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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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取消2012300362 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 124 |
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管理番号 | 1155636 |
審判番号 | 取消2005-31561 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2005-12-20 |
確定日 | 2007-04-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2220907号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2220907号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2220907号商標(以下「本件商標」という。)は、「SPIDER」の欧文字と「スパイダー」の片仮名文字を二段に横書きしてなり、昭和62年10月13日登録出願、第24類「釣り具」を指定商品として、平成2年4月23日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。なお、本件商標の権利者は、入間市下藤沢1294番地「株式会社オリムピック」で設定登録されたが、その後「マミヤ・オーピー株式会社」に登録名義人の表示変更がされ、さらに、大阪府大阪市西区新町一丁目8番6号「株式会社オリムピック」に特定承継による本権の移転がされ、その移転登録が平成18年5月8日になされたものである。 第2 請求人の主張の要点 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べた。 1 請求の理由 請求人の調査によれば、商標権者はすでに「釣り具」に関する業務を止めており、本件商標がその指定商品「釣り具」について過去3年にわたって日本国内で使用され事実は発見されなかったので、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。 2 答弁に対する弁駁 (1)通常使用権者である有限会社エバーグリーンインターナショナル(以下「エバーグリーンインターナショナル」という。)について 被請求人は、本件商標はエバーグリーンインターナショナルを通常使用権者として使用されていたという主張しているが、まずこの点について反論する。 本件商標について、エバーグリーンインターナショナルが許諾に基づく通常使用権者であることを、現商標権者である株式会社オリムピックは本年5月10日付の書面(乙第3号証)において証明しているが、商標登録原簿を参照すると、本件商標が株式会社オリムピックに移転されたのは、平成18年5月8日である。 商標法第35条において準用する特許法第98条第1項柱書き及び同第1号によれば、「商標権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く)。… 」は登録しなければその効果を生じないとされるが、本件の移転は、商標登録原簿上に明らかなように特定承継に基づくものであるから、株式会社オリムピックが商標権者として本件商標に関し、独占・排他的権利、他人に使用を許諾する権利等を有するに至ったのは、平成18年5月8日以降であり、それ以前は上記のような独占・排他的権利を主張し得る立場にはなく、同社が平成17年8月1日からエバーグリーンインターナショナルに通常使用権を許諾する適正な権限を有していなかった。 したがって、エバーグリーンインターナショナルによる何らかの“使用”があったとしても、それが本件商標に関する本件審判の請求の予告登録がなされた平成18年1月20日以前に、商標権者の許諾を得た適切な使用であったことは、証明がなされていない。 (2)乙第1号証の証拠能力-乙第4号証について 乙第1号証として表わされた「月刊 LURE magazine」の内容を補完する証拠として乙第2号証及び乙第4号証が提出されている。 まず、乙第1号証は、平成18年1月26日号とその表紙上に表示されているが、この日付は本件審判の請求の予告登録以後である。ただ、この種の雑誌、特に「月刊 LURE magazine」は、前々月の26日に発売するのが通例となっていると、乙第4号証の「月刊メディア・データ」の記事が表している。 したがって、乙第1号証は、平成17年11月26日に実際は発刊されているということが証されたという趣旨であろうが、この「月刊メディア・データ」記事の客観性・信頼性が担保されていたとしても、乙第4号証として提出されたこの証拠資料は、「2004年6月特大号」と明記されており、平成16年の段階の事象については、証明力はあるかもしれないが、平成17年暮れ、平成18年1月26日号として発行された雑誌について、同じ発刊のスパンが繰り返されているということは、保証も証明もなされていない。 (3)乙第1号証の内容 乙第1号証が、平成18年1月20日以前に公開された資料であったとしても、この資料の中で本件商標が適正に使用されているとは考えられない。 まず、155頁の記事であるが、赤枠で囲われた部分で釣りのプロである「藤木淳」の使ったロッドと思われるものの写真とともに書かれたコメントに「コードネーム『スパイダ一』」という記述が確かに見受けられるが、これが商品「釣り用のロッド」の商標として使用されたものであるとは到底思えず、「藤木淳」の愛用品についての「ペットネーム、愛称」のような表現とも見受けられ、この記載自体、商品商標を明示するものとは認められない。 その写真の下に「ロッド:テムジン・エアリアルスパイダー・プロト(EG)」なる表示が見受けられるが、「EG」は、乙第2号証が示すように「エバーグリーン・インターナショナル」の表示であろうと思えるが、これは、商品に関する品番や商標の表示と思われる部分であって、ここで使われている商標は明らかに「テムジン・エアリアルスパイダー・プロト」であり、略称されるにしても、商標は「エアリアルスパイダー」であり単なる「スパイダー」ではない。 次に、230頁の記述を検討するに、これは「藤木淳」の釣りに関する記述を満載した頁であり、[ROD]の部分に記載されているのは、「エバーグリーンインターナショナル;コンバットスティックテムジン、プロトタイプ“エアリアルスパイダーX”」であって、ここでも、商品ロッドに係る商標は「エアリアルスパイダーX」であり、これは、本件商標「スパイダー」の使用ではない。 その下段に「世界に2本しかないスパイダースペシャル」と記されているが、これは釣り人である「藤木」のコメントから作成された記事であると思われ、「ロッドの商標、ロッドをこの呼称において特定する」意味で使用されているとは思われない。なぜならば、その下に細かい字で書いてある記事は「スパイダーとかの軽いルアーをスムーズにキャストできるし、云々」即ちここで言っている「スパイダー」はルアー(疑似餌)の形態、つまり「蜘蛛型のルアー」のことを表わしていると思われる。ここには「蜘蛛型の軽いルアーも操作性良くキャストできる特別のロッドであるという説明」がなされており、その記事のまとめとして「世界に2本しかないスパイダースペシャル」というフレーズが置かれていることを考えると、ここで言っている「スパイダー」が特定の商品商標の意味であるとは到底思われない。実際に文字どおり「世界に2本しかないロッド」ならば商標法でいうところの転々流通する商品としての商品性はまず考えられず、そのようなロッドに付けられた名称が商標として機能するはずもない。 また、「スパイダー」がルアー(疑似餌)のことをも意味しているという解釈は、直下の「LURE」の部分にも表示されており「風神スパイダー」というルアーについての記事も認められる。エバーグリーンインターナショナルが使用している商標とは全く異なり、「ゲイラもよかったけど今年一番はスパイダーやね」という「藤木」のコメント中の「スパイダー」は明らかにルアーの形態を表した説明であろうと思われる。 同様に該当頁の一番下に表示されている「スタリオンとスパイダーXは云々」という記述も、釣りのプロとしての「藤木淳」の言葉であって、商標の使用者が商標をどのように使っているかという事実を示すものではない。恐らく商品商標は上記の「コンバットスティックテムジン、プロトタイプ“エアリアルスパイダーX”」と思われるが、その商品商標を釣りのプロであり、商標の使用に関しては特定の知識のない第三者であろう「藤木」が、「エアリアル」と称し、「スパイダーX」と称し、或いは「プロト」と称している状況が感得される。このような記事があったことが、本件商標が商品「釣具」について商標権者若しくはその通常使用権者によって適切に使用されてきた事例となり得るとは思われない。 (4)乙第5号証の内容 乙第5号証は「週刊ルアーニュース;2005年10月3日号」で、この書証が本件審判の請求の予告登録日以前に成立していたものであることは明らかである。 しかしながら、被請求人が証拠資料としてあげているその内容は「記事の中身」であり、釣りの手法が色々語られる中a.「…更にコレをフージーの要望で進化させたエアリアル・スパイダーX???なるロッドを…」という部分が見受けられ、また、b.「スパイダー大作戦」と称されており、同号証3頁にはc.「スパイダー攻めのキモはロッドにあり! エアリアルスパイダーX」との記述が見える。まずa.の部分について言うならば、商品商標として理解すべき部分は「エアリアルスパイダーX」であることは明らかである。b.について言えば、記事全体から鑑みて個々で言っている「スパイダー」は疑似餌の方であり、c.の「スパイダー攻め」の「スパイダー」も明らかに疑似餌の意味であると考えられる。また「エアリアルスパイダーX」を「エアリアル」を小さく「スパイダーX」を大きく表示した部分があるが、これは「週刊ルアーニュース」を発行している雑誌社が記事の中で勝手にデザインしたものであることは明らかである。商標の使用者が「スパイダー」という商標を適切に用いる為の配慮等を示した、商品に対する商標の使用と考えられるべき表示ではなく、たまたま、このような雑誌記事の中に偶然の表示が見られたからといって、本件商標が適切に使用されていたという証拠にはならない。 (5)乙第6号証の内容 乙第6号証は「週刊ルアーニュース;2005年11月21日号」で、この書証が本件審判の請求の予告登録日以前に成立していたものであることは明らかである。 しかしながら、被請求人が証拠資料としてあげているその内容は「雑誌記事の中身」であり、釣りに関する色々な事象が語られる中「…そしてフージー(藤木淳プロ)をトップ50チャンプに導いた『エアリアル・スパイダー』…」という記載が見受けられる。この記事から明らかに了解されるのも、商品商標として理解されるべきは「エアリアルスパイダー」であって単なる「スパイダー」ではない。 被請求人の証拠資料を総合的に勘案するに、まず、本件商標の使用はこれは、「通常使用権者として挙げられている者が、権限ある商標権者から適切な通常使用権を与えられていた」という点がはなはだ疑わしい。 これが適切な通常使用権者によるものであったと仮定しても、被請求人が提出した書証はすべて、雑誌記事等のみで、第三者である釣りのプロ・雑誌記者等の人々が、商品商標の表示方法を考えずに記事の中に盛り込んだ記述のみが挙げられている。したがって、商標の表示にあたる部分が、略称や略語を用いているようにも見受けられ、どのような商品商標が商品自体に表示されていたのか、的確な理解が難しい。記事全体から感得するに、「エアリアルスパイダ一」若しくは「エアリアルスパイダーX」という表示は用いられていたように想像されるが、それは本件商標と同一の商標の使用であるとは思われない。 また、上記雑誌記事の中にはルアーの形態としての「スパイダー」や、ルアーの種類若しくは商標としての「風神スパイダー」等の表示も見受けられ、どの単語が、どの商品・商標を示しているのかも混同されやすく、証拠資料として十分適切でないと思われる部分も存在する。 (6)以上のとおり、被請求人が提出した証拠は本件商標が、本件審判の請求の予告登録日である平成18年1月20日前、3年以内に、適切な権限を有する通常使用権者によって商品「釣り用のロッド」に使用されたという事実を証明するには不十分のものである。 よって、本件商標の登録は、取り消されるべきである。 第3 被請求人の答弁の要点 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。 1 答弁の理由 (1)本件商標は、通常使用権者であるエバーグリーンインターナショナルによって、本件審判の請求の予告登録(平成18年1月20日)前に商品「釣りざお」に使用されている。 (2)乙第1号証 「ルアー・マガジン(Lure magazine)2006年1月号」株式会社内外出版社発行(乙第1号証)の155頁には、「釣りざお」の写真と共に、「トップ50初代チャンピオンの藤木淳を陰でサポートした真の立役者、コードネーム『スパイダ一』。ムシ系ルアーの操作レスポンスは抜群。ロッド:テムジン・エアリアルスパイダー・プロト(EG)」と記載されている。 なお、上記(EG)なる表記は、株式会社内外出版社ルアーマガジン 編集長 水ロ謙二の証明書(乙第2号証)から明らかな如く、エバーグリーンインターナショナルを省略表記したものであり、当該エバーグリーンインターナショナルは乙第3号証から明らかな如く、本件商標の通常使用権者である。 また、乙第1号証の230頁には、「[ROD]エバーグリーンインターナショナル コンバットスティックテムジン プロトタイプ“エアリアルスパイダーX”『世界に2本しか無い、スパイダースペシャル』」と記載されている。 なお、乙第1号証には平成18年1月26日発行と表記されてはいるが、「月刊メディア・データ 2004.6月特大号」メデイア・リサーチ・センター株式会社発行(乙第4号証)の724頁における「Lure magazine 前々月26日発売」との記載から明らかな如く、2006年1月号の乙第1号証は、実際には平成17年11月26日に発売されているものである。 (3)乙第5号証 「週刊ルアーニュース(Lure News)2005年10月3日号」株式会社名光通信社発行(乙第5号証)の2頁には、「特にロッドに関してはフージーいわくかなり重要らしく、野尻湖戦ではソリッドエアリアルLMXをメインに使っているのだが、さらにコレをフージーの要望で進化させたエアリアル・スパイダーX???なるロッドを亀山戦からは使用している。とにかく今は詳しく書けないのだが、このスパイダー大作戦、超ド級のハイプレッシャーの中ですらバスが嬉しそうに出てくる … 」と記載されている。 また、同乙第5号証の3頁には、「スパイダー攻めのキモはロッドにアリ!!スパイダーX」と記載されている。 (4)乙第6号証 「週刊ルアーニュース(Lure News)」 2005年11月21日号、株式会社名光通信社発行(乙第6号証)の15頁には、「ロッドはこの試合に合わすかのように完成した3代目ガニングシャフト『ガンスリンジャー610(ロクテン)』、そしてフージー(藤木淳プロ)をトップ50チャンプに導いた『エアリアル・スパイダー』。」と記載されている。 (5)上記乙第1号証ないし乙第6号証から明らかな如く、本件商標は、通常使用権者であるエバーグリーンインターナショナルによって、本件審判の請求の予告登録前に使用されている事実は挿疑の余地のないものである。 2 弁駁に対する答弁 (1)通常使用権者であるエバーグリーンインターナショナルについて 請求人は、本商標権が被請求人に移転されたのは、平成18年5月8日であるから、それ以前においては、被請求人はエバーグリーンインターナショナルに通常使用権を許諾する適性な権限を有していなかった旨主張する。 確かに、被請求人への移転登録日は平成18年5月8日であるが、商標権移転登録申請書に添付された「譲渡証書及び単独申請承諾書」(乙第7号証)から明らかな如く、本商標権は既に平成13年9月11日に、旧権利者であるマミヤ・オーピー株式会社から被請求人に譲渡されていたものである。 すなわち、被請求人は、平成13年9月11日には実質上、商標権者としての地位を取得し、それ以降移転登録がされるまでの間、独占・排他的に本件商標を使用する権限を有していたものであり、当該権限に基づき平成17年8月1日付けでエバーグリーンインターナショナルに通常使用権を許諾したものである(乙第3号証)。ちなみに、この許諾は本商標権の移転登録後も解除されておらず、エバーグリーンインターナショナルは現在も正当な通常使用権者である。 したがって、エバーグリーンインターナショナルによる平成17年8月1日以降の使用は、正当な通常使用権者による使用に外ならない。 (2)乙第1号証の発行日について 請求人は、乙第1号証の発行日について、平成17年暮れ、平成18年1月26日号として発行された雑誌について、同じ発行のスパンが繰り返されているということは、保証も証明もなされていない旨主張する。 しかしながら、乙第4号証に「前々月26日発売」と明記されていることに徴すれば、これを否定する資料が請求人から何ら提出されていない以上、当該請求人の主張は空論にすぎない。 事実、出版会社の発売日証明書(乙第8号証)から明らかな如く、乙第1号証の発売日は平成17年11月26日である。 (3)乙第1号証の内容について 請求人は、乙第1号証の「スパイダー」はルアー(疑似餌)の形態を表わし、商品「釣り用のロッド」の商標として使用されたものであるとは到底思われない旨主張する。 しかしながら、乙第1号証の230頁における『そしてスパイダーX。…軽いルアー全般にエエから、いつも「何に使おうかな?」と思いながら、メインに使うルアーと組んでた。…で、もうリズム変わるのがイヤやから、違うロッドで2日間やり通した。けど、今思えば変えとけばよかったな?(笑)』との記載に徴すれば、何人も当該「スパイダー」が「ロッド」そのものを指称していること、すなわち、「ロッド」の商標として使用されていることを直ちに感得するものであり、これがルアーの形態を指称するものでないことは極めて明らかである。 (4)乙第5号証の内容について 請求人は、乙第5号証の「スパイダー」は疑似餌の方であり、本件商標がロッドに適切に使用されていた証拠にはならない旨主張する。 しかしながら、乙第5号証の2頁における「エアリアル・スパイダーX??? なるロッド」なる記載及び同3頁における「スパイダー攻めのキモはロッドにアリ!!」、「スパイダーX」、「エアリアル(縦書)」との記載に徴すれば、当該「スパイダー」が「ロッド」を指称し、疑似餌を指称するものでないことは極めて明らかである。 (5)乙第6号証の内容について 請求人は、乙第6号証から理解されるべき商品商標は「エアリアルスパイダー」であって「スパイダー」でない旨主張する。 しかしながら、乙第6号証の第15頁における「ロッドは…『エアリアル・スパイダー』。」なる記載から明らかな如く、「ロッド」の商標として用いられているのは「エアリアルスパイダー」ではなく「エアリアル・スパイダー」であり、このようなとき、当該表記によれば、「エアリアル」のみならず「スパイダー」も商品商標として理解されるべきことは極めて当然である。 (6)商標「スパイダー」の使用について 通常使用権者であるエバーグリーンインターナショナルは、その所有する登録第4385913号商標「エアリアル/AERIAL」(乙第9号証)のシリーズ商品として新製品「スパイダー」釣りざおを発表した関係上、当該業界紙等においては「エアリアル・スパイダー」等として表記されることもあったが、当該通常使用権者のウェブ・サイト(乙第10号証)中の表示態様からも明らかな如く、「スパイダー」そのものが通常使用権者によって「釣りざお」の商標として使用されていたものである。 (7)まとめ 以上のとおり、本件審判の請求の予告登録前から、本件商標が使用された釣りざおが存在していたことは明らかである。 第4 当審の判断 1 本件商標は、前記第1のとおり、「SPIDER」の欧文字と「スパイダー」の片仮名文字を二段に横書きしてなるものであるから、これよりは「スパイダー」の称呼を生ずること明らかである。 2 乙各号証について (1)乙第1号証について 「ルアー・マガジン(Lure magazine)2006年1月号」株式会社内外出版社発行(乙第1号証)の155頁には、「釣りざお」の写真と共に、「トップ50初代チャンピオンの藤木淳を陰でサポートした真の立役者、コードネーム「スパイダー」。ムシ系ルアーの操作レスポンスは抜群。ロッド:テムジン・エアリアルスパイダー・プロト(EG)」と記載されている。 また、乙第1号証の230頁には、「[ROD]エバーグリーンインターナショナル コンバットスティックテムジン プロトタイプ“エアリアルスパイダーX”『世界に2本しか無い、スパイダースペシャル』」と記載されている。 なお、乙第1号証は、その発行日に関して、「平成18年1月26日発行」と表示されているが、ルアーマガジン発売日に関する証明書(乙第8号証)の記載に徴すれば、平成17年11月26日に発行されたものと推認し得るところである。 (2)乙第5号証について 「週刊ルアーニュース(Lure News)関西版 2005年10月3日号」株式会社 名光通信社発行(乙第5号証)の第2頁には、「…さらにコレをフージーの要望で進化させたエアリアル・スパイダーX???なるロッドを亀山戦からは使用している。とにかく今は詳しく書けないのだが、このスパイダー大作戦、 … 」、「これが脅威のシークレットジグ『風神スパイダー』バージョン5。…」と記載されている。 また、同乙第5号証の3頁には、「スパイダー攻めのキモはロッドにアリ!!スパイダーX」と記載されている。 (3)乙第6号証について 「週刊ルアーニュース(Lure News)関西版 2005年11月21日号」株式会社 名光通信社発行(乙第6号証)の15頁には、「ロッドはこの試合に…、そしてフージー(藤木淳プロ)をトップ50チャンプに導いた『エアリアル・スパイダー』」。と記載されている。 (4)乙第10号証について 「EVERGREEN」と題するインターネットウェブサイト(http://www.evergreen-fishing.com/bass_rod/tesp/tmjs_61sul/tmjs_61sul.html)の2006年12月26日付けのプリントアウト(乙第10号証)には、「THE”SPIDER”」の見出しのもと、「TMJS-61SUL スパイダー…テムジン・スパイダーはエアリアル独自の…スペシャリティロットです。…実戦テストをくぐってテムジン・スパイダーは創られました。」と記載されている。 3 以上の乙各号証のうち、発行日等から判断して、本件審判の請求の予告登録日である平成18(2006)年1月20日の前3年以内に該当する乙第1号証、乙第5号証及び乙第6号証の使用標章に関する記述部分についてみるに、「…コードネーム『スパイダー』」、「ロッド:テムジン・エアリアルスパイダー・プロト(EG)」、「スパイダーX」、「風神スパイダー」、「“エアリアルスパイダーX”」及び「エアリアル・スパイダー」の表示が認められるが、「SPIDER」の欧文字のみの商標と「スパイダー」の片仮名文字のみの商標は、見当たらない。 なお、被請求人は、前記2の(4)の乙第10号証を示し、通常使用権者が、自己の所有する登録商標のシリーズ商品として「スパイダー」標章を付した釣りざおを発表した関係上、「エアリアル・スパイダー」等として表記されることもあったが、自身のウェブ・サイト中の表示態様からも明らかな如く、「スパイダー」そのものが通常使用権者によって「釣りざお」の商標として使用されていたものである旨述べているけれども、該乙第10号証は、そのプリントアウトの日付が2006年12月26日であり、本件審判の請求の予告登録日である平成18(2006)年1月20日の前3年以内に該当しないものであるから、乙第10号証における記載内容を前提とする上記主張は採用できない。 したがって、商標として使用されていると思しき標章は、「エアリアルスパイダー・プロト(EG)」、「スパイダーX」、「風神スパイダー」、「“エアリアルスパイダーX”」及び「エアリアル・スパイダー」(以下、まとめて「使用標章」という。)であり、使用標章は、いずれも、一連一体もしくは記述的に表現された中での表示といえ、単に「スパイダー」の称呼が生ずるとはいえないというのが相当である。 4 そうすると、本件商標と使用標章とは、明らかに外観、称呼及び観念が同一のものと認められないから、社会通念上同一の商標とはいえないものである。 また、前記以外の乙号証である「EG」表記についての証明書(乙第2号証)、通常使用権に関する証明願(乙第3号証)、雑誌「月刊 メディア・データ」の記事(乙第4号証)、譲渡証書及び単独申請承諾書の写し(乙第7号証)、ルアーマガジン発売日に関する証明書の写し(乙第8号証)及び登録第4385913号商標データのプリントアウトの写し(乙第9号証)には、本件商標と社会通念上同一の商標は見当たらない。 他に、被請求人若しくは通常使用権者が請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標ないし本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したと客観的に認めるに足る証拠(具体的な販売事実等を明らかにし、その事実の立証の書証)の提出はない。 してみれば、有限会社エバーグリーンインターナショナルが許諾に基づく通常使用権者であるとしても、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の指定商品に本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことについて立証したものとは認められない。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その請求に係る指定商品について使用されていないものであり、また、使用されていないことについて正当な理由があるものともいえないから、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-02 |
結審通知日 | 2007-02-08 |
審決日 | 2007-02-20 |
出願番号 | 商願昭62-115428 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Z
(124)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 土屋 良弘、関根 文昭 |
特許庁審判長 |
澁谷 良雄 |
特許庁審判官 |
石田 清 山本 良廣 |
登録日 | 1990-04-23 |
登録番号 | 商標登録第2220907号(T2220907) |
商標の称呼 | スパイダー |
代理人 | 中田 和博 |
代理人 | 柳生 征男 |
代理人 | 足立 泉 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 青木 博通 |