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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z35
管理番号 1149961 
審判番号 取消2005-31370 
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-02-23 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2005-11-11 
確定日 2006-12-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4583403号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4583403号商標(以下「本件商標」という。)は、平成12年2月10日に登録出願され、「EVE」の欧文字を標準文字で書してなり、第35類「経営の診断及び指導,財務書類の作成,企業の経営に関する情報の提供」及び第36類「企業の財務情報の提供,企業財務に関する情報の提供」を指定役務として、平成14年7月5日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の指定役務中、第35類『経営の診断及び指導、企業の経営に関する情報の提供』の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を次のように述べた。
1 請求の理由
(1)本件商標は、その指定役務中、第35類「経営の診断及び指導、企業の経営に関する情報の提供」(以下「当該指定役務」という。)については、過去3年以上にわたり日本国内において、商標権者又は使用権者のいずれもが、当該指定役務について使用されたとする事実が発見できず、不使用の事実が明らかである。また、その不使用について正当理由があるとは、認められないものである。
よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、当該指定役務についてその登録は、取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)答弁の内容は、イ)本件商標「EVE」を審判請求予告登録前3年以内で、誠実に使用している。ロ)指定役務は被請求人の業務であり、インターネットホームページで使用している。乙第2号証は「役務に関する広告」である。ハ)本件商標を使用した指定役務である経営指標の提供を講習という形で実施している。乙第6号証及び同第7号証は、「役務の提供」であり、「役務の提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したもの」である。ニ)別の使用状況として乙第9号証ないし同第11号証を提示する。との要旨内容であると認められる。そこで以下弁駁を行う。
(2)被請求人権利者が提出の乙各号証からは、被請求人の具体的な使用態様規模が不明であり、現時点で何ら使用事実を証する資料の存在も認められない。よって、本件商標が当該指定役務に使用されているとする事実は、認められないものである。
(3)まず、本件商標は、「EVE」(標準文字)と書してなる構成態様で取消しの対象に係る指定役務は、第35類の「経営の診断及び指導、企業の経営に関する情報の提供」である。乙号証全体を精査するに、被請求人は当該役務を業として行っている会社とは、言い難い。特に、乙第2号証の会社概要、乙第8号証の有価証券報告書を見ても、取消し対象に係る指定役務を被請求人が業務内容としている事実は、認められない。あえて、当該役務が被請求人の業務内容と主張するなら、有価証券の虚偽記載であり、到底首肯しえる主張とは、言い難い。
被請求人は、指定役務である「経営指標」につき、講習という形にて実施し、受講生に配布した資料に表題として掲げ、「商標と認識した上で使用している。」と主張答弁するも、JT及びJTグループでの経営指標の説明であり、「経営指標」が「企業の経営に関する情報の提供」に含まれるとしても、被請求人の役務として業として行われているとは、認められないものである。
さらに、使用事実は使用者の主観は問われるものではない。また、表題としては「FCFとEVE」であるから、その表示態様であり表題としての使用とは、認められない。
乙各号証から見るに、「EVE」の使用態様は、被請求人の独自の指標を表現したものと認められ(乙第2号証)、使用していると答弁している態様は、乙第2号証ないし同第6号証、同第9号証ないし同第11号証において、自他役務を識別するために使用している商標とは、認められないものである。
また、当該指定役務の「提供」の使用において、そのためにセミナー開催の資料や提案書等での使用が認められているが、乙各号証はいずれも前記のとおり、自他役務の識別標識としての「商標」の使用ではなく、あえて判断するに被請求人自社の財務に関する情報であり、自社独自の財務指標を表現するために考案した指標を「EVE」として表示したにすぎないものであるから、当該指定役務に商標として使用されている事実とは、言い難いことが明らかである。
(4)叙上のとおり、本件商標が当該指定役務に使用されているとする事実は、認められないものである。
よって、本件審判請求に対し請求の趣旨とおりの審決を求めるものである。
なお、不使用取消審判の主旨は、不使用事実に基づき空権化された商標を開放し真に商標選択の自由を確保するための手段と認められており、いわゆるストック商標として権利確保し不使用事実をいんぺいし、使用事実を捻出させることは、厳に慎むことと自戒し、そうあるべきものと思料する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第11号証を提出した。
1 使用の証明
(1)被請求人は、本件商標「EVE」を、指定役務「経営の診断及び指導、財務書類の作成、企業財務に関する情報の提供」に本件審判請求の予告登録前3年以内に、誠実に使用している。
被請求人は、中期経営計画として2002年4月に「Plan2004」を打ち出した(乙第1号証)。その具体的内容は、客先、社会等に価値を提供していく、いわゆるブランディング戦略であり、当該戦略を図る経営指標、すなわち被請求人の業務である指定役務について、英文の頭文字から本件商標「EVE」を提供する役務の名称として採用し、その商標は、被請求人のインターネットホームページ上で公表、使用している(乙第2号証)。
(2)被請求人は、指定役務に本件商標「EVE」の使用をインターネットで開始する以前に、現実に指定役務の内容とその具体的事例を、本件商標「EVE」を用いてプレゼンテーションしており、また、その資料を作成、配布している。作成、配布した資料を、その原稿版とともに提出する(乙第3号証及び同第4号証)。
(3)この事実は業界の注目するところとなり、被請求人が業として本件商標を指定役務に使用している事実は、日経広告手帖(インターネットホームページ)に掲載された。その事実を証明するために、打出しのコピーを提出する(乙第5号証)。この中では、被請求人の指定役務である経営指標を本件商標「EVE」と名づけて採用した経緯が紹介されている。
(4)被請求人は、本件商標「EVE」を使用した指定役務である経営指標の提供を、2003年12月16日に講習という形で実施しており、その際に受講者に対して配布された資料を提出する(乙第6号証)。当該資料の第1ページには、2003年12月16日の日付とともに「FCFとEVE」の表題が掲げられている。これは、被請求人である商標権者が「EVE」を役務に付する商標と認識した上で使用しているものである。また、第13ページ以降では指定役務である経営指標について、詳細な説明がされている。
この中で、当該指標を表示する標章として、本件商標「EVE」の文字が用いられている。ちなみに、2003年12月16日は、本件審判の請求の登録前3年以内に該当している。さらに、講習が行われた事実を示す資料として、講習開催の日程調整のために交わされたeメールのコピーを提出する(乙第7号証)。
なお、受講者は、被請求人の関連会社である株式会社ジャパンビバレッジの社員で、使用された事実は存在するものであるが、その対象は被請求人の関連会社であった。ただし、被請求人とは別法人であり、資本関係を示す資料として持ち株比率を表した有価証券報告書を提出する(乙第8号証)。
(5)さらに、別の使用状況を示す事実として、都内某大学の学生を対象とした、ゼミ形式のワークショップを開催した。企画内容及びカリキュラムの記載された資料を提出する(乙第9号証)。なお、当該資料は、本件審判の請求の登録前3年以内である2003年10月1日までに作成され、ゼミの開始以前に配布されており、当該資料の右上にはそのことを示す「031001」の数字列が記載されており、そして、その第2ページ目には、同年10月31日に指定役務についての説明がなされた事実が示されていて、本件商標「EVE」が用いられている。
本件商標が、現実に使用された事実を証明するために、その講義で使用された資料を提出する(乙第10号証)。さらに、当該ワークショップでなされた質疑応答及びアンケートをとりまとめた資料を提出する(乙第11号証)。当該資料の左下には、2003年12月19日の日付が記載されている。
(6)上記の資料により、本件商標「EVE」が、指定役務「経営の診断及び指導、財務書類の作成、企業の経営に関する情報の提供」について使用されていることは、十分に証明されたものと思料する。
2 登録商標としての使用
本件商標「EVE」は、価値創造利益の英訳「Economic Value Based Earnings」の頭文字をとって命名されたローマ字3文字からなる商標である。本来的に語義がある商標であるが、英訳の単語のイニシャルを集合させた「EVE」には特に語義はなく、この点では具体的な観念の生じない、一種の造語と考えられる。ローマ字3文字は公表されている審査基準でも顕著性のある文字列と判断されているところから、本件商標「EVE」が商標であることは問題がないと考えられる。また、指定役務との関係においては、「EVE」は、単語として親しまれているものではなく、また、具体的な役務の内容を表示するものではない。さらに、本件商標「EVE」が普通に用いられているとの事実も見いだすことはできない。
したがって、本件商標は、指定役務との関係において識別力を有するものであり、被請求人の独占適応性が認められるものである。
また、上記のように、被請求人は、本件商標を、指定役務「経営の診断及び指導、財務書類の作成、企業の経営に関する情報の提供」について、受講者を集めて経営の診断等についての情報の提供を目的とした講習を行っており、当該講習は、「役務の提供」に該当するものと考えられる。当該講習の際に配布された資料(乙第6号証)は、役務の「提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したもの」に該当すると考えられ、被請求人のホームページにおいて、本件商標を付して指定役務である経営指標を表示すること(乙第2号証)は、「役務に関する広告」を「電磁的方法により提供する行為」に該当する。さらに、日経広告手帖(乙第5号証)において被請求人の指定役務である経営指標が本件商標とともに紹介されているという事実は、とりもなおさず、被請求人が本件商標を指定役務に使用している事実を裏付けるものである。
以上のことにかんがみれば、被請求人は、本件商標を識別標識すなわち実質的に商標として、指定役務について使用していると判断できるものである。
3 審決例
(1)第41類を指定役務とする登録商標の使用について、指定役務の提供のためのセミナー開催の事実を示す資料が、指定役務についての登録商標の使用と認められた審決例がある(取消2003-31679参照。)。当該審決と同様に考えれば、指定役務の提供の講習を開催するための日程調整のメールと、本件商標を、指定役務に関する講習で配布される資料に表示する事実も、指定役務についての登録商標の使用に該当するものと評価されるべきである。
(2)また、第42類を指定役務とする登録商標の使用について、指定役務の提供のための提案書は、指定役務についての登録商標の使用と認められている(取消2003-31295参照。)。当該審決と同じように判断されるならば、本件商標が、プレゼンの資料の中で指定役務を表示する標識として用いられている事実は、指定役務の提供の前段階において提出される提案書の提出と同義に考えることができる。したがって、指定役務についての登録商標の使用に該当するものと評価されるべきである。
(3)さらに、第35類を指定役務とする登録商標の使用について、指定役務である被請求人の業務が記載された会社案内は、指定役務についての登録商標の使用と認められている(取消2003-30505参照。)。当該審決と同様に考えれば、被請求人が、指定役務である経営指標について本件商標を被請求人のインターネットのホームページに表示する事実も、会社案内に業務を記載することと同義に考えることができる。したがって、指定役務についての登録商標の使用に該当するものと評価されるべきである。
4 不使用取消審判の趣旨
不使用取消審判は、使用している形跡もない名目だけの登録商標の整理にある。
本件審判請求人が、他に代理する「EVE」なる商標の登録について、先登録である被請求人の商標権が邪魔になっている事態は、データベース等の検索により容易に推測できるところではあるが、商標の選択は、他人の登録商標が存在しないところを自由に選択できるのが原則であると考えられる。
既に、登録商標の存在するところに、商標権者による使用を無視又はこれを審判により排除してまで、自己の商標の登録にこだわるという制度とは考えられない。仮に、未だ使用していない登録段階にある商標に保護を与えたとしても、3年以上不使用が継続する事態も考えられ、不使用取消審判にかかる可能性すら考えられるのである。本来的には現実に使用している者に対し、その使用の範囲で保護が与えられるべきであり、また保護すべき法益も実在すると考えられる。請求人側には、その関係者に使用する意思があると推察できるとしても、現実に使用していない者に優先的に保護を与える理由は考えられない。
したがって、商標権者が商標を使用している以上、たとえ、その使用に厳格には多少の暇疵もしくは法律上は不足があったとしても、それをもって登録を排除することは問題と考えるべきであり、むしろ、法はオールマイティではなく、現行法の予測している業務の形態の中には法律のカバーから外れているものもあると理解すべきである。
5 結語
以上述べたとおり、本件商標は、取消しの対象である指定役務に現実に使用されているので、本件商標が取り消されるべきでないことは、明らかである。したがって、答弁の趣旨とおりの審決を求めるものである。

第4 当審の判断
1 本件審判において、被請求人より提出された乙第6号証及び同第7号証によれば、以下のことが認められる。
乙第6号証は、被請求人(会社)が開催した企業の経営に関する講習会において配布・使用した資料(テキスト)と認められるところ、その第1ページ目に「2003年12月16日」と表示され、講習会の開催者としての被請求人の商号及びその部署がそれぞれ「日本たばこ産業(株)」、「財務企画部」と二段に表示されている。そして、該テキストの随所に、本件商標「EVE」と社会通念上同一と認められる商標が表示されている。
また、乙第7号証は、上記の講習会の開催日程に関して、被請求人の担当者と受講する企業の担当者(受講者)間で交わされた2003年11月27日のメール(写し)と認められるものであり、その内容を見ると、題目として「EVEの講習について」と記載され、講習会の開催日として「12月16日(火)」、ほか、場所、参加者等が記載されている。
2 前記1で認定した事実によれば、上記の資料(テキスト)及びメールは、その記載内容から本件商標を付した役務「経営の診断及び指導,企業の経営に関する情報の提供」の提供に関して実際に使用されたと認め得るものである。
してみると、上記の資料(テキスト)及びメール(写し)の記載内容から、本件商標と役務とが明確に把握され、本件商標がその指定役務中、本件審判の取消請求に係る「経営の診断及び指導,企業の経営に関する情報の提供」の役務について審判請求前3年以内に本件商標権者によって、我が国において使用されていたことが認められる。
これに対し、請求人は、講習(会)は、JT及びJTグループ(被請求人及びそのグループ)での経営指標の説明であり、「経営指標」が「企業の経営に関する情報の提供」に含まれるとしても、被請求人の役務として業として行われているものとは認められない旨主張しているが、前記1で認定したとおり、被請求人が開催した講習会において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したと認められるところ、たとえ受講者が被請求人の関連会社であるとしても、独立した法人であり(乙第8号証)、被請求人が業として役務を提供したと認め得るものであるから、請求人の主張は、採用の限りでない。
そうすると、被請求人は、本件審判の請求の登録日(平成17年12月6日)前3年以内に日本国内において、本件商標の指定役務中、本件取消請求に係る第35類の「経営の診断及び指導,企業の経営に関する情報の提供」の役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたものと認め得るところである。
したがって、本件商標は、その指定役務中、第35類の「経営の診断及び指導,企業の経営に関する情報の提供」について、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-09-01 
結審通知日 2006-09-06 
審決日 2006-10-31 
出願番号 商願2000-10537(T2000-10537) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z35)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 田代 茂夫
特許庁審判官 柳原 雪身
内山 進
登録日 2002-07-05 
登録番号 商標登録第4583403号(T4583403) 
商標の称呼 イブ、エバ、イイブイイイ、イーブイイー 
代理人 広瀬 文彦 

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