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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200627556 審決 商標
不服200625515 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y30
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Y30
管理番号 1167741 
審判番号 不服2005-7988 
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-28 
確定日 2007-11-05 
事件の表示 商願2004-4645拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおり、「長崎角煮まんじゅう」の文字を横書きしてなり、第30類「角煮入りまんじゅう」を指定商品として、平成16年1月21日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『長崎角煮まんじゅう』の文字を横書きしてなるところ、これよりは、全体として『長崎市の角煮入りまんじゅう』程度の意味合いを理解、認識させるものであるから、これをその指定商品に使用するときは、単に、商品の品質、生産地、販売地を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至ったものとは認めることができないから、同法第3条第2項の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号の該当性について
(1)本願商標は、別掲のとおり、「長崎角煮まんじゅう」の文字よりなるところ、本願商標を構成する「長崎」の語は、「九州地方西部の県」又は「長崎県南部の市」を表す地名であり(広辞苑第5版)、また、「角煮まんじゅう」の語は、本願商標の指定商品「角煮入りまんじゅう」を表す商品名と認められるものである。
このように、本願商標は、地名である「長崎」の文字と、商品名である「角煮まんじゅう」の文字とを結合してなるにすぎない標章であるから、これをその指定商品である「角煮入りまんじゅう」に使用しても、これに接する取引者・需要者は、その商品が「長崎で製造又は販売される角煮入りまんじゅう」であると、すなわち、商品の産地(製造地)又は販売地等を表示したものであると理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものというのが相当である。また、このような商標については、その使用の機会を当該地域(長崎)において当該商品(角煮まんじゅう)を製造・販売する多くの事業者に開放しておくことが適当であって、その中の一部の事業者に当該商標の使用を独占させるのは公益上望ましくないというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)これに対し、請求人は、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとの点については何ら反論しておらず、提出した証拠をもって、本願商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものであるから、同法第3条第2項の規定に該当し、商標登録されるべきものである旨主張しているので、以下この点について検討する。
2 商標法第3条第2項の該当性について
(1)登録出願に係る商標が商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったものであるか否かを検討するに当たっては、知財高裁平成18年(行ケ)第10054号判決(平成18年6月12日判決言渡)において、次のように判示されている。すなわち、
商標法第3条第2項は、商標法第3条第1項第3号等に対する例外として、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」は商標登録を受けることができる旨規定している。その趣旨は、特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には、当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に、当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上、他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は薄いということができるから、当該商標の登録を認めようというものであると解される。
上記のような商標法第3条第2項の趣旨に照らすと、同条項によって商標登録が認められるためには、以下のような要件を具備することが必要であると解される。
ア 使用により自他商品識別力を有すること
商標登録出願された商標(以下「出願商標」という。)が、商標法第3条第2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、実際に使用している商標(以下「使用商標」という。)及び商品、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品の生産又は販売の数量、並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用された結果、判断時である審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否か(いわゆる「自他商品識別力(特別顕著性)」の獲得の有無)によって決すべきものである。
イ 出願商標と使用商標の同一性が認められること
商標法第3条第2項の要件を具備するためには、使用商標は、出願商標と同一であることを要し、出願商標と類似のもの(例えば、文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。
なぜなら、同条項は、本来的には自他商品識別力がなく、特定人の独占にもなじまない商標について、特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり、実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして、登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると、同条項は、厳格に解釈し適用されるべきものである。
(2)そこで、上記観点を踏まえて、本願商標について検討するに、請求人の提出に係る各証拠(甲第1号証ないし甲第66号証(枝番のあるものは枝番を含む。)。以下、甲各号証については、例えば、「甲第1号証」を「甲1」、「甲第2号証の1」を「甲2の1」のようにいう。)によれば、以下のことが認められる。
ア 甲1は、有限会社岩崎食品の会社概要(平成16年9月現在)を記載した書面である。同社は、昭和40年4月に設立され、「長崎角煮まんじゅう」、「長崎ぎょうざ」、「長崎肉まん」などの製造、販売を主な事業内容とすること、その本店は長崎市内にあって、他に長崎県内に2店舗、長崎空港及び福岡空港内には売店を有していること、平成16年の売上高は、8億8千万円であることなどが記載されている。
イ 甲2の1?2、甲27の1?4及び甲31は、ショーケース内に置かれた商品「角煮まんじゅう」の陳列状態等を写した写真(撮影日は不明)である。10個ないし15個入りの商品包装用箱(赤箱)の上面下部には、正方形の輪郭線内に、「IS」の文字を図案化して配してなるマーク(甲11の4によると、「IS」は社名である「岩崎食品」(Iwasaki Shokuhin)の頭文字であるとのこと。商品「角煮まんじゅう」の生地(外皮)の上にも、このマークが焼き印されている。以下「ISマーク」という。)と「岩崎本舗」の文字とが横一連に表示され、かつ、これらの下部に、本願商標と同一の書体と認め得る「長崎角煮まんじゅう」の文字がやや大きく横書き表示されている。これらは、いずれも金色で書されており、「岩崎本舗の長崎角煮まんじゅう」であることが容易に理解できる一体的な構成態様となっている。当該商品の値札にも、本願商標と同一の書体と認め得る「長崎角煮まんじゅう」の文字が横書き表示されている。甲31の商品包装用箱の側面には、本願商標と同一の書体と認め得る「長崎角煮まんじゅう」の文字が横書き表示されているが、その右横には、赤地に白抜きしたISマークが大きく表示されている。
ウ 甲3の1?3、甲4の1?2、甲33の1?2、甲34の1?4、甲35、甲36、甲37、甲38の1?3、甲39、甲40の1?7、甲41の1?4、甲42の1?2、甲43の1?4、甲44、甲45、甲46、甲47の1?24、甲48の1?5、甲49の1?3、甲50、甲51の1?4、甲52の1?2、甲53の1?2、甲54、甲55の1?3、甲56の1?4、甲57、甲58、甲59の1?2、甲60、甲61、甲62の1?2及び甲63の1?16は、全国の百貨店等で開催された物産展等の広告チラシ類、通販カタログ等の写しと認められるものである。これらには、各社の商品が同様の形式で紹介掲載されている(ただし、甲34の4は、請求人に係る商品のみである。)ところ、請求人に係る商品「角煮まんじゅう」についてみると、商品の写真とともに、例えば、「長崎角煮まんじゅう《岩崎食品》」と横書きされたもの(甲3の1)、「長崎〈岩崎食品〉」と「長崎角煮まんじゅう」とが2行に横書きされたもの(甲3の2)、「●長崎角煮まんじゅう◆岩崎食品」と横書きされたもの(甲33の1)、「《岩崎本舗》長崎角煮まんじゅう」と横書き又は縦書きされたもの(甲34の1、甲34の4)、「【長崎/岩崎本舗】」と「●長崎角煮まんじゅう」とが2行に横書きされたもの(甲38の1)、「岩崎本舗「長崎角煮まんじゅう」」と横書きされたもの(甲39)、「岩崎本舗」と「長崎角煮まんじゅう」とが2行に横書きされたもの(甲43の4)、「〈長崎県/岩崎本舗〉」と「長崎角煮まんじゅう」とが2行に横書きされたもの(甲47の1)、「[岩崎本舗]」と「長崎角煮まんじゅう」とが2行に縦書き又は横書きされたもの(甲48の2、甲52の1)、「長崎●岩崎本舗/長崎角煮まんじゅう」と横書きされたもの(甲51の2)、「岩崎本舗●長崎」と「長崎角煮まんじゅう」とが2行に横書きされたもの(甲56の3)、「【岩崎本舗】長崎角煮まんじゅう」と横書きされたもの(甲57)、「長崎【岩崎本舗】」と「長崎角煮まんじゅう」とが2行に横書きされたもの(甲63の4)、等のように、いずれも「長崎角煮まんじゅう」の文字だけでなく、請求人の店舗名である「岩崎本舗」の文字や、請求人の名称の一部である「岩崎食品」の文字とともに用いられているものである。ただし、甲62の1には、「岩崎本舗」や「岩崎食品」の記載はなく、商品写真とともに、「長崎県【長崎市】」、「長崎角煮まんじゅう」、「徹底的に吟味した豚バラ肉をじっくり煮込みました。」及び「(1個)294円」等の記載があるのみである。
なお、上記に示した例以外のものの中には、「長崎角煮まんじゅう」の文字と、「岩崎本舗」又は「岩崎食品」の文字とが離れているものも散見されるが、それらは、各チラシ・カタログ等においてのレイアウトや編集上の都合によって行われているものと思われ、それ故、「長崎角煮まんじゅう」の文字自体も、「長崎」と「角煮まんじゅう」とが、2行に分かれているものや若干スペースの空いているものなどが見受けられるところである。
また、これらのチラシ・カタログ等に同時に掲載されている他社の商品について、「長崎角煮まんじゅう」の文字部分に相当する記載内容を見てみると、例えば、「長崎角煮まんじゅう《岩崎食品》」に対して、「ラーメン《博多ラーメン本舗》」、「からし明太子《山口油屋福太郎》」、「寿司にぎり《もくへい寿司》」等(甲3の1)、「●長崎角煮まんじゅう◆岩崎食品」に対して、「●イカシュウマイ◆海舟」、「●豚の角煮◆畠山精肉店」、「●長崎ちゃんぽん◆荒木商会」等(甲33の1)、「【長崎/岩崎本舗】」と「●長崎角煮まんじゅう」との2行書きに対して、「【京都・北山/マールブランシュ】」と「●モンブラン」、「【東京・恵比寿/パステル】」と「●なめらかプリン」、「【大阪/ステーキハウス羽衣びーふ亭】」と「●鉄板焼ステーキ弁当」との各2行書き等(甲38の1)のように、その該当部分の表示は、商品の内容を記述的に表示したにすぎないものと認識させるものが圧倒的に多い。
エ 甲5の1?4、甲6の1?3及び甲32は、請求人に係る商品のチラシ類、「岩崎本舗」を受取人とする料金受取人払の封筒及び郵便はがき(注文はがき)、請求人が広告主であるエコーはがき、商品代金支払いのための払込取扱票及び納品書である。甲5の2を除き、いずれも「長崎角煮まんじゅう」の文字だけでなく、ISマーク、「岩崎食品」又は「岩崎本舗」も目立つ態様で表示されている。甲5の2は、請求人が商品を店頭等で直接販売する際や通信販売する際に使用しているリーフレットとして提出されたものであるところ、該リーフレットには、商品「角煮まんじゅう」について、商品の写真の下に、本願商標と同一の書体と認め得る「長崎角煮まんじゅう」との表示があることが認められる(なお、当該「長崎角煮まんじゅう」の文字の右下に小さく「商標登録 第4324181号」と表示されているが、当該商標登録番号に係る登録商標は、ISマークの右横に、本願商標と同じ「長崎角煮まんじゅう」の文字を組み合わせた結合商標であって、「長崎角煮まんじゅう」の文字のみからなるものではない。)。
オ 甲7の1?8、甲28の1?11及び甲29の1?2は、請求人に係る商品「角煮まんじゅう」のテレビ・ラジオCM放送に関する出稿リスト及び放送確認書の写し並びにCM放送が流れているテレビ画面を写した写真画像の印刷物又はスチール写真と認められるものである。平成10年11月から、地元長崎のテレビ局又はラジオ局でCM放送が流れ始めている。甲7の2及び甲28の1?11には、CM放送の画面右下又は上部に、「岩崎本舗」の文字とともに「長崎角煮まんじゅう」の文字がテロップ表示されている。
カ 甲8の1?7は、請求人が協賛する各種イベントのテレビ広告、パンフレット、ポスター類である。甲8の2?6には、ISマークの右横に「長崎角煮まんじゅう」と「岩崎本舗」の文字が併記されているが、「岩崎本舗」の文字は、「長崎角煮まんじゅう」の文字に比べ、圧倒的に大きく表示されている。甲8の1については、「長崎角煮まんじゅう」の文字を明確に確認できないし、甲8の7には、「長崎角煮まんじゅう」についての記載はない。
キ 甲9は、バス(請求人によれば、地元の「長崎バス」とのこと)の車体にラッピング広告を施している作業現場内で撮ったバスの写真(3種類。撮影日は不明。)である。当該バスの車体側面部には、前後輪のタイヤ間に相当する部分に、本願商標と同一の書体からなる「長崎角煮まんじゅう」の文字が商品写真とともに大きく表示されているほか、後輪タイヤの後方部分に、ISマークや「岩崎本舗」と思われる文字も表示されている。バスの車体前面部に表示されている広告は、ISマークと「岩崎本舗」の文字のみからなるものである。
ク 甲10及び甲30は、岩崎本舗のメディア掲載・取材歴を紹介するインターネットのウェブページを印刷したものである。請求人に係る商品「角煮まんじゅう」が紹介又は取材されたテレビ・ラジオ番組、書籍、雑誌名、放送日等が多数記載されている。
ケ 甲11の1?4、甲12、甲13の1?3、甲14の1?2、甲15の1?20、甲16の1?8(甲16の3及び5を除く。)、甲17、甲18及び甲20は、新聞、雑誌、テレビ番組等で紹介された請求人に係る商品「角煮まんじゅう」に関する記事等である。
甲11の1は、2002年(平成14年)8月17日付けの日本経済新聞の「ヒットの方程式」と題するコラム欄の写しであるところ、そこには、「角煮まんじゅう 岩崎食品」及び「長崎独特の味、気軽に」の見出しの下、岩崎食品社長の記名付き文章が掲載されている。それによると、「・・・角煮を肉まんに使うまんじゅうにはさんだ料理は中華料理にも登場します。しかし、こちらはどちらかというと格式ばった感じの料理。もっと気軽にファストフード感覚で長崎独特の味を楽しめないかと考えたのがこの『長崎角煮まんじゅう』です。・・・現在では一日に八千個ほどを生産するフル操業状態が続いています。・・・おかげさまで売り上げも毎年五割増程度の状況が続いており、現在の工場だけでは対応できなくなりつつあります。・・・最近は類似の商品も増えてきました。しかし、それは歓迎すべきことだと思います。『どこの角煮まんじゅうがおいしいの』というお客様の声に応えられる商品になりたいです。・・・」との記載がある。
甲15の20は、平成15年(月日は不明)発行の長崎新聞の写しとして提出されたものであるところ、「岩崎食品が新工場 ハセップの認証目指す 長与」との見出しの下、「・・・同社は、約十五年前に売り出した『長崎角煮まんじゅう』がヒットし、二○○二年度の売上高は約六億円。年々増える需要に対応し、安全性の高い商品を提供するため、本社工場を長崎市大手一丁目から長与町に移した。・・・」との記載がある。
また、請求人に係る商品「角煮まんじゅう」は、「第28回長崎県特産品新作展最優秀賞」(甲17)、「2002年度ヒットビジネス大賞」(甲18)及びTBS放送のテレビ番組「はなまるマーケット」の「2003年今日のおめざ大賞2位」(甲20)を受賞していることが認められる。
このほかにも、雑誌、テレビ番組等で請求人に係る商品「角煮まんじゅう」が紹介されているが、上記(2)ウと同様に、「長崎角煮まんじゅう((有)岩崎食品)」と文章中に記載されたもの(甲14の2)、「長崎角煮まんじゅう」と「岩崎本舗」とが2行に横書きされたもの(甲15の1)、「岩崎本舗の長崎角煮まんじゅう」と横書きされたもの(甲15の2)、等のように、「長崎角煮まんじゅう」の文字だけでなく、請求人の店舗名である「岩崎本舗」の文字や、請求人の名称の一部である「岩崎食品」の文字、又はISマークとともに用いられているものがほとんどである。
なお、甲16の3は、テレビ画面に表示されているテロップ文字が「角煮まんじゅう」であって、「長崎角煮まんじゅう」ではない。また、甲16の5は、角煮の映像とともに、「豚の角煮秘話?長崎角煮まんじゅう美味しさのルーツ?」のテロップ文字が表示されているだけの画面である。
コ 甲21の1?4、甲22の1?4、甲23の1?3、甲24、甲25の1?37及び甲26の1?7は、長崎県中小企業団体中央会、社団法人長崎県物産振興協会、社団法人長崎県食品衛生協会、長崎市ブランド振興会、放送業者、広告業者、運送業者、取引者及び需要者から得た証明書であるところ、当該証明書は、いずれも1枚の用紙からなり、その文面は、「(1)下記商標は、『長崎県長崎市大手1丁目10-12 有限会社岩崎食品』が、商品『角煮入りまんじゅう』に関して、平成8年1月より現在に至るまで継続して、長崎県を中心として日本全国において、大々的に使用してきたものであること。(2)また、下記商標と同一または類似の商標を商品『角煮入りまんじゅう』に使用している者は他になく、かつ、上記のように大々的に継続して使用しているため、下記商標に接した場合には、下記商標が他社取扱いの商品『角煮入りまんじゅう』と明確に区別できる目印としての役割を果たしていること。(3)その結果、商品『角煮入りまんじゅう』についての下記商標は、需要者をして何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っている状態が存すること。」と不動文字で印字され、その下の「記」部に本願商標が表示されている。さらにその下、用紙の下部には、「上記事項は、事実に相違ないことを証明します。」との不動文字の下に作成者が記名押印している。証明書の日付は、甲25の10が平成16年7月17日である以外は、平成16年9月14日?10月1日にかけてのものである。
これらの証明書を作成した56名の住所は、長崎県(43名)、佐賀県・福岡県・熊本県・広島県・大阪府・東京都(いずれも2名ずつ)及び茨城県(1名)である。
サ 同じく、甲66の1?5は、放送業者及び取引者から得た証明書であるところ、当該証明書は、いずれも1枚の用紙からなり、その文面は、「下記の『長崎角煮まんじゅう』は、 長崎市大手1丁目10番12号有限会社岩崎食品(岩崎本舗)が、平成7年より『角煮入りまんじゅう』に使用している商標として、広く知られていることを証明します。」と不動文字で印字され、その下に本願商標が表示されている。さらにその下には、作成者が記名押印している。証明書の日付は、平成17年7月7日?8月10日にかけてのものである。
これらの証明書を作成した5名の住所は、福岡(2名)及び札幌・大阪・東京(いずれも1名ずつ)である。
シ 甲64の1?7は、インターネットにおける個人のブログサイト等を印刷したものである。岩崎本舗の「長崎角煮まんじゅう」の美味しさを伝える内容となっている。
ス 甲65の1?20は、請求人以外にも、地元長崎を中心に九州地方で商品「角煮まんじゅう」を製造・販売する業者がいることを示す、商品カタログ類やインターネットのウェブサイトの写しである。このうち、甲65の1?8及び10?15が長崎の業者に関するものである。
(ア)甲65の1の商品カタログには、「長崎の伝統料理『長崎卓袱』から生まれた角煮。」及び「・・・意外な隠し味も含め、無添加丸大豆の長崎醤油や塩など、長崎名物・角煮ならではの地元素材の味を活かしました。・・・」との記載があるほか、商品「角煮つつみ」の包装箱には、「長崎卓袱」、「角煮まんじゅう」(「角煮」と「まんじゅう」は書体等が異なる。)及び「つつみ」の文字が3行にわたって表示されている。
(イ)甲65の2の商品カタログには、商品「角煮まん」の包装箱に、「長崎名物」(円輪郭内に「長崎」と「名物」を2行に横書きしたもの)、「こじま特製」及び「角煮まん」の文字が3行相当にわたって表示されている。
(ウ)甲65の3の商品カタログには、表紙部分に「伝承逸品・・・長崎から」との記載があるほか、商品「角煮包み」の欄に、「吉宗の角煮まんじゅう」、「卓袱 角煮包み」(「卓袱」と「角煮包み」は書体等が異なる。)及び「しっぽくかくにつつみ」の文字が3行にわたって表示されており、「しっぽくかくにつつみ」の末尾「み」の文字と一部重なるように、「長崎卓袱料理」と記載された印影状(四角形の輪郭内に、右から「長崎」、「卓袱」及び「料理」と3行に縦書きしたもの)の表示がある。
(エ)甲65の5のインターネットのウェブサイト及び商品カタログには、商品「櫻林の角煮まんじゅう」の包装箱及び包装袋に、「長崎名物」、「櫻林の」及び「角煮まんじゅう」の文字が目立つ態様で3行相当にわたって表示されている。なお、これらの文字のうち、「長崎」及び「角煮まんじゅう」の文字部分の書体は、本願商標と同一のものと認められる。
(オ)甲65の7のインターネットのウェブサイトには、商品「角煮まんじゅう」の写真とともに、「長崎の味」、「角煮」及び「まんじゅう」の文字が3行にわたって縦書きされている。
(カ)甲65の10のインターネットのウェブサイトには、「角煮まん・角煮丼」の見出しの下、「・・・長崎ならではの角煮まんじゅうです。」との記載がある。
(キ)甲65の11のインターネットのウェブサイトには、「本場伝統の味」の見出しの下、「長崎卓袱料理の主役『角煮』を手軽に美味しく食する逸品が『角煮まんじゅう』です。本場長崎の地から真心を込めてお届けします。」との記載があるほか、「長崎角煮まんじゅう 5個パック」及び「長崎角煮まんじゅう 10個パック」の記載もある。
(ク)甲65の12のインターネットのウェブサイトには、「[商品名]」の見出しの下、「長崎プチ角煮まんじゅう10個入り(箱つき)」との記載が、また、「[商品説明]」の見出しの下、「角煮まんじゅうは卓袱料理(しっぽくりょうり)からうまれました。・・・長崎プチ角煮まんじゅう5個入り・・・長崎市で生産しています。・・・」との記載がある。
(ケ)甲65の14のインターネットのウェブサイトには、「↓おすすめ!売れ筋はこちら」の見出しの下、「★角煮まんじゅう!★」及び「長崎県産のSPF豚バラ肉を、長時間とろっとろに煮込んだ長崎名物の角煮!ふわふわの饅頭で美味しさ倍増です!」との記載がある。
(コ)甲65の15のインターネットのウェブサイトには、「ヤマオ食産の角煮まんじゅう」の見出しの下、「中国古来からの精進料理が日本に伝来して、長崎独特の卓袱(しっぽく)料理となりその中の逸品に角煮があります。ヤマオ食産の『角煮まんじゅう』の角煮は・・・丹精込めて作り上げたこの長崎の味。『ヤマオ食産の角煮まんじゅう』をご賞味くださいませ。・・・贈り物にも長崎の味として『ヤマオの角煮まんじゅう』をご利用下さい。・・・」との記載がある。
(3)以上の証拠に基づき、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものであるか否かを検討する。
ア 上記(2)ア、ク、ケ及びシを総合すると、請求人の製造・販売に係る商品「角煮まんじゅう」自体は、テレビ・ラジオ番組、雑誌、新聞、インターネット等で多数紹介される程の人気商品となるとともに、「第28回長崎県特産品新作展最優秀賞」(甲17)、「2002年度ヒットビジネス大賞」(甲18)及びTBS放送のテレビ番組「はなまるマーケット」の「2003年今日のおめざ大賞2位」(甲20)を受賞するなどしており、当該商品分野では、相当程度に周知なものとなっていることが認められる。
しかしながら、これらにおいて使用されている標章「長崎角煮まんじゅう」は、請求人の店舗名である「岩崎本舗」の文字や、請求人の名称の一部である「岩崎食品」の文字、又はISマークとともに用いられているものがほとんどであり、これらの文字等が商品の出所表示として強く印象付けられるものである。
イ 上記(2)イ及びエ?キの写真及び各種広告等媒体において使用されている標章「長崎角煮まんじゅう」も、請求人の店舗名である「岩崎本舗」の文字や、請求人の名称の一部である「岩崎食品」の文字、又はISマークとともに用いられており、これらの文字等が商品の出所表示として強く印象付けられるものである。
ウ 上記(2)ウの全国の百貨店等で開催された物産展等の広告チラシ等(甲62の1を除く。)でも、同様に、標章「長崎角煮まんじゅう」は、請求人の店舗名である「岩崎本舗」の文字や、請求人の名称の一部である「岩崎食品」の文字とともに用いられているものである。また、当該広告チラシ等に同時に掲載されている他社商品の記載内容との関係で相対的にみれば、標章「長崎角煮まんじゅう」は、いずれも自他商品の識別標識である商標というよりは、むしろ、商品の内容を記述的に表示したものとして需要者に理解されるというのが相当である。よって、「長崎角煮まんじゅう」の標章それ自体が需要者に強い印象を与えるものとは考え難い。
エ 上記(2)コ及びサの各証明書は、それぞれ、同一内容の文面が印刷された証明書用紙に各証明者が日付を記入し、記名押印するという形式によるものであって、証明者がいかなる根拠に基づき、本願商標が需要者をして何人かの業務に係る商品であることを認識することができる程に広く知られていると確実に認められていることを証明したのか、その証明の判断の客観的な過程が明らかでない。また、これらの証明者(全61名)のうち、約7割(43名)は長崎県に住所地を有する者であり、残る約3割(18名)の証明者もいかなる基準で選択されたのか明らかでない。
オ 上記(2)スのとおり、請求人以外にも、長崎で商品「角煮まんじゅう」を製造・販売する業者が多数存在している(甲65の1?8及び10?15)。また、これら長崎の業者においては、商品「角煮まんじゅう」について、「長崎名物」、「長崎卓袱料理」、「長崎の味」及び「長崎ならではの角煮まんじゅう」などと称して、「長崎」に由来した商品であることを広告宣伝しているほか、さらには、上記(2)ス(キ)及び(ク)のとおり、本願商標と同様に「長崎角煮まんじゅう」と表示し、使用している者がいるほか、「長崎プチ角煮まんじゅう」(中間の「プチ」(小さい)の語は、「角煮まんじゅう」の大きさを表すものとして理解されるにすぎないものと認める。)と表示し、使用している者もいることが認められる。
(4)以上のとおりであるから、請求人の提出に係る各証拠を総合しても、請求人の製造・販売に係る商品「角煮まんじゅう」自体が、相当程度に周知なものとなっていることは認めることができるとしても、その商品について使用されている標章「長崎角煮まんじゅう」は、請求人の店舗名である「岩崎本舗」の文字や、請求人の名称の一部である「岩崎食品」の文字、又はISマークとともに使用されてきたものというべきであって、これらの文字等がその商品の出所表示として強く印象付けられるものというべきであるから、本願商標である「長崎角煮まんじゅう」の文字自体が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているとまで認めることはできない。ましてや、上記(2)ス(キ)のとおり、長崎で製造・販売される商品「角煮まんじゅう」について、「長崎角煮まんじゅう」という標章を他人も使用している事実があるのであるから、請求人のみが永年独占排他的にこれを使用してきたということもできない。
してみれば、本願商標「長崎角煮まんじゅう」がその指定商品「角煮入りまんじゅう」に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできないから、本願商標は、その指定商品について商標法第3条第2項の要件を具備しないものといわざるを得ない。
3 結語
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないものであるから、これを理由に本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本願商標




審理終結日 2007-09-03 
結審通知日 2007-09-07 
審決日 2007-09-19 
出願番号 商願2004-4645(T2004-4645) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (Y30)
T 1 8・ 13- Z (Y30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 護 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 岡田 美加
田村 正明
商標の称呼 ナガサキカクニマンジュウ、カクニマンジュウ 
代理人 堤 隆人 
代理人 小堀 益 

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