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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y05 |
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管理番号 | 1172532 |
審判番号 | 無効2006-89039 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-03-31 |
確定日 | 2007-02-09 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4888251号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4888251号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4888251号商標(以下「本件商標」という。)は、「HECTEF」の文字を標準文字で書してなり、平成16年10月5日に登録出願され、第5類「診断用試薬」を指定商品として、同17年8月19日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第89号証を提出した。 1.請求の理由 (1)商標法第4条第1項第7号 本件商標「HECTEF」は、審判請求人により、本件商標の出願日前の平成7年1月以降、請求人の英文名の略称として継続して使用されている。また、被請求人は、請求人の設立当初より付属機関「スタンダードレファレンスセンター」(以下「SRセンター」という。)として存在しており、その代表者「人物A」は、請求人の常務理事として長期間在職していた。 そして、現在でも、請求人やこれが法人化された有限責任中間法人HECTEF及び前記SRセンターが法人化された被請求人(有限責任中間法人HECTEF スタンダードレファレンスセンター)は、HECTEFグループとして事業活動を継続している。 以上の事実が存在するにも拘わらず、被請求人は、請求人が、商標「HECTEF」及び「HECTEF」を含むロゴマークの商標登録を受けていないことを奇貨として、被請求人名義で出願し、本件商標の登録を受けたことは、請求人に対する背任行為に等しく、その登録を認めることは極めて違法性が高く、法的妥当性を欠き穏当ではないから、本件商標は公序良俗に反するものとして、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第10号又は同第15号 本件商標は、これを含むロゴマークも含め、請求人設立直後の平成7年1月に制定され、その後、請求人パンフレットをはじめ、平成7年以降ほぼ毎年1回継続的に発行され病院・臨床検査薬会社その他に頒布されてきた請求人ニュースレター等に、また、平成11年以降は請求人ホームページに於いても、継続して使用されている。更に、請求人は、事業として「臨床検査用標準物質(較正用標準物質)」を頒布・販売しているが、これは、測定基準に用いる較正用標準液類であり、臨床検査の分析反応には直接関与せず、濃度或いは活性値に演算するときの較正用として使用されるもので、単独では化学定量検査を行うことが不可能な為、「体外診断用医薬品」からは外されている商品であり、その流通経路も極めて狭い分野であり、その様な環境に於いて、前記のとおり継続使用されてきた本件商標は、本件商標の出願前に、既に、請求人を表す商標として広く知られるに至っており、周知性を獲得していると認められる。 そうすると、本件商標は、請求人の未登録周知商標と同一性を有し、その指定商品「診断用試薬」は、請求人の頒布・販売に係る「臨床検査用標準物質」と明らかに類似する商品であるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。 また、仮に同号に該当しないとしても、被請求人が、本件商標を登録し、これを使用することは、請求人との間で明らかに出所の混同を生じるものであり、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。 2.弁駁の理由 (1)弁駁の概要 被請求人は、答弁書を提出し、請求人提出の審判請求書に於ける「請求の理由」に対して反論を試みるかのようであるが、仮に、その反論を首肯するとしても、本件商標が、商標法第4条第1項第7号及び同第10号又は同第15号に該当することは明らかであり、本件商標登録は、無効を免れないものである。 (2)答弁書に対する反論 被請求人が、乙第1号証、乙第10号証及び乙第11号証で立証する本件商標に関する事実の経緯は、特に争わない。尚、乙第7号証ないし乙第9号証に関しても、積極的には争わない。 有限責任中間法人HECTEFが請求人の業務を全て承継することに対し、被請求人が同意しない旨の文書を送付した事実(乙第2号証)は、認めるが、その前後に於ける請求人と被請求人の関係が良好であったか否かは、請求人の主張する無効理由の成否とは無関係である。即ち、請求人と被請求人の協力関係が良好であろうが良好でなかろうが、本件商標が、請求人主張の無効理由を有していることに変わりはない。 また、任意団体である請求人が、商標権者となりえないことを、請求人が周知しているか否かも、本件無効理由の成否とは関係が無い。 更に、被請求人が、請求人と共同で行っていた標準物質関連の事業の約3分の1に相当する分を発足時から現在に至るまで独自で行っているとしても、本件無効理由が無くなるわけではない。即ち、仮に被請求人の主張をそのまま認めるとしても、被請求人は、事業の全体ではなく、約3分の1を行うにすぎないのであるから、単独で本件商標を受ける正当な理由を有しているわけではない。 被請求人は、第三者による登録若しくは使用を防止するために本件商標の登録出願を行ったと主張するが、それは、あくまで被請求人の主観的な問題で、これを客観的に裏付ける証拠は、全く提出されていない。 また、被請求人は、本件審判請求が、被請求人との関係が悪化したとの請求人の曲解により為されたものと主張するが、請求人と被請求人の関係が如何なるものであろうとも、本件商標が客観的に無効理由を有することには変わりがない。なお、請求人と被請求人が従来どおり商取引を行っていること(乙第3号証)は、請求人も争わない。 被請求人は、本件商標の維持に関して、乙第4号証ないし乙第6号証を提出し、優れた製品を供給してきた点に於いて、主たる事業を行ってきた被請求人の貢献が大であると主張するが、被請求人の貢献が大であろうが無かろうが、やはり、それが無効理由の成否に与える影響はない。 請求人は、被請求人が請求人の同意或いは承諾を得ることなく、単独で本件商標を登録した違法性を問題にするのであって、被請求人の貢献度がどの程度であったとしても、その違法性を阻却することはできない。 重ねて、被請求人は、第三者による登録若しくは使用を排除する以外の意図を以て本件商標登録を受けたものでないことは、その登録以降現在に至るまで、請求人に対し、商標使用の中止を申し入れておらず、容認しているとおりであると主張するが、その様な事実をもって、被請求人の主観的な意図を客観的に認定することは困難と考えられるし、また、将来に於いて、その様な状態が保持されるという、例えば使用権の設定或いは許諾などの法的な保証も全く為されていない。 なお、請求人と有限責任中間法人HECTEFが、法的に別個の団体であることは勿論である。また、被請求人が答弁書で主張する「時系列経緯」は、本件無効理由の成否には直接関係が無いものと考えられる。 (3)請求人の主張 被請求人は、本件商標の登録を受けたのは、第三者による登録若しくは使用を防止するためであると主張し、また、本件商標の維持について被請求人の貢献が大であるから、その登録が正当化されると主張するかのようであるが、仮に、その様な事実が認められるとしても、本件商標が、商標法第4条第1項第7号及び同第10号又は同第15号に該当し、無効理由を有している点に関しては、何ら影響を与えるものではない。 即ち、審判請求書の請求の理由でも主張したが、被請求人は、請求人の付属施設として定められ(甲第69号証)、被請求人代表者「人物A」が、付属施設SRセンターのセンター長に任命されたものである(甲第70号証、甲第3号証参照)。その後、請求人は、付属施設SRセンターを伴い、本件商標を継続使用して事業を展開してきたが、平成15年12月11日に、当時、請求人の常務理事且つSRセンターのセンター長であった被請求人代表者「人物A」は、請求人の議事・承諾・同意その他を全く得ることなく、本件商標と同一の商標を登録出願し(甲第66号証)、特許庁から、請求人の存在を理由に、商標法第4条第1項第7号に該当するとの拒絶理由通知を受けている(甲第67号証)。 そして、平成16年7月12日開催の第92回理事会で、請求人と被請求人の関係についてグループとして存続する旨の説明が為され、「福祉・医療技術振興会(HECTEF)綱領」の制定に関し、商標等の保全措置を事務局で追加検討することが付記され(甲第76号証)、この議事録には、被請求人代表者「人物A」が署名人として押印している。また、平成16年9月13日開催の第93回理事会でも、その議事録に、被請求人代表者「人物A」は署名人として押印をしている。更に、平成16年10月25日開催の第94回理事会でも、被請求人代表者「人物A」は、署名人として議事録に押印を為している。 本件商標の登録出願は、この第93回理事会と第94回理事会の間の平成16年10月5日に為されたものである。 被請求人代表者は、第91回ないし第94回理事会に常務理事として出席し、いずれも署名人として議事録に押印している。そして、これらの理事会に於いては、商標等の保全措置や被請求人に関する議論が種々為されているにも拘わらず、被請求人代表者である「人物A」からは、商標登録出願を為すことにつき了解を得るための提議、あるいは同出願を行ったことに関する報告も一切為されていない。被請求人主張のとおり、被請求人が、第三者の登録や使用を排除する目的で本件商標の登録出願を行ったのであれば、事前に請求人あるいは同理事会の承諾を得るか事後的にでも報告が為されるべきであるにも拘わらず、被請求人代表者は、その様な行為を一切為していない。 そればかりか、被請求人代表者は、かつて個人名で本件商標を出願し、特許庁から商標法第4条第1項第7号に該当する旨の拒絶理由通知を受け取った経緯がある(甲第66号証及び甲第67号証)。 以上、被請求人が本件商標を登録出願するに当たっては、その帰属に関し、請求人と十分協議調整を図ったうえで行うべきところ、被請求人は、何らの承諾・同意を得ることなく出願し登録を受けたことは、請求人の本件商標を使用する適正な事業を妨害する意図をもった剽窃的な盗用行為であり、同代表者「人物A」に関しては請求人に対する背任的な行為に当たり、極めて違法性の高い登録であり、被請求人の主観的意図が如何なる内容であろうとも、客観的には、公序良俗に反し、商標法第4条第1項第7号に該当することは明らかである。 また、被請求人は、請求人と共同で、本件商標を使用する標準物質関連の事業の約3分の1に相当する分を発足時から現在に至るまで独自で行っていると主張し、更に、本件商標の維持に多大なる貢献を行ったとも主張しているが、奇しくも、被請求人が主張するとおり、被請求人は、本件商標を使用する標準物質関連事業を、全て単独で独自に行っているわけではなく、その言葉を借りれば、逆に約3分の2は、請求人と共同で行っていたわけであり、本件商標が獲得した周知性は、請求人と被請求人あるいは有限責任中間法人HECTEFをも含めた、いわばHECTEFグループの総体として獲得されたものと認められる。そうであれば、当該グループとは、明らかに完全な同一性を有しない被請求人のみで、本件商標を出願し、これを登録し、商標権として所有することは、当該グループとの関係で、明らかに出所の混同を生じさせるおそれがあるものであり、その点に関しては、被請求人が現実にどれだけ独自で事業を行いあるいは本件商標の維持に多大な貢献を行ってきたかは、全く関係が無いことである。 したがって、本件商標は、請求人の未登録周知商標と同一で、かつ指定商品も類似しているから、商標法第4条第1項第10号に該当し、仮に同号に該当しないとしても、請求人との間で明らかに出所の混同を生じるものであり、同第15号に該当するものである。 (4)まとめ 以上、本件商標は、その登録が被請求人に為されたことに関し、公序良俗を害することが明らかで、商標法第4条第1項第7号により無効とされるべきであり、かつ、その周知性により、同第10号あるいは同第15号によって無効とされるべきである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。 1.答弁の理由 被請求人が、商標「HECTEF」を出願したのは、平成16年10月5日である(乙第1号証)。有限責任中間法人HECTEFが平成17年1月24日に法人登記され、それが請求人の業務を全て継承することに対し、被請求人から同意できない旨の文章を送付した平成17年3月3日(乙第2号証)までの間は、請求人と被請求人とは良好な協力関係にあった。 商標については、任意団体である請求人が登録できないことは、請求人は周知している。また、請求人も同意の上で、被請求人は、請求人と共同で行っていた標準物質関連の事業の約3分の1相当分を発足時から現在に至るまで独自で行っている。そこで、被請求人は、第三者による登録もしくは使用を防止するために、本件商標「HECTEF」を商標出願したものである。 本事件の請求人による無効審判申立ては、被請求人との関係が悪化したと請求人がかってに曲解したために行ったものであるが、被請求人は関係が悪化したとはみなしておらず、従来どおり請求人と商取引を行い現在に至っている(乙第3号証)。また、「HECTEF」なる記号は請求人の理事会で提案されたものであるが、その維持においては、被請求人は国家標準研究所に認定され(乙第4号証)、さらにその製品はJCTLM委員会の国際標準に認定される(乙第5号証)、学協会の発売元になる(乙第6号証)など優れた製品を供給してきた点において、主たる事業を行ってきた被請求人の貢献は大である。なお、被請求人が、上記以外の意図をもって商標出願したものでないことは、本件商標「HECTEF」が平成17年6月29日に登録査定されて以降現在に至るまで、請求人に対し、商標使用の中止を申し入れてはいないし、容認しているとおりである。なお、有限責任中間法人HECTEFと請求人とは法的に全く別個の団体である。 2.時系列経緯 (1)本件商標に該当する文字及びそれを含むロゴマークは、請求人の証拠説明にあるとおり、請求人設立直後の平成7年1月に当時の福祉・医療技術振興会の理事会で定めたものであるが、それを維持してきたのは事業主体者である被請求人の貢献によるものである。 (2)被請求人は平成16年4月8日、任意団体である福祉・医療技術振興会から分離し、有限責任中間法人HECTEF スタンダードレファレンスセンターとして法人登記した(乙第7号証)。 (3)平成16年10月5日、被請求人は本件商標「HECTEF」を出願した(乙第1号証)。 (4)平成17年1月24日に有限責任中間法人HECTEFが法人登記されたが(乙第8号証)、それとは別個に、請求人は従来の任意団体として現存し、従来の事業を行っている(乙第9号証)。 (5)平成17年3月3日、被請求人から有限責任中間法人HECTEFに対し、協定書拒否通知送付(乙第2号証)。 (6)平成17年6月29日起案日として、「HECTEF」は商標として登録査定され平成17年7月8日に発送目録が特許庁より送付された(乙第10号証)。 (7)平成17年7月28日付で商願2004‐95845商標設定納付受領の通知を受取った(乙第11号証)。 第4 当審の判断 本件商標は、前記のとおり「HECTEF」の文字を書してなるところ、本件審判請求人 福祉・医療技術振興会(以下「請求人」という。)より提出された甲号各証によれば、以下のことが認められる。 (1)請求人の発行に係る甲第4号証「HECTEF NEWS」(1995、11 No.1 創刊号)によれば、「本振興会は、臨床検査における良質で信頼できる検査結果を提供するための総合的精度保証を中心に健康増進、疾病予防、環境改善に関連する技術的研究、病院ボランティア活動の実現に関する方法論の研究と推進などを目的に設立されました。また、本振興会にスタンダード・レファレンス、センター(SRセンター)を付設して、標準物質の作成、標準品の検定等の作業を進めることになりました。」との理事長の巻頭言が記され、当振興会の設立は、平成6年11月16日であると記載されている。以下、甲第5号証ないし甲第15号証によって、「HECTEF NEWS」(1996年10月発行No.2?2005年5月発行No.11 補冊を含む)が継続して発行されていることが認められる。 そして、これらニュースの請求書(甲第17号証ないし甲第32号証)によれば、その発行部数は当初は1000部であったが多いときは6000部印刷されたことが認められる。 (2)甲第69号証「福祉・医療技術振興会設立総会議事録」(平成6年11月16日開催)に添付されている「福祉・医療技術振興会定款」よれば、その第1条(名称)で、「この(法人)は、福祉・医療技術振興会(以下振興会)〔Health Care Technology Foundation(HECTEF)〕という。」と定められており、また、第22条(研究所およびセンターの性格)として「研究所およびセンターは本振興会の付属機関とする。」と定められている。被請求人である当該「スタンダードレファレンスセンター」(以下「SRセンター」という。)が研究所と共に、付属機関であることが明記されている。 そして、議事録をみると、発起人には初代の理事長となった人物B、他6人の氏名が記載されているが、その中に被請求人の代表者である人物A氏も出席発起人として、当該議事録に署名捺印していることが認められる。 さらに、提出された甲第70号証ないし甲第81号証「第1回理事会議事録(平成6年11月16日開催)?第94回議事録(平成16年10月25日開催)」によれば、被請求人の代表者である人物A氏は、各理事会に常務理事の立場で出席し各議事録に署名捺印していることが認められる。 (3)また、甲第15号証、「HECTEF NEWS」(2005年5月発行No.11)によれば、理事長の挨拶の中で「2004年4月8日に『福祉・医療技術振興会』の一部門であった『SRセンター』を一足先に『有限責任中間法人 HECTEFスタンダードレファレンスセンター」として法人化いたしました。そして今回2005年1月24日に本体である福祉・医療技術振興会を、既に「HECTEF」の略称が国内外に広く知られていることから、『有限責任中間法人HECTEF』として法人格を取得いたしました。…… 平成6年11月に発足した福祉・医療技術振興会(HECTEF)は、かねてから懸案であった法人化が実現して新法人である有限責任中間法人HECTEFに継承されました。新法人としての業務は平成17年4月1日から開始されました。(中略)」と記載されている。 (4)甲第83号証によれば、被請求人の代表者である人物A氏は、本件商標の登録出願日(平成16年10月5日)後となる平成17年3月16日付けで「有限責任中間法人HECTEF」宛て退社届けを内容証明郵便物として送付しており、さらに、甲第84号証によれば、平成17年3月18日付けで「福祉・医療技術振興会 理事会」宛てに、一身上の都合により常務理事の職を辞任する旨の辞任届を提出していることが認められる。 (5)甲第66号証及び甲第第67号証によれば、被請求人の代表者である人物A氏は、本件出願前にも本件商標と同一の「HECTEF」の文字からなる商標登録出願(平成15年12月11日付け商願平2003-115406号)をし、特許庁審査官より「『HECTEF』の文字からなる本願商標は、『福祉・医療技術振興会』の略称を表すものであるから、これを出願人が自己の商標として、採択、使用することは穏当でない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨の拒絶理由通知が発せられたことが認められる(なお、本件商標登録出願は出願取下された。)。 上記の(1)ないし(5)の事実及び提出に係る甲号各証を総合すると、 「HECTEF」の欧文字よりなる標章は、本件審判請求人である「福祉・医療技術振興会」の英文字表記と認められる「Health Care Technology Foundation」の略称として平成6年11月の発足時点には定められており、その活動状況などを報告するニュースレター(HECTEF NEWS)の発行により、この種業界において相当程度、広く知られていたものと認め得るものである。そして、被請求人である該「SRセンター」は、その設立当初から請求人である「福祉・医療技術振興会」の付属機関であることが明記されている。 かつ、被請求人及びその設立当初から代表者(センター長)であったと認められる人物A氏は、上記の事柄を知悉していたということができる。 さらに、本件商標を登録出願するに関しては、前記、相当数にわたり開催された理事会において本件商標の登録出願前に議題として協議できたことはもとより、出願後の理事会(第94回、平成10年10月25日開催)において報告することも可能であったと推認し得るものである。 しかしながら、被請求人及びその代表者である人物A氏は、本件商標の登録出願の理由、当振興会における過去の貢献度等について、前述のように答弁するのみで、本件商標を登録出願するについて、請求人又は該理事会等と何らの協議も報告もなされていない。 しかして、本件商標は、前記したとおり、請求人及び平成17年1月24日に法人化された「有限責任中間法人HECTEF」の名称の略称と認め得る「HECTEF」標章とその綴りを同一にするものである。 してみれば、被請求人(商標権者)は、「HECTEF」標章が請求人及び法人化された「有限責任中間法人HECTEF」の名称の略称であることを知悉していたにも拘わらず、当該標章が、本件商標の登録出願時に登録されていないことを奇貨として、請求人に無断で登録出願し、登録を得たことは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、公正な商取引の秩序を乱すものであり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標といわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-05 |
結審通知日 | 2006-12-11 |
審決日 | 2006-12-22 |
出願番号 | 商願2004-95845(T2004-95845) |
審決分類 |
T
1
11・
22-
Z
(Y05)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小林 正和 |
特許庁審判長 |
柴田 昭夫 |
特許庁審判官 |
岩崎 良子 小川 有三 |
登録日 | 2005-08-19 |
登録番号 | 商標登録第4888251号(T4888251) |
商標の称呼 | ヘクテフ |
代理人 | 泉名 謙治 |
代理人 | 小川 利春 |