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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200435031 審決 商標
無効200435028 審決 商標
無効200435030 審決 商標
無効200435029 審決 商標
平成17行ケ10030審決取消請求事件 判例 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1159017 
審判番号 無効2004-35027 
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-01-15 
確定日 2007-06-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第3370400号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3370400号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3370400号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、被請求人である松井章圭こと文章圭(以下、本審決においては、被請求人と記載するほか、必要に応じて松井章圭とも記載する。)により、平成6年5月18日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同10年10月9日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する商標
請求人(大山倍達の三女、大山喜久子)は、別掲の本件商標と同じ、筆文字で表された「極真会」の文字を縦書きにしてなる商標(以下「引用商標」という。)を引用しており、その使用商品は「空手衣,空手衣用帯、Tシャツ,トレーナー,ブレザー,書籍,雑誌,録画済ビデオテープ」、使用役務は「空手の教授,空手の興行,空手の興行の企画・運営又は開催」である。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第30号証を提出した(なお、甲第24号証ないし同第29号証及び同号証に基づく主張は、平成16年5月25日付上申書において撤回された。)。
(1)引用商標について
引用商標の「極真会」の文字は、極真空手の創始者大山倍達氏によって採択されたもので、同氏によって、遅くとも、1954年(昭和29年)5月、東京都内の目白の焼け跡の野天道場に、大山道場の看板を正式に掲げた頃から使用されて来たものである(甲第3号証)。
(2)引用商標の周知著名性について
引用商標「極真会」は、極真空手の創始者大山倍達によって、遅くとも、1954年(昭和29年)に東京都内の目白の焼け跡の野天道場・大山道場の看板を掲げた頃から、空手の教授を中心とする技芸・スポーツ又は知識の教授などの役務等について使用され始めて以来、極真空手の全国的、更には世界的普及に伴って、本件商標出願時及び査定時において、既に周知著名であった。同時に、空手の練習において不可欠な空手衣(空手着)や空手衣用帯、トレーナーあるいは審判員や役員等が着用するブレザーを始めとして、空手に関する商品についても商標「極真会」は周知著名であった(甲第3号証ないし同第8号証)。
そして、引用商標が本件商標の出願時及び査定時において、周知著名であったことは、平成11年審判第35276号(甲第9号証)の審決によって明らかである。
(3)現在使用の事実
極真空手の極真会館の本部は、極真会館のビルを建設以来現在に至るまで、この極真会館内に在り、現在に至るまで、館内の道場にて、空手の教授が継続して行われており、また、この極真館内では、道場の他に、極真空手の発展史や大山倍達の活躍の跡を偲ぶ記念室があり、商標「極真会」が使用された空手衣等の衣類や各種記念品や書籍、ビデオ等が販売されている(甲第10号証ないし同第17号証)。
(4)本件商標と引用商標について
本件商標と引用商標は、商標において同一であり、かつ、商品においても同一・類似である。
(5)周知著名商標「極真会」の承継人について
大山倍達は、1994年(平成6年)4月2日に肺癌のため急逝し、同氏の極真空手の教授や柔道衣の販売等、同氏の事業は、遺族である大山智弥子を経て同氏の三女である本件請求人に承継され、現在に至っている。
甲第18号証として提出の住民票によって、本件請求人が大山倍達と智弥子夫人の実子であること及び東京都豊島区西池袋3丁目3番9号の地に、1963年(昭和38年)に建設された極真会館に在住していることを立証する。
(6)被請求人による本件商標の登録出願の不当性について
(ア)本件商標は、極真空手の創始者大山倍達が永年にわたって直接打撃を特徴とする空手(道)に使用して来た周知著名商標であるから、正に師の一身に専属する私的財産である。にも拘わらず、師の財産の相続人である遺族の大山智弥子の承諾を得ることなく、また、何の相談もなく、極真空手の名手として高名の弟子でありながら、師弟という強い信頼関係に背き、被請求人独自の判断で自己の名義で出願されたのである。
(イ)被請求人は、甲第19号証(株式会社ベースボール・マガジン社平成7年5月23日発行「格闘技通信5・23号No.133」)において、大山倍達の遺言があった旨主張しているが、遺族の事後の生活に重大な影響を与えるにも拘わらず、遺族の立会いなく遺言されることは到底信じ難く、極めて不審であり、遺言なるものの存在は認められない。遺言の存在(成立)は、遺言があったと主張する被請求人にその立証責任があるのであって、それが立証されない以上、法的には、遺言の存在は否定されてしかるべきである。また、被請求人が極真会館の二代目館長に就任したのは、師の遺志に基づくものと主張しているが、その遺志があったことを立証されたい。
師の急逝による混乱状態の中で、「遺言があった」と主張する被請求人によって、強引に事が運ばれ、二代目館長と自称しているにすぎない。現に、上記誌上で被請求人自身が語っているように、極真会館の組織は「任意の団体であって、法的にいうと・・・大山倍達による一身専属的なもの」でしかなく、二代目館長選出の手続規定は存在しないのである。
(ウ)甲第20号証として、大阪地方裁判所第21民事部による平成15年9月30日付の平成14年(ワ)第1018号商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求事件(原告 岡田幸雄他4名 被告 松井章圭こと文章圭)による判決書写を提出する。
同地裁は、「第4 争点に対する判断」の「イ(同書47?48頁)」において、「以上の事実によれば、極真会は、極真空手の創始者である大山倍達が一代で築き上げた組織であり、同人の生前、法人化されておらず、館長選任の手続きについての定めもなかった・・・被告(本件被請求人)が、大山倍達の跡を継いで『極真会館』の『館長』となることが極真会館に属する者らによりいったんは承認されたことの根拠は、専ら、・・・被告を極真会館の2代目館長にする旨の大山倍達の遺言の存在であり、それ以外には、・・・存在せず、・・・したがって、危急時遺言の確認の審判申立てが東京家庭裁判所で却下され、同決定に対する抗告が東京高等裁判所で棄却され、更に特別抗告が最高裁判所で却下され、本件危急時遺言が大山倍達の遺言としての効力を有しないことが確定した以上、被告は、少なくとも大山倍達が生前率いていた「極真会館」に属する者に対しては、自己が大山倍達の後継『館長』であることを主張し得る根拠を失ったというべきである。(同48頁)」と判断している。
(エ)さらに、甲第21号証として東京地方裁判所第29民事部による平成15年9月29日付の平成14年(ワ)第16786号商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求事件(原告 大石代悟他5名 被告 松井章圭こと文章圭)による判決書写を提出する。同地裁においても同旨の判断がされている。
(オ)大山倍達が一代で築いた財産の一つである周知著名商標「極真会」は、一般承継人たる遺族、すなわち、夫人の大山智弥子及びその子等が承継するのが当然であり、請求人はその三女である(甲第18号証)。
甲第22号証として、二代目館長に就任した大山智弥子が関係各位に配布した平成7年7月11日付「お知らせ」を提出する。二代目館長たる大山智弥子の主張は、三代目館長である本件請求人の主張でもある。
(カ)また、甲第23号証として、極真会館全国支部長協議会の文書を提出する。これにより、二代目館長大山倍達総裁未亡人(すなわち、二代目館長大山智弥子)を支部長の大半が支持した事実を立証する。
(7)結語
引用商標と同一の本件商標「極真会」は、極真空手の創始者である大山倍達が一代で築き上げた周知著名商標であるから、同氏の急逝によって、当該周知著名商標を承継する者は、その承継人たる遺族であり、極真空手の事業を引き継ぐ本件請求人である。
しかるに、本件商標は、創始者大山倍達の弟子の一人であるにすぎない被請求人が、一般人に要求される信頼関係よりも強い師弟の信頼関係に背き、急逝した師・大山倍達の遺言であると勝手に主張して出願され、登録されたものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号によりその登録は無効とされるべきである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第66号証を提出した。
(1)商標法は、登録商標に化体された商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図ると共に、商標の使用を通じて商品又はサービスに関する取引秩序の維持をもって産業の発達に寄与することを目的(商標法第1条)とするものである。そして、商標法第4条第1項第7号は、この商標法の目的を具現する条項の一つとして、公益保護のために公序良俗を害するおそれがある商標の登録を認めないとする公益的な不登録事由を規定するものであって、私人の利益を保護するための私益的な不登録事由を規定するものではないと解される。さらに、商標法第4条第1項第7号が、社会の一般道徳観念に反するような他人の商標を盗用・剽窃して出願された場合においても適用され得ると解されていることからすれば、ある登録商標が対比される周知著名商標との関係において、商標法第4条第1項第7号に該当するか否かは、その登録商標の出願及び使用の基礎をなす社会的事実、すなわち、その登録商標の使用者と当該周知著名商標の使用者との間に実質的同一性があるか否かによって決するべきである。
(2)故大山倍達によって創出された直接打撃制を特色とする空手団体である極真会は、1954年5月に東京都豊島区目白の自宅裏に開設された野天道場「大山道場」をその起源とする。同氏は、その後、東京都豊島区池袋のバレエスタジオにおける稽古を中心とした活動に加えて、海外各国への遠征を経てその勢力を拡大し、1964年6月に極真会館本部(東京都豊島区西池袋3丁目3番9号)を竣工させ、同年同月に「国際空手道連盟極真会館」、すなわち、極真会館を正式に発足させた。その後、現在に至るまでの極真会館の活発な活動は周知のとおりであり、極真会館の使用に係る商標「極真会館」「極真会」「極真空手」「KYOKUSHIN」が、遅くとも本件商標の出願日以前に、役務「空手の教授」について日本国内において周知著名であったことは、請求人が提出した甲第3号証ないし同第9号証にも示されているとおりで、被請求人もこれを争うものではない。
(3)被請求人は、大山倍達によって創出され1964年に発足した空手団体である国際空手道連盟極真会館(以下「極真会館」という。)の代表者であり(乙第1号証)、1976年に13歳で極真会館に入門して以降、極真会館を代表する選手として第一線で活躍した実績を持つ者である。
1980年に若干17歳で第12回全日本選手権に初出場し4位入賞、以後3位、3位、8位と毎年入賞、1984年第3回オープントーナメント全世界空手道選手権大会(極真会館主催)で3位入賞、1985年第17回全日本選手権で優勝、1986年極限の荒行といわれる100人組手を完遂、1986年第18回全日本選手権で優勝、1987年第4回オープントーナメント全世界空手道選手権大会(極真会館主催)で優勝、という数々の記録はその実績を裏付けるもので、その輝かしい戦績に比肩する者はいない。選手としての第一線を退いた現在でも、その名声は高く聞こえている。
そして、被請求人は、その選手当時より、大山倍達に重用されて、極真会館の若手の指導育成に尽力するとともに、極真会館又は極真会が主催する各種大会において、指導員・模範演技者・支部長代表委員・実行委員長などを務め、現役選手時代も選手引退以降も、大山倍達存命中の極真会館において、本件商標の周知性の確立に関して貢献してきた。
また、大山倍達逝去後も、被請求人は、同氏の遺志を継いで、空手の指導を行うとともに、大会・合宿などの内部行事や海外訪問などにおいて、同氏が行っていたのと同様の極真会館の代表としての役割を果たし、同氏が存命中に継続して主催してきた各種選手権大会に係る事業、空手着及び帯などの商品の販売事業、極真会館に密接な関係を有する雑誌の発行に関する出版事業を極真空手の発展のために継続して行い現在に至っている。
この被請求人による2000年2月までの活動が大山倍達存命中のものと実質的同一性をもって継続している事実は、本件商標登録に係る平成11年無効審判第35276号事件に対する審決(乙第2号証)の第17頁から第18頁に認定されているとおりである。この審決が2003年5月21日に確定登録していることからすれば(乙第3号証)、被請求人の活動が大山倍達存命中のものと実質的同一性をもって継続し現在に至っている事実は、同審決書の認定をもって判断されるべきであるから、上記無効審判事件の答弁書の証拠と同一の証拠については、本答弁書での立証は省略する。
一方、2000年3月から2004年3月現在までの活動の事実のうち、代表的なものを挙げれば乙第4号証ないし同第60号証のとおりである。
なお、乙第4号証ないし同第52号証までの雑誌「ワールド空手」は、大山倍達が発行人となっていた極真会館に密接な関係を有する雑誌「月刊パワー空手」が廃刊された後に、同誌の執筆編集要員及び販路をそっくり引き継ぐ形で創刊されたもので、このことは、上記無効審判の審理において認められた事実である。また、乙第43号証内における発行人(株式会社ぴいぷる社取締役、2003年6月当時)のインタビュー記事にも示されている。
また、上記記事中、空手の稽古及び指導、冬期・夏期の合宿総指揮、昇段及び昇級審査、内弟子若獅子の入卒寮式、各種選手権大会が大山倍達存命中に行われていたものと同様の方法で被請求人が継続して行っていることも上記無効審判の審理において認められた事実であり、そして、上記記事中の広告提供者(株式会社イサミ及び株式会社メディアエイト)がいずれも大山倍達存命中から逝去後も引き続いて各種商品の販売を行っている者であることも同様に認められている事実である。
したがって、2000年3月以降の上記事実からも、被請求人が大山倍達存命中からの活動について、実質的同一性をもって、2004年の現在に至るまで継続していることは明らかである。
これを要するに、現在の「極真」なる商標は、被請求人による「極真会館」「極真会」「極真空手」「KYOKUSHIN」についての使用によって、被請求人の業務に係る商品・役務を示すものとして広く認識されているものであるから、該商標の下で一定の信用、秩序が形成されているものと認められるべきである。
(4)請求人は、大山倍達の息女であるが、請求人が大山倍達の事業を承継しているとはいえない。
請求人は、極真空手の教授に関する証拠及び商標「極真会」が付された空手着等の衣類・各種記念品・書籍・ビデオ等の販売に関する証拠を甲第10号証ないし同第18号証として提出して、大山倍達が極真会館ビルを建設以来、現在に至るまで、空手の教授が継続して行われ、商標「極真会」が付された各種商品が販売されていることから、同氏の事業は、請求人に承継されていると主張している。
しかしながら、それらの証拠は、発行ないし配布の事実が不明であり、また、現在の空手指導の内容及び商品販売の実体なども示されていないことから、商品又は役務の使用の事実を証明するには根拠薄弱であり、これらの証拠に基づいて、引用商標が空手の教授なる役務及び空手着他各種商品について、現在使用されているという請求人の主張は当を得ない。
(5)請求人は、被請求人による本件商標の登録出願が不当であるとして、甲第19号証ないし同第21号証を提出しているが、それらの証拠から、被請求人による商標登録出願が常識や秩序を逸脱した不当なものであったとは到底認め得ない。
すなわち、請求人は、本件商標の登録出願の不当性として、被請求人が本件商標を大山倍達の財産の相続人である遺族の智弥子夫人の承諾を得ずに、同氏の逝去から46日後(正しくは22日後、請求人は大山倍達の逝去日を平成6年4月2日というが4月26日の誤りである)に、被請求人の個人名義で出願したことについて、師に対する弟子の背信行為であると主張し、更に、大山倍達の遺志を継いで館長となったことについて、被請求人にはその遺志の立証責任があると主張している。
しかしながら、被請求人は、大山倍達の生前から信望を得、逝去直後に組織を構成する支部長、指導員、道場生により後継者として推挙されたのであって、二代目館長を自称したわけではない。また、被請求人は、大山倍達が急逝された時点において、極真会館が使用する商標の保護が全く考慮されていなかった点を極真会館の中核にある者として気付き、商標登録の取得が急務であると感じたが、極真会館は、いわゆる法人格がない社団であるために、商標登録に係る権利主体とはなり得ないことから、個人名義で出願した次第であって、このことは、請求人提出の甲第19号証にも書かれてあるとおりである。
したがって、大山倍達の逝去後の僅か22日後に、被請求人の個人名義で商標登録出願がなされたからといって、それが師弟という信頼関係に背くものという理由にはならない。また、被請求人は、大山倍達の遺志を継いで、同氏の逝去後10年以上継続して、極真会館の館長として活動してきた。しかも、大山倍達の急逝時、極真会館という大きな組織に代表者が存在しなければ、世界中の極真関係者に混乱が生じた蓋然性は高く、被請求人は、同氏の逝去後の極真会館の秩序を保つために活動する上で、館長となり、商標登録出願を行ったわけであるから、その行為は、偉大な師匠の急逝によって残された多くの道場生のため、ひいては極真会館の発展のためになることであって、大山倍達の遺志に反する不当行為であるということはできない。
また、請求人は、大山倍達の遺言書の成立性に関する議論から、甲第20号証及び同第21号証の民事訴訟判決を提出し、遺言の存在が否定されたことをもって、被請求人が師の遺志に基づいて、極真会館の二代目館長に就任したとの主張は成り立たないと主張している。
しかしながら、この各証拠は、いずれも商標権に基づく差止請求権不存在確認と損害賠償とを求めた訴訟であって、被請求人が極真会館内部の者に対する関係において、商標権者として行動できる正当な根拠はなく、極真会館の構成員に対して、「極真」関連商標について使用の差し止めを求めることは、権利濫用に当たると結論づけられたものである。すなわち、あくまでも、被請求人が商標権者であることを前提にして、商標権を行使することができる範囲に一定の制限を課しているにすぎないものである。
(6)さらに、請求人は、本件商標の登録出願の不当性として、大山倍達の極真空手の教授や空手着の販売等の事業及び大山倍達が一代で築いた財産の一つである周知著名商標「極真会」「極真会館」「極真空手」「KYOKUSHIN」は、一般承継人たる遺族(智弥子夫人及び請求人)が承継するのが当然であるとして、甲第18号証、同第22号証及び同第23号証を提出している。
しかしながら、それらの証拠は、遺族が大山倍達の各事業を承継する者であるとの根拠にはなり得ない。
すなわち、甲第18号証の住民票は、請求人が大山倍達とその智弥子夫人の実子であること、在住する場所が大山倍達の設立による極真会館の住所(豊島区西池袋3丁目3番9号)と同一であることが示されているだけであって、大山倍達の事業の承継者として指名されている事実はない。
しかも、当該周知著名商標「極真会」「極真会館」「極真空手」「KYOKUSHIN」が未登録であることからすれば、それを相続財産の一つとして一般承継人たる遺族が承継するという請求人の主張は当を得ない。登録主義を採択している我が国の商標法制度においては、未登録周知商標は、例外的に保護を認められるにすぎず、商標登録を受ける権利は発生していない。商標登録を受ける権利は、出願により発生するからである。したがって、相続財産としての商標権があるとはいえない。
また、甲第22号証は、平成7年7月11日付の智弥子夫人が極真会館二代目館長を宣言する趣旨の「お知らせ」であり、同書面内において、「私は、国際空手道連盟・極真会館の館長として、従前どおり福島県大会や全日本ウエイト制大会を実施しました。今後も、関係者の協力を得て、一つ一つ行事を実施する予定でおります」との記述があるが、同記述のみでは、請求人が現実的に大山倍達の事業を継続して実施してきた事実を示しているとはいえない。
そして、甲第23号証は、同年7月14日付の極真会館全国支部長協議会の文書であり、同文書内には、智弥子夫人を極真会館二代目館長として支持する旨が記述されているが、智弥子夫人が極真会館二代目館長として活動したという事実については何ら示されていない。
以上のことから、大山倍達の極真空手の教授やその他事業及び周知著名商標「極真会」「極真会館」「極真空手」「KYOKUSHIN」に関しては、遺族である智弥子夫人及び請求人が正当承継人であるということには何ら理由がない。
(7)ところで、甲第22号証の内容においては、被請求人と智弥子夫人は極真会館の二代目館長の地位について反目しあっているかのように見えるが、事実は、智弥子夫人と被請求人とは既に和解が成立したものであり(1999年2月17日付)、和解後、智弥子夫人は、1999年11月5?7日に極真会館が主催し、被請求人が大会委員長を務めた第7回全世界空手道選手権大会及びその打ち上げパーティに列席され、また1999年の本部道場の移転に際しても花環を贈っている(乙第61号証及び同第62号証)。また、2000年11月5日には、被請求人が発起人として行った極真会館最高顧問である郷田勇三師範の空手修行四十周年及び還暦祝賀パーティにも列席されている(乙第14号証)。
さらに、智弥子夫人を支持していた甲第23号証の支部長協議会派(現:特定非営利法人全世界極真空手道連盟極真会館、通称:新極真会、以下「新極真会」という。)と被請求人とは、被請求人が所有する本件商標の権利の有効性について争っていたが、既に和解が成立している(2003年4月15日付)。和解に至った理由は、極真会館の内部分裂により、商標権が無効になるということは、大山倍達が創設した極真会館と全く関係のない者による「極真」商標の使用を商標権に基づいて差し止める権利を失うことにつながり、それは、極真会館の秩序を乱し、発展の妨げとなると双方ともに理解したためである。事実、被請求人の登録に係る商標の無効を求める新極真会関係者による各審決取消訴訟は取り下げられ、上記のとおり、本件商標登録に係る平成11年無効審判第35276号事件に対する審決が確定した次第である(乙第3号証)。
その後、新極真会は、2003年7月11日に組織名を特定非営利法人全世界極真空手道連盟極真会館とし、新組織名に関連する「新極真会」等の「極真」の文字を含む同法人の商標登録出願について、その審査過程において、同法人から被請求人へ名義変更を行い、被請求人名義で登録を受けた後に移転手続をするなどして、互いに商標登録について協力を行っているものである(乙第63号証)。
このように、甲第22号証及び同第23号証は、その日付(平成7年7月11日及び7月14日)が示すとおり、約9年も前に遡る内容のものであり、上述の現在の事実とは全く異なるものであって、同証拠をもって、大山倍達の遺族である智弥子夫人が極真会館二代目館長として、大山倍達の事業を承継しているとはいい得ず、また、過去の極真会館の分裂騒動をもって、本件商標登録出願が不当になされたものであるということもできない。
(8)以上のとおり、本件商標は、被請求人が師・大山倍達の遺志を継いで極真会館の発展のために登録出願したのであり、その他の関連する商標についてもその手続において不当な点は見当たらず、更に智弥子夫人及び別派新極真会と和解が成立している事実からしても、被請求人の「極真」関連商標の登録出願が極真空手を真摯に学ぶ者やその支援者に対する背信行為であり不当であるとの請求人の主張は当を得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではなく、同法第46条の規定によりその登録を無効とすることはできない。

5 当審の判断
本件商標は、別掲のとおり、「極真会」の文字を縦書きしてなるところ、請求人は、被請求人による本件商標の登録出願の不当性を述べ、本件商標の登録は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである旨主張しているので、この点について判断する。
なお、本件商標登録については、既に、平成11年審判第35276号(商標法第4条第1項第7号の主張も含む商標登録無効審判事件)において、「本件審判の請求は、成り立たない」旨の審決がされ、その確定登録が平成15年5月21日になされているが、該審判事件において提出された証拠と本件商標登録無効審判事件において提出された証拠とは、いずれも極真空手に関わるものではあるが、商標公報、商標登録原簿以外、同一の証拠は見当たらない。
(1)請求人の提出に係る甲第3号証(株式会社コア出版1984年11月20日初版発行「巨人大山倍達の肖像」)、甲第4号証(有限会社真樹プロダクション昭和50年5月1日発行「月刊現代カラテマガジン5月号」)、甲第5号証(昭和50年9月1日発行「月刊現代カラテマガジン9月号」)、甲第6号証(昭和50年12月1日発行「月刊現代カラテマガジン12月号」)、甲第7号証(講談社昭和50年11月8日第1刷発行「KYOKUSHIN karate 世界を征く」)、甲第8号証(株式会社ぴいぷる社1998年12月25日初版発行「極真 新たなる歩み」、甲第19号証(株式会社ベースボール・マガジン社平成7年5月23日発行「格闘技通信5・23号No.133」)、甲第22号証(大山倍達の妻、大山智弥子が関係者に配布した平成7年7月11日付け「お知らせ」)、甲第23号証(極真会館全国支部長協議会の文書)を総合し、これに、証拠として提出された甲第20号証(大阪地方裁判所 平成14年(ワ)第1018号判決)及び甲第21号証(東京地方裁判所 平成14年(ワ)第16786号判決)において認定されている事実をも併せみれば、大山倍達死亡後の極真会館及び極真マークを始めとする後述(エ)に示す極真関連標章(以下「極真関連標章」という。)については、以下のとおりの事実関係にあったことを認めることができる。
(ア)大山倍達の活動と極真会館の組織等について
大山倍達は、直接打撃制の武道空手を特徴とする極真空手を推進、普及させることを目的に、昭和39年に極真会館を創設し、館長又は総裁と呼称された。大山倍達の下、極真会館の規模は拡大していき、平成6年時点において、日本国内においては、総本部、関西総本部のほか55支部、道場数550、会員数40万人、海外においては、130か国、会員数1200万人を擁する規模となっていた。
極真会館の規模が拡大するにつれて、組織やその運営に関する基本的な定めが「道則」、「支部規約」及び「極真会館国内支部規約」等の形で定立されたが、同規定中には、館長ないし総裁たる地位の決定や承継等に関する規定はなく、また、実際の組織運営は、必ずしも同規定どおりに行われていたわけではなく、具体的な場面においては、大山倍達の個人的な判断にゆだねられており、その裁量は広範であった。
(イ)被請求人の地位について
被請求人は、昭和51年に極真会館に入門して以降、昭和55年に全日本大会に初出場して4位に入賞し、以後の全日本選手権では昭和55年に3位、昭和56年に3位、昭和57年に8位に入賞し、昭和59年の世界選手権大会では3位に入賞し、昭和60年の全日本選手権では優勝し、昭和61年には100人組手を完遂し、全日本選手権で優勝し、昭和62年の全世界空手道選手権大会では優勝した。被請求人は、極真会館の歴史の中で、最も格闘技術に優れた選手の一人であり、この点は、大山倍達も認めていた。
また、被請求人は、極真会館が主催する空手の各種大会において、審判員、模範演技や大会運営委員会の支部長代行委員などの職務を務め、世界20か国余りの道場に、指導員として訪れた。被請求人は、大山倍達の名代として、ネパールにおいて、ネパールの王室に空手の演舞を献上した。
さらに、被請求人は、大山倍達から、極真会館の新会館建設の建設委員会第2次建設委員長に任命され、黒帯研究会の指導を任され、平成4年に、大山倍達から支部長として任命され、本部直轄浅草道場を開設した。
(ウ)大山倍達の死亡と危急時遺言について
大山倍達は、平成6年4月26日に死亡した。入院中であった同年4月19日付で同人の危急時遺言が作成され、危急時遺言には、大山倍達の後継者を松井章圭とすること、極真会館の本部直轄道場責任者、各支部長及び各分支部長らは松井章圭に協力すべきこと並びに大山倍達の相続人は極真会館に一切関与しないこと等が記載されていた。
大山倍達は、生前に、極真会館に属する者たちに対して、自己の死後に自己の館長たる地位を誰に承継させるかについて、公式に示したということはなかった。
大山倍達の葬儀は、同月27日に行われた。出棺の際、危急時遺言の証人の一人である梅田から、大山倍達が遺言で松井章圭を後継館長に指名した旨の発表がされ、同日開催された支部長会議においても、梅田から危急時遺言の内容についての説明がされ、松井章圭も、自ら後継館長に就任する意思を明らかにした。その後、同年5月10日に開催された支部長会議において、全員一致で松井章圭の館長就任が承認された。
危急時遺言の証人の一人である弁護士の米津は、平成6年5月9日、東京家庭裁判所に対し、危急時遺言の確認を求める審判申立てをしたが、大山倍達の遺族らは、同遺言に疑義を表明して争った。上記審判申立てに対して、東京家庭裁判所は、平成7年3月31日、梅田は証人欠格事由に該当するにもかかわらず、証人として立ち会い、遺言内容の決定に深くかかわったのであるから、方式遵守の違反があること、危急時遺言は、証人となった5人が、当時、病状の進行により体力、気力ともに衰えた遺言者(大山倍達)を2日間という長期間にわたり、証人らと利害の対立する立場にある家族を排除して証人らで取り囲むような状況の下で作成されたものであり、遺言者が遺言事項につき自由な判断のもとに内容を決定したものか否かにつき疑問が強く残り、遺言者の真意に出たものと確認することが困難であることを理由として、これを却下した。
上記決定に対して、米津は東京高等裁判所に抗告したが、東京高等裁判所は、平成8年10月16日、上記とほぼ同様の理由により抗告を棄却し、最高裁判所も、特別抗告を却下した。
(エ)被請求人による極真関連標章の出願について
大山倍達は、存命中、極真関連標章について商標登録出願をすることはなかったところ、被請求人は、平成6年5月10日に支部長会議において館長就任が承認された後の同年5月18日に、別掲に示した「極真会」の文字からなる商標を第25類及び第41類に、「KYOKUSHIN」の文字からなる商標を第25類及び第41類に、「極真会館」の文字からなる商標を第41類に商標登録出願をし、また、平成7年2月20日に、「極真空手/KYOKUSHIN KARATE」の文字からなる商標を第41類に商標登録出願をしている。
そして、第41類に出願された「極真会」、「KYOKUSHIN」及び「極真会館」の商標については、平成9年7月11日に、第25類に出願された「KYOKUSHIN」の商標については、平成9年8月1日に、第25類に出願された「極真会」の商標については、平成10年10月9日に、それぞれ商標登録され、また、「極真空手/KYOKUSHIN KARATE」の文字からなる商標については、平成9年8月8日に商標登録されている。
被請求人は、この極真関連標章を出願・登録した経緯について、甲第19号証(格闘技通信)の中で次のように述べている。
「・・・極真会という商標権、極真マーク・・・すべて私の個人名で登録されている・・・それらの登記は私個人名となっております。というのは、・・・極真会館は任意の団体であって、法的にいうと・・・大山倍達による一身専属的なもの・・・総裁(大山倍達)が残された遺言の遺志を継ぐということで、私まぁ、立っている訳ですが、・・・遺言が認められないんじゃないかという疑惑があれば、それは私が立つ理由は一つもないです。・・・遺志を継ぐ形で私が立ったわけです。その責任上、私が個人名で登録させていただいたと・・・これは将来的にはもちろん私が個人で所有するものではありませんから・・・社団法人なり財団法人なり、公益法人ができれば、速やかにそちらに移します。・・・それから、極真会館という商標権を個人で登録する・・・支部長たちに確認をとらなかった・・・それは時間的にも・・・緊急の事項もいろいろな形でありますから、・・・私の館長としての職務の中で・・・責任をもって物事を決定して進めてきた・・・。」
(オ)極真会館の分裂について
極真会館は、法人格がない任意の団体であって、館長ないし総裁たる地位の決定や承継等に関する手続規定は存在しなかったところ、大山倍達の死亡により、平成6年5月10日に開催された支部長会議において、全員一致で松井章圭の館長就任が承認されたが、大山倍達の遺族らは、危急時遺言に疑義を表明して争い、危急時遺言の確認を求める審判申立ての却下が確定するに及んで、極真会館は、松井章圭派、遺族派及び支部長協議会派の3派に分裂した。
この間の事情は、甲第19号証(格闘技通信)によれば、「松井館長・解任?極真お家騒動一部始終」の見出しの下に、「昨年4月26日、国際空手道連盟・極真会館の創始者であり、総裁であった大山倍達が肺がんによる呼吸不全のため死去してから、まもなく一年が経とうとしているが、ここに来てお家騒動がさらに激化していった」と記載されており、各派の記者会見等の内容が要旨次のように掲載されている。
大山倍達の未亡人である大山智弥子は、大山倍達の死後の一連の流れが松井一派による極真会館乗っ取り工作であると主張し、平成7年2月15日、自ら極真会館二代目館長を襲名することを宣言するとともに、松井章圭によって破門されていた高木薫ら5人の支部長と共に遺族派を結成した。同年4月13日には、大山智弥子と次女大山恵喜が記者会見し、東京家庭裁判所の決定内容等について説明した。
一方、平成6年5月10日の支部長会議において松井章圭の館長就任を承認した支部長の中にも松井章圭に対して反感を持つ者が多数おり、平成7年4月5日に、臨時の支部長会議が開催され、極真会の私物化、独断専行、不透明な経理処理の3点に加えて、支部長会議に諮ることもなく「極真会」の名称やマークを松井個人で商標登録したこと等を理由に、同支部長会議において、賛成35名、反対3名、欠席10名により、松井章圭の館長解任が決議され、同日、支部長協議会派は、記者会見を行い、支部長協議会議長を中心に極真会館を運営する旨発表した。
これに対し、松井章圭及び松井章圭を支持する支部長らは、平成7年4月6日、記者らと懇談し、大山倍達が決めたものを支部長会議で覆すことはできず、解任決議は効力がない旨反論し、松井章圭が引き続き極真会館の館長の地位にあると宣言した。
また、請求人は、甲第22号証(平成7年7月11日付「お知らせ」)及び同第23号証(平成7年7月14日付「極真会館全国支部長協議会の文書」)を提出している。甲第22号証は、国際空手道連盟・極真会館/館長大山智弥子名で、「大山倍達の死去後の松井章圭の行為、危急時遺言についての家裁の決定、今後の方針」等について、関係者に配布した「お知らせ」と題する文書であり、甲第23号証は、該お知らせに対して、極真会館全国支部長協議会議長西田幸夫ら28名の支部長らが大山智弥子を支持する旨の文書であり、請求人は、この二代目館長たる大山智弥子の主張は三代目館長である請求人の主張でもある旨述べている。
(カ)極真関連標章を巡る紛争について
甲第20号証及び同第21号証によれば、被請求人は、平成11年ないし平成12年に、極真関連標章の商標権に基づき、NTTに対し、極真関連標章を使用した広告の掲載の禁止を申し入れたため、大石代悟支部長らは、NTTが平成13年度に発行したタウンページに掲載する広告に極真関連標章を使用することができなくなり、その結果、大阪地裁においては、岡田幸雄ら5名を原告として、また、東京地裁においては大石代悟ら5名を原告として、いずれも松井章圭こと文章圭を被告として、商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求事件が提起された。
(2)上記において認定した大山倍達死亡後の一連の経緯及び事実を総合してみれば、極真関連標章は、遅くとも大山倍達が死亡した平成6年4月の時点では、少なくとも空手及び格闘技に興味を持つ者の間では、「極真会館」、「極真空手」を表す標章として広く認識されるに至っていたことが認められる。そして、極真関連標章が極真会館ないし極真空手を表す標章として広く認識されるに至ったのは、大山倍達と大山倍達存命中の極真会館に属する各構成員の努力により、極真会館及び極真空手を全国に普及し、発展させた結果であるから、極真関連標章が表示する出所は、極真会館であることは明らかである。
そうすると、大山倍達が死亡したことにより、大山倍達及び同人から認可を受けた支部長らによる永年の努力により醸成された信用等が化体されている極真関連標章に係る権利は、極真会館に所属する支部長ら構成員全体に、共有的ないし総有的に帰属していたものと解するのが相当である。
しかして、被請求人は、支部長会議において館長就任が承認されると、自己の名において、本件商標を始めとする極真関連標章の出願をし、登録を受けたが、被請求人による極真関連標章についての出願・登録の有効性を認め得る場合があるとしても、それは、極真会館が法人化されるまでの保全的な措置としてのものであり、しかも、松井章圭の館長就任が承認される前提となった危急時遺言が有効なものであり、かつ、極真会館の運営及び極真関連標章に係る商標権の管理が極真会館関係者の間において、平穏裡に行われていた場合に限られるというべきである。
しかしながら、危急時遺言の確認を求める審判申立てを却下する決定が確定したことにより、松井章圭が館長の地位にあることの最大の前提は崩れたものといわなければならない。危急時遺言があるからこそ、その内容には絶対に従うとの考えから、松井章圭の館長就任を承認した支部長会議は、その後、松井章圭の館長解任を決議している。
しかも、危急時遺言の確認を求める申立てが却下された理由は、単に、証人の中に欠格事由のある者がいたという方式遵守違反を理由にするばかりでなく、遺言者が遺言事項につき自由な判断のもとに内容を決定したものか否かにつき疑問が強く残り、遺言者の真意に出たものと確認することが困難であるという理由から却下されたものであり、このことが意味するところは、大きいものといわなければならない。
そして、その後、極真会館は、松井章圭派、遺族派及び支部長協議会派の3派に分裂し、しかも、松井章圭は、本来、極真関連標章について共有的ないし総有的に権利を有しているものと解される極真会館に所属する支部長らの一部の者に対して、極真関連標章の商標権を行使して、その使用の制限を図る等の行為に出て、当事者間で紛争を生じている。
そうとすれば、松井章圭の館長就任が承認される前提となった危急時遺言の確認を求める申立てが却下された事実と極真会館の分裂に至る経緯及び松井章圭による極真関連標章の商標権の行使により、他会派に属する支部長らの業務に支障が生じている事実をも併せ考慮すると、被請求人による極真関連標章についての登録の有効性は認め難いばかりでなく、被請求人は、極真関連標章を出願する際には既に、極真会館分裂の可能性をも予見して、将来生ずるであろう各派の対立関係を自己に有利に解決する意図をもって、本件商標を始めとする極真関連標章の登録出願をしたものと推認せざるを得ない。
してみれば、このような事実関係の下においてなされた本件商標の登録は、公正な取引秩序を害し、公序良俗に反するものといわなければならない。
(3)被請求人の反論に対して
被請求人は、商標法第4条第1項第7号に該当するか否かは、その登録商標の使用者と当該周知著名商標の使用者との間に実質的同一性があるか否かによって決するべきであるとして、被請求人は、大山倍達逝去後も同氏の遺志を継いで、同氏が行っていたのと同様の極真会館の代表としての役割を果たしてきたものであり、現在の極真関連標章は、被請求人による使用によって、被請求人の業務に係る商品・役務を示すものとして広く認識され、一定の信用、秩序が形成されているものである旨主張し、また、大山倍達の遺族である大山智弥子及び別派新極真会とも和解が成立しており、過去の極真会館の分裂騒動をもって、本件商標登録出願が不当になされたものであるということはできない旨主張している。
確かに、大山倍達生前の被請求人の業績は大山倍達も認めていたところであり、その後も精力的に活動していたことを否定するものではない。また、本件商標を始めとする極真関連標章の出願にあたって、被請求人が主張するような側面があったことも一概には否定できない。
しかしながら、上記(2)において認定したように、被請求人の館長就任を承認する前提となった危急時遺言の確認を求める審判申立てを却下する決定が確定したことにより、被請求人の主張している実質的同一性を裏付ける最大の根拠は喪失したものというべきである。そして、他に、被請求人を極真会館の後継館長と認めるに足りる証拠は提出されていない。
また、極真関連標章が周知・著名となったのは、大山倍達と極真会館に属する各構成員の努力の結果であり、被請求人ひとりの成果によるものでないことは明らかである。したがってまた、極真関連標章が表示する出所は、極真会館であって、被請求人の業務に係る商品・役務を示すものとして広く認識されているものでないことも明らかである。
さらに、大山倍達の死後、極真会館の会派の構成は絶えず変動しており、一部の会派との間において、被請求人が主張するような和解が成立していたとしても、現に、甲第20号証及び同第21号証にみられるように、被請求人を被告とする極真関連標章の商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求事件が提起されており、また、大山倍達の三女であり極真会館の三代目館長であると主張している本件請求人から、平成16年1月15日付で本件審判請求を始めとする6件の審判請求が提起されているということは、極真会館内における紛争状態が未だ収束していないことの証左というべきである。
そうしてみると、被請求人の上記各主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)
本件商標


審理終結日 2004-09-02 
結審通知日 2004-09-03 
審決日 2004-09-22 
出願番号 商願平6-48931 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人涌井 幸一 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 鈴木 新五
柴田 昭夫
登録日 1998-10-09 
登録番号 商標登録第3370400号(T3370400) 
商標の称呼 キョクシンカイ、キョクシン、ゴクシンカイ、ゴクシン 
代理人 首藤 俊一 
代理人 石田 純 
代理人 吉田 研二 

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