• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y010509
審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない Y010509
管理番号 1172888 
審判番号 不服2005-65106 
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-29 
確定日 2007-11-20 
事件の表示 国際登録第821155号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「TEMPO」の文字よりなり、第1類「Chemical products for use in industry and science,laboratory reagents,reagents and media for monitoring and detecting contaminants in industrial,agri-food and cosmetic products.」、第5類「Reagents and media for monitoring and detecting contaminants in pharmaceutical products.」及び第9類「Scientific apparatus and instruments for monitoring and detecting contaminants in industrial,agri-food,cosmetic and pharmaceutical products;diagnostic apparatus and instruments for non-medical purposes.」を指定商品として、2003年(平成15年)10月16日を国際登録の日とするものである。
その後、指定商品については、平成17年3月8日付けの手続補正書によって、第1類「Laboratory reagents,reagents and media for monitoring and detecting contaminants in industrial,agri-food and cosmetic products.」、第5類「Reagents and media for monitoring and detecting contaminants in pharmaceutical products.」及び第9類「Scientific apparatus and instruments for monitoring and detecting contaminants in industrial,agri-food,cosmetic and pharmaceutical products;diagnostic apparatus and instruments for non-medical purpose.」に補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由
原査定において、本願商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号及び同第11号に該当する旨認定、判断して、本願を拒絶したところ、その理由は次のとおりである。
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
試薬などに使用される化学物質『2,2,6,6テトラメチルピペリジンオキシド』を『TEMPO』と略称していること(生化学辞典第3版第3刷1999年2月15日 株式会社東京化学同人発行。第936頁の『2,2,6,6-テトラメチルピペリジンオキシド誘導体』の項目中『2,2,6,6-テトラメチルピペリジンオキシド(TEMPO)』、『N-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン誘導体,TEMPO誘導体ともいう。』との記載)からすれば、本願商標を、その指定商品中、第1類及び第5類に係る指定商品について使用するときは、単に商品の原材料又は品質を表示するにすぎないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、前記以外の商品について使用するときは、商品の品質について混同を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
2 商標法第4条第1項第11号について
本願商標と登録第4146259号商標(以下「引用商標」という。)とは、商標が同一又は類似するものであって、指定商品も同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
第3 当審の判断
まず、本願商標が、商標法第4条第1項第11号に該当するか否かについて判断するに、引用商標の商標権は、商標登録原簿の記載によれば、指定商品中「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤」について登録を取り消すべき旨の審決が確定し、その確定審決の登録が平成18年3月2日にされているものである。
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定の拒絶の理由は解消した。
次に、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて判断する。
1 証拠調べ通知
本願商標が上記条項に該当するか否かについて、当審において職権証拠調べを行い、商標法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項に基づいて、請求人に通知し、期間を指定して意見を述べる機会を与えたところ、その内容は以下のとおりである。
(1)当審において、「TEMPO」の語に関して行った職権による証拠調べによれば、以下の事実が認められる。
(ア)「広栄化学工業株式会社」のウエブサイト内の「TEMPOカタログ」(http://www.koeichem.com/download/tempo.pdf)に、「【TEMPOの性状】化学名:2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシ,フリーラジカル」、「【TEMPOによる酸化反応】1.概論 近年、TEMPOを用いた酸化反応が脚光を浴びている。よく知られているような酸化反応に比べ、比較的穏やかな反応条件での酸化が可能である。」及び「一方、TEMPOを触媒としてではなく、化学量論量用いる反応例も報告されている。この場合、オキソアンモニウム塩を調製して酸化反応を行う。共酸化剤を使用しないで済むというメリットがあり、TEMPOは回収再使用する方法が採られている。」の記載がある。
(イ)「山形大学」のウエブサイト(http://syllabus-pub.yz.yamagata-u.ac.jp/amenity/ChemicalSample/ChemicalSampleWeb.aspx?nChemicalSampleID=9101)に、「TEMPO 試料」、「試料名(容器のラベル)TEMPO」、「保管場所 C1講座(磁気共鳴計測グループ測定室)」及び「フリーラジカルや活性酸素の研究に用いられる試薬である。」の記載がある。
(ウ)「株式会社創造化学研究所」のウエブサイト(http://www.icc-ts.com/chemical_products.html)に、「弊社は、・・・(中略)・・・下記製品群を販売しております。」及び「TEMPO:4-Amino-(2,2,5,5-tetramethylpiperidine-N-oxide);(有機酸化触媒)」の記載がある。
(エ)「ケムステニュース?化学ニュースサイト?環境対策と経済再生を両立する電解酸化反応、創造化学が実用実験」のウエブサイト(http://chemstation.livedoor.biz/archives/29558911.html)に、「TEMPO酸化自体、TEMPOが触媒量であり温和な条件で、さらに安価に収率よく酸化できる為、大学の研究室などでも最近大量合成の際多く使われています。Swern酸化なども大量合成に用いられます・・・(後略)・・・」の記載がある。
(オ)「新技術情報提供サービス」のウエブサイト(http://www.s-iri.pref.shizuoka.jp/tech/paper/17h001.htm)に、「セルロースおよび既存セルロース誘導体類の化学改質」の題名のもと「筆者らは、天然セルロースを水に分散させ、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル)触媒酸化すると、ミクロフィブリル表面にカルボキシル基、アルデヒド基を高密度で導入可能であることを見出した。」及び「紹介者 静岡県冨士工業技術センター 製紙工業技術スタッフ」の記載がある。
(カ)「東京大学産学連携本部」のウエブサイト(http://www-db.ccr.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/ccr_usr/detail.cgi?num=2265&query=%a3%d4%a3%c5%a3%cd%a3%d0%a3%cf&sub_query=)内の「東京大学産学連携提案テーマデータベース」において、「セルロースのTEMPOの触媒酸化による機能化」(http://www-db.ccr.u-tokyo.ac.jp/ccr_usr/data/2265.html)の題名のもと、「セルロースを水に分散させ、触媒量のTEMPOとNaBrおよび酸化剤である次亜塩素酸ナトリウムを加えることにより、セルロースを常温、短時間、水系媒体で、有機溶剤を用いずにセルロースを選択的に酸化して化学改質できることを見出した。」及びその研究者として「教授 磯貝 明 大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻」の記載がある。
(キ)ウエブサイト(http://www.cmcbooks.co.jp/books/t0381.php)内の書籍「株式会社シーエムシー出版 キチン・キトサンの開発と応用」の紹介ページに「5章 化学修飾分野 1.キチンのTEMPO酸化による6-オキシキチン(キトウロン酸)の調製(加藤友美子,磯貝 明)」の記載がある。
(ク)ウエブサイト(http://www.cmcbooks.co.jp/books/b0806.php)内の書籍「株式会社シーエムシー出版 有機分子触媒の新展開」の紹介ページに「第22章 有機ニトロキシルラジカル型高活性アルコール酸化触媒1-Me-AZADOの開発(岩渕好治)・・・(中略)・・・4.アルコール酸化能の発見とTEMPO酸化の発展 5.TEMPO酸化の特性と反応機構」の記載がある。
(ケ)「sigma-aldrich.co.jp」のウエブサイト(http://www.sigma-aldrich.co.jp/aldrich/ROC/first.htm)に、「有機合成用樹脂試薬」の題名のもと「アルゴノート合成用樹脂 MP-TsO-TEMPO」の記載がある。
(2)前記(1)で認定した事実から、化学の分野において、「TEMPO」は「2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシ」を意味していること、及び「TEMPO」を原料とする試薬が、企業の研究所や大学の研究室などにおいて、比較的穏やかな酸化反応を見るための試薬として一般に使用されていることが窺われる。
そうとすれば、「TEMPO」の文字よりなる本願商標を、本願の指定商品中「TEMPOを用いた試薬」に使用するときは、単に商品の原材料、品質を表示するにすぎないものであり、「TEMPOを用いた試薬」以外の商品に使用するときは、商品の品質に誤認を生じさせるおそれがあるものである。
2 請求人の意見に対する判断
(1)請求人は、「TEMPO」が、「演奏速度、調子」の意味を有する語として一般に馴染まれていることを理由として、本願商標からは「演奏速度、調子」の意味合いを生ずる旨主張する。
しかしながら、「TEMPO」が、化学の分野において、「2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシ」を意味する語として一般に使用されている実情があることは、上記1で述べたとおりである。
しかして、本願の指定商品には、化学の分野に属する商品が包含されていることを考慮すれば、本願商標に接する需要者は、「TEMPO」の文字から「2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシ」を認識するというべきである。
(2)請求人は、本願商標が現実に使用されていることを理由として、本願商標には識別力がある旨主張する。
しかしながら、本願商標の使用の事実を証するために提出されている証拠は、英語のパンフレット(甲第1号証)のみであるから、係る証拠によっては、本願商標が、我が国において、取引者・需要者間で広く認識されたとはいい難く、商標法第3条第2項の要件を満たすものとは認めることができない。
(3)請求人は、アメリカ国、OHIM及びフランス国において、本願商標と同一綴りの商標が登録された例を挙げて、本願商標の登録も同様に認められるべきである旨主張する。
しかしながら、出願に係る商標が登録要件等を具備しているか否かについては、当該出願に係る国の法令及びその国の商品取引の実情等に照らして判断がなされるべきものであるところ、諸外国の商品取引の実情と、わが国のそれとが同一のものと解釈しなければならない事情が存するものとは認められないから、諸外国の登録例をもって、わが国における本願商標の登録性を述べる請求人の主張は妥当でなく、採用の限りでない。
(4)請求人は、本願商標の需要者は専門家であるから、本願商標を化合物の名称として認識することはあり得ない旨主張する。
しかしながら、化学の専門家は、「TEMPO」が試薬であるとの知識を有していることから、むしろ、一般人以上に、本願商標を化合物の名称として認識しやすいというべきである。
3 結論
以上のとおり、本願商標が同法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当であるから、原査定を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-06-11 
結審通知日 2007-06-21 
審決日 2007-07-11 
国際登録番号 0821155 
審決分類 T 1 8・ 272- Z (Y010509)
T 1 8・ 13- Z (Y010509)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 直樹 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 井岡 賢一
長澤 祥子
商標の称呼 テンポ 
代理人 加藤 和彦 
代理人 稲木 次之 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ