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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y03
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y03
管理番号 1162317 
審判番号 無効2006-89019 
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-02-17 
確定日 2007-07-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4925546号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4925546号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示したとおりの構成よりなり、平成17年5月12日に登録出願、第3類「化粧品」を指定商品として、同18年2月3日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標
ア 請求人が本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用した商標は次の4件である。
(1)「Love」の文字を書してなり、昭和33年8月30日に登録出願、第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品として、同34年9月28日に設定登録され、その後、同55年1月31日、平成1年8月23日及び同11年8月10日に商標権存続期間の更新登録がされた登録第542450号商標
(2)「LOVE」の文字を書してなり、昭和46年8月5日に登録出願、第4類「歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、平成2年3月27日に設定登録され、その後、同12年5月23日に商標権存続期間の更新登録がされた登録第2219231号商標
(3)「LOVE」の文字と「ラブ」の文字とを二段に書してなり、昭和48年5月10日に登録出願、第4類「歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、平成4年7月31日に設定登録され、その後、同14年5月28日に商標権存続期間の更新登録がされ、また、平成16年3月3日に指定商品を第3類「歯みがき,化粧品,香料類,薫料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がされた登録第2431617号商標
(4)「ラブ」の文字と「LOVE」の文字とを二段に書してなり、平成13年1月9日に登録出願、第3類「歯みがき,化粧品,香料類」を指定商品として、同13年11月16日に設定登録された登録第4522976号商標
イ 請求人が本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用した商標は、上記アに示した4件のほか次の5件である。
(5)「LOVE」の文字を書してなり、昭和46年3月12日に登録出願、第3類「染料、顔料、塗料(電気絶縁塗料を除く)印刷インキ(謄写版用のインキを除く)くつずみ、つや出し剤」を指定商品として、同48年7月2日に設定登録され、その後、昭和58年7月25日、平成5年10月28日及び同15年6月10日に商標権存続期間の更新登録がされ、また、同16年9月22日に指定商品を第1類「陶磁器用釉薬」、第2類「染料,顔料,塗料,印刷用インキ(「謄写版用インキ」を除く。)」、第3類「塗料用剥離剤,靴墨,靴クリーム,つや出し剤」及び第4類「靴油,保革油」とする指定商品の書換登録がされた登録第1021489号商標
(6)「IN」と「LOVE」と「AGAIN」の各文字を3段に書してなる商標
(7)「IN」と「LOVE」と「AGAIN」の各文字を3段に書してなる商標(「LOVE」の第2文字「O」は、ハート形の図形で表されている。)
(8)「LOVE STRUCK」の文字を書してなる商標
(9)「LOVE TOKEN」の文字を書してなる商標
以下、これらの商標を(1)ないし(9)に示した順に「引用商標1」、「引用商標2」、「引用商標3」のようにいい、一括していう場合は単に「引用商標」と総称する。

3 請求人の主張の要点
請求人は、「登録第4925546号の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第56号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)請求の理由
ア 商標法第4条第1項第11号について
(ア)商標の類否
引用商標1ないし同4は、上記のとおりの構成よりなり、これらの引用商標からは「ラブ」の称呼が生じる。
一方、本件商標は、欧文字「Love」及び「passport」の文字とハート型の大小2つの図形からなる結合商標である。また、「Love」と「passport」の文字を対比させると、「Love」が下段の「passport」の2倍以上の大きさ及び太さで表されている。
本件商標は、「Love」の文字が顕著に表されていることに加えて、「Love」と「passport」には構成上一体性がなく、「Love」の語句は自他商品識別力を有し、称呼上省略される特段の理由がないことを考慮すると、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際においては、「Love」と「passport」が分離して認識され、取引者又は需要者の最も注意を惹く要部である「Love」の文字部分から「ラブ」の称呼が生じる(甲第6号証「商標審査基準」及び同第7号証「東京高裁平成7年(行ケ)第93号判決」参照)。
したがって、引用商標1ないし同4と本件商標からは共に「ラブ」の称呼が生じ、称呼において類似する。
よって、本件商標は、引用商標と類似する商標である。
(イ)商品の類否
引用商標1ないし同4は、前記のとおり「化粧品」を含む商品に使用するものである。
一方、本件商標は、「化粧品」等に使用するものである。
したがって、本件商標は、引用商標1ないし同4と同一又は類似の商品に使用するものである。
(ウ)まとめ
上記において述べたように、本件商標は、その登録出願の日前の登録出願に係る引用商標1ないし同4と同ー又は類似の商標であって、その商標登録に係る指定商品又はこれに類似する商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
イ 商標法第4条第1項第15号について
(ア)引用商標
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由として引用商標1ないし同4に加えて、引用商標5ないし同9を引用する。
(イ)商標の構成の対比
上記において述べたように、本件商標からは「ラブ」の称呼が生じ、一方、引用商標1ないし同5からは、その構成より「ラブ」の称呼が生じるのは明らかである。
また、引用商標6及び同7については、「IN」、「LOVE」、「AGAIN」の3段併記からなる商標であるが、中段の「LOVE」の文字が上段の「IN」及び下段の「AGAIN」の2倍以上の大きさで書されてなり、取引者及び需要者の注意を惹く要部となっている。したがって、引用商標6及び同7から「ラブ」の称呼が生じる。
引用商標8及び同9については、「LOVE」の文字が語頭であることや、強く印象付けられる文字であること、後続の単語と分断して書されてなることから、当該商標からは、「ラブ」の略称が生じる。
(ウ)引用商標が、本件商標出願の日前に既に需要者及び取引者の間に広く認識されていることについて
引用商標1ないし同5は、AIPPI・JAPAN発行の「日本有名商標集」(甲第13号証 以下「有名商標集」という。)に掲載されている商標である。当該有名商標集は、2004年に発行されたものであることから、引用商標1ないし同5が本件商標出願の日前に既に需要者及び取引者の間に広く認識されていたことは明らかである。なお、請求人は、現在においても本件商標を付した商品を販売するところである(甲第14号証)。
引用商標6及び同7は、香水や化粧品及びファッション等の一流ブランドとして世界的に有名なイヴ・サンローラン・パルファン エス・アー(以下、「イヴ・サンローラン」という。)が、請求人から許諾を受けて使用をしている商標である(甲第15号証)。イヴ・サンローランの「IN/LOVE/AGAIN」は、本件商標の出願の日前である1998年にフレグランス発売40周年を記念して発売された香水であり、イヴ・サンローランの有名な香水の1つである(甲第16号証)。以上より、引用商標6及び同7が、本件商標の出願の日前には既に需要者及び取引者の間で広く認識されていることは明らかである。
さらに、引用商標8及び同9は、株式会社マリークワントコスメチックスジャパンが請求人から許諾を受けて使用をしている商標である(甲第17号証)。同社は、化粧品及びファッション等の一流ブランドとして世界的に有名な商標である「MARY QUANT」ブランドの事業を我が国において展開する企業である。
「LOVE STRUCK」は2000年、「LOVE TOKEN」は2002年から販売開始されており、それぞれ約4,500万円、約1億3,000万円を売り上げている(甲第18号証)。
また、「LOVE STRUCK」と「LOVE TOKEN」は共に、「MARY QUANT」ブランドの人気商品である(甲第19号証)。以上より、引用商標8及び同9が本件登録出願の日前には既に需要者及び取引者の間で広く認識されていることは明らかである。
(エ)出所混同のおそれについて
上述のように、引用商標1ないし同9は、請求人又は請求人から使用許諾を受けた者の業務に係る商品を示す商標として広く認識されている。また、本件商標と引用商標1ないし同9を対比させると、「Love」の文字が需要者及び取引者の注意を惹く要部となっている点において共通する。
したがって、本件商標に接する需要者及び取引者は、本件商標を請求人又は請求人から使用許諾を受けた者の業務に係る商品、あるいは請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、出所について混同するおそれがある。
(オ)本件商標の出願経過について
本件商標の出願経過について、下記のような特殊事情があり、他の無権限者による商標の使用や登録事例と異なり、広義における出所混同の誤認を惹起するおそれが強い。
請求人は、引用商標1ないし同5を自社の重要商標と位置付けており、現在に至るまで一貫してこれらの商標の保護に努めている。
本件商標に関しても、現在、被請求人に対し、本件商標の使用(登録出願以前の当時は単なる標章)について、平成16年7月6日、大阪地方裁判所に対し、本件商標の使用禁止及び損害賠償請求事件(以下「本事件」という。)を提訴し(甲第20号証)、目下訴訟が係属している。
審理が進められ、裁判所より、中間的ではあるが、本件商標の使用は各引用商標権を侵害するとの心証が開示された直後の平成17年5月12日に、被請求人は、本件商標の登録出願を行い、同年12月12日に登録査定がされた。
裁判所及び請求人にこの事実が通知されたのは、本事件の判決期日(平成18年1月16日)の3日前であった。
裁判所は、判決言渡を延期せざるを得ず、その結果訴訟手続は、本無効審判請求に対する特許庁の判断を待つため、中止されることとなっている。
たしかに、商標登録自体は特許庁の専権であり、司法部である裁判所の訴訟手続とは形式的には無関係ではあるが、国家経済や法的整合性・安定性の確保の要請上も、関係当事者は信義則上も自発的に事情を開示して登録時の査定の参考に供すべきものであった。被請求人は、広義の信義則の精神に違反したものである。
(カ)まとめ
上記において述べたように、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁の理由
ア 商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標の構成
本件商標には、書体の同一性や表示位置の近接性を凌駕して余りある「文字の大小の相違」がある。本件商標に接した者は誰でも、まず「Love」の文字に目が行くであろうことは自明の理である。
また、被請求人は、「LOVE」「ラブ」を含む商標が多数登録されている先例があることを指摘する。たしかに「LOVE」「ラブ」を含む併存例は多数存在するのであるが(甲第21号証)、これら併存例のほぼ全てに共通する点が一つある。それは、他の要素と比べて「LOVE」の文字を殊更大きく書したものではない、という点である。だからこそ、引用商標の存在にかかわらず、併存が認められているのである。
これに対し、本件商標は、上記併存例とは全く状況が異なる。本件商標は、併存例に共通する点を欠いているのである。このことから、本件商標がこれらと同視できず、引用商標と類似すると判断されるべきことは明らかである。
なお、被請求人は、商標法第51条の不正使用取消審判(取消2005-30305、同2005-30306)の審決(以下、これらの審決を併せて「別件審決」という。)を引用しているが、不正使用取消審判における判断事項は、本件審判での判断事項と当然に異なる。同号には同号の判断基準があるのであり、異なる基準で得た判断を商標法第4条第1項第11号の判断に援用することは明らかに不合理であり、非論理的である。
(イ)被請求人による本件商標の使用事実
被請求人は、本件商標の使用事実を縷々述べ、使用を示す証拠を提出している。請求人としては、かかる使用事実があることは認める。
しかしながら、かかる使用を通じて混同のおそれを生じたことが全くなかったとの被請求人の断定は、被請求人が自己都合で解釈した、手前勝手なものであると思われる。なぜなら、混同を生じているかどうかの事実は、具体的にそのことを例えば公衆調査等により調査しなければ明らかにできない性質のものであって、そのような調査を行っていない以上、断定し得ないはずのものだからである。
もちろん、請求人もそのような調査を行っていないので、請求人としても「本件商標と引用商標との間で混同が生じている」とは断定しない。
問題なのは、混同を生じる「おそれ」ないし「蓋然性」である。
商標法が第4条第1項第11号を設け、これに該当する登録を未然に排除しているのはまさに、この「おそれ」「蓋然性」のあるものを未然に排除したいがためである。
そうとすれば、被請求人の上記のような主張は重要ではなく、本件審判の判断に資するものではないというべきである。
(ウ)まとめ
以上の次第で、答弁内容は失当である。本件商標は、引用商標と類似するものであり、商標法第4条第1項第11号に該当することは明らかである。
イ 商標法第4条第1項第15号について
(ア)類型的な基準
被請求人は、自己の使用が混同を生じさせたことはないと断定している。この点については、上記において述べたとおり、そのような断定はできないものである。
ところで、商標法第4条第1項第15号は、現実に混同を生じている場合はもちろんのことながら、その趣旨はむしろ、混同を生じる「おそれ」「蓋然性」がある商標の登録を未然に排除することにある。そして、「おそれ」「蓋然性」の有無は結局、商標の周知性、商品の近接性等、ある程度類型的な基準で判断することにならざるを得ない。
(イ)商標の周知性
審判請求書で述べたことに加え、甲第22号証ないし同第56号証として提出する使用事実があること等から、引用商標には、被請求人による本件商標の使用により業界で混同が生じるに十分な周知性がある。
(ウ)商品の近接性
請求人の商品と被請求人の商品は共に「化粧品」であって、同一である。このことは、混同を生じるおそれを格段に高めるものである。
なぜなら、化粧品業界では、メインとなるブランド名が一つあり、そのシリーズものを多数リリースする慣習があるからである。したがって、本件の場合、本件商標に接した需要者は、請求人の「LOVE」化粧品シリーズの一つではないかとの混同を生じるおそれが高いのである。
(エ)出所の混同
このように、商品が「化粧品」であることも特に相俟って、本件商標は、請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある。
(オ)まとめ
以上の次第で、答弁内容は失当であり、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである。
(3)結論
上述のように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するにもかかわらず登録されたものであるので、同法第46条第1項第1号により無効にすべきである。

4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第14号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
類似性について
(ア)本件商標は、「Love」と「passport」とを二段に表記しているが、両者は同一書体で書かれており、かつ表示位置もさほど離れていないから一連に読めるし、「ハート図形」と共に全体としてまとまった印象を与えている。
したがって、本件商標は、引用商標「LOVE・ラブ」とは非類似である。
(イ)被請求人は、本件商標に係る商標登録出願に先立って2件の登録商標(乙第13号証及び同第14号証。以下「先登録商標」という。)に係る商標権を取得し、本件商標と共に使用することにより、全体として「Love passport・ラブパスポート」のブランドを構築している。
被請求人は、商標登録出願をした際に、関連商標についての調査をすることにより、登録可能な類似の範囲の検討をしており、このとき既に、登録商標「LOVE」、「ラブ」及び「Love/ラブ」が存在していることを把握していた。
これと共に、「LOVE」を一部に含む多数の商標群が、出願され登録されていることも確認していた(乙第4号証)。
このように、「LOVE」を含む多数の商標が登録されていることについて、被請求人は、「LOVE」それ自体はそれ程の識別力をもっておらず、その類似の範囲も狭いと判断し、「LOVE」の言葉に、他の言葉「PASSPORT」を結合すれば、一般的には「LOVE」とは非類似と認識されると判断して登録出願をした。
その結果、本件商標の登録がなされたので、被請求人は、「LOVE」と「LOVE PASSPORT・ラブパスポート」との類否関係についての判断が一人よがりのものではなく、特許庁の判断と一致したと認識したのである。
このような認識の下に、被請求人は、「ラブパスポート」と一連に称呼できるような表示態様で「LOVE PASSPORT・ラブパスポート」を具体的に商品に付すようにすれば、たとえ「LOVE」の商標を付した商品が他にあっても出所の混同は生じないと考えて、「LOVE PASSPORT・ラブパスポート」に関連する商標を具体的に商品流通経路において使用して現在に至ったものである。
(ウ)上述のように、本件商標は、全体としてまとまった印象を与える点において引用商標「LOVE・ラブ」とは非類似であり、また引用商標「LOVE・ラブ」を含む商標が多数登録されている先例からみて、非類似として登録されて然るべきものである。
(エ)本件商標と引用商標「LOVE・ラブ」との類否については、別件審決において、「非類似である」との判断がなされている。
なお、この取消審判事件において「使用している商標」の要部は、本件商標と同一で、本件商標は、上記審判事件の審理対象となった「使用標章」の要部そのものを商標登録出願したものである。
したがって、別件審決における類否判断は、先例として本件商標と引用商標「LOVE・ラブ」との類否判断の基準を示している点において、極めて重要である。
イ 出所の混同について
(ア)本件商標は、2003年から現在まで被請求人が使用し続けた結果(乙第5号証及び同第6号証)、少なくとも登録時には、一定の周知性を獲得していると共に、この使用の間に請求人の引用商標「LOVE・ラブ」と出所の混同を起した事実はない。
(イ)請求人は、「Love passport」のうちの「Love」を目立つように表示したから引用商標「LOVE・ラブ」と類似すると主張するが、本件商標は、「Love」及び「passport」を一連のものとして構成することにより、「愛への旅」のイメージを形成することをテーマとして、被請求人が造語し使用し続けているもので、実際の使用上、たとえデザイン化のために二段に表示しているとしても、被請求人は、本件商標を常に「ラブパスポート」と一連に称呼できるように表示すると共に、一般需要者が常に「Love passport」、すなわち「幸せへのパスポート」を意識できるようなキャッチコピーを機会あるごとに提示することにより、商品流通経路に「ラブパスポート」ブランドを確立する努力をしており、このブランド戦略が一般需要者に受け入れられていることは、商品の売上げの推移やインターネット上の第三者の「口コミ」サイト(乙第12号証)への書込み、すなわち一般需要者の反応からも確認できている。
(ウ)被請求人は、上述したように、本件商標を商品に継続して使用し、数多くの広告やイベントによって一般需要者にイメージの浸透を図る努力を重ね、その結果各種メディアに紹介されて露出する機会を拡大させてきた。
その結果、商品「LOVE PASSPORT」の日本国内の売上げランキングは、販売を開始したばかりの2003年においてすでに43位になっていた(乙第3号証)。このランキングは、2003年に日本国内で販売された香水の商品数2千数百における順位であり、この頃すでに上位に入る位の顧客吸引力(すなわち周知性)を獲得していたのである。
(エ)本件商標は、ペイネが創作したキャラクタと組み合わせて「愛への旅」のイメージを創り出しているもので、この「愛への旅」のイメージは、決して引用商標のように「Love」のイメージのみによって生じるものではなく、二段表記ではあっても、「Love」と「passport」とが不可分に結合されてはじめて「愛への旅」のイメージが形成されている。
このように、「Love passport」を「Love」の要部とそれ以外の要部に分けることに必然性は全くなく、常に「Love passport」と一連のものとして構成して使用することにこそ必然性がある。
ウ まとめ
以上のとおり、商標の類似性及び出所の混同のいずれの点からみても、本件商標が引用商標「LOVE・ラブ」と抵触するものではなく、むしろ周知性のある商標として保護されるべき存在になっている以上、商標法第4条第1項第11号の無効理由は全くない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標1ないし同5について
(ア)上述したように、本件商標は、引用商標1ないし同5とは非類似である。
(イ)そのうえ、本件商標は、その登録出願時及び登録時には既に、ある程度の周知性をもっていることは明確で、商品流通経路において本件商標が請求人の業務に係る商品と混同を生じさせていないことは明らかである。
(ウ)被請求人が現実に本件商標を使用した結果、引用商標1ないし同5を使用する請求人の業務に係る商品との混同が取引の実状において生じたとする請求人の主張・立証は全くない。
(エ)それどころか、請求人が引用商標1ないし同5を使用したと述べる当該3品目の商品(甲第14号証)を発売したのは、ほんの1月前の2006年4月1日からであり(乙第10号証)、また「口コミ」サイト(乙第11号証)の口コミ総数も6件にすぎない(同じサイトでも「ラブパスポート」の口コミ総数は242件である)。
このような引用商標1ないし同5の使用の実情は、当該引用商標を「有名とか著名とか評価する」には、極めて不十分な状況であるから、少なくとも引用商標が商標法第4条第1項第15号の適用を受け得るような著名性があるとはいい得ない。
(オ)したがって、本件商標の登録は、請求人の業務に係る商品との関係において、商標法第4条第1項第15号の規定に違反したものではない。
イ 引用商標6ないし同9について
(ア)本件商標との共通点は、「LOVE」を含んでいるというだけで、これらの引用商標と本件商標とは、外観、称呼及び概念のすべてにおいて全く相違するから、両者は非類似である。
(イ)そのうえ、上述したように、本件商標に一定の周知性が生じていることは明確で、商品流通経路において本件商標が引用商標6ないし同9の使用者の業務に係る商品と混同を生じさせていないことは明らかである。
ウ まとめ
このように、本件商標は、被請求人の絶え間ない使用努力によって引用商標に係る他人の業務の商品とは混同を生じさせない周知性を有する存在になっていたのであるから、本件商標の登録について商標法第4条第1項第15号の無効理由は全くない。
(3)訴訟との関係
被請求人は、本件商標は先登録商標に対して同ー又は類似の範囲に入るものであるから、必要が生ずれば権利化を図れば良いと考えて、登録出願しない状態で本件商標の使用をしていた。
今回、権利化する必要性が生じたと判断し、本件商標について登録出願をしたものである。
被請求人は、最も大切なことは、商標法を適正に順守することにより、商品の流通秩序をいたずらに混乱させないことにあると考えており、そのために必要な手続を進めている。
(4)引用商標の類似範囲
一般的にいって、「LOVE」は、それ自体単独では「愛の内容を表す個性」をもっていないから、「LOVE」や「愛」の言葉を使う際には、「自分の愛は何に関する愛であるか」を表現する言葉を付加することにより個性をつけて使うことが普通に行われているのであり(乙第9号証)、これにより「自分が表現しようとする愛」を「他の愛」から区別する使い方がされている。
したがって、特別な事情がない限り、「LOVE」に「何の愛か」を表わす言葉を付加した場合は、「LOVE」とも、これに「他の愛」を付加した言葉とも区別がつくことになる。
「LOVE」を含む多数の言葉が互いに非類似であるとして登録されているのは、この理由によるものと考えられ、本件商標並びに先登録商標も、引用商標6ないし同9も、同じような理由で登録されたものと考えられる。
このように、引用商標1ないし同5は、その言葉の意義からみて「愛の個性」をもたない言葉であるから類似範囲は狭く、「LOVE」に他の言葉を付加することにより「愛の個性」をつければ、非類似の標章になると考えるのが自然である。これに対して、『「LOVE」を含んでいれば全て類似である』とする請求人の見解は極めて不自然である。
(5)本件商標の略称(愛称)について
請求人は、「本件商標は商取引の実情では『ラブ』の略称が生じる」との見解を述べている。
しかしながら、本件商標についての実情は、インターネットにおいて一般需要者が自由に書き込める「口コミ」サイト(乙第8号証)において、本件商標を「ラブパス」と略称する書込みがなされており、請求人の見解は取引の実情に反する。
この「ラブパス」の呼び方は、「愛への旅」のイメージをもっている「Love passport」の個性を失っていないことから誰でも自然に受け入れることができるのに対して、「ラブ」と略称すれば「愛への旅」のイメージを「個性がない愛」のイメージに変えてしまうことになるので、極めて不自然で、到底受け入れることはできない。

5 当審の判断
(1)商標の類似性について
本件商標は、別掲のとおり、「Love」の文字を筆記体で大きく横書きし、その下部に「passport」の文字を筆記体で上部の文字よりやや小さく表し、さらにこれらの右上方に、やや大きさの異なる黄色又は赤色で彩色された2つのハート状図形を配した構成からなるものであって、「Love」と「passport」の両文字は、二段に表され、大きさも異なるものである。しかしながら、「passport」の文字が無視されるほど大きさが異なるわけではなく、一見してこれら両文字よりなると把握し認識されるものであって、観念上からみても、これら両文字は「愛」又は「旅券」を意味するものとして共に広く知られている一般的な英単語ということができ、しかも、両文字は同様の書体で近接して配置され、その右上部には、これら両文字と調和のとれた大きさで、バランスの良い位置に2つのハート状図形が配されており、全体としてまとまりのある一体的な印象を強く看者に与えるといえるものである。
以上からすると、本件商標は、「Love」及び「passport」の両文字が分離されることなく一体不可分のものとのみ認識されるというべきであるから、これら両文字に相応して「ラブパスポート」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。
これに対し、引用商標1ないし同4は、前記のとおり、それぞれ「Love」、「LOVE」、「Love」と「ラブ」又は「ラブ」と「LOVE」の各文字よりなるものであり、これらの文字に相応して、いずれも「ラブ」の称呼を生ずるものである。
してみれば、本件商標より生ずる「ラブパスポート」の称呼と引用商標1ないし同4より生ずる「ラブ」の称呼とは、構成音数の差異、相違する各音の音質の差異により明らかに区別し得るものといわなければならない。
そうとすれば、本件商標は、引用商標1ないし同4と称呼上相紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
また、これらの商標は、それぞれの構成よりして、外観及び観念においても類似するものではない。
(2)出所の混同について
(ア)上述のとおり、本件商標は、引用商標1ないし同4に類似するものではない。
また、引用商標5ないし同9は、前記のとおり「LOVE」、「IN」と「LOVE」と「AGAIN」、「LOVE STRUCK」又は「LOVE TOKEN」の各文字よりなるものであり、これらの文字に相応して「ラブ」、「インラブアゲイン」、「ラブストラック」又は「ラブトーケン」の各称呼を生ずるものといわざるを得ないから、本件商標は、引用商標5ないし同9とも構成音数の差異、相違する各音の音質の差異により明らかに区別し得る称呼上非類似のものであり、外観及び観念においても類似するものではない。
(イ)請求人は、有名商標集に掲載されていること、使用事実があること、許諾を受けて使用している者が世界的に有名なイヴ・サンローラン等であること等を理由に、引用商標1ないし同9は取引者・需要者間に広く認識されていると主張する。
たしかに、2004年(平成16年)発行の有名商標集(甲第13号証)には、引用商標1ないし同5の登録番号が表示されて「LOVE」商標が掲載されていることが認められる。
しかしながら、請求人の提出に係る証拠をみると、請求人の挙げる甲第22号証ないし同第56号証「新聞、雑誌の掲載記事、インターネット掲載ページの記述、広告ダイレクトメールの発送事実を示す資料、広告チラシの搬入事実を示す資料」は、すべて平成18年3月以降の事情を示すものであり、また甲第14号証「商品カタログ」は、作成日が不明なものであり、例えば、甲第56号証「請求書」の品名覧に表示されている「ラブ パンフレット」がこれに相当するものとみると、その作成日は平成18年3月以降といわなければならない。
他に、請求人が引用商標1ないし同5を使用していると認め得る証拠はない。
そうすると、請求人の提出に係る証拠には、本件商標の登録出願(平成17年5月12日)前に、請求人が引用商標1ないし同5を使用したと認め得るものはなく、有名商標集への「LOVE」商標の掲載の事実のみでは、引用商標1ないし同5が、いつ頃から、どの程度の期間、どんな商品に使用され、その売上げはどうであったのかなどの取引の実情、どんなメディアを通じてどの程度の回数・期間、どのような地域を対象に広告・宣伝をしたのかなど、引用商標1ないし同5を使用した請求人の事業活動の実情を把握することができないから、請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願の時に、引用商標1ないし同5が請求人の商品を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
また、引用商標6及び同9は、前記のとおり「IN」、「LOVE」、「AGAIN」の各文字を三段に表してなるもの、「LOVE STRUCK」又は「LOVE TOKEN」の各文字を横書きしてなるものであるから、本件商標は、これらの商標と商標自体の構成が明らかに相違しており、両商標間に誤認・混同を生じる事由は見いだせないものである。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者・需要者がこれを請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同するおそれがあるものとは認めることができない。
(3)結論
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 【別掲】
本件商標

(色彩については原本を参照)

審理終結日 2006-10-04 
結審通知日 2006-10-11 
審決日 2006-10-27 
出願番号 商願2005-46188(T2005-46188) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Y03)
T 1 11・ 271- Y (Y03)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 松浦 裕紀子 
特許庁審判長 小林 薫
特許庁審判官 長柄 豊
寺光 幸子
登録日 2006-02-03 
登録番号 商標登録第4925546号(T4925546) 
商標の称呼 ラブパスポート、ラブ、パスポート 
代理人 野田 久登 
代理人 森田 俊雄 
代理人 田辺 恵基 
代理人 竹内 耕三 
代理人 深見 久郎 
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