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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y10
審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y10
管理番号 1164080 
審判番号 無効2006-89016 
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-02-15 
確定日 2007-08-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第4792485号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4792485号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4792485号商標(以下「本件商標」という。)は、平成15年12月26日に登録出願され、別掲のとおりの構成よりなり、第10類「業務用美容マッサージ器,医療用機械器具,家庭用電気マッサージ器」、第14類「身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」及び第29類「ゲルマニウムを主材料とする顆粒状・粉末状・液体状・ゲル状・固形状・錠剤状・カプセル状の加工食品」を指定商品として、同16年8月6日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証を提出した。
1 請求の理由
(1)はじめに
本件商標は、輪郭中に球を有するような楕円図形を斜めに配した右側に「TO」の欧文字を大きく表した部分と、その上部に小さめに「INHERIT TOGETHER OPINION」の欧文字、及び下部に「JAPAN」の欧文字を書した構成よりなり、第10類、第14類及び第29類に属する商品を指定商品として、平成15年12月26日に登録出願され、同16年8月6日に設定登録がされたものである。
しかしながら、本件商標は、商標法第3条第1項柱書及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(2)本件商標の由来について
まずはじめに、本件商標の由来について説明すると、これは当初、本件商標の登録出願以前の平成15年2月において設立された株式会社Inherit Together Opinion(甲第3号証、以下それぞれの頭文字をとった通称の「株式会社アイティーオー」として表記する。)が採択、使用を開始した商標であって、同社の商標である。
被請求人は、同社と取引関係があったというだけで、資本的なつながりはなく、また同一企業グループに属するものでもないので、既に本件商標の出願時において、無関係の他者の商標を登録出願していたことになる。
実際に株式会社アイティーオーが使用していた商標は、本件商標中の「JAPAN」の文字はないが、この点は後述するとして、その他の構成要素は本件商標と全くの同一である。
よって、実質上本件商標は同社により使用されていたものであるが、この点を示す証拠として、甲第4号証ないし甲第11号証において、当時の株式会社アイティーオーの会社パンフレットや取引書類及び商品チラシを提出する。
ところで、この株式会社アイティーオーは、現在でも存続する会社であるが、その営業は本件審判請求人である株式会社アイティーオージャパン(甲第12号証)に引き継がれた格好となっている。
具体的には、請求人への営業譲渡に関する取り決めが、まずは平成15年11月15日の株式会社アイティーオーの取締役会において、甲第13号証の取締役会議事録に示すとおり承認された。
ここでは、株式会社アイティーオーから請求人への営業の引継ぎ内容の明細やその他の取り決めがなされているが、これを受けて平成15年12月10日、請求人である株式会社アイティーオージャパンが、甲第12号証のとおり設立され、その後、同月15日に、正式に両社間で営業権譲渡契約が締結された(甲第14号証)。
このうち、特に重要なのは、甲第13号証の取締役会議事録において、ロゴマークの継続使用についての取り決めがなされている点である。
すなわち、取締役会議事録の項目2(7)において、「ロゴマーク、垂幕は継続使用し、ITOがITO-Jになるだけで原則変わらない」ということが明記されているが、ここでいう「ロゴマーク」とは、甲第11号証までに明らかなとおり、本件商標のことで、厳密には本件商標から「JAPAN」の文字をとった形の商標のことである。
そして、「ITO」が「ITO-J」になるということは、「アイティーオー」から「アイティーオージャパン」にロゴが引き継がれることに併せ、あらたに付け加わった「J」、すなわち、「JAPAN」の文字をロゴに付加するということであり、ここに、本件商標が誕生することになる。
本件商標は、もともとの所有者であった株式会社アイティーオーから、その営業とともに請求人に正式に引き継がれたものであり、これによって請求人が本件商標を使用する正当な権利を受けたのである。
(3)商標法第3条第1項柱書について
上記(2)のとおり、本件商標に係るロゴマークは、株式会社アイティーオーより請求人、株式会社アイティーオージャパンへ正式に引き継がれたものであり、商標中の欧文字部分「INHERIT TOGETHER OPINION」が、株式会社アイティーオーの正式社名また請求人の英語社名に応答することからも明らかなように、請求人がその使用及び出願・登録に関し正当な権原を有する商標である。
一方、本件商標権者である被請求人は、もし自らが使用する商標であるならば、他社の社名を冠したような本件商標を登録出願する必然性は全くないのであって、このような商標登録を有しているのは極めて不自然である。
ところで、請求人は、本件審判請求に先立ち、本件商標に対して商標登録異議申立を行ったところ、当該異議決定において、「本件商標権者が自己の業務に係る商品について、将来にわたって本件商標を使用する意思がないとみることはできず、これを認めるに足る証拠もない」などとされている。
しかし、上記のとおり、請求人の名称をそのままロゴ化した構成よりなる本件商標を、株式会社ベーシックアート、また変更後においては株式会社ミツコーポレーションなる名称の被請求人が使用する意思がないことは、現在においてはおろか、将来においても明らかである。
(4)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、請求人がその使用及び出願・登録に関し正当な権原を有する商標であるが、これを他人が請求人に何らの連絡を行うことなく、しかも不自然な形で剽窃的に出願、登録を行うことは、公序良俗に反する。
商標法第4条第1項第7号は、公序良俗に反する商標の登録を排除するが、前記異議決定では同規定の趣旨に関し、「商標の構成が矯激、卑隈、差別的な印象を与えるような文字又は図形からなるものばかりではなく、当該商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、あるいは一般道徳観念に反する商標、また公正な秩序を損ない、取引秩序の商道徳、国際信義に反する場合も含まれるものと解される」としている。
すなわち、本件商標を被請求人がその指定商品について使用することが、社会公共の利益に反し、あるいは一般道徳観念に反し、また公正な秩序を損ない取引秩序の商道徳に反する場合には、本件商標は同規定に該当し、登録を無効とされるべき商標となる。
そこで、これらについて検討するに、株式会社アイティーオーから正式にその営業とともに請求人に引き継がれた本件商標は、請求人がその商品について使用するというのが本来の姿であり、何らそのような関係のない被請求人がこれを使用するというのは、明らかにおかしい。
このような商標登録を許し、被請求人にこれを使用する余地を与えるという状況自体、社会公共の利益に反するものといえるし、剽窃的な本件商標の使用、登録を認めることは、一般道徳観念にも取引秩序の商道徳にも反するものである。他人の商標を勝手に登録してしまうような行為は、本来説明を要するまでもなく許されないのであって、本件商標が公序良俗に反することは当然の結論である。
本件商標は、そもそも誰のものであるかという単純かつ最も重要な点に思いを致すとき、これが請求人のものであることは疑うべくもなく、本件商標登録の不当性は、これを請求人以外の者がその意に反して出願し、登録したという時点において確定的となっているのである。
よって、異議決定に述べる上記の理由付け以前に、本件商標は誰のものであるかという点が本来検討されるべきであって、その検討段階で既に本件商標が公序良俗に反するものであることは一見して明らかなのである。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、被請求人の業務に係る商品につき使用されるものではなく、また、被請求人がこれを本件指定商品につき使用することは公の秩序又は善良の風俗に反するため、商標法第3条第1項柱書及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
2 弁駁の理由
(1)被請求人は、まず本件商標を使用する正統な権原は請求人が有しているという点については、もともと本件商標を使用していた株式会社アイティーオーの存在とその営業を請求人が承継したということを認めながら、これを本件とは何ら関係のない事実であると述べ、その際、甲各号証が書証としての適格性を欠くとの主張を行っている。
しかしながら、これらは十分に書証としての適格性を有するものである。
このうち、甲第4号証ないし甲第7号証、及び甲第9号証ないし甲第11号証については、年月日の記載がなされていないことを指摘する。
まず、甲第4号証ないし甲第6号証のパンフレット等については、いずれも甲第3号証の商業登記簿謄本に記載の「株式会社 Inherit Together opinion」の英文字の頭文字をとった略称である「株式会社アイティーオー」の表示、英語社名である「INHERIT TOGETHER OPINION Inc.」の表示、正式名称の片仮名文字表記である「株式会社インヘリツト トゥギャザー オピニオン」の表示、また住所の表示がなされている。
そして、株式会社アイティーオーが平成15年2月26日に設立されたものであり(甲第3号証)、その営業権が同年12月15日に請求人に譲渡された(甲第14号証)ことからは、その間にこれらパンフレット等が使用されていたことが分かるのである。
また、甲第9号証ないし甲第11号証のチラシにあるブレスレットや食品は、甲第4号証のパンフレット記載の事業内容にある「(ア)医療用機器の販売、(イ)家庭用雑貨の販売、(ウ)健康食品の販売」にあたるのであって、ここからは株式会社アイティーオーが当時これら商品を販売していたことが分かる。
ここに挙げる書証は、もともと株式会社アイティーオーが本件商標を使用していたことを証明するものであるが、上記のとおり、会社の営業時期と社名表示が一致しており、本件商標も付されていることから、十分これら書証により当該事実は裏付けられる。
なお、被請求人は、甲第7号証にも日付の記載がないとするが、ここには「平成15年12月4日」という日付が記載されているのであり、日付記載のある納品書控え(甲第8号証)と併せ、これらは上記事実をさらに裏付けるものである。
次に、被請求人は甲第13号証について、ここに記載されている「ITO-J」との表現が、請求人「アイティーオージャパン」を指称するという点に関し、そのような主張は妥当でないとする。
しかし、甲第13号証は、「2、(株)アイティーオーとアイティーオ-ジャパンの取決め事項」と記載されていることからも分かるように、両者間の取決めに関する記録であり、「ITO」が「(株)アイティーオー」を表し、「ITO-J」が「アイティーオージャパン」を表すことは、英文字の読み方に照らしても、また取決めの内容に照らしても明らかである。
さらに、被請求人は、甲第15号証ないし甲第17号証、及び甲第21号証には日付の記載がないと指摘する。
これら書証は、上記のとおり、ロゴに「JAPAN」が付加されたかたちのまさに本件商標が、請求人により使用されていることを示すものであるが、平成15年12月10日に設立され(甲第12号証)、同月15日に営業権の譲渡を受けた(甲第14号証)請求人が、上記取決め(甲第13号証)により使用することとなった本件商標を実際に使用していることは、会社設立の時期や本件商標の表示から、これらにより十分に裏付けられる。
加えて、甲第18号証ないし甲第20号証では、FAXの送信日時の記録より、これらチラシが2004年3月10日に存在していたことが分かり、同様に本件商標も表示されている。
このように、被請求人は細かな点を指摘して書証の適格性をいうが、本件甲各号証は、いずれも十分に請求人の主張をそれぞれ裏付けるものである。 さらに、被請求人は、「いかなる商標を採択し、出願するかは本来自由であって、かかる採択商標が商標法上規定されている3条及び4条の各登録要件のいずれにも該当しない場合には、当然登録されるべきものである」と述べ、本件商標の登録につき開き直りともとれる態度をとっている。
たしかに、商標の採択やそれを登録することは本来自由であるが、ここにいう自由は無論、他人の商標を剽窃的に登録することの自由までをも含むものではない。
(2)本件商標が商標法第3条第1項柱書に違反することについて
被請求人は、本件商標を被請求人が使用する意思がないことを認めるに足る証拠が提出されていない旨を述べる。
しかし、何故に株式会社ベーシックアートあるいは株式会社ミツコーポレーションなる名称の被請求人が、他人である株式会社アイティーオーが使用し、株式会社アイティーオージャパンが引き継いだ本件商標を使用するのか、全くその根拠は見出せない。
しかも、使用する意思があるというのではなく、単に使用意思がないことを示す証拠がないと主張するのみであるから、被請求人が本件商標を自己の業務に係る商品について使用するものでないことを物語っている。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することについて
ここでも被請求人は、積極的に本件商標が上記条項に該当しないものであることを反論するのではなく、単に証明がなされていないという主張を繰り返すのみであるから、逆に被請求人が不正の意図をもって本件商標登録を行ったことが、答弁により明らかである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁しその理由を要旨次のように述べている。
(1)請求人は、「被請求人は、請求人と取引関係があったというだけで資本的なつながりはなく、また同一企業グループに属するものでもないので、既に本件商標の出願時において無関係の他者の商標を商標登録出願していたことになる」としている。
しかしながら、わが国商標法においては、いかなる商標を採択し、出願するかは本来自由であって、かかる採択商標が商標法上規定されている第3条及び第4条の各登録要件のいずれにも該当しない場合には、当然登録されるべきものである。
(2)請求人は、甲第3号証ないし甲第21号証を提出しているが、これらの証拠方法からは株式会社アイティーオーという会社が存在していたこと及び当該法人の営業を平成15年11月15日をもって、請求人が譲受けたという事実は認められるものの、かかる事実が本件といかなる関係に有るのか被請求人には到底理解できないところである。
特に、これらの証拠方法のうち、甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第9号証ないし甲第11号証は年月日の記載がなく、書証としての適格性に欠けるものである。
(3)請求人は、甲第13号証の取締役議事録で「ITO-J」をして「アイティーオージャパン」を指称する旨述べているが、かかる主張を裏付ける証拠方法が提出されていない以上、かかる主張は妥当ではない。
更に、請求人は甲第15号証ないし甲第21号証をもって、本件商標の商標登録出願時である平成15年12月26日の時点において請求人が株式会社アイティーオーから営業の譲渡を受け、同種の商品について「JAPAN」の文字を付加した形で以前のロゴマークを継続的に使用しているとしているが、甲第15号証ないし甲第17号証及び甲第21号証には年月日の記載がなく、甲第18号証ないし甲第20号証は、2004年3月10日水曜日の15時42分に、これらの書証がファックス送信された旨の表示を認めることはできるが、これらの書証の発行年月日等の表示はどこにも見当たらないものであることから、被請求人は、上記請求人の主張を到底受け入れることはできない。
(4)請求人は、「被請求人が現在においておろか、将来においても本件商標を使用する意思がないことは明らかである」と断言をしている。
しかしながら、請求人が本件商標登録に対して提起した登録異議申立(異議2004-90615号)の決定書において指摘されているとおり、被請求人が自己の業務に係る商品について将来にわたって,本件商標を使用する意思がないとみることはできず、これを認めるに足りる証拠は、先に述べてきたことからも明らかなように、何等提出されていないものである。
(5)請求人は、先に挙げた異議決定において指摘された「(ア)平成15年12月2日に請求人の代理店会役員会が開かれた事実(イ)同役員会において、請求人の代表より本件商標の出願を予定している旨が語られた事実(ウ)同役員会に本件商標権者の代表者が出席していた事実」については、甲第22号証より明らかである旨述べているが,先に述べたように、甲第22号証自体、証拠方法としての適格性を欠くものであり、請求人は(ア)ないし(ウ)のいずれをも証明していないものである。
まして、(エ)の被請求人の意図に至ってはかかる事実を証明する客観的な事実が何等提出されていない以上まったく証明されていないものである。
(むすび)
以上、本件商標は、請求人の主張する商標法第3条第1項柱書及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。
したがって、本件審判請求は理由がない旨の審決を求めるものである。

第4 当審の判断
本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、本件審判請求人より提出された甲各号証及び請求人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)甲第12号証「履歴事項全部証明書」によれば、請求人は、医療用機器の販売、健康器具の販売、家庭用雑貨の販売、ほかを目的として、平成15年12月10日に設立されたこと。
そして、甲第14号証「営業権譲渡契約書」によれば、請求人は、平成15年11月15日に開催された「株式会社INHERIT TOGETHER OPINION(株式会社アイティーオー)」の臨時取締役会に基づき営業権を有償で譲り受けたこと。
また、甲第4号証ないし甲第11号証によれば、「株式会社INHERIT TOGETHER OPINION」は、その頭文字の3文字をとって「株式会社アイティーオー」と表記されており、上記の「INHERIT TOGETHER OPINION」の欧文字及び本件商標と同じ図形とからなる標章(但し「JAPAN」の文字はない。)が同社のパンフレット、封筒、商品購入申込書、納品書、商品チラシ(各写し)等に使用されていたこと。
そして、少なくとも上記の書証のうち、納品書控3通(甲第8号証)の記入年月日は、それぞれ本件商標出願前の平成15年4月28日、平成15年5月7日及び平成15年5月16日であることを認めることができる。
(2)次に、甲第15号証ないし甲第21号証によれば、株式会社アイティーオーより営業権を譲り受けた請求人は、株式会社アイティーオーが使用していた前記の「INHERIT TOGETHER OPINION」の欧文字及び本件商標と同じ図形とからなる標章と同じ標章に「JAPAN」の文字を加えた標章(本件商標と同一のもの。)を同社の封筒、会員入会の案内パンフレット、商品購入申込書、商品チラシ(各写し)等に使用していたことが認められ、この標章(ロゴマーク)の継続使用及び「J」(JAPAN)の文字を付加することについては、前記した平成15年11月15日開催の取締役会議事録(甲第13号証)により認め得るところである。
(3)また、甲第22号証及び請求人の主張によれば、被請求人(当時の名称は株式会社ベーシックアート)は、株式会社アイティーオーの設立当初より、商品供給元として同社を支援しており、その後、営業を請求人に譲渡することとなったが、被請求人はその際も協力する体勢をとっていたことが窺われ、合同役員会等にも出席していたものと推認し得るところである。
(4)上記の(1)、(2)の事実、提出に係る甲各号証、及び上記(3)のとおり、被請求人は請求人と取引関係があったとの請求人の主張(被請求人はこれを否認していない。)を総合すると、本件商標は、請求人が営業権を譲り受ける前に株式会社アイティーオーが同社の標章(ロゴマーク)として使用していたものと「JAPAN」の文字を除き全く同一のものである。
また、本件商標と同一の標章は、その営業権を譲り受けた請求人が株式会社アイティーオーとの取り決め事項(甲第13号証)に基づいて使用しているものであり、加えて、その構成中の「INHERIT TOGETHER OPINION」の欧文字は、同社の社名から採用した欧文字表記を請求人が継続使用する旨のことが、同じく取り決め事項(甲第13号証)により認め得るところである。
他方、被請求人は、本件商標の登録出願の採択の理由、請求人との関係等については、何らの答弁をすることなく、「わが国商標法においては、いかなる商標を採択し、出願するかは本来自由であって、かかる採択商標が商標法上規定されている3条及び4条の各登録要件のいずれにも該当しない場合には、当然登録されるべきものである。」と述べ、かつ、請求人の提出に係る書証の適格性が欠ける旨を答弁するのみである。
しかして、本件商標は、前記したとおり、請求人がその営業権を譲り受けた株式会社アイティーオーが設立当初より使用していた標章と酷似し、かつ、譲り受けた後の請求人も継続使用している標章とその構成態様を同一にするものである。
してみれば、被請求人(商標権者)は、上記の一連の経緯を十分に知悉していたにも拘わらず、当該標章が、本件商標の登録出願時に登録されていないことを奇貨として、請求人らに無断で登録出願し、登録を得たことは、公正な商取引の秩序を乱すものであり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものといわざるを得ない。
(5)結語
したがって、請求人のその余の主張について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものというべきであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 (本件商標)

審理終結日 2007-06-28 
結審通知日 2007-07-05 
審決日 2007-07-20 
出願番号 商願2003-115894(T2003-115894) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Y10)
T 1 11・ 18- Z (Y10)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 関根 文昭
久我 敬史
登録日 2004-08-06 
登録番号 商標登録第4792485号(T4792485) 
商標の称呼 インヘリットトゥゲザーオピニオントゥジャパン、インヘリットトゥゲザーオピニオン、トゥジャパン 
代理人 木村 吉宏 
代理人 浜田 廣士 
代理人 小谷 武 
代理人 佐藤 英二 
代理人 工藤 莞司 
代理人 長谷川 芳樹 

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