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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y12
管理番号 1155792 
異議申立番号 異議2005-90659 
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2007-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2005-12-26 
確定日 2007-03-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第4897630号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4897630号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第4897630号商標(以下「本件商標」という。)は、「シャブリ」の片仮名文字と「CHABLIS」の欧文字を二段に書してなり、平成16年11月24日に登録出願、第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同17年9月30日に設定登録されたものである

第2 登録異議申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、甲第1号証ないし甲第58号証を提出している。
本件商標は、「シャブリ」、「CHABLIS」の各文字からなるところ、その構成中「シャブリ」及び「CHABLIS」の文字は、ワインの著名な原産地統制名称であって、その使用が厳格に管理・統制されている世界的に著名な地名である。
本件商標は、厳格に管理・統制されている原産地統制名称として著名な標章「CHABLIS」にフリーライドし、上記原産地統制名称の希釈化を引き起こすものであるところ、原産地とかけ離れた特定個人が自己の商標として登録し使用するに適さないというべきであり、また商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為であるというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。

第3 本件商標に対する取消理由の要点
当審において、平成18年11月17日付けで商標権者に対し通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。
1 「シャブリ」「CHABLIS」の著名性について
異議申立人の提出した甲各号証によれば、「シャブリ」「CHABLIS」に関して、以下の各事実が認められる。
(1)「ブルゴーニュワイン」(フランス食品振興会発行。発行日不明)の一枚目に、「CHABLIS」、「シャブリ」の表示の下に地域地図が掲載され、その左斜め下に、「ブルゴーニュワイン産地の北端にはシャブリ、南端にはマコン。」の記載、また、その二枚目の「CHABLIS」、「シャブリ」、「永遠のワイン」の表題の下に、「面積 4,500ha 約20村、土壌 キンメリッジ/粘土石灰質、ぶどう品種 シャルドネ、ブルゴーニュの最も北にあるシャブリ地域は、エレガントでフルーティな偉大な辛口白ワインを生産し、世界中に不滅の名声を勝ち得ています。」との記載がある(甲第2号証)。
(2)「明解 ワイン辞典」(昭和57年7月25日、株式会社柴田書店発行)によれば、39頁に、「Chablis/シャブリ〔仏〕A.O.C.〈白-辛口〉」の見出しの下「ブルゴーニュ地方の最北端に位置するヨンヌ県内にあるシャブリの町を中心としたぶどう栽培地区名と同時に、同地区産のワイン名。」との記載がある(甲第3号証)。
(3)「フランスのワインとスピリッツ」(発行者等不明、証拠方法のリストには「1987年フランス食品振興会発行」とある。)の18頁に、「ワインの分類」の見出しの下「A.O.C.(原産地統制名称ワイン)」に関する記載があり、また、19頁に「A.O.C.(原産地統制名称ワイン)」の見出しの下「A.O.Cワインの製造は、V.D.Q.Sワインに適用される規制よりさらに厳格な規則を充たすものでなければならない。…A.O.Cワインの原産地域は、V.D.Q.Sワインの場合よりさらに厳しく限定されている。…A.O.Cワイン生産地域の場合は、まずこの名称のために要求される様々な基準に合うように製造され、それに合格してはじめてA.O.C 名称を使用することができる。しかし、鑑定試飲会の際に不適当と見なされたものは、この等級から除外され、名称使用権利を失うことになる。」との記載がある(甲第4号証)。
(4)「1985年、制定50周年を迎える原産地統制名称(AOC)」(フランス食品振興会(SOPEXA)のパンフレット、1987年発行)の一枚目において、「原産地統制名称とワインおよびオー・ド・ヴイ原産地名称国立研究所(INAO;以下「INAO」という。)は1935年7月30日に設立されました。」との記載があり、また、二枚目のINAOの職務として、「1.AOC ワインおよびオー・ド・ヴイの承認を行う。」、「2.原産地名称ワインを発生し得る災害から保護する。」との記載があり、「この2番目の任務は必然的に以下の事項に向けられます。」と記載の後、「フランス国内外を問わず、不正と偽造行為に対する戦い。」と列挙されている(甲第5号証)。
(5)「’80改訂版 世界の名酒事典」(昭和55年5月30日、株式会社講談社発行)によれば、176フランスのワインの頁の「ブルゴーニュのワイン」「Bourgogne」の見出しの下、「ブルゴーニュ・ワインとは、ヨンヌ県のシャブリと、コート・ドール県の…」、その次の頁の「CHABLIS」「シャブリ地区」の見出しの下「ワインは、ヨンヌ県の小さな町シャブリを中心にしてつくられている。やや緑色がかった黄色の白ワインで、原料ぶどうはピノ・シャルドネ種(この地方ではボーノワという)。シャブリの名で親しまれ、ピリッとした辛口の爽快なワイン。」との記載があり、また、その下に「シャブリ Chablis カルベ(Calvet)社 ★サントリー」表示とともに、ワインの瓶の現物写真の写しが掲載されている(甲第6号証)。また、「世界の名酒事典」の’93年版、2000年版、及び創刊25周年!2004年版においてもほぼ同内容の記載があり、製品の紹介がされている(甲第7号証ないし甲第9号証)。
(6)「ブルゴーニュのワインの故郷/コート・ドール/黄金丘陵」(2000年12月10日、株式会社柴田書店発行)の172頁及び173頁に、「本書はコート・ドールにしぼったが、ブルゴーニュで無視できないのはシャブリである。…なにもつかない単なる『シャブリ』がカテゴリーとしては『村名ワイン』のレベルになる。…昔から、『牡蠣にシャブリ』とよくいわれるが、これはふつうのシャブリにはよくあてはまる。…特級や1級のシャブリは、品がよく、繊細かつ優雅な酒質なのだ。」との記載がある(甲第10号証)。
(7)「ワインの事典」(2003年3月15日、株式会社柴田書店発行)の115頁の「シャブリ Chablis」の見出しの下に「ブルゴーニュ北端に孤立した地区で、オーセール市の東。『牡蠣にシャブリ』と賞讃され、ブルゴーニュのなかでも特有の香りと味わいの辛口白ワインを出すので有名。」との記載がある(甲第11号証)。
(8)「ワイン物語 ラベルは語る」(1999年2月10日、株式会社時事通信社発行)の67頁の「シャブリの特級畑」の見出しの下に「シャブリと一言で言うが、フランスの他の地方と同様に畑によって格付けがされ、最大収穫量や最低アルコール度数などが厳しく規制されている。最高品質のものから、シャブリ・グラン・クリュ(特級)、シャブリ・プルミエ・クリュ(一級)、シャブリ、プティ・シャブリと、大きく四つのカテゴリーに分けられている。…」との記載がある(甲第12号証)。
(9)「世界ワイン図鑑」(1999年9月10日、株式会社日本ワインアカデミー発行)の「シャブリ(Chablis)」の見出しの下に「『シャブリ』は世界で最も広く知られているワイン名である。パリと、ブルゴーニュの中心地ボーヌの町を結ぶ線上の、ほぼ中間点に位置する小さな町シャブリが、生産地名となっている。…周辺の生産地では、赤、白、ロゼを産するが、『シャブリ』の名称を使用するものは白ワインに限られる。」との記載がある(甲第13号証)。
(10)「山本 博 フランス ワイン ガイド」(1998年7月15日、株式会社柴田書店発行)の179頁の「CHABLIS シャブリ」の見出しの下に「シャブリはブルゴーニュにおける辛口白ワインの雄として、世界的に名を馳せている。…シャブリには下記の4つの格付けがある。一般に『牡蠣にシャブリ』というほど世界中のグルメ自称者に賞賛されている。…」との記載がある(甲第14号証)。
(11)「フランス ワイン大全」(1992年11月30日、株式会社同朋舎出版発行)の132頁の「シャブリ/CHABLIS」の見出しの下に「シャブリの人たちは名声を無傷のままで守ることに成功したので、『シャブリ』という言葉は、全世界で不当にも白ワインを指す総称になったほどだった。…1938年に決定されたシャブリA.O.C.は、いくつもの特殊性を持っている。…シャブリという名称は、第1級と特級とともに、確定されたブルゴーニュ型のランクに入る全製品を指すために用いられている。…」との記載がある(甲第15号証)。
(12)「最新 フランスワインハンドブック」(2003年8月31日、株式会社ネコ・パブリッシング発行)の112頁の「CHABLIS(シャブリ)」の見出しの下に「ブルゴーニュの北端でシャルドネを栽培する、シャブリAOCという小さな地帯は、古典的な辛口白ワインで世界的に知られている。…シャブリAOCの3000haのブドウ園は、すぐれた白ワインの生産地として名高いが、…」との記載がある(甲第16号証)。
(13)「新版 世界の酒事典」(1982年5月20日、株式会社柴田書店発行)によれば、223頁に、「シャブリ(Chablis)」の見出しの下に「フランスのヨンヌ県シャブリ町周辺でつくられる有名な白のブルゴーニュ・ワイン。1938年の法律で…」との記載がある(甲第17号証)。
(14)「ポケット・ワイン・ブック 第6版」(2005年6月30日、株式会社早川書房発行)の65頁の「シャブリ」の見出しの下に「向かうところ敵なしのシャルドネという品種をシャブリほど見事に表現したワインはない。…」との記載がある(甲第18号証)。
(15)「ワイン用語辞典」(1989年11月24日、株式会社平凡社発行)の63頁の「Chablis シャブリ」の見出しの下に「ブルゴーニュの原産地統制名称ワインの北西端(→Bourgogne)にある白ワインの銘醸地区。ヨンヌ県Yonneの小さな町シャブリがその中心。…」との記載がある(甲第19号証)。
(16)「洋酒小事典」(昭和56年6月15日、株式会社柴田書店発行)の92頁の「シャブリ Chablis」の見出しの下に「フランスのブルゴーニュ地方の北でつくられている辛口の白ワイン。」との記載がある(甲第20号証)。
(17)「ブルゴーニュワイン」(2000年3月23日、株式会社河出書房新社発行)の93頁の「町村名表示ワイン」の見出しの下に「?シャブリ:本来のシャブリ村だけでなく、シャブリ表示栽培地域に属する近隣の16カ村も含む。」との記載があり、また、その117頁の「2.ヨンヌ県Yonneのワイン」「シャブリ地域」の見出しの下に「現在、全部を合わせてほぼ4,000ヘクタールほどになるシャブリ地域は、小さなシャブリの町の周辺に散在する20カ村ほどの畑に限定されている。産出されるのは、ほとんどが白ワインである。」との記載がある(甲第21号証)。
(18)「ワインの悦び」(1999年5月10日、筑摩書房発行)の103頁の「各地域(AOC指定の対象地域)のワイン」の見出しの下に「シャブリ(Chablis 約4000ヘクタール)主にシャルドネ種からつくられる白ワイン。…」との記載がある(甲第23号証)。
(19)「上級ワイン教本」(1999年3月25日、株式会社柴田書店発行)の142頁の「ブルゴーニュ地方のワイン地区」の見出しの下に「シャブリ Chablis地区【主要なAOC】シャブリ Chablis…」との記載がある(甲第24号証)。
(20)「[新訂版]基礎ワイン教本」(1999年12月10日、株式会社柴田書店発行)の78頁の「ブルゴーニュ地方のおもなワイン生産地区」「シャブリ Chablis」の見出しの下に「シャブリはシャルドネ種のみの白ワインを産出する小さな地区である。そのワインはごく辛口ですっきりとし,火打ち石を連想させる。…」との記載がある(甲第25号証)。
(21)「ハヤカワ・ワインブック/ブルゴーニュ・ワイン」(1998年10月31日、株式会社早川書房発行)の62頁の「ヨンヌのワイン」「○シャブリ Chablis」の見出しの下に「シャブリの風土は、素晴らしいワインと論争好きな人間を生み出している。…」との記載がある(甲第26号証)。
(22)「世界のワイン&チーズ事典」(昭和60年9月10日、飛島出版株式会社発行)の50頁の「シャブリ地区/CHABLIS」の見出しの下に「シャブリ地区は、ディジョンの北西部に位置し、パリからブルゴーニュへの玄関口となっている。シャルドネ種から作られる辛口の白ワインは、…」との記載がある(甲第30号証)。
(23)「フランスと世界の優良ワイン1000本」(2002年7月1日、株式会社駿河台出版社発行)の151頁及び154頁に、「Chablis」及び「シャブリ」についての記述が掲載されている(甲第31号証)。
(24)「おいしい洋酒の事典」(2003年12月20日、成実堂出版発行)の234頁に「シャブリ・グラン・クリュ」、「シャブリ・プルミエ・クリュ」及び「プティ・シャブリ」の各見出しの下に、瓶の写真とともに、その説明が掲載されている(甲第32号証)。
(25)「毎日のワイン手帳」(2000年7月20日、株式会社講談社発行)の152頁及び153頁にかけて、「シャブリ・プルミエ・クリュ・ヴァイヨン」等、多数「シャブリ・プルミエ・クリュ?」のワインの説明がその瓶の写真とともに掲載されている(甲第33号証)。
(26)特許庁のホームページ「商標審査便覧42.117.03 世界貿易機関(WTO)の加盟国のぶどう酒又は蒸留酒の産地を表示する標章」の巻末資料2-1、2-2の写しに「登録番号『155』、原産地名称『CHABLIS』、製品『ぶどう酒』、産地『ヨンヌ県内の限定地域(フランス)』」と掲載されている(甲第58号証)。
これらの認定事実によれば、「シャブリ」「CHABLIS」の語は、フランスのブルゴーニュ地方の最北端に位置するヨンヌ県内にあるシャブリ町を中心としたぶどう栽培地区名と同時に、同地区の辛口の白ワイン名であり、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、「CHABLIS」を表す邦語として「シャブリ」が普通に使用されていること、シャブリが辛口の白ワイン名を代表するほど世界的に著名であること、我が国において数多くの辞書、辞典、事典、書籍、雑誌及び新聞などにおいて「CHABLIS」「シャブリ」についての説明がなされていること、そして、世界の名酒事典などにおいて「CHABLIS」「シャブリ」について数多く紹介されていることが認められるものであり、これらを総合すると、我が国において、本件商標の登録出願当時(平成16年(2004年)11月24日)はもとより登録査定時(同17年(2005年)8月12日)を含むその後においても、「フランスのブルゴーニュ地方で作られる辛口の白ワイン」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られているというのが相当である。
2 商標法第4条第1項第7号の該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「シャブリ」「CHABLIS」の文字を横書きしてなるところ、これを構成する「シャブリ」「CHABLIS」の文字は、「フランスのブルゴーニュ地方で作られる辛口の白ワイン」を意味するものとして登録出願時はもとより、その後においても我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること前記1のとおりであること、並びにフランスのブルゴーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者が永年その土地の風土を利用して優れた品質の白ワインの生産に努めてきたこと及びフランスが国内法令を制定し、1935年以降INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであることを併せ考慮すれば、たとえこれを食品分野と異なる本件商標の指定商品に使用するものであるとしても、著名な「シャブリ」「CHABLIS」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、ブルゴーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるものであるというのが相当ある。
3 結論
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。

第4 商標権者の意見
商標権者は、前記第3の取消理由に対し、何ら意見を述べていない。

第5 当審の判断
本件商標は、前記第3の取消理由により、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2007-01-26 
出願番号 商願2004-107317(T2004-107317) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (Y12)
最終処分 取消  
特許庁審判長 澁谷 良雄
特許庁審判官 山本 良廣
石田 清
登録日 2005-09-30 
登録番号 商標登録第4897630号(T4897630) 
権利者 宮田工業株式会社
商標の称呼 シャブリ、シャブリス、チャブリス 
代理人 田中 克郎 
復代理人 石田 良子 
復代理人 佐藤 俊司 
復代理人 田中 景子 
代理人 稲葉 良幸 

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