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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消200130333 審決 商標
取消200630868 審決 商標
取消2009301023 審決 商標
取消200330505 審決 商標
取消2009301094 審決 商標

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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z42
管理番号 1177853 
審判番号 取消2006-30998 
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2006-08-16 
確定日 2008-04-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第4499988号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4499988号商標の指定役務中、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機を用いて行う情報処理,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む)の貸与」については、その登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4499988号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成11年9月14日に登録出願、第42類「美容,理容,写真の撮影,オフセット印刷,医療情報の提供,デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機を用いて行う情報処理,デジタル印刷,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与」を指定役務として、同13年8月17日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、「C」の欧文字の周りを円で囲んだロゴと、その下段に横書き一段にて書された「CYBER NET」の欧文字からなるところ、被請求人は、本件商標を、その指定役務中、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機を用いて行う情報処理,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与」について、継続して3年以上日本国内において使用していない。
また、本件商標の登録原簿(甲第2号証)に示すとおり、その指定役務中、上記役務についての専用使用権者は存在せず、通常使用権者として本件商標を使用している者も存在しない。
したがって、本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定役務中、上記役務について使用されていない。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
被請求人は、乙第1号証ないし乙第9号証を提示し、これらをもって、本件取消請求に係る指定役務中、「電子計算機を用いて行う情報処理」について、本件商標を使用している旨主張する。
しかしながら、以下に述べるとおり、被請求人の主張は、指定役務、商標の同一性のいずれについても適切な認識を欠いたものであり、失当といわざるを得ない。
A.指定役務についての使用該当性
(ア)被請求人は、「インターネットサイトによる名刺を中心とする印刷受注業務並びに当該印刷受注により取得したデータを利用した情報処理業務」を行っている旨主張する。
しかし、現実には、被請求人の提供する役務は「印刷」であり、被請求人の主張は誤りである。
(イ)「役務」について商標法上は何ら定義されていないが、少なくとも独立して経済取引の対象となるものであることが要件と解される。
役務「電子計算機を用いて行う情報処理」とは、電子計算機(=コンピュータ)の演算機能を利用して、コンピュータにプログラム及び処理対象となるデータを入力し、演算や加工の結果が出力されるまでの過程について他人に代わって行う労務又は便益であり、それに対し、対価を得るものを指す。
これに対し、被請求人が行っていると主張するサービス(以下「被請求人サービス」という。)は、乙第1号証にもあるように「名刺電子購買サービス」であり、登録された会員がインターネットサイトから印刷物(名刺)の発注を行うことができるというものである。これは正に、役務「印刷」(類似群コード:42F01)に該当するサービスにほかならない。
(ウ)しかるに、被請求人は、被請求人サービスにつき、「発注データは、被請求人が管理するサーバに発注人毎に記録される。」旨述べている。
しかし、印刷の受注を受けた印刷業者が、その受注データを自社のサーバに記録することは、通常の印刷業務の範疇である。
(エ)近年、インターネットを介した商品の販売や役務の提供(いわゆるオンラインショップ)は、ごく一般的になっており、実に多種多様な商品・サービスが取り扱われるに至っている。各事業者は、販売促進、販路の拡大の観点から、オンラインショップを導入するケースが激増している。
被請求人サービスもまた、役務「名刺の印刷」のオンラインショップそのものである。
このことは乙第1号証にある「名刺電子購買サービス」(1頁)、目次における「5 発注名刺(商品)の登録方法」(2頁)及びマニュアル内の具体的な説明(12頁及び13頁)についての各記載から明らかである。
(オ)さらに、被請求人サービスは、対面取引でなく、注文内容の確認を必要とすることや、インターネットを介した取引であるため、受注者側のコンピュータに記録が残るといった特性を有する。
取引の安全確保及び反復的取引の利便性向上のために、過去の注文履歴を閲覧することは、商品の販売又は役務の提供の一環として、ごく一般的に行われている。
(カ)また、印刷された冊子のマニュアルではなく、オンラインショップの操作マニュアルは、その性質上、オンライン、すなわち画面上のウインドウを展開して参照するものであり、乙第1号証及び乙第7号証ないし乙第9号証は、これを印刷して配布したことを示すにすぎない。
なお、被請求人が、このような印刷物を顧客に配布するのは、印刷を主業務とする被請求人自らの役務の高い質を示す広告戦略と思われる。
(キ)種々存在するオンラインショップに注文履歴の検索・出力機能が当然のように存在することは、以下の(a)ないし(e)からも窺える。
(a)甲第3号証は、株式会社大塚商会が運営する法人企業向けオフィス用品のオンラインショップ「たのめーる」の総合案内頁(写)である。
このサイトでは、過去1年間の注文履歴を表示し、以前に注文した商品の再注文が簡単にできる「注文履歴」機能や、Webだけでなく、FAXによっても購入実績がダウンロードできる「履歴ダウンロード」等の機能が紹介されている。
これらは商品であるコピー用紙やトナーカートリッジなどのオフィス用品の販売を促進するために運営会社が自ら設定しているものであり、それは自らの商品の販売という営業活動のためにするサービスであって、商標法上の役務には該当しない。
(b)甲第4号証は、日清食品株式会社が運営するカップめんのオンラインショップ「日清e-めんshop」の頁(写)である。
このサイトにも注文履歴を確認する機能があり、過去3ヶ月以内の注文履歴が確認できる。
(c)甲第5号証は、コープ自然派事業組合が運営する「コープ自然派」のホームページである。
ここでも生鮮食料品等のオンラインショップが運営されており、注文履歴の検索機能が備えられている。
これも、やはり商品の販売の際の利便性の向上と商品の販売を促進する一環として、事業者が自ら備えている機能であり、それ自体が商標法上の役務に該当するものではない。
(d)甲第6号証は、松井証券株式会社が運営するオンライントレードの頁(写)である。
これもまた証券取引の一環として、顧客自身が取引(約定・発注・取消)の内容をコンピュータの操作によって確認できるものである。
(e)その他、健康食品(甲第7号証)、教材(甲第8号証)、書籍(甲第9号証)等、多岐にわたる商品・サービスのオンラインショップで、注文履歴の検索・ダウンロードが商品の販売や役務の提供の促進の一環として行われており、それらは独立した商品又は役務の取引対象となっていない。
(ク)乙第1号証、乙第7号証ないし乙第9号証に示されている被請求人サービスは、これらと何ら異ならず、あくまで役務「名刺の印刷」又は「名刺」という商品の販売の一環として行われているものにすぎない。
(ケ)請求人が提示した甲各号証には、注文履歴の検索の方法がオンラインマニュアルで説明されているが、被請求人提出の乙第1号証、乙第7号証ないし乙第9号証は、それを印刷したものにすぎない。
(コ)さらに、乙第2号証ないし乙第4号証は、被請求人使用商標との関連性を明示しておらず、そもそも登録商標の使用の事実を立証し得るものではない。
(a)乙第2号証は、会員自身が発注(=入力)した(名刺の)内容を確認するために検索をするものであって、被請求人による情報処理という役務の提供には当たらない。
上記検索によって得られた結果物を発注の参考資料に利用することは、被請求人サービスが情報処理か否かとは関係がない。
(b)また、乙第3号証及び乙第4号証は、つまるところ、被請求人による「名刺の印刷」という役務の提供又は「名刺」という商品の販売に関する受注集計表にすぎず、情報の入力(=発注、及び受注集計表の作成指示)を会員が自ら行い、インターネットを介して会員がする指示に基づき、予め記録されたプログラムを実行し、出力結果が得られるというものであり、被請求人が他人のために「電子計算機を用いて行う情報処理」という労務又は便益の提供を行った証左ではない。
得られた結果物を「人事データ」、あるいは「部門別の従業員リスト」に利用できるか否かは、被請求人主張の「情報処理」の役務に該当するか否かとは無関係である。
(c)さらに、本件商標の使用許諾を取得した第三者(株式会社志正堂)が乙第5号証及び乙第6号証で行っている「インターネットデジタル印刷」も、上記被請求人サービスそのものであって、「電子計算機を用いて行う情報処理」ではない。
しかも、乙第5号証及び乙第6号証は、いずれも本件取消審判請求の予告登録後のものである。つまり、乙第5号証の日付は「2006年10月5日」であり、それには使用許諾の年月日の記載がなく、また、乙第6号証の日付も「2006/09/20」である。
したがって、被請求人の主張は、それ自体失当である。
(サ)以上のとおり、被請求人サービスは、被請求人の業務である「デジタル印刷」の販売促進及び顧客の囲い込みのために行われるものであり、その実態は「名刺の印刷」である。
発注履歴等の出力処理は、被請求人の印刷業務の営業促進の観点から行われるものであり、そもそも、それ自体単体で取引の対象となるものではない。
したがって、被請求人提出の乙各号証から把握できるのは、被請求人が「名刺の印刷」に被請求人使用商標を使用している事実にすぎず、その余の被請求人の主張には理由がない。
(シ)なお、仮に、被請求人サービスが上述の「名刺の印刷」以外の役務の提供に該当すると解釈され得たとしても、それは「電子計算機を用いた情報処理」という役務の提供ではない。
(ス)上述のとおり、被請求人サービスは、それ自体独立した役務として成立しているものではなく、商標法上の役務に該当しない。
(セ)請求人は、以下の点を予備的に主張する。
(a)被請求人は、サーバに記録したデータを処理するプログラムを保有し、当該データを会員の指示に従って処理し、集計処理したデータを会員に提供している旨述べる。
しかし、そのオペレーション(操作)は、乙第1号証、乙第7号証ないし乙第9号証から明らかなとおり(「7-1 注文履歴の管理と集計データのダウンロード」及び「7-2 登録済み名刺(商品)の管理」)、インターネット上でオンラインマニュアルに基づき、会員自身が行うものであるから、被請求人が労務又は便益を提供しているものではない。
そもそも「情報処理」とは「コンピュータを使用して行う処理一般のこと」をいい(甲第10号証)、「処理」とは、「与えられた条件の下で、意図する目的を達成する過程。一般には、プログラムとデータをコンピュータに入力し、演算や加工を行い、その結果が出力されるまでの過程」を意味する(甲第11号証)。
したがって、「電子計算機を用いて行う情報処理」とは、依頼者の「意図した目的」に近い結果を得るために、受任者が自己の持つスキルとコンピュータの演算能力を用いて、適切なデータ加工及び演算手順に従ってコンピュータの操作を行う労務又は便益を意味する。
仮に、当該サービスが上記「役務」の要件である独立取引対象性を具備している場合でも、被請求人サービスは、会員に自らのサーバ上に記録したプログラムを提供する行為、すなわち役務「電子計算機用プログラムの提供」であって、「電子計算機を用いて行う情報処理」ではない。
そして、「電子計算機用プログラムの提供」が本件商標の指定役務中の「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与」と類似する役務であるとしても、商標法第50条第1項における「指定役務についての登録商標の使用」には当たらないから、そのことは本件審判の結論を左右しない。
なお、「電子計算機用プログラムの提供」は、「電子計算機用プログラム」と審査基準上、備考類似の関係にあるが、請求人は、件外登録第4033716号の2商標(商標「CYBERNET」:指定商品 第9類「電子応用機械器具及びその部品」)を所有していることを念のために付言する。
B.被請求人の使用商標と本件商標との同一性
被請求人は、「上下に表されていても左右に表されていても『C』のデザイン文字と欧文字『CYBERNET』の結合と認識される点において差異はない」旨主張する。
しかし、両構成の関連が希薄か否かということと、使用態様として異なる構成を採用していることとは、社会通念上同一の商標に該当するか否かに何らの関連もない。
本件商標では、「C」の図形が上段に大きく配されているのに対し、「CYBER NET」の文字は、その下に、特段特徴のないシンプルな字体をもって表されている。
他方、被請求人使用商標は、「C」の図形に比し、「cyber net」の文字が相対的に大きく、また、特殊な字体(「7セグ」を想起させるデジタル、無機的な小文字)で表されている。
また、本件商標では、「C」の図形、特に「C」の文字及びそれを囲むマルが一筆で書かれており、当該「C」とマルとの結合部分には、くるりと一回転の捻りが加えられており、それが一層のアクセントになって、強く印象付けられるのに対し、被請求人使用商標では、その図形部分は目立たず、むしろ、「cyber net」の各文字の端部が「7セグ」をイメージさせる特殊な字体からなる点に強く印象付けられる。
このように看者に与える印象の面において、両者間には顕著な相違があるというべきであり、両者は、外観上同一視することができず、書体のみの変更とは認められず、社会通念上同一の商標と認められる範囲の使用ということもできない。
よって、被請求人の主張は、この点においても失当といわざるを得ない。
C.小括
以上のとおり、被請求人の主張は失当であり、本件商標の指定役務中、第42類「電子計算機を用いて行う情報処理」についての使用は証明されておらず、他の指定役務についての何らの言及もない。
(3)むすび
したがって、本件取消請求に係る指定役務に本件商標の使用の事実は認められないから、その指定役務中、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機を用いて行う情報処理,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与」についての登録は、商標法第50条第1項の規定に基づき、取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。
(1)被請求人は、本件商標を取消請求に係る指定役務「電子計算機を用いて行う情報処理」について、本件審判請求の登録前3年以内に使用している。
(ア)被請求人の業務
被請求人は、本件商標を使用してインターネットサイトによる名刺を中心とする印刷受注業務並びに当該印刷受注により取得したデータを利用した情報処理業務を「PRINTBAHN」の商標を使用して行っている。
この「PRINTBAHN」の商標を使用して提供される役務は会員制であり、会員として登録された者(企業)は、被請求人が提供するインターネットサイト又は株式会社志正堂が提供する「インターネットデジタル名刺」ログイン画面から、被請求人が提供する「PRINTBAHN」のサイトに入り、そこで印刷物(名刺)の発注を行うことができる。
発注データは、被請求人が管理するサーバに発注人毎に記録される。
被請求人は、前記サーバに記録されたデータを処理するプログラムを保有しており、前記データを会員の指示に従って処理し、集計処理したデータを会員に提供する。被請求人が当該データ処理により提供する情報としては、会員企業の部門別の発注記録、個人別の発注記録、社員名簿などである。
(イ)業務の詳細
会員の発注データは、被請求人が管理するサーバに記録されるが、当該データには、発注者、請求部門、発注数量、名刺氏名、名刺住所、名刺部門等が含まれている。
(a)オンライン検索
会員は、自己のパソコンにおいて、「PRINTBAHN」のサイトに入り、そこでパスワードを入力し、会員の個別サイトに入ることができる。
当該サイトにおいて、「注文履歴確認」を選択すると、発注データ検索画面が表れる。ここで、所望の検索キーワードを設定すると、被請求人のプログラムにより処理されたデータがパソコンに送信され、モニタに表示される。
「利用マニュアル」(乙第1号証)の26頁には、「PRINTBAHNのHOME[注文履歴確認]をクリックして下さい。『発注データ検索』画面より過去の注文履歴の確認や注文集計の確認・データのダウンロード(発注者のみ)が行えます。」と記載されている。
データ検索の一例を以下に示す。
(i)オンライン検索
乙第1号証の26頁の検索画面において、検索期間が[2002年10月12日から2002年11月12日まで]と指定されている。検索アイコン(画面左上のアイコン)をクリックすると、被請求人のサーバにおいて、該当する発注履歴が検索され、画面に乙第1号証の27頁に示す発注1件毎のリストが表示される。
上記「期間集計」のほか、発注者、部門、名刺氏名などをキーワードとした検索も可能である。例えば、「期間」を指定したうえで、「名刺氏名」をキーワードとして検索すれば、該当期間における特定の者の名刺発注状況のリストを得ることができる。
(ii)オフライン検索
オンライン検索では絞り込みの対象とならない記録事項をキーワードとした検索は、オフラインにより会員に提供される。
「プリントバーンの登録データ抽出依頼」(乙第2号証)は、会員企業から被請求人に宛てた登録データ検索を依頼する2005年7月22日付e-メールである。依頼内容は、会員企業が被請求人に発注した名刺中、その「デザインパターン02」「デザインパターン11」の名刺の発注実績の具体的な内容(発注時期、発注者、名刺氏名等)の検索を求めるものである。会員は、この検索結果データを発注の参考資料として利用することができる。手書きされた59件、20件というメモは、検索結果データに基づく受注件数の記録である。
具体例は、以下のとおり。
(データ登録日・更新日検索)
データの更新日を指定して検索すると、該当期間に新規登録又はデータ更新した者(名刺氏名)のリストが得られる(乙第3号証)。
データ更新は、主に従業員の異動時に行われるから、このリストにより、従業員の異動状況を把握でき、人事データとして利用することができる。
(部門検索)
所属部門を指定して検索すると、納品先部門毎の名刺氏名(表には「商品署名」と記載されている。)の集計リストを得ることができる(乙第4号証)。当該リストは、部門別従業員リストとして利用することができる。
(ウ)商標の使用
本件商標は、会員に頒布される「利用マニュアル」(乙第1号証)の裏表紙に表示されている。この「利用マニュアル」の26頁及び27頁には、登録データの利用方法が示されており、裏表紙に表示された本件商標は、指定役務「電子計算機による情報処理」に使用されている。
また、被請求人は、株式会社志正堂に本件商標の使用許諾をしている(乙第5号証)。
そして、株式会社志正堂が提供する「インターネットデジタル名刺」ログイン画面(http://www.shiseidou.co.jp/whatsnewtop/Digicard/login_main.html:乙第6号証)から、被請求人の提供する「PRINTBAHN」のサイトに入ることができる。当該ログイン画面には、本件商標が表示されている。
「志正堂」のサイトから「PRINTBAHN」のサービスの提供を受ける場合も、被請求人の会員登録を受け、パスワードの発行を受ける必要がある。
「PRINTBAHN」のサイトに入ると、被請求人のサーバで処理され、上記(イ)のデータ処理サービスを受けることができる。
このことは、志正堂のサイトおいて、「名刺の作成並びに送付先、あるいは機能や操作についてのお問い合わせ先はサイバーネットになります。」という記載から明らかである。
(エ)商標の同一性
本件商標は、「@」を模した「C」の文字と「CYBER NET」の文字とを上下二段に表してなるところ、上記使用事実においては、両者が横一列に表されている。また、「CYBER NET」の書体にも差異がある。
しかしながら、「C」の文字と「CYBER NET」の文字は、もともと関連が希薄であり、それらが上下又は左右に表されていても、「C」のデザイン文字と欧文字「CYBER NET」の結合と認識される点に差異はない。
また、被請求人使用商標の書体は、僅かにデザイン化されているが、顕著なデザイン化でなく、単に欧文字「CYBER NET」と認識される程度のものである。
したがって、本件商標と乙第1号証及び乙第6号証に表されている被請求人使用商標は、識別力に差異がなく、商標の態様として実質的に同一である。
(オ)3年以内の使用
本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に使用されていることを証明するものとして、乙第7号証ないし乙第9号証を提出する。
それらには、被請求人が商標「PRINTBAHN」を使用して提供する「情報処理」を含む役務の利用法が記載されており、各裏表紙に本件商標が表示された「利用マニュアル」は、証明者に頒布され、その証明がなされている。
乙第7号証ないし乙第9号証は、「利用マニュアル」の2003年9月発行版が2004年11月及び同年12月に、また、その2005年5月発行版が2005年8月に、それぞれ頒布された事実を示している。
(2)むすび
以上のとおり、被請求人は、本件商標と実質的に同一の商標を取消請求に係る指定役務「電子計算機を用いて行う情報処理」について、本件審判請求の登録前3年以内に使用していた。
また、本件商標の使用権者も、そのインターネットサイトにおいて、本件商標を指定役務に使用している。
よって、本件取消請求は理由がない。

4 当審の判断
(1)商標法第50条に基づく商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その審判請求の登録(平成18年9月1日)前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
(2)さらに、商標法上の役務は、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきもの」と解されており(特許庁編「工業所有権法逐条解説〔第16版〕」)、判決においても、「商標法にいう『役務』とは、他人のためにする労務又は便益であって、付随的でなく独立して市場において取引の対象となり得るものをいうと解するのが相当である。したがって、商品の譲渡に伴って付随的に行われるサービスは、それ自体に着目すれば他人のためにする労務又は便益に当たるとしても、市場において独立した取引の対象となり得るものでない限り、商標法にいう『役務』には該当しないと解すべきである。」(東京高等裁判所平成12年(行ケ)第105号・平成13年1月31日判決)と判示されている。
(3)そこで本件についてみるに、本件商標は、別掲に示すとおり、欧文字の大文字「C」の末尾にくるりと一回転の捻りを加え、それをさらに延ばして一筆で前記文字をぐるりと囲んだ構成よりなる図形を上段の中央に配し、その下に「CYBER NET」の欧文字を横書きした構成よりなるものである。
被請求人は、取消請求に係る指定役務の第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機を用いて行う情報処理,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与」中、「電子計算機を用いて行う情報処理」に本件商標を使用している旨主張し、乙第1号証ないし乙第9号証を証拠として提出しているので、以下、当該乙各号証について検討する。
(ア)乙第1号証は、会員として登録された者(企業)(以下「会員」という。)に対し、被請求人が頒布した「利用マニュアル」であるところ、該マニュアルの裏表紙の右下には、本件審判請求の予告登録日(平成18年9月1日)前3年以内に当たる「2006.JUNE」(2006年6月)の日付があり、また、該裏表紙の左下には、本件商標と社会通念上同一の構成態様よりなる商標、すなわち欧文字の大文字「C」の末尾にくるりと一回転の捻りを加え、それをさらに延ばして一筆で前記の文字をぐるりと囲んだ構成よりなる図形を左に配し、その右に「cyber net」の欧文字の小文字を横書きした構成よりなる商標、いわゆる被請求人使用商標がある。
乙第1号証によれば、会員は、自己のパソコンから被請求人の商標「PRINTBAHN」が使用されているインターネットサイトに入り又は被請求人の通常使用権者である株式会社志正堂が提供する「インターネットデジタル名刺」ログイン画面から被請求人の「PRINTBAHN」のサイトに入り、名刺の印刷を発注することができる。
被請求人は、商標「PRINTBAHN」のインターネットサイトにより名刺の印刷を受注するほか、名刺の印刷受注時に取得した会員のデータ(発注者、請求部門、発注数量、名刺氏名、名刺住所、名刺部門等)を情報処理し、その役務に商標「PRINTBAHN」を使用し、提供している旨主張する。
しかしながら、役務「電子計算機を用いて行う情報処理」とは、電子計算機(=コンピュータ)の演算機能を利用して、コンピュータにプログラム及び処理対象となるデータを入力し、演算や加工の結果が出力されるまでを他人に代わって行う労務又は便益であって、その提供に対し、対価を得る独立した役務を指すのに対し、被請求人サービスは、この乙第1号証等によれば、会員が被請求人の商標「PRINTBAHN」の使用されているインターネットサイトを介して名刺の発注をすることができる役務、すなわち「名刺の印刷」の範疇にとどまるから、当該役務は、「電子計算機を用いて行う情報処理」ではない。
また、印刷の受注を受けた印刷業者が会員のデータを自社サーバに記録することは、一般的に行われているところである。近年、インターネットを介した商品の販売や役務の提供(いわゆるオンラインショップ)が一般的になってきており、多種多様な商品・役務が取り扱われているところ、事業者は、商品の販売又は役務の提供の促進、販路の拡大のために、それを導入している。
そして、被請求人サービスも役務「名刺の印刷」のオンラインショップの一つにすぎず、そのことは、乙第1号証等の「名刺電子購買サービス」、「発注名刺(商品)の登録方法」及びその他の説明から優に裏付けられる。
さらに、被請求人サービスは、対面取引でなく、インターネットを介して行う取引であるために、注文内容の再確認を必要とすることや受注者側のコンピュータに記録が残る特性があること等を考慮すると、注文履歴を顧客自身がコンピュータの操作により閲覧し、確認できる機能は、商品の販売又は役務の提供の促進の一環であり、事業者により、しばしば備えられているところである。
印刷した冊子のマニュアルではなく、オンラインによる操作マニュアルは、その性質上、画面上のウインドウを展開し、参照しつつ発注に至るものであるから、乙第1号証等は、当該オンラインマニュアルを出力し、それを印刷し、会員に配布したことを示すにすぎない。
さらに、オンラインショップには、注文履歴の検索・出力機能(注文履歴を画面に表示し、再注文が簡単にできるようにする注文履歴機能やWebだけでなくFAXでも購入実績をダウンロードできる履歴ダウンロード機能)を有するものがあることは、甲各号証から充分に裏付けられるところ、当該機能は、商品の販売又は役務の提供の促進の一環として事業者により備えられているものであり、それらは商品の販売又は役務の提供に付随するサービスといえるものであって、それ自体独立して取引の対象となる商標法上の商品又は役務ということができるものではない。
してみると、被請求人サービスは、役務「電子計算機を用いて行う情報処理」に当たらず、役務「名刺の印刷」に付随するサービスとみるのが相当である。
なお、たとえ、マニュアルに被請求人使用商標が使用されているといい得ても、当該マニュアルで「名刺の印刷」に専ら使用されている商標は、「PRINTBAHN」であって、被請求人使用商標が役務「電子計算機を用いて行う情報処理」に使用されている事実は見いだせない。
したがって、乙第1号証等は、本件商標が本件審判請求の登録(平成18年9月1日)前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、取消請求に係る役務に使用された事実を証明し得る証拠とは認め難い。
(イ)乙第2号証は、予告登録前3年以内に当たる2005年7月22日に会員から被請求人に宛てたプリントバーンの登録データ抽出依頼のe-メールというものである。
被請求人は、会員が被請求人に発注した名刺のデザインパターン02と11の発注実績(発注時期、発注者、名刺氏名等)の検索依頼例であると主張するが、これには、本件商標と同一又は類似の商標に該当するものは一切見当たらず、むしろ、被請求人の商標「PRINTBAHN」と類似する「プリントバーン」の表示のみが見受けられる。
(ウ)乙第3号証は、「更新日検索リスト」というものであり、その出力日は、本件審判請求の予告登録後の「2006/10/02」であるところ、そこに記載の登録日欄には「2003.07.04」、同「07.11」、同「07.16」、同「07.02」、同「07.18」及び同「07.24」という各日付がある。
しかしながら、これには被請求人の商標「PRINTBAHN」が見受けられるとしても、本件商標と同一又は類似の商標は、全く見当たらない。
(エ)乙第4号証は、本件審判請求の予告登録後の「06-10-12」の出力日がある「部門別検索リスト」というものである。
これには、本件商標と同一又は類似の商標のみならず、「PRINTBAHN」と同一又は類似の商標も見当たらない。
以上を総合すると、乙第2号証ないし乙第4号証からは、本件商標が取消請求に係る役務に使用された事実は、何ら証明されていない。
(オ)乙第5号証は、被請求人から使用許諾を受けた本件商標を株式会社志正堂が、その提供する「インターネットデジタル名刺」ログイン画面上で使用しているというものであるところ、その証明日は、本件審判請求の予告登録後の2006年10月5日であるから、本件商標が取消請求に係る役務に使用された事実を証明し得る証拠と認めることができない。
(カ)乙第6号証は、被請求人から本件商標の使用許諾を受けた株式会社志正堂のサイト(写)であり、これには被請求人使用商標が表示されているから、被請求人は、取消請求に係る役務「電子計算機を用いて行う情報処理」に本件商標を使用している旨主張する。
しかしながら、該証拠は、本件審判請求の予告登録後の「2006/09/20」の出力日であるばかりでなく(他に日付を示す表示は見当たらない。)、そこには「名刺発注システム PRINTBAHN」、「インターネットデジタル名刺」、「今、お使いの名刺がインターネットで簡単にご注文いただけます。」、「『Geomate(ジオメイト)デジタル名刺』は、株式会社サイバーネットが運営している名刺電子発注システム『PRINTBAHN(プリントバーン)』と、株式会社志正堂の提携によるサービスです。名刺の作成ならびに送付元、あるいは機能や操作についてのお問い合わせ先はサイバーネットになります。」と記載されているだけであるから、たとえ、被請求人使用商標がそこに表示されていたとしても、乙第6号証において、被請求人ないしは株式会社志正堂が会員に提供している役務は、取消請求に係る役務「電子計算機を用いて行う情報処理」ではなく、役務「名刺の印刷」であるとみるのが自然である。
(キ)乙第7号証ないし乙第9号証の各証明書は、受領日、証明日、証明者(会社名)、住所、当該会社における担当者名を除けば、いずれも同じ文面の画一的な体裁よりなるものであって、そのいずれにも、それぞれの会社印が押されていることは認められるとしても、各会社の代表者の記名捺印はなく、担当者名はあっても、その押印はなく、当該担当者がその証明をし得る資格のある者であることを裏付ける証拠の提出はないから、その証明内容(利用マニュアルの頒布)の信憑性に乏しい。
しかも、当該乙第7号証ないし乙第9号証等のマニュアルは、役務「名刺の印刷」の特徴・機能等を説明しているものにすぎず、被請求人が市場において、役務「電子計算機を用いて行う情報処理」について、独立して取引の対象となる労務又は便益を提供したことが証明されていない。
むしろ、かかるマニュアルの配布又は提示をもって、役務「名刺の印刷」の内容・特性・説明等を会員にすることは、被請求人による当該役務に必要な説明ないしは宣伝広告の方法、あるいは当該役務の提供の促進のための一手段といえる。
そして、乙第7号証ないし乙第9号証のマニュアルは、乙第1号証のそれと同様に冊子の体裁よりなるものであって、それらが本件審判請求の予告登録日(平成18年9月1日)前3年以内に当たる「2003.SEP」(平成15年9月)又は「2005.MAY」(平成17年5月)版であって、その各裏表紙(いずれも7枚目)の左下に本件商標と社会通念上同一の構成態様よりなる被請求人使用商標が表示されているとしても、これらのいずれも役務「名刺の印刷」に使用されているとみるのが自然であり、被請求人使用商標が取消請求に係る役務に使用された事実を客観的に裏付ける証拠と解することはできない。
また、役務「電子計算機を用いて行う情報処理」は、かかるマニュアルの頒布によって一般的に提供される役務とは考え難い。
(ク)以上のとおり、被請求人提出の乙各号証は、いずれも、本件商標が取消請求に係る指定役務に使用されたことを証明し得たものということはできず、また、被請求人が取消請求に係る役務について、本件商標の使用をしていないことについて、正当な理由があることを立証したということもできない。
(4)むすび
したがって、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、取消請求に係る指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機を用いて行う情報処理,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与」について使用していなかったものというべきであるから、商標法第50条の規定に基づき、その指定役務中、上記役務についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標




審理終結日 2008-03-13 
結審通知日 2008-03-13 
審決日 2008-03-25 
出願番号 商願平11-83893 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Z42)
最終処分 成立  
前審関与審査官 水落 洋末武 久佳 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 鈴木 修
鈴木 新五
登録日 2001-08-17 
登録番号 商標登録第4499988号(T4499988) 
商標の称呼 サイバーネット、サイバー 
代理人 中山 俊彦 
代理人 峯 唯夫 
代理人 松田 三夫 
代理人 下坂 スミ子 

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