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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
管理番号 1162486 
審判番号 取消2004-30557 
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2004-04-23 
確定日 2007-07-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第4269769号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4269769号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4269769号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示した構成よりなり、平成10年4月24日に登録出願、第25類「サンダル靴,短靴,ブーツ,ハーフブーツ,婦人靴,その他の靴類,サンダルげた,スリッパ,その他のげた草履類」を指定商品として、平成11年4月30日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べている。
1 請求の理由
本件商標は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、本件商標の指定商品について継続して3年以上日本国内において、使用をしていない。
よって、本件商標は、商標法第50条の規定に該当し、その登録を取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証について
(ア)日本における商標の使用
乙第1号証の商品カタログは、ドイツ語若しくはデンマーク語と思しき原語ですべて記載されており日本語の記載は一切ない。
商品販売活動の通常の態様を鑑みれば、日本において通用しないドイツ語若しくはデンマーク語の商品カタログを日本の販促活動に使用すること自体が極めて不自然であり、該商品カタログが日本国内において、本件商標を付して展示され、若しくは頒布され、又は該商品カタログを内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供されたものであるとは到底認められない。
仮に、日本の商品バイヤーが該商品カタログの情報に基づき商品の買い付けを決めたとしても、そのような商品カタログは日本において流通していないものであり、該商品カタログに表示されている「Dansko」なる表示が本件商標の指定商品に使用されていたとしても、日本における本件商標の使用事実に当たらないことは明らかである。
(イ)商標の使用時期
乙第1号証の1の商品カタログの右下には11‐08‐2004、乙第1号証の2の商品カタログの右下には25‐05‐2004なる記載があり、係る記載は2004年8月11日、2004年5月25日を示すものと推測されるところ、該時期が本件商標を付して、使用された時期とすれば、その使用時期は、本件審判の予告登録日以降であることは明らかである。
(ウ)商標と商品の関係
商品カタログには、「Dansko」なる表示を有するが、係る表示がいかなる対象の商品を特定し指し示すのか特定できず、「靴」を指標する表示であるのかも不明である。
本件商標「Dansko」なる表示が直接的に「靴類、草履類」へ付されている使用事実は、乙第1号証からは一切認められない。
(2)乙第2号証について
(ア)インボイスの発行者
インボイスには、「jaco」及び「JACO SKO A/S」の表示が認められる。よって、インボイスは、「JACO SKO A/S」により発行されたものであると推認される。
一方、被請求人は、2004年8月27日付で登録名義人の表示変更登録申請書を提出し、名称を「ヤックエンゲルブレッド、ストコイアングロ、ボーディンボーエイエス」から「ヤコ スコ エイエス」に変更した旨主張する。
しかしながら、被請求人が「ヤックエンゲルブレッド、ストコイアングロ、ボーディンボーエイエス」と同一人であることを被請求人は一切証明していない。
よって、インボイスは、被請求人の発行したものか不明である。
(イ)商品の発注と商品の購入
本件商標を使用した商品カタログ(乙第1号証)が日本企業の目に留まり購入に至ったとしても、該インボイスは、本件商標をその指定商品について、使用した事実の証明となるものではない。
該インボイスは、その体裁及び記載内容から、日本在の株式会社スタイル(以下「スタイル」という。)なる企業が商品を発注したことを証するために使用したものと推察される。
仮に、該インボイスは商品を発注したことを証するものであるとしても、係る発注の事実のみをもって、ある商標の付された商品が日本国内において商品の流通過程を通じ需要者に販売され、本件商標が使用された事実を証明するものではない。
スタイルが商品を発注したことをもって、本件商標が顧客吸引力を獲得することは、日本において本件商標を付した商品「靴類、草履類」が、流通過程を通じ需要者に譲渡などされた客観的な事実がない限りあり得ない。
よって、インボイスの発注者がスタイルである事実をもってして、本件商標がその指定商品について、日本国内において使用され需要者に譲渡されたものと断定することには理由がない。
(ウ)商品カタログとインボイス
被請求人は、商品カタログの発行日を何ら証明しておらず不明である。係る商品カタログの発行日すら証明することなく、インボイスの発行日をもって商品カタログの発行日は、本件審判の予告登録日前であると結論づけるが、そのように結論づける合理的な理由はない。
また、被請求人は、スタイルが商品カタログを契機として商品の購入に至り、インボイスが示す商品発注に繋がったとする客観的な事実を一切証明していない。
よって、商品カタログの発行日が本件審判の予告登録日前であるとしても、スタイルの発注が商品カタログに基づくものと判断する合理的な理由は皆無である。
(エ)インボイスと商標の使用
インボイスは、「Product No.」(品番)、「Quantity」(数量)などの表示の項目を設け、それぞれの項目に該当する情報が記載されているものの、本件商標「Dansko」なる表示は一切無い。
よって、インボイスからは、本件商標を付した本件商標の指定商品が被請求人により日本国内により輸入され、日本国内おいて譲渡等された事実を認めることはできない。
(オ)商品の購入数
インボイスにおける「Quantity」(数量)の項目欄によれば、商品毎の購入数は、すべての商品について僅か1個である。
仮に、インボイスが発注の対象とした商品が「Dansko」を表示した商品であるとしても、本件商標の指定商品が大衆消費財であることを考慮すれば、各商品が僅か1個の数量を購入し商品の流通過程に乗せ、需要者の需要を満たしうる数量とは到底考えることはできない。
よって、インボイスが発注の対象とする商品が「Dansko」を表示した商品であったとしても、係る商標の使用は名目的・形式的な商標の使用であり、本件商標の取り消しを免れうる商標の使用とは到底認められない(東京高裁 平成4年(行ケ)第144号判決同旨)。
(3)乙第3号証について
(ア)本件商標が使用された「靴」をデンマークから輸出する際の梱包箱である乙第3号証は、「Dansko」なる表示と思しき表示を有する。
しかしながら、係る梱包箱が本件商標の指定商品について使用されたか不明であり一切証明されていない。
(イ)仮に、梱包箱が本件商標の指定商品について使用されたものであるとしても、梱包箱が使用された時期を一切証明しておらず、梱包箱をもって本件商標の指定商品について、使用されたとする理由はない。また、日本国内において使用されたとする事実はない。
(4)乙第4号証について
(ア)本件商標が使用された商品を販売する際の顧客用の包装箱である乙第4号証は、係る包装箱が本件商標の指定商品について使用されたことを示す事実を一切証明していない。
(イ)仮に、包装箱が本件商標の指定商品について使用されたとしても、包装箱には、複数の模様を散りばめた散点状の模様の中に「Dansko」なる表示と思しき模様を看取できる一方、「Dansko」なる表示と思しき模様とともに「HELVESKO/白十字図形/SWISS MADE」、「LADYSKO」なる模様が併記されている。
よって、包装箱における全体の態様から、これらの表示は包装箱の模様であると理解することが普通であり、特定の商品に対する出所表示すなわち、商標ではない。これらの模様が、本件商標の指定商品の商標であるとしても、これら複数の商標のうちいずれの標章が「靴類、草履類」の商標であるのか特定することはできない。
(ウ)仮に、包装箱が本件商標の指定商品について「Dansko」なる表示が商標として使用されたと認定することができたとしても、包装箱が使用された時期を一切立証しておらず、該包装箱をもって本件商標の指定商品について、使用されたとする理由はない。また、本件商標が日本国内において使用されたとする事実もない。
(5)乙第5号証について
梱包箱・包装箱に記載された品番に係る商品とインボイス記載の品番に係る商品とが同一であることの説明資料である乙第5号証は、被請求人が「ドイツ向け商品カタログ」である旨を自白している事実から、本件商標が日本国内において使用されたものである事実を証明することはできないものである。
(6)乙第6号証について
(ア)乙第6号証のインボイスには、「KOPI」なる表示が認められるものの、被請求人がインボイスの発行者であることを認める記載は一切ない。(イ)仮に、該インボイスが被請求人により発行されたものであるとしても、請求人が乙第2号証について述べた同じ理由により、本件商標がその指定商品について、使用された事実を示すことはできない。
(7)乙第7号証について
(ア)乙第7号証は、日本への輸出依頼に対する輸送会社の受領書並びに輸出状況に関する情報であるものと推測されるが、乙第7号証が示すところの対象貨物が、本件商標をその指定商品について付した商品か不明である。
(イ)乙第7号証が示すところの対象貨物が、本件商標をその指定商品について付した商品であったとしても、当該貨物は2004年8月23日にデンマーク国コペンハーゲンに集荷され、同年8月25日に日本へ輸入されたのであるから、かかる輸入時期は本件審判の予告登録日より後である。
(8)結語
以上のとおり、被請求人が提出する乙第1号証ないし乙第7号証は、被請求人が本件商標を、その指定商品について、本件審判の予告登録(平成16年5月17日)前3年以内に、日本国内において使用している事実を示すことができないことは明らかである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、本件商標が使用されている商品カタログである。
このうち、乙第1号証の1の「Herbst/Winter 2003」(秋/冬2003)は、秋冬物のカタログであり、乙第1号証の2の「Fruhjahr(「u」には、ウムラウト記号が付されている。以下同じ。)/Sommer 2004」(春/夏2004)は、春夏物のカタログである。該カタログには、商標「Dansko」が使用されている。なお、商標「Dansko」は、本件商標の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であって、同一の称呼及び観念を生ずる商標であり、社会通念上同一であることは明らかである。
各商品の写真の下に記載されている3桁の数字は品番(簡略番号)であり、その品番の下のローマ文字は商品の型(例えば、「Laurence」等)を表している。また、各商品の写真の右に記載されている数字及びローマ文字は品番(完全番号)と色彩(「Schwarz:黒」、「Braun:茶」等)を表している。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、本件商標が使用されている「靴」の発注に対しその受領を示すインボイスである。
該インボイスは、「スタイル」(住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-7-11)から2004年2月3日付で発注を受け、発行されたものである。発注日である2004年2月3日は、本件審判の予告登録日よりも前である。
このことより、少なくとも本件審判の予告登録日前には、すでに本件商標を使用した商品カタログ(乙第1号証)が日本の企業の目に留まり、購入に至ったといえる。
該インボイス中、左端の欄に記載されている数字が商品番号となる。商品番号の8桁の数字のうち、最初の5桁が品番を表し、下3桁はサイズを表している。例えば、商品番号「54700 380」は、型が「CENTRO BLACK」でサイズが「38」ということになる。
該インボイスにより、品番「54700」の商品が10個、品番「37500」の商品が10個、品番「61400」の商品が10個、品番「58100」の商品が10個、品番「53784」の商品が10個、合計50個の靴が東京のスタイルに販売された事実を確認できる。
なお、スタイルが購入した商品(該インボイスに記載されている商品)は、乙第1号証に掲載された商品である。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は、本件商標を使用した商品「靴」をデンマークから輸出する際の梱包箱の複写である。該梱包箱には、本件商標が使用されている。
(4)乙第4号証について
乙第4号証は、商品を販売する際の顧客用の包装箱の複写である。該包装箱にも本件商標が使用されている。また、該包装箱の側面には、本件商標と商品番号等を記したシールが貼付されている。
乙第3号証及び乙第4号証に記載された品番は請求書中のものと相違しているが、実際の商品は同じものであることを説明すると、これらの品番はオリジナルの番号であって、ドイツ等の市場向けの番号である。これに対して、請求書に記載の品番は日本向けの番号であって、オリジナル番号から、先頭文字「1」を除いた番号となっている。これは、特別な商業目的によるものであって、商品が異なることを意味するものではない。
このことは、乙第1号証のカタログに掲載されている商品と、ドイツ向け商品カタログ(乙第5号証)に掲載の商品との比較により確認できる。
(5)乙第6号証について
乙第6号証は、2004年3月22日付の正式インボイスである。乙第2号証のインボイスが発注に対して発行される受領書の役割を果たすものであるのに対して、乙第6号証のインボイスは正式な請求書の役割を果たすものであり、船積みインボイスとなる。したがって、乙第6号証のインボイスの請求項目の詳細は、乙第2号証のインボイスと同一である。
(6)乙第7号証について
乙第7号証は、本件商標を使用した商品の輸出を証明する書類である。
乙第7号証の1は、商品の日本への輸出依頼に対する受領書であり、乙第7号証の2はディー・エイチ・エル・ジャパン株式会社のホームページによる輸送状況についての情報である。乙第7号証によると、当該商品は、2004年8月23日に船積みされ、2004年8月25日に東京に到着していることが確認できる。
以上のとおり、被請求人は、本件審判の予告登録前3年以内に日本国内において、本件商標をその指定商品について使用している事実は明らかである。
(7)被請求人は、2004年8月27日付で登録名義人の表示変更登録申請書を提出し、名称を「ヤックエンゲルブレッド、ストコイアングロ、ボーディンボーエイエス」から「ヤコ スコ エイエス」に変更した。証拠書類中、両名称が使用されているが、主体は同一である。
2 弁駁に対する答弁
本件に関し、被請求人による使用事実を吟味した結果、先の答弁内容を一部変更する必要性が生じた。一方、請求人の弁駁内容を勘案し、先の答弁書には添付しなかった新たな証拠を提出する(乙第8号証ないし乙第11号証)。
商品カタログについて、先の答弁内容を変更する。
まず、乙第1号証の1及び2であるが、当該カタログは、2003年の秋にデンマークのコペンハーゲンで開催された「Shoes Fair」にてスタイル株式会社(以下「スタイル社」という。)に頒布されたものである。当該カタログは確かに日本人のバイヤーに頒布されたものであるが、頒布場所が日本国内ではなかった。
これに対し、乙第5号証は確かに日本のスタイル社に向けて、2003年の9月ないし10月に頒布されていたので、乙第8号証を新たに提出し、当該事実を説明する。乙第8号証は、第三者による宣誓書であって、宣誓の内容は、「2004年8月27日付で提出された乙第5号証として示されている商品カタログは、『dansko』 商品の製造者であるJaco Sko A/Sの日本における取扱業者であるスタイル社(東京都渋谷区千駄ヶ谷3-17-11)に向けて、2003年の9月ないし10月の間に75部発送されたことを証明する」ものとなっている。
このことより、商品カタログが、遅くとも本件審判の予告登録日である2004年(平成16年)5月17日前には、日本の顧客の中の一社であるスタイル社の手元に届いていたものといえる。
なお、上記乙第8号証は、商品カタログが日本のスタイル社の手元に確実に到着したことを直接的に示すものではない。しかしながら、2003年の9月ないし10月に発送した商品カタログが、現在の郵送事情のもと、2004年5月17日までに到着していないとするのは極めて不自然である。また、乙第2号証(インボイス)に示すように、スタイル社は、2004年2月3日付で、Jaco Sko A/Sに対し、本件商標が使用されている商品の発注を行っている。このことより、商品カタログは遅くとも2004年2月3日前には、日本のスタイル社の手元に届いていたものといえる。これについて、請求人は、「『商品カタログが日本企業の目に留まり購入に至った』という主張は非論理的かつ根拠がない」としている。しかしながら、商品カタログがなければ、発注はありえない。
ところで、乙第5号証の商品カタログは、「ドイツ語」で記載されている。しかしながら、該商品カタログに記載の商品は「靴類」等であって、そのデザイン及び材質等が基準となって選択・購入されるものであるという性質から、商品カタログに掲載の写真を見れば、商品を認識できるものである。したがって、商品カタログに日本語以外の言語が用いられているという事実はおよそ問題とはならない。
さらに、該商品カタログは、一般消費者向けに頒布されたものではなく、靴類などのファッションブランドを取り扱う商社に頒布されたものである。すなわち、該商品カタログは日本語以外の言語、ドイツ語が十分に通用するバイヤーに向けたものである。したがって、該商品カタログは十分にその役割を果たすものであり、本件商標の表示も十分に自他商品の識別力を発揮するものといる。
なお、乙第8号証の宣誓書を提供した「ComfotSchuh」は、ドイツ企業であり、ドイツ、オーストリア及びスイスにおける「dansko」商品の大口バイヤーである。
また、ドイツ語の商品カタログが原語のまま日本の商社に発送された理由は、日本のスタイル社との取引が日本における取引の初段階にあったこと、また、Jaco Sko A/Sの経営規模がそれほど大きくないことの理由により当初から日本語のものを作成しなかったとの事情による。しかしながら、日本のスタイル社が現地のフェアーに参加した事実が示すように、本件の商品に興味のあるスタイル社にとって商品カタログが日本語で記載されていないことは特に問題にはならないと考える。
ところで、請求人によりると、「『DANSKO』なる表示が『直接的に靴類、草履類へ付されている事実』は乙第1号証の1からは一切認められず、…。」としている。確かに、乙第1号証の1及び2、さらに乙第5号証からは、本件商標が付されている事実を認識できない。しかしながら、本件商標は、確かにその指定商品に直接的に付されている。このことの証左として、被請求人は、乙第9号証を提出する。乙第9号証により、靴の内側に本件商標を認識することができる。なお、乙第9号証に示す靴の品番は明らかではないが、「dansko」商品の靴底への本件商標の使用は、靴のタイプにかかわりなく、同様の態様となっていることを申し添える。
以上のことから、乙第5号証、乙第8号証及び乙第9号証より、本件商標がその指定商品について、本件審判の請求の予告登録前3年以内に日本国内において使用されていることが証明されたものと思料する。
さらに、追加証拠として乙第10号証及び乙第11号証を提出する。
乙第10号証は、「ヤコ スコ エイエス」と「ヤックエンゲルブレッド、ストコイアングロ、ボーディンボーエイエス」の同一性を証明するものであり、乙第11号証は、本件商標を使用した商品について、スタイル社から注文があった旨を示すインボイスである。
また、請求人の乙第2号証ないし乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証に関する弁駁の内容は、いずれも理由がない。

第4 当審の判断
1 商標法第50条第1項に規定するの商標登録の取消審判の請求があったときには、同条第2項において、その審判の請求の登録(本件審判の場合は、平成16年5月20日)前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、又は使用していないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにした場合を除いて、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないとされているものである。
2 そこで、本件についてみるに、被請求人の提出に係る乙各号証を徴するに、次の事実が認められる。
乙第1号証の1は、「Herbst/Winter 2003」と、乙第1号証の2は、「Fruhjahr/Sommer 2004」と、それぞれ題する商品カタログであり、「A/S JAC.ENGELBREDT」と、各種「靴」の写真と共に「Dansko」の表示がある。
乙第2号証は、被請求人が日本のスタイル株式会社からの発注に対して作成したインボイス(写し)であり、「JACO SKO A/S」、「STYLE CO LTD.」及び「04.02.03」の記載がある。
乙第3号証及び乙第4号証は、梱包箱(写し)あるいは包装箱(写し)であり、いずれも本件商標と思しき「dansko」の表示がある。
乙第5号証は、ドイツ語で作成された「靴」の商品カタログ(抜粋)であり各種の「靴」の写真と共に、本件商標と思しき「dansko」の表示がある。
乙第6号証は、日本のスタイル株式会社からの発注に対し作成した船積みインボイス(写し)であり、「STYLE CO LTD.」及び「04.03.22」の記載がある。
乙第7号証の1は、輸出依頼受領書(写し)であり、「JACO SKO A/S」、「STYLE CO LTD」及び「HAWB:479-9793154」の表示が、また、乙第7号証の2は、輸出状況についての情報と思しき書面であり、「Airwaybill Number 4799793154」の各記載がある。
乙第8号証は、第三者による宣誓書であり、文中に「Style Co. Ltd」、「JACO SKO A/S」及び「DANSKO」の記載がある。
乙第9号証は、本件商標と思しき「dansko」の表示がある「靴」の写真である。
乙第10号証は、表示変更の証明書であり「JACO SKO A/S」の記載がある。
乙第11号証は、スタイル株式会社からの注文に対する発注インボイス(写し)であり、「JACO SKO A/S」、「STYLE CO LTD.」及び「04.01.16」の記載がある。
3 そして、被請求人の請求に係る指定商品についての登録商標の使用についての立証の要旨を述べると、被請求人は、商品カタログ(乙第1号証の1及び2)を日本国内において頒布することにより、そこに掲載された「靴」についてスタイル株式会社(審決注:被請求人は、答弁書においては、「株式会社スタイル」と表記し、また、弁駁書に対する答弁書においては、「スタイル株式会社」と表記し、その表記が統一されていないものであるが、当審においては、「スタイル株式会社」の表示をもって、審理を進めた。)から発注を受け、受領インボイスを発行すると共に該「靴」を包装箱(乙第3号証)等を用いてスタイル株式会社宛に船積みにて発送し、その際、船積みインボイス(乙第6号証)を作成し、輸出依頼受領書(乙第7号証の1)を受け取ったというものである。
しかしながら、その後、被請求人は、弁駁に対する答弁において上記主張のうち、日本国内で頒布した商品カタログは、乙第1号証の1及び2ではなく、乙第5号証であったと、第三者による宣誓書(乙第8号証)や発注の受領のインボイス(乙第11号証)を提出し、その使用事実を訂正したものである。
4 そこで、上記主張にそって前記2の乙各号証を検討する。
(1)乙第1号証の1(商品カタログ「Herbst/Winter 2003」)及び乙第1号証の2(商品カタログ「Fruhjahr/Sommer 2004」)は、乙第1号証の1の左上に「A/S JAC.ENGELBREDT」の文字が表示されていることよりすると、該表示は被請求人(商標権者)の旧名称に相当すると看取されるものであり、被請求人に係る商品カタログであることを推認し得るところである。
しかしながら、被請求人は、「当該カタログは、2003年の秋にデンマークのコペンハーゲンで開催された『Shoes Fair』にてスタイル株式会社に頒布されたものである。当該カタログは確かに日本人のバイヤーに頒布されたものであるが、頒布場所が日本国内ではなかった。」旨に答弁を訂正しているものであるから、日本国内において、本件商標を使用している事実を証明したことにはなり得ない。
(2)乙第5号証が被請求人のドイツ向け商品カタログと認められるものであり、乙第8号証は、ドイツ国の企業であるComfotSchuhGmbHがスタイル株式会社に対して乙第5号証の商品カタログの写しを75部発送したことを証明する旨の宣誓書である。
しかしながら、被請求人は、乙第5号証は、ドイツ向け商品カタログであり、乙第3号証及び乙第4号証の商品番号を照合するための補充的証拠である旨述べながら、前記の主張を翻してドイツ国の企業であるComfotSchuhGmbHがスタイル株式会社に対して乙第5号証の商品カタログの写しを75部発送した旨の宣誓書(乙第8号証)を提出したものであり、その主張は、きわめて不自然なものというべきである。また、当該ドイツ向け商品カタログ(乙第5号証)は、作成日等の日付の記載はなく、ドイツ語により全面記載されおり、スタイル株式会社のみに発送した極めて限定的なものである。
よって、乙第5号証及び乙第8号証は、証拠力が希薄であり、その他、答弁の全趣旨に照らして、これを本件商標の使用を証明する証拠として採用することはできないものである。
(3)乙第2号証、乙第6号証及び乙第11号証のインボイスは、被請求人がスタイル株式会社(東京都渋谷区千駄ヶ谷3-7-11)に対して発行されたものと推認されるが、それ自体、商品名の表示は、見当たらない。また、ドイツ向け商品カタログ(乙第5号証)との関係においても、対応関係が不明確なため、商品を特定できず、本件商標を使用している事実を証明したことにはなり得ない。
(4)その他、被請求人が本件商標の使用を証明するために提出した梱包箱・包装箱の写し(乙第3号証及び乙第4号証)、輸出依頼受領書(乙第7号証の1)、輸出状況に付いての情報写し(乙第7号証の2)、「靴」の写真(乙第9号証)及び表示変更の証明書(乙第10号証)は、それ自体に商品名及び使用の日時についていずれかが見当たらないものであり、本件商標を使用している事実を証明したことにはなり得ない。
5 そうとすれば、本件商標は、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしたことを被請求人が証明していないものであり、また、被請求人が使用していないことについて正当な理由があると述べるものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
本件商標



審理終結日 2007-02-27 
結審通知日 2007-03-05 
審決日 2007-03-20 
出願番号 商願平10-35245 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z25)
最終処分 成立  
特許庁審判長 澁谷 良雄
特許庁審判官 石田 清
山本 良廣
登録日 1999-04-30 
登録番号 商標登録第4269769号(T4269769) 
商標の称呼 ダンスコ、ダンスコー 
代理人 中村 知公 
代理人 山田 義人 

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