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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200465064 審決 商標
不服200465099 審決 商標
不服20053198 審決 商標
不服20032069 審決 商標
不服200224736 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y07
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Y07
管理番号 1182734 
審判番号 不服2006-24998 
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-02 
確定日 2008-08-05 
事件の表示 商願2004-107854拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲(1)のとおりの構成からなり、第7類「オートバイ用エアクリーナー」を指定商品として、平成16年11月25日に立体商標として登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、特異性があるものとは認められず、通常採用し得る形状の範囲を超えているとは認識し得ないので、全体としてその商品の形状の一形態を表したものというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本願商標が使用された結果、本願商標が自他商品識別力を有するに至ったものと認めることはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審においてした審尋
請求人(出願人)に対して、平成19年11月13日付けで次の事項について回答を求めた。
1 共通事項
(1)請求人は、提出書類中には外国語のものが含まれるから、証拠方法として提出したものについては翻訳した書面を提出されたい。
(2)請求人は、本願商標が長年にわたり使用されてきた結果、日本国内において周知である旨述べているが、これは本願商標が商標法第3条第2項に該当する旨、主張されているのかを明らかにされたい。
そして、請求人は、商標法第3条第2項の証左として新たに証拠方法として提出するものがあれば、上記の所定の期間内に提出されたい。
2 個別事項
(1)請求人は、「本願商標はエアクリーナーの図形」と述べているが、第2号証「ホビダスショッピング(hobidas direct:ホビダスダイレクト)のサイトの画面のハードコピー(写し)」及び第3号証「Amber Pieceのサイトの画面のハードコピー(写し)」に表示のS&Sエアクリーナーキット商品が請求人の製造に係る商品であって、「フィルター、ボックス及びその部品」から構成され、その構成中の「エアクリーナーボックスと蓋を合わせもの」(以下「使用商品」という。)が本願商標に係る商品と認められる。
そして、本願商標と上記第2号証及び第3号証を比較してみると、本願商標は、使用商品を背面から描いてなるものであるが、使用商品は正面から表示されている点及び使用商品の表面には、S&Sのロゴがエンボス表示されている点などの相違が見られる。
したがって、本願商標について、仮に商標法第3条第2項の規定に該当する旨主張するのであれば、本願商標と使用商品の商標とは、同一と認め得るものでなければならないから、上記のとおり第2号証及び第3号証は商標法第3条第2項の手続要件に照らし適切でないといわなければならない。
(2)請求人は、上記1の(2)で第1号証を引用して「オートバイ用エアクリーナーが通常採用し得る形状が円柱型の形状である」と述べているところ、甲1号証は、「吸排気、燃料系システム基礎知識」のタイトルの下に「円筒状のエアクリーナーを通過した空気とガソリンがキャブレターで、霧状に混合気にされ、シリンダー内に吸入される」ことを説明していることが理解されるが、これをもって使用商品が円筒状である理由、根拠が明らかにされているということはできない。
また、請求人は、「フィルター部分の形状が円柱状だから、エアクリーナーボックスが円柱状であるのが通常採用し得る形状であり、使用商品は円柱状でないから特異な形状である」旨述べているが、そもそもオートバイ用のエアフィルターが全て円柱状であるのか、そして、エアフィルターが円筒状(請求人の製造に係るエアフィルターも同じ)であった場合、如何なる理由でエアクリーナーが円柱状以外の形状でないのかを説明されたい。
請求人は、第2号証を引用し「本願商標が『涙の雫』を想起させる独創的な形状からなっている」と主張しているが、同号証の1頁には「『ハーレーのエアクリーナー』と言えば」、「高い人気を誇るティアドロップ型エアークリーナー」「ハーレーのスタンダードスタイル!」、同2頁には「高い人気を誇るティアドロップ型のエアークリーナー。それ故に装着している数は相当数いるはず。形はかっこいいがみんなと同じ物はイヤだ!な、の方には変わったデザインのオススメパーツです。」の記載があることから、「ハーレーダビットソン」に装着するエアクリーナーとは認められるが、他のオートバイメーカーのオートバイについて使用していること、使用により周知性、著名性を獲得している証左を提出されたい。
また、第3号証の5頁には、「適合車種について【S&Sエアクリーナー】93-99EVOビックツイン 99-06TC88全車」と記載されているが、使用商品の適合車種を明らかにされたい。
(3)請求人は、第3号証等を引用し、「本願商標が1975年頃から日本国内において使用されており、需要者に広く知られていることからも十分に自他商品識別力を有する」と述べているが、当該商標の使用にかかる商品の具体的な使用実績(オートバイメーカーとその車種)や販売実績、ディーラーの数、業界でのシェア等客観的な状況が明らかでない。
また、宣伝、広告の方法、回数、内容等の活動状況の実績、業界紙、雑誌又はインターネット等による記事掲載の回数及び内容が明らかにされていない。
そして、公的機関による証明も提出されていない。請求人の提出に係る各証左を精査してみても、使用商品が日本製のオートバイに装着し、使用して周知となっていると認めるに足りる事実が見当たらない。
そうとすれば、1975頃から日本国内において長年使用されて周知となっていることを認めることができない。
かりに、日本製のオートバイに使用されていたとすれば、どのオートバイメーカーのどの車種に、いつから使用されていたかも明らかにすべきである。
さらに、使用商品がオートバイの車体のどこの位置(車体の左右、エンジンの上部かなど)にセットされ、一般の取引者がどのようにして請求人の商品を認識することができるか、その際、使用商品にS&Sのロゴのエンボス表示の有無についても説明されたい。
なお、請求人が商標法第3条第2項を主張されるのであれば、上記の点に注意されて新たな証左を上記の所定期間内に提出されたい。
(4)第4号証の1は、日本のディーラー向けの英語のインボイス(写し)であるところ、同号証の1頁には「CUST TYPE CUST NAME、REGION ADDR1、・・・」が記載されているが、英語であるから訳文を提出されるとともに、使用商品を明確にされたい。同号証の2頁以降及び第4条の2には、「Invoice」のタイトルで「Item/Part Number・・・Unit Price」などが記載されているが、英語であるから訳文を提出されるとともに、いずれの表記が使用商品であるかを明確にされたい。
そして、第4号証の1及び2について使用商品の使用実績を客観的に把握できるように整理した資料を提出されたい。
(5)第5号証は、出願人の商品「ティアドロップ型のエアクリーナー」についての日本における売上高を示す資料である。当該資料の上部には、「Tear Drop AC Sales Japan」と示されており、商品「ティアドロップ型のエアクリーナー」についての売上高であることが分かるとしているが、英語であるから訳文を提出されるとともに、いずれの表記が使用商品であるかを明確にされたい。
そして、使用商品の使用実績を客観的に把握できるように整理した資料を提出されたい。
(6)第6号証は、出願人の1985年及び1990年の英文カタログからの抜粋写であり、上記カタログ中には、使用商品が多数掲載されていることが分かるが、日本向けのカタログでなく、使用商品が日本で使用されていることが認められない。
また、本願商標の使用商品を背面から描いてなるものであって、本願商標と異なる形状の使用商品が掲載されているから、本願商標の使用を立証するものとは認められない。
(7)第7号証は、1994年に発行されたオートバイ雑誌からの抜粋写であり、出願人の商品「ティアドロップ型のエアクリーナー」が装着されたオートバイが紹介されているが、日本製のオートバイに装着されていることが見当たらない。ハーレーダビッドソン等の外国製のオートバイに使用商品が装着されているとしても、どの程度の数量が日本で又は外国で、日本製又は外国製のオートバイ用として販売されたものかを明らかにされたい。
(8)第8号証は、我が国ディーラーからの本願商標の周知・著名性に関する証明書として提出しているが、各ディーラーが提出のインボイス(写し)に記載された取引相手と一致する各ディーラーであるのか、どの程度の数量を、どの程度の期間、取引しているのか、また、証明するに至った根拠が何であるかを明らかにされたい。

第4 審尋に対する回答
1.共通事項
(1)外国語の書類の翻訳について
外国語で提出した証拠方法については、下記の2.(4)(5)で示すように抄訳を提出する。
(2)商標法第3条第2項について
仮に本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、出願人は、本願商標は、商標法第3条第2項により登録されるべき旨を主張する。
すなわち、上記第1号証ないし第8号証で示すように、本願商標は長年にわたり使用されてきた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであり、自他商品識別力として十分に機能しているため、商標法第3条第2項に該当するものである。
2.個別事項
(1)本願商標の態様
本願商標は、三箇所のネジ部分及び中央に窪みを有する形状をしており、これは、使用商品を正面から表示した形状と同一であり、本願商標は、使用商品と同様に正面から表示されているものである。
(2)エアクリーナーの形状
第1号証の図で示されるとおり、エアクリーナーは、円柱型の形状で表されている。当該第1号証は、バイクのメカニズムの基本を解説する書籍であり、これらの解説本のような書籍には、各部品の一般的な形状が示されるのが通常である。
また、円柱型の形状は低コストで生産できることからも通常採用される形状となっている。本願商標に係る商品は、主に「ハーレーダビッドソン」用に使用されており、ハーレーダビッドソン愛好家に熱狂的に支持されている。
(3)商標の使用態様
本願商標に係る商品は、主に「ハーレーダビッドソン」用に使用されているのは上述した通りである。
また、第7号証で示されるように、本願商標に係るエアクリーナーは、オートバイの右側中央の位置に配置されている。
(4)第4号証の1及び第4号証の2の抄訳
(A)4号証の1の1頁の抄訳
・CUST TYPE(顧客のタイプ)・CUST NAME(顧客名)・REGION(地域名)・ADDR1(住所1)・ADDR2(住所2)・CITY(都市名)・STATE(州)・ZIP(郵便番号)・COUNTRY(国名)
第4号証の1の1頁は、以上の項目からなり、出願人の「オートバイ用のエアクリーナー」を販売する日本のディーラーの名称及び住所等の連絡先が示されている。
(B)4号証の1の2頁ないし42頁及び第4号証の2の抄訳
・Item/Part Number(品目/部品 番号)・Sell UM(販売)・Order Qty(発注量)・Price UM(価格)・Shipped Qty(船積み数量)・Unit Price(単価)・Extended Price(単価に数量を乗じた額)
第4号証の1の2頁ないし42頁及び第4号証の2は、以上の項目からなる。
使用商品は、第4号証の1の2頁ないし42頁及び第4号証の2中にある「AIR CLEANER ASSEMBLY」、「AIR CLEANER」である。
当該資料からは、本願商標を付した商品が日本の複数のディーラーに販売されている事実がみてとれる。
(5)第5号証の抄訳
当該資料の上部にある「Tear Drop AC Sales Japan」とは、「日本におけるティアドロップ型のエアクリーナーの売上高」である。
当該資料中の項目は、以下の通りである。
・Number (番号)・Customer Name(顧客名)・Part Number (部品番号)・Part Description(部品記述)・Qty(数量)・Dollars(ドル)・Date(日付)・Number(番号)
使用商品は、当該資料にある「A/C ASSEM., CV V2 BT/XL」、「A/C ASSEM.,99-UP CV」、「AC ASMB,93-UP BT-STK CV」等である。
当該資料からは、本願商標を付した商品が日本の複数のディーラーに販売されている事実がみてとれる。
(6)第6号証について
当該カタログは、ご指摘の通り日本向けのカタログではないものの、外国で周知であることを示すものであり、本願商標が日本において使用により周知であることの判断にあたって充分に勘案されるべきものである。
また、本願商標が正面から表示されているものであることは、上記2(1)で述べた通りである。
(7)第7号証について
本願商標に係る商品が日本製のオートバイに装着されていることが見あたらないとしても、本願商標は、第7号証等の日本におけるオートバイ雑誌で特集される程に日本国内で周知な商標となっている。
(8)第8号証について
本願商標の周知・著名性に関する証明書の提出に協力頂いた各ディーラーは、出願人と長年の取引関係があり、本願商標が長年の使用によって日本国内において周知になっていることを知り得る者である。各ディーラーが出願人以外の多数の業者の商品を取り扱うことは通常であり、そのような状況のなかで出願人の本願商標の周知性を証明していることは、当該証明の客観性を担保している。
(9)外国での登録例 本願商標と同一の商標が、識別力がある商標として登録されている事実がある(第1号証)。当該登録の事実を考慮すれば、我が国において自他商品識別力が欠如するものと判断される特段の事情はない。

第5 当審の判断
1 立体商標について
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異な形状であっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
なお、商品等の立体的形状について、上記と同旨の判示をしたうえで、自他商品の識別力を有しない旨認定、判断をした以下の東京高等裁判所の判決がある(平成11年(行ケ)第406号 判決言渡日 平成12年12月21日、 平成13年(行ケ)第48号 判決言渡日 平成13年12月28日ほか)。
2 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)上記1に照らし検討するに、本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるところ、しずくの形状で厚みを有する立体的形状であるから、オートバイ用エアーフィルターとボックスから構成されるオートバイ用エアクリーナーの一形態を表したものと理解できる。
(2)請求人は、請求の理由において「指定商品『オートバイ用エアクリーナー』とは、ホコリや砂等の不純物を排除し、キャブレターの目づまりやシリンダーの摩耗を最小限にしてエンジンのパワーダウンを防ぐ機能を有している。
この機能を最大限に生かすための形状が円筒型の形状であり、この形状が『オートバイ用エアクリーナー』について通常採用し得る形状となっている(甲第1号証)。一方、本願商標は、『涙の雫』を想起させる独創的な形状からなっている(甲第2号証)。」旨主張している。
しかしながら、インターネット上(ホビダス ショッピング:http://shopping.hobidas.com/shop/partsbox/9912/0.html)では、イージーライダース社製の各種のティアドロップエアクリーナー(別掲(2)「ティアドロップエアクリナー」参照)が取引されていることを考慮すれば、本願商標は、主に曲線をもって描かれたしずくの形状で厚みを有する立体的形状であり、普通に採択、使用される形状であって、特異な形状ということはできないから、自他商品の識別力を欠くものであって、公益上からもこれを一般に開放しておく必要性があるものと認められる。
(3)請求人(出願人)の提出する証拠についてみるに、甲第1号証によれば、「『オートバイ用エアクリーナー』は、空気取り入れ口の付いてエアクリーナーボックスとエアエレメントというフィルターで構成されている。」と記載されている。
これを本願商標について見れば、本願商標は、しずくの形状で厚みを有する立体的形状のエアクリーナーボックスであって、一般的に採用し得る円筒状(ラウンド型)の立体的形状の域を脱しないものと認められる。
その他、本願商標には、エアクリーナーボックスをオートバイ本体(のエンジン部等)に取り付ける3カ所のネジ部分を有するが、これはその商品の持つ機能を発揮させる目的で選択されたものと認められる。
(4)甲第6号証によれば、本願商標は、その正面中央部に円形状の窪みを有する円筒状フィルターの覆うためのしずくの形状で厚みを有する立体的形状であるから、商品の立体的形状の持つ美感を追求する等の目的のために施された程度の形状であるから、同種商品が一般に採用し得る範囲のものにすぎないと認められる。
(5)甲第2号証及び甲第3号証に「ティアドロップ型のエアクリーナー」の記載は認められるが、後述の(6)に記載のとおり「ティアドロップ型」の語はオートバイのタンクの形状の表す語として一般に採択使用されており、また、上述の(2)のとおり同業他社において「ティアドロップ型のエアクリーナー」が製造販売されているところであるから、一般的に採用し得る円筒状(ラウンド型)の形状とも近似しているしずく型の立体的形状であるから、この証拠をもって、本願商標から「ティアドロップ」(涙の雫)の観念が生じ、取引者、需要者に強い印象、記憶を与え、自他商品の識別標識としての機能を有するものとは認められない。
(6)「ティアドロップ(型)」の語は、例えば次のホームページに記載されている。
(ア)ウィキペディアフリー百科事典(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%8F%E3%83%BBGX)の「GX400・GX250」の項に「ティアドロップ型タンク」が記載されている。
(イ)「カワサキ バルカン1500クラシック」(http://www.goobike.com/1040183.html)の項に「ティアドロップ型タンク」が記載されている。
(ウ)「Honda Motor Co., Ltd.」(http://www.honda.co.jp/news/1978/2780125b.html)の「ホンダ ベンリイ〈CM125T〉 新発売」の見出しの下に「ティアドロップ(涙型)タンク」が記載されている。
そうとすれば、請求人の主張のとおり、本願商標を「ティアドロップ型エアクリーナー」と称する場合があるとしても、自他商品の識別標識としての機能を果たすものとは認識し得ないといわなければならない。
(7)以上のとおり、本願商標は、しずくの形状で厚みを有する「オートバイ用エアクリーナー」の立体的形状であるが、これを構成する部品(ボックス、フィルター)の立体的形状がいずれも、機能上最適な形状又はこれと類似する形状であって、これらの部品を組み合わせた全体的な形状もありふれたものであるから、従来の円筒状のものに比べて特徴的形状であるとはいえないばかりでなく、「オートバイ用エアクリーナー」の形状として通常予想される形状の選択範囲の域を出ていないといわざるを得ない。
したがって、本願商標をその指定商品である「オートバイ用エアクリーナー」に使用した場合、取引者、需要者は、オートバイ用エアクリーナーの形状そのものと認識するにとどまるというべきであるから、本願商標は、その指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
(8)なお、請求人は、「本願商標と同一の商標が、識別力がある商標として米国で登録されている事実がある(第1号証)。当該登録の事実を考慮すれば、我が国において自他商品識別力が欠如するものと判断される特段の事情はないもとの思料する。」(回答書の項番2(9))及び「本願商標の形態から成る立体商標を米国で既に商標権を保有している(回答書に証拠として添付の第1号証)から、本願商標が請求人の出所を表示するものであり、商標として機能していることの一根拠となるものである。」旨主張している。
しかしながら、米国での立体商標の登録例については、その判断の基準や判断過程及び根拠が明らかでないから、そのことをもって我が国においても直ちに本願商標を登録すべきであるとはいえないこと明らかというべきであるので、請求人のこの点の主張も採用できない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
3 商標法第3条第2項該当性について
商標法第3条第2項に該当する商標であるか否かについては、「出願に係る商標が、指定商品の品質、形状を表示するものとして商標法3条1項3号に該当する場合に、それが同条2項に該当し、登録が認められるかどうかは、使用に係る商標及び商品、使用開始時期及び使用期間、使用地域、当該商品の販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用をされた結果、需要者がなんぴとかの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるかどうかによって決すべきものであり、その場合に、使用に係る商標及び商品は、原則として出願に係る商標及び指定商品と同一であることを要するものというべきである。そして、同条1項3号により、指定商品の品質、形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標が、本来は商標登録を受けることができないとされている趣旨は、そのような商標が、商品の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによることにかんがみれば、上記の場合に、使用商標が出願商標と同一であるかどうかの判断は、両商標の外観、称呼及び観念を総合的に比較検討し、全体的な考察の下に、商標としての同一性を損なわず、競業者や取引者、需要者等の第三者に不測の不利益を及ぼすおそれがないものと社会通念上認められるかどうかを考慮して行うべきものと解するのが相当である。」(平成14年1月30日判決 東京高裁平成13年(行ケ)第265号)と判示しているところである。
4 本願商標の商標法第3条第2項該当性について
そこで、上記3に照らし、本願商標の商標法第3条第2項該当性について検討する。
(1)請求人は、本願商標が商標法第3条第2項に該当し、登録されるべき旨主張し、証拠方法として、平成19年1月9日付け提出の手続補足書で「1998年から2005年の日本ディーラー向けインボイス(写し)」(甲第4号証の1、甲第4号証の2)、「1998年から2003年の出願人の商品ついての日本における売上高を示す資料(写し)」(甲第5号証)、「出願人の1985年及び1990年のカタログからの抜粋(写し)」(甲第6号証)、「オートバイ雑誌からの抜粋(写し)」(甲第7号証)、「本願商標の周知・著名性に関する証明書(写し)」(甲第8号証)及び「米国特許庁データベースプリントアウト」(回答書に添付の第1号証)を提出した。
そして、上述の回答書において、甲第4号証及び甲第5号証については、その見出し項目のみを抄訳として提出している。
そこで、請求人(出願人)の提出する証拠についてみる。
(2)甲第4号証及び甲第5号証には、取引期間、取引数量の総計、取引商品、本願商標の記載が認められない。
(3)甲第6号証について、請求人は、「請求人(出願人)の1985年及び1990年のカタログからの抜粋(写し)」(手続補正書の項番3(2))及び「外国で周知であることを示すものであり、本願商標が日本において使用により周知であることの判断にあたって充分に勘案されるべきものである」(回答書の項番2(6))旨主張している。
しかしながら、当該証拠の翻訳書の提出がないばかりでなく、出願日よりさらに14年前、19年前の相当前のものであること、配布数量、配布場所等が不明であること、当該カタログに表示されている「オートバイ用エアクリーナー」には、「S&S」、「Cycle」「SUPER」、「ACCESSORIES」等のエンボス表示があり、本願商標と構成態様を異にするものであること、明らかである。
(4)甲第7号証について、請求人は、「本願商標に係る商品が日本製のオートバイに装着されていることが見あたらないとしても、本願商標は、第7号証等の日本におけるオートバイ雑誌で特集される程に日本国内で周知な商標となっている。」(回答書の項番2(7))及び「1994年に発行されたバイク雑誌からの抜粋(写し)であり、出願人の商品『ティアドロップ型のエアクリーナー』が装着されたバイクが多数紹介されている。」(手続補正書の項番3(3))旨主張されている。
しかしながら、当該証拠は、出願日より約10年前の相当前のものであること、表示されている「オートバイ用エアクリーナー」が不鮮明であること、当該雑誌の販売部数、販売地域等が不明であること、本願商標と構成態様を異にするものであること、明らかである。
(5)甲第8号証について、請求人は、「本願商標の周知・著名性に関する証明書の提出に協力頂いた各ディーラーは、出願人と長年の取引関係があり、本願商標が長年の使用によって日本国内において周知になっていることを知り得る者である。各ディーラーが出願人以外の多数の業者の商品を取り扱うことは通常であり、そのような状況のなかで出願人の本願商標の周知性を証明していることは、当該証明の客観性を担保している。」(手続補正書の項番3(4))及び「我が国ディーラーからの本願商標の周知・著名性に関する証明書である。
この点、上記証明書は、『複数』のディーラーが本願商標の周知性を認めた上で証明している。
また、ディーラーは多数の業者の商品を取り扱うのが通常であるが、そのような状況のなかで出願人の本願商標の周知性を証明していることは、現実に本願商標が長年にわたり使用されてきた結果、日本国内において周知であるからこそのことであるといえる。」(回答書の項番2(8))旨主張している。
しかしながら、甲第4号証の1によれば、約30社のディーラーが記載されているが、当該証明書を提出しているディーラーは、4社と少ないばかりでなく、原審説示のとおり、当該証明書は予め文章が記載された1枚の用紙のみの証明書であるため、証明書が安易に署名、押印されたのではないかという疑問も否定し得ないところであって信憑性に欠けるといわざるを得ないものであるから俄に採用し難い。
(6)回答書に添付の第1号証ついて、請求人は、「本願商標と同一の商標が、識別力がある商標として外国で登録されている事実がある(第1号証)。当該登録の事実を考慮すれば、我が国において自他商品識別力が欠如するものと判断される特段の事情はない。」と主張している。
しかしながら、米国での立体商標の登録例については、その判断の基準や判断過程及び根拠が明らかでないところ、仮にセカンダリーミーニングを根拠として登録されたものであるとしても、これをもって日本で周知著名であるとは認められないことは上記理由からも明らかである。
(7)請求人は、「本願商標に係る商品は、主に『ハーレーダビッドソン』用に使用されており、ハーレーダビッドソンの愛好家に熱狂的に支持されている。」旨主張している。
しかしながら、ハーレーダビッドソン(以下「HD」という。)は、2005年の販売台数が約1万2千台(http://www.harley-davidson.co.jp/company/press/presspdf/20060301.pdf参照)と国産のオートバイの販売台数に比べて少なく、当該商品がHDのエアクリーナーの純正部品とは認められないこと、HDの販売数から推測しても「オートバイ用エアクリーナー」の販売数が少ないこと、明らかである。
そうとすれば、本願商標は、「オートバイ用エアクリーナー」に使用されて周知著名であったとは認められない。
(8)甲第2号証及び甲第3号証並びに甲第6号証及び甲第7号証中に掲載されている使用商標「オートバイ用エアクリーナー」の形状が不鮮明なものを除き、いずれにも使用商標の正面の大部分に「S&S」等の文字がエンボス表示されていることが認められる。
そうとすると、取引者、需要者は、使用商品のエンボス等で表示された請求人の商号の略称と認められる「S&S」の文字商標により商品の出所を確認するものと認められるから、本願商標の形状については、商品の形状そのものと理解してきたと認めるのが相当である。
したがって、使用商標と本願商標とは、立体的形状部分は同一の範囲内のものであるが、甲第2号証及び甲第3号証並びに甲第6号証及び甲第7号証に表示されている使用商標には、「S&S」等の表示が施されているものであって、両者の構成態様が相違するから、本願商標の周知著名性を立証するものとは認められない。
(9)以上のとおり、請求人(出願人)提出の各証拠によっては、本願商標が自他商品の識別標識としての機能を有するに至っていることを証明するための証拠としては十分とはいえない。
そうとすれば、本願商標をその指定商品「オートバイ用エアクリーナー」に永年使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるようになったものとは認め難く、他に、本願商標が商標法第3条第2項に基づき登録が認められるべき客観的な証拠は見当たらない。
したがって、本願商標は、その立体形状のみの使用により自他商品の識別機能を有するに至ったものともいえないものであるから、請求人の本願商標が商標法第3条第2項の適用により登録を受けられるべきものであるとする主張も採用できない。
5 まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項には該当しないものであるとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであり、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本願商標

(2)ティアドロップエアクリーナー
(ア)ドラッグスター250用


(イ)ドラッグスター400用


(ウ)シャドウ400用


(エ)スティード400用


(オ)バルカン400用




審理終結日 2008-03-04 
結審通知日 2008-03-10 
審決日 2008-03-24 
出願番号 商願2004-107854(T2004-107854) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Y07)
T 1 8・ 17- Z (Y07)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯田 亜紀山田 正樹 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 岩崎 安子
鈴木 修
代理人 竹内 耕三 
代理人 森田 俊雄 
代理人 野田 久登 
代理人 深見 久郎 

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