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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない Y2930
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y2930
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y2930
管理番号 1179261 
審判番号 無効2007-890105 
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-06-29 
確定日 2008-05-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4948580号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4948580号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成17年6月30日に登録出願、第29類及び第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として平成18年4月28日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第561994号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおり、筆記体による「Milky」の文字を横書きしてなり、昭和32年2月9日に登録出願、第43類「飴菓子」を指定商品として昭和35年12月10日に設定登録され、その後、昭和56年5月30日、平成3年1月30日及び平成12年11月14日の3回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成13年5月30日に指定商品を第30類「飴菓子」とする書換登録がされているものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効にする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
(1)本件商標
本件商標は、その指定商品の全体に亘り、商標法第4条第1項第16号に該当し、第30類「菓子及びパン」については、同条第1項第11号、それ以外の第29類の指定商品及び第30類のその他の指定商品については、同条第1項第15号に該当するため、商標登録を受けることができない商標であり、その登録の無効を求める。
以下に、その理由を開陳する。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第16号への該当性について
(ア)本件商標は、黄色を地色とする長方形の図形の中央に、白い液体状図形が描かれ、その上に、大きく「Milkybar」の文字が一連に横書きされ、その文字の左上に小さく「Nestle」の文字を記載した図形が添えられている構成となっている。
「Nestle」は、被請求人会社の略称であり、中央部分に大きく表記された「Milkybar」が、この商標の主要部分であることは、一目瞭然である。
そして、「Milkybar」の表示部分は、一連に横書きされているが、この種商品の一般需要者の認識からして、「Milkybar」は、「Milky」部分と「bar」の部分とに分離して認識されているものと思料する。
(イ)「bar」の文字は、「棒、横木」、「カウンターのある洋風酒場、居酒屋」等を意味する英語として一般に理解され、棒高跳びなどの横棒やゴール・ポストの横棒を「バー」と呼んでいるように、古くから外来日本語として親しまれ、使用されてきた言葉である。食品業界では、従来から棒状の菓子の総称として一般的に使用されており、チョコレートを全面にコーティングした棒状の菓子は、総称して「チョコバー」と呼ばれている。その他にも、棒状の形状であることを意味する「キャンディバー」、「アイスバー」、「シリアルバー」等の表記は普通に使用されているところである(甲第13号証)。
したがって、本件商標を構成する「・・・bar」は、棒状の商品を表すものである。
(ウ)しかるに、本件商標の指定商品は、棒状の商品に限定されておらず、棒状でない商品について用いた場合には、品質の誤認を生じる商標として、商標法第4条第1項第16号に違反する商標と認定されるのが相当であり、よって、本件商標は、その指定商品全般に亘って同条項に該当し、登録を受けることができないものである。
(エ)以上の主張を支える審決として、昭和44年審判第328号審決(甲第14号証の1)、昭和45年審判第7114号審決(甲第14号証の2)がある。
ここに抜粋すると、「本件商標は、上記構成のとおり、『TRIOBAR』の欧文字を書して成るものであるが、これを構成する後半部『BAR』の文字は、『棒、棒状の物』『てすり、さく』または『酒場』等を意味する英語として一般に理解され、古くより『バー』の語で日本語化しているほどに親しまれている語である。しかして、これをその指定商品との関係においてみた場合に、容易に棒状をした菓子(棒状のチョコレート菓子、棒状の飴等)という如く、その商品の形状を示す部分であることから、この『BAR』の部分は分離して認識されるものといわざるを得ない。」、「本件商標は甘美な飲料を意味する『nector』の文字に、棒状の商品をあらわす『bar』の文字を結合してなるが、・・・また『bar』の文字は、「棒、棒状の」等の意を有する英語であるばかりでなく、菓子業界においては、棒状の菓子(形状であることを表示するものとして)たとえば、ICECREAMBAR(長方形の棒状アイスクリーム)、FRUITSBAR(棒状の焼菓子)の如く普通に使用されていることは、角川外来語辞典(株式会社角川書店昭和45年9月1日31版印刷発行)、新しい焼き菓子(株式会社製菓実験社昭和45年1月15日3版発行)等の記載に徴しても明らかである。」とあり、このことからも、食品に「・・・bar」と付した場合、需要者は、棒状の商品であると認識するのは顕著な事実であるといえる。
(オ)さらに、本件商標と同時に登録出願をした商願2004-033040「MILKYBAR」は、本件商標とは図形などの有無において相違しているのみであるが、同出願は、「『MILKY』の文字は、「乳の、乳状の」(「ランダムハウス英和大辞典」「小学館」)の意を有する語であり、『BAR』の文字は、『横棒、棒状のもの』(同)の意を有する語ですから、本願商標は、全体として『乳の(を原材料とした)棒状のもの』の意を想起させるものと認められます。そうしますと、本願商標をその指定商品中例えば『乳を原材料とした棒状の菓子』に相応する商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、上記の意味合いを表示したものと理解するにとどまり、単に商品の品質(内容、原材料)を表示するにすぎないものと認められます。」として、商標法第4条第1項第16号に該当するとされ、拒絶査定が確定している(甲第5号証)。
(カ)本件商標は、この商標に前記の図形を付したものであるが、「Milkybar」の部分は同じであり、図形が付加されたところで、「Milkybar」の部分が別様に解釈されることはありえないわけであることから、商標法第4条第1項第16号に該当し、その登録は無効とされるべきである。商品「飴菓子」については、後述のとおり、「Milky」について特段の事情があるので、異論のあるところであるが、「bar」の表示を含むだけでも、同条第1項第16号に該当することは同じであり、その指定商品のすべてについて無効とすべきである。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第11号への該当性について
(ア)引用商標は、第30類「飴菓子」を指定商品として、現在も有効に存続し、さらに、引用商標に関して防護標章登録第1号ないし第5号を有していることからして、引用商標「Milky」の著名性は、明白である。このことから、「Milky」の文字は、商品「飴菓子」の分野においては、自他商品の識別標識としての機能を果たしており、この「Milky」の文字をもって取引に資されているといえる。
(イ)これらの事実により、本件商標を構成する「Milkybar」の後段の「bar」の部分は、前述の如く、「棒状の商品」を現わす品質表示であり識別力がなく、前段の「Milky」が要部となることに鑑みれば、その限りにおいて、引用商標「Milky」と、同一商標となり、本件商標は、指定商品中第30類「菓子・パン」について、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(ウ)このことは、本件商標と同時に登録出願した商願2004-033040「Milkybar」(甲第5号証)について、引用商標を含む13件の商標が引用され、商標法第4条第1項第11号に該当するとされており、本件商標においては、図形及び「Nestle」の文字が付加されているといえども、本質的には変わらないというべきである。もし、図形及び「Nestle」の文字が付加されていることを理由として、商標法第4条第1項第11号の該当性が外れるというならば、どのような商標でも、適当な図形と適当な文字を付せば、非類似となるが、そのようなことはあり得ない。
(4)本件商標の商標法第4条第1項第15号への該当性について
(ア)引用商標「Milky」は、請求人が、昭和27年の商品発売当時から現在まで約50年の長きに亘り、商品「飴菓子」に使用し、特に日本国内では、「ミルキーはママの味」、「不二家のミルキー」の広告フレーズと共に、殆ど知らぬ人はいないといってよい著名商標と自負するものであり(甲第6号証ないし甲第12号証)、請求人が所有する登録商標の代表的な商標であって、その著名性は顕著な事実である。
(イ)「Milky」及びその文字を含む登録商標は登録第440679号ほか甲第2号証、甲第3号証の1ないし5及び甲第12号証の1ないし18に示すとおりであり、一部消滅しているものもあるが、請求人が、昭和27年(1952年)以来永年に亘って、これらの商標の登録を維持してきたものである。
そして、現在、引用商標は、キャンディのみならず、練乳素材入りチョコレート等の菓子類、乳飲料など、請求人が販売する幾つもの食品に用いられており、最重要商標として使用が維持されている。
また、請求人は、引用商標に関して、前記の如く、防護標章登録第1号ないし第5号を有し、当然に現在も有効に存続中であり、引用商標は、商品及び役務の区分第29類及び第30類のみならず、第1類、第5類、第31類、第32類及び第33類の飲食物に亘って、保護されるに至っている。(甲第3号証)
(ウ)かかる事実により、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、引用商標は、既に周知・著名であったことに鑑みれば、被請求人が「Milky」の文字を含む本件商標を、第30類の「菓子・パン」以外の指定商品及び第29類の商品について付して販売したときは、当該製品が請求人の製造・販売に係る商品であるかの如く、誤認するおそれがあることは明らかである。
また、本号にいう「出所の混同」とは、需要者や取引者が製品の製造・販売先について誤認する場合だけでなく、その他人と経済的に又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その出所について混同する場合を含むことは、審判決及び商標審査基準からも明らかである。
(エ)本件商標と周知・著名の引用商標とを比較すれば、本件商標は、筆記体か活字体かの相違こそあれ引用商標の構成文字を包含するものであり、本件商標に接した需要者・取引者をして、上記「混同」を生じるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、第30類の「菓子・パン」以外の指定商品及び第29類の商品については、商品の混同のおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当するものとして、登録を受けることはできないものである。
(5)結び
以上の理由により、本件商標は、第30類「菓子・パン」については、商標法第4条第1項第11号に該当し、第30類のその他の指定商品及び第29類の指定商品については、同項第15号に該当するものであり、また、両類の指定商品全般に亘って、同条第1項第16号に該当するものであるから、本件商標は、その登録を無効にするべきである。
2 弁駁の理由
(1)本件商標の商標法第4条第1項第11号への該当性について
(ア)被請求人は、本件商標は、被請求人の略称であって強い識別力を有する部分である「Nestle」の部分と、「乳を原材料とした棒状の商品」程の一体的な意味合いを生じる、やや図案化された「Milkybar」の部分で構成され、そこから生じる称呼「ネッスルミルキーバー」ないし「ネッスル」と、引用商標より生じる称呼「ミルキー」とを対比すれば、その差異は顕著である旨主張している。
(イ)しかしながら、「Nestle」の文字は、被請求人が主張するように被請求人の著名な略称であることは請求人も認めるところであるが、かかる文字は、赤色の略楕円形内に、やや図案化した文字で構成され、「Milkybar」の文字の左上に小さく配置されており、「Nestle」と「Milkybar」の各文字は視覚的に容易に分離して看取することができる。しかも、やや図案化された「Nestle」の文字は、被請求人が取り扱う商品のすべてについて共通して使用している、いわゆるハウスマークに該当するものと思料する。ハウスマークがある場合、常に個別商標と一体で称呼・観念されるという取引事情はなく、また、ハウスマークがあれば個別商標が隠れて商標として機能しないという議論は暴論であり成り立つはずはない。このようにハウスマークの付記が個別商標の存在意義を減ずることはないのである。
してみてば、ハウスマーク以外の部分、すなわち「Milkybar」からも独立した称呼が生じることは明白であり、「Milkybar」の部分が、その具体的な商品との関係において、個別標識として認識されると判断できる。
(ウ)さらに、「Milkybar」の文字は、やや図案化され、その商標の中央部分に大きく表記されていることからも本件商標の主要部分をなしていると容易に認識でき、独立して「ミルキーバー」の称呼も生じるものである。
また、「Milkybar」の語については、被請求人は、「Milky」の部分は識別性が弱く、「Milkybar」の文字が一連一体に看取されると主張するが、引用商標「Milky」の周知・著名性より、少なくとも商品「飴菓子」の分野においては、「Milky」の語は、自他商品の識別標識としての機能を果たしており、しかも、「bar」の語は、「棒状の」商品を表す品質表示であり識別力がないため、「Milky」の部分がその要部となると判断できる。
この限りにおいて、本件商標は、引用商標と称呼において同一商標となり、指定商品のうち、第30類「菓子及びパン」について、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第15号への該当性について
(ア)被請求人は、本件商標と引用商標は非類似であること、「Milky」の語は独創性が低いこと、本件商標は、その構成中に被請求人の略称として著名な「Nestle」を顕著に含むものであり、本件指定商品の取引者・需要者の普通に払われる注意力をもってすれば、かかる「Nestle」部分を看過することは想定し難いことを「混同の生ずるおそれ」の有無の判断基準に挙げ、これらを総合的に勘案すれば、商品の出所の混同について誤認を生ずるおそれはないと主張している。
(イ)しかしながら、前述のとおり、本件商標と引用商標とは類似しており、さらに引用商標の著名性は顕著な事実である。被請求人の著名な略称である「Nestle」の部分を、その取引者・需要者の普通に払われる注意力をもってすれば、看過することは想定し難いことは認めるところであるが、具体的な商品との関係においては、前記のように、「Milkybar」の部分が、その商品の個別標識となること、さらには、請求人は、甲第6号証の7及び15ないし22から明らかなように、少なくとも、1975年から1994年までの19年間、スティック型の「飴菓子」に「ミルキーバー」という標章を付して使用していたというと取引実態があったことを勘案すれば、たとえ著名な略称である「Nestle」を付していたとしても、著名商標である引用商標「Milky」の文字を含む本件商標を、第30類「菓子及びパン」以外の指定商品及び第29類の商品に使用すれば、請求人と経済的また組織的に何等かの関係があると需要者が誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ず、第4条第1項第15号に該当すると判断されるのが妥当である。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第16号への該当性について
(ア)被請求人は、現在の取引市場の実態を勘案すれば、「形状」を表す語は、商標法第4条第1項第16号に規定する「品質」には該当しない旨主張し、その証拠として、「bar」ないしその表音である「バー」を含む多数の商標が、「棒状の」商品に限定されることなく登録されている事実として、乙第4号証ないし乙第43号証を提出している。
しかしながら、「bar」ないしその表音である「バー」の語を含む商標が、「棒状の」商品に限定することによって登録を受けた事例が多数存在していることから(甲第15号証)、被請求人の主張には妥当性がない。
(イ)また、被請求人は、時代の変遷とともに、取引者・需要者がその具体的な商品の「品質」として理解している表示も自ずと変わり、請求人が証拠として提出した審決例には証拠能力がないと主張している。
確かに、需要者等がその商品との関係で「品質」と理解する表示は、時代とともに移り変わっていくことは、請求人も認めるところであるが、前述のように、「bar」ないしその表音である「バー」の語を含む商標が、「棒状の」商品に限定することによって登録を受けた事例は多数存在し、証拠として提出した登録例(甲第15号証)のそのほとんどが、被請求人が証拠として提出した登録例よりも最近に登録されたものであり、しかもその中には、乙第4号証ないし乙第43号証に掲げられた商標と同じ商標が含まれている。これらを勘案すれば、現在の取引実情においても、「bar」の語は、商品の「品質」を表す語であって、具体的な商品について使用した場合には、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあると判断するのが妥当であり、提出した登録例(甲第15号証)はその証左であるといえる。
よって、「bar」の語を含む本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。

第4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第45号証を提出している。
1 本件商標の商標法第4条第1項第11号への該当性について
(1)本件商標は、長方形内に「Nestle」と「Milkybar」の各欧文字を書してなり、該「Milkybar」部分は丸みのある柔らかい特徴的な書体で同大に横一連に書されてなる。さらに、ミルクが跳ね上がる様子を描いた図形が該「Milkybar」の文字全体を包み込むように書されていることと相候って、全体として統一感のある外観を呈している。
本件商標の各構成要素について検討するに、「Nestle」部分は、被請求人の略称であり、強い識別力を有する部分である。一方、「Milkybar」中の「Milky」部分は、「乳の、乳のような、乳状の」等の英単語として一般的な英和辞典にも記載がある平易な英単語である(乙第1号証)。指定商品「菓子及びパン」は、その原材料に「乳」が使用されることが多くある。また、たとえばインターネットで「ミルキーな」という表現が「菓子」との関係で使用されている例を検索してみると「ミルキーな甘い香り」「ミルキーな味わい」、「ミルキーな香り」というような使用例が多数発見できる(乙第2号証)。このように、「Milky」部分の識別力は、指定商品「菓子及びパン」との関係で識別力が弱いものといえる。
そうすると、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標中の「Nestle」部分より生じる称呼をもって取引に当たる場合があるとしても、殊更識別力が脆弱な「Milky」部分のみを分離・抽出して、単に「ミルキー」と略称することはない。
(2)一方、引用商標よりは「ミルキー」の称呼のみが生じるものであるから、本件商標より生じる称呼「ネッスルミルキーバー」ないし「ネッスル」と引用商標より生じる称呼「ミルキー」とを対比すれば、その差異は顕著である。
また、本件商標及び引用商標の外観を比較するに、引用商標は特徴的な筆記体で書されており、本件商標との差異は顕著である。
さらに、本件商標中の「Nestle」部分は被請求人を想起させるし、「Milkybar」部分も「乳を原材料とした棒状の商品」程の一体的な意味合いを生じるのに対し、引用商標は「乳の、乳のような、乳状の」程度の意味合いしか生じない。
このように、本件商標と引用商標は、その称呼・外観及び観念のいずれの点においても紛れることはなく、非類似の商標とするのが相当である。
(3)なお、請求人は、引用商標と引用商標に関する防護標章登録の存在を根拠に「Milky」部分が自他商品の識別機能を果たす旨主張する。
しかしながら、引用商標はわが国において、今ほどには英語が普及していなかったと目される昭和35年に、特徴的な筆記体で書された「Milky」についてその登録を受けたものである。
しかるに、請求人の主張は、現在の英語の普及度合いや、それに伴い「milky」が今となっては極めて平易かつ身近な語となり、しかも商品の品質にも関係する「乳の、乳のような、乳上の」といった意味合いで親しまれるに至っていること、さらには、引用商標が特徴的な筆記体で書されており、その外観的な特徴もその識別性に影響を与えているであろう事情を一切考慮していないものであって、妥当性を欠く。
(4)また、請求人は、被請求人が同時に登録出願した商願2004-033040についても言及するが、本件商標と商願2004-033040に係る商標とは、その構成要素が異なるものであって、事案を別にすることは明らかである。当該出願に対しては、「MILKYBAR」が「乳の(を原材料とした)棒状のもの」程度の意味合いを想記させるとの拒絶理由が通知されており、この点において、むしろ、被請求人の「Milky」ないし「Milkybar」が内容表示的部分であって、識別力の弱い部分であるとの上記主張を裏付けるものといえる。
(5)以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観・称呼・観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であるから、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとの請求人の主張は失当である。
2 本件商標の商標法第4条第1項第15号への該当性について
(1)請求人は、引用商標が著名な商標であって、本件商標を第30類の「菓子及びパン」以外の指定商品及び第29類の商品に付して販売したときは、当該製品が請求人の製造・販売に係る商品であるかの如く、誤認するおそれがあり、また、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認する結果、その出所について混同を生ずるおそれがある旨主張する。
(2)しかしながら、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号、乙第3号証)。
しかるに、本件商標と引用商標が非類似の商標であることは前記のとおりであり、また、「milky」の語自体は極めて平易な英単語であり、指定商品との関係で品質を表示するものであって、その独創性は決して高くはないこと、さらには、本件商標は、その構成中に請求人の略称として著名な「Nestle」を顕著に含むものであり、本件指定商品の取引者・需要者の普通に払われる注意力をもってすれば、かかる「Nestle」部分を看過するとは想定し難いものであること等を総合的に勘案すれば、本件商標をその指定商品中第30類「菓子及びパン」以外の商品に使用した場合、請求人又は引用商標を連想、想記するとは到底認められず、商品の出所の混同について誤認を生ずるおそれはないというべきである。
(3)したがって、本件商標が引用商標との関係で商標法第4条第1項第15号に該当するとの請求人の主張は失当である。
3 本件商標の商標法第4条第1項第16号への該当性について
(1)請求人は、「bar」が「棒、横木」、「カウンターのある洋風居酒屋、居酒屋」等を意味する英語として一般に理解されており、さらに、食品業界では、棒状の形状であることを意味する「キャンディバー」、「アイスバー」、「シリアルバー」等の表記が普通に使用されていることから、本件商標を構成する「・・・bar」は、棒状の商品を表すので、本件商標が棒状の商品でない商品について使用された場合は、商品の品質について誤認を生じる旨主張する。
(2)しかしながら、仮に、本件商標に接する取引者・需要者が、本件商標中の「Milkybar」部分より「乳を原材料とした棒状の商品」程の意味合いを認識するとしても、「bar」の文字部分より直ちに具体的な特定の商品を表すものと理解し、認識するとはいえない。
請求人の主張によれば、「bar」は「棒状の商品」という商品の「形状」を表す語である。しかるに、現在、各種食品は「板状」であったり「粒状」であったり、「円錐状」であったり、「球状」であったりと、その「形状」について多様性を極めている。しかし、形状が異なったとしても、商品の本質的な性質・特性について差異は存在しない。食品の分野において商品の形状が限られていた時代であればともかくも、現在の取引市場の実態、すなわち現在の各種食品の形状の多様性を勘案すれば、「形状」が即、商品の「品質」を表すことにつながらないことは明らかである。少なくとも、商標法第4条第1項第16号にいう「品質」には該当しないというべきである。
したがって、本件商標は「bar」の語を含むのであるが、これに接する取引者・需要者が、直ちに具体的な特定の商品を表すものと理解し、認識することはないのであって、これをその指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生ずるおそれはない。
被請求人の上記主張の妥当性は、「bar」ないしその表音「バー」を含む多数の商標が、「棒状の」商品に限定されることなく登録されている事実によっても裏付けられる(乙第4号証ないし乙第43号証)。
(3)なお、請求人は昭和44年及び昭和45年の審決を引用している。しかし、前記のとおり、約40年前の取引実態とは違い、現在においては、種類や形状等、多種多様な食品が豊富に出回っており、取引者・需要者もそうした市場の実態に慣れ親しんでいる。その結果、取引者・需要者が具体的な商品の「品質」として理解する表示も自ずと変わっていくものであり、約40年前の審決の存在を理由に、現代においてもなお「bar」が品質の誤認を生じるとする主張は当を得ない。
(4)したがって、本件商標が指定商品との関係で商標法第4条第1項第16号に該当するとの請求人主張は失当である。
(5)被請求人の上記主張の妥当性は、請求人が本件と同じ理由により申し立てた異議申立事件(異議2006-90366;乙第44号証及び乙第45号証)において、特許庁が下した判断によっても裏付けられる。
請求人は、本件無効審判事件と同一の理由により、ほぼ同一の主張を展開するも、特許庁は、被請求人が主張するのと同じ理由により、商標法第4条第1項第11号について、「外観、称呼、観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標」、同第15号について、「申立人又は申立人の引用商標を連想、想記するとは認められず、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められない」、同第16号について、「これをその指定商品について使用しても、商品の品質について誤認を生ずるおそれはないものといわなければならない」と明確に結論している。
4 まとめ
以上、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第16号の規定に違反して登録されたものではないので、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものではない。
したがって、本件審判の請求は理由がない。

第5 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第11号への該当性について
(1)請求人は、本件商標と引用商標とは類似する商標であり、本件商標の指定商品中第30類「菓子及びパン」と引用商標の指定商品とが類似する商品であるとして、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張しているので、この点について検討する。
(2)本件商標は、別掲(1)のとおり、文字、図形及び色彩の組合せからなるところ、これら構成要素の全体が常に不可分一体のものとしてのみ認識されるべき格別の理由は見出し難いものであるから、読みやすい文字部分を捉え、これより生ずる称呼をもって取引に資される場合が決して少なくないものといえる。
そこで、本件商標の構成中の文字部分についてみるに、中央に大きく横書きされた「Milkybar」の文字は、丸みのある特徴的な書体で外観上まとまりよく一体に表されているばかりでなく、これから生ずると認められる「ミルキーバー」の称呼も、冗長という程でなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。加えて、本件商標の指定商品中の「菓子及びパン」には、その原材料として「乳」が使用されることが多く、また、棒状の形状をした商品も遍く存在していること、「milky」の文字は「乳の、乳のような、乳状の」等の意味を有する英語として、また、「bar」の文字は「棒、棒状のもの」等の意味を有する英語として、いずれも良く知られていること、などからすると、上記指定商品との関係においては、「Milkybar」の文字は、全体として「乳を原材料とした棒状の商品」程の意味合いを容易に認識し把握することができるものといえるから、自他商品の識別力が比較的弱いものというべきである。
そして、上記「Milkybar」の文字の左上に表された、やや図案化された「Nestle」の文字は、本件商標の指定商品を取り扱う業界においては、「ネッスル」(又は「ネスレ」)と称呼され、本件商標の商標権者の略称として、また、その業務に係る商品に使用する代表的出所標識、いわゆるハウスマークとして広く知られているものといえる。
かかる構成からなる本件商標においては、殊更、「Milkybar」中の「Milky」の文字部分のみを分離抽出し、独立した自他商品の識別標識たる要部として認識されるというべきではなく、本件商標は、「Nestle」の文字部分が被請求人のハウスマークとして認識し把握され、「Milkybar」の文字部分は不可分一体の個別標識として認識し把握されるとみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、上記文字部分に相応して、「ネッスルミルキーバー」(又は「ネスレミルキーバー」)、「ネッスル」(又は「ネスレ」)又は「ミルキーバー」の称呼を生ずるものというべきであり、「ミルキー」のみの称呼は生じないものと判断するのが相当である。
他方、引用商標は、その構成文字に相応して、「ミルキー」の称呼及び「乳の、乳のような、乳状の」等の観念を生ずるものである。
しかして、本件商標から生ずる「ネッスルミルキーバー」(又は「ネスレミルキーバー」)及び「ミルキーバー」の称呼と、引用商標から生ずる「ミルキー」の称呼とは、「ネッスル」(又は「ネスレ」)及び「バー」の音の有無という顕著な差異により容易に識別することができるものである。
また、本件商標と引用商標とは、その構成に照らし、外観上判然と区別し得るものであり、さらに、両者は上記観念において明らかに異なるものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からもても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(3)請求人は、「bar」の文字が食品業界においては棒状の商品を表す品質表示であり自他商品の識別力がないこと、及び引用商標が請求人の業務に係る商品に使用する商標として周知・著名であることから、本件商標は「Milky」が要部となり、結果として引用商標と同一になる旨主張する。
しかしながら、本件商標は、その構成からすれば、殊更「Milkybar」の文字部分から「bar」の文字を捨象し、「Milky」の文字のみを分離抽出してこれが要部として認識し把握されるというよりは、むしろ、上記(2)のとおり、該「Milkybar」の文字部分は全体が不可分一体のものとして認識し把握されるみるのが自然であるから、請求人の主張は採用することができない。
(4)したがって、本件商標の指定商品中「菓子及びパン」と引用商標の指定商品とが類似するものであるとしても、本件商標は、その指定商品中の上記商品について商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 本件商標の商標法第4条第1項第15号への該当性について
(1)請求人は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に、引用商標が請求人の業務に係る商品を表示する商標として周知・著名であったので、引用商標の構成文字を含む本件商標を、その指定商品中の第30類に属する「菓子及びパン」以外の商品並びに第29類に属する商品について使用すると、商品の出所について混同を生ずる旨主張しているので、この点について検討する。
(2)請求人の提出に係る証拠によれば、引用商標は、商品「飴菓子」について永年使用され、取引者・需要者間に広く認識されていることが認められるとしても、元来、「milky」の語は、「乳の、乳のような、乳状の」等の意味を有する英語であって、食品業界においては自他商品の識別力が比較的弱い語であるところからすると、引用商標は別掲(2)のとおりのやや図案化された構成態様においてより強い識別力を発揮しているものというべきである。
他方、本件商標は、前示のとおり、その構成中の「Milkybar」の文字は、全体として「乳を原材料とした棒状の商品」程の意味合いを認識し得るものであり、不可分一体のものとして認識し把握されるものであるから、殊更、「Milky」の文字のみが看者の注意を強く惹くものとはいえない。
そして、本件商標は、これを全体として観察した場合においても、前示のとおり、引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものである。
かかる事情の下において、本件商標をその指定商品中の第30類に属する「菓子及びパン」以外の商品並びに第29類に属する商品について使用しても、これに接する取引者・需要者がその構成中の「Milky」の文字に注目して引用商標を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が請求人又は同人と経済的又は組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれもないものと判断するのが相当である。
(3)なお、請求人は、本件商標中の「Milkybar」の文字部分が個別標識になること、及び少なくとも1975年から1994年までスティック型の飴菓子に「ミルキーバー」の標章を使用していた事実があること(甲第6号証の7及び15ないし22)からすれば、本件商標に被請求人の著名な略称「Nestle」が付されていたとしても、本件商標は商品の出所の混同を生ずるおそれがあるものである旨主張している。
確かに、本件商標中の「Milkybar」の文字部分が個別標識になり得ることは、前示のとおりであるが、該文字部分は自他商品の識別力が比較的弱いものであるばかりでなく、請求人の提出に係る上記証拠によれば、請求人が使用する「ミルキーバー」の標章は、「スティック型ミルキー」の文字やスティック状の形状を示す商品の写真と共に表示されているのであり、やはり自他商品の識別力は比較的弱いものであるし、かかる本件商標の構成において、「Milky」の文字部分のみが分離抽出されて看者の注意を強く惹くものとみるのはむしろ不自然であるから、請求人の主張は採用することができない。
(4)したがって、本件商標は、その指定商品中の第30類に属する「菓子及びパン」以外の商品並びに第29類に属する商品について、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 本件商標の商標法第4条第1項第16号への該当性について
(1)請求人は、本件商標の構成中の「bar」の文字が「棒状の商品」という商品の形状を示すものであるから、本件商標を棒状でない商品について使用した場合には、品質の誤認を生ずる旨主張しているので、この点について検討する。
(2)確かに、本件商標の指定商品を取り扱う業界においては、棒状ないしスティック型の形状をした商品やかかる形状の包装用容器に収納された商品が存在していることが認められ、これらの商品に「bar」の文字が使用されたときには、その商品の形状を想起させる場合があることは強ち否定するものではない。
しかしながら、本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるものであり、前示のとおり、「Milkybar」の文字部分は一体不可分のものとして認識し把握されるものであるから、これから「bar」の文字のみを分離抽出し、さらに、それが特定の商品や品質を具体的に表すものとして認識し把握されるとはいい難い。
そうすると、本件商標は、いずれの指定商品について使用しても、商品の品質の誤認を生ずるおそれもないものと判断するのが相当である。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第16号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。


別掲
(1)本件商標



(2)引用商標


審理終結日 2008-03-28 
結審通知日 2008-04-03 
審決日 2008-04-15 
出願番号 商願2005-60027(T2005-60027) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Y2930)
T 1 11・ 26- Y (Y2930)
T 1 11・ 272- Y (Y2930)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲村 秀子 
特許庁審判長 林 二郎
特許庁審判官 杉山 和江
鈴木 修
登録日 2006-04-28 
登録番号 商標登録第4948580号(T4948580) 
商標の称呼 ネッスルミルキーバー、ネッスル、ネスレ、ミルキーバー 
代理人 加藤 恒久 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 齋藤 宗也 
代理人 黒川 朋也 

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