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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Z03
審判 全部無効 外観類似 無効としない Z03
審判 全部無効 観念類似 無効としない Z03
管理番号 1181271 
審判番号 無効2007-890138 
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-16 
確定日 2008-07-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4969510号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4969510号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成12年8月16日に登録出願、第3類「洗剤,クレンザー,磨き粉,その他のせっけん類」を指定商品として、同18年6月5日に登録をすべき旨の審決がなされ、同年7月14日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録第2221773号商標(以下「引用商標」という。)は、「DON」の欧文字と「ドン」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、昭和62年12月7日に登録出願、第4類「せつけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として、平成2年4月23日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む)及び参考資料1ないし8(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず商標登録されたものである。
(ア)本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、文字と図形との組み合わせよりなるところ、拒絶査定不服審判では、容器の形状と思しき図形部分の下方に顕著に書された「DAWN」の文字部分は、独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものとし、該文字部分「DAWN」に相応して「ドーン」の称呼を生ずるものであるとされた。
(イ)引用商標について
引用商標は、「DON」の文字と「ドン」の文字とを上下二段に横書きしてなるところ、片仮名文字「ドン」に対応する称呼は「ドン」であるが、ローマ文字「DON」に対応する商標の称呼は、「ドン」であると共にまた「ドーン」とも称呼されるものである。
(ウ)商標の類似について
本件商標を構成する「DAWN」の語は、外来語辞典にも見受けることができないほど、日常使用する語ではなく、その称呼「ドーン」を明瞭に発音する一般の取引者・需要者は少ないと言わなければならないものである(甲第3号証ないし甲第7号証)。
場合によっては、「ドーン」であり、「ドン」と称呼される場合も少なくないものである。
本件商標の拒絶査定不服審判では、「DAWN」の文字部分から「夜明け、あけぼの」等を意味する英語とされ、「DON」の文字部分は、「?様(スペインの敬称)、首領、?を着る、ドン(男子の名)」等を意味する語として、その観念上の差異を強調するが、前述の通り、「DAWN」の語は、外来語辞典にも見受けることができないほど日常使用する語ではなく、むしろ一般の取引者・需要者を基準とした場合、その認識の相違は困難である。 仮に、「DAWN」の称呼が「ドーン」としても、「ドーン」の長音の有無を「ドン」と聴別することは困難であり、むしろ「ドーン」と「ドン」は、称呼においては紛らわしいものである。我国での一般の取引者・需要者の感覚では、「DAWN」の称呼「ドーン」は、「ドン」と同様に太鼓の音とか、大砲の音とかを連想し、「ドーン」と「ドン」は、聴別し難いばかりでなく、共通の印象をもって認識されるものであると言わなければならない。
したがって、商標としての取引の場で、簡易迅速を尊ぶ取引においては「ドーン」と「ドン」は、聴別し難い語韻・語調の近似したものとして聴取され、その結果、相紛れるおそれのある類似する商標とされるのであり、観念上の相違があるとしても、称呼における類似性を凌駕するものではないというべきである。
また、本件商標は「DAWN」の文字と図形との組み合わせよりなるものであり、引用商標は「DON/ドン」の上下二段に横書きしてなるものであって、両商標の外観が相違するとしても、称呼において聴別し難い相紛れるおそれのある類似する商標である以上、外観上の相違をもって非類似と認定すべき理由にはならないこと明白である。
そして、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、「せっけん類」において相抵触する商品であることは明白である。
したがって、称呼において聴別し難い相紛れるおそれのある類似する商標である以上、観念及び外観において相違するものであっても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであって、商標法第46条第1項により、その登録は無効とされるべきものである。
(エ)審査においては、登録第4969510号及び登録第4979864号の出願審査の段階で、登録第2221773号「DON/ドン」を引用して拒絶査定となった例があり(甲第8号証)、商願2006-96999号「DAWN」の出願審査において、登録第2221773号「DON/ドン」を引用して拒絶理由通知を受けた例があるように(甲第9号証)、専門的知識・経験を有する特許庁においても見解を異にしており、さらに、商願2006-96999号の出願審査にあっては、登録第4969510号及び第4979864号の登録査定がなされたあとでの判断であって、両商標の間に混同が生じるおそれが顕著であることを示している。このような商標が併存登録されることに、請求人は法的安定性が損なわれるものと強く危倶し、本請求に及んだものである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)本件商標について
本件商標構成中の「DAWN」の語は、研究社発行の「新英和中辞典」(甲第10号証)によれば、「大学入試、大学教養程度の基本語2000語」に相当する語と位置づけられており、わが国において特に親しまれた語とはいえず、むしろ、直ちに特定の意味合いを想起、認識することのない造語に近い語として理解される語といっても過言ではないのである。
(イ)引用商標について
引用商標構成中の「DON」の語は、三省堂発行の「コンサイス外来語辞典」(甲第3号証)によれば、「主、主人、ボス、親分、ソ連中央を流れる大河、ベトナムの通貨単位」等の様々な意味を有する語であり、また、その称呼のみからすれば、「太鼓などの強くなる音、正午を知らせるために空砲を発したもの、丼、呑、鈍、曇」等の語を想起させるものであって、特定の固定した語のみを理解、認識させるものではない。
(ウ)本件商標と引用商標との類否について
請求人は、請求書において「(本件商標は)場合によっては、『ドーン』であり、『ドン』と称呼される場合も少なくないのである。」旨述べたが、これは要するに、本件商標のように、特に親しまれた英語ではなく、かつ、「D」「A」「W」「N」の綴り字で他に親しまれた類語がないような場合は、必ずしも「DAWN」の発音記号どおりに発音されることはなく、長音記号を省略する場合もあり得るということを述べたものである。
そして、本件商標「DAWN」の文字から、「ドーン」の称呼を生ずるとしても、常に「夜明け、あけぼの、暁」等の観念を伴って称呼されるわけではなく、むしろ、直ちに特定の意味合いを想起するような語ではないから、どちらかといえば、造語に近い語として理解、認識されるものというべきである。
そうすると、該語のもつ観念がその称呼に及ぼす影響は小さいものということができる。
他方、引用商標「DON/ドン」も複数の意味をもつ語であるから、特定の意味合いのみを想起させることなく、該語のもつ観念がその称呼に及ぼす影響は小さいものといわなければならない。
そこで、本件商標から生ずる「ドーン」の称呼と引用商標から生ずる「ドン」の称呼とは、その観念上の相違を捨象して、専ら、「ドーン」と「ドン」の称呼のみを比較判断すれば足りるのである。
そうすると、両者は、「ド」「ン」の2音を共通にし、異なるところは、中間において長音の有無に差異を有するに止まるものということができる。 そして、該中間における長音は、前音「ド」の母音(o)をそのまま伸ばす音であるから、明確には聴取し難い音ということができ、それぞれを一連に称呼したときは、互いに相紛れるおそれがある称呼上類似する商標といわざるを得ないのである。
また、外観については、両者の構成前述のとおりであるから、外観上、著しく異なるとまではいうこともできない。
(エ)被請求人の挙げている商標の事例について
被請求人は、本件商標と引用商標とは非類似である旨主張して4件の事例を挙げているが、それらは、何れも語頭音が破裂音「パ」又は「バ」であり、強音で明確に発音される音に長音が続く場合であり、本件のように、「ド」に長音が続く場合とはおのずから事情が異なるというべきである。
また、「Dole」の例も「o」の文字を相当に図案化してなるから、この外観上の差異を考慮に入れると本件とは必ずしも同一に論ずることはできない。
請求人は、2音又は3音構成からなるうち、中間において長音の有無に差異を有する商標が類似とされた審判決例(甲第12号証ないし甲第20号証)を挙げることにより、本件商標と引用商標とが類似する商標であることの妥当性を裏付けることとする。
(オ)せっけん類等の分野における商取引の実情について
「せっけん類」等の分野における商取引の実情は、参考資料1ないし7のとおり、登録商標が欧文字であっても、商品紹介やレシートなどの表示は、登録商標の態様の如何に拘らず、片仮名表記が多用されている。
本件商標「DAWN」については、格別に親しまれた語ともいえないことから、これが正確に「ドーン」と称呼されるとは限らないことから、片仮名文字を付記したり、あるいは片仮名文字のみの使用も容易に想定されるところである(その場合、商標法第50条不使用取消審判においては、欧文字及び片仮名文字の相互使用は、その称呼及び観念を同一にすれば、原則として社会通念上同一の商標の使用とされている。)。
そうすると、本件商標が片仮名表示で「ドーン」と使用された場合、引用商標「DON/ドン」とは、外観上の類似性とも相俟って、より一層その類似性は高まるものといわざるを得ないのである。

4 被請求人の答弁の要旨
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第29号証を提出した。
(1)本件商標から生じる称呼と引用商標から生じる称呼について
(ア)本件商標は、その構成文字「DAWN」に相応して「ドーン」の称呼が生じるものであり、引用商標は、その構成文字に相応して「ドン」の称呼が生じるものである。
請求人は、引用商標に関し、ローマ字「DON」に対応する商標の称呼は「ドン」であると共に「ドーン」とも称呼されるものである旨主張し、また、本件商標の称呼について、場合によっては「ドーン」であり、「ドン」と称呼される場合も少なくないものである旨主張しているが、これについて、何故、引用商標中の「DON」が「ドーン」と長音を伴って称呼され、本件商標中の「DAWN」が「ドン」と短く詰まって称呼されるのか、その理由を請求書の記載中に見いだすことができない。
一般に、商標の称呼における類否を論じるに際しては、それぞれの商標から生じる最も自然な称呼に基づいて判断しなければならないとするのが過去における判例及び審決等の示すところである。
そのような観点から、本件商標中の「DAWN」及び引用商標中の「DON」をみると、いずれも英語による既成語であるため、英和辞書に掲載の発音記号を日本語(片仮名表記)に置き換えたものが最も自然な称呼とするのが妥当である。
そして、両単語の発音記号は、乙第1号証及び乙第2号証として提出する英和辞書にあるとおり、「DAWN」の語の発音記号には長音を表す「:」が含まれており、「DON」の語の発音記号には長音を表す記号は全く含まれていない。
このことから、本件商標中の「DAWN」の語の自然の称呼は、長音を伴う「ドーン」であり、引用商標中の「DON」の語の自然の称呼は、長音を伴わずに短く詰まった「ドン」であるとするのが妥当である。
上記の請求人の主張は、「ドーン」及び「ドン」のように短い称呼における全体の称呼に対する影響が非常に大きい長音の有無を、類否判断以前の称呼の認定において根拠なく軽視又は無視するものであり、著しく妥当性を欠くものと言わざるを得ない。
また、請求人は、本件商標中の「DAWN」の語が外来語辞典や新語辞典に掲載されていないことから、その称呼「ドーン」を明瞭に発音する一般の取引者・需要者は少ない旨主張している。
しかしながら、外来語辞典や新語辞典に掲載されていないことをもって、既成語である英単語が一般の取引者・需要者に明瞭に称呼されないことの根拠とすることができないことは明らかである。
むしろ、我が国における外国語の普及度、特に英語の普及度は、小学生でも習い、義務教育である中学校、その後の高等学校及び大学における10年間においても、必ず習得しなければならない外国語であることよりすれば、我が国においては、英語が極めて広く普及し、難解な語でない限り、普通に理解して認識されているものである。
してみれば、「DAWN」の語を顕著に有する本件商標は、これに接する取引者又は需要者の間において、「ドーン」と正確に称呼され、商取引に資されるとするのが相当である。
更に、請求人は、甲第7号証において、インターネットのYahoo!辞書により「ドン」と「ドーン」の語をそれぞれ検索した結果を基に、「どーん」が「どん」と同義に扱われており、「ドーン」の称呼に対応する語として「DAWN」がリストアップされていないことを指摘している。
しかし、本件審判において議論すべきであるのは、本件商標中の英単語「DAWN」から生じる称呼と引用商標「DON/ドン」から生じる称呼であって、多様な意味を有する片仮名文字「ドーン」をインターネット辞書で検索した結果について議論するのは不適当と言わざるを得ない。
なお、被請求人がYahoo!辞書により「DAWN」及び「DON」の両語を検索したところ、「DAWN」については長音を伴った発音記号が表示され、「DON」については長音を伴わない発音記号が表示された(乙第3号証及び乙第4号証)。また、学習やビジネスにおいて頻繁に使用されるインターネット辞書「SPACE ALC」によって前記2語を検索したところ、「DAWN」については長音を伴う「ドーン」の片仮名による発音が、「DON」については長音を伴わない「ダン、ドン」の片仮名による発音が明示されている(乙第5号証及び乙第6号証)。
これらのインターネット辞書検索の結果によっても、「DAWN」は「ドーン」と発音されるのが自然である。
以上に述べたことから、本件商標からは「ドーン」の称呼のみが生じ、引用商標からは「ドン」の称呼のみが生じるとするのが相当である。
(イ)両商標の称呼の比較について
本件商標から生じる「ドーン」と引用商標から生じる「ドン」の称呼を比較すると、称呼における識別上最も重要な要素を占める語頭音において、明瞭に称呼される有声破裂音「ド」の長音の有無という差異を有する。
これにより、前者は滑らかにゆったりとした響きを持って称呼されるのに対し、後者は極めて簡潔に詰まった響きをもって称呼されるものである。
これに加えて、両称呼はそれぞれ3音と2音という極めて短い音構成からなるため、前記の差異が称呼全体に及ぼす影響は極めて大きいものである。 したがって、両称呼は、互いに明瞭に聴別し得るものである。
ちなみに、同-又は類似の商品について、「ドーン」の称呼と「ドン」の称呼が生ずる各商標が併存して登録されており(乙第7号証ないし乙第16号証)、また、審決では、語頭に破裂音を有する商標が互いに非類似と判断された例があり(乙第17号証ないし乙第21号証)、これらの事例における判断基準は、本件商標と引用商標の類否判断においても充分に参酌されるべきである。
なお、請求人は、「DAWN」の称呼「ドーン」は「ドン」と同様に太鼓の音とか、大砲の音とかを連想し、「ドーン」と「ドン」は共通の印象をもって認識されるものである旨主張しているが、この主張は、「DAWN」の英単語とは全く無関係の意味合いを捻出し、その意味合いを共通にすることを理由に「ドン」の称呼にまで類似の範囲を拡大しようとするものであり、商標の類否判断は対比する商標の有する称呼・外観・観念の3要素を総合的に考察して行うとする審査の基準に反することは明白である。
(ウ)両商標の外観及び観念について
本件商標と引用商標とは、外観において明瞭に区別できるものであって、外観上類似しないものである。
また、本件商標は「DAWN」の文字から「夜明け、あけぼの」等の観念が生じるものであるのに対して、引用商標からは「?様(スペインの敬称)、首領、?を着る、ドン(男子の名)」等の観念が生じるものであるから、両商標は、観念においても相紛れるおそれはないことは明らかである。
(エ)なお、請求人は、被請求人の所有にかかる本件商標及び登録第4979864号商標が、その出願審査の段階で引用商標(登録第2221773号)を引用されて拒絶査定となった例等を挙げて、被請求人の商標と請求人の商標が併存登録されることについて、法的安定性が損なわれることが危倶される旨主張しているが、商標の類否という主観的判断を要する問題に関しては、審査官によって判断にばらつきが生じてくることは法が予定しているところであり、その上で可能な限り客観的かつ妥当な判断を行うために、審判官の合議体で審理を行う拒絶査定不服審判や異議申立の制度が設けられているものであり、本件商標の審査段階で引用商標が引用されたという審査における判断と両商標が非類似とされた拒絶査定不服審判及び異議申立における判断が異なることをもって、法的安定性が損なわれるという請求人の主張は首肯できない。
(オ)以上のとおり、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しない商標である。

5 当審の判断
(1)本件商標と引用商標との類否について
(ア)両商標の構成について
本件商標は、別掲に示したとおり、洗剤等の容器の如き写実的な図形を表し、その図形の中央からやゝ下の部分に、縁取りされた領域を設け、その中に、白色の太字をもって「DAWN」の欧文字を表し、該文字の背後には、光を放つ太陽を表したかの如き図形を配した構成からなるものである(なお、該太陽の如き図形の右端部分にシール状のものが貼付されているが、不鮮明なため、その文字を判読することはできない。)。
他方、引用商標は、前記したとおり、「DON」の欧文字と「ドン」の片仮名文字とを二段に横書きした構成からなるものである。
(イ)外観の類否について
そこでまず、両者の外観を比較するに、本件商標と引用商標とは、上記したとおりの構成からなるものであり、両者の全体構成においては顕著な差異を有するものである。
また、本件商標における容器の如き図形部分は、その指定商品との関係からみて、それ自体としては識別力が無いか乏しいものとして、これを捨象して検討してみても、本件商標は、太陽を表したかの如き図形を背景にして、「DAWN」の欧文字を表してなるのに対して、引用商標は、「DON」の欧文字と「ドン」の片仮名文字とを二段に横書きした構成からなるものであるから、両者の外観には、なお判然とした差異を有するものといわなければならない。
更に、本件商標から欧文字部分のみを抽出して、これを引用商標の欧文字部分と比較したとしても、「DAWN」の欧文字と「DON」の欧文字とは、4文字あるいは3文字という、いずれも簡潔な構成からなるものであり、その中にあって、中間部分とはいえ、明らかに字形の異なる「AW」と「O」の文字の差異を有するものであるから、通常の注意力をもってすれば、両者の外観を見誤ることはないものというべきである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、いずれの観点からみても、外観において顕著な差異を有するものであるから、これを離隔的に観察した場合においても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(ウ)称呼の類否について
本件商標は、上記した構成からなるものであるところ、その図形部分から直ちに特定の親しまれた称呼を生ずるものとは認められないから、読み易い文字部分を捉えて称呼されるものということができる。
しかして、その文字部分である「DAWN」の欧文字は、例えば、三省堂発行の「コンサイス英和辞典」によれば、高校において学習する基本語である旨の表示がされていることから、比較的知られている英単語ということができるものであり、「ドーン」と発音されるものであるから、本件商標における該文字部分からは、その英単語の読みに相応した「ドーン」の称呼をもって自然な称呼というべきである。
他方、引用商標は、上記したとおり、「DON」の欧文字と、その読みを表したものと認められる「ドン」の片仮名文字とを二段に横書きした構成からなるものであるから、該構成文字に相応して、「ドン」の称呼を生ずるものということができる。
そこで、本件商標から生ずる「ドーン」の称呼と引用商標から生ずる「ドン」の称呼とを比較するに、両者は、「ド」と「ン」の音を共通にし、異なるところは、語頭に位置する「ド」の音に長音を伴うか否かのみではあるが、この長音は、「ド」の母音である(o)の部分が伸ばされるものであり、(o)の母音は、開放母音にして明瞭に発音・聴取されるばかりでなく、その全体の称呼も、本件商標は、ゆったりとした感じで「ドーン」と発音・聴取されるのに対して、引用商標は、簡潔に「ドン」と発音・聴取されるものである。
そうとすれば、この両音における差異は、長音の有無の差異とはいえ、極めて短い両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえず、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調・語感を異にし、彼此紛れるおそれはないものというべきである。
(エ)観念の類否について
本件商標は、上記した構成からなるところ、その図形部分を含めた構成全体から一定の観念を生ずるものとはいえないが、「DAWN」の文字部分は、英語の成語であるから、その語義に相応して、「夜明け、あけぼの、曙光」等の観念(意味合い)を表すものであり、光を放つ太陽を表したかの如き図形部分と照応しているものともいえる。
他方、引用商標構成中の「DON」の文字部分は、英語の成語であるから、その語義に相応して、「君、さん、殿(スペインで男の名の前につける敬称)、ボス」等の観念(意味合い)を表すものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、その意味合いにおいても別異のものであるから、観念においても互いに紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(オ)以上のとおり、本件商標と引用商標とは外観において顕著な差異を有するものであるから、これらの商標に接する取引者・需要者は、全く別異の商標としての印象を受け、記憶にとどめるものというべきである。加えて、両者は、その称呼及び観念においても十分に区別し得る差異を有するものである。
してみれば、請求人の主張するように、称呼の仕方によっては「ドーン」の称呼と「ドン」の称呼との間に紛らわしさを生じさせる場合がないとはいえないとしても、両者の外観、称呼及び観念を総合して全体的に考察すれば、本件商標と引用商標とは、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標と引用商標とは、指定商品においては「せっけん類」において抵触しているものではあるが、商標において非類似のものであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものとはいえない。

(2)請求人の主な主張について
(ア)請求人は、「DAWN」の語は特に親しまれた英語ではなく、かつ、該綴り字からなる親しまれた類語もないような場合には、必ずしも、その発音記号どおりに発音されることはなく、長音記号が省略されて「ドン」と称呼される場合も少なくない旨述べている。
確かに、その構成中に「D」「A」「W」「N」の綴りを有する親しまれた類語は見当たらないとしても、これに類した綴り字の英単語としては、「lawn(芝生)」や「drawn(drawの過去分詞形)」等の例もあり、高校において学習する基本語ないしは大学入試程度の語であることからすれば、我が国における英語の普及度からみて、長音記号がむやみに省略されるものとも考え難く、「DAWN」の語からは「ドーン」と称呼されるものとみるのが相当である。
そして、英語の知識が必ずしも十分でない者にあっても、これをローマ字風の読みにして、「ダウン」と称呼することはあり得ても、「ドン」と称呼することはないものというべきである。
(イ)請求人は、「せっけん類」等の商取引の実情として、商品紹介やレシートなどの表示は登録商標の態様の如何に拘らず、片仮名表記が多用されており、本件商標が片仮名表示で「ドーン」と使用された場合には、引用商標との外観上の類似性とも相俟って、より一層その類似性は高まる旨主張している。
しかしながら、商品紹介やレシートなどの表示に片仮名表記が用いられることが多いとしても、無効審判は、登録された商標の有効性が争われているものであるから、商取引の場における商標の使用状態は考慮されるべきではあるが、商標の類否は、あくまでも、登録されている商標の構成態様に基づいて判断されるべきものであって、本件商標の構成に存在しない片仮名表記による使用状態に基づく請求人の主張は採用できない。
(ウ)また、請求人は、その主張の妥当性を裏付けるために、審判決例を挙げているが、それらの審判決例で争われているのは、いずれも、文字同士の類否を争ったものであり、しかも、その文字構成も本件とは態様を異にするものであるから、直ちに、本件商標と引用商標との類否の判断の参考とすることはできない。
(エ)してみれば、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。

(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標




審理終結日 2008-05-15 
結審通知日 2008-05-19 
審決日 2008-05-30 
出願番号 商願2000-90301(T2000-90301) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Z03)
T 1 11・ 263- Y (Z03)
T 1 11・ 261- Y (Z03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青野 紀子 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 酒井 福造
鈴木 修
登録日 2006-07-14 
登録番号 商標登録第4969510号(T4969510) 
商標の称呼 ドーン 
代理人 黒瀬 雅志 
代理人 塩谷 信 
代理人 吉武 賢次 
代理人 萼 経夫 
代理人 宮嶋 学 
代理人 宮城 和浩 
代理人 舘石 光雄 

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