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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない Z25
管理番号 1152069 
審判番号 審判1998-19205 
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-12-07 
確定日 2007-01-16 
事件の表示 平成9年商標登録願第115797号拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「CHARLES VALENTINO」及び「シャルルバレンチノ」の文字を二段に横書きしてなり、平成9年5月12日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とするものである。

第2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、イタリア国ローマ市在住の『Valentino Garavani』(オランダ国在の関連企業『バレンチノ グローブ ベスローテン フェンノートシャップ社』)が『婦人・紳士物の衣料品』等に使用している著名な商標『VALENTINO』の文字を含むものであるから、これを出願人がその指定商品に使用するときは、需要者が上記会社もしくは上記会社と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 VALENTINO等の表示の周知・著名性について
当審における証拠調べ通知(平成13年11月2日及び平成17年9月29日付け)において示した証拠よりすれば、以下の(1)ないし(6)の事実を認めることができる。
(1)「服飾辞典」(昭和54年3月5日第1刷文化出版局発行)の、ヴァレンチィーノ ガラヴァーニ[Valentino Garabani、1932?]の項に、「イタリア北部の都市(ヴォゲラ)に生まれる。・・・スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。・・・1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。このころ、イタリアのモードは世界的に有名になりつつあった。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクンョンは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判となり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべてヴァレンティーノ独特のセンスを保っているのはみごとである。」と掲載されていること。
(2)「英和商品名辞典」(1990年株式会社研究社発行)[Valentino Garavani]の項において、「イタリア RomaのデザイナーValentino Garavani(1932-)のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など。Roma,Firenze,Milanoなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字でかくこともある)。・・・ 」と掲載されていること。
(3)辞典類において、ヴァレンティノ・ガラヴァーニを指して、「ヴァレンティーノ」、「valentino」との表示がされているものがある。 (文化出版局「服飾辞典」昭和63年9月5日第10刷発行、研究社「英和商品名辞典」1991年(平成3年)第3刷発行。岩波書店「岩波=ケンブリッジ世界人名辞典」1997年(平成9年)11月21日第1刷発行。特に、「岩波=ケンブリッジ世界人名辞典」は、「通称ヴァレンティノ Valentino」と明記している。)
(4)雑誌においては、次のものがある。
(ア)「世界の一流品大図鑑ライフカタログVOL.1」(昭和51年6月5日講談社発行)において、「今シーズンのヴァレンティノのデザイン傾向はクラシック。」、「輸入物ネクタイの中では最も人気があるヴァレンティノのネクタイは、紳士服店から出しているだけあって上品なセンスの本格派」と記載されいること。
(イ)「an・an臨時増刊Fall&Winter 1976-’77」(マガジンハウス社発行)において、「ヴァレンティノはイタリアのオートクチュール出身のメーカー・・・いいものがわかる人なら誰でもがヴァレンティノを愛してしまう」と記載されいていること。
(ウ)「アイリスマガジン第71号」(1977年1月1日発行)において、「ヴァレンティノ」とした上でベルトの商品説明をする記載があること。(エ)「EUROPE一流ブランドの本」(昭和52年12月1日講談社発行)において、「ローマだけでもヴァレンティノの店は四店ある。」と記載されいること。
(オ)「世界の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年5月25日講談社発行)において、「永遠にエレガンスを追求するヴァレンティノにとって・・・ヴァレンティノの高度なファッション感覚に色づけされたハンドバッグは・・・」と記載されていること。
(カ)「世界の一流品大図鑑’85年版」(昭和60年5月25日講談社発行)において、「女性らしさを愛し、魅惑的で優美な衣裳作りを心がけているというヴァレンティノ」、「シーズン毎にカジュアルシューズも発表しているヴァレンティノですが・・・」と記載されていること。
(キ)「男の一流品大図鑑’85年版」(昭和59年12月1日講談社発行)において、「オフタイムこそ、ヴァレンティノで洒落てみたい」と記載されていること。
(ク)「ヴァンサンカン 25ans 1987年10月号」(昭和62年10月1日婦人画報社発行)において、「ヴァレンティノの服は、このスカート丈とニット素材」との記載されていること。
(ケ)「Miss[ミス]家庭画報 1989年5月号」(1989年5月1日世界文化社発行)において、「衿もとや袖口を飾るラッフルはヴァレンティノらしい遊び」と記載があること。
(コ)「non・no ’89 No.23」(平成元年12月5日集英社発行)において、「ヴァレンチノ、ソニア・リキエルから、若々しいbisブランドがデビュー」、「・・・この秋デビューしたヴァレンチノの『オリバー・ドンナ』」、「ヴァレンチノらしさとかわいい感じがうまくミックスした雰囲気がとてもシャレている」と記載されていること。
(サ)「Miss[ミス]家庭画報 1990年5月号」(1990年5月1日世界文化社発行)において、「ヴァレンティノが得意とする、着る人の知性をひきだす服づくり」と記載されていること。
(シ)「Miss[ミス]家庭画報 1990年7月号」(1990年7月1日世界文化社発行)において、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ・ミスV:ヴァレンティノがデザインする、若い女性のためのディフュージョンブランド」と記載されていること。
(ス)「ヴァンサンカン 25ans 1994年4月号」(婦人画報社発行)において、「さすがヴァレンティノです」と記載されていること。
(セ)「Miss[ミス]家庭画報 1994年6月号」(1994年6月1日世界文化社発行)において、「ウエストシェイプされたラインにヴァレンティノらしい格好よさが表現されています」と記載されていること。
(ソ)「ヴァンテーヌ Vingtaine 1994年12月号」(1994年婦人画報社発行)において、「ストッキングはいつもヴァレンティノなのよ」と記載されていること。
(タ)「ELLE 1997年8月号」(1997年婦人画報社発行)において、「ヨウジ ヤマモトやジョルジオ・アルマーニ、ヴァレンティノ、ジョン・ガリアーノなどでは、・・・」との記載、写真に付された「VALENTINO」と記載されていること。
(チ)「DONNA giappone 1998年4月号」(1998年4月1日発行)において、「ウエスタンをテーマに、フェミニン、ロマンティシズム、エレガンス、強さ、そしてユーモアといったヴァレンティノが敬愛する女性の資質を表現した春夏コレクション」と記載されていること。
(5)新聞記事においては、次のものがある。
(ア)繊研新聞(昭和51年9月28日付)において、「ヴァレンティノ秋冬ショー」との見出しの記載があること。
(イ)センイ・ジャァナル(昭和51年9月29日付)において、「ヴァレンティノ・コレクション」との見出し、「この秋のバレンティノの個性を強調したものと見うけられた」との記載されていること。
(ウ)読売新聞大阪版(昭和51年9月30日付)「ヴァレンティノのショーから」との見出しの記載があること。
(エ)朝日新聞(昭和51年9月30日付、同年10月2日付け及び同月5日付)において、「バレンティノ・ショー」との見出し、「かつて、白一色だけのショーを開き、注目を浴びたバレンティノが」、「もっともバレンティノにいわせると」との記事が各記載されていること。
(エ)秋田さきがけ新聞(昭和51年9月30日付)において、「見事な色と素材/バレンチノ作品展から/エレガンスを創造」との見出し、河北新報(昭和51年10月1日付)において、「バレンチノのトータルファッション/鮮やかな赤と黒/エレガンスな世界を創造」との見出し、東奥日報(昭和51年10月4日付)「見事な色と素材/バレンチノの作品群」との見出し、山陰中央日報(昭和51年10月4日付)において、「惜しみなく絶賛!を贈れるバレンチノだった」との記載、福島民友新聞(昭和51年10月6日付)において、「バレンチノの芸術」との見出しの記載、徳島新聞(昭和51年10月12日付)において、「見事な色と素材/バレンチノの作品群から」との見出し、夕刊フクニチ(昭和51年10月18日付)において、「すばらしい色と素材/バレンチノの秋冬新作」、千葉日報(昭和51年11月3日付)において、「みごとな色と素材/ファッション/バレンチノの作品群」との見出し等が記載されていること。
(オ)センイ・ジャァナル(昭和51年年10月1日付)において、「イタリアのデザイナーヴァレンティノ」との記事が記載されていること。
(カ)日刊ゲンダイ(昭和51年10月2日付)において、「ヴァレンティノ・コレクション発表」との見出しの記載があること。
(キ)サンケイ新聞(昭和51年10月5日付)において、「ヴァレンティノ・コレクション」との見出しの記載があること。
(ク)宮崎日日新聞(昭和51年10月5日付)において、「惜しみなく絶賛を贈れるバレンチノです」との記事の記載があること。
(ケ)日経産業新聞(昭和51年10月6日付)において、「伊の鬼才ヴァレンティノ」との見出しの記載があること。
(コ)日経流通新聞(昭和51年10月7日付)において、「来春からヴァレンティノブランドのインテリア小物を売り出す」と記載されていること。(サ)デイリースポーツ(昭和51年10月12日付)において、写真の説明に付された「バレンティノ」とのタイトルの記載があること。
(シ)公明新聞(昭和51年10月14日付)において、「無地が売り物のヴァレンティノ」との見出し、「欧州イタリアのヴァレンティノの秋冬物が公開されました」との記事の記載、写真の説明に付された「ヴァレンティノのスポーティー・ルック」とのタイトルの記載があること。
(ス)報知新聞(平成3年7月29日付)において、「リズの花嫁衣装はバレンチノ」との見出し、「イタリアの有名デザイナー、バレンチノが作ることになった」と記載されていること。
(6)一方、本願につき請求人が提出した全証拠を見るも、ヴァレンティノ・ガラヴァーニのブランド以外の他人のブランドで、単に「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」及び「バレンチノ」との表示で通用しているものがあることは、認められない。
そうすると、上記(1)ないし(6)の事実よりすれば、ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品は、多くの雑誌等において、繰り返し紹介されており、その商標として、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」、「valentino garavani」、「VALENTINO GARAVANI」、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」又は「valentino garavani」若しくは「VALENTINO GARAVANI」と「V」を図案化した図形とを組み合わせたもの以外に、「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」及び「バレンチノ」等が使用されている。
そして、「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」及び「バレンチノ」の表示(以下「『VALENTINO』等の表示」という。)は、本願商標の出願日(平成9年5月12日)前から、「valentino garavani(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」(以下「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」という。)又はそのデザインに係る商品群に使用されるブランドの略称を表すものとして、我が国の取引者及び需要者の間において広く認識されており、その状態は、現在においても継続しているものと認められるものである。
2 商品の出所の混同を生ずるおそれについて
(1)VALENTINO等の表示は、上記1において認定判断したように、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ又はそのデザインに係る商品群に使用されるブランドの略称を表すものとして、我が国の取引者及び需要者の間に広く認識されているものであって、周知著名性の程度が極めて高いものである。 (2)本願商標は、前記のとおり、「CHARLES VALENTINO」及び「シャルルバレンチノ」の文字を二段に横書きしてなるところ、その構成中の「CHARLES VALENTINO」の文字は、「CHARLES」と「VALENTINO」の間にスペースを介して表されていて、「CHARLES」と「VALENTINO」を結合されたものと認識される構成となっているものであり、また、「CHARLES VALENTINO」全体として、特定の人名や成語を表すものとして一般的に知られているものともいえない。そして、その一連の称呼「シャルルバレンチノ」は、「バレンチノ」が「VALENTINO GARAVANI」を認識させる周知著名な商標(デザイナーブランド)であることを考慮すると、よどみなく、一気一連に称呼し得るとはいえない程度に冗長なものであるといい得るところである。
してみれば、本願商標中の「CHARLES VALENTINO」の部分は、その全体が不可分一体のものとして取引者、需要者に把握され、認識されるとはいい難く、むしろ、その構成中の「VALENTINO」の部分が着目され、「VALENTINO GARAVANI」に係る「VALENTINO」を表したものとして識別力を発揮するものと見るべきである。
(3)本願商標の指定商品は、「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」であるところ、これらは、いわゆるファッション関連商品であるということができるから、ヴァレンティノ・ガラヴァーニのVALENTINO等の表示が現に使用されている商品と本願指定商品とは関連性が強く、両者の商品の取引者及び需要者の相当部分は、共通していると認められる。しかも、本願指定商品の大多数が含まれるファッション関連商品は、日常的に消費される性質の商品であり、その主たる需要者は、老人から若者までを含む特別な専門的知識経験を有しない一般大衆であって、このような需要者が当該商品を購入する際は、その商品を購入するに際して払われる注意がさほど緻密なものではないと考えられる。
(4)そうであれば、請求人が本願商標をその指定商品に使用するときには、これに接する取引者、需要者をして、VALENTINO等の表示を連想させ、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、「本願商標の外観構成上、『CHARLES』と『VALENTINO』とは一体のものであって、観念上も、全体としてイタリア国の男性の姓名を表したものと認識されるから、その構成中の『VALENTINO』のみが分離して把握されるおそれはなく、ヴァレンティノ・ガラヴァーニの『VALENTINO』等の表示と誤認混同される余地はないし、加えて、本願商標より生ずる『シャルルバレンチノ』の称呼も冗長でなく、よどみなく一連に称呼されるので、本願商標が、その後半部のみで『バレンチノ』と略称されることはあり得ない。したがって、本願商標は、VALENTINO等の表示とは明らかに別異のものとして認識されるので、両者は類似せず、本願商標をその指定商品に使用しても、その出所について混同を生ずることはあり得ない。」旨述べている。
本願商標は、外観上、「CHARLES」と「VALENTINO」との間に1字分のスペースを有する欧文字「CHARLES VALENTINO」を上段に、かつ、下段に「シャルルバレンチノ」の片仮名文字をいずれも横書きした構成よりなるから、「シャルルバレンチノ」と称呼され、かつ、特定の姓名を表示するものとして観念される場合があることを必ずしも否定するものではない。
しかしながら、本願商標は、欧文字で16文字、そして、8音の称呼からなり、外観及び称呼が比較的長い商標であること、しかも、「VALENTINO」等の表示に関する上記1及び同2の事実及び認定判断よりすると、簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては、本願商標中の「VALENTINO」の文字部分のみによって簡略表記ないし称呼される場合があり得るだけでなく、また、1個の商標から複数の観念を生ずることはしばしばあり、本願商標において、たとえ、前記のように、特定の姓名を表示するものとして観念される場合があるといい得ても、これ以外の観念が生じ得ないと考えるべき的確な理由は、見いだせない。
そして、請求人が提出した本願に係る全証拠をもってしても、本願商標中の欧文字部分「CHARLES VALENTINO」が全体として特定の姓名ないしはブランドを表すものとして我が国の一般的な取引者、需要者によく知られ、通用していると認めるべき証拠は、見いだせず、また、「VALENTINO」以外の「CHARLES」が格別強く取引者、需要者の関心を引くであろうと考えさせる証拠も見いだせない。
してみると、上記文字相互の結びつきは、それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどまでに不可分的に結合していると認めることはできないものというべきである。
さらに、本願商標の構成中の上記欧文字部分には、1字分のスペースがあることよりして、その構成上も明らかに「CHARLES」と「VALENTINO」とに二分されており、これに接する取引者、需要者が「VALENTINO」の部分を可分なものとして認識することは、ごく自然なことであって、下段の「シャルルバレンチノ」という片仮名文字が存在するとしても、「VALENTINO」等の表示に関する上記1及び同2の事実及び認定判断を請求人の上記主張が左右するものではない。
むしろ、本願指定商品とヴァレンティノ・ガラヴァーニの「VALENTINO」等の表示に係る商品とに共通するファッション関連商品の取引者、需要者は、外観及び称呼の比較的長い商標について、例えば、デザイナー名の略称等をもって簡易迅速に表記ないし称呼することも少なからずあり得るというのが当該商品分野における取引の実情であることからすると、このような取引者、需要者が本願商標中の「VALENTINO」の文字部分に着目し、それをもって簡易迅速に表記ないし称呼することも少なからずあり得るものというべきである。
(2)請求人は、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニのVALENTINO等の表示が婦人服、紳士服等をはじめとするファッション関連商品の分野において、取引者及び需要者の間に広く認識されていない。」旨主張する。
しかしながら、上記1及び同2の事実及び認定判断に照らすと、ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品は、婦人服、紳士服に限られることなく、婦人、紳士物の衣料品、毛皮、靴、革製バッグ、革小物、ベルト、ネクタイ、アクセサリー、ライター、インテリア用品など、ファッション関連商品の各種分野にまで及んでいるのであって、ヴァレンティノ・ガラヴァーニのVALENTINO等の表示は、これらの商品群に使用されるブランドの略称を表すものとして認識されていたものというべきである。
そうすると、VALENTINO等の表示は、ファッション関連商品のほぼ全般にわたる取引者及び需要者の間に広く認識されているということができる。
(3)請求人は、「(ア)当審の証拠調べ通知(平成13年11月2日及び同17年9月29日付け)において提示した証拠(刊行物、辞典、新聞、雑誌等)が、いずれも本願商標の出願日(平成9年5月12日)より何年も前のものであり、流行による栄枯盛衰の激しいファッション関連商品の分野について、このような古い証拠をもって、『・・・著名性は、現在も同様であって、特段の変更事情は見いだせない。』と認定することはできないし、本願商標の出願時(平成9年5月12日)はもとより、それに引き続く現時点までの取引者、需要者の認識を認定することはできない。(イ)辞典、雑誌又は新聞の記載は、編集者、雑誌記者、新聞記者等の主観を避けることができず、これらに記載のあることをもって、商品に使用される商標が取引者・需要者に、どのように認識されるかを客観的に判断することはできない。」といった旨述べている。
しかしながら、ヴァレンティノ・ガラヴァーニのブランドとして、VALENTINO等の表示が単独で使用され、我が国の取引者、需要者の間において周知著名となっていることは、上記1及び同2において認定判断したとおりであって、そのことは、上記1(1)ないし(5)とほとんど同じ証拠について、「・・・・VALENTINO等の表示は、本件(登録第4658091号)商標の出願日(平成14年6月18日)・・・の当時、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ又はそのデザインに係る商品群に使用されるブランドの略称を表すものとして、我が国の取引者及び需要者の間に広く認識されており、その状態が現在(口頭弁論終結時は、平成16年12月22日)においても継続していると認められる。」と認定した東京高等裁判所(知的財産第四部)平成16年(行ケ)第335号 同17年2月24日判決においても支持されている。
また、「VALENTINO」を含む商標が唯一でない状況下において、前記新聞の各記事が「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)を略すに当たり、「ガラヴァーニ」とせず、「ヴァレンティノ」としていることからすれば、上記各記事の筆者は、「ヴァレンティノ」という表示によりヴァレンティノ・ガラヴァーニを表現し得るものと考えたからにほかならないということができ、その余の雑誌等も、ほぼ同様のことがいえるものであり、また、全国紙を含む各新聞の見出し記事に「ヴァレンティノ」とのみ記載されていることは、新聞の見出し記事の影響度よりして、どの新聞も「ヴァレンティノ」の表示によって読者がヴァレンティノ・ガラヴァーニと理解するとの了解があるからこそ、そのような記載をしているものと推察し得る。
このように、上記1及び同2の事実及び認定判断によれば、既に昭和50年代には、VALENTINO等の表示がヴァレンティノ・ガラヴァーニ又は、そのデザインに係る商品群に使用されるブランドの略称を表すものという認識が一般に広まっていたことが認められ、後に、上記認識が崩壊したと認めるに足りる証拠もなく、また、上述のとおり、東京高等裁判所(知的財産第四部)の判決において、本願商標の出願時(平成9年5月12日)はもとより、それに引き続く現時点においても、VALENTINO等の表示が周知著名性であることは、認められており、上記認識の状況は、今日においても継続しているものと認められる。
そして、ヴァレンティノ・ガラヴァーニのVALENTINO等の表示の周知著名性の程度や、本願商標とVALENTINO等の表示とのそれぞれの商品の関連性並びに取引者及び需要者の共通性に照らすと、本願商標をその指定商品に使用した場合には、その外観、称呼及び観念上、「VALENTINO」の部分が、これに接する取引者及び需要者の注意を特に強く引くであろうことは、容易に推測することができ、「VALENTINO」の部分のみによって簡略表記ないし称呼され、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ若しくはその関与する会社又はこれらと緊密な関係にある営業主の業務に係る商品であるとの観念が生じる可能性は、極めて高いということができる。
(4)請求人は、「(ア)ヴァレンティノ・ガラバーニと出所を異にする『VALENTINO』を含む商標が、かなり以前から被服等を含む多種のファッション関連商品の取引市場で流通しいる。(イ)『VALENTINO』を含む商標の出願・登録も多数存在する。」旨述べている。
しかしながら、ヴァレンティノ・ガラヴァーニとは関係のない多数の他人がファッション関連商品のかなりの範囲につき出願し、登録を受け、実際に、VALENTINOを含む商標をその商品に使用している状況があるからといって、そのことにより本願商標が出願時はもとより、それに引き続く現時点においても、ヴァレンティノ・ガラヴァーニのVALENTINO等の表示と前述の広義の混同を生ずるおそれがないといえるほどの事情をそなえるに至っていると認めることはできない。
(5)以上、請求人の主張や、それに関わる諸状況は、本願商標が商標法第4条第1項第15号の対象とする広義の混同を生ずるおそれがあるとの認定判断を左右するものではなく、ほかに、本願商標に接する取引者及び需要者をして、商品の出所について混同を生ずるおそれはないと判断すべき証拠は見当たらないので、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
4 結語
してみると、請求人が本願商標をその指定商品である「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」に使用した場合には、これに接する取引者、需要者をして、イタリアの服飾デザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニが婦人服、紳士服、アクセサリー、バッグ等のファッション関連商品に使用して取引者、需要者の間に広く認識されているVALENTINO等の表示を連想、想起させる場合があるから、上記デザイナー又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当し、登録することができないとした原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-11-17 
結審通知日 2006-11-22 
審決日 2006-12-05 
出願番号 商願平9-115797 
審決分類 T 1 8・ 271- Z (Z25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯島 袈裟夫 
特許庁審判長 柳原 雪身
特許庁審判官 山本 良廣
鈴木 雅也
商標の称呼 シャルルバレンチノ、チャールズバレンチノ、カルロスバレンチノ 

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