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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 029
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない 029
管理番号 1172516 
審判番号 無効2006-89072 
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-05-30 
確定日 2007-10-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第3199855号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3199855号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成5年11月11日に登録出願、第29類「食肉,肉製品,加工野菜及び加工果実,乳製品」を指定商品として、同8年9月30日に設定登録され、その後、平成18年8月1日に商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)請求の理由
(ア)本審判請求に至る経緯及び利害関係について
請求人は、請求人が取り扱う商品「クリームチーズ」に商品名として「REQUEIJAO」(審決注:「A」の文字の上部には、長音符「?」が付されている。以下同じ。)の文字を商品に使用していたところ、被請求人より該文字は本件商標に基づく商標権侵害を理由に該文字の使用を警告され、商品製造・販売の即時停止及び損害賠償を要求された(甲第2号証)。
請求人は、該文字が商標法第26条第1項に基づく商品の普通名称であり、商標権の効力が及ばない範囲に属する旨を抗弁したが、被請求人の受け入れることにならず、権利行使に及ぶと通知してきた(甲第3号証)。
したがって、請求人は、本件無効審判請求につき商標法上の利害関係を有するものである。
(イ)除斥期間について
本件商標は、平成8年9月30日の登録であり、登録後5年の除斥期間を経過している。
しかしながら、公益的な見地から、公序良俗に反し、公正な競争秩序を害する不正の目的或いは商品の品質を誤認させる商標を不登録事由とする商標法第4条第1項第7号及び同法第4条第1項第16号除斥期間の適用がない。
しかして、本件商標は、以下に示す理由で商標法第4条第1項第7号及び同法第4条第1項第16号に該当するので、除斥期間の適用がないものである。
(ウ)本件商標とクリームチーズ(REQUEIJAO)について
本件商標は、「クリームチーズ」を意味するポルトガル語の「REQUEIJAO」の文字と同一綴り字をゴシック体で書してなり、商品「クリームチーズ」の普通名称を表示したにすぎないものである(甲第4号証及び甲第5号証)。
現在、我が国においては、ポルトガル語を母国語とするブラジル人が平成17年(2005年)で28万人を超え、さらに増え続けている。このようなブラジル人の増加は、これらブラジル人に対する食料や衣料品が必要となり、その製造・販売及び輸入も活発化している。
特に、食料品は、ブラジル人の嗜好が顕著に現れる商品であって、この要望を満たすため本国から輸入したり、国内企業がブラジル人の口に合わせた風味の食品を製造して供給している。正に、「クリームチーズ」(REQUEIJAO)は、このようなブラジル人向けの商品の一つであるが、近年、日本国内こおいても広く一般に販売され親しまれている普通名称である(甲第6号証ないし甲第8号証)。
したがって、本件商標は、その普通名称を普通に使用態様に表示してなるにすぎないものである。
(エ)本件商標の不正目的の権利取得及び権利行使について
本件商標は、別紙(甲第1号証の2)に示すとおり、富裕物産株式会社により登録出願され、平成8年9月30日に登録されたものである。
富裕物産株式会社(以下「富裕物産」という。)は、ブラジル商品を輸入する輸入業者であるので、ブラジルの文化、特にブラジルの食文化に精通していることはもとより、我が国において通常使用される食品名とそれに対応するポルトガル語の食品名など熟知し、当然のことながら「REQUEIJAO」が「クリームチーズ」の普通名称であることは認識しているはずである。
そして、富裕物産は、平成17年7月20日に本件商標を被請求人の三屋物産株式会社に権利譲渡した(甲第1号証の2)。被請求人も輸入業者であり、ブラジル商品を輸入している(甲第9号証)。
被請求人は、富裕物産から譲り受けた本件商標の移転登録の登録済通知(通知日:平成17年8月19日)を待っていたかのごとく、平成17年9月21日に、請求人に対し、商標権侵害を理由に該文字の使用停止と損害賠償を要求し、法的措置をとる旨の通知をしたのである(甲第2号証及び甲第3号証)。
換言すれば、被請求人は、商品の普通名称と認識した状態で本件商標を出願し、登録した先権利者よりこれを譲り受け、しかる後、本件商標に基づいて、請求人に対し、請求人の商品「クリームチーズ」の包装箱に記載する「REQUEIJAO」の文字について、商標権侵害を理由に該文字の使用を警告し、その商品の即時停止と損害賠償を要求してきた(甲第2号証)。
請求人は、該「REQUEIJAO」の文字が商標法第26条第1項に基づく商品の普通名称であり、商標権の効力が及ばない権利範囲に属する旨を抗弁したが、被請求人は、その抗弁を受け入れず権利行使に及ぶ気配を示している(甲第3号証)。
かかる被請求人の行為は、万人が商品に自由に採択し使用することができる普通名称を独占し、不当な利益を得ようとする不正な意図をもってなされたものであり、権利の濫用である。
したがって、本件商標は、不正競争を意図した不正の目的で取得したものであり、公益的な見地から到底登録の認められないものである。
(オ)商標法第4条第1項第7号に該当することについて
商標は、本来、自他商品識別標識として、商品流通秩序の維持を図るものである。
そして、近時の商標法第4条第1項第7号の適用は、従来のような「矯激な文字、卑狼な図形」の商標を排除する以外、「商標の使用が他の法律により禁止されている商標」、「その登録を認めることが社会の公正な秩序維持にはならない商標」、「特定の国もしくはその国民を侮辱する商標」、「国際信義に反する商標」、「公正な競争秩序を害する商標」、「剽窃的な商標」等にも拡大し、「秩序良俗違反」としての適用がなされている(注解・商標法【新版】上巻/小野昌延著/青林書院発行、参照)。
しかるに、本件商標に基づく被請求人の権利行使は、請求人のブラジル国より輸入する商品「クリームチーズ」の輸入阻止を企図し、かつ、在日ブラジル人向けの該商品の流通を阻止して、被請求人の独占的利益を得ようとするものである。そのため、本件商標は「社会の公正な秩序維持を阻害する商標」に該当する。
また、この権利行使は、在日ブラジル人に対し、自国固有の商品「クリームチーズ」のポルトガル語の商品名表示がなくなれば、「クリームチーズ」がどれか判別ができなくなり混乱が生ずるは明らかである。そのため、本件商標は「国際信義に反する商標」にも該当するのである。
本件商標は、ポルトガル語ではあるが、在日ブラジル人のみならず日本人にとってもインターネットのホームページ等を通じ、今や普通名称として周知されているものである(甲第6号証ないし甲第8号証)
このことは、前述したように、多くのブラジル人が我が国に移り住んでおり、彼らの生活の特徴として我が国全土に分散しているのでなく、或る地域や町に集中して居住している。また、ブラジル人が集中して生活する行動範囲から、マーケットを同じくする生活環境は所定のマーケットにブラジル人向けの日用品や食品等を提供する営業が成り立つ条件を作り出しており、これらのマーケットではポルトガル語が日常的に用いられているため、「REQUEIJAO」の文字は普通名称としてそのまま理解されている。
そのため、本件商標は、商標としてではなく商品「クリームチーズ」の普通名称として認識し理解されて商取引が成立しているのである。
してみれば、本件商標は、登録時にすでに公序良俗に反し、公正な競争秩序を害する不正の目的をもって登録されたものである。または、登録後において、被請求人は前述のとおり警告状を請求人に対して送付してきているのであるから、その時点で公序良俗に反し、公正な競争秩序を害するものとなったと言うべきである。
したがって、本件商標は、登録時または登録後において、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(カ)商標法第4条第1項第16号に該当することについて
本件商標は、前述のとおり、第29類「食肉,肉製品,加工野菜及び加工果実,乳製品」を指定商品とするものである。
そして、前述のとおり、本件商標「REQUEIJAO」は、商品「クリームチーズ」の普通名称の表示であり、商品「クリームチーズ」の使用が自他商品の識別標識としての機能を有しないことが明白である。
そのため、本件商標は、その指定商品中の「クリームチーズ」以外の商品について使用した場合、あたかも「クリームチーズ」であるかのように、商品の品質について誤認を生じさせるものである。
また、商品の品質誤認を生じさせる本件商標は、商標法第4条第1項第7号と同様、除斥期間が認められないものである。
したがって、本件商標は、登録時または登録後において、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
(キ)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第4条第1項第16号に該当し、商標法第46条第1項第1号または第5号の規定により無効とされるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)本件商標の登録時の自他商品識別力の有無についての項に対して
(a)被請求人は、乙第1号証で示す「カナ発音 葡和小辞典」中の「まえがき」に「頻度数の多い語を選んだ」旨記載しているが、「requeijao」(審決注:「a」の文字の上部にはチルダ記号が付されている。以下同じ。)の語は掲載されていないので、当該語が日常において頻繁に使用されている語であるかは認め難い、と主張している。
日常において使用頻度の高い語を選んで掲載した小辞典に、商品の普通名称の語が出ない場合はありうる。それは、小辞典のような場合、掲載される語句は、頁数に制限があるため、その編者の語句の編集・選択方針により、編者の特色が強く出るからである。
しかし、「requeijao」のような語は、ブラジルの家庭で愛好されている食品の名前であるので掲載されていない辞典の方が珍しいのであって、既に甲第5号証として提出した「ローマ字ポ和辞典」(柏書房発行)の「まえがき」には「見出し語の選び方に関しては、ブラジルで日常的に使用される言葉をなるべく重視し、…」(甲第5号証の1)との編集方針のもとに「requeijao」の語を掲載(656頁)しているところからも理解されるところである。
以上のとおり、語句の選択は辞書の編者に依存する事項であると共にrequeijaoの語は日常使用されている語であることに間違いない。
(b)また、乙第2号証で示すポルトガル語の国語辞典を引用して、「requeijao」が、クリームチーズである旨の記載は見当たらない、と主張している。
先ず、「requeijao」は、ブラジル生まれのチーズであることには間違いのないことであり、メルコスール(南米共同市場)では、その品質等を規則により定めている食品の名称の一つである。
請求人は、「requeijao」を、甲第4号証及び甲第5号証に示す辞典の記載に基づいて「クリームチーズ」と表現したが、クリーム状の程度は多々あるようである。因みに、乙第l0号証の3の訳文、第3頁に「4.2.1.1.粘稠度:塗布可能又はスライス可能」、「4.2.1.3.形状:可変」と記載されている。その記載からして、粘稠度が「塗布可能」であれば、クリーム状又は塗るに適したペースト状のチーズを指し、形状が「可変」であれば、クリーム状のチーズを指していることが判る。
また、甲第10号証に示す「TECNOLOGIA DE QUEIJOS」(チーズ工学)という冊子の、「REQUEIJAO(CREMOSO E DE CORTE)」の項(100頁)において、「requeijao」にはクリームタイプとカットタイプとがある旨の記載がある。
したがって、「requeijao」に対する訳は、甲第4号証及び甲第5号証に示す辞典の記載で誤りではないと云える。
(c)また、被請求人は、requeijaoを「クリームチーズ」の普通名称と認識するよりも一種の造語として看取し認識するのが自然である、と主張する。
しかしながら、請求書でも述べたように、在日ブラジル人は数カ所に集中して生活を営んであり、その場所は間違いなく日本国内であるのであって、そこではクリームチーズとしての「requeijao」を認識し、呼称されて取引されているのである。甲第11号証に示すポルトガル語の雑誌「Disk Shopping」は、在日ブラジル人向けに発行された商品販売用カタログ雑誌であって、発行日は定かではないが、台東区の「N3 Plus Co.Ltd」によって発行された。このような雑誌によって、在日ブラジル人向けの市場が成立していることが覗われるところである。そして、この雑誌には、第7頁の「queijos e outros」(チーズ類)の欄には、色々なタイプの「Queijos」(チーズ)と共に「Requeijao Pocos (審決注:「C」の文字の下部にはセディラ記号が付されている。)de Caldas」(シロップ入りクリームチーズ)がリストアップされている。
本件商標の前商標権者の商品広告がこの雑誌の4頁に掲載され、また、カメラ、ラジカセ等の日本商品も21頁以降に掲載されており、これらの商品の年度形式からして、この雑誌は1994,5年頃の発行のものと推測される。
要するに、「requeijao」は、日本においてチーズ類の中の1つとして取引されているのであって、商品(クリーム)チーズについて使用される限り、どのような状況下でも普通名称として認識されているのである。
(d)被請求人は、乙第3号証を引用して、請求人自身、本件商標を我国で造語と認識されることについて完全に否定していないと主張する。
請求人は、決して、そのようなことを認めている訳ではない。乙第3号証をよく読んでもらえば判ることであるが、それは主張論述のための仮説であり、包装箱上の「requeijao」の記載は普通名称であって、その近傍に記載されている「Agua na bocA」が自他商品識別力を有する商標部分であることを論じているに外ならない。
(e)また、被請求人は、指定商品の普通名称を表す語からなる商標であるが、我国において商品の普通名称等を表す語として一般に知られていないことから、当該商標が自他商品識別力を有するものと判断された登録例、異議決定及び審決例を挙げている。
しかし、乙第5号証?乙第7号証に関しては実際それらの語(商標)が指定商品との関係において普通名称として使用されていた事実があったのか否かについては、具体的な立証とか主張の問題などがあるので一概に言えないが、ここでは、そのような異議の決定等があったことは争わない。
しかし、乙第4号証については一言しておく。この商標については、その出願前から日本及びブラジルにおいて、料理の本などに「クレメデレイテ」(生クリーム)を他の食材及び香辛料と共に使用された記載があり、また、インターネットのサイト上でもそれらの商品を多々見る事ができる商品名なのである。このような場合、「クレメデレイテ」(creme de leite)は、ポルトガル語であるが普通名称といえるのである。この状況は、全く、本件事件と近似している。仮に、登録第3309424号の権利者から上記文字を表記した商品に対し、権利行使の通知でもあれば、本件と同様に審判請求等の事件に発展したと思慮する。
(f)要するに、被請求人の主張は、なんら本件商標が自他識別標識としての機能を備えていることの答弁になっていないのである。
(イ)本件商標の登録後の自他商品識別力の有無についての項に対して
被請求人は、甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証の記述を引用して、「Requeijao」の文字から我国国民は「クリームチーズ」であることを看取し認識することはできないので、「requeijao」の語が普通名称であるとする請求人の主張は失当であるから、本件商標は一種の造語として看取され認識されるものである旨主張する。
しかしながら、先ず、「requeijao」は既に述べたように、「requeijao」の中にはナイフでカットするタイプのものがあるとしても「クリームチーズ」の意味を持つものであることは前掲辞典から明らかなことであり、また、甲第6号証及び甲第7号証において、「クリーミーなクリームチーズ」との記載が認められるので、「requeijao」に対応する訳語として「クリームチーズ」と認識できない筈はない。したがって、これが適訳である以上、我国国民が「requeijao」の語が商品クリームチーズの普通名称であることを認識することは明らかであると思慮するが、これを造語と理解することには疑問である。
(ウ)本件商標の不正目的の権利取得及び権利行使に対する反論の項に対して
(a)被請求人は、本件商標が「クリームチーズ」の普通名称として我国において知られていないものであるから、本件商標は不正目的により取得された権利には何ら該当せず等々と主張している。
しかし、本件商標の前商標権者及び被請求人は、請求書で既に述べたとおり、主にブラジル国より食料品を輸入し、国内に卸販売をする業務をしているのであって、ブラジル国の食料品については精通している会社であることは、疑いもないことである。そのような会社が、審査官がポルトガル語を知らないであろうことを利用して本件商標を取得し、その商標権を譲り受け、商品「クリームチーズ」について使用する「requeijao」の表示に対し、権利行使に及んだ行為が問題なのであって、本件商標は、社会の公正な秩序維持を阻害する商標に該当し、かつ、権利の濫用にも該当するものである。本件は、乙第7号証で示す事例とは全く状況を異にするものである。
(b)被請求人は、前商標権者による本件商標の取得には何ら不正目的はないと主張している。
しかし、不正目的の取得であったか否かは、前商標権者が、出願時に「requeijao」の語がクリームチーズの普通名称であるかを知っていたのか否かに依存すると思われる。前項で述べたように、到底、不正目的はないとすることはできない。
(c)被請求人は、請求人に対して権利行使をしたのは、請求人がブラジルから輸入し、ブラジルで認められた品質を有するチーズに本件商標と類似する商標を付して使用したからではなく、国産のチーズに本件商標と類似する商標を付して使用していたからであると主張している。
請求人の商品は、日本国内の工場で委託製造した「requeijao」「requeijao cremoso」である。しかし、請求人の商品は、メルコスールによって規定された物理化学的要件を満たしている。すなわち、「requeijao cremoso」の脂肪分の記載は全固形分に対する乳脂肪分の量を記載したもので、66.85%あり、メルコスールの規定を十分満たすものである。メルコスールの規格に合致した商品に対しても権利行使をされているのであって、本件商標権者の行為は社会の公正な秩序維持を阻害していると云わねばならない。
更に云うならば、上記の主張は、後からの理由付けであることは明らかである。
最初の警告のとき(甲第2号証)には、メルコスールの規定についての指摘など全くなかったことであり、明確に、請求人の商品はメルコスールの規定に合わないと被請求人側から指摘してきたのは、甲第3号証で示す、再警告状の中においてである。
(d)また、被請求人は、ブラジルからメルコスールで定めた品質を有するチーズの輸入を阻止する気持ちは毛頭ない旨を主張している。
商標権は、排他的権利であって、権利が存続する限り権利行使をいつでも行える状況にあるのであるから、上記主張には保証はないのであって、個人会社(権利者)の恣意によって、市場をコントロールすることは、自由経済のもとにあっては許されないことである。どのような気持ちを持とうが、不正な意図のもとに取得され、または使用された商標権の存続は認められるべきではない。
(エ)商標法第4条第1項第16号に該当する旨の主張に対する反論に対して
本件商標は、上述の通り、「requeijao」の語はポルトガル語で「クリームチーズ」の意味を有するものであるから、それ以外の指定商品に使用した場合品質の誤認を生ずることは既に述べたように明らかである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める。と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)請求の理由の要約
請求人が主張する本件審判の請求の理由は、これを要約すると、次のとおりであると認められる。
(ア)本件商標を構成する「REQUEIJAO」の欧文字は、ポルトガル語で「クリームチーズ」の意味合いを有する普通名称であり、自他商品識別力を有さないものであり、「クリームチーズ」に本件商標を使用している者にとって本件商標は不当な登録である。
本件商標は、不正競争を意図した不正の目的で登録したものであるから、本件商標は、登録時に、商標法第4条第1項第7号に該当し、登録を受けることができないところ、これに違反して登録されたものである。
(イ)本件商標は、社会の公正な秩序維持を阻害する商標であるので、登録後に商標法第4条第1項第7号に該当する。
(ウ)本件商標が、「クリームチーズ」を意味する普通名称であるため、本件商標の登録時に、これを商品「クリームチーズ」以外の商品に使用すると、あたかも「クリームチーズ」であるかのような商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当し、登録を受けることができないところ、これに違反して登録されたものである。
(エ)本件商標は、登録後に品質誤認を生ずる商標となったものであるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
よって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号又は第5号により、その登録は無効とされるべきものである。
(2)請求人の主張に対する反論
(ア)商標法第4条第1項第7号に該当する旨の主張に対する反論
a)本件商標と「クリームチーズ」(REQUEIJAO)について
a)-1 本件商標の登録時(「登録査定時」を含む。以下同じ。)の自他商品識別力の有無について
請求人が提示する甲第4号証及び甲第5号証の辞書に、「requeijao」が「クリームチーズ」である旨の記載がある事実は認める。
しかしながら、例えば甲第4号証に示される辞書と同じ発行元が出版する「カナ発音 葡和小辞典」(平成15年11月30日 第13版発行)(乙第1号証)は、「まえがき」に「頻度数の多い語を選んだ」旨記載しているが、「requeijao」の語は掲載されていないので、当該語が日常において頻繁に使用されている語であるとは認め難い。
また、ポルトガル語の国語辞典では、「requeijao」については「Certo queijo de preparacao caseira ou industrial,feito como creme(l)coagulado pela acao do calor.Cf.requeijao」(訳:家庭や工場で生産される、加熱処理によって凝固させたクリームで作られる一定(特殊な)のチーズ。参照:requeija)との記載があり、クリームチーズである旨の記載はない(乙第2号証)。因みに、「requeijao」の参照としてあげられた「requeija」についてみると、「Especite de queijo que se extrai do soro do leite.Cf.requeijao」(訳:牛乳と乳清を凝固させて作られるチーズの一種)とあるのみで、これがクリームチーズである旨の記載は見当たらない(乙第2号証)。
このように、たとえ我が国の一部の「葡和辞典」において、「requeijao」の語が掲載されていたとしても、当該語が日常で頻繁に使用されている語であるとはいえず、また、「requeijao」が「クリームチーズ」である旨の記載が葡和辞典にあったとしても、それはポルトガルの国語辞典における「requeijao」の意味合いを忠実に訳したものではなく、やや飛躍した和訳となっているものであるから、「requeijao」の語が一義的に「クリームチーズ」を示すものであるとは言い難い。
また、ポルトガル語は、我が国では外国語を専門とする大学や、多国語を扱う語学学校において学ばれる言語であり、一般的な大学で第二外国語として設けられているフランス語、ドイツ語等の言語に比べて、非常に特殊な言語として位置づけられる。また、昨今の韓流ブームのように、特に我が国国民がポルトガル語に興味を持つような出来事が、本件商標の査定時から現在に至るまで生じた事実もない。
さらに、我が国で外国製チーズといえば、イタリア、スペイン、フランス、デンマーク、スイス産等のチーズが多く輸入され、店頭でも見受けられるのに対して、ポルトガル産のチーズについては店頭で見受けられないのが実情であるから、ドイツ語で薬品名がつけられたり、フランス語で化粧品名がつけられる場合が多い等のような取引における商品と言語の強い結びつきは、ポルトガル語と乳製品との間に関しては、我が国では差ほど強い結びつきがあるものとして取引されていないのが実情である。
してみれば、ポルトガル語は、我が国国民に親しまれた言語ではないため、我が国において本件商標の登録時に商品の普通名称として、知られていたとは言い難く、また、「requeijao」の語自体我が国国民にとっては、いずれの国の言語か否かも認識できないものである。まして我が国国民は、本件商標「REQUEIJAO」の正しい称呼すら一見してわからないものである。
この点につき、請求人は、「我が国においては、ポルトガル語を母国語とするブラジル人が平成17年(2005年)28万人を超え、さらに増え続けている。」と述べているが、我が国の全人口からみれば、ポルトガル語に精通している者はほんの一握りにすぎないものであるから、一部のポルトガル語に精通する者の存在を理由に、「requeijao」が「クリームチーズ」の語義を有する普通名称であると判断するのは妥当ではない。
よって、本件商標は、「クリームチーズ」の普通名称であると認識するよりも、看者は一種の造語として看取し認識するのが自然である。請求人も、被請求人宛の平成17年12月19日付け回答書においても「『REQUEIJAO』または『REQUEIJAO CREMOSO』の語句が造語としても、」、「本件登録商標を造語としても、」(乙第3号証)と述べているように、請求人自身が本件商標を我が国で造語と認識されることについて、完全に否定していないのである。
ここに、指定商品の普通名称を表す語からなる商標であるが、我が国において商品の普通名称等を表す語として一般に知られていないことから、当該商標が自他商品識別力を有するものと判断された登録例、異議決定及び審決例を乙第4号証ないし乙第7号証にあげる。
これらの登録例、異議決定、及び審決例は、上記被請求人の主張が正当であることを立証しているものである。
また、本件商標の審査及び登録経過をみても、何ら拒絶理由通知されることもなく、また異議申立されることなく登録査定に至っているばかりでなく(乙第8号証の1)、登録後には、請求人に本件審判を請求されるまで、同業者等の利害関係人から何ら無効審判を請求されていない(乙第8号証の2)。
以上詳述したとおり、取引実情、審決例等、及び本件商標の審査経過をみても、本件商標はその登録時において、自他商品識別標識としての機能を十分に具備していたものであることが明らかである。
a)-2 本件商標の登録後の自他商品識別力の有無について
請求人は、「REQUEIJAO」の語が、「近年、日本国内においても広く一般に販売され親しまれている普通名称である」と述べ、甲第6号証ないし甲第8号証を提示している。しかしながら、以下に述べるとおりこれらの証拠から、「requeijao」の語が近年日本国内において「クリームチーズ」を示す語として親しまれているとは言い難い。
すなわち、甲第6号証においては、「クリームチーズ・クリナリオ」(Requeijao Cremoso Curinario)の記載があるところ、欧文字「Curinario」の語をローマ字風に読み、これが片仮名文字で書された「クリナリオ」に相応する文字であると推認でき、また、欧文字の「Cremoso」がクリームの語義を有する平易な英語である「creme」と綴りが似ていることから、「Cremoso」の語が片仮名「クリーム」に相応する文字であると推認することができる。そうしてみると、「Requeijao」の語は片仮名「チーズ」に相応することになり、甲第6号証からは、請求人が述べるように「requeijao」の語が「クリームチーズ」を表す語として看取できるとは言い難い。
また、甲第7号証においても「REQUEIJAO CREMOSO」でのキーワードでウェブ全体から検索して、わずかに119件のみのがヒットしたものであり、検索結果中、日本語で書かれ我が国国民の目につきやすい「ゴルゴンゾーラのクリームチーズ(Requeijao Cremoso Sabor Gorgonzola)」「カトゥピリ風クリームチーズ(Requeijao Cremoso Sabor Catupiry)」についても、仮に看者が、「Sabor(味)」の意味合いを理解できないとしても、甲第6号証と同様に、欧文字と片仮名文字とを照らし合わせると、「Requeijao」の語は片仮名「チーズ」と相応することになり、我が国国民は「Requeijao」の語が「クリームチーズ」を表しているとは看取できない。
甲第8号証に記載された「ゴーダチーズ風クリームチーズ/(Requeijao Cremoso Sabor Gouda)」についても甲第6号証及び甲第7号証と同様に、ここに記載された「Requeijao」の文字から一義的に「クリームチーズ」であると我が国国民は看取し認識することはできない。
よって、「requeijao」の語が「近年、日本国内においても広く一般に販売され親しまれている普通名称である」という請求人の主張は、失当であるから、本件商標は、その登録査定時から本件審判請求時を含む現在に至るまでにおいても、一種の造語と看取され認識されるものである。
a)-3 上述のとおり、本件商標は登録時においても、登録後においても特定の語義を有さない造語と看取し、認識されるものであるから、本件商標が「クリームチーズ」の普通名称であるとする請求人の主張は失当である。
b)本件商標の不正目的の権利取得及び権利行使に対する反論
b)-1 本件商標の自他商品識別機能からの反論
上述のとおり、仮に我が国の一部の「葡和辞典」に「requeijao」の語が「クリームチーズ」である旨の記載があるとしても、これは飛躍した和訳であり、本件商標が「クリームチーズ」の普通名称として我が国において知られていないものであるから、本件商標は、不正目的により取得された権利には何ら該当せず、社会の公正な秩序維持を阻害する商標や、国際信義に反する商標ではないのである。
前記した乙第7号証に示す異議決定においても、「PANZAROTTI/パンツアロツテイ」なる商標が「ラヴィオリ」の一種を表す普通名称であると知られていないことを理由に、当該商標が商品の品質の誤認を生じない旨判断し、その上で当該商標を指定商品に使用することが社会公共の利益、一般道徳観念に反するものでないから、当該商標が公序良俗に反するものではないと判断していることは、被請求人の上記主張が正当であることを立証しているものである。
b)-2 権利取得に対する反論
被請求人は、本件商標を前商標権者であり、被請求人の代表者の実父が創業した富裕物産から譲り受けたものである。富裕物産は、平成4年ごろから、ブラジルで製造・販売されている加工野菜や加工果実等の食品を我が国に輸入して販売するようになり、有数の酪農国であるブラジルの豊富な乳製品を我が国に輸入するため、試行錯誤を繰り返した末、平成7年頃からは、日本の裏側という悪条件であるブラジルからブラジル産のチーズを主とする乳製品の輸入を開始した。
また、富裕物産は、その輸入した商品中、特定のチーズの品質を重視し、我が国における他のチーズとの差別優位性を勘案し、我が国の消費者への安定した品質の商品供給を守るために、本件商標の権利化を図ったものである。
したがって、本件商標の権利取得に際して、前商標権者である富裕物産による本件商標の権利取得には、何ら不正目的はない。また、現に富裕物産は、ブラジルから輸入された一定の品質を有するチーズには、何ら権利行使をしていないのである。
b)-3 権利行使に対する反論
富裕物産から本件商標を譲り受けた現商標権者(被請求人)が、請求人に対し権利行使したのは、請求人がブラジルから輸入され、ブラジルで認められた品質を有するチーズに、本件商標と類似する商標を付して業として使用していたからではなく、国産のチーズに本件商標と類似する商標を付して使用していたからである。乙第9号証に示す写真は、請求人が販売するチーズ「REQUEIJAO」の包装容器である。この包装容器の裏面には、ブラジル産の表示はなく、製造者として「ジャパンミルクネット(株)狭山工場」の表示がされている。
ところで、請求人は、平成17年11月7日付け被請求人宛回答書に「本件登録商標の『REQUEIJAO』または『REQUEIJAO CREMOSO』の語句は、ブラジル国の母国語であるポルトガル語によれば、『クリームチーズ(塗るチーズ)』または『クリーム入りクリームチーズ』の意味を有し、かつ、ブラジル産チーズを意味します」と述べ、ブラジルでチーズを「requeijao」等というのではなく、「ブラジル産チーズ」と述べており(乙第10号証の1)、請求人が実際に販売する国産の商品「REQUEIJAO」と齟齬が生じるものである。また、同回答書によれば、「『REQUEIJAO』、『REQUEIJAO CREMOSO』、『REQUEIJAO de MANTEIGA』と表示された商品は、ブラジル国と近隣諸国との協定で1986年より品質規格について取り決めがあり、これが遵守されて、取引されている商品であります。」(乙第10号証の1)との記載があり、南米南部共同市場(メルコスール)と、その抄訳を添付している(乙第10号証の2)。このメルコスールによれば、「REQUEIJAO」なるチーズはブラジルでは、乾燥エキス中の脂肪が100g中45.0?54.9g含まれていなければならない(乙第10号証の2)。また、このメルコスールを考慮した「PORTARIA No359、DE 4 DE SEREMBRO DE 1997(訳:1997年9月4日付け省令第359号)」にも、同様の品質規格が規定されている(乙第10号証の3)。しかしながら、乙第9号証に示す請求人の包装容器には、「脂質33.5g」と表示され、請求人が示すメルコスールに表示された品質を保っていないのである。
このような事実は、被請求人の取引者から被請求人へ「質の異なるREQUEIJAOが販売されている。どうにかならないか?」等の問い合わせがあったことから発覚したものである。そのため、被請求人は請求人宛に甲第2号証に示すとおりの通知を行ったものである。
換言すれば、被請求人は、産地や品質を誤った商品の販売を阻止することが目的であり、ブラジルからメルコスールで定められた品質を有するチーズの輸入を阻止する気持ちは毛頭なく、現に他社によるブラジルからの輸入に対しては、何ら権利行使をしていないのである。
上述のとおり、請求人が販売する商品「REQUEIJAO」は国産品であるから、被請求人の権利行使は、請求人が主張するような「請求人のブラジル国より輸入する商品『クリームチーズ』の輸入阻止を企図」したものでもなく、在日ブラジル人に対し、自国固有の商品「クリームチーズ」がどれか判別できなくなるというような混乱は生じさせるものでもないのである。逆に、本件商標の品質保証機能を守ることにより、在日ブラジル人を含む我が国における需要者の利益を保護したものである。
したがって、本件商標の権利行使に際して、被請求人に何ら不正目的はない。
c)以上詳述したとおり、本件商標が我が国では造語として看取されること、及び、商標の品質表示機能を重視して本件商標を取得したものであり、他社が、ブラジル産の一定の品質を有するチーズを輸入することを阻止する目的で本件商標を取得したものではないから、請求人が述べるような、不正競争を意図した不正の目的で本件商標を取得していないのである。また、本件商標の権利行使に際しても、国産であり、かつ、本来有するべき基準を有さない請求人の商品「REQUEIJAO」に対するものであるから、被請求人は本件商標の品質保証機能を害されたものであるから権利行使したまでであり、何ら公序良俗に反しないものである。
よって、本件商標は登録時又は登録後のいずれにおいても、社会の公正な秩序維持を阻害せず、国際信義に反せず、公序良俗にも反しないものであるから、本件商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するという請求人の主張は失当である。
(イ)商標法第4条第1項第16号に該当する旨の主張に対する反論
本件商標は、上述のとおり我が国では一種の造語と看取されるものであるから、これを「クリームチーズ」以外の指定商品に使用しても、何ら品質の誤認は生じないものである。
仮に、請求人の主張が正当であれば、本件商標を構成する「REQUEIJAO」の文字を有する商標の指定商品が「クリームチーズ」に限定されるべきところである。
しかしながら、請求人自身が出願する「Agua na bocA REQUEIJAO/(REQUEIJAOはポルトガル語で“塗るチーズ”」という商標については、その指定商品を「クリームチーズ」に限定せずに第29類「チーズ」を指定して、本件審判が請求されるわずか2ヶ月前である平成18年3月20日に商標登録出願している(商願2006一024962)(乙第11号証)。また、請求人が葡和辞典を提示して、本件商標を構成する「REQUEIJAO」の語がポルトガル語で「クリームチーズ」の語義を有すると主張するものの、当該請求人の出願商標には、「(REQUEIJAOはポルトガル語で“塗るチーズ”)」と記載されており、「(REQUEIJAOはポルトガル語で“クリームチーズ”)」とは記載されていない。
してみれば、請求人は、本件商標を構成する「REQUEIJAO」の語はポルトガル語で「塗るチーズ」と認識しており、現に請求人自身の出願の指定商品も「クリームチーズ」に限定していないことに鑑みると、本件商標を「クリームチーズ」以外の商品に使用しても何ら品質誤認が生じないことを請求人自身が立証しているものである。
よって、本件商標が登録時又は登録後のいずれにおいても自他商品識別力を有する事実、および上記出願の例から、本件商標は、登録時又は登録後のいずれにおいても、これを「クリームチーズ」以外の商品に使用しても、何ら品質の誤認を生じさせないものである。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当するとする請求人の主張は失当である。
(3)むすび
以上詳述したとおり、本件商標は、登録時又は登録後のいずれにおいても商標法第4条第1項第7号及び、同項第16号の規定に該当するものではない。
よって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号及び第5号の規定に該当しない。

5 当審の判断
本件商標は、別掲のとおり「REQUEIJAO」の文字を書してなるものである。
そこで、請求人の提出に係る証拠について検討するに、甲第4号証の「ポルトガル語小辞典」(昭和56年12月10日 株式会社大学書林発行)及び甲第5号証の「ローマ字ポ和辞典」(1992年1月25日 柏書房株式会社発行)によれば、「requeijao」はポルトガル語で「クリームチーズ」を意味するものと記載されている。
しかしながら、前記辞典において、「requeijao」の語が前記の意味合いを有するものとして掲載されていたとしても、該語が日常で頻繁に使用されている語であるとはいえず、また、ポルトガル語は、我が国では外国語を専門とする大学や、多国語を扱う語学学校において学ばれる言語であり、一般的な大学で第二外国語として設けられているフランス語、ドイツ語等の言語に比べて、非常に特殊な言語として位置づけられるといえるものである。
さらに、我が国で外国製チーズといえば、イタリア、スペイン、フランス、デンマーク、スイス産等のチーズが多く輸入され、店頭でも見受けられるのに対して、ブラジル産のチーズについては店頭であまり見受けられないのが実情であるから、ドイツ語で薬品名がつけられたり、フランス語で化粧品名がつけられる場合が多い等のような取引における商品と言語の強い結びつきは、ポルトガル語と乳製品との間に関しては、我が国では差ほど強い結びつきがあるものとはいい得ない。
そうすると、ポルトガル語は、我が国国民に親しまれた言語ではないため、本件商標が我が国においてその登録時に商品の普通名称として、指定商品に関わる取引者、需要者、特に一般消費者の間に知られていたとはいい難く、また、「requeijao」の語自体我が国国民にとっては、いずれの国の言語か否かも直ちに認識し得ないものであり、本件商標を構成する「REQUEIJAO」の文字より正しい称呼すら一見して理解し得ないものといわなければならない。
してみれば、本件商標は、「クリームチーズ」の普通名称であると認識するよりも、指定商品に関わる取引者、需要者、特に一般消費者は一種の造語として把握し認識するものとみるのが相当である。
また、甲第6号証ないし甲第8号証は、2005年10月7日及び2006年1月12日付けのインターネットにおける「クリームチーズ」に関するものであるが、その検索結果は僅かなものであり、そこに記載された「requeijao」、「Requeijao」あるいは「REQUEIJAO」の語から直ちに「クリームチーズ」であると指定商品に関わる取引者、需要者、特に一般消費者が認識するとはいい得ない。
そして、甲第9号証は、被請求人の会社案内、甲第10号証は、「チーズ工学」の冊子、甲第11号証は、商品販売用カタログ雑誌をそれぞれ示すにすぎない。
よって、「requeijao」、「Requeijao」及び「REQUEIJAO」の語が、本件商標の登録査定時から審判請求時を含む現在に至るまでにおいても、指定商品に関わる取引者、需要者、特に一般消費者は一種の造語と把握し認識するものといわざるを得ない。
してみれば、本件商標は、登録時又は登録後のいずれにおいても、社会の公正な秩序維持を阻害せず、国際信義に反せず、公序良俗にも反しないものであり、また、本件商標は、一種の造語よりなるといい得るものであって、これがその指定商品について使用された場合、その商品の品質について誤認を生ずるおそれはなく、自他商品の識別標識としての機能を果たすものである。
なお、請求人は、甲第11号証を提出し、「在日ブラジル人は数カ所に集中して生活を営んであり、その場所は間違いなく日本国内であるのであって、そこではクリームチーズとしての『requeijao』を認識し、呼称されて取引されているのである。」旨主張しているが、前記のとおりポルトガル語は、我が国国民に親しまれた言語ではなく、本件商標を指定商品に関わる取引者、需要者、特に一般消費者は一種の造語として認識するものとみるのが相当であるから、この点に関する請求人の主張は採用の限りでない。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同第16号に違反してされたものではなく、同法第46条第1項第1号及び同第5号により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲 本件商標

審理終結日 2007-07-31 
結審通知日 2007-08-06 
審決日 2007-08-23 
出願番号 商願平5-113087 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (029)
T 1 11・ 272- Y (029)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野口 美代子長澤 祥子 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 小畑 恵一
津金 純子
登録日 1996-09-30 
登録番号 商標登録第3199855号(T3199855) 
商標の称呼 リクエイジャーオ、レケイハーオ 
代理人 瀧野 秀雄 
代理人 今井 貴子 
代理人 村越 祐輔 
代理人 舘館石 光雄 
代理人 萼 経夫 
代理人 瀧野 文雄 
代理人 垣内 勇 

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