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審決分類 |
審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z05 |
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管理番号 | 1155705 |
審判番号 | 無効2006-89093 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-07-21 |
確定日 | 2007-04-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4494903号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4494903号の指定商品中「鎮痛・解熱剤及び総合感冒薬」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4494903号商標(以下「本件商標」という。)は、「ツーシンイブ」の文字を標準文字で書してなり、平成12年8月1日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、平成13年7月27日に設定登録されたものである。 2 請求人の主張の要点 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第18号証(枝番を含む。)及び資料1を提出した。 (1)引用商標の著名性 請求人は、商品「鎮痛・解熱剤」について、「EVE」及び「イブ」の文字よりなる商標(以下「引用商標」という。)を昭和60年(1985年)12月の販売開始(甲第9号証の1及び2)以来今日まで継続して使用し、該商品は、人気商品となっている。その商品形態は、請求人の製品目録(抜粋、甲第11号証の1及び2)に示すとおりであり、今日においては多数販売されている同業他社の「鎮痛・解熱剤」の中でも、日本のトップ4番に入る商品となっている。2003年現在におけるシェアは11.9%で、かかる商品の年商は、2003年度で約59億円(小売価格ベース)に上っている(甲第10号証)。また、上記「鎮痛・解熱剤」についての宣伝広告費は、平成10年度が1億円、平成11年度が7300万円、平成12年度が1億2500万円、平成13年度が1億100万円、平成14年度が5500万円、平成15年度が5400万円である(甲第12号証)。 さらに、請求人は、「総合感冒薬」について、「エスタックイブ/S.TAC EVE」(登録第1598641号、甲第8号証)を所有している。該「総合感冒薬」の商品形態は、請求人の製品目録(抜粋、甲第13号証の1及び2)に示すとおりである。そして、上記総合感冒薬も、同業他社より数多く販売されている総合感冒薬の中にあっても、最も人気ある商品の一つとして知られていることは上記「鎮痛・解熱剤」の場合と同様である。したがって、総合感冒薬について、単に「イブ」といえば、請求人の上記総合感冒薬を指すものとして認識されている。 (2)商標法第4条第1項第15号について 本件商標は、その構成文字に相応して、「ツーシンイブ」の称呼が生じる。しかし、その称呼は、「ツーシン」と「イブ」との間に「ン」の語が介在していることにより、発音上は「ツーシン」で一旦切れ、ついで一呼吸おいて「イブ」を発音する形となる。したがって、本件商標は、必ずしもその構成全体が一連、一体として称呼されるものではない。本件商標中の「ツーシン」が何を意味するのか明らかではないが、「イブ」との結合について何ら必然的関連性を有するものではない。 これに対し、引用商標は、薬品の分野、特に「鎮痛・解熱剤及び総合感冒薬」おいて著名となっていることは、前記(1)のとおりであり、特許庁においても、その著名性は認められている(甲第14号証ないし甲第17号証)。 よって、称呼上「イブ」の部分が分離して称呼される本件商標を、著名な引用商標が使用されている商品と同一の商品について使用する場合は、需要者が請求人の著名商標との関連性を強く印象付けるものである。 したがって、本件商標は、少なくとも「鎮痛・解熱剤及び総合感冒薬」については、請求人の業務に係る商品との間に何らかの関係があるかのように、誤信されるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「鎮痛・解熱剤及び総合感冒薬」について、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。 3 被請求人の答弁 被請求人は、請求人の前記2の主張に対し、何ら答弁するところがない。 4 当審の判断 (1)引用商標の著名性について 甲第9号証の1ないし甲第12号証によれば、請求人は、引用商標を表示した「解熱鎮痛剤」(以下「請求人商品」という。)を昭和60年(1985年)12月10日に発売したこと(「薬事日報」甲第9号証の1及び2)、請求人商品は、「薬効別上位銘柄の販売状況 神経系薬(解熱鎮痛剤)」部門において、2001年から2003年にかけて上位4位にあり、シェアは、12%前後であったこと(「店頭向医療品市場の販売動向 2003年度 SDIアニュアルレポート」甲第10号証)、請求人は、請求人商品のシリーズ商品として、「EVE A」(「A」の文字部分は、「EVE」に比べ、小さく表示されている。以下同じ。)及び「イブA錠」の各文字を表示した「解熱鎮痛剤」を販売していること(「製品目録」甲第11号証の1及び2)、上記「EVE A」及び「イブA錠」の各文字を表示した「解熱鎮痛剤」について、テレビ、新聞、雑誌等を媒介してされた宣伝広告の費用は、平成10年度が1億円、平成11年度が7300万円、平成12年度が1億2500万円、平成13年度が1億100万円、平成14年度が5500万円、平成15年度が5400万円であったこと(甲第12号証)、また、請求人は、総合感冒薬について「エスタック イブ」、「エスタック イブ エース」(「イブ」の文字部分は、「エスタック」、「エース」の文字部分より大きく表示されている。)の文字よりなる商標を使用していること(「製品目録」甲第13号証の1及び2)などが認められる。 上記で認定した事実によれば、引用商標は、請求人の業務に係る商品「解熱鎮痛剤」を表示するためのものとして、本件商標の査定時(平成13年(2001年)6月13日)には、一般用医薬品、とりわけ「解熱鎮痛剤」の分野において、その需要者の間に広く認識されていたものと認められ、また、その登録出願時(平成12年(2000年)8月1日)においても、上記商品分野で需要者の間に広く認識されていたものと推認することができる。 (2)出所の混同を生ずるおそれについて 本件商標は、前記のとおり、「ツーシンイブ」の文字を書してなるものであるところ、該文字は、同一の書体をもって、一連に書されているものであるとしても、構成全体から親しまれた観念を生ずるものではないのみならず、その構成中の「ツーシン」の文字部分は、一般に知られている「通信」又は「痛心」の語を想起させるものである一方、後段の「イブ」の文字部分は、「宵祭、祭日などの前夜」あるいは「女性名、旧約聖書に出てくる神が創造した最初の女性」などを意味する語として、わが国においてもよく知られている外来語を想起させるものであるから、観念上「ツーシン」の文字部分と「イブ」の文字部分との間の結びつきはきわめて弱く、両文字は、分離して観察されやすいものといえる。そして、本件商標中の「イブ」の文字部分は、「解熱鎮痛剤」について使用され、需要者の間に広く認識されている引用商標と、片仮名文字を同じくするばかりでなく、その称呼も同じくするものである。 そうすると、本件商標は、これをその指定商品中「解熱鎮痛剤」について使用した場合はいうまでもなく、「解熱鎮痛剤」と用途、用法等において近似し、かつ、請求人においても「イブ」の文字を顕著に表した「総合感冒薬」を取り扱っている実情にかんがみれば、本件商標をその指定商品中「総合感冒薬」について使用した場合においても、これらに接する需要者は、引用商標を想起又は連想し、該商品が申立人又は申立人と営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとみるのが相当である。 (3)むすび したがって、本件商標の登録は、その指定商品中「解熱鎮痛剤、総合感冒薬」について、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものと認められるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-06 |
結審通知日 | 2007-02-09 |
審決日 | 2007-02-20 |
出願番号 | 商願2000-84710(T2000-84710) |
審決分類 |
T
1
12・
271-
Z
(Z05)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大橋 信彦 |
特許庁審判長 |
柴田 昭夫 |
特許庁審判官 |
岩崎 良子 伊藤 三男 |
登録日 | 2001-07-27 |
登録番号 | 商標登録第4494903号(T4494903) |
商標の称呼 | ツーシンイブ |
代理人 | 小出 俊實 |
代理人 | 石川 義雄 |
代理人 | 鈴江 武彦 |