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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z15 |
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管理番号 | 1177734 |
審判番号 | 取消2007-300438 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2007-04-11 |
確定日 | 2008-04-21 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4334711号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4334711号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4334711号商標(以下「本件商標」という。)は、「スマートミュージック」の文字を標準文字で表してなり、平成11年2月5日に登録出願され、第15類「楽器,演奏補助品」を指定商品として平成11年11月12日に設定登録されたものである。 2 請求人の主張の要点 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。 (1)請求の理由 請求人が調査したところ、本件商標は継続して3年以上日本国内において商標権者により本件商標の使用がされている形跡を見出すことはできなかった。 また、本件商標について、専用使用権又は通常使用権の登録もされておらず、使用権者による使用の事実も認められない。 よって、商標法第50条第1項の規定に基づき、本件商標は、その登録を取り消すべきものである。 (2)弁駁の理由 被請求人の答弁の内容及び使用証拠である乙第1号証には重大な疑義があり、正当な使用を主張する根拠がないものといわなければならず、請求人はこれを争う。その理由は以下のとおりである。 (ア)請求人会社の歴史と経緯 請求人会社は、主として音楽の伴奏補助や楽譜作成支援のソフトウェアを開発・製造・販売する会社であり、1990(平成2)年11月27日に「Vivace,Inc.」の商号で設立された。その後、1992(平成4)年12月31日付で他社を合併し「Coda Music Technologies, Inc.」、その後「Coda Music Technology, Inc.」と、2000(平成12)年10月19日付けで「Net4Music Inc.」と商号変更し、さらに2002(平成14)年5月22日付けで現在の商号である「MakeMusic! Inc.」に変更された。請求人の米国代理人がミネソタ州の関係当局の記録を基に作成した請求人会社の履歴についての書面を提出する(甲第1号証)。 請求人会社は、米国において多数の商標の登録を受けたが、そのうち、本件に関係する商標としては以下のものが挙げられる。 i)米国商標登録第2396761号「SmartMusic/STUDIO」(甲第2号証) 1998(平成10)年4月1日出願 2000(平成12)年10月24日登録 2007(平成19)年7月28日消滅 ii)米国商標登録第1542287号「Coda(図形)」(甲第3号証) 1988(昭和63)年1月15日出願 1989(平成1)年6月6日登録 iii)米国商標登録第1903443号「VIVACE」(甲第4号証) 1993(平成5)年9月9日出願 1995(平成7)年7月4日登録 2002(平成14)年7月13日消滅 iv)米国商標登録第1971641号「INTELLIGENT ACCOMPANlMENT」(甲第5号証) 1993(平成5)年9月9日出願 1996(平成8)年4月30日登録 ところで、被請求人会社は、かつて請求人会社の日本における正規輸入代理店であり、請求人会社の製造販売する音楽伴奏補助用のソフトウェア及び関連機器を輸入販売していたが、遅くとも2000(平成12)年頃までに代理店契約は解消されている。 (イ)乙第1号証の記載 乙第1号証の両面上部に記された標題「SmartMusic/STUDIO」の表示は、上記甲第2号証に示される請求人の米国の登録商標と同一であることは明らかである。 その下には「Vivace Intelligent Accompaniment」と表示されているところ、「Vivace」については、被請求人がわが国の登録商標第4231197号(平成8年3月18日出願、平成11年1月14日登録、甲第6号証)として登録を受けているのは事実であるが、実は請求人会社がすでに米国で登録を受けたものである(甲第4号証)。 また、「Intelligent Accompaniment」も請求人の米国登録商標である(甲第5号証)。この標題部分は、請求人のカタログに記載されたものをそのまま流用したものと解され、「Vivace」については、被請求人は、わが国で出願されていないのを奇貨として登録を受けたと解するのが合理的である。 さらに、乙第1号証の裏面右下部には、請求人会社の旧名称である「CodaMusic Technology」と菱形の内部にCodaのデザイン文字が配された図形が記載されている。この図形は請求人の米国登録商標であり(甲第3号証)、また、「CODA MUSIC TECHNOLOGY」が社名として使用されていたのは2000(平成12)年10月までであることは前述のとおりであって、その後は使用されていない。 さらに、乙第1号証に記載されている商品のうち、少なくともソフトウェア媒体(Smart Music Studio用CD-ROM)については、請求人会社の商品であることは明らかであるが、請求人は当該ソフトウェア媒体を2000(平成12)年以降は製造販売していない。 被請求人は、答弁書において「乙第1号証は、2006年4月1日に被請求人自身の販売店舗・被請求人の全国特約店又は全国小売店を経由して一般に配布しているものである」と述べているが、2000(平成12)年以降製造販売されていない製品を、「NEW」という表示を付して新製品のカタログとして配布するとは取引の経験則上到底考えられず、また、2000年以降使用されていない「CODA MUSIC TECHNOLOGY」の文字が2006年4月1日発行の広告チラシに記載されていることは、他人の名称を許可なく使用したものであることは別としても極めて不可解である。 すなわち、以上の事実は、乙第1号証は、被請求人が請求人の正規輸入代理店であった頃の広告チラシの内容を示していると推認させるものであるといわざるを得ない。 (ウ)乙第1号証の真実性 乙第1号証は、両面カラーコピーのものであるが、表面最下部に記された「※表示価格は税別、2006年4月1日現在のものです。」という記載は、他の文字と比較して明らかに字体が異なる。このことは、2006年4月1日付という趣旨を示したと思われる裏面右最下部の「CM-06-4-1」の記載も同様である。 請求人は、乙第1号証の成立性・真実性を争う。被請求人会社が1999(平成12)年頃までは請求人会社の正規輸入代理店であった事実、乙第1号証に記載の商品が2000(平成12)年以前は製造されていた事実、及び乙第1号証に記載された請求人の米国登録商標の前記使用状況から、当該チラシの内容は、被請求人会社が請求人会社の正規輸入代理店であった当時のものであることを強く推認させるものである。 過去のチラシをスキャンして前記のような日付を示す表示を追加してチラシを作成することは、現在普及しているコンピュータやプリンタを使用すれば極めて容易に可能である。被請求人が、自らの主張を真実と主張するのであれば、乙第1号証に係る広告チラシの印刷者、印刷日時、印刷部数、配布先及び配布部数を明確な証拠をもって証明すべきである。 また、被請求人が請求人の正規輸入代理店であった時期の広告チラシも併せて提出すべきである。請求人はこれらの点につき、被請求人の釈明を求める次第である。 (エ)商標の使用 乙第1号証の広告チラシの真実性に疑義があることは上述のとおりであるが、これに加えて、乙第1号証の広告チラシに「スマートミュージック」の文字が記載されていることのみをもって本件商標の使用ということができるか極めて疑問であるといわなければならない。 乙第1号証に記載された商品であるCD-ROM、マイクロフォン、フットペダル、ボーカルマイクロフォンのうち、「SmartMusic」の表示が商品自体に認められるのはCD-ROMのみである。当該CD-ROMは、伴奏ソフトウェアの媒体であり、商標法上は第9類に属する商品「電子応用機械器具及びその部品」であるため、第15類「楽器,演奏補助品」についての使用を証明したことにはならない。同様に楽器の音を拾うマイクロフォンや歌声を拾うボーカルマイクロフォンも第9類「電気通信機械器具」に属する商品である。 「フットペダル」については、「楽器」の範疇に属する「フットペダル」とは、例えば電子オルガンに接続して音響効果を調整するものを意味するものと解すべきところ、乙第1号証に示される「フットペダル」は、同表面の左上の写真にも示されているとおり、コンピュータに接続してソフトウェアの機能を調節するものと認められる。商標法施行規則別表にも示されるとおり、第15類「楽器」は洋楽器・和楽器等あるいはその楽器等に直接使用する部品・附属品を意味するものと解すべきであって、ソフトウェアの機能を調節するためのフットペダルは第9類に属する商品と解すべきである。 「演奏補助品」についても、商標法施行規則別表には、「楽譜台、指揮棒、電気又は電子楽器用フェイザー」と例示されているように、まさに演奏を補助するためのものであって、コンピュータ処理により自動的に伴奏を補助するものを意味しない。 請求人は、答弁書において「本件ヴォーカル又は楽器の奏者のための自動伴奏装置は本件審判請求で取消を求められている商品「楽器,演奏補助品」の両方の範囲に属し、本件商標「スマートミュージック」を商品「楽器,演奏補助品」に使用しているのは明らかである」と主張しているが、このような主張は商品の解釈を誤ったものといわざるを得ない。 (オ)むすび 以上述べたとおり、被請求人の提出に係る乙第1号証は、その成立性・真実性が極めて疑わしいものであり、かつ、本件商標をその指定商品である第15類「楽器,演奏補助品」について日本国内で3年以内に使用した事実を何ら立証するものとはいえない。 なお、請求人との代理店契約が終了した後においても請求人の商標を自らの広告チラシに記載し、のみならず、自らを「総輸入元」として記載して配布したのが事実であるとすれば、依然として請求人の代理店であるかのごとく消費者に誤認を生ずるものであって許されることではないことを付言するものである。 3 被請求人の答弁の要点 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出している。 (1)被請求人は、日本における音楽文化の向上のために世界で選ばれた楽器をさらに厳選した上で、世界中から管楽器・弦楽器・打楽器及びそれらのアクセサリー類を選りすぐり輸入販売し続けている。このような営業活動の中で、日本の奏者の技術力向上のため有効な練習が可能となる、ヴォーカル又は楽器の奏者のための自動伴奏装置に対して本件商標を使用しているものである。 (2)本件商標「スマートミュージック」を使用している広告チラシ(乙第1号証)を提出する。乙第1号証は、2006年4月1日に被請求人自身の販売店舗・被請求人の全国特約店又は全国小売店を経由して一般に配布しているものである。 本件商標「スマートミュージック」は、乙第1号証の両面の上部に表示されており、上述のとおり、ヴォーカル又は楽器の奏者のための自動伴奏装置に商標として使用している。 本件商標を使用しているヴォーカル又は楽器の奏者のための自動伴奏装置は、ヴォーカル又は楽器の奏者に合わせてどのようなキーにでも移調することが可能であり、テンポも自由に変更することが可能であり、さらに、内蔵されたピアノ・チューナーにより発声練習・音取り又は楽器のチューニングをすることも可能である。 このことから、上記ヴォーカル又は楽器の奏者のための自動伴奏装置は本件審判請求で取消を求められている商品「楽器,演奏補助品」の両方の範囲に属し、本件商標「スマートミュージック」を商品「楽器,演奏補助品」に使用しているのは明らかである。 以上から、乙第1号証を見れば、本件商標の使用は本件審判請求の予告登録前3年以内であることはいうまでもなく明らかであり、請求人の主張は認められない。 (3)本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に指定商品「楽器,演奏補助品」について商標権者たる被請求人が日本国内において使用している事実が明らかに存在するので、請求人の主張事実を認める理由がない。 したがって、本件審判請求は成り立たない。 4 当審の判断 (1)被請求人は、本件商標をヴォーカル又は楽器の奏者のための自動伴奏装置(以下「本件商品」という。)について使用している旨主張し、その使用を立証する証拠として乙第1号証を提出しているので、その証拠について検討する。 (ア)乙第1号証は、両面印刷の1葉からなる本件商品の広告用チラシの写し(以下「本件チラシ」という。)と認められるところ、その表面及び裏面の上部表題部分と思しき四角形内には、大きく「SmartMusic」の文字(「Music」の文字は筆記体風に表されている。)、「STUDIO」の文字、及び「Featuring Vivace Intelligent Accompaniment」の文字が3段に横書きされており、その四角形にかかるように配された赤色の楕円形内には「スマートミュージック」の文字が白抜きで記載されている。この「SmartMusic」及び「スマートミュージック」の文字は、本件商標と社会通念上同一とみて差し支えないものである。 (イ)本件チラシには、本件商品について写真と共に説明が付されており、その説明によれば、本件商品は、CD-ROM、マイクロフォン、フットペダル、ボーカルマイクロフォンから構成されており、該CD-ROMは、音楽伴奏用のソフトウェアが組み込まれており、コンピュータを通じ、マイクロフォン、フットペダル及びボーカルマイクロフォンと共に作動させることにより、ヴォーカル又は楽器の奏者に合わせて伴奏や音合わせを行うことができるというものである。 その説明から明らかなように、本件商品自体は、楽器の奏者によって演奏されるものではなく、「音楽を演奏するために用いられる器具」である「楽器」や「音楽を演奏する際に使用される器具で楽器以外のもの」である「演奏補助品」とはいい難いものである。 つまり、本件商品を構成するCD-ROMは、音楽伴奏ソフトウェアの媒体であり、政令で定める商品及び役務の区分第9類中の「電子応用機械器具」の範疇に属する商品といえるものである。同様に、マイクロフォン及びボーカルマイクロフォンは同区分第9類中の「電気通信機械器具」の範疇に属する商品といえるものである。 また、フットペダルは、楽器そのものに接続して楽器を調整するものではなく、コンピュータに接続してソフトウェアの機能を調整するための器具というべきものであって、いわば同区分第9類中の「電子応用機械器具の部品・附属品」の範疇に属すべき商品といえるものである。 (ウ)本件チラシには、表面右下隅に「※表示価格は税別、2006年4月1日現在のものです。」と表示され、また、裏面右下隅にも「CM-06-4-1」の表示があり、この「CM-06-4-1」が2006年4月1日を意味するものであると推認される。 しかしながら、これらの表示に用いられている活字体は、本件チラシの本文に用いられている活字体と明らかに異なるものであり、従前存在していた本件チラシに後から便宜的に追加印刷したものといえなくもない。 そして、本件チラシが2006年4月1日頃に発行され、頒布されたことを示す客観的な証左は一切提出されていない。 (エ)その他、本件商品が本件審判の請求の登録前3年以内に取引されていたことを具体的に示す証左は一切ない。 (2)以上検討したところによれば、本件商品は本件商標の指定商品「楽器,演奏補助品」の範疇に属する商品とはいえないものであり、また、本件チラシ自体も信憑性に乏しいものといわざるを得ないから、被請求人の提出に係る証拠によっては、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において商標権者、通常使用権者のいずれかが本件商標をその指定商品について使用していたことを立証したものとは認められないし、また、その使用をしていないことについて正当な理由があることを立証したものとも認められない。 (3)したがって、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品について使用されていなかったものというべきであるから、商標法第50条の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-02-20 |
結審通知日 | 2008-02-25 |
審決日 | 2008-03-10 |
出願番号 | 商願平11-9114 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Z
(Z15)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 和田 恵美 |
特許庁審判長 |
林 二郎 |
特許庁審判官 |
鈴木 修 杉山 和江 |
登録日 | 1999-11-12 |
登録番号 | 商標登録第4334711号(T4334711) |
商標の称呼 | スマートミュージック、スマート |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 原 隆 |
代理人 | 田島 壽 |
代理人 | 八田国際特許業務法人 |