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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z41
管理番号 1177948 
審判番号 取消2007-300586 
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-05-10 
確定日 2008-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4661357号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4661357号商標の指定商品及び指定役務中、「第41類 コンタクトレンズ又は眼内レンズの処方の教授,コンタクトレンズの装用方法の教授,電子計算機ソフトウェアの開発又は使用方法の教授」については、その登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4661357号商標(以下「本件商標」という。)は、平成12年4月21日に登録出願、「アイウェーブ」の片仮名文字と「EYE WAVE」の欧文字とを上下二段に書してなり、第41類「コンタクトレンズ又は眼内レンズの処方の教授,コンタクトレンズの装用方法の教授,電子計算機ソフトウェアの開発又は使用方法の教授」のほか、第1類、第5類、第9類、第10類及び第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品又は指定役務として、同15年4月11日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第41類「コンタクトレンズ又は眼内レンズの処方の教授,コンタクトレンズの装用方法の教授,電子計算機ソフトウェアの開発又は使用方法の教授」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていない。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)被請求人は、本件商標を本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において、本件取消請求に係る指定役務中、「コンタクトレンズ又は眼内レンズの処方の教授,コンタクトレンズの装用方法の教授」に使用している旨主張し、その証拠として、乙第1号証ないし乙第4号証の4を提出した。 しかしながら、当該乙各号証は、被請求人が本件商標を取消請求に係る役務に使用していることを証明していない。
(イ)商標法上の役務
商標法上の役務とは、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきもの」をいうと解され(特許庁編 工業所有権法逐条解説〔第16版〕)、判決例においても、次のとおり、判示されている。
「商標法にいう『役務』とは、他人のためにする労務又は便益であって、付随的でなく独立して市場において取引の対象となり得るものをいうと解するのが相当である。したがって、商品の譲渡に伴って付随的に行われるサービスは、それ自体に着目すれば他人のためにする労務又は便益に当たるとしても、市場において独立した取引の対象となり得るものでない限り、商標法にいう『役務』には該当しないと解すべきである。」(東京高等裁判所平成12年(行ケ)第105号・平成13年1月31日判決)
「商標法にいう『役務』とは、他人のためにする労務又は便益であって、付随的でなく独立して市場において取引の対象となり得るものと解すべきであり、他方で、例えば、商品の譲渡に伴い、付随的に行われるサービスは、それが、それ自体のみに着目すれば、他人のためにする労務又は便益に当たるとしても、市場において独立した取引の対象となっていると認められない限り、商標法にいう『役務』には該当しないものと解するのが相当である。」(東京高等裁判所平成11年(行ケ)第390号・平成12年8月29日判決)
つまり、判例は、「市場において独立して取引の対象となる労務又は便益の提供」が商標法上の「役務」の要件であるとし、これに該当しないものとして、「商品の譲渡に伴って付随的に行われるサービス」を挙げている。
なお、新設された商標法第2条第2項は、特に、「前項第二号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。」と規定しており、これにより、商品の販売に付随する便益の提供が「役務」の概念にとり入れられたが、本件取消請求に係る指定役務は、小売等の役務ではなく、この規定の範囲外であるから、上記判例の説示どおり、「市場において独立して取引の対象となること」が要件(以下「独立取引対象要件」という。)となる。
こうした独立して取引の対象となる労務又は便益の提供には、当然ながら、それに対し、一般的に対価が要求され、そのような有償性は、「独立取引対象要件」を具備するか否かの客観的な指標となり得る。
この点につき、前記東京高等裁判所平成13年1月31日判決は、次のように判示している。
「商品本体の価格とは別にサービスの対価が明示され、独立した取引としての対価の支払が行われているものではない。この点につき、原告は、これらのサービス活動は商品価格に上乗せされている旨主張するが、仮に、そのような上乗せが事実上されているとしても、商品本体の価格とは別に対価が支払われることのないものである以上、サービス自体が独立して取引の対象となっているものとはいえない。」
(ウ)商標としての使用
商標は、商品又は役務の識別標識としての機能を果たすものであるから、識別標識として機能しない使用態様の標章の使用では、商標法第50条にいう「使用」に該当しない。同条の「使用」について、判例は、次のように説示している。
「自他商品識別機能を有する態様で本件雑誌に使用されているものということはできず、その使用を『商標としての使用』であると認めることはできない。」(東京高等裁判所平成13年(行ケ)第190号・平成13年10月23日判決)
(エ)そこで、被請求人が提出した乙各号証について検討する。
(a)乙第1号証は、被請求人の答弁によれば、商標権者(以下「被請求人」という。)が眼科医に対し、被請求人の業務に係るソフトコンタクトレンズについての特性を説明し、その処方に係る知識を教授し又はコンタクトレンズ装用者がコンタクトレンズを装用するときの装用方法について、眼科医が適切に指導し得るように、必要な知識を教授する役務の提供の際に提示するカタログと説明されている。
しかしながら、乙第1号証のカタログは、表紙及び14頁に「マンスウエア・マンスウエア トーリック 製品ガイド」と記されていることから明らかなとおり、コンタクトレンズという商品の説明書にすぎない。
被請求人は、このカタログを使用して眼科医に必要な知識を教授する役務を提供していると主張するが、上記のとおり、乙第1号証は、商品の内容・機能を説明した商品カタログにすぎず、そもそも、この証拠によっては、被請求人が何らかの「労務又は便益」を提供したか否か自体が全く不明である。
つまり、上述した商標上の役務の要件である「市場において独立して取引の対象となる労務又は便益の提供」のうち、「労務又は便益の提供」があったことさえ、このカタログからは不明である。
また、当該カタログからは、被請求人主張の役務の提供がいつ行われたのかも全く不明である。
役務の提供時期は、商標法第50条第2項の要証事項(審判請求の登録前3年以内の使用)であり、このカタログによっては、その立証もなされていない。
仮に、被請求人が当該カタログを使用して眼科医にコンタクトレンズの装着方法の説明をした事実があるとしても、商標法上の役務というためには、独立して取引の対象となることが必要であるところ、当該カタログの配布やそれを提示して被請求人製品の装用方法の説明を眼科医に対して行うことは、被請求人がその製品を販売するために必要な説明ないし宣伝広告にすぎず、コンタクトレンズという商品の販売を促進するための手段の一つにすぎない。
なお、「独立取引対象要件」の指標となる有償性について検討すると、コンタクトレンズの販売価格とは別に、被請求人が眼科医に装着方法を説明する労務に対価が存することを、このカタログは何ら示しておらず、この点からしても、被請求人主張の眼科医への説明行為は、商標法上の役務に該当しない。
被請求人の主張は、薬局で風邪薬を購入し、商標の付された包装箱に薬の効能、用法・用量が記載され、能書が封入されているような場合に、そこに付された商標が効能や用法・用量の教授という役務についての使用であるというようなものであり、首肯し難い。
コンタクトレンズは、高度医療機器であって、その装用方法の説明は、医薬品と同様、その販売に当たって、当然求められる付随的サービスであり、このカタログは、コンタクトレンズの製造・販売会社である被請求人が当該コンタクトレンズの間接的な需要者である眼科医等に対して、無償で配布しているものであり、仮に、被請求人がコンタクトレンズの装用方法の説明を行っているとしても、そのサービスは、コンタクトレンズの販売に付随するにすぎないから、商標法上の役務に該当しない。
次に、本件商標の使用態様について検討すると、本件商標は、カタログの裏表紙に付されているが、そこには、「”MENICON EYE WAVE”は、メニコンの新しいチャレンジの合言葉です。」と記されており、本件商標は、商標としてではなく、一種の標語(スローガン)として使用されている。
スローガンは、一般に自他商品・役務の識別標識ではないから、本件商標は、自他商品・役務の識別標識として機能する態様で使用されていない。
したがって、本件商標は、「商標として」使用されていると解することもできない。
以上のとおり、乙第1号証は、本件商標が「役務」の根幹をなす何らかの労務又は便益の提供に使用されたことや使用時期を証明するものでなく、また、被請求人主張のコンタクトレンズの装用方法の説明という労務又は便益の提供が仮に存在しても、それが商標上の「役務」であることを証明していない。
さらに、乙第1号証に表示された本件商標は、「商標」として使用されていないから、被請求人は、本件商標を取消請求に係る指定役務に使用していることを証明していない。
(b)乙第2号証及び乙第3号証の1も上記乙第1号証と同様である。
すなわち、これらのカタログにおいても、コンタクトレンズの装用方法について説明がされているにすぎず、本件商標が役務に使用されていることは、示されていない。
ちなみに、乙第2号証及び乙第3号証の1は、「コンタクトレンズ・スタートブック」というものであるが、2頁目に「コンタクトレンズを安全に装用するために、必ず添付文書とスタートブックをよく読み、」と記載されていることからも、これらは、コンタクトレンズという商品に付随して購入者に無償で配布される印刷物にすぎず、何ら「役務」の存在を窺わせるものではない。
また、乙第1号証と同様、乙第2号証及び乙第3号証の1にも、本件商標は、標語として記されており、商標として使用されている事実も認められない。
(c)なお、乙第3号証の2は、印刷会社による乙第3号証の1のカタログの納品証明書であって、本件商標の使用に関わるものではない。
(d)乙第4号証の1は、カレンダーであり、乙第4号証の2ないし乙第4号証の4は、ソフトコンタクトレンズ及びコンタクトレンズ用ケア用品のポスターである。
被請求人は、答弁書において、当該カレンダーやポスターについて、「顧客に対し本件役務『コンタクトレンズの装用方法の教授』を提供する際に展示」、「当該役務に関する広告としての本件商標の使用の一例」と主張するが、詭弁といわざるを得ない。「役務」としての「コンタクトレンズの装用方法の教授」が、このようなカレンダーやポスターを用いて行われるとは考えられないし、上述のとおり、被請求人が主張するサービスは、商標法上の役務とは認められないものであって、当該カレンダーやポスターは、被請求人製品「コンタクトレンズ」及び「コンタクトレンズ用ケア用品」という商品の宣伝・広告にすぎず、役務についての使用といえないことは明白である。
また、乙第1号証ないし乙第3号証の1と同様、乙第4号証にも、本件商標は、商標として使用されていない。
(3)以上のとおり、被請求人提出の証拠は、いずれも、本件商標が取消請求に係る指定役務中、「コンタクトレンズ又は眼内レンズの処方の教授,コンタクトレンズの装用方法の教授」に使用された事実を立証するものではないから、本件商標は、取消請求に係る指定役務について、本件審判請求の登録前3年以内に使用されたことを立証する証拠ではない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べるとともに、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)請求人は、被請求人が本件商標をその指定役務中、「コンタクトレンズ又は眼内レンズの処方の教授,コンタクトレンズの装用方法の教授,電子計算機ソフトウェアの開発又は使用方法の教授」に継続して3年以上日本国内において使用していないと述べているが、本件商標は、その指定役務について、予告登録日前3年以内に使用されているから、請求人の主張には理由がなく、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に何ら該当するものではない。
以下、本件商標が使用されている事実をその証拠に基づき説明する。
(ア)乙第1号証は、被請求人により発行されたカタログ「マンスウエア・マンスウエア トーリック 製品ガイド医家向資料」であるが、その裏表紙には、本件商標が記載されている。
このカタログは、被請求人が眼科医に対し、被請求人の業務に係るソフトコンタクトレンズについての特性を説明し、その処方に係る知識を教授し又はコンタクトレンズ装用者がコンタクトレンズを装用するときの装用方法について、眼科医が適切に指導し得るように、必要な知識を教授する役務の提供の際に眼科医に提示するカタログである。
すなわち、本件商標は、役務「コンタクトレンズ又は眼内レンズの処方の教授,コンタクトレンズ又は眼内レンズの装用方法の教授」に使用されている。
また、このカタログは、その14頁の下方右欄の「初版2005年5月」の記載から、2005年5月に発行されたこと、さらに、発行者は、被請求人であることが明らかである。
以上のことから、本件商標は、被請求人により、その指定役務「コンタクトレンズ又は眼内レンズの処方の教授,コンタクトレンズ又は眼内レンズの装用方法の教授」について、本件審判請求の予告登録前3年以内に使用されたものである。
(イ)乙第2号証は、被請求人により発行されたカタログ「メニコンソフトS、メニコンソフト72、メニコンソフト72トーリック、メニコンソフトMA、ソフトコンタクトレンズ スタートブック」であり、その裏表紙には、本件商標が記載されている。
このカタログは、被請求人がコンタクトレンズ装用者に対し、被請求人の業務に係るソフトコンタクトレンズについての特性やコンタクトレンズの装用方法についての知識を教授する役務の提供の際に提示するカタログである。
すなわち、本件商標は、役務「コンタクトレンズ又は眼内レンズの装用方法の教授」に使用されている。
また、このカタログは、奥付頁の「040913」なる記載から2004年9月に発行されたこと、さらに、発行者は、被請求人であることが明らかである。
以上のことから、本件商標は、被請求人により、その指定役務「コンタクトレンズ又は眼内レンズの装用方法の教授」について、本件審判請求の予告登録前3年以内に使用されたものである。
(ウ)乙第3号証の1は、被請求人により発行されたカタログ「メニコンZ、メニコンスーパーEX、メニコンEX、メニコンO2(「2」は「O」に比べ小さく右下に付記されている:以下同じ。)-32、ハードコンタクトレンズ スタートブック」であり、その裏表紙には、本件商標が記載されている。
このカタログは、被請求人がコンタクトレンズ装用者に対し、被請求人の業務に係るハードコンタクトレンズについての特性やコンタクトレンズ装用方法についての知識を教授する際に提示するカタログである。
すなわち、本件商標は、役務「コンタクトレンズ又は眼内レンズの装用方法の教授」に使用されている。
また、このカタログは、奥付頁の「050411」なる記載から2005年4月に発行されたこと、さらに、発行者は、被請求人であることが明らかである。
そして、前記事実をより一層明瞭にするため、印刷会社「株式会社ジャム」による証明書を乙第3号証の2として提出する。
すなわち、この証明書によれば、乙第3号証の1のカタログは、2005年4月(本件審判請求の予告登録前3年以内)に株式会社ジャムにより印刷され、被請求人に納品されたものであり、その後、被請求人により前記役務の提供に使用されたことは明らかである。
以上のことから、本件商標は、被請求人により、その指定役務「コンタクトレンズ又は眼内レンズの装用方法の教授」について、本件審判請求の予告登録前3年以内に使用されたものである。
(エ)乙第4号証の1は、被請求人の2004年カレンダーを撮影した写真(左側が全体写真、右側が一部拡大写真)であり、当該カレンダーは、顧客に頒布したり、コンタクトレンズショップなどの店頭に掲示されたものであり、その表紙の下方左側に本件商標が表わされている。
これはコンタクトレンズショップ等において、被請求人が顧客に対し、役務「コンタクトレンズの装用方法の教授」を提供する際に展示し、本件商標を使用したり、あるいは当該役務に関する広告に本件商標を使用した例である。
また、乙第4号証の2ないし4は、被請求人のコンタクトレンズやコンタクトレンズ用ケア用品に関するポスターを撮影した写真である。
すなわち、乙第4号証の2は、ソフトコンタクトレンズ「マンスウエア」に関するポスター、乙第4号証の3は、ソフトコンタクトレンズ「メニコン 1DAY」に関するポスター、さらに、乙第4号証の4は、コンタクトレンズ用ケア用品「プロテオフ」に関するポスターの各写真(左側が全体写真、右側が一部拡大写真)であり、当該ポスターは、コンタクトレンズショップなどの店頭に掲示されたものであり、その表紙の下方左側に本件商標が表わされている。
これらは、コンタクトレンズショップ等において、被請求人が顧客に対し、各種のコンタクトレンズやケア用品を販売すると同時に、役務「コンタクトレンズの装用方法の教授」を提供する際に展示し、本件商標を使用したり、あるいは当該役務に関する広告に本件商標を使用した例である。
(2)以上のとおり、本件商標は、被請求人により、取消請求に係る指定役務について、本件審判請求の予告登録前3年以内に使用されたものであるから、請求人の主張には理由がなく、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に該当するものではない。

4 当審の判断
(1)商標法第50条に基づく商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その審判請求の登録(平成19年5月30日)前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
(2)さらに、商標法上の役務は、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきもの」と解されており(特許庁編「工業所有権法逐条解説〔第16版〕」)、判決においても、「商標法にいう『役務』とは、他人のためにする労務又は便益であって、付随的でなく独立して市場において取引の対象となり得るものをいうと解するのが相当である。したがって、商品の譲渡に伴って付随的に行われるサービスは、それ自体に着目すれば他人のためにする労務又は便益に当たるとしても、市場において独立した取引の対象となり得るものでない限り、商標法にいう『役務』には該当しないと解すべきである。」(東京高等裁判所平成12年(行ケ)第105号・平成13年1月31日判決)と判示されている。
(3)そこで本件についてみるに、本件商標は、前記1のとおり、「アイウェーブ」の片仮名文字と「EYE WAVE」の欧文字とを上下二段に書してなるところ、被請求人は、取消請求に係る指定役務中の第41類「コンタクトレンズ又は眼内レンズの処方の教授,コンタクトレンズ又は眼内レンズの装用方法の教授」について、本件商標を使用している旨主張し、乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む。)をその証拠として提出しているので、以下、乙各号証について検討する。
(ア)乙第1号証は、本件審判請求の予告登録(平成19年5月30日)前3年以内に当たる2005年5月の日付(14頁)のある、裏表紙に「MENICON EYE WAVE」(該構成中、それぞれの頭字の「M」と「W」は緑色、同「E」は赤色であり、その以外の文字は黒色である:以下同じ。)の文字(以下「使用標章」という。)が表示されている被請求人発行のカタログ(製品ガイド 医家向資料)である。
そして、上記の使用標章は、その構成全体をもって、常に一体のものとして認識・把握しなければならない特段の事情も見いだせない。
さらに、「MENICON」の文字部分は、被請求人の名称を欧文字表記したものと認められることから、容易に「EYE WAVE」の文字部分と分離して把握し得るものである。
また、「EYE WAVE」は、片仮名文字を欠くとしても、その称呼「アイウェーブ」が本件商標の片仮名文字と共通であり、観念上異なるものともいえないから、使用標章は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標と判断するのが相当である。
被請求人は、これを眼科医等に提示し、被請求人の業務に係るソフトコンタクトレンズの特性を説明し、その処方に係る知識を教授し又はコンタクトレンズ装用者がコンタクトレンズを装用するときの装用方法について眼科医等が適切に指導し得るよう必要な知識を教授する旨主張する。
しかしながら、その表紙及び14頁に「マンスウエア・マンスウエア トーリック 製品ガイド」と記されていることからすると、当該カタログは、商品「コンタクトレンズ及びそのケア用品」の販売に付随して、眼科医等に無償で配布する説明書、すなわち商品の販売に付随したサービスの範疇にとどまる。
具体的には、商品「コンタクトレンズ及びそのケア用品」の特徴・機能等を説明するためのカタログにすぎず、これによって、被請求人が市場において独立して取引の対象となる労務又は便益を提供したことが証明されたということのできるものではない。
それというのも、こうしたカタログの配布又は提示をもって、商品「コンタクトレンズ」の処方又は装用方法の説明を眼科医等に対してすることは、被請求人による当該商品の販売に必要な説明又は宣伝広告方法の一環にすぎず、商品「コンタクトレンズ及びそのケア用品」の販売促進手段の一つにとどまるからである。
しかも、コンタクトレンズの販売価格とは別に、被請求人が眼科医等に商品「コンタクトレンズ」の処方又は装着方法を説明する労務又は便益の提供に当たって、独立して対価を得ていることは、当該カタログからは窺えず、この点よりしても、被請求人による眼科医等への説明は、商標法上の役務に該当しないとみるのが相当である。
(イ)乙第2号証及び乙第3号証の1は、本件審判請求の予告登録前3年以内に当たる040913、すなわち2004年9月13日及び050411、すなわち2005年4月11日の日付(各カタログ奥付頁参照)のある、表紙に本件商標と社会通念上同一と認められる商標「EYE WAVE」が表示されている被請求人発行のカタログ(需要者向け)であり、当該カタログは、商品「コンタクトレンズ及びそのケア用品」の販売に付随して、被請求人がコンタクトレンズ装用者(需要者)に無償で配布する説明書、すなわち商品の販売に付随したサービスの範疇にとどまる。
具体的には、商品「コンタクトレンズ及びそのケア用品」の特徴・機能等を説明するためのカタログにすぎず、これによって、被請求人が市場において独立して取引の対象となる労務又は便益を提供したことが証明されたということのできるものではない。
それというのも、こうしたカタログの配布又は提示をもって、商品「コンタクトレンズ及びそのケア用品」の特性やその装用方法の説明をコンタクトレンズ装用者(需要者)に対してすることは、被請求人による当該商品の販売に必要な説明又は宣伝広告方法の一環にすぎず、商品「コンタクトレンズ及びそのケア用品」の販売促進手段の一つにとどまるからである。
(ウ)乙第3号証の2は、乙第3号証の1のカタログを株式会社ジャムが印刷し、被請求人に対し、2005年4月に納品したことを本件審判請求の予告登録後の平成19年7月5日に証明した書面にすぎず、本件商標が取消請求に係る役務に使用されたことを証明するに足る証拠に該当するものとは認め難い。
(エ)乙第4号証の1は、被請求人の2004年カレンダーであり、また、乙第4号証の2ないし4は、ソフトコンタクトレンズ「マンスウエア」及びソフトコンタクトレンズ「メニコン 1DAY」並びにコンタクトレンズ用ケア用品「プロテオフ」のポスターである。
被請求人は、当該カレンダーやポスターを、顧客に対し、役務「コンタクトレンズの装用方法の教授」を提供する際に展示し又は被請求人が提供する役務の広告に本件商標を使用した旨主張する。
しかしながら、乙第4号証の1からは、当該カレンダーが2004年版であって、その左下に本件商標と社会通念上同一と認められる商標「EYE WAVE」が表示されていることは窺い知れるとしても、これが取消請求に係る役務に使用されたことを客観的に裏付ける証拠とみることはできない。
また、乙第4号証の2ないし4からは、これらのポスターがソフトコンタクトレンズ「マンスウエア」及びソフトコンタクトレンズ「メニコン 1DAY」並びにコンタクトレンズ用ケア用品「プロテオフ」の広告宣伝のために使用され、それらに本件商標と社会通念上同一と認められる商標「EYE WAVE」が表示されていることは窺い知れるとしても、これらが取消請求に係る役務に使用された年月日は定かでなく、使用したことを客観的に裏付ける証拠とみることもできない。
しかも、被請求人主張の役務が当該カレンダーやポスターを通じて一般的に提供されているとは考え難い。
(オ)以上のとおり、被請求人提出の乙各号証は、いずれも、本件商標が取消請求に係る指定役務に使用されたことを証明し得たものということはできず、また、被請求人が取消請求に係る役務について、本件商標の使用をしていないことについて、正当な理由があることを立証したということもできない。
(4)むすび
したがって、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、取消請求に係る指定役務「コンタクトレンズ又は眼内レンズの処方の教授,コンタクトレンズの装用方法の教授,電子計算機ソフトウェアの開発又は使用方法の教授」について使用していなかったものというべきであるから、商標法第50条の規定に基づき、その指定役務中、上記役務についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-03-07 
結審通知日 2008-03-10 
審決日 2008-03-25 
出願番号 商願2000-43322(T2000-43322) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Z41)
最終処分 成立  
前審関与審査官 稲村 秀子 
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 鈴木 新五
寺光 幸子
登録日 2003-04-11 
登録番号 商標登録第4661357号(T4661357) 
商標の称呼 アイウエーブ、ウエーブ、アイ 
代理人 大島 厚 
代理人 朝日奈 宗太 

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