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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 103
管理番号 1157312 
審判番号 無効2006-89049 
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-20 
確定日 2007-04-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第1642320号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1642320号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1642320号商標(以下「本件商標」という。)は、「BEN DAVIS」の欧文字を横書きしてなり、昭和55年7月14日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、その他本類に属する商品」を指定商品として、同58年12月26日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに指定商品については、平成16年10月13日に第3類、第6類、第8類、第10類、第14類、第18類、第21類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
〈理由〉
1 請求の利益について
請求人は、作業着を製造・販売する衣料品メーカーであり(甲第3号証及び甲第4号証)、現在においては、シャツ、ズボン、帽子、バッグ等を製造・販売している(甲第5号証ないし甲第7号証)。そして、請求人は日本国において絶大な人気を博するブランドになっている。
本件商標は、請求人が製造・販売している商品に付されている「BEN DAVIS」の文字からなる商標と同一である(甲第1号証及び甲第9号証)。また、本件商標は、請求人が米国において商標登録している商標と同一のものである(甲第1号証及び甲第10号証)。そして、請求人が製造する商品は、本件商標と同一の商標を付して日本国に輸入されている。
したがって、本件商標を、その指定商品に使用した場合、需要者は、被請求人の商品が、請求人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある。
以上のとおり、請求人は、本件商標の登録の存在によって直接不利益を被る関係にあるから、本件商標の登録を無効にする審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当する。
2 無効理由について
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号、同第8号及び同第10号に該当する。
(1)商標法第4条第1項第7号について
ア 本件商標が米国でおいて著名であることについて
本件商標は、欧文字「BEN DAVIS」からなり、1935年の設立時から、請求人が米国において使用している商標と同一である。そして、上記「BEN DAVIS」からなる商標は、本件商標の登録出願時において米国において著名になっている(甲第8号証)。
イ 本件商標が剽窃的に登録出願されたことについて
請求人は、本件商標「BEN DAVIS」の文字及び「笑いサル」の図柄(甲第9号証)を組み合わせた商標について商標登録出願をしており(甲第11号証)、請求人の上記登録出願に対して、本件商標が引用され拒絶理由通知を受けている(甲第12号証)。そこで請求人は、本件商標の譲渡交渉を被請求人との間で進めてきたが、被請求人は上記譲渡の申し出を拒絶した。
そして、本件商標を所有し続けたい旨を回答している。さらに、請求人は、被請求人から日本のマーケットに進出する計画があれば「そのヘルプを我々にさせていただきたい」と、いう申し出も受けている(甲第13号証)。
上記事実は、請求人が米国において使用し、著名となっている商標「BEN DAVIS」を、我が国で登録していないことを奇貨として、米国において本件商標と同一の商標「BEN DAVIS」の文字及び「笑いサル」の図柄に係る商標権を有する請求人の国内参入を阻止又は代理店契約締結を強制する目的で、被請求人が本件商標に係る登録出願をしたものと強く推察される。
なお、被請求人は、本件商標は「BEN DAVIS社の了解を取って日本での商標登録をしたものです。」と、述べているが(甲第13号証)、請求人は、被請求人が本件商標登録出願をすることに承諾を与えた事実はない(甲第3号証)。また、被請求人は「ただし、文章で契約したわけではありません。また、先方から依頼されて登録したのか、こちらから登録をしておく旨申し出たものなのかも不明です。」と、述べており、被請求人が請求人の許諾を受けて、本件商標を登録出願したことは証明されていない(甲第3号証及び甲第13号証)。
本件商標「BEN DAVIS」は、請求人が米国において商標登録及び使用している商標と同一である。同請求人が米国において所有する商標「BEN DAVIS」は、Benjamin Franklin Davis(ベンジャミン フランクリン デイビス)が自分の名前にちなんで決定したものであり、造語商標(甲第4号証)であり、このような商標が偶然に採択されるとは考えられない。しかも、請求人のブランド名「BEN DAVIS」は米国においては著名であり、本件商標は「不正の利益を得る目的、又は、他人に損害を与える目的」をもって登録出願されたことが強く窺われる。
以上述べた事実から、本件商標は、請求人の著名商標を剽窃的に登録出願し、登録された商標に該当することは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、無効にされるべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号違反について
本件商標は、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標である。
請求人が製造・販売する商品は、被請求人によって昭和52年頃から輸入されている(甲第13号証)。米国から輸入される商品には、本件商標と同一の商標「BEN DAVIS」が付されている(甲第9号証)。また、昭和52年当時、請求人に係る小冊子及び紙製の看板のようなものが日本国内に大量に存在している(甲第13号証)。したがって、本件商標「BEN DAVIS」は、本件商標の登録出願時において、日本国内で著名と認められる。
商標法第4条第1項第15号における「出所の混同を生じるおそれ」とは、「他人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合」をもいう。そして、「混同を生じるおそれ」の有無は、「当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである」と、判示されている(甲第14号証)。
これを、本件商標についてみると、以下の事実が認められる。
上記で述べたとおり、商標「BEN DAVIS」は、請求人であるべン エフ. デイビス カンパニーを設立したBenjamin Franklin Davis(ベンジャミン フランクリン デイビス)が自分の名前にちなんで決定した商標であるので、独創性の程度が高い商標である。
請求人の所有する商標は、請求人が設立された1935年以来米国において使用され、周知・著名になっている(甲第3号証及び甲第8号証)。
本件商標は、請求人のハウスマークと同一である。
本件商標に係る指定商品の需要者は、一般消費者であるので、商品の流通経路等の取引実情に関する知識を十分に持ち合わせていないのが通常である。
以上述べた事実を総合して判断すると、本件商標を付した商品の取引者又は需要者は、本件商標を付した商品は請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認する。
しかしながら、被請求人は、本件商標の登録出願に際して請求人の許諾は受けておらず、かつ、請求人と何ら取引関係を有しないため(甲第3号証)、需要者が、請求人の業務に係る商品又は請求人の許諾を受けた者の業務に係る商品と認識することは、出所の混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、無効にされるべきである。
(3)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、請求人であるべン エフ. デイビス カンパニーの略称を含む商標である。
本件商標は、「BEN DAVIS」であるが、同商標は、請求人である衣料品製造・販売業者として著名な米国会社べン エフ. デイビス カンパニー(BEN F.DAVIS COMPANY)の略称である。
また、上記「(2)商標法第4条第1項第15号について」において述べたとおり、欧文字「BEN DAVIS」が衣料品に関して、請求人に係る商標として、本件商標の登録出願時において、日本国内で、著名であったと認められる。
請求人は、被請求人が、欧文字「BEN DAVIS」を含む商標登録出願をすることに対して承諾を与えていない(甲第3号証)。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当し、無効にされるべきである。
(4)商標法第4条第1項第10号違反について
本件商標は、請求人が米国において使用・登録している商標と同一の商標を、請求人が製造・販売している商品「シャツ,ズボン,帽子」と同一又は類似の商品を指定商品として登録されている。
本件商標は、上記のとおり、同商標の登録出願時及び査定時において、日本国の需要者の間において広く認識されているものである。
本件商標は、上記のとおり、不正の目的で商標登録を受けた商標であるので、除斥期間の規定は適用されない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当し、無効にされるべきである。
3 答弁に対する弁駁
被請求人は、上記答弁書において、「昭和52年前後において、請求人代表と当社代表との間で日本国内における商標権取得についての合意があった。」と主張している。
しかしながら、請求人は、被請求人が本件商標の登録出願をすることについて承諾を与えておらず(甲第3号証)、被請求人の上記主張は事実に反する。また、被請求人は、上記主張を裏付ける客観的証拠を提出していない。
したがって、被請求人の上記主張は、認められない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号、同第8号及び同第10号に該当するから、その登録は無効にされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を次のように述べた。
被請求人代表者は、昭和52年前後において、請求人代表との間で日本国内における商標権取得についての合意があった。詳細な反論については後日提出する。

第4 当審の判断
1 請求の利益について
請求人が本件審判の請求をする利害関係を有するか否かについては、当事者間に争いがなく、また、請求人は、米国において本件商標と同一の登録商標を所有しているものであるから、請求人は本件審判について請求人適格を有する者というべきである。
2 甲第3号証ないし甲第10号証及び甲第13号証よりすると、以下の事実が認められる。
(1)請求人(ベン エフ.デイビス カンパニー)の代表者が作成した宣誓供述書(写し)及びその訳文(甲第3号証)の「5.」に、「会社は1935年から、『BEN DAVIS』商標を付した商品を取引及び販売しており、また、60年間以上の間、『笑いサル』商標を使用した商品も取引及び販売しております。」の記述があること。同じく「9.」に、「会社は、日本国内において『Ben Davis』製品を流通させるために、東京都目黒区青葉台1-11-8の株式会社聖林公司、又は東京都目黒区青葉台1-11-8の有限会社エイトポイントスターに承諾を与えておりません。」、同じく「10.」に、「また、会社は『BEN DAVIS』商標若しくは『笑いサル』商標又は会社によって所有されるその他如何なる商標又はそれらに類似する標章を使用及び登録することを、株式会社聖林公司、有限会社エイトポイントスター又はその他如何なる日本の実在者・事業体に対しても、決して(明示又は暗示を含めて)承諾を与えたことはありません。」の記述があること。
(2)請求人を説明するウェブページ(写し)及びその部分訳文(甲第4号証)、請求人が製造・販売する商品を掲載するウェブページ(写し)(甲第5号証ないし甲第7号証)、請求人のウェブページ(写し)及び部分訳文(甲第8号証)及び請求人が使用している商標を掲載するウェブページ(写し)(甲第9号証)に、「BEN DAVIS」商標及び別掲(1)のとおりの構成よりなる「笑っているサルの図と『BEN DAVIS』の文字との組み合わせ」商標が、作業着(ワークウェア)、シャツ、ズボン帽子、バッグの商標として使用されており、日本においても人気があること、また、上記甲第3号証の宣誓供述内容によれば、別掲(2)のとおりの構成よりなるサルの図形の下部に「BEN DAVIS」の文字を配してなる商標(登録第3220254号商標)外が被服その他の商品に用いられていることが認められる。
(3)請求人が所有する米国商標を掲載する米国特許商標庁のウェブページ(写し)に、「BEN DAVIS」の米国登録商標が認められること(甲第10号証)。
(4)被請求人から請求人に対する回答書(甲第13号証)の「2 『BEN DAVIS』の商標取得の経緯」の項に、「…BEN DAVIS社の商品は、昭和52年頃から輸入しており(おそらく日本で最初だと思います)現在も継続しております。その輸入をはじめた初期の頃に、我々の代表者がBEN DAVIS社の了解を取って日本での商標登録をしたものです。ただし、文書で契約したわけではありません。また、先方から依頼されて登録したのか、こちらから登録しておく旨申し出たものなのかも不明です。」、同じく「4 その他」の項に、「我々はBEN DAVIS社に対して、約10年前と5?6年前に商標権のことについて接触を持とうとしたことがあります。しかし2回ともはっきりとした回答をもらうことはできませんでした。約25年間放置していた日本の商標権について、なぜ今回のような申し出がなされたのか伺いたいと思っています。日本のマーケットに進出するというような計画があるようでしたら、そのヘルプを我々にさせていただけないだろうか?という気持ちも持っています。」との記述が認められること(甲第13号証)。
3 前記2で認定した事実よりすると、請求人は、1935年から米国において作業着(ワークウェア)、シャツ、ズボン帽子、バッグ等に「BEN DAVIS」商標及び「笑っているサルの図と『BEN DAVIS』の文字との組み合わせ」商標を使用し、1987年(昭和62年)から「BEN DAVIS」製品を流通させるために我が国の企業に承諾を与えていることが認められる。
一方、被請求人は、答弁書においては「被請求人代表者は、昭和52年前後において、請求人代表との間で日本国内における商標権取得についての合意があった。詳細な反論については後日提出する。」と答弁するのみで、その後相当の期間を経るも何らの証拠も提出していない。加えて、この点に関する請求人の提出に係る上記甲第13号証によれば、被請求人は、文書で契約したわけではないがとしつつも、BEN DAVIS社の商品を昭和52年頃から輸入していたことを認めており、また、BEN DAVIS社に対して、約10年前と5?6年前に商標権のことについて接触を持とうとしたことも認めている。
以上を総合すると、請求人が被請求人に対して、相当長い間何らの対応もしていなかった点については疑問が残るとしても、被請求人が請求人代表者との間で日本国内における商標権取得についての合意があったとする点については、認め難いといわざるを得ないし、また、甲第13号証における「約10年前と5?6年前に商標権のことについて接触を持とうとしたこと」という点と符合して、被請求人は、平成5年11月2日に別掲(2)のとおりの「等身大の笑っているサルの図と『BEN DAVIS』の文字との組み合わせ」の商標を登録出願し、登録第3220254号商標として外4件の登録商標とともに所有しており、これらの登録商標についても、上記同様に商標権取得についての合意があったとは認められない。
そして、本件商標と請求人使用商標「BEN DAVIS」及び「笑っているサルの図と『BEN DAVIS』の文字との組み合わせ」とは、文字と文字部分の外観、称呼及び観念を同じくする商標であって、さらに「BEN DAVIS」は人名を認識させるものといえるところ、単に「姓」あるいは「名」のみではなく綴り字全体を同じくするものである。
4 以上によれば、被請求人は、請求人の取扱いに係る作業着(ワークウェア)、シャツ、ズボン帽子、バッグ等に使用される上記請求人使用商標の存在を知りながら、これが日本において商標登録がなされていないことを奇貨として、これと極めて類似するか、同一の本件商標を、請求人の承諾を得ずに商標登録出願し、登録を受けたものといわざるを得ず、被請求人のこのような行為に基づいて登録された本件商標は国際商道徳に反するものであって、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反し公の秩序を害するものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲(1)





別掲(2)






審理終結日 2007-02-19 
結審通知日 2007-02-22 
審決日 2007-03-06 
出願番号 商願昭55-57300 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (103)
最終処分 成立  
特許庁審判長 澁谷 良雄
特許庁審判官 山本 良廣
石田 清
登録日 1983-12-26 
登録番号 商標登録第1642320号(T1642320) 
商標の称呼 ベンデイビス 
代理人 森下 夏樹 
代理人 安村 高明 
代理人 山本 秀策 

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