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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y03
管理番号 1155793 
異議申立番号 異議2006-90123 
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2007-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2006-03-24 
確定日 2007-03-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第4917165号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4917165号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第4917165号商標(以下「本件商標」という。)は、「Champagner」の文字を標準文字で書してなり、平成17年3月28日に登録出願、第3類「化粧品」を指定商品として、同17年12月22日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由の要旨
本件商標は、「Champagner」の文字からなるところ、その構成中「Champagne」の文字は、ワインの著名な原産地統制名称であって、その使用が厳格に管理・統制されているものに他ならないものである。
そして、本件商標は、この著名な原産地統制名称の化体した高い名声及び信用にフリーライドするものであるから、これを原産地からかけ離れた特定個人の商標として登録し使用することは、厳格に管理統制されている前記原産地統制名称を希釈化させるものである。
したがって、本件商標は、公正な取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第3 取消理由通知
1 Champagne(シャンパン)の著名性について
登録異議申立人の主張及び提出した甲各号証によれば、「Champagne」「シャンパン」に関して、
(1)「コンサイスカタカナ語辞典」(1996年10月1日株式会社三省堂発行)によれば、437頁には、「シャンパン」(Champagne)の見出しの下に「発泡ワインの1種,フランス北東部シャンパーニュ地方産の美酒.白ぶどう酒に糖分を加え発酵させ、香料を配し、びん詰にして1年以上貯蔵する.多量の炭酸ガスを含みさわやかな香味をもつ.祝宴に多く用いられる.シャンペンとも.日本では中国名『三鞭酒』を借りてシャンペンと読んでいた.シャンパーニュ地方以外でつくられる発泡ワインはスパークリング-ワインと呼んで区別される.」旨の記載があること(甲第3号証)、
(2)「広辞苑 第5版」(1998年11月11日株式会社岩波書店発行)によれば、1248頁には、「シャンパーニュ」(Champagne)の見出しの下に「フランス北東部、パリ盆地東部の地方(州)。ブドウ栽培・シャンペン製造で知名。中心都市ランス。」との記載があり、また「シャンパン」(Champagne)の見出しの下に「発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。発酵の際に生じた炭酸ガスを含み、一種爽快な香味がある。」旨の記載があること(甲第4号証)、
(3)「新版 世界の酒事典」(1982年5月20日株式会社柴田書店発行)によれば、228頁には、「シャンパン」(Champagne)の見出しの下に「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワイン。正式の名称をバン・ド・シャンパーニュ(Vin de Champagne)という。世界の各地で,各種のスパークリング・ワインがつくられているが、このうちシャンパンと呼ばれるものは、フランスのシャンパーニュ地方,特にプルミュール・ゾーン(ランス山とマルヌ谷との一等地),ドゥジェーム・ゾーン(マルヌ県のうち一等地以外の村落群)産のスパークリング・ワインにかぎると1911年の法律で定められている。」との記載があること(甲第5号証)、
(4)「明治屋酒類辞典」(昭和63年8月1日株式会社明治屋本社発行)によれば、201頁及び202頁には、「Champagne(仏)(英)シャンパン」の見出しの下に「フランスの古い州の名『シャンパーニュ』をとってワインの名に用いたものである。現在『統制された名称』であって,何ら形容詞を付けないで単に『シャンパーニュ』と称する資格を有するのは,マルヌ県の一定地域のブドウを原料にし,その地域内で,『シャンパン法』でつくった『白』スパークリング・ワインである。最高生産量にも制限があって,それを越えた部分には形容詞がつく。」との記載があり、209頁ないし211頁には、「統制名称」の見出しの下に「シャンパンは,詳しくは『ヴァン・ド・シャンパーニュ』であるが『シャンパーニュ』という地名を名乗るには資格がいる。1908年(明治41年)初めて法律ができて,『シャンパーニュ』という名称が『法律上指定された』名となった。」、「要するにシャンパンの条件は(ア)シャンパン地区の生産であること。(イ)シャンパン法(ビン内で後発酵を行い,発生したガスをビン内に封じ込める)で製造したものであること。(ウ)白ワインであること。(原料ブドウには黒ブドウと白ブドウとを,メーカーの秘伝の比率で混和するけれど,でき上りは白ワインである)(エ)その年度の最高の生産高に制限があること,の4条件を具えなければならない。」及び「戦前、わが国でもシャンパンの名称を乱用した歴史があるが,敗戦の結果,サンフランシスコ講和条約の効果として,マドリッド協定に加入を余儀なくされ,以来フランスの国内法を尊重している。」等の記載があり、211頁及び212頁には、「供し方の注意」の見出しの下に「乾杯用に用いられるのは,ポンという景気のよい爆音,黄金色の酒の美しさ,泡立ちの快さによる。」との記載があること(甲第6号証)、
(5)「ワイン紀行」(1991年9月25日株式会社文藝春秋発行)によれば、シャンパンの歴史及び製造過程についての記載があること(甲第7号証)、
(6)「洋酒小事典」(昭和56年6月15日株式会社柴田書店発行)によれば、95頁には、「シャンペン Champagne」の見出しの下に「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワインの総称。」との記載があること(甲第8号証)、
(7)「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(1996年9月30日日本経済新聞社発行)によれば、「私たちはシャンパーニュという言葉を聞いただけで、心が浮き浮きしてくる。それだけシャンパーニュは特別な意味を持ったワインなのだ。近頃は日本でもシャンパーニュが本格的にレストランやワインバーで飲まれるようになったのはうれしい限りだ。」との記載があること(甲第10号証)、
(8)「最新版 The ワイン」(昭和62年10月14日第一刷、発行日不明、読売新聞社発行)によれば、シャンパーニュ地方の様子及びシャンパンと食事との関わり合いについての記載があり、14頁には、「シャンパーニュ地方でつくられる、発泡酒だけに名付けられるシャンパン」との記載があること(甲第11号証)、
(9)「世界の酒4 シャンパン」(1990年6月30日株式会社角川書店発行)によれば、6頁には、「シャンパーニュの丘」の見出しの下に「シャンパーニュのワインの歴史に、さらにひとつの栄光のエピソードが加わった。それは発泡性ワインの誕生である。この画期的な発見、発明は、その後の研究者たちの努力によって、発泡性ワイン、シャンパンの名声を、ヨーロッパのみならず世界的なものにしたのであった。」との記載があり、8頁には、「シャンパーニュのぶどう畑」との見出しの下に「シャンパーニュというのは、この地方の古くからの一般的呼称である。...シャンパーニュには、他の産業もいろいろとあるが、何といってもシャンパンで世界的に知られている。」との記載があること(甲第12号証)、
(10)「ワールドアトラス・オブ・ワイン」(1991年5月27日第1刷、発行日不明、ネスコ(日本映像出版株式会社発行))によれば、58頁には、「フランス」の見出しの下で「フランスは勤勉で感覚的なだけでなく、実に組織的だ。栽培地を規定し、分類し、管理している。どの地所がいちばん優れているかを、ほぼ200年にもわたって整然とリストアップし続けている。過去60年前後、こうした仕事はワインそのものだけでなく、消費者の保護という点で世界的な関心事として次第に重要性を増している」との記載があり、110頁には、「シャンパーニュ」の見出しの下に「シャンパンがどれも、世界中の他のどんな発泡性ワインにも勝るというのは言い過ぎだろう。さまざまなシャンパンがあるのだから。しかし、申し分ないシャンパーニュには、さわやかさと鋭敏さ、芳醇さ、混じりけのなさといったものの組み合わせ、それに優しく刺激してくれるアルコールの強さが見られ、他の追随を許さない。」との記載があること(甲第13号証)、
(11)「世界のワインカタログ1999 by Suntory」(1998年12月1日サントリー株式会社発行)によれば、242頁には、左上に「シャンパーニュ」の文字を小さく「Champagne」の文字を大きく横二段に表し、「シャンパーニュ(Champagne)A.O.C.ワイン地域図」の見出しの下にその地域図の記載があり、243頁には、「シャンパーニュ」の見出しの下に「フランスの葡萄産地としては最北部にあたるシャンパーニュは、言うまでもなく、あのシャンパンの産地です。この地でつくられるスパークリングワインのシャンパンは、スパークリングワインの代名詞として使用されるほど、世界で最も有名なワインのひとつです。その名にふさわしく、大変手間のかかる伝統的な手法をかたくなに守り続けて、素晴らしい風味を生み出しています。」との記載があること(甲第14号証)、
(12)「料理王国1月号別冊 (季刊ワイン王国 NO.5)」(2000年1月20日株式会社料理王国社発行)によれば、80頁には、「ひとくちにシャンパンといっても一様でないのはそれもそのはず、シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(CIVC)がまとめているすべての醸造元の数は5200にものぼる。委員会は、シャンパン消費量上位10カ国に外国事務所をおいて、『シャンパンと呼べるのは、シャンパーニュ地方産スパークリングだけ』ということを訴えてきたが、’93年頃から『5200の醸造元があれば5200様のシャンパンがある』ということもアピールするようになった。」との記載があること(甲第15号証)、
(13)「世界の名酒事典’80改訂版」(昭和55年5月30日株式会社講談社発行)によれば、248頁には、「スパークリング・ワイン」の見出しの下部に「グラスに注ぐと、軽やかな細かい泡が立つ、華やかなワイン。発泡酒といわれ、第二次発酵ののち、グラスに注いだとき泡立つワインをいう。シャンパンがその代表で別格扱いされるが、世界のワイン地帯にはほとんどある」との記載があり、「シャンパンの故郷ランス」の見出しの下にシャンパンの特徴及び製造法及び地理についての記載があること(甲第16号証)、
また、「世界の名酒事典」の’82-’83年度版、’84-’85年度版、’87-’88年版、’90年版ないし’93年版、’95年版ないし2000年版においてもほぼ同内容の記載があり、製品の紹介がされていること(甲第17号証ないし甲第30号証)、
(14)「世界の名酒事典’90年版」(1989年12月22日株式会社講談社発行)によれば、7頁ないし13頁には、「シャンパンの楽しみ」と題して対談が記載され、15頁には、「ワインの法律」との見出しの下に「ヨーロッパではEC(欧州共同体)においてワイン法を制定し、加盟各国はこれに基づいてそれぞれ国内法を設けている。」との記載及びECのワイン法に基づく品質区分例として、フランスにおける指定地域優良ワインはV.D.Q.S.ワインとA.O.C.ワインとの記載があり、「ワインのタイプ」の見出しの下に、スパークリング・ワイン(発泡性ワイン)について「シャンパンに代表されるように、発酵中の炭酸ガスを瓶の中に閉じ込めて、発泡性をもたせたワイン。ただし、シャンパンは原産地呼称法上定められた名称で、フランスのシャンパーニュ地方産に限られる名称。」との記載があること(甲第20号証)、
(15)「世界の名酒事典’94年版」(講談社発行)によれば、12頁及び13頁には、映画にかかわるシャンパンについて、例えば、「『肉料理には赤いワイン、魚には白いワイン、そして恋にはシャンパンを』といったのは『昼下りの情事』(57年、ビリー・ワイルダー監督)のオードリー・へプバーン。」のように多数紹介されていること(甲第24号証)、
(16)「世界の名酒事典2000年版」によれば、「ミレニアム・シャンパーニュ紀行」との見出しの下にシャンパンメーカー及びシャンパーニュ地方についての記載があること(甲第30号証)、
(17)「The 一流品 決定版」(1986年4月17日読売新聞社発行)によれば、260頁には、「スパークリングワイン シャンパン」の見出しの下部に「スパークリングワイン、発泡性で炭酸ガスを多量に含んだワインである。いちばん有名なのがシャンパン。フランスではマルヌ、オーブ、エーヌ、セーヌ・エ・マルヌ四県のブドウ畑でとれたものを原料にしたものだけをほんとうのシャンパンと証明している。祝祭典や結婚式、誕生日などの華やいだ場所で乾杯用として使われる、歓びを演出する酒でもある。」との記載があり、以下に著名なシャンパンが紹介されていること(甲第34号証)、同誌PART2(1987年4月20日発行)、PART3(1988年5月6日発行)及びPART4(1989年6月16日発行)にも同様の趣旨の記載があること(甲第35号証ないし甲第37号証)、
(18)「家庭画報特選 Made in EUROPE ヨーロッパの一流品 女性版」(昭和57年11月1日株式会社世界文化社発行)によれば、198頁には、「“女性を美しくする唯一の飲み物”-シャンパン」の見出しの下に、「シャンパンという名称は、フランスのシャンパーニュ地方で造られる発泡性ワイン(スパークリング・ワイン)の総称で、それ以外のものは単にスパークリングと呼ばれます。」との記載があり、ワインが紹介されていること(甲第38号証)、
(19)「家庭画報編女性版 世界の特選品’84 LADIES‘」(昭和58年11月1日株式会社世界文化社発行)によれば、217頁には、「CHAMPAGNE シャンパン」との見出しの下に、「パリから170キロ東の、ランスより南一帯がシャンパーニュ地方。ここでつくられる発泡性ワインがシャンパンです。」との記載があること(甲第39号証)、
(20)「男の一流品大図鑑’86年版」(昭和60年12月1日株式会社講談社発行))によれば、191頁には、CHAMPAGNE(シャンパン)が一流品の一つとして紹介されており(甲第40号証)、同誌’87年版及び’88年版においても同様にCHAMPAGNE(シャンパン)が一流品の一つとして紹介されていること(甲第41号証及び甲第42号証)、
(21)「はじめてのシャンパン&シェリー」(発行日不明 株式会社宙出版発行)によれば、132頁には、「一目で分かるシャンパンのデータ」の見出しの下に、1998年における上位10カ国へのフランスからの国別出荷量等がグラフにより示されており、我が国への出荷量については、イギリス、ドイツ、アメリカ、ベルギー、スイス、イタリアに次いで多く298万本(750ml、以下同じ。)であること及びフランスからの総出荷量は、1993年が22909万本、1998年が29246万本であって、この間ゆるやかに上昇を続けている旨の記載があること(甲第43号証)、
(22)昭和64年1月5日付け日本経済新聞夕刊によれば、「シャンパン(産地)」との見出しの下に「シャンパンはフランス・シャンパーニュ地方で造られたスパークリングワイン(発泡酒)のこと。グラスに注ぐと軽やかな細かい泡が立つ華やかなワインだ。シャンパーニュ地方はパリの北東、約百七十キロにあり、同国のブドウ産地では最も北に位置する寒い地域。」との記載があること(甲第44号証)、
(23)平成元年6月13日付け日本経済新聞夕刊によれば、「シャンパン人気急上昇」の見出しの下に「結婚披露宴の乾杯用かクリスマス・ディナーの小道具--。これまで限られた出番に甘んじていたシャンパンなど発泡性ワインの人気が急上昇している。」などを内容とする記事があり、また「発泡性ワイン輸入量5割増」との見出しの下に「現在ではフランスの原産地名称国立研究所(INAO)により、『シャンパン』と名のれるのはその『生誕地』シャンパーニュ地方の発泡性ワインのみと規定されている。」との記載があること(甲第45号証)、
(24)平成2年1月11日付け日本経済新聞夕刊によれば、「シャンパン」の見出しの下に「はじける泡や優雅な味と香りが魅力のシャンパン。結婚披露宴やクリスマスパーティーだけでなく、入学式や誕生日などにも登場することが多くなった。炭酸ガスを含む発泡性ワインは各国にあるが、『シャンパン』を名乗れるのはフランスのシャンパーニュ地方産だけ。・・・最近のパーティーブームに加えて、昨年4月の酒税改正で2割程度価格が下がったことから、人気急上昇。」との記載があること(甲第46号証)、
(25)平成2年1月27日付け朝日新聞によれば、「日本の昨年のシャンパン輸入が初めて百万本を突破し、前年に比べて実に66.65%増の128万本に達した・・・日本の輸入の伸び率は世界一。輸入量も、カナダの147万本に次いで世界第10位にのし上がった。」との記載があること(甲第47号証)、
(26)平成2年11月16日付け朝日新聞によれば、「商品の外国地名使用ご用心」との見出しの下に「祝賀パーティーの乾杯に欠かせないシャンパンといっても、厳密には『シャンパン』と『スパークリング(発泡性)ワイン』の区別がある。どちらも泡の立つ白ワインに違いはないが、前者はフランスのシャンパーニュ地方産、後者はそれ以外の国や地域で醸造されたものをさす。・・・欧州共同体(EC)は『スパークリング・ワイン』を勝手に『シャンパン』として売るな、と主張している。」との記載があること(甲第48号証)、
(27)平成3年4月27日付け朝日新聞夕刊によれば、「スパークリングワイン」の見出しの下に「・・・スパークリングワインが最近、人気を集めています。お祝いの席の乾杯の酒から、友人たちといつでも気軽に楽しめる飲み物に変わってきているようです。代表的な銘柄であるシャンパンの高級品は一本数万円しますが、・・・」との記載があり、「シャンパンはシャンパーニュ地方で、瓶内発酵法によってつくるなど、法律で基準が細かく決まっており、この地方以外でつくられるスパークリングワインをシャンパンと呼ぶのは禁止されている。」との記載があること(甲第49号証)、
(28)平成4年7月27日付け毎日新聞夕刊によれば、「ワインの里を疾走」との見出しの下に「『シャンパン』はフランスのシャンパーニュ地方だけで作られるワインの発泡酒の名称。」との記載があること(甲第50号証)の各事実が認められる。
これらの認定事実によれば、「Champagne」の語は、フランス北東部の地名であり、同地で作られる発泡性ぶどう酒をも意味する語であること、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、「Champagne」を表す邦語として「シャンパン」が普通に使用されていること、シャンパンが発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であること、世界的に有名な映画でシャンパンが使用されていること、我が国において数多くの辞書、辞典、事典、書籍、雑誌及び新聞などにおいてシャンパンについての説明がなされていること、世界の名酒事典などにおいてシャンパンの具体的製品が紹介されていること、ポンという景気のよい爆音、黄金色の酒の美しさ、泡立ちの快さなどから乾杯用としてシャンパンが用いられることが多いこと及び我が国の1998年におけるシャンパン輸入量が世界第7位で298万本(750ml)と多いことなどが認められ、これらを総合すると、我が国において、本件商標の登録出願当時(平成17年(2005年)3月28日)はもとより登録査定時(同年11月7日)を含むその後においても、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られているというのが相当である。
2 商標法第4条第1項第7号の該当性について
本件商標は、「Champagner」の欧文字を標準文字で書してなるところ、構成中の「Champagne」の語については、上述したとおり「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして一般需要者の間に広く知られているものであり、また、「Champagner」の語は、「シャンパン」を意味するドイツ語であることも認められる。
そして、フランスにおける「CHAMPAGNE」「シャンパン」の名称の保護に関しては、前記認定事実のほか、さらに以下の事実が認められる。
「フランスのワインとスピリッツ」(1987年フランス食品振興会発行)によれば、18頁ないし20頁には、EC(欧州共同体)の規則に従って、ワインはテーブル・ワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、フランスでは、この2つの等級がさらにそれぞれに2分され、(1)A.O.C.(原産地統制名称ワイン)(2)V.D.Q.S.(上質限定ワイン)(3)ヴァン・ド・ペイ(地酒)(4)ヴァン・ド・ペイを除いたテーブルワインの4つに分けられること、V.D.Q.S.(上質限定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)によって厳しく規制されパスしたものに限られ、製造の条件は法令化されていること、A.O.C.(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.S.ワインに適用される規制よりさらに厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法及び場合によっては熟成条件などの規準が決定されていること、その名称を使用することができるためには、様々な基準に合うように製造されそれに合格すること、さらに鑑定試飲会の際に不適当と見なされたものは、名称使用権利を失うことなどが記載されていること、20頁には、産地別A.O.C.ワイン一覧表中に「シャンパーニュ CHAMPAGNE」が記載されていること(甲第9号証)、フランスでは、1935年7月30日に原産地統制名称についての政令を制定し、INAOは原産地統制名称のぶどう酒が満たすべき生産地域、ぶどうの品種、収穫量、最低アルコール純度、栽培方法、醸造方法などの条件を定めることができ、またフランス国内及び国外で原産地統制名称を保護することができる旨などを規定していること(甲第53号証、甲第54号証、甲第57号証及び甲第58号証)、原産地統制名称「CHAMPAGNE」の条件を定めていること(甲第55号証及び甲第56号証)、INAOは請求人などとともにフランス国内及び国外で原産地統制名称の保護の活動をしていること(甲第53号証、甲第54号証、甲第57号証)の各事実が認められる。
以上によれば、本件商標は、構成中の「Champagne」の語が「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして登録出願時はもとよりその後においても我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること並びにフランスシャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者が永年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性ぶどう酒の生産に努めてきたこと及びフランスが国内法令を制定し、1935年以降INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであることを併せ考慮すれば、これを指定商品に使用するときは、著名な「CHAMPAGNE」「シャンパン」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるものであるというのが相当である。
3 結論
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。

第4 当審の判断
本件に関し、審判長は、商標権者に対し、平成18年11月2日付けで、上記第3の取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もなかった。
そして、上記第3の取消理由は、妥当なものと認められるので、本件商標についての登録は、この取消理由によって、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2007-01-19 
出願番号 商願2005-26554(T2005-26554) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (Y03)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岩内 三夫 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 小林 和男
寺光 幸子
登録日 2005-12-22 
登録番号 商標登録第4917165号(T4917165) 
権利者 有限会社J&I
商標の称呼 シャンパニエル、シャンパニヤー、シャンパーナー、チャンパグナー 
復代理人 石田 良子 
復代理人 佐藤 俊司 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 

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