ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 一部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y09 審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y09 |
---|---|
管理番号 | 1177895 |
審判番号 | 無効2007-890107 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2007-07-04 |
確定日 | 2008-04-25 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5021240号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5021240号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成18年6月28日に登録出願、第9類「教育用コンピュータプログラム,その他の電子応用機械器具およびその部品,教育用の音声もしくは音楽を記憶させた磁気式または光学式記録媒体,教育用の画像もしくは動画を記憶させた磁気式または光学式記録媒体,ダウンロード可能な教育用音声または音楽,ダウンロード可能な教育用画像または動画,教育用電子出版物,その他の電子出版物,電気通信機械器具」並びに第16類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年12月1日に登録査定、同19年1月26日に設定登録がされたものである。 2 請求人の引用する商標 請求人が本件商標の登録無効の理由に引用した商標は、下記の2件である(以下、これらをまとめていうときには、単に「引用商標」という。)。 (a)登録第1668400号商標は、別掲(2)に示すとおり、「TEC」の欧文字を横書きしてなり、昭和53年4月12日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同59年3月22日に設定登録、その後、平成6年7月28日及び同16年3月9日の2回にわたる商標権存続期間の更新登録、さらに、同年12月1日に、商品の区分及び指定商品を第7類「家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー」、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」、第9類「電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」、第10類「家庭用電気マッサージ器」、第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」及び第21類「電気式歯ブラシ」とする書換の登録がなされたものである。 (b)登録第4305304号商標は、別掲(3)に示すとおり、「TEC」の欧文字を赤色をもって横書きしてなり、平成5年12月20日に登録出願、第9類「理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電気磁気測定器,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,回転変流機,調相機,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気式ワックス磨き機,電気掃除機,電気ブザー,磁心,抵抗線,電極」を指定商品として、同11年6月28日に審決、同年8月13日に設定登録がされたものである。 3 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品中、第9類の指定商品に係る登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第15号について (ア)「TEC」商標の著名性について 請求人である東芝テック株式会社が使用する「TEC」マークは、請求人の商号の英文名称である「TOKYO ELECTRIC COMPANY LIMITED」の頭文字である「T」、「E」、「C」を抜き出して結合させたものであって、1952年の社名変更以来、継続して請求人のハウスマークとして使用されているものである。 そして、請求人は、約400億円の資本金を有する東京証券取引所1部上場企業であるところ、現在では、単品ごとに販売・在庫管理を行うための販売時点情報管理システム、いわゆるPOSシステム等の流通端末及び複合機に通信機能を付加したデジタル複合機を主力商品としている(甲第5号証)。 請求人がPOSシステムの販売を開始したのは古く、1979年(昭和54年)に国産メーカーとして初めてアメリカに輸出している(甲第3号証及び甲第4号証)。その後、既にレジスターの分野において国内第一位のシェアを占めた請求人は、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、外食産業、ホテル、ドラッグストア等、バーコードによる簡易な商品・顧客管理の電子化を必要としていたチェーンストアを中心に、POSシステムを急激に普及させるに至った。日本のコンビニエンスストアの成長の背景には、POSシステムを基幹とした精緻な情報システムがあったといわれている(甲第6号証)。 請求人は、POSシステムを構成する電気通信機械器具、電子応用機械器具はもとより、会社案内、各種商品カタログにおいて、一貫して「TEC」マークを使用しているものであって、この「TEC」マークは、請求人のハウスマークとして機能し、需要者間で周知・著名となっているものである(甲第7号証ないし甲第11号証)。 (イ)出所の混同のおそれについて 本件商標は、鍵穴を思わせる図形を左端に描き、当該鍵穴に通す鍵を連想させるように、欧文字「TEC」を配し(肉太の黒線で表した「T」の横線を右方向に伸ばして、同じく肉太の黒線で表した「C」に結合させ、中央には篭文字にて「E」を書している。)、その下に「The English Company」の欧文字を横書きした構成からなるものであって、上部に位置する「TEC」の文字が独立した構成要素として認識できるものである。 そうとすれば、本件商標は、請求人の周知・著名な商標「TEC」と類似するものであるから、本件商標が「電子応用機械器具、電気通信機械器具」等の第9類に属する指定商品に使用された場合には、需要者をして、あたかも請求人の製造・販売に係る商品あるいは請求人と組織的又は経済的に何らかの関係を有する者の製造・販売に係る商品であるかの如く誤認混同を生じさせるおそれがある。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。 (2)商標法第4条第1項第11号について 引用商標は、いずれも欧文字「TEC」を横書きした構成からなるものであり、本件商標は、欧文字「TEC」が1つの要部として把握されることは上記したとおりであるから、本件商標が引用商標と類似する関係にあることは明らかである。 そして、本件商標に係る第9類の指定商品と引用商標に係るそれとが類似する関係にあることも明白である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 (3)むすび 以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第11号に違反して登録されたものであるから、本件商標の指定商品及び指定役務中、第9類の指定商品についての登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。 4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。 本件商標は、図案化された図形商標であって、図形と文字を組合わせたもので、図案化された「TEC」の文字のみをとり出して見るべきではなく、「The English Company」という欧文字と鍵及び鍵穴全体を不可分のものと捉え、全体で固有の観念を有する商標として把握すべきものである。 すなわち、本件商標は、欧文字の「The English Company」という被請求人の会社の商号を有し、その上に鍵穴と鍵の軸部分の図があって、「English」に対応する位置に、軸にかかるように「E」の文字が鍵とは異なる色で書かれ、さらに、鍵軸の末端のつまみにあたる部分を1部切り欠いて「C」の文字を形成し、これが「Company」に対応する位置にあるものの、「E」とは高さがずれており、「E」より上に位置しているものである。 また、「T」の文字部分については、鍵軸中央に「E」の文字を配したことにより、「E」の左側の軸が「T」の横線の役割を果たし、鍵穴に挿入されて施錠、開錠に係る部分を表す縦線とで「T」の文字を形成している。 このように表現された構成にあっては、「English」と「E」及び鍵が一体となって英語に関する問題を解決する手段を観念させるものである。 このように、文字と図形との間に有機的関連性があって、「The English Company」の文字と図形とを一体として見たときに、はじめて、鍵部分に「T」と「C」の文字を見いだし、「TEC」と認識できるのであって、「TEC」だけを独立して見るのは全く不自然というべきである。 請求人の商標のように標準文字の「TEC」という三文字では、英語等の何らかの語の頭文字の組合わせらしいことはわかるとしても、それだけで何らかの観念を想起させるものではない。 本件商標は、「The English Company」と鍵穴と鍵の図形とが一体となって、一つの固有の観念を生じさせており、全体の構成から外観上及び観念上も、両者は全く類似していないというべきであり、これに接する取引者・需要者は、全体から受ける外観、印象をもって取引にあたると考えるのが相当である。 そうとすれば、本件商標を請求人の商標と取引者・需要者が誤認混同するおそれは全くなく、また、当然のことながら、「ティーイーシー」とか「テック」のように称呼されることもない。審決例として乙第1号証ないし乙第3号証を提出する。 また、請求人のPOSシステム等と被請求人の英語教材関連とでは、取引の状況も異なっており、取引者に誤認混同を生じさせるおそれはない。 以上のとおり、本件商標と引用商標とは外観、観念はもとより称呼についても全く非類似のものであり、また、本件商標は、取引者・需要者に誤認混同を生じさせるものではない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当せず、登録適格性を具備した商標というべきである。 5 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、別掲(1)に示すとおり、図形部分と欧文字部分とからなるところ(文字及び図形の彩色部分は黒に近い紫色で表されている。)、文字部分は、「The English Company」の欧文字からなり、図形部分は、斜め前方から見た形状の鍵穴と、その右側に、該鍵穴に挿入されるような位置関係に鍵が配されており、その鍵部分は、鍵軸の左寄りの位置に施錠・開錠の役割を果たす縦棒があり、右端には、つまみに当たる部分が楕円形の右側の一部を欠いたかの如き形状をもって表されている。 そして、鍵軸の中央部分には、その一部に重なるように、篭文字をもって表された「E」の文字が配されているものである。 上記の如き構成からみれば、本件商標の図形部分は、鍵穴と鍵に「E」の文字が配された一種独特な構成からなるものとみるのが自然であり、該図形部分から直ちに特定の文字列が理解し、認識されることはないものというのが相当である。 そうとすれば、本件商標は、「The English Company」の欧文字に相応して、「(ジ)イングリッシュカンパニー」の称呼及び被請求人の商号の略称としての意味合い(観念)を生ずるものであって、該図形部分からは、特定の称呼及び観念を生ずることはないと認められる。 他方、引用商標は、別掲(2)及び(3)に示すとおり、いずれも「TEC」の欧文字を横書きしてなるものであるから、該文字に相応して、「ティーイーシー」あるいは「テック」の称呼を生ずるものであり、また、該文字は、親しまれた意味合いを表す成語ではないから、これより特定の観念を生ずることはないものと認められる。 そこで、本件商標と引用商標との類否についてみるに、上記したとおり、両商標は、外観及び称呼において顕著な差異を有するものであり、観念においては比較すべくもないものである。 してみれば、本件商標と引用商標とは互いに紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。 したがって、本件商標の登録は、請求人が登録の無効を請求している第9類の指定商品について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものということはできない。 (2)商標法第4条第1項第15号について 請求人の提出に係る甲各号証によれば、引用商標が請求人の業務に係るPOSシステムを構成する電気通信機械器具等に使用されていた事実は認められるとしても、前記のとおり、本件商標と引用商標とは、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であり、別異の商標というべきであるから、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想し又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人又はそれと経済的あるいは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。 したがって、本件商標の登録は、第9類の指定商品について、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではない。 (3)請求人の主張について 請求人は、本件商標の図形部分から「TEC」の文字列を把握し得ることを前提に、本件商標と引用商標とが類似するものであり、商品の出所の混同を生じさせるおそれがある旨主張している。 確かに、本件商標の図形部分は、中央部分に「E」の文字が配されていることから、その左側部分を「T」の文字の如くに捉え、また、右端のつまみ部分を「C」の文字の如くに捉えて、該各構成部分から「T」「E」「C」の文字を看取する場合がないとはいえない。 しかしながら、最高裁昭和39年(行ツ)第110号判決によれば、「商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。・・・商標の外観、観念または称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、したがって、右三点のうち、その一つにおいて類似するものでも、他の二点において著しく相違すること、その他取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない。・・」と判示されている。 この最高裁判決に沿ってみれば、本件商標の図形部分から「T」「E」「C」の文字列が把握されるとしても、該文字列は、前記したとおり、全体として一種独特な構成からなる図形部分に内包されているものであって、「TEC」の文字のみから構成されている引用商標とは、外観において全く別異の印象を与えるものである。 加えて、本件商標の図形部分から「T」「E」「C」の文字列を把握し得ると見ることができるのは、該図形部分の構成からばかりでなく、図形の下部に「The English Company」なる被請求人の商号の略称が配されており、その各欧文字の頭文字が図形中に内包されている「T」「E」「C」の各文字に対応していることとも密接に関係しているものというべきである。 そうとすれば、本件商標の図形部分から把握される「TEC」の文字列からは、「The English Company」なる被請求人の商号の略称を理解し、認識させるものということができる。 これに対して、引用商標の「TEC」の文字は、請求人の主張によれば、請求人の商号の英文名称である「TOKYO ELECTRIC COMPANY LIMITED」の頭文字である「T」「E」「C」を抜き出して結合させたものということである。 してみると、請求人と被請求人における「T」「E」「C」の文字列の採択意図は、全く別異のものであり、本件商標に接する取引者、需要者において、少なくとも、本件商標における「T」「E」「C」の文字列から請求人の商号の略称とは別異の「The English Company」なる(被請求人の)商号の略称を把握し得るものといえるから、本件商標と引用商標とは、観念の点においても、互いに紛れるおそれはないものというべきである。 そうすると、本件商標の図形部分から「T」「E」「C」の文字列が把握され、「ティーイーシー」あるいは「テック」の称呼が生ずるとしても、本件商標と引用商標とは、商標の外観及び観念において著しく相違するものであって、取引者、需要者に与える印象も全く別異のものということができる。 そして、被請求人の主張によれば、被請求人は、英語教育に関する教材等を提供する企業とのことであって、請求人の業務に係る商品とは全く異なる分野の商品を扱う企業であるから、このことをも併せみれば、両商標は、何ら商品の出所について、誤認・混同を生ずるおそれのない非類似の商標というべきものであり、本件商標をその指定商品に使用しても、該商品が請求人若しくはそれと何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について、誤認混同を生ずるおそれはないものというべきである。 してみれば、この点についての請求人の主張は採用することができない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、第9類の指定商品について、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 (1)本件商標 注:色彩については、原本を参照されたい。 (2)引用商標1 (2)引用商標2 注:色彩については、原本を参照されたい。 |
審理終結日 | 2008-02-28 |
結審通知日 | 2008-03-03 |
審決日 | 2008-03-14 |
出願番号 | 商願2006-60285(T2006-60285) |
審決分類 |
T
1
12・
26-
Y
(Y09)
T 1 12・ 271- Y (Y09) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大井手 正雄 |
特許庁審判長 |
山口 烈 |
特許庁審判官 |
寺光 幸子 鈴木 新五 |
登録日 | 2007-01-26 |
登録番号 | 商標登録第5021240号(T5021240) |
商標の称呼 | テック、テイイイシイ、ジイングリッシュカンパニー、イングリッシュカンパニー |
代理人 | 石川 義雄 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 小出 俊實 |