑誌「Woofin’」の2005年3月号に、「…Shoopが2月5日の渋谷店にリニューアル・オープンとともに〈baby Shoop〉へとブランド名を変えて新しく生まれ変わる!…」の記述が掲載されており(乙第30号証)、同じくファッション雑誌「Woofin’」の2005年4月号に、本件商標と同一構成、態様の「baby Shoop」の表示及び通常の活字の「baby Shoop」が各種被服の紹介とともに用いられており(乙第31号証)、さらにファッション雑誌「GLITTER/グリッター」の2005年5月号中に、被服の紹介とともに「baby Shoop」が用いられており(乙第32号証)、また同じくファッション雑誌「Woofin’GIRL」の2005年5月号に、本件商標と同一構成、態様の「baby Shoop」の表示及び通常の活字の「baby shoop」が各種被服の紹介とともに用いられており(乙第33号証)、外乙第34号証ないし乙第63号の証ファッション雑誌にも「baby Shoop」が被服の紹介とともに用いられていることが認められる。
(3)以上のように、新聞、雑誌にて、本件商標と同一構成、態様の「baby Shoop」の表示及び通常の活字の「baby Shoop」が各種被服の紹介とともに用いられていることが認められ、該「baby Shoop」は、その記事内容及び各種被服の紹介内容を総合すると、黒人系のファッションを好む需要者層を対象にしていると認められる。
2 引用商標1ないし引用商標4について
(1)甲各号証について
2003年(平成15年)4月16日付け「繊研新聞」(甲第3号証)、ライセンスビジネス名鑑 2003〔ブランド編〕(甲第9号証、甲第10号証中の甲第3号証と同じ)、1994年(平成6年)12月号から2001年(平成13年)4月号までの「Zipper」を初めとした各ファッション雑誌(甲第10号証中の甲第4号証ないし同甲第14号証)、AIPPI・JAPAN「日本有名商標集 第3版」(甲第14号証)、別冊チャネラー、ファッション・ブランド年鑑2001ないし同2005(抜粋、写し)(甲第16号証ないし甲第20号証(枝番を含む。))、ボイス情報株式会社、ライセンスブランドガイド年鑑2004(甲第21号証)、繊研新聞社ファッションブランドガイドSENKEN FB2002(抜粋、写)ないし同FB2005(甲第22号証ないし甲第25号証)、2001年(平成13年)4月号から2004年(平成16年)4月号にかけての「ピチレモン」を初めとした各ファッション雑誌(甲第26号証ないし甲第45号証及び甲第57号証ないし甲第59号証)、2002年(平成14年)7月17日付けから2003年(平成15年)4月16日付けにかけての繊研新聞の縮刷版(抜粋)の写し(甲第46号証ないし甲第49号証)、及び重複する場合もあるが、テレビCM放送証明書(甲第10号証中の甲第16号証、同甲第17号証の1ないし同甲第31号証(枝番を含む。))、1998年(平成10年)8月15日付け及び1999年(平成11年)3月22日付け讀賣新聞のテレビ番組欄とドラマのコマーシャルと紹介記事の写し(甲第10号証中の甲第32号証及び同甲第36号証(枝番を含む。))、2000年(平成12年)12月号JAL機内誌の「winds」、同「JENGUIDE」(甲第10号証中の甲第50号証、同甲第51号証)の甲各号証における新聞の記事内容、雑誌の内容、及びテレビCMの内容を総合すると、請求人の使用に係る引用商標1ないし引用商標4は、主として「ティーン世代の少女層」向けに「CHOOP」の文字とともに「シュープ」の表示等が用いられて広告宣伝がなされているといえるものである。
(2)引用商標1の周知性と称呼等について
引用商標1「CHOOP」は、上記のとおり、主として「ティーン世代の少女層」向けに「CHOOP」の文字とともに「シュープ」の表示が用いられて広告宣伝がなされ、これらの少女層には相当程度知られているといえるものであるから、これらティーン世代の少女層においては、「CHOOP」を「シュープ」と称呼しているといえるものである。
しかし、「CHOOP」は、上記(1)の甲各号証よりすると、ティーン世代の少女層以外のあらゆる需要者においてまで、広く認識されていたものとまでは認め難いものである。
(3)引用商標2ないし引用商標4について
引用商標2ないし引用商標4は、いずれも別掲(3)ないし別掲(5)のとおり、リスの図と「CHOOP」又は「choop」(やや図案化してなる。)の文字、及びリスの尻尾の図と「CHOOP」の文字との組み合わせからなるところ、これらは常に該図形部分と一体不可分のものとして認識、把握しなければならないとする格別の理由は見当たらないから、上記(2)と同様にティーン世代の少女層に限っては、「CHOOP」又は「choop」(やや図案化してなる。)の文字部分を「シュープ」と称呼しているといえるものである。
しかし、「CHOOP」又は「choop」(やや図案化してなる。)の文字は、上記引用商標1の場合と同様に、ティーン世代の少女層以外のあらゆる需要者においてまで、広く認識されていたものとまでは認め難いものである。
3 本件商標と引用商標1ないし引用商標4との類否について
(1)本件商標と引用商標1の類否
ア 称呼及び観念について
本件商標は、上記1のとおり、「ベービーシュープ」の称呼のみ生じ、「かわい子ちゃんのShoop」の如き意味合いを認識させる一連の造語というのが相当である。
他方、引用商標1は、上記2のとおり、ティーン世代の少女層に限って、「CHOOP」を「シュープ」と称呼しているといえるものである。
しかし、「CHOOP」が、上記の少女層以外のあらゆる需要者においてまで、広く認識されていたものとまでは認め難いものであるから、それ以外の一般消費者は「CHOOP」の文字を我が国においてもっとも親しまれている英語風発音にて、「チュープ」あるいは「チョープ」と称呼するというのが相当であって、特定の観念を有しないというべきである。
してみれば、「ベービーシュープ」の称呼のみ生じる本件商標と、「シュープ」、「チュープ」あるいは「チョープ」の称呼を生じる引用商標1とは、構成音数において明らかな差異を有するものであるから、両者は称呼上互いに聞き誤るおそれのないものである。また、本件商標と引用商標1とは観念上比較できないものである。
イ 外観について
本件商標は、一体的に「baby Shoop」と太字で角張ったようにデザイン化されているのに対し、引用商標1の「CHOOP」の文字のみからなるものであるから、「baby」の部分の有無からして、本件商標と引用商標1とはその外観において明らかに相違するものである。
なお、仮に、本件商標の構成中の「Shoop」の文字部分と、引用商標1の「CHOOP」とを対比しても、両者は、先頭文字が「S」と「C」との点で異なり、前者は後続する「hoop」が小文字で表記されているのに対して、後者は後続する「HOOP」が大文字で表記されている点において異なる点で、本件商標の構成中の「Shoop」の文字部分と引用商標1はその外観において相違するものである。
ウ 以上のとおり、「ベービーシュープ」の称呼のみ生ずる本件商標と、「シュープ」、「チュープ」あるいは「チョープ」の称呼を生ずる引用商標1とは、前半部「ベービー」の音の有無からして明らかに聴別される称呼上類似しない商標であって、観念上比較することができないし、外観において明らかに相違するものである。
したがって、本件商標と引用商標1とは、称呼、観念及び外観のいずれにおいても互いに紛れることのない非類似の商標というべきである。
(2)本件商標と引用商標2ないし引用商標4の類否
引用商標2ないし引用商標4は、いずれも別掲(3)ないし別掲(5)とおり、リスの図と「CHOOP」又は「choop」(やや図案化してなる。)の文字、及びリスの尻尾の図と「CHOOP」の文字との組み合わせからなるものであって、常にこれらの図形部分と「CHOOP」又は「choop」(やや図案化してなる。)の文字とを一体不可分のものとして認識、把握しなければならないとする格別の理由は見当たらないから、文字部分「CHOOP」は「choop」(やや図案化してなる。)も独立して自他商品識別標識としての機能を果たすものというべきである。
そこで、本件商標と引用商標2ないし引用商標4の構成中の「CHOOP」又は「choop」(やや図案化してなる。)とを比較すると、上記(1)の「本件商標と引用商標1の類否」の場合とは、引用商標3の「choop」の文字部分がやや図案化されている点において異なるのみであるから、本件商標と引用商標2ないし引用商標4とは、引用商標1の場合と同様に、称呼、観念及び外観のいずれにおいても互い紛れることのない非類似の商標というべきである。
また、本件商標と図形部分を含めた引用商標2ないし引用商標4の全体とを比較しても、両者が称呼、観念及び外観のいずれにおいても互い紛れることのない非類似の商標であることは明らかである。
4 商標法第4条第1項第10号について
本件商標と引用商標1とは、上記3(1)のとおり、称呼、観念及び外観のいずれにおいても互い紛れることのない非類似の商標であるから、たとえ、引用商標1が請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものであって、かつ、本件商標と引用商標1との指定商品が同一又は類似するものであったとしても、本件商標と引用商標1は、商標法第4条第1項第10号に該当するとはいえないものである。
5 商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標2ないし引用商標4とは、上記3(2)のとおり、称呼、観念及び外観いずれもにおいても互いに紛れることのない非類似の商標であるから、たとえ、本件商標と引用商標2ないし引用商標4との指定商品が同一又は類似するものであったとしても、本件商標と引用商標1は、商標法第4条第1項第11号に該当するとはいえないものである。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「被服(和服を除く)、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)、運動用特殊衣服、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」について、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)関連商標1


(3)引用商標2


(4)引用商標3


(5)引用商標4


審理終結日 2008-06-09 
結審通知日 2008-06-12 
審決日 2008-06-27 
出願番号 商願2004-64364(T2004-64364) 
審決分類 T 1 12・ 263- Y (Y25)
T 1 12・ 25- Y (Y25)
T 1 12・ 261- Y (Y25)
T 1 12・ 262- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井岡 賢一 
特許庁審判長 小林 和男
特許庁審判官 石田 清
小川 きみえ
登録日 2005-01-14 
登録番号 商標登録第4832061号(T4832061) 
商標の称呼 ベビーシュープ、シュープ 
代理人 小山 輝晃 
代理人 吉田 芳春 

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