ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y07 |
---|---|
管理番号 | 1179334 |
審判番号 | 取消2007-300470 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2007-04-17 |
確定日 | 2008-06-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4734295号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4734295号商標(以下「本件商標」という。)は、「アルファ」の文字を標準文字で書してなり、平成14年8月6日に登録出願、第7類「包装機」を指定商品として、同15年12月19日に設定登録されたものである。 2 請求人の主張の要点 請求人は、商標法第50条第1項の規定により本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第15号証を提出した。 (1)請求の理由 本件商標は、過去3年間商標権者によって使用された形跡がない。また、専用使用権者及び通常使用権者の登録もないため、この点からも、本件商標は不使用の商標である。したがって、本件商標の登録は取消されるべきである。 (2)答弁に対する弁駁 ア 答弁の理由(1)について 被請求人は、指定商品「包装機」に「α」及び「アルファ」を付して使用しており、ギリシア文字「α」は本件商標「アルファ」と外観上は異なるが、称呼、観念が同一のものとして定着しているから社会通念上同一と認められる商標であると主張している。 しかしながら、本件商標「アルファ」は、ギリシア文字「α」を表音化して片仮名で表した構成をもって識別力を有するものだから、本件商標をギリシア文字一字で表した「α」とは識別力を異にし、かかる変更は社会通念上同一といえる範囲を逸脱している。 平成8年の商標法の一部改正において、商標法第50条第1項において社会通念上同一と解し得る商標の範囲が例示された括弧書きを設けて、パリ条約5条C(2)の趣旨の日本への適用も明確になった経緯に照らしてみると、商標法第50条における登録商標の使用とは、パリ条約5条C(2)の規定「商標の所有者が一の同盟国において登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えてその商標を使用する場合には、その商標の登録の効力は、失われず、また、その商標に対して与えられる保護は、縮減されない。」に基づき解釈されるべきである。すなわち、登録商標の識別性に影響を与えるほどの変更を加えた商標の使用は、もはや登録商標の使用とみなされないと解されるべきである。商標が社会通念上同一であると言うためには、態様を変更しても識別力が変わらないことがその前提となるのである。 被請求人はギリシア文字「α」は本件商標「アルファ」の称呼、観念が同一のものとして定着しているから社会通念上同一と主張しているが、ギリシア文字「α」と本件商標「アルファ」の識別力を検討すると、被請求人が使用するギリシア文字「α」は一字からなる極めて簡単な構成の標章であって、取引上商品の型番・品番を表すための記号として一般に採択されるものだから、識別力を有さないものである。商標法第3条第1項第5号「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」の規定から、このような標章に識別力が認められないことは明らかである。 事実、ギリシア文字「α」は、記号として型番や品番の一部として採択されていることは、たとえば、包装機に「ROSSO-1500α」「ROSSO-1500β」「K-1000+ROSSO-1500β」(甲第4号証)、電撃殺虫器の注文用するための品番として「α-1OA」 「α-20A」 「α-30A」「α-200」(甲第5号証)、パンフレットラックの型番「α-100型」「α-150型」「α-155型」(甲第6号証)、床面自動洗浄機の型番に「F55Eα型」「F35Eα型」「F30Eα型」(甲第7号証)等、広範な商品分野におけるその使用例からも明らかである。 こうした取引の実情を受け、御庁においてもギリシア文字「α」自体には識別力がないと判断するのが通例である(甲第8号証ないし同第13号証)。 「α」が単なる型番・品番として取引社会で一般的に使用されているのに比べ、「アルファ」にはそのような事実はなく、少なくともこれを型番・品番と把握すべき理由はない。 したがって、「α」と「アルファ」はその識別力において、前者は識別力ありであるのに対して、後者はないものであって、片仮名で表した本件商標「アルファ」をギリシア文字「α」に変更することは、識別力が変わらないことを前提として許容される社会通念上同一の範囲を逸脱しているといわざるを得ない。すなわち、ギリシア文字「α」の使用は、本件商標「アルファ」の使用とはいえない。 イ 答弁の理由(2)乙第1号証について 被請求人は、乙第1号証としてデザイン化された商標「αWRAPPERV」と「アルファラッパー」が表示されたカタログを提示し、「WRAPPER」及び「ラッパー」が包装機を表すものとして取引者間では一般的であるから、商標の要部は「α」又は「アルファ」にあり、ギリシア文字「α」と本件商標「アルファ」は社会通念上同一の商標といえるから、本件商標の使用であると主張する。 しかし、上述のとおり、そもそもギリシア文字「α」は、本件商標「アルファ」と社会通念上同一の商標とは言えないので、「αWRAPPER」の使用が本件商標「アルファ」の使用にあたらないことは言うまでもない。 仮に、ギリシア文字「α」が本件商標「アルファ」と社会通念上同一だとしても、ギリシア文字「α」のみでは識別力を有さないため、商標として自他商品識別標識、出所表示として機能しないものである。該使用商標に接する取引者・需要者が、商品の型番・品番として一般に用いられる「α」部分にのみ着目し取引に及ぶと考えることは合理的でない。むしろ、称呼上も一連で称呼するに適した「αWRAPPER」を、一連の造語として把握し取引に臨むものである。一連の造語商標「αWRAPPER」と本件商標「アルファ」が、社会通念上の同一の商標とはいえないことは明らかである。 なお、被請求人は、使用商標「αWRAPPER」中の「α」部分には顕著な外観的特徴があることを自認している。このような外観的な特徴を有する使用商標「α」と本件商標の片仮名「アルファ」が社会通念上同一であるかを検討すれば、使用商標中の「α」部分に見られるような外観的特徴を本件商標「アルファ」が全く備えていない以上、これが社会通念上同一と言えないことは明らかである。 また、「アルファラッパー」は、カタログ表紙の中ほどに同大同色でまとまりよく「さらなる進化へ ! 新星アルファラッパー」と斜め書きに書されているが、このようなキャッチフレーズは、出所を表示するものとして機能せず、商標としての使用とはいえない。 仮に「アルファラッパー」が商標だとしても、「アルファ」は、本来識別力を有さない「α」の表音片仮名表記であるから、さほど強い識別力を有するものではなく、「ラッパー」と結合して「アルファラッパー」と看取されるのが自然である。 このような請求人の主張は審決(甲第14号証)や裁判例(甲第15号証)からも肯定されるものである。 ウ 答弁の理由(3)乙第2号証ないし(6)乙第5号証について 被請求人は、乙第2号証ないし同第5号証を提出し、「WRAPPER」及び「ラッパー」が包装機を表すものとして取引者間では一般的であるから、商標の要部は「α」にあり、本件商標「アルファ」の使用であると主張する。 しかし、上述のとおり、そもそもギリシア文字「α」は本件商標「アルファ」と社会通念上同一の商標とは言えないので、「αWRAPPER」や「αラッパー」の使用が本件商標「アルファ」の使用にあたらないことは言うまでもない。 仮に、ギリシア文字「α」が本件商標「アルファ」と社会通念上同一だとしても、ギリシア文字「α」のみでは識別力を有さないため、商標として自他商品識別標識、出所表示として機能しないものである。「α」と「WRAPPER」が一連一体に把握されてはじめて商標として機能するものであるから、本件商標「アルファ」とは大きく構成が異なり、同一の称呼、観念が生じないため、社会通念上の同一の商標とはいえないものである。 エ 答弁の理由(7)について 被請求人は、乙第1号証ないし同第3号証には、包装機本体の正面中央部に「α」のロゴを付した写真が掲載されていると主張する。 しかし、これらは、すべてデザイン化された「α WRAPPER V」又は「αWRAPPERVI」とある。そもそもギリシア文字「α」は、本件商標「アルファ」と社会通念上同一の商標とは言えないので、「αWRAPPER」や「αラッパー」の使用が本件商標「アルファ」の使用にあたらないことは言うまでもない。 仮に、ギリシア文字「α」が本件商標「アルファ」と社会通念上同一だとしても、ギリシア文字「α」のみでは識別力を有さないため、商標として自他商品識別標識、出所表示として機能しないものである。「α」と「WRAPPER」が一連一体に把握されてはじめて商標として機能するものであるから、本件商標「アルファ」とは大きく構成が異なり、同一の称呼、観念が生じないため、社会通念上の同一の商標とはいえない。 3 被請求人の主張の要点 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第14号証(枝番号を含む。なお、被請求人は、証拠方法を資料1ないし14と表記しているが、当審判合議体では、これらをそれぞれ乙第1号証ないし同第14号証と変更し表記した。)を提出した。 (1)本件商標は、その指定商品「包装機」に関して、審判請求の予告登録日である平成19年5月10日前の3年以内に、被請求人により日本国内で使用されているものである。 すなわち、被請求人は、指定商品である「包装機」中の特定の機種、例えば高速横形ピロー包装機や、これをベースとしたシュリンク包装機、その他横型製袋充填機等に「α」の商標を付し、これら製品を本件審判の請求前から広く販売に供している事実がある。また、前記製品に関する広告若しくは取引書類に、前記商標「α」及び商標「アルファ」を付して展示若しくは頒布する等の行為も併せて行ってきた。 そして、前記商標「α」は、本件商標「アルファ」と称呼上同一であり、かつ「或る未知の値」の如き観念においても両者は同一であるので、「社会通念上同一と認められる商標」である。 以下、本件商標の使用の事実を、添付の乙第1号証ないし同第5号証を参照して説明する。 (2)乙第1号証について 乙第1号証は、被請求人が製造・販売している高速横形ピロー包装機「α WRAPPER V」のカタログのカラーコピーである。このカタログの裏頁右下隅に印刷された「JUN.2004 14(審決注:「14」は丸数字)AT×1」の表示は、乙第9号証の証明書で証明される如く、2004年6月に該カタログが印刷されたことを示している。 乙第1号証のカタログには、「α WRAPPER V」のアルファベット等の文字群と、「アルファラッパー」の片仮名文字とが印刷されている。前者のアルファベット文字群は、前記ギリシア語アルファベットの「α」と、ローマ字綴り「WRAPPER」と、ローマ数字「V」との組合せからなる。ここにローマ数字「V」は、順序・序列を表すアラビア数字の「5」に該当するものであって、これ自体に商標としての識別性がない。 そして上記のローマ数字を除外した残りの表示であるギリシア語アルファベットの「α」とローマ字綴り「WRAPPER」とは、その字体や大きさが異なるため、両者を切り離して分離観察するのが極めて自然である。殊に「WRAPPER」の文字は「包装機」を意味するものとして、その片仮名表記である「ラッパー」と共に包装機械業界では広く使用されている(乙第11号証の1ないし3)。 したがって、前記のローマ字綴り「WRAPPER」は、指定商品「包装機」との関係で識別性がないから、残余の「α」に商標としての要部があると云うべきである。 更に、乙第1号証のカタログには、片仮名文字「アルファラッパー」の商標が印刷されているが、後半部分の「ラッパー」が包装機を示すことは前述したとおりである。したがって、前半部分である「アルファ」に商標の要部があることは勿論であり、これは本件商標「アルファ」そのものの使用に外ならない。 (3)乙第2号証について 乙第2号証は、被請求人が製造・販売しているシュリンク包装機「α WRAPPER VI」のカタログである。このカタログの最終頁右下隅に印刷された「MAR.2006 1(審決注:「1」は丸数字)AT×1」の表示は、乙第10号証の証明書で証明される如く、2006年3月に該カタログが印刷されたことを示している。 乙第2号証のカタログには、「α WRAPPER VI」のアルファベット等の文字群が印刷されている。このアルファベット文字群は、ギリシア語アルファベットの「α」と、ローマ字綴り「WRAPPER」と、ローマ数字「VI」との組合せからなる。ここにローマ数字「VI」は、順序・序列を表すアラビア数字の「6」に該当するものであって、これ自体に商標としての識別性がないことは勿論である。 そして、上記のローマ数字を除外した残りの表示であるギリシア語アルファベットの「α」とローマ字綴り「WRAPPER」とは、その字体や大きさが異なるため、両者を切り離して分離観察するのが極めて自然である。殊に「WRAPPER」の文字は、前述した如く、「包装機」を意味するものとして広く使用されているので、表示中の要部は「α」にあると云うべきである。 すなわち、平成18年(2006年)3月に印刷され、かつ被請求人が実際に頒布した乙第2号証のカタログには商標「α」が使用されており、この商標「α」が本件商標「アルファ」に含まれる。 (4)乙第3号証について 乙第3号証は、平成17年10月2日に社団法人日本包装機械工業会が発行した「2006日本包装機械便覧」の抜粋写しである。この便覧の第270頁ないし第273頁及び第517頁には、被請求人が製造・販売する高速横形ピロー包装機、横型製袋充填機及び収縮包装機に関して、「αラッパー」及び「α WRAPPER」の商標を使用している旨を表示している。 ここで「ラッパー」、「WRAPPER」は、前述の如く「包装機」を表示するものであって商標としての識別性はないから、商標「α」が本件商標「アルファ」の使用になることは明白である。 (5)乙第4号証について 乙第4号証は、平成18年(2006年)4月12日から15日まで開催された「2006中部パック」に際し頒布されたガイドブック写しである。このガイドブックには、小間番号3B-34中に被請求人の出品内容が記されており、横形ピロー等の各種包装機に「α」の表示が印刷されている。また「最新鋭横形ピロー包装機「α wrapper VI」が東海地区展示会初登場」との印刷もされており、これらの商標「α」が本件商標「アルファ」の使用になっていることは同じく明白である。 (6)乙第5号証について 乙第5号証は、平成17年8月30日発行の日経産業新聞第8面に掲載された広告の写しである。この広告中には、被請求人が横形ピロー包装機の商標として「α(アルファ)VI」を使用している記事が明確に掲載されている。 (7)更に、乙第1号証ないし同第3号証には、包装機本体の正面中央部分に商標「α」のロゴを顕著に付した写真が併せて掲載されている。すなわち、包装機そのものに、商標「α」が実際に使用されていることも明らかである。 (8)前述した各種の証拠方法から、商標権者たる被請求人が商標「α」を指定商品である「包装機」に従前より使用してきており、かつ商標「α」は称呼的にも観念的にも本件商標「アルファ」と社会通念上同一と認められ、また被請求人は商標「アルファ」そのものをも、包装機に関するカタログや新聞広告等の宣伝媒体に使用していることも明らかである。 4 当審の判断 (1)被請求人は、本件商標は、その指定商品「包装機」に関して、審判請求の予告登録前の3年以内に、被請求人により日本国内で使用されているものである旨主張する。そこで、被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。 ア 乙第1号証は、被請求人発行の高速横形ピロー包装機に関する商品カタログであり、表紙の上部に、「高速横形ピロー包装機」「αWRAPPERV」(「α」の文字は袋文字風に、かつ、「V」の文字とともにオレンジ色で表示され、いずれも「WRAPPER」の文字より大きく表示されている。)の標題があり、その下部に、「さらなる進化へ!」「新星アルファラッパー」の文字が表示され、実物の包装機(2機)の写真が掲載されている。その実物の包装機の側面には標題と同じ「αWRAPPERV」(ただし、黒色で表示されている)の文字が付されている。 当該カタログの裏頁右下隅には「JUN.2004 14(審決注:「14」は丸数字)AT×1」の表示があり、これは当該カタログを印刷した株式会社アトリエシアの「証明書」(乙第9号証)によれば、「JUN.2004」は印刷年月である「2004年6月」を、「14」の丸数字はカタログの版数を示していることが認められる。 イ 乙第2号証は、被請求人発行のシュリンク包装機に関する商品カタログであり、表紙の中央に、「αWRAPPERVI」(「α」の文字は袋文字風に、かつ、「VI」の文字とともに「WRAPPER」の文字より大きく表示されている。)「シュリンク包装機シリーズ」の標題があり、裏頁と認められる右側には、ライナップとして、「αWRAPPER」(「α」の文字は袋文字風に、かつ、「WRAPPER」の文字より大きく表示されている。)の文字と商品の特長を説明した文及びその実物の包装機の写真が掲載されている。さらにその右下隅に印刷された「MAR.2006 1(審決注:「1」は丸数字)AT×1」の表示があり、これは、当該カタログを印刷した株式会社アトリエシアの「証明書」(乙第10号証)によれば、「MAR.2006」は印刷年月である「2006年3月」を、「1」の丸数字はカタログの版数を示していることが認められる。 ウ 乙第3号証は、平成17年10月2日に社団法人日本包装機械工業会が発行した「2006日本包装機械便覧」である。この便覧の270頁ないし273頁及び517頁には、被請求人の取り扱う商品として高速横形ピロー包装機(横型製袋充てん機)及びシュリンク包装機(収縮包装機)について、「αラッパーVI」(αWRAPPERVI)、「αラッパーV」(αWRAPPERV)及び「αラッパーVIシリーズ」の標題があり、各標題の下部に商品の特長や仕様及び実物の包装機の写真が掲載されている。 エ 乙第4号証は、2006年(平成18年)4月12日から15日まで開催された「2006中部パック/粉体工業展名古屋2006/ガイドブック」である。このガイドブックには、被請求人の出品製品が記されており、「出品製品の特徴」の欄には「最新鋭横形ピロー包装機『αwrapperVI』が東海地区展示会初登場」と記載されている。 オ 乙第5号証は、平成17年8月30日発行の日経産業新聞第8面に掲載された広告である。この広告中に、被請求人の取り扱う商品として「<横型ピロー包装機>αWRAPPERVI」(「α」及び「VI」の文字は、袋文字風に、かつ、「WRAPPER」の文字より大きく表示されている。)の文字及び実物の包装機の写真が掲載されている。 カ 乙第11号証の1ないし3は、包装機の業界において、「WRAPPER」「ラッパー」の文字が包装機を表す語として普通に使用されている事例として、大森機械工業株式会社における高速横ピロー自動包装機について、株式会社川島製作所における横型製袋充てん機について、シンワ株式会社におけるチューブフィルム包装機についてそれぞれ使用されていることが認められる。 (2)上記において認定した事実によれば、被請求人は、包装機を取り扱う企業であり、その取り扱う包装機の商品カタログ(乙第1号証及び同第2号証)には、「αWRAPPERV」、「アルファラッパー」、「αWRAPPERVI」及び「αWRAPPER」の文字よりなる商標が表示され、かつ、実物の包装機の側面にも「αWRAPPERV」の文字よりなる商標が付されているものである。なお、これらの商標中、「α」の文字は袋文字風に、かつ、「V」や「VI」の文字とともに「WRAPPER」の文字より大きく、及びオレンジ色で表示されているものもある。 そして、これら商品カタログは、本件審判請求の予告登録前3年以内に当たる2004年6月及び2006年3月に印刷され、その後、展示又は頒布したものと推認することができる。 さらに、「2006日本包装機械便覧」(乙第3号証)、「2006中部パック/粉体工業展名古屋2006/ガイドブック」(乙第4号証)及び日経産業新聞の広告(乙第5号証)にも、被請求人の取り扱う包装機について、「αラッパーVI」(αWRAPPERVI)、「αラッパーV」(αWRAPPERV)、「αwrapperVI」の文字よりなる商標が表示されている。なお、日経産業新聞の広告(乙第5号証)に表示された商標中、「α」及び「VI」の文字は、袋文字風に、かつ、「WRAPPER」の文字より大きく表示されている。 つぎに、使用している前記「αWRAPPERV」、「アルファラッパー」、「αWRAPPERVI」、「αWRAPPER」、「αラッパーVI」(αWRAPPERVI)、「αラッパーV」(αWRAPPERV)及び「αwrapperVI」の商標(以下、これらをまとめて「各使用商標」ということがある。)が、「アルファ」の文字を標準文字で書してなる本件商標と商標法第50条第1項に規定する社会通念上同一と認められるかについてみるに、構成文字中「WRAPPER」「wrapper」及び「ラッパー」の文字は、包装機の業界において、包装機を表す語として普通に採択、使用され、そのように認識されているということができ、また「V」や「VI」の文字は、ローマ数字であるところ、このような数字は、各種機械器具を始め各種産業分野において、商品の品番又は規格等を表示するための記号、符号として取引上普通に採択、使用されているものであり、現に被請求人の取り扱う包装機においてもシリーズ商品として「αWRAPPER」の文字に続けて「V」や「VI」の文字を付加していることが窺えるものである(乙第2号証の「αWRAPPERVI/シュリンク包装機シリーズ」、乙第3号証の273頁「αラッパーVIシリーズ」)。 そうすると、各使用商標は、その構成中「WRAPPER」、「wrapper」、「ラッパー」、「V」及び「VI」の文字は、商品の普通名称、記号、符号を表示するものであり、自他商品の識別標識として機能しているのは「α」及び「アルファ」の文字部分であるということができる。そして、「α」の文字は、ギリシア語の「未知の値」の意味を有する語として、例えば「プラスα」(株式会社岩波書店 広辞苑第五版)のように使用される親しまれた語であるといえるから、各使用商標は、本件商標と「アルファ」の称呼及び「未知の値」の観念を同一にする社会通念上同一の商標と認められる。 加えて、各使用商標中、乙第1号証に表示されている「アルファラッパー」は、その構成中「ラッパー」の文字が、前記のとおり、商品の普通名称を表示するものであり、自他商品の識別標識として機能しているのは「アルファ」の文字部分であり、これは、正に本件商標と社会通念上同一ということができる。 (3)そして、各使用商標を使用している高速横形ピロー包装機(横型製袋充てん機)等は、本件審判の請求に係る本件商標の指定商品である「包装機」に属する商品と認められるものである。 (4)請求人の主な反論に対して ア 請求人は、被請求人が使用するギリシア文字「α」は、取引上商品の型番・品番を表すための記号として一般に採択される事例や審査・登録例を挙げて、該文字は識別力を有さないものであり、したがって、片仮名で表した本件商標「アルファ」をギリシア文字「α」に変更することは、識別力が変わらないことを前提として許容される社会通念上同一の範囲を逸脱している旨主張する。 しかしながら、請求人の挙げる上記採択の事例についてみると、本件商標の指定商品と同じ包装機の分野における事例(甲第4号証)は、各種産業分野において、商品の品番又は規格等を表示するための記号、符号として取引上普通に採択、使用されているアラビア数字に「α」や「β」の文字を付加したものであり、本件の各使用商標のような「α」に商品の普通名称を付加したものでないから事例としては異にするというべきである。また、他の商品分野における事例(甲第5号証ないし同第7号証)は、「α」に、前記同様、記号、符号として取引上普通に採択、使用されているアラビア数字やローマ文字一字をハイフンを介在させて結合した事例等であり、これらも本件の各使用商標のような「α」に商品の普通名称を付加したものでないから事例としては異にするというべきである。 そうすると、前記事例等を挙げて「α」の文字が識別力を有さないことを前提にして社会通念上同一の範囲を逸脱している旨の請求人の主張は、採用できない。 イ 請求人は、乙第1号証に表示された使用商標である「αWRAPPER」中の「α」部分には顕著な外観的特徴があることを被請求人は自認しているとした上で、使用商標中の「α」部分に見られるような外観的特徴を本件商標「アルファ」が全く備えていない以上、これが社会通念上同一と言えないことは明らかである旨主張する。 しかしながら、商取引の実際においては登録商標の文字を大きくしたり、着色あるいは図案化して使用されることがよく行われていることの実情に照らせば、乙第1号証に表示された「αWRAPPER」中、「α」の文字部分が袋文字風に、かつ、オレンジ色で表示され、さらに「WRAPPER」の文字より大きく表示されているとしても、ギリシア文字の「α」と判読しがたいほどにその形態を変形しているものではなく、容易にギリシア文字「α」をやや図案化したものと認識され得るものである。むしろ前記のように表示したことによって「α」の文字が「WRAPPER」と分離して認識され得るものといえる。加えて、後述するように、カタログの同一頁(表紙)に前記「αWRAPPER」の文字の下部に、その表音と認められる「アルファラッパー」の文字を有してなることから、該カタログに接する取引者、需要者は、「αWRAPPER」中の「α」をギリシア文字の「α」であると認識するものというのが自然といえる。 そうすると、乙第1号証に表示された前記使用商標は、前述のとおり、本件商標と称呼及び観念を同一にする社会通念上同一の商標と認められるものである。 なお、乙第1号証に表示された前記使用商標が、仮に社会通念上同一の商標と認められないとしても、「α」の文字を普通に用いられる書体で表した乙第3号証及び同第4号証の使用商標である「αラッパーVI」(αWRAPPERVI)、「αラッパーV」(αWRAPPERV)、「αwrapperVI」が本件商標と社会通念上同一の商標と認められることについて否定されるものでない。 したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。 ウ 請求人は、乙第1号証の下部に表示された「アルファラッパー」は、「さらなる進化へ ! 」「新星アルファラッパー」と書されており、このようなキャッチフレーズは、出所を表示するものとして機能せず、商標としての使用とはいえない旨主張する。 しかしながら、商品を紹介するカタログやパンフレットにおいて、顧客に当該商品を印象付けるために、商標をフレーズの中に入れて強調することも商取引の実際において少なからず行われていることに照らせば、上記のように表記されているからといって、「アルファラッパー」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能が失われるものではなく、同機能を有するものというべきであって、該文字が商標として使用されていたというべきである。 そうすると、請求人の上記主張は、採用することができない。 (5)まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「高速横形ピロー包装機(横型製袋充てん機)」等について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したものということができる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-01-08 |
結審通知日 | 2008-01-11 |
審決日 | 2008-01-22 |
出願番号 | 商願2002-66742(T2002-66742) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(Y07)
|
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
田代 茂夫 |
特許庁審判官 |
酒井 福造 伊藤 三男 |
登録日 | 2003-12-19 |
登録番号 | 商標登録第4734295号(T4734295) |
商標の称呼 | アルファ |
代理人 | 多賀 久直 |
代理人 | 山田 健司 |
代理人 | 黒川 朋也 |
代理人 | 山本 喜幾 |
代理人 | 宮永 栄 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |