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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z18
管理番号 1163922 
審判番号 無効2006-89152 
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-10-19 
確定日 2007-08-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第4514105号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4514105号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4514105号商標(以下「本件商標」という。)は、「CAN CAM」の文字を横書きしてなり、平成12年11月15日に登録出願され、第18類「かばん類,袋物,傘,携帯用化粧道具入れ」を指定商品として同13年10月19日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が引用する登録第1957177号商標は、別掲(1)のとおりの構成からなり、昭和60年2月21日に登録出願、第26類「印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属品」を指定商品として昭和62年5月29日に設定登録され、その後、平成9年6月24日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。同じく登録第3307451号商標は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成6年10月27日に登録出願、第16類「印刷物」を指定商品として平成9年5月16日に設定登録され、その後、平成19年4月17日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
以下、これらを一括して「引用商標」という。

3 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第13号証を提出している。
ア 利害関係
請求人が所有する引用商標は、月刊女性ファッション雑誌について昭和56年11月26日の創刊以来使用され、指定商品「雑誌」に関して日本国内において広く知られると共に著名な商標となっている。
また、請求人は、平成18年8月24日に商標「CanCam(ロゴ)」を、第18類「かばん金具,がまロロ金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,デイパック,ボストンバッグ,リュックサック,スーツケース,ブリーフケース,トートバッグ,その他のかばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」を指定商品として商標登録出願(商願2006-78773)を行っている(甲第3号証)。
この出願が審査されるとき、本件商標とは称呼が同一であることから、拒絶理由通知の引例になることは必至であり、本件商標を無効にすることにより上記商標出願の拒絶理由を解消することができる。
したがって、請求人は、本件商標の登録を無効とするにつき、法律上直接の利害関係を有する。
イ 無効事由
(1)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは同一ではない。しかしながら、引用商標が「女性向けファッション雑誌」の商標として日本国内において広く知られていることから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれがある商標」に該当し、商標法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。
(2)引用商標を題号として使用した「女性向けファッション雑誌」は、昭和56年11月26日創刊以来毎月発行され、遅くとも平成5年以降においては月刊40万部以上の販売部数を誇っている。したがって「女性向けファッション雑誌」の題号「CanCam」は、日本国内において広く知られると共に著名な商標として位置づけられている。
「CanCam」は、辞書掲載用語ではなく、フリー百科事典「ウイキペディア(Wikipedia)」に「CanCamの名前の由来は『I Can Campus』の略であり、キャンパスリーダーになれるようにという意味」と紹介されているように(甲第4号証)、英単語の「Can」と「Campus」から作られた造語である。
したがって、被請求人が本件商標「CAN CAM」を採択した行為は、ファッション雑誌として有名な商標「CanCam」が商標登録されているが、ファッション関連商品中第18類の指定商品について権利化されていなかった事実に基づき商標登録したものである。
かかる行為は、請求人の所有にかかる著名商標「CanCam」に化体した信用に只乗りして不正の利益を得る目的で出願・登録されたもので商標法第4条第1項第19号の「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの」に該当し、商標法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
(3)以下にその理由を詳細に述べる。
(ア)引用商標の周知・著名性について
請求人の発行にかかる女性ファッション雑誌「CanCam」は、甲第5号証の「2004年版雑誌新聞総カタログ」の第181頁に「創刊日1981年11月の月刊雑誌。OL1?3年生を中心に、向上心、好奇心旺盛な若い女性を対象としたファッション総合誌。発行部数378828部/ABC」と紹介されているように、女性ファッション雑誌として昭和56年11月創刊以来25年間販売され続けている。
また、2004年11月社団法人日本雑誌協会発行の「マガジンデータ」の第83頁に「『流行』を自分らしくトライするためのファッション、ヘア&メーク、ライフトレンドをナビゲート。20代前半の女性を中心に、おしゃれのCan do!を応援します。」、発行部数「513,750部」と紹介されている(甲第6号証)。
具体的な発行部数に関しては、甲第7号証の株式会社小学館の代表取締役社長相賀昌宏証明の「CanCam発行部数証明書」に記載されているように、本件商標の出願日である平成12年11月15日の時点で55万部、平成13年8月20日の登録査定の起案時で45万部の発行部数があり、その後も発行部数は継続し平成18年9月21日発行の第11月号の時点では75万部と毎月40万部以上の発行部数を誇る女性ファッション雑誌の題号商標としての周知・著名性は継続している。
このことから、請求人が発行する雑誌「CanCam」の周知・著名度は、商標法第4条第3項の規定する本件商標の出願及び査定時における周知・著名性の要件を満たしていることになる。すなわち、商標「CanCam」のロゴは、本件商標の登録出願時には既に、我が国のファッション関連商品の取引者のみならず、一般の需要者の間でも広く認識されていたというべきである。
この請求人の発行にかかる雑誌「CanCam」の月刊40万部以上という発行部数に対し、審判請求事件・侵害訴訟事件が多数請求・提起され、いわゆる特許庁及び裁判所において周知及び広く知られたと判断されている雑誌「VOGUE」「ELLE」は、それぞれ月刊10万部程度に過ぎない。かかる事実に照らせば、25年間も日本国内で数十万部発行され続けた女性ファッション雑誌の題号(商標)「CanCam」は、前述したように造語商標であることから商標「CanCam」の周知の程度は高いといわざるを得ない。
(イ)本件商標をその指定商品に使用した場合の混同の可能性について
a)女性ファッション雑誌「CanCam」の位置づけ
請求人の発行にかかる雑誌「CanCam」は、20代前半の女性をターゲットとしてファッションに関する情報雑誌として位置づけられる。
一般に女性が使用に供する「ファッション関連商品」とは、第3類「化粧品」、第14類「身節品」、第18類「鞄類、袋物、傘」、第21類「化粧用具」、第25類「被服、はき物」等をいい、本件商標の指定商品もその概念に含まれる。
これらファッション関連商品「かばん類,袋物,傘,携帯用化粧道具入れ」は、本件商標の出願前に頒布された請求人の発行にかかる雑誌「CanCam」に多数の宣伝広告・特集記事がなされており(甲第8号証ないし同第11号証)、引用商標1及び2とファッション関連商品とは密接な関係にある。
このように、本件商標の登録出願日前から請求人の発行にかかる雑誌「CanCam」に「かばん類,袋物,傘,携帯用化粧道具入れ」の商品紹介記事及び/又は広告記事が掲載されるということは、ファッション関連商品の取引者のみならず、一般の需要者の間で、造語商標である周知・著名な商標「CanCam」が指定商品「かばん類,袋物,傘,携帯用化粧道具入れ」に使用された場合には、あたかも雑誌「CanCam」と提携した商品、「CanCam」を発行する請求人から出たオリジナル商品又は推奨商品であるかの如く誤解する可能性は極めて高い。
b)ファッション雑誌の本の題号と同一の名称にかかる本件商標の使用によりファッション関連商品の取引者のみならず、一般の需要者の間で商品の出所について混同を生じる可能性の高いことの証左
・平成11年審判第35231号無効審判事件
この審判は、第21類「宝石、その他本類に属する商品」を指定商品とする登録第2723534号商標「ノエルヴオーグ/NOELVOGUE」に対して旧第26類「印刷物、但しこの商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く。」を指定商品とする登録第655209号商標「VOGUE」に基づく無効審判事件であり、審決において特許庁は「本件商標の指定商品中の『宝石、かばん等』はファッションに関連する商品である。」と判断している(甲第12号証)。
・昭和58年審判第5979号拒絶査定不服審判事件
この審判は、雑誌の題号として登録された登録第1636588号商標「JJ(ロゴ)」に基づく旧第21類の「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品とする防護標章登録出願の審査で拒絶査されたものが、指定商品を「ベルト、バックル、ハンドバッグ、スーツケース、ボストンバッグ、さいふ、がま口」に減縮補正された後の査定不服審判の審理において「上記雑誌はファッションに関する情報誌として広く普及しているものといい得るものであって、本願指定商品はファッションに関係する商品の範疇に属することが明かである。」として防護標章登録を認めた事例である(甲第13号証)。
なお、請求人にかかる雑誌「CanCam」と雑誌「JJ」とは発行部数においてほぼ同数の状況にある(甲第6号証)。
c)以上のように、ファッション雑誌の題号として日本国内において広く知られている場合には、過去の審決においても、これを第三者が第18類「かばん類,袋物,傘,携帯用化粧道具入れ」に使用する場合には、需要者は何人かの業務にかかる商品であるか混同を生じると判断している。また、雑誌「CanCam」の中では、雑誌推薦の商品として紹介されたり、プレゼント商品として毎月紹介されるものであるから、読者にすれば造語商標「CanCam」が付された商品は、請求人と関係のある商品であると誤認する可能性が極めて高い。したがって本件商標の採択は、著名商標となった「CanCam」の信用にただ乗りする行為に該当するものでもある。
(4)むすび
以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号の規定に該当するものであり、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効にすべきものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

5 当審の判断
請求人が本件審判の請求をする利害関係を有するか否かについては当事者間に争いはなく、かつ、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと認められるので、本案に入って審理する。
(1)引用商標の周知著名性について
請求人の提出に係る証拠によれば、ア)請求人は、引用商標を題号として使用した「女性向けファッション雑誌」を昭和56年11月26日の創刊以来、25年間毎月発行・販売しており、遅くとも平成5年以降は毎月40万部以上の発行部数を継続していること、イ)上記雑誌の内容及び発行部数等について、フリー百科事典「ウィキペディア」、「2004年版雑誌新聞総カタログ」及び社団法人日本雑誌協会発行の「マガジンデータ」に紹介されていること、ウ)引用商標を題号とした上記雑誌の発行部数は、周知性が認められている同種の雑誌「JJ」とほぼ同じであること、エ)引用商標を構成する「CanCam」の文字は、辞書掲載用語ではなく、英単語の「Can」と「Campus」から作られた造語であること、などが認められるところから、引用商標は、本件商標の登録出願時には、既に申立人の業務に係る雑誌について使用する商標として取引者、需要者間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
(2)商品の出所の混同のおそれについて
請求人の提出に係る証拠によれば、ア)請求人が引用商標を題号として使用する上記雑誌は、20代前半の女性をターゲットとしたファッションに関する情報雑誌であること、イ)上記雑誌には、化粧品、化粧用具、身飾品、被服、履物、かばん類、袋物、傘等のいわゆるファッション関連商品についての特集記事や宣伝広告が多数掲載されていること、ウ)上記雑誌では、雑誌推薦の商品やプレゼント商品の紹介が行われていること、などが認められる。そうすると、ファッションに関心を有する上記雑誌の購読者が、本件商標の指定商品であり、いわゆるファッション関連商品ともいい得る「かばん類、袋物、傘、携帯用化粧道具入れ」に関する情報を上記雑誌により入手し、該商品の需要者ともなることは十分考えられることであり、上記雑誌と本件商標の指定商品とは需要者を共通にし、少なからぬ関係を有するものといえる。
加えて、引用商標は、上記(1)のとおり、取引者、需要者間に広く認識されているものであり、本件商標は造語からなる引用商標と同一の綴り字からなるものであることからすると、本件商標がその指定商品に使用された場合には、該商品が上記雑誌と提携した商品、又は上記雑誌によって推奨された商品であるかの如くに誤認されるおそれがあるというべきである。
以上を総合すると、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている引用商標を連想、想起し、該商品が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
引用商標
(1)登録第1957177号

(2)登録第3307451号

審理終結日 2007-06-15 
結審通知日 2007-06-20 
審決日 2007-07-04 
出願番号 商願2000-129717(T2000-129717) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z18)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 浩子 
特許庁審判長 小林 和男
特許庁審判官 石田 清
小川きみえ
登録日 2001-10-19 
登録番号 商標登録第4514105号(T4514105) 
商標の称呼 キャンキャム、カンカム、キャンキャン、カンカン 
代理人 押本 泰彦 

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