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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z01
管理番号 1157285 
審判番号 無効2006-89053 
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-28 
確定日 2007-04-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4350157号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4350157号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4350157号商標(以下「本件商標」という。)は、「トトロの土」の文字を標準文字で表してなり、平成10年11月20日に登録出願、第1類「腐葉土,植物生育用人工土壌,園芸用培土」を指定商品として、同12年1月14日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第7号証を提出した。
1「となりのトトロ」、「トトロ」及び「TOTORO」の周知著名性について
本件商標は、「トトロの土」と書してなるが、当該構成中「トトロ」の記載は、宮崎駿氏の原作に基づいて請求人が製作したアニメーション映画の著名なタイトル「となりのトトロ」と類似しており、また、そのタイトルの著名な略称若しくは前記映画の著名な主人公名称である「トトロ」と同一である。なお、「となりのトトロ」のタイトル及び「トトロ」の略称若しくは主人公名は共に、前記アニメーションの原作を起草するに際し、宮崎駿氏が独自に案出した造語であり、それ以外の何らの意味合いも有しない。
アニメーション映画「となりのトトロ」は、宮崎駿氏の原作・脚本・監督、及び、請求人の製作になり、昭和63年4月16日、日本全国の東宝系映画館で劇場公開されたものであるが(甲第1号証)、封切後にわかに人気が沸騰し、公開が終了してみれば、文化庁「芸術作品賞」(甲第2号証)、文化庁「芸術選奨/文部大臣賞」(甲第3号証)、毎日映画コンクール「日本映画大賞」及び「大藤信郎賞」(甲第4号証)、その他、甲第5号証として提出した「受賞一覧」に示されるように、キネマ旬報「邦画部門第1位」、芸術選奨「作品賞」、ブルーリボン「特別賞」、山路ふみ子賞「映画賞」、第18回報知新聞映画賞「監督賞」、映画芸術「邦画部門第1位」、全国映連賞「作品賞」などの輝かしい賞を受賞するなど、様々な実績を残し、かつ、名実ともに邦画史に名を残す名作としての地位を得た。
「となりのトトロ」はまた、劇場公開から約2カ月半後の昭和63年6月30日にはフィルムコミック誌の初版が発行され(甲第6号証)、その後もムック本や絵本、コミック誌などが続々と出版され、既に600万部を越える総発行数に達している。
「となりのトトロ」は更に、劇場公開と並行して商品化も開始され、請求人若しくは請求人から商品化許諾のライセンスを取得したライセンシーが、「となりのトトロ」をはじめ「トトロ」や「TOTORO」の表示を付した様々な商品を製造・販売している(甲第7号証)。ちなみに、商品化に係るアイテムの種類は1500種にも及び、総販売額は現在までに1,100億円を優に超えるなど、宮崎駿氏の作になるキャラクターの中にあって、「トトロ」は現在も圧倒的な人気を維持している。
加えて、「となりのトトロ」は、我が国のみならず、東南アジア諸国を中心として全世界的に出版・上映されており、主人公「トトロ」のキャラクター・グッズはディズニーの「ミッキーマウス」やサンリオの「キティー」などと肩を並べるほどの人気となっている。とりわけ、宮崎駿氏の作になるアニメーション映画「千と千尋の神隠し」がベルリン映画祭のグランプリ「金熊賞」に続き、米国アカデミー賞で「オスカー」を受賞したことで、宮崎駿氏の旧作が世界的に脚光を浴びるようになり、「となりのトトロ」のみならず「魔女の宅急便」「天空の城ラピュタ」「風の谷のナウシカ」その他多数の宮崎作品について、世界的な上映を求める気運が高まっている。その意味で、国内をはじめ、国外でも、本件商標のように請求人の著名な表示を無断で利用した商標の排除が急務となっている。
このように、「となりのトトロ」は宮崎駿氏の原作等に基づいて請求人が製作したアニメーション映画のタイトルとして、国内外を問わず極めて広く認識されており、当該映画の爆発的人気により、劇場公開された昭和63年4月16日の直後から、「トトロ」といえば誰もが直ちに前記映画「となりのトトロ」やその主人公「トトロ」を想起し得る状況となっていた。
如上の状況から、遅くとも、本件商標が登録出願された平成10年11月20日時点においては既に、我が国において「トトロ」といえば、誰もが前記アニメーション映画「となりのトトロ」のタイトル若しくはその主人公「トトロ」を認識し得る状況にあったと理解される。また、平成10年当時既に、「ミッキーマウス」や「キティー」「ドラゴンボール」をはじめとする様々の漫画キャラクターが種々の商品に利用され、市場を転々流通していたことから、人気のあるキャラクターをライセンスのもと自己の商品に利用することで、その購買力が著しく高められるであろうこと、及び、その使用に際しては権利者から使用許諾を受けねばならないことは、誰もが知り得る社会常識となっていたと理解できる。
2 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は「トトロの土」と書してなり、請求人の製作に係るアニメーション映画のタイトルの一部及び当該映画の主人公名として、我が国で極めて広く認識される「トトロ」の表示を包含するにもかかわらず、請求人や原作者である宮崎駿氏とは何ら関係を有しない被請求人に対して登録が付与されたものであり、その登録を維持することが当マーチャンダイジング業界の公正なる秩序を害し、長年にわたって培われた商慣行に反することは明白である。
著名なアニメーションのタイトルやキャラクター名を商品に付することで、その商品の購買力が圧倒的に高められることは、商品を取り扱う者でなくとも、誰もが知り得る事柄であるところ、そのような作品の製作には膨大な時間的・経済的な投資が不可欠であることから、その名声に無断でフリーライドされるようなことがあれば、前記投資を行なった者の被る損害は計り知れない。そのため、商標法や不正競争防止法では、そのような他人の著名な表示の無断使用につき罰則規定を設けるなどして、その登録及び使用を禁止すると共に、そのような表示の使用を希望する場合は、正当権利者から然るべく使用許諾のライセンスを取得しなければならないこととした。
しかるところ、被請求人は、本件商標の使用に当たり、商品化許諾の窓口を担当する請求人からライセンスを受けていないことはもちろん、本件商標を自己の商標として採択・出願するに際しても、請求人から何ら承諾を得ていないことは明らかである。すなわち、「となりのトトロ」や「トトロ」の標章は、その映画製作者でありライセンサーである請求人を核とした商品化事業グループ全体の出所標識であり、その使用を欲する者は請求人から商品化許諾のライセンスを受けねばならないところ、本件商標は「トトロ」の語を含んでいるにもかかわらず、請求人の許可なく採択・出願されたものである。
してみれば、本件商標はその登録により、請求人のライセンスを得ることなく、その独占排他的な使用を可能にするものであるから、その登録を維持するときには、当マーチャンダイジング業界の公正なる秩序を害し、長年にわたって培われてきた当業界の商慣行に混乱を来たすことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反する商標として、その登録は無効とされるべきものである。
3 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は「トトロの土」と書してなるところ、甲第1ないし第7号証に提出した証拠によれば、遅くとも、本件商標が登録出願された時点においては既に、「トトロ」といえば誰もが前記アニメーション映画「となりのトトロ」及びその略称若しくは主人公「トトロ」を瞬時に想起し得る状況にあったことが理解できる。そして、その登録出願当時、既に、著名なブランドマークやミッキーマウスなど著名なキャラクターや名称の無断使用に関する侵害事件が新聞紙上を賑わせていたこと、及び、請求人が1992年(平成4年)に発行した甲第7号証の商品カタログ(平成4年?同5年版)には、「となりのトトロ」をはじめ「トトロ」や「TOTORO」などの表示を付した広範な商品が、請求人若しくは請求人から使用許諾のライセンスを受けた者によって製造・販売されていたことに徴すれば、被請求人が「トトロの土」と書してなる本件商標を採択・登録することにつき、当初より、請求人の著名商標にフリーライドしようとする不正競争の意図があったことは明白である。なお、本件商標と請求人の商標「トトロ」との類似性については、「となりのトトロ」と「トトロ」の我が国における著名度、及び、指定商品「腐葉土、植物生育用人工土壌、園芸用培土」との関係における本件商標中「土」の語の記述的性格を考慮すれば、敢えて説明を要しないと思料される。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反する商標として、その登録は無効とされるべきものである。
4 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は「トトロの土」の文字を書してなるが、指定商品との関係で記述的である「(の)土」を除外した「トトロ」の語は前記したとおり、請求人の著名なアニメーション映画「となりのトトロ」と類似であり、その著名な略称若しくは主人公名「トトロ」と称呼・観念が同一である。
しかるところ、前記したとおり、請求人は「となりのトトロ」や「トトロ」若しくは「TOTORO」の表示を計1500種を越えるアイテムに使用し、使用を許諾している点に照らせば、取引者・需要者が本件商標の付された被請求人の商品に接したとすれば、恰も、請求人から然るべくライセンスを得た者の取り扱いに係る商品であるかの如く、若しくは、請求人や宮崎駿氏と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかの如く、誤って認識されることは明らかである。
また、前記したように、様々なブランドマークやキャラクターの無断使用に関する侵害事件が新聞紙上を賑わせていた点を考慮すれば、本件商標が登録出願された平成10年11月20日当時であれば、他人の著名商標の使用を欲する場合に、その正当権利者から使用許諾のライセンスを受けねばならないことは、誰もが知り得る一般常識となっていたと理解できる。しかるところ、被請求人は情を知って「トトロ」の語を包含する本件商標を採択したのであるから、その登録につき不正競争の意図があったことは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反する商標として、その登録は無効とされるべきものである。
5 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、前記したとおり、請求人を核とする商品化事業グループの著名な表示「トトロ」を構成中に包含するものであり、その使用に当たっては請求人から使用許諾のライセンスを取得せねばならないところ、被請求人は情を知って、本件商標を自己の商標として採択したのであるから、被請求人の当該行為は、請求人にロイヤリティーを支払うことなく利益を独占しようとする不正の意図があったことは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反する商標として、その登録は無効とされるべきものである。
6 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当するから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁するところがない。

第4 当審の判断
1 請求人の提出に係る各甲号証及び請求人主張の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)宮崎駿原作、請求人製作のアニメーション映画「となりのトトロ」は、昭和63年4月16日に全国の東宝系映画館で劇場公開されるや忽ち大人気を博した。その後、文化庁「芸術作品賞」、同「芸術選奨/文部大臣賞」、毎日映画コンクール「日本映画大賞」、同「大藤信郎賞」、キネマ旬報「日本映画ベストテン第1位」、芸術選奨「作品賞」、第31回(昭和63年度)ブルーリボン賞「特別賞」、山路ふみ子賞「映画賞」、第13回報知映画賞「監督賞」、1988年度24回映画芸術ベストテン「日本映画第1位」、全国映連賞「作品賞」等様々な賞を受賞し、新聞報道もされ(甲第1ないし第5号証)、名実共に邦画史に名を残す名作としての地位を獲得した。
(2)「となりのトトロ」は、劇場公開から約2ヶ月半後の昭和63年(1988年)6月30日には請求人によってフィルムコミック誌の初版が発行され、該誌は平成5年(1993年)6月10日には23刷を数えるに至り(甲第6号証)、その後もムック本や絵本、コミック誌などが出版された。
(3)「となりのトトロ」は、映画としての劇場公開や書籍としての出版のみならず、登場人物等の商品化許諾が行われ、本件商標の登録出願前には既に、「となりのトトロ」をはじめ「トトロ」や「TOTORO」の表示を付した様々な商品が製造・販売されており(甲第7号証)、現在においても主人公の「トトロ」をはじめとする登場人物のキャラクター・グッズが人気を博している。
(4)「となりのトトロ」及び「トトロ」の略称若しくは主人公名は共に、前記アニメーションの原作を起草するに際し、宮崎駿が案出した造語であると推認されるものである。
(5)宮崎駿製作のアニメーション映画「千と千尋の神隠し」がベルリン映画祭のグランプリ「金熊賞」に続いて米国アカデミー賞で「オスカー」を受賞したことで、宮崎駿作品が世界的に脚光を浴びるようになり、「となりのトトロ」のみならず「魔女の宅急便」、「天空の城ラピュタ」、「風の谷のナウシカ」等の宮崎駿作品についての世界的な上映を求める気運が高まっている。
2 以上の認定事実によれば、「となりのトトロ」、「トトロ」及び「TOTORO」の表示は、遅くとも本件商標の登録出願時には既に、宮崎駿原作のアニメーション映画の題名又は主人公を表すものとして需要者間に広く認識され、「トトロ」といえば直ちに上記映画ないしはその主人公を連想、想起するほどになっており、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものというべきである。
3 本件商標は、上記第1のとおり、片仮名文字の「トトロ」と漢字「土」とを助詞の「の」で介したの構成からなるものであり、これらを常に一連一体のものとして認識、把握しなければならないとする格別の事由も見いだし得ない。そして、本件商標の構成中の「トトロ」の片仮名文字は、周知著名となっている上記映画の略称又は主人公の表示と同一であり、直ちに上記映画又はその主人公を連想、想起させるものであること、また、上記1のとおり、「となりのトトロ」をはじめ「トトロ」や「TOTORO」の表示を付した様々な商品が使用許諾に基づき製造・販売されていること、さらに、「トトロ」及び「TOTORO」の表示は宮崎駿による造語であり、これと同一の文字をその構成中に顕著に有している本件商標の採択が偶然一致したものとは考えにくいことなどを総合すると、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている上記映画ないしはその主人公を連想、想起し、該商品が請求人ないしは宮崎駿又はこれらと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
4 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-02-07 
結審通知日 2007-02-14 
審決日 2007-02-27 
出願番号 商願平10-99997 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z01)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松田 訓子 
特許庁審判長 澁谷 良雄
特許庁審判官 石田 清
山本 良廣
登録日 2000-01-14 
登録番号 商標登録第4350157号(T4350157) 
商標の称呼 トトロノツチ、トトロ 
代理人 村下 憲司 

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